(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】エスカレータ
(51)【国際特許分類】
B66B 29/02 20060101AFI20220719BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20220719BHJP
B66B 23/22 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B66B29/02 B
B66B31/00 E
B66B23/22 Z
(21)【出願番号】P 2020208030
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅人
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-162963(JP,A)
【文献】特開2013-216406(JP,A)
【文献】米国特許第06530465(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/02
B66B 31/00
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の下階と上階とに架設され、前記下階に設けられた第一の水平部と、前記上階に設けられた第二の水平部と、前記第一の水平部と前記第二の水平部とを結ぶ傾斜部と、を有し、無端状に連結された複数の踏段が、前記第一の水平部、前記第二の水平部、前記傾斜部を走行するエスカレータにおいて、
前記踏段の走行方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、
前記スカートガードの前記傾斜部において、前記踏段の走行軌道であるノーズライン上に重なるよう連続的に設けられ、左右の前記スカートガードの間に光を照射する光源装置と、
前記踏段における踏板の周縁の内、前記踏板とライザとが結合する角部を含む一辺の端部が位置する前記踏段の側方に設けられ、前記光源装置から照射される光を取り入れる受光部と、前記踏段の長手方向に沿って設けられ、前記受光部から受光された光を伝送して発光する導光手段と、前記踏段の表面の一部に前記導光手段を被覆して設けられ、前記傾斜部にて前記導光手段により発光された光の色を外部に視認可能とした透過部と、から構成され、
前記スカートガードの前記第一の水平部及び前記第二の水平部において前記ノーズライン上に重なる位置に光源装置を設けないことにより、前記第一の水平部もしくは前記第二の水平部に位置する場合と前記傾斜部に位置する場合とで視認可能となる状態が異なる第一のデマケーション部と、
前記踏段における前記第一のデマケーション部と対向する他の辺に設けられ、前記第一のデマケーション部とは視覚的に異なり、着色されたクリートから構成される第二のデマケーション部と、
を具備するエスカレータ。
【請求項2】
建屋の下階と上階とに架設され、前記下階に設けられた第一の水平部と、前記上階に設けられた第二の水平部と、前記第一の水平部と前記第二の水平部とを結ぶ傾斜部と、を有し、無端状に連結された複数の踏段が、前記第一の水平部、前記第二の水平部、前記傾斜部を走行するエスカレータにおいて、
前記踏段の走行方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、
前記スカートガードの前記傾斜部において、前記踏段の走行軌道であるノーズライン上に重なるよう断続的に設けられ、左右の前記スカートガードの間に光を照射する光源装置と、
前記踏段の側方に設けられ、前記光源装置から照射される光を取り入れる受光部と、
前記踏段における踏板とライザとが結合する角部近傍に、前記踏段の長手方向に沿って設けられ、前記受光部から受光された光を伝送して発光する導光手段と、
前記踏段の表面の一部に前記導光手段を被覆して設けられ、前記傾斜部にて前記導光手段により発光された光の色を外部に視認可能とした透過部と、
を具備するエスカレータ。
【請求項3】
建屋の下階と上階とに架設され、前記下階に設けられた第一の水平部と、前記上階に設けられた第二の水平部と、前記第一の水平部と前記第二の水平部とを結ぶ傾斜部と、を有し、無端状に連結された複数の踏段が、前記第一の水平部、前記第二の水平部、前記傾斜部を走行するエスカレータにおいて、
前記踏段の走行方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、
前記スカートガードの前記傾斜部において、前記踏段の走行軌道であるノーズライン上に重なり、その間隔は、前記第一の水平部もしくは前記第二の水平部に近づくほど狭くなるように断続的に設けられ、左右の前記スカートガードの間に光を照射する光源装置と、
前記踏段の側方に設けられ、前記光源装置から照射される光を取り入れる受光部と、
前記踏段における踏板とライザとが結合する角部近傍に、前記踏段の長手方向に沿って設けられ、前記受光部から受光された光を伝送して発光する導光手段と、
