(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ゲノム大断片のダイレクトクローニングおよびDNAマルチ分子構築の新手法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220719BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220719BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220719BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12P19/34 A
C12N15/09 Z
C12N15/63 Z
C12Q1/6876 Z
(21)【出願番号】P 2020500937
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2017000483
(87)【国際公開番号】W WO2018170614
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】201710177676.1
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519341751
【氏名又は名称】シャントン ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】517273386
【氏名又は名称】テクニシェ ウニヴェルジテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,イォウミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハイロン
(72)【発明者】
【氏名】フゥー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート,アドリアン フランシス
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0037197(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037196(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0072381(US,A1)
【文献】特表2004-535773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033315(WO,A2)
【文献】特表2013-530689(JP,A)
【文献】Nature Methods,2007年,Vol.4, No.3,pp.251-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 19/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞中で、2つ以上の標的核酸分子を第1のエキソヌクレアーゼで処理すること、および2つ以上の標的核酸分子を第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で組換えすることを含む、相同組換え方法であって、組換えされた標的核酸分子が少なくとも1つの同一配列を共有し、
少なくとも1つの同一配列は2つ以上の標的核酸分子のそれぞれの内側または一端にあり、
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は、in vitro結合を含むものであって、該in vitro結合は2つ以上の標的核酸分子を結合することを含むものであり、および
前記第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は酵素消化とアニーリングが含まれ、および
第2のエキソヌクレアーゼはRecEであり、アニーリングタンパク質はRecTである、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つの同一配列は、少なくとも6ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のエキソヌクレアーゼが、T4 DNA ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T5エキソヌクレアーゼ、およびT7 エキソヌクレアーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2つ以上の標的核酸分子を処理することが、DNAポリメラーゼ、dNTP、およびDNAリガーゼの添加をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
宿主細胞が酵母細胞または細菌細胞であり、エキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
宿主細胞が完全長RecEおよびRecTを発現する大腸菌細胞である、または宿主細胞は、プラスミドベクターおよび/または染色体上でエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2つ以上の標的核酸分子がエンドヌクレアーゼで消化されたDNA断片、PCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーのメンバー、細菌人工染色体(BAC)由来の断片およびクローニングベクターの断片から選択される直鎖DNAセグメントであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2つ以上の核酸分子を第1のエキソヌクレアーゼで処理すること、および2つ以上の核酸分子を第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で組換えすることを含む核酸分子構築方法であって、各核酸分子が、結果として生じる構築産物における隣接する核酸分子で少なくとも1つの同一配列を共有し、
少なくとも1つの同一配列は2つ以上の標的核酸分子のそれぞれの内側または一端にあり、
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は、in vitro結合を含むものであって、該in vitro結合は2つ以上の標的核酸分子を結合することを含むものであり、および
前記第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は酵素消化とアニーリングが含まれ、および
第2のエキソヌクレアーゼはRecEであり、アニーリングタンパク質はRecTである、
方法。
【請求項9】
少なくとも1つの同一配列が少なくとも6ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のエキソヌクレアーゼが、T4 DNA ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T5 エキソヌクレアーゼ、およびT7 エキソヌクレアーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
2つ以上の核酸分子を処理することが、DNAポリメラーゼ、dNTP、およびDNAリガーゼの添加をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組換えが宿主細胞で行われ、および該宿主細胞が酵母細胞または細菌細胞であり、エキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
宿主細胞が完全長RecEおよびRecTを発現する大腸菌細胞である、または宿主細胞がプラスミドベクターおよび/または染色体上でエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
2つ以上の核酸分子がエンドヌクレアーゼで消化されたDNA断片、PCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーのメンバー、細菌人工染色体(BAC)由来の断片およびクローニングベクターの断片から選択される直鎖DNAセグメントであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
直鎖クローニングベクターおよびゲノムDNA断片の混合物を第1のエキソヌクレアーゼで処理すること、ならびに直鎖クローニングベクターおよびゲノムDNA断片の混合物を組換えすることを含むゲノムDNAのクローニング方法であって、直鎖クローニングベクターがゲノムDNA断片の混合物の標的DNA断片と少なくとも1つの同一配列を直鎖クローニングベクターおよび標的DNA断片それぞれの内側または一端で共有し、
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は、in vitro結合を含むものであって、該in vitro結合は2つ以上の標的核酸分子を結合することを含むものであり、および
前記第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は酵素消化とアニーリングが含まれ、および
第2のエキソヌクレアーゼはRecEであり、アニーリングタンパク質はRecTである、
方法。
【請求項16】
少なくとも1つの同一配列が少なくとも6ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1のエキソヌクレアーゼが、T4 DNA ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T5 エキソヌクレアーゼ、およびT7 エキソヌクレアーゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
直鎖クローニングベクターおよびゲノムDNA断片の混合物を処理することが、DNAポリメラーゼ、dNTP、およびDNAリガーゼの添加をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
組換えが宿主細胞で行われ、および該宿主細胞が酵母細胞または細菌細胞であり、エキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
宿主細胞が完全長RecEおよびRecTを発現する大腸菌細胞である、または宿主細胞がプラスミドベクターおよび/または染色体上でエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質を発現することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標的DNA断片がエンドヌクレアーゼで消化されたDNA断片、PCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーのメンバー、細菌人工染色体(BAC)由来の断片およびクローニングベクターの断片から選択される直鎖DNAセグメントであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を含む、DNA断片構築、ターゲティングベクターの構築または哺乳類細胞の遺伝子型判定、の方法。
