(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】木ねじ構造
(51)【国際特許分類】
F16B 25/10 20060101AFI20220719BHJP
F16B 25/02 20060101ALI20220719BHJP
F16B 25/04 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
F16B25/10 A
F16B25/02
F16B25/04 B
F16B25/04 Z
(21)【出願番号】P 2020120281
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2020-07-14
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519450019
【氏名又は名称】徐國泰
(73)【特許権者】
【識別番号】519450020
【氏名又は名称】徐敏豪
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】徐國泰
(72)【発明者】
【氏名】徐敏豪
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第00471179(US,A)
【文献】実開昭58-067110(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第0409655(KR,Y1)
【文献】特開2012-180919(JP,A)
【文献】特開2000-179520(JP,A)
【文献】米国特許第06109850(US,A)
【文献】特表2008-510117(JP,A)
【文献】実開平06-043321(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0160440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00- 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び軸を備えた、木ねじ構造であって、
前記頭部には、下向きに延びた軸が一体成形され、
前記軸は、胴部及び螺入部を有し、前記螺入部は、ねじ部及びカット部を有し、
前記胴部の断面外径は、前記ねじ部及び前記カット部の断面底径より大きく、
前記ねじ部の前端には、先端部が設けられ、
前記ねじ部の底径周縁には、前記先端部から前記頭部に向かって螺入ねじが螺旋状に配置され、
前記ねじ部は、前記カット部に接続され、
前記カット部の底径表面には、切削ユニットが設けられ、
前記カット部と前記頭部との間には、前記胴部が設けられ、
前記カット部の前記切削ユニットの外径は、前記胴部の外径より小さい
又は等しいことを特徴とする、
木ねじ構造。
【請求項2】
前記切削ユニットは、前記カット部の底径表面に螺旋状に配置された複数のねじ山を有することを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項3】
前記切削ユニットは、前記カット部の底径表面に軸方向で配置された複数の切削歯を有することを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項4】
前記切削ユニットは、前記カット部の底径表面に
設けた複数の切削面
を有することを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項5】
前記ねじ部の前記先端部には、1つのカット溝が形成され、前記先端部に螺旋状に配置された前記螺入ねじは、前記カット溝により分断されることを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項6】
前記カット部と前記ねじ部との比率は、1:3~1:8であることを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項7】
前記カット部と前記ねじ部との比率は、1:3~1:8であることを特徴とする請求項5に記載の木ねじ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木ねじ構造に関し、特に、軸方向応力、せん断力などの応力に耐え得る木ねじ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木ねじは、オブジェクトを固定又は結合するために広く利用され、従来の木造建築工法における梁構造の結合に最もよく利用される。梁と柱とを組み合わせる構造は、壁及び床を構造上組立てるため、組立及び接合の工法が建物の構造の安全に本質的に悪影響を与えた。
ねじを利用した梁と柱との接合工法は、以下(1)及び(2)の2種類に大きく分けられる。
【0003】
(1)純木材の接合
大型の木材を利用し、横架材の荷重を受けた後、木ねじを梁、柱に直接螺入して接合する。
(2)ハードウェアコンポーネントを併用して柱・梁を接続する
上述した方式を利用する他、ハードウェアコンポーネントを組み合わせて木材柱・梁間を接続・嵌入させ、荷重を伝える支持力として用いる。
【0004】
図9及び
図10に示すように、従来の木ねじは、頭部31及び軸32を含む。頭部31には、下向きに延びた軸32が延設されている。頭部31は、ねじ用工具で木ねじを螺合する部位として用いる。軸32は、頭部31から延びる。軸32の頭部31から遠い一端には、先端部33が設けられる。軸32の周縁には、先端部33から頭部31に向かってねじ山34が螺旋状に形成されている。ねじ山34の上方には、リーマねじ山35が形成されている。実際に使用する際、先端部33をオブジェクトに押し付け、ねじ山34により切削しながら螺入させると、オブジェクトをねじ止めすることができる。