前記踏段の表面の一部に前記導光手段を被覆して設けられ、前記傾斜部にて前記導光手段により発光された光の色を外部に視認可能とした透過部と、
を具備するエスカレータ。
【請求項4】
前記光源装置は、前記傾斜部に加えて、さらに前記第一の水平部と前記第二の水平部の一方もしくは双方に、左右の前記スカートガードの間に光を照射するよう、設けられることを特徴とする請求項
2または請求項
3に記載のエスカレータ。
【請求項5】
前記光源装置は、運行の方向に応じて、前記第一の水平部と前記第二の水平部のいずれか一方の降車側の水平部では、前記傾斜部と異なる色を発光することを特徴とする請求項4に記載のエスカレータ。
【請求項6】
前記光源装置は、前記第一の水平部、前記傾斜部、前記第二の水平部において、それぞれ異なる色を発光することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のエスカレータ。
【請求項7】
前記透過部は、透明な樹脂で構成され、前記踏段における前記透過部の対向した部分とは異なる色を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のエスカレータ。
【請求項8】
前記導光手段は、光を拡散し表面を光らせる光ファイバーであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータ、特に光源装置を有するエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータの利用者に対して、足元の注意喚起を行うために、様々な工夫が施されている。例えば、踏段と乗降口との境目を認識しやすいように目立つカラーリングを施しているものやコム付近に照明を備えているものがある。また、隣接した踏段との境目から光が漏れ出すように、踏段下のトラスから光を当てているものが存在する。
【0003】
いずれも、利用者に対して、進行方向へ動作中の踏段と建屋に固設されている乗降口の周辺における注意を促すものである。
【0004】
踏段自体にも、靴や衣類の巻き込まれを防止する観点で、引き込まれ側の端部は、視認性の高い黄色等の線、すなわちデマケーションラインで縁どられている。色付けされているもの以外には、踏段自体に電池及びライトを備え、設けた電池からの電力の供給によりデマケーションラインの一部を照らすものも存在する。
【0005】
また、デマケーションラインは、踏板における引き込まれ側の三方向のみに設けたものと全方向の四方向に設けたものが考えられるため、いずれかを選ばなければならないという現状があった。三方向デマケーションの場合は、乗降口近傍、すなわちエスカレータの水平部において、隣接部分が黄色と黒色であるように色が異なるため、踏段と踏段との境目が把握しやすい。四方向デマケーションの場合は、水平部では、隣接した踏段の境界が視認しにくい一方で、傾斜部においては端部を視認しやすいという利点がある。また、このように四方向をカラーリングすることで、傾斜部において、遠方からでも踏段の動きが分かるようになる。つまり、水平部では三方向デマケーションが有効である一方、傾斜部では四方向デマケーションが有効であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-240335号公報
【文献】特開2018-167931号公報
【文献】特開2013-216406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの利点も享受するため、エスカレータの動作や踏段の位置に応じて、視認可能な色を変化させることができれば視覚的効果が強いが、特定の色に塗装されたデマケーションラインは、動作中に色を変更することは難しい。
【0008】
また、たとえ光源を用いて色を変化させる場合でも、電池により電力が供給される構成を有する踏段では、電池の消耗が進む度にエスカレータの運転を停止して別の電池に取り替える必要がある。エスカレータの踏段は、チェーンの動きに連動して回転する構造を有しているため、踏段に直接電力を供給することは難しい。加えて、場所に応じて色を変化させるとしたら、各踏段への発光制御が必要となる。
【0009】