【請求項23】
請求項8~14のいずれか1項に記載の方法を含む、DNA断片構築の方法。
【請求項24】
請求項15~21のいずれか1項に記載の方法を含む、ターゲティングベクターの構築、または哺乳類細胞の遺伝子型判定の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は核酸クローニングおよび構築の方法に関し、特にデオキシリボ核酸(DNA)クローニングおよび構築に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAクローニングは、遺伝子機能研究のための分子生物学およびバイオテクノロジーで使用されるコア技術である。DNA配列決定技術の進歩と配列決定コストの低下により、ゲノム全体の配列決定が容易になっている。研究者は、ゲノムに豊富な未開発の資源があることを発見した。短いDNA断片は、PCRまたは化学合成によって容易に取得することができるが、10 kbを超えるDNA断片をクローニングする従来の方法は、DNAライブラリーの構築とスクリーニングに依存する。ライブラリーの構築とスクリーニングの従来の方法は複雑で、時間がかかり、労力を要するものであり、標的DNA断片は、しばしばいくつかの異なる領域に存在する。研究者は、断片のサブクローニングを行うか、冗長な配列を除去するか、遺伝子機能を調査するための完全な生合成経路に組み込むため、ライブラリーの構築とスクリーニングの従来の方法は時代のニーズを満たすことができなくなり、研究者はシンプルで効率的かつ高速なゲノムDNAクローニングおよび修飾技術を緊急に必要としている。合成生物学で使用される技術の進歩により、in vitroでのギブソン構築(非特許文献1)またはin vivoでのDNAアセンブラー(非特許文献2)を使用して、選択した小さな断片から10 kbを超える大きなDNA断片を構築することもできる。しかしながら、上記DNA構築工程において、小さな断片はPCRまたは化学合成によってのみ調製されるため、ランダムな突然変異を導入しやすく、その後の遺伝子機能研究に不都合をもたらす。上記の方法は、高純度および高濃度のDNA断片を必要とし、酵素処理ゲノムDNA断片の混合物から標的DNA断片を直接構築するために使用することはできない。
【0003】
ゲノムDNA由来の特定のDNA配列はベクターに直接クローニングされ、本明細書でダイレクトクローニングと呼ばれる。Racファージの組換えタンパク質RecEおよびRecTは、直鎖-直鎖組換えとしても知られる、大腸菌の細胞内の直鎖状DNA分子間の相同組換えを効率的に媒介することができる。RecEは5’-3’エキソヌクレアーゼであり、RecTは一本鎖DNA(ssDNA)アニーリングタンパク質であり、RecEとRecT間のタンパク質-タンパク質相互作用は直鎖-直鎖組換えに必要とされ、特に、RecET複合作用の直鎖-直鎖組換え効率は、単一効果の1000倍である。RecETダイレクトクローニング技術は、10 kbを超えるゲノムDNA断片を直接発現ベクターに捕らえることができ、2~5個のDNA断片を組み立てることもできる。適切な制限酵素部位は、標的DNA断片を放出するためにゲノム内で見つけることができ、制限酵素で消化されたゲノムDNAと直鎖ベクターは、RecETリコンビナーゼを発現する大腸菌細胞にエレクトロポレーションされる。細胞内の標的DNA断片と直鎖ベクターは、両端の相同ボックスによって相同組換えされ、環状プラスミドを形成し、最終的に組換えDNA分子を含むコロニーは、抗生物質スクリーニングおよび制限分析により取得することができる。直鎖ベクターとゲノムDNAを調製した後、標的DNA断片のダイレクトクローニングを完了するのに3日しかかからない。現在、この技術は、クローニングおよび細菌の天然産物の生合成経路の異種発現の研究で広く使用されている。例えば、10個のフォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens)由来の10~52 kbのポリケチドシンターゼ(PKS)/非リボソームポリペプチドシンテターゼ(NRPS)遺伝子クラスター(非特許文献3)、パエニバシラスラーヴァ(Paenibacilluslarvae)由来の12 kbのセバディシン遺伝子クラスター(非特許文献4)、シュードモナスシリンガエ(Pseudomonas syringae)由来の19 kbのシリンゴリン遺伝子クラスター(非特許文献5)、バークホルデリア(Burkholderia)DSM7029株由来の25 kbのグリドバクチン遺伝子クラスター(非特許文献6)、大腸菌(E. coli)Nissle 1917株由来の50 kbのコリバクチン遺伝子クラスター(非特許文献7)が挙げられる。
【0004】
ダイレクトクローニングの利点により、ライブラリーの構築およびスクリーニングと比較して、この分野の関連研究の多くを推進するLarionovらは酵母組換えシステムで信頼されるTARクローニング技術を確立し(非特許文献8)、その後TARとCas9切断を組み合わせ、簡単な応用のためのTARクローニングの効率を高めた(参考文献9、10)。最近確立されたCATCH (Cas9-Assisted Targeting of Chromosome Segments )技術は、Cas9でのin vitro切断とギブソン構築を使用して、大きなDNA断片をBAC11にスプライスする。この方法は現在、原核生物のゲノムにのみ適用されており、組換えDNAの制限酵素消化の前にコロニーのPCRプレスクリーニングが必要である。発明者の知る限り、上記の2つの方法を含む現在知られているすべてのダイレクトクローニング方法は、操作するための何人かの専門家に限られている。
【0005】
RecETダイレクトクローニングは、細菌ゲノムから50 kb以下のDNA断片をクローニングするのに便利であるが(非特許文献3~6、9)、バクテリアのゲノム由来のより大きなDNA断片をクローニングしたり、哺乳類のゲノム由来のDNA断片をクローニングすることは困難である。その理由は、RecETダイレクトクローニング技術はRecETリコンビナーゼの細胞内発現に依存しているためであり、相同組換えは、クローニングベクターと標的DNA断片が大腸菌細胞に同時に進入し出会った場合にのみ起こり、次の欠点につながる: (1)ゲノムDNA断片のサイズを制限する。例えば、細菌ゲノム由来の50 kbを超えるDNA断片をクローニングしたり、哺乳類(マウスやヒトなど)由来の10 kbを超えるゲノム断片をクローニングすることはできない。これは、ゲノム中の特定のDNA断片の濃度が非常に低く、その結果、形質転換中に標的DNA断片とクローニングベクターが同時に細胞に入る可能性が小さいためである。さらに、ゲノムDNAの調製中の物理的せん断力の影響により、標的DNA断片が大きいほど、ゲノム中の濃度が低くなり、その結果、標的DNA断片がクローニングベクターとともに細胞に入る確率が低くなる 。マウスのゲノム(2800 Mb)とヒトのゲノム(3200 Mb)は、細菌ゲノム(5 Mb)よりも3桁近く大きいことから、同じサイズのゲノムDNA断片の濃度は、細菌よりも哺乳類のゲノムではるかに低い。したがって、哺乳動物のゲノムDNA断片をダイレクトクローニングする場合、標的DNA断片がクローニングベクターと同時に大腸菌細胞に入る確率ははるかに低くなる。(2)DNA断片の数の影響を受け、複数の断片の構築中に、DNA断片の数が4個を超えると、構築効率が大幅に低下する。現在のところ、RecETダイレクトクローニング技術では、最大5個のDNA断片だけを構築する。複数の断片を構築する場合、DNA断片の数が多いほど、それらが一緒に細胞に入る可能性が低くなり、構築効率が低下する。したがって、特に この分野では、得られるDNA断片の大きさとゲノムの複雑さによって制限されない、操作が簡単で広く使用されるダイレクトクローニング技術が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Gibson, D.G. et al. Enzymatic assembly of DNAmolecules up to several hundred kilobases. Nat. Methods 6, 343-345 (2009).
【文献】Shao, Z. & Zhao, H. DNAassembler, an in vivo genetic method for rapid construction of biochemicalpathways. Nucleic Acids Res. 37, e16 (2009).
【文献】Fu, J. et al. Full-length RecEenhances linear-linear homologous recombination and facilitates direct cloningfor bioprospecting. Nat Biotechnol 30, 440-446 (2012).
【文献】Tang, Y. et al. Heterologous expression of anorphan NRPS gene cluster from Paenibacillus larvae in Escherichia coli revealedproduction of sevadicin. J. Biotechnol. 194, 112-114 (2015).
【文献】Bian, X. et al. Direct cloning, geneticengineering, and heterologous expression of the syringolin biosynthetic genecluster in E. coli through Red/ET recombineering. ChemBioChem 13, 1946-1952(2012).
【文献】Bian, X. et al. Heterologous production ofglidobactins/luminmycins in Escherichia coli Nissle containing the glidobactinbiosynthetic gene cluster from Burkholderia DSM7029. Chembiochem 15, 2221-2224(2014).
【文献】Bian, X. et al. In vivo evidence for aprodrug activation mechanism during colibactin maturation. Chembiochem 14,1194-1197 (2013).
【文献】Larionov, V. et al. Specificcloning of human DNA as yeast artificial chromosomes bytransformation-associated recombination. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 491-496(1996).
