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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】不織布積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20220719BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220719BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220719BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20220719BHJP
   D04H 5/00 20120101ALI20220719BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20220719BHJP
   B62D 25/18 20060101ALI20220719BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B27/36
D04H3/16
D04H1/46
D04H5/00
D06M17/00 B
D06M17/00 M
B62D25/18 F
B62D25/20 N
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020119973
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2021037745
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】19187652
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510057615
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】ベヌゴパル,アルン プラサド
(72)【発明者】
【氏名】ショエーピング,ゲルハルト
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518382(JP,A)
【文献】特開平5-179558(JP,A)
【文献】特開2004-190161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04H 3/16
D04H 1/46
D04H 5/00
D06M 17/00
B62D 25/18
B62D 25/20
B29C 43/20
B29C 70/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含む、スパンボンド不織布層(A)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含み、かつ前記不織布層(A)よりもコポリエステル含有量が高い、任意のスパンボンド不織布層(B)と、
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)であって、
単成分ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(c1)と、
少なくとも1つのポリエチレンテレフタレート(PET)成分およびコポリエステル成分を含む多成分短繊維(c2)と
を含むニードリング済みの短繊維不織布層(C)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含み、かつ不織布層(E)よりもコポリエステル含有量が高い、任意のスパンボンド不織布層(D)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含む、スパンボンド不織布層(E)と
を(A)~(E)の順序で含む不織布積層体であって、いずれの層も溶融により互いに結合されている、不織布積層体。
【請求項2】
層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)がいずれも、他の層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれにも機械的に結合されていない、請求項1記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が熱収縮している、請求項1または2記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記不織布積層体が、ポリオレフィンを含まず、特にポリプロピレンを含まない、請求項1から3までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項5】
前記不織布積層体が、無機強化材を含まず、特にガラス繊維を含まない、請求項1から4までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項6】
前記不織布積層体が、以下の特性:
ISO 178:2019-04による曲げ強さが、330MPa以上であること、
ASTM 5034:2009による引張強さが、780N以上であること、および/または
DIN EN 29073-3:1992-08による引裂強さが、110N以上であること
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項7】
前記層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、前記コポリマーが、240℃以下の融点を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項8】
層(A)および(E)が、10%~70%のコポリエステル、特に少なくとも30%のコポリエステルを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)を含み
パンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)が、DIN EN 29073-1:1992-08による1~100g/m2の目付を有する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項10】
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、
10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)からなり、かつ/または
DIN EN 29073-1:1992-08による1700g/m2以下の目付を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項11】
前記不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)もスパンボンド不織布層(D)も含まず、
前記層(A)、(C)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、前記コポリマーが、160~240℃の融点を有し、かつ
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、40~60%の単成分短繊維(c1)および40~60%の多成分短繊維(c2)からなる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の不織布積層体。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の不織布積層体を含む、成形物品。
【請求項13】
アンダーボディシールドのための、またはホイールアーチライナーのための、特にアンダーボディシールドのための、請求項1から12までのいずれか1項記載の不織布積層体または成形物品の使用。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の不織布積層体の製造方法であって、
ニードリングにより、ニードリング済みの短不織布層(C)を製造するステップと、
層(A)~(E)の順序で提供するステップと、
層(A)~(E)を溶融により互いに結合させるステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、かかる不織布積層体を含む物品、その使用およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