そこで、本実施形態では、各踏段への制御は必要とせず、場所に応じて利用者の視認可能な色が変化するデマケーションラインを有する踏段、特に各踏段から発せられる光を介して乗車中の利用者に注意喚起を行うことのできるエスカレータを提供することを目的とする。これにより、傾斜部において踏段のライザ側の端部が把握しやすい一方、水平部では前後の境界の色が同じであるため踏段ごとの境界が把握し難いという、四方向デマケーションの難点を解消する。同時に、連続的に供給できる光源を利用することで、より視覚的に利用者の注意を引きつけることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、実施形態のエスカレータは、建屋の下階と上階とに架設され、前記下階に設けられた第一の水平部と、前記上階に設けられた第二の水平部と、前記第一の水平部と前記第二の水平部とを結ぶ傾斜部と、を有し、無端状に連結された複数の踏段が、前記第一の水平部、前記第二の水平部、前記傾斜部を走行するエスカレータにおいて、前記踏段の走行方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、前記スカートガードの前記傾斜部において、前記踏段の走行軌道であるノーズライン上に重なるよう連続的に設けられ、左右の前記スカートガードの間に光を照射する光源装置と、前記踏段における踏板の周縁の内、前記踏板とライザとが結合する角部を含む一辺の端部が位置する前記踏段の側方に設けられ、前記光源装置から照射される光を取り入れる受光部と、前記踏段の長手方向に沿って設けられ、前記受光部から受光された光を伝送して発光する導光手段と、前記踏段の表面の一部に前記導光手段を被覆して設けられ、前記傾斜部にて前記導光手段により発光された光の色を外部に視認可能とした透過部と、から構成され、前記スカートガードの前記第一の水平部及び前記第二の水平部において前記ノーズライン上に重なる位置に光源装置を設けないことにより、前記第一の水平部もしくは前記第二の水平部に位置する場合と前記傾斜部に位置する場合とで視認可能となる状態が異なる第一のデマケーション部と、前記踏段における前記第一のデマケーション部と対向する他の辺に設けられ、前記第一のデマケーション部とは視覚的に異なり、着色されたクリートから構成される第二のデマケーション部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るエスカレータの側面図である。
【
図2】実施形態に係るエスカレータの斜視図である。
【
図6】踏段における長手方向の断面図であり、
図3のy-y断面図である。
【
図7】実施形態に係るエスカレータの一部を示す側面図(1)である。
【
図8】エスカレータの一部を示す側面図(2)である。
【
図9】エスカレータの一部を示す側面図(3)である。
【
図10】エスカレータの一部を示す側面図(4)である。
【
図11】エスカレータの一部を示す他の側面図(5)である。
【
図12】エスカレータの一部を示す他の側面図(6)である。
【
図13】踏段の他の形態を示す平面図(2)である。
【
図14】踏段の他の形態を示す平面図(3)である。
【
図15】踏段の他の形態を示す平面図(4)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。以下の実施形態の説明では、エスカレータを例に説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0013】
エスカレータ10の構造について、
図1を参照して説明する。
図1は実施形態に係るエスカレータ10の側面図であり、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0014】
図1に示すように、トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット(駆動輪)24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0015】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット(従動輪)26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、
図1に示すように、複数の踏段30の前輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の前案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。後輪302は、
図1に示すようにトラス12に固定された後案内レール25を走行する。
【0016】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0017】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が設けられている。
【0018】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
踏段30は、図示せぬ乗客を搬送するための本体部として、平坦状に形成される踏板303と湾曲状に形成されるライザ(蹴上部)304とを有している。上昇運転の場合、乗客は下階側の乗降板34から踏段30の踏板303に乗車する。踏段30が上階の乗降口に達すると、乗客は踏段30の踏板303から上階側の乗降板32へ降車する。下降運転の場合、乗客は上階側の乗降板32から踏段30の踏板303に乗車する。踏段30が下階の乗降口に達すると、乗客は踏段30の踏板303から下階側の乗降板34へ降車する。