【文献】Bian, X., Plaza, A., Zhang, Y. & Müller,R. Luminmycins A-C, cryptic natural products from Photorhabdus luminescensidentified by heterologous expression in Escherichia coli. J. Nat. Prod. 75,1652-1655 (2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲノムから大きなDNA断片をダイレクトクローニングする技術的問題を解決するため、本発明者らは、最初にin vitroにおいてエキソヌクレアーゼでゲノムDNAおよびクローニングベクターを切断し、次いで、in vitroの反応産物をRecETリコンビナーゼの存在下で相同的に組換える、ExoCETクローニング技術を確立した。ExoCET技術では、細菌ゲノムから100 kbを超えるDNA断片をダイレクトクローニングしたり、哺乳類細胞やヒトの血液から50 kbを超えるDNA断片をクローニングしたりすることができる。 ExoCET技術は、少なくとも20個のDNA断片を効率的に構築し完全なプラスミドを形成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
RecETダイレクトクローニング技術と同様に、ExoCETはPCRよりも高い利点を有しており、忠実度が高く、DNAハプロタイプを破壊せず、標的DNAがプラスミドベクターにダイレクトにクローニングされ発現研究を容易にする。また、ギブソン構築がin vitro構築によって産生される環状DNA分子に依存するため、ExoCETはギブソン構築よりも効率的である。さらに、DNA空のキャリアそのものの環化により、ギブソン構築はダイレクトクローニングの工程で非常に深刻なバックグラウンドを生成する可能性があり、これがJiangら(参考文献11)が組換えDNAを識別する前にPCRプレスクリーニングを実行する理由である;ギブソン構築を使用して、ストレプトマイセスコングロバタス(Streptomyces conglobatus)ゲノムからコングロバチン遺伝子クラスターをクローニングする場合、Zhou ら(参考文献13)が制限消化とアガロースゲル電気泳動によって生成された20kb以下のゲノムDNA断片を除去する必要がある理由でもある。
【0009】
ExoCETを使用して、血液、疾患関連細胞株などの哺乳類ゲノムからDNA断片をダイレクトクローニングすることもでき、一塩基多型(SNP)のハプロタイプ研究を促進し、ヌクレアーゼ媒介ヒト幹細胞ターゲティング用のハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング(haplotype isogenic targeting: HIT)ベクターを迅速に構築する。生物医学研究で患者から単離されたヒト幹細胞、臍帯血または初期化された体細胞の重要性がますます注目されており、幹細胞ゲノムの正確な改変に関する研究も広く注目されている。ヒトの複雑な遺伝的多様性のために、実験室のマウスのゲノムを改変するよりも、ヒトのゲノムを改変する方が困難である。遺伝子ターゲティングにマウス胚性幹細胞を使用するとき、相同組換えにおける同質性(配列類似性)の重要性は、何年も前に理解された(参考文献14)。しかしながら、相同組換えに対する配列ミスマッチの影響は十分に研究されていない。例えば、単一のミスマッチ(SNPまたはインデル)がどの程度の組換え効率で減少するのか。ミスマッチ部位と組換え部位の距離は、組換え効率にどのように影響するのか。複数のミスマッチは組換え効率にどのように影響するのか。上記これらの問題はまだ明確にされていない。いずれにせよ、遺伝子ターゲティングに同一の配列を使用することが明らかに強く推奨されるため、ExoCETは理想的な相同ボックスを迅速に取得するための効果的な技術である。PCRによるゲノムから相同ボックスを増幅する方法とは異なり、ExoCETは、断片の大きさに制限されず、突然変異を導入せず、DNAハプロタイプを維持できる。さらに、相同ボックスの末端は、遺伝子型判定の形式(サザンブロッティングまたはライゲーションPCRなど)に従って選択することもでき、相同ボックスの長さを最適化する。したがって、ExoCETは、特にCRISPR/Cas9(参考文献15)と組み合わせると、個別のゲノム手術に利点をもたらす。ExoCETは改変されたゲノムの遺伝子型判定の最も信頼性の高い方法としても使用できるが、サザンブロッティングおよびライゲーションPCRには偽陽性シグナルがある。
【0010】
ExoCETは、複雑なゲノムから大きなDNA断片を選択的に捕らえることができるため、疾患診断および病理検査の手段になる。例えば、個別化医療から直接的にDNA配列を捕らえること、または、患者サンプルからDNAウイルスを単離することである。ExoCETは、機能ゲノミクスおよび比較ゲノミクスの研究、特に原核生物の合成経路のダイレクトクローニングまたは合成生物学用の複数のDNA分子の構築に広く使用されるだろう。
【0011】
一態様において、本開示は、相同組換えの方法を提供し、該方法は、2つ以上の標的核酸分子を第1のエキソヌクレアーゼで処理すること、第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で処理した後に2つ以上の標的核酸分子を組換えることを含み、組換えられた標的核酸分子は、少なくとも1つの相同配列を共有するものである。
【0012】
一態様において、本開示は、相同組換えの方法を提供し、該方法は、第1のエキソヌクレアーゼで第1の核酸分子および第2の核酸分子を処理すること、第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で処理した後に第1の核酸分子および第2の核酸分子を組換えることを含み、第1の核酸分子および第2の核酸分子は、少なくとも1つの相同配列を共有するものである。
【0013】
もう一つの別の態様において、本開示は、直鎖核酸分子を構築する方法を提供し、該方法は、2つ以上の核酸分子を第1のエキソヌクレアーゼで処理すること、第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で処理した後に2つ以上の核酸分子を組換えることを含み、各核酸分子は、結果として生じる構築産物における隣接する核酸分子で少なくとも1つの相同配列を共有するものである。
【0014】
また、本開示は、ゲノムDNAをクローニングする方法を提供し、該方法は、ゲノムDNA断片混合物および直鎖クローニングベクターを第1のエキソヌクレアーゼで処理し、ゲノムDNA断片混合物および直鎖クローニングベクターを第2エキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で処理した後に組換えることを含み、直鎖クローニングベクターは、ゲノムDNA断片混合物の標的DNA断片と少なくとも1つの相同配列を共有するものである。
【0015】
少なくとも1つの相同配列は、特に、標的核酸分子の一端にある少なくとも1つの相同配列は、および、より具体的には、標的核酸分子の一端にあるすべての相同配列は、2つ以上の標的核酸分子の内側または一端に位置することができる。
【0016】
少なくとも1つの相同配列の長さは、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80ヌクレオチド、特に25、40 または80ヌクレオチド、より具体的には80ヌクレオチドを有する。
【0017】
第1のエキソヌクレアーゼは、5’-3’エキソヌクレアーゼまたは3’-5’エキソヌクレアーゼ、特にT4 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T5エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼ、より具体的にはT4 DNAポリメラーゼまたはT5エキソヌクレアーゼであってよい。
【0018】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理は、in vitroでの結合を含む。in vitro結合では、2つ以上の標的核酸分子を結合すること、または第1の核酸分子を第2の核酸分子に結合すること、または処理された直鎖クローニングベクターをゲノムDNA断片混合物の標的DNA断片に結合することができる。
【0019】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理には、酵素消化とアニーリングが含まれ、異なる核酸分子の酵素消化は、例えばサンプルの混合物中において、個別にまたは同時に実行することができる。
【0020】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理には、DNAポリメラーゼ、dNTPおよびDNAリガーゼの添加をさらに含む。
【0021】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理には、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼの添加をさらに含む。
【0022】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理には、dNTPの添加が除外される。
【0023】
第1のエキソヌクレアーゼの存在下での処理には、T4 DNAポリメラーゼ処理またはギブソン構築を含む。
【0024】
第2のエキソヌクレアーゼはRecEであり、特にRecEは組換え発現産物である。
【0025】
一本鎖アニーリングタンパク質には、RecA、RAD51、Redβ、RecT、PluβまたはRAD52が含まれ、特に、アニーリングタンパク質はRecTであり、より具体的にはRecTは組換え発現産物である。
【0026】
アニーリングタンパク質はRecTであり、特にRecTは組換え発現産物である。
【0027】
相同組換えは、in vitroまたは宿主細胞で行われる。
【0028】
宿主細胞は、酵母細胞、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞、または、細菌細胞、特に枯草菌または大腸菌であってよい。
【0029】
宿主細胞は、エキソヌクレアーゼ、特に第2のエキソヌクレアーゼとアニーリングタンパク質を発現する。
【0030】
宿主細胞は、エキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、およびRedγを発現する。特に、宿主細胞はRecAをさらに発現し、より具体的には、宿主細胞はRecE、RecT、Redγ、およびRecAを発現する。
【0031】
宿主細胞は、全長RecEおよび/またはRecTを発現する大腸菌細胞であり、特に、宿主細胞は、全長RecE、RecTおよびRedγを発現する大腸菌細胞であり、より具体的に、宿主細胞は、全長RecE、RecT、RedγおよびRecAを発現する大腸菌細胞である。
【0032】
宿主細胞は、切断されたRecEおよびRecTを発現する大腸菌細胞である。
【0033】
宿主細胞は、RedαおよびRedβを発現する大腸菌細胞である。