不織布積層体は、様々な用途で用いられている。不織布積層体は、例えば自動車用途のアンダーボディシールド材料として使用される。自動車用途のアンダーボディシールド材料は、通常、所与の車両内に配置するのに望ましいアンダーボディシールドを提供するために加熱および成形される。このようなアンダーボディシールドは、通常、多くの厳しい性能仕様を満たす必要がある。そのような仕様を満たすために、様々なアンダーボディシールド材料が当該技術分野で広く提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/183079号
【文献】欧州特許出願公開第3489008号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0288451号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に考慮されているいくつかのアンダーボディシールド材料には、複合品が含まれる。国際公開第2016/183079号には、多孔質コア層を含むそのような複合品が記載されている。コア層は、複数の強化繊維およびロフティング剤を含む。しかし、強化繊維の混合によって、コア層の加工性が悪化することがある。さらに、ロフティング剤の混合によって、物品の加熱および成形時に寸法の不安定性を招くことがある。さらに、強化繊維および/またはロフティング剤の混合によって、複合品のコストが増加する場合がある。
【0005】
一般的に考慮されているいくつかのアンダーボディシールド材料は、ポリプロピレンのようなポリオレフィンを含む。欧州特許出願公開第3489008号明細書には、長繊維不織布層と短繊維不織布層との2層構造を有する基材不織布が記載されている。どちらの不織布層も、ポリエステルを含む。ポリプロピレン層は、これら2つの不織布層間の界面近傍に局在化している。一般に、ポリプロピレン含有製品はリサイクルが容易ではない。また、ポリプロピレンの融点は約160℃であり、低耐熱性および可燃性の問題を引き起こす場合がある。また、ポリエステル繊維とポリプロピレンとは、例えば伸び、引張強さなどに関して異なる特性を有する。したがって、ポリエステルとポリプロピレンとを同時に使用すると、最終製品の特性の調整が妨げられることがある。
【0006】
一般的に考慮されているいくつかのアンダーボディシールド材料は、スパンボンド層にニードリングされた短繊維層を含む。しかし、そのような層状材料を加熱すると、短繊維層は通常は収縮するが、一方でスパンボンド層は通常は収縮しない。これは、いわゆる象皮効果を招き得る。象皮効果自体によって、美観が損なわれることがある。さらに、象皮効果によって、平坦でない成形品が生じる可能性がある。平坦でない成形品は、通常、曲げ強さが低下する。米国特許出願公開第2016/0288451号明細書には、車両の車体下部用途に特に適した成形可能な層状構造のコア層としての、ニードリングされた短繊維材料が記載されている。このコア層には、少なくとも1つのスパンボンドポリエステル層が機械的に結合されている。この機械的結合は、スパンボンドポリエステル層をコア層にニードリングすることによって達成される。コア層の安定した繊維は、機械的結合によって乱される。得られる層状構造において、コア層の安定した繊維は、スパンボンドポリエステル層を少なくとも部分的に貫通し、コア層と反対側のスパンボンドポリエステル層の表面から突出している。記載された層状構造のいくつかの特性をさらに改善することが望ましいであろう。
【0007】
当該技術分野で公知の不織布積層体を、特にアンダーボディシールド用途での使用に向けて改善することが、広く求められている。
【0008】
(発明の基礎を成す課題)
本発明の目的は、当該技術分野において直面する欠点を少なくとも部分的に克服する不織布積層体を提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、容易に加熱および成形して、所望の構成体を提供することができる不織布積層体、特に、加熱および成形時に寸法安定性である不織布積層体を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、不織布積層体を含む物品のコスト削減に寄与し得る不織布積層体を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、リサイクル性が向上し、耐熱性および不燃性が向上し、かつ/または有利には軽量な不織布積層体を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、均一な機械的特性、特に均一な伸び、引張強さおよび/または熱収縮を示す不織布積層体を提供することである。
【0013】
本発明の特定の一目的は、象皮効果の低減を示す成形物品が得られる不織布積層体を提供することである。
【0014】
本発明の特定の一目的は、吸音性の向上を示す成形物品が得られる不織布積層体を提供することである。
【0015】
当該技術分野において直面する欠点を少なくとも部分的に克服する不織布積層体を含む成形物品を提供することも、本発明の目的である。
【0016】
当該技術分野において直面する欠点を少なくとも部分的に克服する不織布積層体、またはかかる不織布積層体を含む成形物品の使用を提供することも、本発明の目的である。
【0017】
当該技術分野において直面する欠点を少なくとも部分的に克服する不織布積層体の製造方法を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の開示)
驚くべきことに、本発明の基礎を成す課題は、特許請求の範囲による不織布積層体、成形物品、使用および方法により解決されることが見出された。本発明のさらなる実施形態は、本明細書を通して概説される。
【0019】
本発明の主題は、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含む、スパンボンド不織布層(A)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含み、かつ不織布層(A)よりもコポリエステル含有量が高い、任意のスパンボンド不織布層(B)と、
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)であって、
単成分ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(c1)と、
少なくとも1つのポリエチレンテレフタレート(PET)成分およびコポリエステル成分を含む多成分短繊維(c2)と
を含むニードリング済みの短繊維不織布層(C)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含み、かつ不織布層(E)よりもコポリエステル含有量が高い、任意のスパンボンド不織布層(D)と、
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびコポリエステルを含む繊維を含む、スパンボンド不織布層(E)と
を(A)~(E)の順序で含む不織布積層体であって、いずれの層も溶融により互いに結合されている、不織布積層体である。
【0020】
不織布は、当該技術分野において慣例的である。不織布は、織物でも編物でもない。一般に、不織布とは、DIN EN ISO 9092:2018で定義されているテキスタイル布地である。
【0021】
スパンボンドとは、一般に、溶融した繊維原料から延伸した、理論的にエンドレスな繊維を含む布地を指す。スパンボンド不織布層(A)、(B)、(D)および(E)がそれぞれ、シートの形態で一緒にカレンダー加工された連続長繊維でできていることが好ましい。
【0022】
短繊維とは、一般的に、長さがばらばらの繊維を指す。短繊維のグループは、グループ内の繊維の平均長を有し、この平均長は、短繊維長と称される。
【0023】
ニードリング済みの不織布層は、一般に、ニードルを使用して交絡させた複数の繊維を含む層を指す。
【0024】
ポリエチレンテレフタレートとは、テレフタル酸とエタン-1,2-ジオール(エチレングリコールとも称される)とのコポリマーである。
【0025】
コポリエステルとは、第1の二酸モノマーと、第1のジオールモノマーと、少なくとも1つの第2の異なる二酸モノマーおよび少なくとも1つの第2の異なるジオールモノマーのうちの一方または双方とのコポリマーである。本明細書において、二酸モノマーとは、好ましくはジカルボン酸モノマーを指す。
【0026】