【0020】
図2は、建屋1において、利用者の見える部分を示すエスカレータ10の斜視図である。
図2に示すように、架け渡された踏段30の一部が視認可能となっており、スカートガード44、欄干36、手摺りレール39がエスカレータ10の運行方向に延びている。乗降板34は下階側の乗降口に被覆されて設けられることで、下階の建屋1の床面に連結している。スカートガード44は、水平部から傾斜部にかけて照明装置45を備えており、照明装置45は、スカートガード44の内側に配置された照明灯(光源装置)と、スカートガード44と不図示の内レッジとの間に介在された照明カバーとで構成されている。照明カバーは、アクリル板材やガラス板材、もしくは樹脂等、透明もしくは半透明の部材を用いる。照明装置45の光源としての照明灯は、蛍光ランプ等ライン状に配置されたものでも、LEDランプ等が複数配置されたものでも構わない。後者の場合、格子状に配置されたドットマトリックスから形成されたLEDランプを用いることがある。照明装置45の照明灯は、ライン状もしくは間隔を空けて複数のスポット状に配置する。エスカレータ10の動作中であれば、照明灯は点灯する。
【0021】
図3は、踏段30の拡大斜視図であり、
図4は、平面図である。踏段30は、踏板303及びライザ304を組み合わせた走行に必要な本体部と、足元の巻き込まれ防止を目的とした案内表示であるデマケーション部305とを備えている。
【0022】
本体部には、人が乗る部分である踏板303と、踏板303に垂直なライザ304と、踏板303とライザ304が取り付けられる中空状の支持枠306と、支持枠306の前部に左右一対の前輪301と、支持枠306の後方に左右一対の後輪302とが設けられており、トラス12内の各案内レールに沿って走行する。踏板303とライザ304はクリートと呼ばれる複数の溝部を有しており、踏板303のクリートは乗降口のコム60、62とかみ合うように構成され、ライザ304のクリートは隣接の踏段30の端部とかみ合うように構成されている。
【0023】
デマケーション部305は、踏段30と踏段30の境界を目立たせるための線で、踏板303の端部四方向に縁どって設けられる。段差部の境界であるデマケーションを明確にすることで、踏段30の周縁の隙間に乗客が近接することのないように注意を促す。
【0024】
図4に示すように、デマケーション部305は、警告表示部305Aと、注意喚起ライン305Bとから成る。警告表示部305Aは、透明な樹脂のクリートで構成されており、踏板303とライザ304とが結合される角部を含む踏板303上に、踏板303の長手方向の端部まで延びるように設けられる。注意喚起ライン305Bは、幅3センチメートル程度のプラスチック製のものが用いられ、例えば黄色や黄緑色のような視認性の高い色に着色されたクリートで構成されている。踏板304において、注意喚起ライン305Bの内、警告表示部305Aと対向した一辺を異なる配色とすることで、隣接した踏段30との境界が分かり易くなる。
【0025】
図5は、
図3のx-x断面図であり、
図6は、
図3のy-y断面図である。
図5及び
図6に示すように、警告表示部305Aは、透明な樹脂から成る透過部307と、導光板である光ファイバー308とで構成されている。また、警告表示部305Aは、端部から光を取り入れるよう受光部として開口している(
図6参照)。透過部307が透明な樹脂であることにより、踏段30を上から見たとき、光ファイバー308が透過して見えるようになっている。透過部307は、警告表示部305Aの内側もしくは反対側の色が少なからず透過できるようであれば、無色であるか着色されているかは問わない。光ファイバー308は、受光部から取り入れた光を、全反射や屈折により拡散させ、踏板303の側方部から中心部に伝播することで光を伝送させる構造になっており、取り入れた光は光ファイバー308の外周から発光する。光を取り入れないときは、透過部307の下部にあるライザ304もしくは支持枠306の一部の色が視認可能となる。
【0026】
本実施形態においては、スカートガード44の照明装置45から発された光を受光部から取り入れ、踏板303上の一部、すなわち警告表示部305Aを灯らせる。照明装置45の照明の色を変えることで、警告表示部305Aの発色を変更することが可能である。照明の色は、例えば、注意喚起ライン305Bと同様の黄色、もしくは異なる白色、赤色、青色等に設定されていてもよい。
【0027】
次に、
図7から
図10を用いて、本実施形態のエスカレータ10の運転中における照明装置45の発光箇所及び踏段30における光の取り入れ方を説明する。エスカレータ10は上昇運転をするものとし、乗客は下階の乗降板34から踏段30に乗り込むものとして説明する。なお、動作として運転の向きが反対となるのみであるため、下降運転についての説明は省略するものとする。
【0028】
図7から
図10は、エスカレータ10の一部を示す側面図である。
図7・