【0034】
宿主細胞は、プラスミドベクターおよび/または染色体上でエキソヌクレアーゼを発現し、特に、第2のエキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγおよび/またはRecAを発現し、特に、プラスミドベクターによる発現、より具体的には、プラスミドベクターと染色体によって同時に発現する。
【0035】
標的核酸分子または標的DNA断片は、エンドヌクレアーゼで消化されたDNA断片、PCRで増幅されたDNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーのメンバー、細菌人工染色体(BAC)由来の断片、およびクローニングベクターの断片から選択される一つの直鎖DNAセグメントである。
【0036】
エンドヌクレアーゼは、制限酵素またはCas9などのプログラム可能なエンドヌクレアーゼである。
【0037】
標的核酸分子またはDNA断片の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上である。
【0038】
標的核酸分子は0.5 kb以上(例えば、1kb以上、2.5kb以上、4kb以上、5kb以上、7.5kb以上、10kb以上、15kb以上、20kb以上、25kb以上、40kb以上、50kb以上、75kb以上または100kb以上)の配列を含む。
【0039】
2つ以上の標的核酸分子、第1の標的核酸分子、および第2の標的核酸分子または標的DNA断片は、1つ以上のPCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーメンバー、および/またはBAC由来の断片を含む。
【0040】
第1のエキソヌクレアーゼは3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、特にT4 DNAポリメラーゼである。
【0041】
エキソヌクレアーゼでの処理は、dNTPの非存在下でin vitroで行われる。
【0042】
第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。
【0043】
アニーリングタンパク質はRecTである。
【0044】
相同組換えは、全長RecEとRecTを発現する細菌宿主細胞、特に大腸菌で行われる。
【0045】
2つ以上の標的核酸分子は、1つ以上のPCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーメンバー、および/またはBAC由来断片、直鎖プラスミド、および/またはクローニングベクター断片、および、特に、3つ以上の直鎖プラスミドおよび/またはクローニングベクター断片を含む。
【0046】
第1のエキソヌクレアーゼはギブソン構築を含む。
【0047】
第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。
【0048】
アニーリングタンパク質はRecTである。
【0049】
相同組換えは、全長RecEとRecTを発現する細菌宿主細胞、特に大腸菌で行われる。
【0050】
2つ以上の標的核酸分子は、3つ以上のPCR増幅DNA断片、ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーメンバー、および/またはBAC由来断片、直鎖プラスミド、および/またはクローニングベクター断片、特に、3つ以上の直鎖プラスミドおよび/またはクローニングベクター断片を含む。
【0051】
第1のエキソヌクレアーゼはギブソン構築を含む。
【0052】
第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。
【0053】
アニーリングタンパク質はRecTである。
【0054】
相同組換えは、全長RecEとRecTを発現する細菌宿主細胞、特に大腸菌で行われる。
【0055】
前述の方法で説明された第1のエキソヌクレアーゼおよび第2のエキソヌクレアーゼ、または前述の方法で説明された第1のエキソヌクレアーゼおよび第2のエキソヌクレアーゼをコードする核酸を含むキットも提供する。
【0056】
キットは前述の方法で説明された第1のエキソヌクレアーゼおよび第2のエキソヌクレアーゼ、または第1のエキソヌクレアーゼおよび第2のエキソヌクレアーゼをコードする核酸を含む。特に、キットはさらに以下を含む:第2のエキソヌクレアーゼを発現する宿主細胞、特に宿主細胞はエキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質およびRedγを発現し、特に宿主細胞はRecAも発現し、より具体的には宿主細胞はRecE、RecT、RedγおよびRecAを発現する;宿主細胞は酵母細胞、特に酵母細胞はサッカロマイセス・セレビシエ細胞であってよく、または、宿主細胞は細菌細胞、特に細菌細胞は枯草菌または大腸菌であってよく、宿主細胞は、プラスミドベクターおよび/または染色体上で、特にプラスミドベクターによって、より具体的には、プラスミドベクターまたは染色体によって、エキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγおよび/またはRecAを同時に発現する。さらに具体的には、キットは1つ以上の事前に調製された直鎖ベクターを含んでもよい。
【0057】
第1のエキソヌクレアーゼは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、T4 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、T5エキソヌクレアーゼまたはT7エキソヌクレアーゼであり、第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。
【0058】
キットは第2のエキソヌクレアーゼを発現する宿主細胞を含み、特に、宿主細胞は、全長RecE、RecT、RedγおよびRecAをコードする核酸を含む。
【0059】
キットは1つ以上の事前に調製された直鎖ベクターをさらに含む。
【0060】
ターゲティングベクターの構築における前述の方法またはキットの使用。
【0061】
哺乳類細胞の遺伝子型判定における前述の方法またはキットの使用。
【0062】
DNA合成における前述の方法またはキットの使用。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、 in vitro構築と完全長RecE/RecTの協調作用が、ダイレクトクローニングの効率を向上させることを示す。(a):P.ホスホレウム(P. phosphoreum)ANT-2200ゲノム由来の14kb lux遺伝子クラスターのダイレクトクローニングの概略図。p15A-cmベクターと標的ゲノムDNA断片は、末端に同じ配列を有する。(b):より長い相同アームは、ExoCETのクローニング効率を高める。25bp、40bp、または80bpの相同ボックスを持つ直鎖ベクターをそれぞれゲノムDNAと混合し、アニーリングとアラビノース誘導大腸菌GB05-dirへの変換の前に、0.02 UμL
-1のT4polを用いて25℃で20分間反応を行った。エラーバー、s.d.; n=3。(c):T4polの濃度の最適化。80 bpの相同ボックスとゲノムDNAを有する直鎖ベクターを、T4polの濃度が異なることを除き、(b)と同じ方法で処理した。(d):クローニング効率に対するT4polのインキュベーション時間の影響。(c)と同様に、0.04 UμL
-1のT4polを使用したが、インキュベーション時間は異なる。(e):ETgAのコピー数が増大すると、ExoCETクローニング効率が向上する。(d)と同様に、インキュベーション時間は1時間で、その後、in vitroで構築された産物を、pSC101-BAD-ETgA-tetのGB2005(pSC101プラスミド上に~5コピーのETgAを含む)、またはpSC101-BAD-ETgA-tetのGB05-dir(~6コピーのETgAを含む)を含有するアラビノース誘導大腸菌GB05-dir(染色体上にETgAを有する)に別々にエレクトロポレーションした。(f):ExoCETは、ダイレクトクローニングの効率を高める。(e)と同様に、pSC101-BAD-ETgA-tetを含むGB05-dir(ExoCET)を使用したか、または、T4pol処理(ETgA)を使用しなかったか、または、アラビノース誘導(T4pol)を使用しなかった。
【
図2】
図2は、lux遺伝子クラスターのダイレクトクローニングに対する異なるエキソヌクレアーゼの影響を示す。p15A-cmベクターとP.ホスホレウム(P. phosphoreum)ゲノムDNAをエキソヌクレアーゼで処理し、アニーリングし、次いでアラビノース誘導大腸菌GB05-dirにエレクトロポレーションした。(a):異なるエキソヌクレアーゼの初期検出。(b-d):Kle、T5exoおよびT7exoの濃度の最適化。(e):T4pol、Kle、T5exoおよびT7exoを最適濃度で使用した20分間の消化後のクローニング効率の比較。(f):T4pol(0.02 UμL
-1)の消化温度と時間の最適化。エラーバー、s.d.; n=3。
【
図3】
図3は、lux遺伝子クラスターのダイレクトクローニングに対するアニーリング速度の影響を示す。エラーバー、s.d.; n=3。p15A-cmベクターとP.ホスホレウム(P. phosphoreum)ゲノムDNAは、0.02 UμL
-1のT4polで消化され、その後、異なる方法(A、B、C)でアニーリングされ、最後にアラビノース誘導大腸菌GB05-dirにエレクトロポレーションされた。
【
図4】
図4は、直鎖クローニングベクターの調製とExoCETダイレクトクローニング技術のフローチャートを示す。(a):p15A-cmベクターはPCR増幅により調製され、使用されたプライマーは80ヌクレオチドの相同ボックスを保持する。(b):ExoCETダイレクトクローニングの標準戦略。in vitro構築産物は、pSC101-BAD-ETgA-tetを含むアラビノース誘導GB05-dirに形質転換され、抗生物質スクリーニングにより正しい組換え体が得られた。
【
図5】(a):p15A-cmと14kb luxゲノムDNA断片間の80 bp相同ボックスの位置:(A)両方の相同ボックスが最末端にあった;(B、C)一方は末端から1 kbにあり、もう一方は最末端にあった;(D)両方は末端から1 kb にあった。反応条件は(1f)と同様であった。(b):コロニーの数は、ETgA、T4pol、またはExoCETを上記の4つの相同ボックスと組み合わせて得られた。(c):ExoCETとGB2005の末端相同ボックスを使用した、14 kb lux遺伝子クラスターのダイレクトクローニング効率は、pSC101プラスミドによって発現される組換えタンパク質のさまざまな組み合わせによって得られた。ETg-RecA非発現; Eg-RecAおよびRecT非発現;Tg- RecAおよびRecE非発現; pSC101-tet-空ベクター。エラーバー、s.d.; n=3。
【
図6】