溶融による結合は、当該技術分野において慣例的である。溶融による結合とは、一般に、少なくとも2つの材料のうちの少なくとも1つにエネルギーを印加し、同時に少なくとも2つの材料を緊密に接触させ、その後冷却することにより、少なくとも2つの高分子(通常は熱可塑性)材料を接合する技術を指す。溶融による結合は、サーマルボンディングまたはケミカルボンディングとも称される。
【0027】
本発明の不織布積層体において、層(A)~(E)は、所与の順序で溶融により結合される。これは、層のスタックを形成し、このスタックを溶融により結合させることによって実現できる。
【0028】
溶融により層を互いに結合させることで、不織布積層体の熱収縮性の高い均一性が生じ得る。この熱収縮性の高い均一性によって、成形時の象皮状物の形成を低減させることができる。象皮状物の形成が低減するため、本発明の不織布積層体は、魅力的な美観と成形後の高い曲げ強さとを有することができる。
【0029】
溶融により層を互いに結合させることで、加熱および成形時に不織布積層体に高い寸法安定性を付与することもできる。
【0030】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれの層も、ポリエチレンテレフタレートを含む。ポリエチレンテレフタレートは、本明細書では「PET」とも称される。ポリエチレンテレフタレートは、バージンポリエチレンテレフタレート(再生されていない)であっても、再生ポリエチレンテレフタレート(「r-PET」とも称される)であっても、バージンポリエチレンテレフタレートと再生ポリエチレンテレフタレートとの混合物であってもよい。バージンポリエチレンテレフタレートによって、本発明の不織布積層体の機械的特性のより正確な設定が可能となる。再生ポリエチレンテレフタレートによって、本発明の不織布積層体のコスト削減が可能となる。
【0031】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のすべての層に含まれるポリエチレンテレフタレートは、本発明の不織布積層体の機械的特性の高い均一性を付与することができる。特に、それにより、本発明の不織布積層体の伸びおよび引張強さの均一性を高めることができる。これにより、本発明の不織布積層体を容易に加熱および成形して、所望の構成体を提供することができる。それにより、本発明の不織布積層体は、加熱および成形時に寸法安定性であり得る。
【0032】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のすべての層に含まれるポリエチレンテレフタレートは、各層と積層体全体とのそれぞれに、比較的低い目付を提供し得る。
【0033】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のすべての層に含まれるポリエチレンテレフタレートは、約260℃という比較的高い融点を有する。これにより、本発明の不織布積層体は、高い耐熱性および不燃性を示し得る。融点とは、本明細書においては好ましくは、DIN ISO 11357-3:2013により決定される融点である。
【0034】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のすべての層に含まれるポリエチレンテレフタレートは、比較的安価である。それにより、本発明の不織布積層体は、本発明の不織布積層体を含む物品のコスト削減に寄与し得る。
【0035】
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれの層も、コポリエステルを含む。コポリエステルは、非晶質コポリエステルであっても、結晶質コポリエステルであっても、非晶質コポリエステルと結晶質コポリエステルとの混合物であってもよい。存在する場合、任意の層(B)は、層(A)よりもコポリエステル含有量が高く、任意の層(D)は、層(E)よりもコポリエステル含有量が高い。コポリエステル含有量をそれぞれより高くすることで、層(A)および/または層(E)と層(C)との結合を強化することができる。したがって、コポリエステル含有量をそれぞれより高くすることで、層(A)および/または層(E)の剥離強さを向上させることができる。
【0036】
本発明の不織布積層体は、
層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)、
層(A)、(C)、(D)および(E)、
層(A)、(B)、(C)および(E)、または
層(A)、(C)および(E)
を所与の順序で含むことができ、ここで、層(A)、(C)および(E)が特に好ましい。
【0037】
このような不織布積層体では、層(B)および(D)が接着層として機能する。層(B)および(D)は、外層(A)および(E)とコア層(C)との間の結合を高めることができる。そのような積層体では、層(A)および/または層(E)の層間剥離が有利に低減され得る。剥離強さを高める観点から、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の順に含む不織布積層体が好ましい。
【0038】
製造の簡便性の観点から、層(A)、(C)および(E)を含む不織布積層体が好ましい。そのような積層体の製造には、層(B)および(D)のための追加の供給装置は必要でない。これにより、そのような不織布積層体の製造を簡略化することができる。費用効率の観点から、層(A)、(C)および(E)のみを有する、すなわち層(B)および(D)を有しない不織布積層体の製造がさらに特に好ましい。
【0039】
すべての層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)が溶融により互いに結合されていることの特定の一定義によれば、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)はいずれも、本発明の不織布積層体中の他の層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれにも機械的に結合されていない。換言すれば、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のうちの2つの間に、絡み合いは存在しない。特に、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)に含まれる繊維は、層(A)、(B)、(D)、(E)のいずれにも延びておらず、特に層(A)および/または層(E)へと延びてはいない。より具体的には、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)に含まれる繊維は、層(A)、(B)、(D)、(E)のいずれをも貫通しておらず、特に層(A)および/または層(E)を貫通していない。機械的結合が存在しないことにより、層の加熱時の望ましくない象皮状物の形成を最小限に抑えることができるため、魅力的な美観を達成することができる。さらに、機械的結合を行わずに不織布積層体から製造された成形品は、有利に平坦であることができ、特にしわや波状構造などが存在しない。さらに、その曲げ強さを高めることができる。
【0040】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)がいずれも、他の層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれにもニードリングされていないことが好ましい。そのような望ましくないニードリングには、機械的ニードリング、および水流交絡としても知られているウォータージェットニードリングが包含される。これによって、層の加熱時の望ましくない象皮状物の形成を防ぐことができる。そして、魅力的な美観を実現することができる。好ましい不織布積層体から製造された成形品は、通常は平坦であり、しわなどがないため、通常は曲げ強さが高くなる。
【0041】
本発明の不織布積層体において、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が熱収縮していることが好ましい。好ましくは、ニードリング済みの繊維は、縦方向および横方向の双方で熱に曝されると収縮する。熱収縮したニードリング済みの短繊維不織布層は、望ましくないさらなる収縮を回避することができる。これにより、後続の成形プロセス時における望ましくない象皮状物の形成を回避することができる。
【0042】