しかし、従来の木ねじを上述した2種類の接合工法で使用する場合、水平又は垂直構造面に関連する作用力と、荷重壁を支える梁からの軸引張力などを受け、接合した部材に引張力とが発生すると、ねじ部が設けられていない軸部分には、接触面との間に剪断力が発生するため、従来技術には以下(1)~(3)の欠点があった。
【0005】
(1)リーマねじ山の外径が大きすぎたため、予め穿孔が形成された鉄板に挿通させることは容易でなかった(ハードウェアコンポーネントを組み合わせて使用するとき)。
(2)リーマねじ山が平滑な軸に形成されていたため、その直径は軸より大きく、螺入した後に構造梁と木ねじとの間の空隙が大きくなりすぎることがあった。
(3)リーマねじ山が軸の一部長さを占めるため、剪断力を受ける部分が減少し、リーマねじ山が損壊してしまう虞があった。
【0006】
図11及び
図12に示すように、木ねじ4は、頭部41、ねじ無し部42、エンボス部43及びねじ部44を含む。ねじ部44は、尖端を有するとともに、表面にねじ441が分布され、ねじ部44の上端にはエンボス部43が接続され、エンボス部43の外径とねじ無し部42の外径とは等しい。木材5に螺入する際、ねじ部44上のねじ441を介して切削し、大部分の木質繊維に螺入するとともに、エンボス部43により木質繊維を切断しない状態下、径方向で外方に大きめの孔51が形成され、ねじ無し部42を嵌入させ、噛み砕かれた木屑が大きめの孔51に収容され、ねじ無し部42が密着される。
【0007】
しかし、従来技術には、以下(1)及び(2)の問題点があった。
(1)ねじ無し部に属するエンボス部の製作方式は、エンボス部の底径の凹んだ箇所により、金型を直接内方に押圧してねじ無し部上にプレス成形し、これにより断面積が小さくなり、ねじ無し部全体が耐え得るトルクが小さくなる。
(2)エンボス部の外径と胴部の直径が同じであり、エンボス部が径方向で外側に開くと、噛み砕かれた木屑が大きめの孔に堆積し続けるため、ねじ無し部が木材に螺入されると、砕かれた木屑がねじ無し部に密着し、木材の内孔壁とねじとの間の接触面で、木材と砕かれた木屑とが摩擦接触し、同じ材料の接触間の摩擦係数が大きくなり、螺入の際の抵抗力が徐々に大きくなるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、杆径を増大させ、ねじ無し部の胴部を、接合する木材又はハードウェアコンポーネントに一致させ、全体の螺合安定性と結合強度を高める木ねじ構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、軸の頂端に頭部が設けられ、上述した軸は、胴部及び螺入部に分けられ、上述した螺入部は、ねじ部及びカット部を含み、上述したカット部の表面には、切削ユニットが設けられ、カット部の切削ユニットの外径は、上述した胴部の外径より小さく又は等しく設計されているため、従来技術の軸が大きめの径を有する胴部と比べ、大きめの径の胴部がオブジェクトに螺入されるときに発生する横向きの力を減らす木ねじ構造を提供することにある。
本発明の第3の目的は、切削ユニットがオブジェクトを旋回させて平らな内切削孔を削り出して大きめの径の胴部に対応させ、胴部と内切削孔とが全体的に完全に密着され、オブジェクトとの間の空隙を減らし、高引張耐力及び高剪断力に耐え得る木ねじ構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るねじ山が無い木ねじ構造を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造の使用状態を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す部分拡大図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す横断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る木ねじ構造を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る木ねじ構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の技術手段及びそれにより達成可能な効果を、より完全かつ明白に開示するために、開示した添付の図面及び符号と併せて本発明を以下に詳説する。
【0011】
まず、
図1~
図3を参照する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るねじ山が無い木ねじ構造を示す側面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す側面図である。
図1~
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造は、少なくとも頭部1及び軸2から構成されてなる。頭部1には、下向きに延びた軸2が一体成形されている。
【0012】
上述した軸2は、胴部21及び螺入部22を含む。上述した螺入部22は、ねじ部221及びカット部222を含む。上述した胴部21の断面外径aは、上述したねじ部221及び上述したカット部222の断面底径b,cより大きい。上述したねじ部221の前端には、先端部2210が設けられ、上述したねじ部221の底径周縁には、上述した先端部2210から上述した頭部1に向かって螺入ねじ2211が螺旋状に配置される。上述したねじ部221は、上述したカット部222に接続されるとともに、上述したカット部222の底径表面には、上述したねじ部221から上述した頭部1に向かうに従って外径dが徐々に増大した切削ユニット2221が設けられる。上述したカット部222と上述した頭部1との間には、上述した胴部21が設けられ、上述したカット部222の切削ユニット2221の外径dは、上述した胴部21の外径aより小さい。
【0013】