図6は、EcoRVまたはCas9で消化されたストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)ゲノムDNAを使用した106kbサリノマイシン(salinomycin)遺伝子クラスターのダイレクトクローニングを示す。(a):ExoCETの作用下で、サリノマイシン遺伝子クラスターがEcoRVまたはCas9 gRNA2/Cas9-gRNA7で消化されたゲノムDNAからクローン化され、pBeloBAC11ベクターに挿入された。相同ボックス(青)を最初にBACベクターに挿入し、そのBACベクターをBamHI消化により直鎖化してダイレクトクローニングベクターにした。相同ボックスの長さは、ゲノムDNA断片の末端でマークされた。(b): 組換えDNAのPvuII制限分析、正しいクローンは矢印でマークされた。
【
図7】
図7は、ExoCETとギブソン構築の効率の比較を示す。(a):末端相同ボックスを使用したマウスゲノムからのWnt4遺伝子を含む45 kb DNA断片のダイレクトクローニングの概略図。(b):ExoCETおよびギブソン法によって取得されたコロニーの数。p15A-cmおよびSwaIで消化されたマウスゲノムDNAを、それぞれExoCETおよびギブソンで処理し、次に、アラビノース誘導(ExoCETまたはギブソン + ETgA)または非誘導(T4polまたはギブソン)にかかわらず、pSC101-BAD-ETgA-tet-dirを含むGB05に形質転換された。(c):T4pol、ExoCET、ギブソン、ギブソン + ETgAによる複数のDNA断片のプラスミドへの構築の概略図。DNA断片の大きさの範囲は1.0kbから5.4kbであり、構築されたp5Aプラスミドの大きさの範囲は29.8kbから54.9kbで、プラスミドはクロラムフェニコール(cm)に耐性だった。(d):複数の断片構築の実験で得られたクローンの数と正確な割合。アラビノース誘導(ExoCETまたはギブソン + ETgA)または非誘導(T4polまたはギブソン)にかかわらず、in vitro構築産物をpSC101-BAD-ETgA-tetを含むGB05-dirに形質転換した。
【
図8】
図8は、哺乳類ゲノムDNAを使用したDPY30のためのHIT(ハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング)ベクターの構築を示す。(a):SpeIで消化したヒトゲノムDNAを使用したDPY30停止コドンのクローニングの概略図。ダイレクトクローニングが完了した後、DPY30のC末端はRedαβ組換え工学のmVenusエレメント(参考文献16、17)で標識された。(b):ヒト血液から単離されたゲノムDNAをテンプレートとして使用して、ExoCETによってダイレクトクローニングされた組換えDNAをEcoRI消化分析にかけた。(c):ExoCETおよびヒト胎児腎臓293T細胞から単離されたゲノムDNAを介したダイレクトクローニングにより得られた組換えDNAのEcoRI消化分析。(d):Redαβ組換え工学によるmVenusエレメントの挿入後に得られた組換えDNAのPvuII消化分析。得られたすべてのクローンは正しく、レーン11はコントロールである。正しいクローンは矢印でマークされた。
【
図9】
図9は、マウスゲノムDNAを使用したDpy30のためのHIT(ハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング)ベクターの構築を示す。(a):BamHI + KpnIで消化したマウスゲノムDNAを使用したDpy30停止コドンのクローニングの概略図。ダイレクトクローニングされた後、DPY30のC末端にRedαβ組換えを使用してmVenusカセット(参考文献16、17)でタグ付けした。(b):ExoCETおよびマウスメラノーマB16細胞から単離されたゲノムDNAを介したダイレクトクローニングにより得られた組換えDNAのEcoRI消化分析。(c):Redαβ組換え工学のmVenusエレメントを挿入することにより得られた組換えDNAのNheI消化分析。得られたすべてのクローンは正しく、レーン11はコントロールである。正しいクローンは矢印でマークされた。
【
図10】
図10は、ExoCETを用いた哺乳動物細胞の遺伝子型判定を示す。(a):ExoCETを使用した遺伝子型判定の概略図。制限部位は、それぞれターゲティングエレメントの上流と下流にあった。(b):ExoCETを使用したカナマイシン耐性を持つKmt2d-AID-neoによりターゲティングされるマウス胚性幹細胞の遺伝子型判定。ターゲティングエレメントを含むDNA断片は、SspIおよびSpeIを使用してゲノムから切り出された。10μgの制限消化ゲノムDNAおよびPCR増幅p15A-cmベクターを使用して、ExoCETクローニングを実施した。p15Aベクターにクローンニングされたターゲティング断片と野生型断片は、二重画線(doublestreak)および制限酵素消化により分離することができる。
【
図11】
図11は、Klf4-Venus-neo-ターゲティングマウス胚性幹細胞のExoCET遺伝子型判定により得られたクロラムフェニコール耐性コロニーのEcoRV +PstI制限分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
DNA組換え工学は、大腸菌細胞のDNA分子を改変するための遺伝子工学技術であり、ファージsyn/exoタンパク質(主にRedαおよびRedβ)の相同組換えによって媒介される(参考文献18-22)。DNA組換え工学は、相同ボックスを持つDNA分子間の相同組換えを効率的に媒介する活性を持つ、大腸菌sbcA(recBCリプレッサー)株で最初に発見された(参考文献23)。sbcA株は、大腸菌の相同組換え経路を探すAJ Clarkによる古典的な実験で発見された。彼はDNA損傷に非常に敏感なrecBC株を使用してその阻害剤をスクリーニングし、RecEおよびRecT発現活性を持つsbcA変異株を発見した(参考文献24-26)。その後の研究では、RecEとRecTは染色体に組み込まれたRacファージによって発現しており、ファージRedαとRedβと同じように機能することが示されており(参考文献27)、RecEタンパク質のC末端の280アミノ酸のみがsbcA変異株で発現している(参考文献28-30)。切断されたRecEはRedα(266アミノ酸)に類似しており、5’-3’エキソヌクレアーゼである(参考文献31)。RecTはRedβに類似しており、一本鎖アニーリングタンパク質(SSAP)である(参考文献32)。RecE/RecTおよびRedα/Redβは、5’-3’エキソヌクレアーゼ/ SSAP syn/exoタンパク質のペアに属し(参考文献21、33)、二本鎖DNAの相同組換えには、タンパク質の各ペア間の特定のタンパク質間相互作用ポテンシャルが必要である(参考文献29、34、35)。Redα/Redβ媒介相同組換えは、主に複製フォークで生じ、同時複製が必要である。本発明者らは、切断型RecE/RecTを介した組換え工学技術を最初に発見したが、より効率的であるため、後にRedα/Redβを使用してDNA分子を改変した(参考文献16、38-42)。それにもかかわらず、本発明者らは、RecE/RecTの特徴を絶えず研究しており、RecEのN末端の600アミノ酸残基が組換え活性を複製依存性から複製非依存性に変化させることを発見した(参考文献3)。従って、非常に短い相同ボックスを介した効率的な相同組換えにより、2つの直鎖DNA分子が環状プラスミドを形成することができる。Redα/Redβ組換え工学と比較して、この直鎖-直鎖組換えメカニズムは、ゲノムから大きなDNA断片をダイレクトクローニングする(参考文献3-6)、または、複数のDNA断片構築を実行する(参考文献15、43)など、さまざまな用途がある。
【0065】
本開示は、少なくとも1つの相同配列を共有する2つ以上の標的直鎖核酸分子間の相同組換え(直鎖-直鎖組換え)の方法を提供する。本方法は、第1のエキソヌクレアーゼで処理された標的直鎖核酸分子の混合物を含み、次に、処理された標的直鎖核酸分子は、第2のエキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で相同組換えに供される。第2のエキソヌクレアーゼはRecEであってよく、大腸菌K12由来の全長RecEのアミノ酸配列がWO2011/154927に開示されている。あるいは、第2のエキソヌクレアーゼは切断されたRecEであってもよく、RecEの切断型には、アミノ酸588-866、595-866、または606-866からなるRecEタンパク質が含まれる(参考文献29)。
【0066】
相同組換えは、第2のエキソヌクレアーゼとアニーリングタンパク質によって媒介される。いくつかの態様において、本開示の方法で使用されるアニーリングタンパク質は、WO2011/154927に開示されるアニーリングタンパク質である。特に、アニーリングタンパク質はRecTまたはその断片(Racファージ由来)である。より具体的には、アニーリングタンパク質は全長RecTであり、第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。しかしながら、アニーリングタンパク質が使用するエキソヌクレアーゼと相互作用する限り、そのような他の適切なアニーリングタンパク質を使用できる。他の適切なアニーリングタンパク質の例がWO 02/062988に提供されている。直鎖-直鎖組換えは、おそらく、特定の内因性RecTのような活性の存在が原因である、大腸菌株GB2005などのRecT発現を欠く宿主細胞で起こり得る。しかしながら、RecTの存在下では、全長RecEによって媒介される直鎖-直鎖組換えの効率が大幅に向上する。
【0067】
本開示の方法は、宿主細胞において全体的または部分的に影響を受ける可能性がある。適切な宿主細胞には、寄生生物、原核生物、および真核生物を含む多くの種の細胞が含まれるが、グラム陰性細菌などの細菌が好ましい宿主である。より具体的には、宿主細胞は、サルモネラ菌、クレブシエラ菌、バチルス菌、ナイセリア菌、フォトラブダス菌または大腸菌細胞などの腸内細菌細胞である(本開示の方法は、試験されたすべての大腸菌株において効果的な役割を果たす)。1つの好ましい宿主細胞は大腸菌K12である。しかしながら、本開示の方法は、真菌、酵母、植物または動物細胞などの真核細胞または生物に等しく適用可能であることに留意されたい。本システムは、マウスのES細胞で機能することが示されており、他の真核細胞でも機能していると推測するのが妥当である。宿主細胞は典型的には単離された宿主細胞であるが、単離されていない宿主細胞であってもよい。
【0068】
本開示の宿主細胞は、エキソヌクレアーゼ(特に全長RecE)、アニーリングタンパク質(特にRecT)およびRedγをコードする核酸を含む。いくつかの態様において、宿主細胞はRecAをコードする核酸をさらに含む。特に、宿主細胞はRecE、RecTおよびRedγ、および任意でRecAを発現する。より具体的に、宿主細胞はRecE、RecT、RedγおよびRecAを発現する。
【0069】