本発明の不織布積層体において、不織布積層体に含まれる全繊維の20%未満、より好ましくは10%未満が、PETを含まず、かつコポリエステルを含まないことが好ましい。最も好ましくは、不織布積層体に含まれるすべての繊維が、PET、コポリエステルまたはそれらの混合物でできている。不織布積層体に含まれるすべての繊維が、主に、そして好ましくは専らPET、コポリエステルまたはそれらの混合物でできている場合、不織布積層体は、比較的低コスト、比較的軽量でかつ比較的高い剥離強さを有することができる。
【0043】
本発明の不織布積層体が、ポリオレフィンを含まず、特にポリプロピレンを含まないことが好ましい。これにより、不織布積層体をより容易にリサイクルすることができる。これにより、不織布積層体の耐熱性および不燃性を向上させることができる。これにより、不織布積層体の機械的特性、特にその伸びおよび引張強さの均一性が向上する。これにより、不織布積層体を含む製品の特性をより容易に調整することができる。
【0044】
本発明の不織布積層体が、無機強化材、特にガラス繊維を含まないことが好ましい。無機強化材が存在せず、特にガラス繊維が存在しないことによって、不織布積層体の加工性を容易にすることができる。無機強化材が存在せず、特にガラス繊維が存在しないことによって、不織布積層体を含む物品のコストを下げることができる。
【0045】
本発明の不織布積層体が、ロフティング剤を含まないことが好ましい。ロフティング剤が存在しないと、不織布積層体の加熱および成形時に不織布積層体の寸法安定性が高まる場合がある。ロフティング剤が存在しないことによって、不織布積層体を含む物品のコストを下げることができる。
【0046】
本発明の不織布積層体が、以下の特性のうちの少なくとも1つを有することが好ましい:
ISO 178:2019-04による曲げ強さが、330MPa以上であること、
ASTM 5034:2009による引張強さが、780N以上であること、および/または
DIN EN 29073-3:1992-08による引裂強さが、110N以上であること。
【0047】
曲げ強さが330MPa以上であり、引張強さが780N以上であり、かつ/または引裂強さ110N以上であることによって、不織布積層体の高い耐摩耗性が生じ得る。曲げ強さが330MPa以上であり、引張強さが780N以上であり、かつ/または引裂強さが110N以上であることによって、不織布積層体の吸音性を高めることができる。
【0048】
不織布積層体の耐摩耗性をさらに高め、かつ吸音性を向上させる観点から、本発明の不織布積層体が、330MPa以上の曲げ強さおよび780N以上の引張強さか、または330MPa以上の曲げ強さおよび110N以上の引裂強さか、または780N以上の引張強さおよび110N以上の引裂強さを有することが特に好ましい。本発明の不織布積層体が、330MPa以上の曲げ強さ、780N以上の引張強さおよび110N以上の引裂強さを有することが最も好ましい。
【0049】
本発明の不織布積層体が、370MPa以上、さらにより好ましくは400MPa以上、なおもより好ましくは430MPa以上の曲げ強さを有することがより好ましい。それぞれ曲げ強さの増加に伴って、不織布積層体の耐摩耗性および吸音性をさらに向上させることができる。
【0050】
本発明の不織布積層体が、850N以上、さらにより好ましくは900N以上、なおもより好ましくは950N以上の引張強さを有することがより好ましい。それぞれ引張強さの増加に伴って、不織布積層体の耐摩耗性および吸音性をさらに向上させることができる。
【0051】
本発明の不織布積層体が、125N以上、さらにより好ましくは145N以上、なおもより好ましくは165N以上の引裂強さを有することがより好ましい。それぞれ引裂強さの増加に伴って、不織布積層体の耐摩耗性および吸音性をさらに向上させることができる。
【0052】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーは、モノマーであるテレフタル酸、エタン-1,2-ジオール、ならびに少なくとも1つのさらなる異なるジカルボン酸モノマーおよび/または少なくとも1つのさらなる異なるジオールモノマーを含む。好ましいさらなるジカルボン酸モノマーは、アジピン酸である。もう1つの好ましいさらなるジカルボン酸モノマーは、イソフタル酸である。好ましいさらなるジオールモノマーは、シクロヘキサンジメタノールである。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーによって、不織布積層体のリサイクル性を容易にすることができる。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーによって、不織布積層体内の剥離強さを高めることができる。ポリエチレンテレフタレートのコポリマーによって、不織布積層体の原材料コストを削減することができる。
【0053】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、240℃以下の融点を有することが好ましい。コポリエステル、特に層(B)、(C)および(D)のコポリエステルが、220℃以下、さらに好ましくは210℃以下、さらにより好ましくは200℃以下、なおもより好ましくは190℃以下、特に180℃の融点を有することがより好ましい。240℃以下の融点を有するコポリエステルによって、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を溶融により互いに結合させるのに必要なエネルギーを削減することができる。240℃以下の融点を有するコポリエステルによって、スパンボンド層(A)、(B)、(D)および(E)の製造に必要なエネルギーを削減することができる。融点がそれぞれ220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下および180℃と低くなると、エネルギー削減量を継続的に増加させることができる。
【0054】
本発明の不織布積層体において、層(A)および(E)のコポリエステルが、層(C)のコポリエステルの融点よりも高く、より好ましくは20℃以上高く、さらにより好ましくは30℃以上高く、さらにより好ましくは35℃以上高い融点を有することが好ましい。このようにして、溶融により結合させた後の不織布積層体の層間のより強い結合を達成することができる。
【0055】
層(B)および(D)が存在しないことが特に好ましいが、この場合には、層(A)および(E)のコポリエステルが、205~240℃、さらにより好ましくは210~230℃、なおもより好ましくは210~225℃の融点を有することがより好ましい。この場合、層(C)のコポリエステルは、好ましくは160~200℃、さらにより好ましくは170~190℃、なおもより好ましくは175~185℃の融点を有する。これにより、層(C)からの層(A)および(E)の層間剥離を回避することができる。
【0056】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、100℃以上の融点を有することが好ましい。コポリエステルが、110℃以上、さらにより好ましくは140℃以上、なおもより好ましくは160℃以上の融点を有することがより好ましい。100℃以上の融点を有するコポリエステルによって、溶融により結合させた後の層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)間の結合強度を高めることができる。
【0057】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、100~240℃の範囲の、より好ましくは110~240℃の範囲の、さらにより好ましくは140~230℃の範囲の、なおもより好ましくは160~225℃の範囲の融点を有することが好ましい。これらの範囲内の融点を有するコポリエステルによって、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を溶融により互いに結合させるのに必要なエネルギーを削減することができ、スパンボンド層(A)、(B)、(D)および(E)の製造に必要なエネルギーを削減することができ、かつ溶融により結合させた後の層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)間の結合強度を高めることができる。
【0058】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(D)および(E)、特に層(A)および(E)のコポリエステルが、基本的に中性であり、すなわち6.5~7.5、より好ましくは6.8~7.2、さらにより好ましくは7.0のpH値を有することが好ましい。これにより、不織布積層体の表面と環境との望ましくない化学的相互作用を回避することができる。