図8は傾斜部、
図9・
図10は水平部を示す。スカートガード44に設けられた照明装置45は、傾斜部においては、少なくとも踏段30のノーズライン上に位置する。ノーズラインとは、踏段30の踏面先端がたどる走行軌道のことである。
【0029】
図7には、照明装置45がノーズラインに重なるよう光源は帯状に設けられていることを示し、
図8には、光源である照明灯45Aを示す。照明灯45Aは、連続的すなわちライン状、もしくは、
図8に示すように、断続的すなわちスポット状に設けられる。
【0030】
前述したように、踏段30の警告表示部305Aは、エスカレータ10の運行中、特に傾斜部において照明装置45から光を取り入れ発光する(
図6・
図7参照)。エスカレータ10の動作中であれば、照明装置45が点灯しているため、運転制御とは別に照明装置45の制御等は必要ない。
【0031】
また、傾斜部において、
図8に示すように、長手方向にスポット状の照明灯45Aが設けられている場合、その間隔を均一にすることで、動作中の踏段30上では警告表示部305Aは点滅しているように見える。光源である照明灯45Aの間隔は略等間隔とし、特に、一つの照明灯45Aの長さ及び照明灯45Aの先端から隣接した次の先端までの距離が均一になっていることが望ましい。これにより、異なる踏段30であっても、警告表示部305Aは同じタイミングで、点灯することとなる。
【0032】
もしくは、傾斜部において、水平部に近づくにつれて、照明装置45の照明灯45Aの一つのスポットの長さ及び各スポットの間隔を狭めていくとしてもよい。このようにすると、踏段30において、点滅しているように見える速度が変わる。照明装置45の一つのスポットの長さ及び各スポットの間隔を狭めることで、電子的に信号を送らず、照明装置45は点灯したままで、警告表示部305Aに光が入る速度が変わるため、点滅しているように見せることが可能である。
【0033】
一方、水平部においては、照明装置45の光源は、踏板303に重なる位置に連続的には設けられないことが望ましい。つまり、水平部には、照明装置45を設けない、または、照明装置45の照明灯45Aは設けない、照明装置45を踏板303の走行軌道から外れた場所に設ける(
図9参照)、照明装置45の照明灯45Aを断続的に設ける(
図10参照)、のいずれかであることが望ましい。本実施形態では、傾斜部では連続的に照明灯45Aを設け、水平部では照明灯45Aは設けないものとする。
【0034】
警告表示部305Aは、照明装置45から発した光を受光部から取り込み、光ファイバー308を介して光り、灯った光が透過部307から視認可能となる。そのため、照明装置45本体もしくは照明灯45Aを設けない場合、警告表示部305Aは、水平部では光が伝送されないこととなる。傾斜部では光が伝送されることにより視認可能となるため、踏板303の周縁が発色し、四方向デマケーションとして機能する一方、水平部では隣接した踏段30との境界が分かり易い三方向デマケーションとして機能する。
【0035】
照明装置45を走行軌道から外れた場所に設ける場合は、水平部では光が伝送されず、照明装置45もしくは照明灯45Aを有さない場合と同様のメリットが生じつつ、乗降の際の足元を照らすことが可能である。
【0036】
照明灯45Aを断続的に設ける場合は、水平部においても光が伝送されるが、断続的すなわち点滅した光が乗客の目に届くため、乗降の際に注意を促すことができる。水平部における発光の色は、傾斜部と同じに限らず、さらに水平部下階側と水平部上階側で異なることとしてもよい。
【0037】
また、光の伝送される位置に光源を設ける場合は、水平部において、照明灯45Aを断続的に設けることが望ましいとしたが、光源から発光する色が注意喚起ライン305Bすなわち黄色のデマケーションと異なる場合であれば、隣接した踏段30との境界が明確に視認可能となるため、連続的に設けても構わない。
【0038】
水平部だけでなく傾斜部においても、下階側、中央、上階側等場所ごとに照明装置45の色を変えてもよい。もしくは運行方向に応じて場所ごとに異なる色を発光する。警告表示部305Aの発光の色は限定しないため、同色でもそうでなくても構わない。
【0039】
このように、
図7及び
図10に示すように、踏段30のノーズライン上に位置する警告表示部305Aは、材質及び色が他のデマケーション部305とは異なるため、視覚的に分かり易い。
【0040】
水平部において、前後の踏段30の境界の色が異なるため隣接する踏段30同士の境界が把握しやすい三方向デマケーションと、傾斜部において、ライザ304や踏板303とは異なる色で色付けされているため端部が把握しやすい四方向デマケーションの、双方の利点を活かすことができる。他のデマケーション部305のように、あらかじめ黄色等で塗られている訳ではないため、光の色を変えることで、踏段30の境界を確認し易く構成することが可能である。
【0041】
(スカートガードの照明装置・踏段における警告表示部の変形例)