本開示のエキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγおよび/またはRecAは、例えば、宿主細胞に形質転換されたベクターにより発現される、宿主細胞中の外来DNA由来の組換え発現産物であり得る。適切なベクターの例はpSC101プラスミドであるが、他の適切なベクターを使用することもできる。適切なプロモーターが、これらのタンパク質の発現を促進するために使用することができる。しかしながら、RecEを発現する場合、アラビノース誘導性プロモーター(PBAD)またはラムノース誘導性プロモーター(PRhaSR)などの誘導性プロモーターが好ましい。これらのプロモーターは本分野で周知である。
【0070】
本開示の宿主細胞は、プラスミドベクターまたは染色体上の誘導性プロモーターにより、エキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγおよび/またはRecAを発現する。特に、エキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγ、および/またはRecAは、プラスミドベクターによって宿主細胞で発現される。より具体的には、エキソヌクレアーゼ、アニーリングタンパク質、Redγ、および/またはRecAは、プラスミドベクターおよび染色体によって宿主細胞で同時に発現する。
【0071】
大腸菌K12宿主細胞のゲノムは、全長recE遺伝子とrecT遺伝子の内在性コピーからなり、これらは宿主ゲノムに組み込まれたRacファージに存在する。しかしながら、遺伝子はサイレントであるため、完全長のRecEの発現は、組み込まれた遺伝子から自然に生じることはできない。従って、いくつかの態様において5’-3’エキソヌクレアーゼは外因性DNAによって発現されるため、内因性recE遺伝子の非存在下で本方法を実行することができる。
【0072】
上記のようなエキソヌクレアーゼの核酸分子を用いて形質転換された宿主細胞も提供される。特に、エキソヌクレアーゼは核酸分子によって発現され、したがって、本開示は、本開示の方法で列挙されたエキソヌクレアーゼを発現する宿主細胞も提供する。エキソヌクレアーゼは、アラビノース誘導性プロモーター(PBAD)やラムノース誘導性プロモーター(PRhaSR)などの誘導性プロモーターの制御下で特に発現する。
【0073】
前述の態様において、本開示の方法は、in vitroで全体的または部分的に影響を受ける可能性がある。例えば、精製された5’-3’エキソヌクレアーゼとアニーリングタンパク質(特に精製されたRecEおよびRecTタンパク質)が使用でき、または 5’-3’エキソヌクレアーゼとアニーリングタンパク質を発現する大腸菌細胞の抽出物が使用される。本方法をin vitroで実施する場合、一本鎖相同末端を露出させるように、第1および第2の直鎖標的核酸分子を前処理することが有利である。
【0074】
直鎖-直鎖組換えでは、相同組換えが起こる標的直鎖核酸分子間で少なくとも1つの相同配列が共有されなければならない。いくつかの態様において、第1の標的核酸分子は、第2の標的核酸分子と相同配列を共有して、第1および第2の標的核酸分子間で直鎖-直鎖組換えを行い、直鎖産物を産生する。いくつかの態様において、第1および第2の直鎖核酸と1つ以上の追加の直鎖核酸との間で直鎖-直鎖組換えが起こり、直鎖産物が形成され、各直鎖核酸は、直鎖核酸と相同配列を共有し、該直鎖核酸は、直鎖-直鎖組換え反応の直鎖産生物においてその隣接物を形成する。いくつかの態様において、環状産物を形成するために、直鎖組換えが第1および第2の直鎖核酸と1つ以上の追加の直鎖標的核酸分子との間で起こり、各直鎖核酸は、直鎖核酸と相同配列を共有し、該直鎖核酸は、直鎖-直鎖組換え反応の環状産物においてその隣接物を形成する。いくつかの態様において、第1の標的核酸分子および第2の標的核酸分子は、2つの相同配列を共有して、第1および第2の標的核酸分子間で直鎖-直鎖組換えを行い、環状分子を形成する。当業者は、相同配列を設計して直鎖または環状分子を形成する方法を知っている。
【0075】
特に、少なくとも1つの相同ボックスが各直鎖断片の末端にある。相同ボックスが各直鎖断片の末端にあり、異なる相同ボックスがもう一方の末端にある場合、これらの相同配列または「相同ボックス」は最適な構成を生みだし、これらの相同ボックスの構築は組換えを可能にし環が生じる。相同ボックスが末端にない場合、直鎖組換えは生じ得るが、効率は低下する。このように、好ましい態様において、少なくとも1つの相同配列は、標的核酸分子の一方または両方の最末端に位置する。いくつかの態様において、少なくとも1つの相同配列は、特定の標的核酸分子の内側にある。
【0076】
本開示の相同配列は、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、 少なくとも100ヌクレオチドの長さである。例えば、いくつかの態様において、相同配列は4-6、6-9、6-30、6-100、10-20、20-29、20-40、20-50、10-100、25-30、25-40、25-50、30-40、30-50、40-50、40-80、または80を超えるヌクレオチドである。相同組換えの効率は、使用する相同ボックスの長さとともに向上するため、より長い相同ボックスを使用できる。
【0077】
2つの核酸分子間の「相同」とは、2つの核酸分子の配列が整列している場合、配列内の同じ位置に同一のヌクレオチド残基が多数存在することを意味する。相同の度合いは容易に計算される(Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.,ed., Oxford UniversityPress, New York,1988、Biocomputing. Informatics andGenome Projects, Smith,D.W.,ed., Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part1,Griffin, A.M., andGriffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey,1994、SequenceAnalysis in Molecular Biology, von Heinje,G.,Academic Press,1987、および Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux,J., eds., M StocktonPress, New York,1991)。
【0078】
いくつかの態様において、本開示の方法は、環状プラスミドなどの環状核酸分子を形成するために複数の直鎖核酸分子を結合することを含む。各標的核酸分子は、得られる環状産物においてその隣接を形成する標的核酸分子と少なくとも1つの相同配列を共有し、本開示の方法に従って直鎖-直鎖組換えを受ける。標的核酸分子の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上である。
【0079】
いくつかの態様において、標的直鎖核酸分子の少なくとも1つは、正しい組換え体の選択を可能にする選択マーカーを含む。本開示では、任意の適切な選択マーカーを使用することができる。いくつかの態様において、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子、例えば、クロラムフェニコール、アンピシリン、カナマイシン、またはブラストサイジンの耐性遺伝子である。
【0080】
標的直鎖核酸分子は、任意の適切な供給源に由来し得る。例えば、真核生物または原核生物からの核酸配列を含めることができる。いくつかの態様において、第1の標的直鎖核酸分子はゲノムDNAである。典型的に、ゲノムDNAはゲノムDNA断片である。ゲノムDNAは、特に標的配列を含んでいる。いくつかの態様において、ゲノムDNA断片から、ゲノムDNAの切断または消化(例えば、制限酵素の使用)により完全な標的配列を取得することができる。いくつかの態様において、第1の標的直鎖核酸分子(ゲノムDNA断片、cDNAライブラリーメンバー、またはBAC由来断片など)は、2kb以上の標的配列を含む (例えば、2.5kb以上、4kb以上、5kb以上、7.5kb以上、10kb以上、15kb以上、20kb以上、25kb以上、40kb以上、50kb以上、75kb以上または~100kb以上)。特に、標的配列は、第1の標的直鎖核酸分子の両端の相同ボックス間の領域全体である。例えば、二次代謝産物経路または脂肪酸合成経路をコードする遺伝子クラスター。いくつかの態様において、本開示の方法を使用して、ヒトまたは非ヒト動物ゲノムからDNA領域をダイレクトクローニングすることができる。例えば、健康研究のためのまたは遺伝子ターゲティングによる修正のための再生療法。例えば、いくつかの態様において、第1の標的核酸分子は、ヒトまたは非ヒト動物由来のゲノムDNA断片を含むかまたはそれからなる。ゲノムDNA断片は、突然変異を含む遺伝子などの標的配列を含むことができ、該突然変異は病気または状態をもたらすものであり、該突然変異の野生型配列への改変は、病気または状態を治療または予防することができるものである。いくつかの態様において、第1の標的核酸分子はゲノムDNA断片であり、第2の標的核酸分子は特に直鎖クローニングベクターである。
【0081】
いくつかの態様において、第1の標的核酸分子はゲノムDNA断片であり、本方法は、ゲノムDNAを消化または切断することにより第1の標的核酸分子を生じさせ、標的配列を含む直鎖ゲノムDNA断片を取得し、第1のエキソヌクレアーゼを使用して、ゲノムDNA断片と直鎖クローニングベクターの混合物を処理し、標的核酸分子を切断し、標的核酸分子を連結するためにアニーリングする工程で処理し、処理された核酸分子の混合物は、宿主細胞に移されることを含む。第2の標的核酸分子は、特に選択マーカーを含む。
【0082】
1つの態様において、本開示の方法は、in vitroでのDNA分子のライゲーションの工程を含む。
【0083】
in vitroでのライゲーション工程には、エキソヌクレアーゼ消化とそれに続くアニーリングが含まれる。
【0084】
エキソヌクレアーゼはT4ポリメラーゼである。
【0085】
in vitroでのライゲーション工程は、ギブソン構築を含む。
【0086】
in vitroでのライゲーション工程は、エキソヌクレアーゼを伴うまたは伴わないDNAポリメラーゼによるDNA合成とそれに続くアニーリングを含む。
【0087】
in vitroでのライゲーション工程は、RecA/RAD51、Redβ、RecT、PluβまたはRAD52などの一本鎖アニーリングタンパク質によるアニーリングを含む。
【0088】
相同組換えに使用される宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0089】
相同組換えのための宿主細胞は、全長RecEおよび/またはRecTを発現する大腸菌細胞である。
【0090】
相同組換えのための宿主細胞は、全長RecE、RecTおよび/またはRedγを発現する大腸菌細胞である。
【0091】
相同組換えのための宿主細胞は、切断型RecE、RecTおよび/またはRedγを発現する大腸菌細胞である。
【0092】
相同組換えのための宿主細胞は、全長RecEおよび/またはRecTを発現する任意の細菌細胞である。
【0093】
相同組換えのための宿主細胞は、Redα、Redβおよび/またはRedγを発現する大腸菌細胞である。
【0094】