【0059】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(D)および(E)、特に層(A)および(E)のコポリエステルが、1.1~1.6g/cm、より好ましくは1.2~1.5g/cm、さらにより好ましくは1.3~1.4g/cmの密度を有することが好ましい。密度は、DIN EN ISO 1183-1:2019-09により決定される。そのような密度によって、過度のコストを回避しつつ、適切な強度の積層体を得ることができる。
【0060】
本発明の不織布積層体において、層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであると同時に、このコポリマーが240℃以下の融点を有することがより好ましい。これによって、剥離強さの向上と、コストの低下と、溶融による層の結合およびスパンボンド層の製造に必要なエネルギーの低減とを、同時に生じさせることができる。
【0061】
層(B)および(D)が本発明の不織布積層体中に存在する場合、層(A)および(E)が、2%~30%のコポリエステル、より好ましくは5~25%のコポリエステルを含むことが好ましい。層(B)および(D)が本発明の不織布積層体中に存在しない場合、層(A)および(E)が、少なくとも30%のコポリエステル、より好ましくは30~70%のコポリエステル、特に好ましくは少なくとも40%のコポリエステル、少なくとも50%のコポリエステル、少なくとも60%のコポリエステル、または少なくとも70%のコポリエステルを含むことが好ましい。このようなコポリエステル含有量によって、積層体の波状構造を回避することができる。このようなコポリエステル含有量によってさらに、積層体の曲げ強さの向上を達成することができる。ここで、「%」は、常に重量%を指す。
【0062】
層(B)および(D)が存在し、層(A)および(E)が2%~30%のコポリエステルを含む場合、層(A)を層(B)または層(C)に溶融により結合させることがより容易になり得、また同様に、層(E)を層(D)または層(C)に溶融により結合させることがより容易になり得る。層(A)および(E)が2~30%のコポリエステルを含む場合、層(A)および(E)の剥離強さを高めることができる。層(A)および(E)が5%~25%のコポリエステルを含む場合、層(A)および(E)の溶融による結合の容易さと剥離強さとをさらに高めることができる。
【0063】
層(A)および(E)が少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%のコポリエステルを含む場合、層(B)および(D)を有しない積層体により、剥離強さを高めることができる。すなわち、剥離強さの向上に、層(B)も層(D)も必要ではない場合がある。これにより、積層体のコストを下げることができる。これにより、積層体の製造を簡略化することができる。層(B)および(D)が好ましくは存在しないこのような場合、層(A)および(E)のコポリエステルが、205~240℃、さらにより好ましくは210~230℃、なおもより好ましくは210~225℃の融点を有することが特に好ましい。この場合、層(C)のコポリエステルは、好ましくは160~200℃、さらにより好ましくは170~190℃、なおもより好ましくは175~185℃の融点を有する。これによって特に、層(C)からの層(A)および(E)の層間剥離を回避することができる。
【0064】
本発明の不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)を含み、該層の繊維がコポリエステルからなることが好ましい。スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)の存在によって、層(A)および/または層(E)の剥離強さを高めることができる。スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)の繊維がコポリエステルからなる場合、不織布積層体のすべての層を溶融により互いに結合させることが容易になり得る。
【0065】
本発明の不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)を含み、該層が、DIN EN 29073-1:1992-08による1~100g/m、好ましくは5~50g/m、より好ましくは10~20g/mの目付を有することが好ましい。スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)の存在によって、層(A)および/または層(E)の剥離強さを高めることができる。不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)が1~100g/m、好ましくは5~50g/m、より好ましくは10~20g/mの目付を有する場合、積層体の軽量と積層体の良好な耐摩耗性との良好なバランスを達成することができる。
【0066】
本発明の不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)を含み、該層の繊維がコポリエステルからなると同時に、該層が、DIN EN 29073-1:1992-08による1~100g/m、好ましくは5~50g/m、より好ましくは10~20g/mの目付を有することがより好ましい。スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)の存在によって、層(A)および/または層(E)の剥離強さを高めることができる。スパンボンド不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)の繊維はコポリエステルからなるため、不織布積層体のすべての層を溶融により互いに結合させることが容易になり得る。それと同時に、不織布層(B)および/またはスパンボンド不織布層(D)が、1~100g/m、好ましくは5~50g/m、より好ましくは10~20g/mの目付を有するため、積層体の軽量と積層体の良好な耐摩耗性との良好なバランスを達成することができる。
【0067】
本発明の不織布積層体において、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)からなることが好ましい。本発明の不織布積層体において、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、20~80%の単成分短繊維(c1)および20~80%の多成分短繊維(c2)から、さらにより好ましくは30~70%の単成分短繊維(c1)および30~70%の多成分短繊維(c2)から、なおもより好ましくは40~60%の単成分短繊維(c1)および40~60%の多成分短繊維(c2)から、最も好ましくは50%の単成分短繊維(c1)および50%の多成分短繊維(c2)からなることがより好ましい。
【0068】
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)からなる場合、短繊維不織布層(C)を、ニードリング済みの層としてより容易に製造することができる。ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)からなる場合、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)は、主にポリエチレンテレフタレートでできている。これにより、不織布積層体の重量を低下させることができ、不織布積層体の高い耐熱性および不燃性を生じさせることができ、かつ不織布積層体のコストを削減することができる。これらの効果は、(c1)/(c2)の比が1に近づくにつれて高まる。つまり、これらの効果は、20~80%(c1)/20~80%(c2)、30~70%(c1)/30~70%(c2)、40~60%(c1)/40~60%(c2)、50%(c1)/50%(c2)の順に高まる。
【0069】
短繊維(c1)は単成分繊維であり、つまり短繊維(c1)はポリエチレンテレフタレートからなる。短繊維(c2)は多成分繊維であり、つまり短繊維(c2)は2つ以上の成分からなる。短繊維(c2)の第1の成分は、ポリエチレンテレフタレートである。短繊維(c2)の第2の成分は、コポリエステルである。短繊維(c2)の1つ以上の追加成分が存在してもよい。短繊維(c2)が2成分繊維であり、つまり短繊維(c2)がポリエチレンテレフタレートおよびコポリエステルからなることが好ましい。2成分繊維が、アイランド・イン・ザ・シー型長繊維構成、パイセグメント型長繊維構成、シース・コア型長繊維構成またはサイド・バイ・サイド型長繊維構成、より好ましくはシース・コア型長繊維構成を有することが好ましい。コポリエステル成分は、通常、このような2成分繊維の表面に存在する。短繊維(c2)が、以下の特性のうちの少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上、最も好ましくはすべてを有することが好ましい:
DIN EN ISO 1973:2020-05により決定された繊度が、2~7dTex、より好ましくは3~6dTex、さらにより好ましくは4~6dTexであること、
繊維長が、30~70mm、より好ましくは40~60mm、さらにより好ましくは45~55mmであること、
DIN EN 13844:2003-04により決定された強度が、1~6g/de、より好ましくは2~5g/de、さらにより好ましくは3~4g/deであること、
DIN EN ISO 5079:2020-01により決定された伸びが、20~60%、より好ましくは30~50%、さらにより好ましくは35~55%であること、
JIS L-1074により決定された捲縮数が、4~10個/インチ、より好ましくは5~9個/インチ、さらにより好ましくは6~8個/インチであること、
DIN EN 13844:2003-04により決定された75℃、15分での熱収縮率が、3~7%、より好ましくは4~6%、さらにより好ましくは3.5~4.5%であること、および
融点が、160~200℃、より好ましくは170~190℃、さらにより好ましくは175~185℃であること。
【0070】
短繊維(c2)が上記の特性のうちの少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上、最も好ましくはすべてを有する場合、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)によって、不織布積層体に強度、柔軟性および成形性を同時に付与することができる。
【0071】
本発明の不織布積層体において、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、DIN EN 29073-1:1992-08による、1700g/m以下、より好ましくは500~1700g/mの目付を有することが好ましい。標準的な乗用車の用途では、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、600~1000g/m、より好ましくは700~900g/m、最も好ましくは800g/mの目付を有することが好ましい。オフロード車の用途では、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、1500~1700g/m、より好ましくは1550~1650g/m、最も好ましくは1600g/mの目付を有することが好ましい。
【0072】
本発明の不織布積層体において、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、10~90%の単成分短繊維(c1)および10~90%の多成分短繊維(c2)からなると同時に、DIN EN 29073-1:1992-08による、1700g/m以下、より好ましくは500~1700g/mの目付を有することがより好ましい。このようにして、短繊維不織布層(C)をニードリング済みの層としてより容易に製造することができ、かつ不織布積層体を、標準的な乗用車とオフロード車とのどちらのアンダーボディシールドにも多用途に用いることができる。
【0073】
本発明の不織布積層体に関して、
層(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、該コポリマーが、160~240℃の融点を有し、
本発明の不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)およびスパンボンド不織布層()を含み、該層がいずれもコポリエステルからなり、かついずれもDIN EN 29073-1:1992-08による10~20g/m2の目付を有し、かつ
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、40~60%の単成分短繊維(c1)および40~60%の多成分短繊維(c2)からなる
ことが好ましい。
【0074】
このような好ましい不織布積層体は、容易に加熱および成形して、所望の構成体を提供することができる。このような好ましい不織布積層体は、その加熱および成形時に寸法安定性であり得る。このような好ましい不織布積層体は、特にアンダーボディシールド材料としての用途に適し得る。層(B)および(D)が存在するため、剥離強さが高くなり得る。層(B)および(D)が存在するため、耐熱性が高くなり得る。
【0075】
本発明の不織布積層体に関して、
本発明の不織布積層体が、スパンボンド不織布層(B)もスパンボンド不織布層()も含まず、
層(A)、(C)および(E)のコポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーであり、該コポリマーが、160~240℃の融点を有し、かつ
ニードリング済みの短繊維不織布層(C)が、40~60%の単成分短繊維(c1)および40~60%の多成分短繊維(c2)からなる
ことが好ましい。
【0076】
このような好ましい不織布積層体は、容易に加熱および成形して、所望の構成体を提供することができる。このような好ましい不織布積層体は、その加熱および成形時に寸法安定性であり得る。このような好ましい不織布積層体は、特にアンダーボディシールド材料としての用途に適し得る。層(B)および(D)が存在しないため、不織布積層体のコストを削減することができる。層(B)および(D)が存在しないため、不織布積層体の製造を簡略化することができる。
【0077】
本発明の不織布積層体を含む成形物品も、本発明の主題である。本発明の成形物品は、本明細書に記載の本発明の不織布積層体の利点から利益を得る。特に顕著なのは、成形時の象皮状物の形成の減少の効果とそれに付随する利点である。
【0078】
アンダーボディシールドのための、またはホイールアーチライナーのための、特にアンダーボディシールドのための、本発明の不織布積層体または本発明の成形物品の使用も、本発明の主題である。アンダーボディシールドのための、またはホイールアーチライナーのための、特にアンダーボディシールドのための本発明の使用は、本明細書に記載の本発明の不織布積層体および/または本発明の成形物品の利点から利益を得る。特に顕著なのは、強化された耐摩耗性と高い耐熱性および不燃性の効果とそれに付随する利点である。
【0079】
本発明の不織布積層体の製造方法であって、
ニードリングにより、ニードリング済みの短繊維不織布層(C)を製造するステップと、
層(A)~(E)の順序で提供するステップと、
層(A)~(E)を溶融により互いに結合させるステップと
を含む方法も、本発明の主題である。
【0080】
本発明の不織布積層体の本発明の製造方法は、本発明の不織布積層体の利点から利益を得る。溶融での結合による層の容易な接合の効果は特に顕著であり、これによって、剥離強さの向上、およびそれに付随する利点が生じ得る。
【0081】
本発明の例示的な実施形態および本発明の態様を、図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】本発明による好ましい5層の不織布積層体の個々の層を、概略的に、かつ例示的形態で示す。
図2】本発明による好ましい3層の不織布積層体の個々の層を、概略的に、かつ例示的形態で示す。
図3】特に本発明によるスパンボンド不織布層で使用することができるパイセグメント型長繊維構成体を、概略的に、かつ例示的形態で示す。
図4】特に本発明によるスパンボンド不織布層で使用することができるシース・コア型長繊維構成体を、概略的に、かつ例示的形態で示す。
図5】特に本発明によるスパンボンド不織布層で使用することができるサイド・バイ・サイド型長繊維構成体を、概略的に、かつ例示的形態で示す。
図6】本発明による不織布積層体の音響測定の結果を示す。
図7a】米国特許出願公開第2016/0288451号明細書により製造した、機械的に結合させた(ニードリング済み)不織布の顕微鏡画像である。
図7b】米国特許出願公開第2016/0288451号明細書により製造した、機械的に結合させた(ニードリング済み)不織布の顕微鏡画像である。
図7c】米国特許出願公開第2016/0288451号明細書により製造した、機械的に結合させた(ニードリング済み)不織布の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