また、ここで本発明のカット部222は、上述した螺入部22の範囲内に設けられ、ねじ部221の長さを大幅に短縮し、螺入部22の長さが同じである条件下で、本発明の木ねじに上述したカット部222が設けられているため、ねじ部221の長さを減らし、螺入部22の長さが同じである条件下で、ねじ部221の長さを減らす。また、上述したカット部222と上述したねじ部221との比率は、1:3~1:8の範囲でもよい。ねじ部221の長さを減らすと、以下(1)及び(2)の長所を有する。
【0014】
(1)ねじ部221の螺入長さが短くなることで、螺合過程で大きな摩擦力が発生せず、螺入の抵抗力を減らすことができる。
(2)ねじ部221の螺入長さが短くなることで、木材のオブジェクト内に嵌入されるねじが密集し過ぎ、大きすぎるねじ面上の横向き分力により木材が割れ、ねじによるオブジェクトの挟持力が低下して緩んでしまうという、従来技術の問題点を改善することができる。
【0015】
図1~
図7を参照する。実際に実施するとき、上述したカット部222の切削ユニット2221は、
図1~
図7に示すような多種類の実施形態を有する。以下それらについて説明する。
【0016】
第1実施形態:
図3に示すように、上述した切削ユニット2221は、ねじ切り方式により上述したカット部222の底径表面に形成される。上述した切削ユニット2221は、上述したカット部222の底径表面に螺旋状に配置された複数のねじ山2221Aを有する。
【0017】
第2実施形態:
図7に示すように、上述した切削ユニット2221は、クランプ方式により、上述したカット部222の底径表面にクランプ成形される。上述した切削ユニット2221は、上述したカット部222の底径表面に軸方向で複数の切削歯2221Bが設けられる。
【0018】
第3実施形態:
図8に示すように、上述した切削ユニット2221は、鍛造方式を採用し、上述した切削ユニット2221により上述したカット部222の底径表面に直接鍛造し、一体成形される。上述した切削ユニット2221は、上述したカット部222の底径表面に鍛造され、複数の切削面2221Cが一体成形される。
【0019】
図1~
図6を参照する。
図1~
図6に示すように、実際に実施するとき、木ねじの上述したねじ部221の先端部2210には、1つのカット溝2212が形成される。先端部2210に螺旋状に配置された螺入ねじ2211は、カット溝2212により分断される。木ねじは、上述した先端部2210によりオブジェクトAに位置決めされ、上述した螺入部22のねじ部221の上述した先端部2210により形成した螺入ねじ2211がオブジェクトAに形成されるとともに、上述したカット溝2212を利用して確実に位置決めした状態で、オブジェクトAを切削して穴開けするため、スムーズに屑を排出させることができ、深くなるに従い、上述したカット部222の表面の切削ユニット2221により切削作業の効率を高める。
上述したカット部222の切削ユニット2221にねじ切り、クランプ又は鋳造成形を採用した場合でも切削機能は好ましく、木ねじを螺入して切削するとき、カット部222により、まずオブジェクトAをカットして大径の胴部がオブジェクトAに螺入されると、横方向の力が発生する上、上述したカット部222の切削ユニット2221の外径dが上述した胴部21の外径aより小さく
又は等しくなるように設計されているため、上述した切削ユニット2221によりオブジェクトAを回転切削して平らな内切削孔を形成して上述した胴部21に対応し、螺入され続ける過程で発生する屑が胴部21と螺入部22との間の移行域Sに残留する(
図5を参照する)。これによって、胴部21の周囲まで屑を上方へ送ることができなくなり、大径の上述した胴部21が内切削孔の全体に完全に密着されるようにし、オブジェクトAとの間の空隙が減るとともに、胴部21がオブジェクトAに進入されるときに、内切削孔との間で、異材(例えば、金属及び木材)との摩擦係数が下がり、高引張耐力及び高剪断力に耐えることができる。
【0020】
上述したことから分かるように、本発明の木ねじ構造は、以下(1)~(5)の長所を有する。
(1)カット部の切削ユニットの外径を上述した胴部の外径より小さく又は等しくなるように設計し、軸が大きめの径を有する従来技術と比べ、径が大きめの胴部がオブジェクトに螺入されるときに発生する横方向の力を減らすことができる。
(2)カット部の切削ユニットの外径を上述した胴部の外径より小さく又は等しくなるように設計し、切削ユニットがオブジェクトを旋回させて平らな内切削孔を削り出して大きめの径の胴部に対応させ、胴部と内切削孔とが全体的に完全に密着され、オブジェクトとの間の空隙が減るため、高引張耐力及び高剪断力に耐えることができる。
(3)カット部により、まずオブジェクトをカットして螺入過程で発生する屑が胴部と螺入部との間の移行域に残留し、胴部21の周囲まで屑を上方へ送ることができなくなり、胴部と内切削孔の異材との間の摩擦係数が下がる。
(4)カット部を螺入部に設置し、螺入部の長さが同じである条件下で、ねじ部の長さが小さいカット部を設置するため、螺合過程でねじ部が密集し過ぎて摩擦力が大きくなりすぎることを防ぎ、螺入の際の抵抗力を減らすことができる。
(5)カット部を螺入部に設置し、螺入部の長さが同じである条件下で、ねじ部の長さが小さいカット部を設置するため、螺合過程でねじ部が密集し過ぎてねじ山面上の横向きの力を減らし、オブジェクトが割れるリスクを減らすことができる。
【符号の説明】
【0021】
1 頭部
2 軸
21 胴部
22 螺入部
221 ねじ部
222 カット部
2210 先端部
2211 螺入ねじ
2212 カット溝
2221 切削ユニット
2221A ねじ山
2221B 切削歯
2221C 切削面
A オブジェクト
S 移行域
4 木ねじ
5 木材
31 頭部
32 軸
33 先端部
34 ねじ山
35 リーマねじ山
41 頭部
42 ねじ無し部
43 エンボス部
44 ねじ部
51 大きめの孔
441 ねじ