相同組換えのための宿主細胞は、酵母(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
【0095】
本開示で使用するキットが提供される。いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載のエキソヌクレアーゼをコードする核酸を含む。いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載のエキソヌクレアーゼを含む。特に、第1のエキソヌクレアーゼは、T4 DNAポリメラーゼ(T4pol)、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(Kle)、T7DNAポリメラーゼ(T7pol)、エキソヌクレアーゼIII(ExoIII)、Phusion DNAポリメラーゼ(Phu)、T5エキソヌクレアーゼ(T5exo)、T7エキソヌクレアーゼ(T7exo)およびラムダ エキソヌクレアーゼ(λexo)であり、第2のエキソヌクレアーゼは全長RecEである。より具体的には、キットは本明細書に記載の宿主細胞を含む。いくつかの態様において、例えば、キットにおける宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下の本明細書に記載される全長RecE、RecT、Redγ、およびRecAをコードする核酸を含む。キットは、1つ以上の事前に準備された直鎖クローニングベクターも含まれる。
【0096】
本開示の別の好ましい態様は、合成生物学における直鎖核酸分子、特に直鎖DNAの構築に関する。したがって、いくつかの態様において、第1および第2の標的核酸分子は直鎖であり、本方法は、5’-3’エキソヌクレアーゼおよびアニーリングタンパク質の存在下で、第1および第2の標的核酸分子を1つ以上の他の直鎖標的核酸分子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、少なくとも10、少なくとも20の他の標的核酸分子)と接触させて直鎖または環状産物を生成することをさらに含む。1つの好ましい態様において、第1および第2の標的核酸分子と1つ以上の他の標的核酸分子との間の相同組換えは、遺伝子、オペロン、染色体または全ゲノムの産生をもたらす。DNA核酸の合成生物学的構築は、遺伝子、オペロン、染色体の生成に使用され、最近では全ゲノムの生成に使用されている。本開示の1つの態様において、第1のエキソヌクレアーゼと第2のエキソヌクレアーゼの組み合わせにより、直鎖核酸分子の構築効率が大幅に向上し、本開示は、商業および研究における合成生物学的DNA構築のための好ましい方法となる。
【0097】
本開示の別の好ましい態様は、本開示の方法を同質遺伝子相同ボックスとして使用し、哺乳類ゲノムから5~10 kbのDNA断片をダイレクトクローニングできるハプロタイプ同質遺伝子ターゲティングベクターを構築することであり、これらのDNA断片は同一遺伝子であるだけでなく、多型ハプロタイプも維持するため、発明者らはそれをハプロタイプ同質遺伝子ターゲティングベクター、いわゆるハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング(HIT)ベクターと呼ぶ。次に、選択マーカーと他の機能エレメントを組換え工学によってHITベクターに挿入し、ターゲティング用のベクターを取得する。本開示の他の好ましい態様は哺乳類細胞の遺伝子型判定である。完全なターゲティングエレメントを含むDNA断片は、本開示の方法により可能な標的胚性幹細胞のゲノムからクローンニングされ、クローニングによって得られた組換えプラスミドは、制限分析およびDNA配列決定に供され、細胞は結果に従って首尾よく決定される。
【実施例】
【0098】
材料と方法
【0099】
株とプラスミド
【0100】
大腸菌GB2005はfhuA、ybcCおよびrecETを欠損したDH10B(参考文献3、16、44)に由来する。GB05-dirは、PBAD-ETgAオペロン(アラビノース誘導性PBADプロモーター下の全長recE、recT、redγおよびrecA)(参考文献3)をybcC遺伝子座に組み込むことによりGB2005から派生した。GB08-redは、PBAD- gbaAオペロン(アラビノース誘導性PBADプロモーター下の全長recγ、recβ、redαおよびrecA)(参考文献16)をybcC遺伝子座に組み込むことによりGB2005から派生した。pSC101-BAD-ETgA-tet(参考文献3)は、テトラサイクリン耐性を伝達し、PBAD-全長ETgAオペロンを保有しおよび30℃で複製を行うが、37℃では行わない温度感受性pSC101複製起点を保有することから、選択がない場合、温度シフトにより宿主から容易に除去できる。
【0101】
ゲノムDNAの調製および消化
【0102】
グラム陰性フォトバクテリウム・ホスホレウム(Photobacterium phosphoreum)ANT-2200およびフォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens)DSM15139を50 mlの培地で一晩培養した。遠心分離後、細胞を8 mlの10 mM Tris-Cl(pH8.0)に完全に再懸濁した。500 μlの20 mg ml-1プロテイナーゼKと1 mlの10%SDSを加え、溶液が透明になるまで50℃で2時間インキュベートした。フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)抽出およびエタノール沈殿により、溶解物からゲノムDNAを回収した。DNAを10 mMTris-Cl(pH 8.0)に溶解し、14kb lux遺伝子クラスターのクローニングのためにBamHI + KpnIで消化した。
【0103】
グラム陽性ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)DSM41398は50 mlのトリプチックソイブロス(tryptic soy broth)で30℃で2日間培養した。わずかな修正を加えて、参考文献10に記載されている方法に従ってゲノムDNAを単離した。遠心分離後、細胞を8 mlのSETバッファー(75 mMNaCl、25 mM EDTA、20 mM Tris、pH 8.0)に完全に再懸濁し、10 mgのリゾチームを加えた。37℃で1時間インキュベーションした後、500μlの20 mg ml-1プロテイナーゼKと1 mlの10% SDSを加え、溶液が透明になるまで50℃で2時間インキュベートした。ライセートに3.5ミリリットルの5M NaClを加えた。フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)抽出およびエタノール沈殿により、ライセートからゲノムDNAを回収した。DNAを10 mM Tris-Cl(pH8.0)に溶解した。
【0104】
製造元の指示に従ってQiagen Blood&CellCulture DNA Kitsを使用して、マウスメラノーマB16細胞、ヒト胎児腎293T細胞、およびヒト血液からゲノムDNAを精製した。ただし、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)抽出およびエタノール沈殿により、プロテイナーゼK処理ライセートからDNAを回収した。DNAを10 mMTris-Cl(pH 8.0)に溶解した。制限消化されたゲノムDNAをフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)で抽出し、エタノールで沈殿させた。DNAを10 mM Tris-Cl(pH 8.0)に溶解した。 ゲノムDNAの切断を避けるために、エンドカットピペットチップを使用した。
【0105】
P・ルミネッセンス(P.luminescens) DSM15139のゲノムDNAを、plu3535-plu3532クローニングのためにXbaIで消化し、plu2670クローニングのためにXbaI + XmaIで消化した。サリノマイシン遺伝子クラスターのクローニングのために、S・アルブス(S. albus)のゲノムDNAをEcoRVまたはCas9-gRNA複合体で消化した。マウスゲノムDNAを、Prkar1aクローニング用のHpaIで、Dpy30クローニング用のBamHI + KpnIで、およびWnt4またはLmbr1l-Tuba1aクローニング用のSwaIで消化した。ヒトゲノムDNAを、DPY30クローニング用のSpeIで、IGFLR1-LIN37クローニング用のNdeI + BstZ17Iで、IGFLR1-ARHGAP33クローニング用のBstZ17Iで、およびZBTB32-LIN37クローニング用のNdeIで消化した。消化されたゲノムDNAをフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)で抽出し、エタノールで沈殿させた。DNAをddH2Oに溶解し、1μg μl-1に濃縮した。ゲノムDNAの切断を避けるために、エンドカットピペットチップを使用した。ExoCETクローニングには、消化したゲノムDNAの10マイクログラムを使用した。
【0106】
S・アルブス(S. albus)ゲノムDNAのCas9消化
【0107】
S・ピオゲネス(S. pyogenes) Cas9タンパク質はNew England Biolab から購入した。S・アルブス(S. albus)ゲノムDNAのCas9消化は、80μLの10×Cas9反応バッファー(NEB)、80μgのゲノムDNA、40μgのgRNA-2、40μgのgRNA-7および 20μgのCas9で行われた。Cas9の切断効率はDNA基質の純度に大きく影響されたため、この実験では、Cas9の切断効率を確保するため、S・アルブス(S. albus)ゲノムDNAをフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)で3回抽出する必要があった。得られた産物を37℃で6時間インキュベートした後、100μgのRNaseA(Thermo Scientific)を加え、37℃で1時間インキュベートした後、100μgのプロテイナーゼK(Roche)を加え、 インキュベーションを50℃で1時間継続した。次に、ゲノムDNAをフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)で1回抽出し、エタノール沈殿後、適切な量のddH2Oに溶解して、最終濃度約1μg uL-1にした。最後に、Cas9タンパク質によって切断された10μgのゲノムDNAを、本開示の方法のクローニング実験に使用した。
【0108】
直鎖クローニングベクターの調製
【0109】
鋳型としてp15A-Pamp-luxABECD plasmid(Genebridge)を使用し、p15A-cmベクターをPrimeSTARMax DNA Polymerase(Takara)でPCR増幅し、使用したプライマー(表1)は80ヌクレオチドの相同ボックスで構成され、PAGEで精製した。PCR産物は、ゲル回収によって後に続く実験でのプライマーの干渉を排除した。使用したキットは、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)である。最後に、DNAは約200 ng/μLの濃度のddH2Oで溶出され、200 ngがExoCETクローニング実験に使用された。