[不織布積層体の全般的な構成および製造]
図1に、本発明による好ましい5層の不織布積層体1を示す。この5層の不織布積層体1は、第1の外層2(層(A)に相当)、第1の接着層3(層(B)に相当)、コア層4(層(C)に相当)、第2の接着層5(層(D)に相当)、および第2の外層6(層(E)に相当)を含む。この積層体のこれらの層は、機械的に結合させたものではない。この積層体のこれらの層は、溶融のみによって互いに結合させたものである。
【0084】
一実施形態において、短繊維(c1)および(c2)をコア層4にニードリングする前に、有利な繊維調製が行われる。より具体的には、ニードリングプロセスの前に繊維(c1)および(c2)をベールから開繊し、混合し、カーディングする。その後、繊維(c1)および(c2)をクロスラッピングし、ニードリング機に通す。それとは別の繊維調製は、エアレイプロセスまたはエアレイドプロセスで行われ、開繊した繊維を吸引式ベルト上に集めてニードリングする。後続の成形プロセス時の収縮を回避するために、コア4に熱を加えて予備収縮させる。短繊維(c1)および/または(c2)は、好ましくは10mm~150mm、より好ましくは40mm~100mmの範囲の短繊維長を有する。コア層4は、好ましくは100g/m~2000g/mの目付を有する。
【0085】
一実施形態において、コア層4は、10~70%のバージンまたは再生PET短繊維(c1)を30~90%の2成分繊維(c2)と組み合わせた混合物を含む。2成分繊維はシース・コア型構成を有し、シースは、コアの融点よりも低い融点を有する。2成分繊維は、好ましくは、サイド・バイ・サイド型、シース・コア型、セグメント化パイ型またはアイランド・イン・ザ・シー型構造などの様々な幾何学的構成をとる。
【0086】
一実施形態において、2成分繊維(c2)のバインダーポリマーは、その融点に基づいて選択される。図4に示す好ましいシース・コア型構成では、コア11は、好ましくはPETからなり、シース10は、好ましくは200℃未満の融点を有するコポリエステルからなる。特に好ましい1つのバインダー繊維は、シース・コア型長繊維構成を有する。コア11は、250℃超、すなわち約260℃の融点を有するPETからなり、シース10は、110℃~180℃の範囲のより低い融点を有するコポリエステルを含む。
【0087】
一実施形態において、コア層4を、後続の成形プロセスでのさらなる収縮を回避するために予備収縮させる。予備収縮は、ニードリングプロセスの後に行われる。ニードリング済みの短繊維をオーブンで処理するが、このオーブンは、通常は、低融点コポリマーの融点を超えるように設定される。例えば180℃の融点を有するシースポリマーを有する2成分繊維の場合、オーブンの設定温度は、180℃を超え得る。
【0088】
一実施形態において、外層2および6は、重量が10~500g/mの粗デニールスパンボンド不織布層である。このスパンボンドは、コポリエステルを1~50%の量で含む環状構成を有するPET系長繊維である。このコポリエステルが成形プロセス時に溶融して、隣接する層への接着に役立つ。さらに、層2および6の目付は、層4の重量よりも大幅に低い。このことは、最終部品の全体的な軽量およびコスト削減が望まれる状況下で望ましい場合がある。
【0089】
コア層4と外層2および6との間の層、すなわち層3および/または層5は、コポリエステル系スパンボンド不織布層である。このコポリエステル系スパンボンド不織布層は、外層とコア層との結合を強化するために使用され、すなわちこれは接着層である。接着層3、5は、低融点コポリエステルを含む。その重量は、好ましくは1g/m~50g/mの範囲である。
【0090】
図2に、本発明による好ましい3層の不織布積層体7を示す。この積層体の層は、互いに機械的に結合させたものではない。この積層体の層は、溶融のみによって互いに結合させたものである。
【0091】
一実施形態において、コア層4を、後続の成形プロセス時の収縮を回避するために予備収縮させる。コア層4は、100g/m~2000g/mの目付を有する。
【0092】
一実施形態において、外層2および6は、重量が10~500g/mの粗デニールスパンボンド不織布層である。このスパンボンドは、コポリエステルを1~50%の量で含む環状構成を有するPET系長繊維である。存在するすべての層2~6のコポリエステルが成形プロセス時に溶融して、隣接する層への接着に役立つ。これにより、不織布積層体の繊維、特にコポリエステルを含む繊維は、溶融により結合した後に積層体におけるその繊維状構造を部分的または完全に失い得る。結果として生じる構造は、本発明の不織布積層体に包含される。
【0093】
図1の構成と図2の構成との相違は、図2では接着層3および5が使用されていないことにある。代わりに、外層2および6のコポリエステルの量を、通常は増加させる。これは、図3~5で説明される構成のいずれかを採用することで実現することができる。
【0094】
好ましい5層の構成体1または好ましい3層の構成体7を、図1および図2に示すように、すなわち各層の間に溶融による結合は生じさせるが機械的結合は生じさせないことにより形成させた後に、これを、特定の車体下部に望ましい形状へと成形することができる。層状構成体を、好ましくは2つの異なる方法で、すなわち冷間成形プロセスまたは熱間成形プロセスで成形することができる。
【0095】
図3に、パイセグメント型長繊維構成体を示す。この構成体は、スパンボンド不織布層2、3、5および/または6ならびに多成分短繊維(c2)に有用である。示されているパイセグメント型長繊維構成体は、交互にPETセグメント8およびコポリエステルセグメント9からなる8つのセグメントを有する。あるいはこれが、交互にPETセグメント8およびコポリエステルセグメント9からなる16、32または64個のセグメントを有する長繊維構成体を有することも可能である。成形プロセス時に低融点コポリエステルが溶融して、材料に剛性を付与する。
【0096】
図4に、シース・コア型長繊維構成体を示す。この構成体は、スパンボンド不織布層2、3、5および/または6ならびに多成分短繊維(c2)に有用である。示されている2成分長繊維構成体は、低融点コポリマーからなるシース10と、より高い融点を有するPETからなるコア11とからなる。成形プロセス時に低融点コポリエステルが溶融して、材料に剛性を付与する。
【0097】
図5に、サイド・バイ・サイド型長繊維構成体を示す。この構成体は、スパンボンド不織布層2、3、5および/または6ならびに多成分短繊維(c2)に有用である。示されているサイド・バイ・サイド型長繊維構成体は、低融点コポリマーからなる一方の側13と、より高い融点を有するPETからなるもう一方の側12とからなる。成形プロセス時に低融点コポリエステルが溶融して、材料に剛性を付与する。
【実施例
【0098】
[実施例1 - 冷間成形プロセス]
不織布積層体構成の材料、および該不織布積層体を含むアンダーボディシールドの材料:
短繊維(コア層4用):
50%の単成分短繊維(c1):
材料:r-PET
短繊維長:64mm
繊度:6.7dTex。
【0099】
50%の2成分短繊維(c2):
構成:シース・コア型
材料:PETシース;融点180℃のコポリエステルコア
短繊維長:51mm
繊度:5dTex。
【0100】
スパンボンド(外層2および6用):
材料:PET 90%、PETのコポリエステル(CoPET)10%
目付:90g/m
厚さ:0.33~0.59mm
長繊維径:25~60μm。
【0101】
CoPETスパンボンド(接着層3および5用):
PETのコポリエステル(CoPET)100%
目付:16g/m
厚さ:0.15~0.45mm 長繊維径:25~60μm。
【0102】
短繊維を50%:50%の比で混合した。その後、短繊維をカーディングし、クロスラッピングし、ニードリングした。使用した針はGroz-Beckert 36gg細針であり、総ニードリング密度は350本/cmであった。ニードリング深さを、両側で10mmに設定した。次いで、このニードリング済み材料を通風オーブンに通して、10℃/分の速度で200℃まで加熱した。このニードリング済み材料の加熱によって、2成分繊維を活性化させた。これによって、オーブンから出てくる材料が剛性を示した。これにより、コア層4を製造した。次いで、このコア層4を一連のカレンダーローラーに通し、該ローラーにおいて、CoPET接着層3および5と、外層2および6とを両側で導入した。カレンダー圧を両側で25バール、温度200℃に設定して不織布積層体を製造した。この不織布積層体では、層2~6のすべてが溶融により互いに結合されている。層2~6のいずれも、他の層に機械的に結合されてはいない。次いで、この製造した積層体をシートカットした。