以下、照明装置45及び警告表示部305Aの変形例を示す。
図11・
図12は、エスカレータ10の一部を示す他の側面図の変形例であり、
図13から
図15は、踏段30の他の形態を示す平面図の変形例である。
【0042】
図11は、幅の広い照明装置45を設けているエスカレータ10である。照明装置45は、少なくとも踏段30のノーズライン上を通る。
【0043】
図12は、照明装置45を複数設けているエスカレータ10である。照明装置45について、一方は踏段30のノーズライン上を通る位置に、他方は踏段30の引き込まれ側の端部の軌道と重なる位置に配置している。
【0044】
平面図として
図13に示すように、デマケーション部305は、踏段30において引き込まれ側の一方向を除いて、透過部307を備えた警告表示部305Aが設けられている。引き込まれ側には、注意喚起ライン305Bとして、通常の黄色のデマケーションラインを備える。
図13における光の取り入れ方としては、向きd1に示すように、踏段30の側方の広範囲から直接光を取り入れる方法であっても、向きd2に示すように、ライザ304側からの受光部から光を取り入れ、二手に広がるようにしても良い。
【0045】
図14では、踏段30の長辺であるライザ304側端部及び引き込まれ側端部には、警告表示部305Aを備えており、短辺端部には、注意喚起ライン305Bを用いている。
【0046】
図15は、デマケーション部305の、四方向全てが透過部307を有する警告表示部305Aから成るものである。光の取り入れ方は、
図13と同様、踏段30の側方からの向きd1であっても、長手方向の端部から受光し途中で二手に分かれる向きd2であっても良い。
【0047】
以上に示すように、
図13~
図15いずれの場合も、少なくともライザ304側の一方向は警告表示部305Aとなっている。
【0048】
図13または
図15の踏段30を用いる場合は、
図11の照明装置45の構成を用い、
図14の踏段30を用いる場合は、
図11または
図12の照明装置45の構成を用いることで、光の警告表示部305Aを有するエスカレータ10の構成として成り立たせることが可能である。
【0049】
他にも、光源としてスカートガード44の照明装置45ではなく、踏段30下に光源を設け、トラス12内から投射する光の取り入れ方がある。この場合、トラス12内で発した光を透過し、踏板303まで光が届くように、踏段30におけるライザ304の下部から上部にかけて、少なくとも透過部307を有する。透過部307とともに光ファイバー308やその他導光板を有すればなお良い。光源の位置によって、発光できる光の強さが変わる可能性があるが、広範囲に光を灯すことができ、視覚的注目を集め得る。
【0050】
以上に述べたように、本発明の実施形態によれば、エスカレータ10において固定された部分に照明装置45を設けることで、連続的に電力を供給しつつ、踏段30に光による警告表示を行うことが可能となる。これにより、運転中は足元の注意喚起を推進するとともに、電気的なメンテナンスにおいてはスカートガード44の照明装置45を点検すればよいため作業性を向上させることができる。また、引き込まれ防止の観点から踏段30の縁に設けられたデマケーション部305の一部を照らすことにより、乗車中の安全を確保することができる。加えて、踏段30における境界であるデマケーション部305のうち、乗車中特に目立つライザ304側の色を、照明装置45の光の色を変えることで注意喚起度合を変えることが可能である。
【0051】
さらに、ライザ304と引き込まれ側のデマケーション部305を異なる構成にすることで、四方向デマケーションにおけるデメリットを解消することができる。乗客が踏段30に乗り込む水平部においては、隣接した踏段30との境界が明確になるため、足元の安全性が確保される。
【0052】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…建屋、2…支持アングル、3…支持アングル、10…エスカレータ、12…トラス、14…上階側の機械室、16…下階側の機械室、18…駆動装置、20…モータ、22…駆動チェーン、24,24…駆動スプロケット(駆動輪)、25…後案内レール、26…従動スプロケット(従動輪)、27…ベルトスプロケット、28…踏段チェーン、30…踏段、301…前輪、302…後輪、303…踏板、304…ライザ(蹴上部)、305…デマケーション部、305A…警告表示部、305B…注意喚起ライン、306…支持枠、307…透過部、308…光ファイバー(導光手段)、32…乗降板、34…乗降板、36,36…欄干、38…手摺りベルト、39…手摺りレール、40…正面スカートガード、42…正面スカートガード、44…スカートガード、45…照明装置、45A…照明灯(光源装置)、46…インレット部、48…インレット部、50…制御装置、52…操作盤、54…スピーカ、56…操作盤、58…スピーカ、60…コム、62…コム、64…案内ローラ群、66…案内ローラ群、68…押圧部材