【0103】
アンダーボディシールド:
このシートカット済みの材料を、210℃まで加熱したオーブンに3分間(通風オーブンの場合)または1分間(赤外線オーブンの場合)導入した。熱でこの材料が柔らかくなった。次いで、すぐにコールドプレスに移して、この材料を高圧(50トン以上)で成形した。
【0104】
音響測定:
製造したアンダーボディシールドのサンプルを、アルファキャビン(Alpha-Cabin)と称される機器でその音響特性について試験した。アルファキャビンにおいて、試験サンプルを2mmのエアギャップで壁または床の近傍に置く。次いで、キャビン内の一連のセンサーによってサンプルの吸音率を測定する。成形済みの厚さが3mm、4mmおよび5mmであるサンプルのアルファキャビン試験の結果を、以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
図6に、厚さ3mm、4mmおよび5mmの平坦に成形されたサンプルの結果を、適用した音の周波数(横座標)vs.吸音率α(縦座標)によりグラフで示す。吸音率αが高いほど、試験サンプルの音響性能は良好である。試験サンプルの厚さの増加に伴って、吸音率が増加することが分かる。
【0107】
[実施例2 - 冷間成形プロセス]
冷間成形プロセスでは、不織布積層体を、目付に応じて180℃~220℃の温度範囲で1~5分間予熱する。これは、バインダーとして作用する低融点コポリエステルを活性化させることが目的である。バインダーの活性化によってバインダーが溶融して、バージンまたは再生PET繊維間に一種のグルーを形成する。またこれは、短繊維不織布層とスパンボンド不織布層との間のグルーとしても作用する。活性化後、不織布積層体を圧縮金型に配置する。次いで、この圧縮金型は、50トン~200トンのトン数で不織布積層体のすべてまたは一部を圧縮することができる。不織布積層体を、金型内に最大60秒間保持することができる。圧縮した不織布積層体を金型の内部または外部で冷却させて、短繊維におけるおよびスパンボンド構成体におけるコポリエステル繊維をその融点未満に冷却させる。その後、この不織布積層体をその最終形状に変換する。この材料の最終厚さは、目的の用途の要件に応じて2mm~6mmである。次いで、この不織布積層体を必要に応じてトリミングするが、これを、機械的、熱的またはウォータージェットによる切断によって実現することができる。
【0108】
【表2】
【0109】
表2において、「短繊維のみ」のサンプルとは、厚さ2mmのニードリング済みの単層PETウェブであり、これは、再生ポリエステル短繊維50%と残りのPET2成分繊維50%とで構成されていた。この2成分繊維は、75℃~230℃の範囲の融点を有するPETコポリマーシースを備えたPETコアを有していた。
【0110】
「ニードリング済みのスパンボンドを伴うSF」とは、米国特許出願公開第2016/0288451号明細書の開示による層状構造を指す。この層状構造は、目付90g/mの2つのPETスパンボンド外層と、目付800g/mのニードリング済みのPET短繊維の中間層とを有していた。2つのPETスパンボンド外層を、ニードリング済みのPET短繊維の中間層にニードリングした。それにより、2つのPETスパンボンド外層を、ニードリング済みのPET短繊維の中間層に機械的に結合させた。それらの層の溶融による相互の結合は生じなかった。この層状構造の初期の全体厚さは、7.0mmであった。次いで、この層状構造を圧縮成形して、最終厚さを2mmとした。
【0111】
「不織布積層体」とは、本発明による不織布積層体を指す。この不織布積層体は、目付90g/mの2つのPETスパンボンド外層と、目付800g/mの加熱硬化させたニードリング済みのPET短繊維の中間層とを有していた。この2つのPETスパンボンド外層を、この加熱硬化させたニードリング済みのPET短繊維の中間層に、溶融により結合させた。それらの層の機械的な相互の結合は生じなかった。この不織布積層体の初期の全体厚さは、7.0mmであった。次いで、この不織布積層体を圧縮成形して、最終厚さを2mmとした。密度650g/mのニードリング済みの短繊維を、加熱硬化のためにオーブンに送った。この加熱硬化によって収縮が生じた。収縮後、所望の800g/mの重量が得られた。このスパンボンドは、コアにニードリングされてはおらず、溶融により結合されている。使用したスパンボンドはコポリエステルの量が比較的多く、これにより、層間のより良好な結合が保証された。
【0112】
表2から見て取れるように、機械的特性試験の結果から、不織布積層体サンプルが、曲げ強さ、引裂強さおよび引張強さを大幅に向上させることが実証された。理論にとらわれるものではないが、曲げ強さの向上の要因は、バインダー材料が多量に存在し、これによって、平坦面の生成に十分なほどスパンボンドがまっすぐに保持されるためであると考えられる。スパンボンドにはカレンダー加工された連続長繊維が存在するため、スパンボンド自体を包含させることが、引裂強さの向上に役立つ。
【0113】
[実施例3 - 熱間成形プロセス]
熱間成形プロセスでは、不織布積層体を一対の高温圧縮金型プレートの間に配置する。次いで、これらのプレートを、材料の厚さ未満の所望の厚さに近づける。例えば、不織布積層体の厚さが6mmの場合には、プレート間の厚さは2mm~5mmである。これらの成形プレートを、180℃~220℃の範囲の温度に加熱する。次いで、不織布積層体を目付に応じて1~3分間圧縮し、これにより低融点コポリエステル(またはバインダー)を活性化させる。バインダーの活性化によってバインダーが溶融して、バージンまたは再生PET繊維間にグルーを形成する。またこれは、短繊維とスパンボンドとの間のグルーとしても作用する。不織布積層体のすべてまたは一部の圧縮を、50トン~200トンのトン数で行うことができる。圧縮した不織布積層体を金型の内部または外部で冷却させて、短繊維におけるおよびスパンボンド構成体におけるバインダー繊維をその融点未満に冷却させる。その後、この不織布積層体をその最終形状に変換する。この材料の最終厚さは、目的の用途の要件に応じて2mm~6mmである。次いで、この不織布積層体を必要に応じてトリミングするが、これを、機械的、熱的またはウォータージェットによる切断によって実現することができる。
【0114】
【表3】
【0115】
「短繊維のみ」、「ニードリング済みのスパンボンドを伴うSF」および「不織布積層体」は、実施例2に記載したものと同一であった。表3から見て取れるように、表2と同様の傾向が認められ、不織布積層体サンプルの曲げ強さ、引裂強さおよび引張強さの大幅な向上が実証された。熱間成形サンプルは、冷間成形サンプルと比較して、曲げ強さおよび引張強さの値が高い。理論にとらわれるものではないが、これは、プレートの高温表面がサンプルに直接接触して繊維を溶融させ、ニードリング済みのウェブの両側に薄いプラスチックシートを形成するためであると考えられる。
【0116】
[実施例4 - 重量変動]
1000g/m、1200g/mおよび1400g/mのさまざまな重量で、厚さ2mmの成形済み不織布積層体サンプルについて機械的特性も試験した。試験結果を表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
表4から見て取れるように、目付に対する機械的特性の線形的な向上が認められた。スパンボンドの重量は変わらないため、重量が大きいほど短繊維の量が多いことを意味する。短繊維の量が多いほど、2成分繊維の割合が高くなり、よってバインダー材料が増えるため、剛性が増し、かつ機械的特性値が向上する。
【0119】
[例5(比較) - 機械的に結合させた不織布積層体]
図7a、7bおよび7cは、米国特許出願公開第2016/0288451号明細書によって製造されたニードリング済みの不織布の顕微鏡画像である。それらの繊維層は、ニードリングで機械的に接合されており、すなわちそれらは機械的に互いに結合されている。参照番号14は、ニードリングに起因して繊維密度が比較的低い領域を示す。ある層(コア層)のいくつかの繊維が、隣接する層(スパンボンド外層)へと延び、それを貫通していることが分かる。それにより各繊維の交絡が形成され、これによって2層間の機械的結合が生じる。このような結合は、層状構造のさらなる圧縮および成形時に変形を引き起こすことがあり、波状の外観(象皮状物)を伴う不均一な生成物を招く。
【0120】
本発明の不織布積層体は、積層体の層を溶融のみによって互いに結合させることで、このような欠陥を回避することができる。したがって、本発明の積層体には機械的結合は存在せず、溶融により結合させた層しか存在しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c