【0110】
サリノマイシン遺伝子クラスターのクローニングに使用されるpBeloBAC11ベクターとplu3535-3532のクローニングに使用されるpBAC2015ベクターは、参考文献43、46に従って構築した。BACベクターをBamHIで直鎖化して両方の相同アームを露出させ、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(25:24:1、pH 8.0)で抽出し、イソプロパノールで沈殿させた。DNAをddH2Oに溶解し、1μg/μLに濃縮した。ExoCETクローニングには1マイクログラムの直鎖BACベクターを使用した。
【0111】
表1:p15A-cm直鎖ベクターによるオリゴヌクレオチド増幅
【表1】
【0112】
表1の小文字は、相同ボックス配列を表す。
【0113】
複数断片構築用PCR産物の調製
【0114】
複数部分構築実験で使用される40bpの相同性を有するDNA断片は、製造業者の指示に従って、鋳型としてP・ルミネッセンス(P. luminescens) DSM15139のゲノムDNAおよびPrimeSTARMax DNAポリメラーゼ(タカラ)を使用してPCR増幅した。電気泳動後にアガロースゲルからPCR産物を抽出し、製造元の指示に従ってQIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を使用して精製した。ただし、DNA はddH2Oでカラムから溶出し、200ngμL-1に濃縮した。 250 ngの各断片をDNA構築に使用した。
【0115】
mVenus-PGK-neo DNAカセットの調製
【0116】
mVenus-PGK-neoカセットは、製造業者の指示に従って、PrimeSTARMax DNA ポリメラーゼ(Takara)を使用して、PCRでpR6K-2Ty1-2PreS-mVenus-Biotin-PGK-em7-neo(参考文献17)から増幅した。プライマーは表1に記載されている。PCR産物は、製造業者の指示に従ってQIAquick PCR PurificationKit (Qiagen)で精製した。ただし、DNAはddH2Oでカラムから溶出し、100 ngμL-1に濃縮した。200ナノグラムのカセットが組換え工学に使用された。
【0117】
In vitro構築
【0118】
10マイクログラムのゲノムDNAと200 ngの2.2 kb p15A-cm直鎖ベクター(1μgの8 kb直鎖BACベクター)を、2μLの10 x NEBuffer 2.1と0.13μLの3 U μL-1 T4pol(NEB、カタログ番号M0203)からなる20μL反応液で構築した。構築反応物を0.2 ml PCRチューブで調製し、サーモサイクラーで次のとおりサイクルを行った:25℃で1時間、75℃で20分、50℃で30分、その後4℃で保持。複数部分構築の場合、250 ngの各断片を追加し、20分のチューイングバック(chewing back)時間を使用した。エレクトロポレーションの前に、MilliporeMembrane Filters (Merck-Millipore、カタログ番号VSWP01300)を使用してddH2Oに対する滴下透析により、室温で30分間、in vitro構築産物を脱塩した。すべての実験を3回行った。
【0119】
他のエキソヌクレアーゼでの構築反応は下記のとおりサイクルを行った:T5exo:50℃で30分間、その後4℃で保持;T7exo:25℃で20分、50℃で30分、その後4℃で保持;Kle、T7polおよびλexo:25℃で20分、75℃で20分、50℃で30分、その後4℃で保持;ExoIII:37℃で20分間、75℃で20分間、50℃で30分間、その後4℃で保持; Phu:37℃で20分間、50℃で30分間、その後4℃で保持。ギブソン構築は、Gibson Assembly Master Mix(NEB、カタログ番号E2611)を使用して50℃で30分行い、その後4℃で保持した。
【0120】
大腸菌細胞エレクトロコンピテントセルの調製
【0121】
pSC101-BAD-ETgA-tet プラスミドを有する大腸菌GB05-dir を4μg/mLテトラサイクリンを添加したLBで30℃で一晩培養した(OD600 = 3~4)。40μLの一晩培養物(OD600= 3~4)を適切な抗生物質を添加したLB 1.4 mLに移し、混合物をエッペンドルフサーモミキサーに30℃で置き、950 rpmで2時間インキュベートした(OD600 = 0.35~0.4 )。35μLの10%L-アラビノース(w/v、ddH2O中)を添加して組換え酵素(ETgAまたはgbaA)の発現を誘導し、37℃で40分間インキュベートした(OD600 =0.7~0.8)。細胞を、2℃で30秒間、9,400gで遠心分離することにより収集した。
【0122】
上清を捨て、細胞ペレットを1 mLの氷冷ddH2Oに懸濁した。細胞を、2℃で30秒間、9,400gで遠心分離することにより収集した。上清を捨て、細胞ペレットを1 mLの氷冷ddH2Oに懸濁した。細胞を繰り返し遠心分離、再懸濁し、再度遠心分離し、細胞を20μLの氷冷ddH2Oで懸濁した。次に、5μLの脱塩in vitro構築産物を加え、mVenus-PGK-neoエレメント挿入実験では、200 ngのプラスミドと200 ngのPCR産物の混合物を加えた。細胞とDNAの混合物を1mmキュベットに移し、1350Vの電圧、10uFの電気容量、および600Ωの抵抗でエッペンドルフエレクトロポレーター2510を使用してエレクトロポレーションした。1 mL LBを電気ショックカップに加え、細胞を洗浄し、穴のある1.5 mLチューブに移してから、エッペンドルフサーモミキサーに950 rpm、37℃で1時間置いた。最後に、適切な量の細菌溶液を、適切な抗生物質(15μg/mLクロラムフェニコールまたは15μg/mLカナマイシン)を添加したLBプレートに広げ、37℃で一晩インキュベートした。
【0123】
実施例1
【0124】
In vitro構築と完全長RecE/RecTの協調作用により、ダイレクトクローニングの効率が向上する
【0125】
発明者らは、フォトバクテリウム・ホスホレウム(Photobacterium phosphoreum) ANT-2200(参考文献47)の14kb lux遺伝子クラスターのダイレクトクローニングにより、一連のエキソヌクレアーゼおよびアニーリング法を試験した(
図1a)。本クローニング実験において、BamHIおよびKpnIを使用して消化した10μgのANT-2200ゲノムDNAを200 ngの2.2kb p15A-cm直鎖ベクターと混合した。直鎖ベクターの両端には、制限消化によって生成されたlux遺伝子クラスターを含むゲノム断片の両端(相同ボックス)と同一の配列がある。直鎖ベクターは、両端の相同ボックスを介して標的DNA断片と相同組換えされ、最終的に環状プラスミドを形成する。クローニングベクターとBamHI+ KpnI消化ゲノムDNAをまず異なるエキソヌクレアーゼ酵素でin vitroで処理し、次にin vitro処理後の反応産物をRecE/RecT組換え酵素を発現する大腸菌に形質転換した。試験されたエキソヌクレアーゼは以下を含む: T4 DNAポリメラーゼ(T4pol)、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片(Kle)、T7 DNAポリメラーゼ(T7pol)、エキソヌクレアーゼIII(ExoIII);Phusion DNAポリメラーゼ(Phusion DNAポリメラーゼ; Phu)、T5エキソヌクレアーゼ(T5exo);T7エキソヌクレアーゼ(T7exo)およびラムダエキソヌクレアーゼ(λexo)(
図2a)。結果は、T4pol、Kle、T5exo、およびT7exoがダイレクトクローニングの効率を有意に改善することを示した(
図2A-E)。エキソヌクレアーゼ消化後のアニーリング速度はクローニング効率に影響を及ぼさないため、発明者らはEppendorf MC nexus PCR機でデフォルトの冷却速度(2℃ s
-1)を選択した(
図3)。ダイレクトクローニング効率に対するT4polの濃度、反応温度、反応時間の影響を試験した(
図1c、dおよび
図2f)。完全長RecE/RecTのみ、T4pol in vitroアニーリングのみ、およびT4pol in vitroアニーリングと完全長RecE/RecTの組み合わせを使用したダイレクトクローニングの効率を比較した(
図1f)。RecE/RecTを単独で使用すると、発光細菌の染色体由来の14 kb lux遺伝子クラスターがp15Aベクターに高精度でダイレクトクローニングされたが(427)、標準的な大腸菌へのT4pol in vitro構築後の反応産物のダイレクトクローニング構築は、はるかに効率的であった(427対4,880)。以下の結果が示された:(1)大腸菌の内在性DNA修復システムは、プラスミド骨格を巧みに閉じることができる;(2)T4polは、in vitro構築において非常に効率的である(4880);(3)T4pol in vitro構築とRecE/RecT細胞内組換えを組み合わせたExoCET法は、いずれか一方の手法のみよりも効率的である(32500)。
【0126】
実施例2
【0127】
クローニング効率における相同ボックスの影響
【0128】
相同ボックスが長いほど、クローニング効率が高くなる(
図1b)。本発明者らは、クローニングベクターの一端にある80 bpの相同ボックスを遺伝子クラスター内の1 kbの一端に位置に配置するか、遺伝子クラスター内の1 kbの両端の位置に配置し、ExoCETの効率をT4polおよびRecETの効率と比較した(
図5b)。ベクターの相同ボックスが両端にあるとき、発明者は以前と同じ結果を得た。しかしながら、1つまたは2つの相同ボックスが遺伝子クラスターの1 kbの内側に配置された場合、T4pol単独での処理のクローニング効率は非常に低かったことから、T4polエキソヌクレアーゼ処理後のアニーリングは、末端DNA配列の相補的なペアリングに依存していたことが示される。RecET組換えの効率は、相同ボックスの位置とはほとんど関係がないことが注目に値した。1つの相同ボックスが末端にあり、もう1つの相同ボックスが内側にある場合に得られた実験結果は、示唆に富むものだった。ベクターとゲノムDNA断片の間に末端相同ボックスが1つしかない場合、ExoCETの効率はRecETの12倍だった。このことはT4pol in vitro処理により、エレクトロポレーションおよびRecET組換えの前に一方の末端をアニーリングすることにより、2つのDNA分子を効率的に連結できたことを示す。上記のデータは、T4polが末端相同ボックスにのみ作用することができ、内側にある相同ボックスの組換えにはRecETの作用が必要であることを示した。したがって、発明者らは、T4polのExoCETへの主な貢献は、2つの直鎖DNA分子の一端をアニーリングすることにより、同時形質転換効率を大幅に高めることであると結論付けた。それから、RecETは他方の末端の再構築の促進に使用できる。14 kb lux遺伝子クラスターのクローニング実験では、両方の相同ボックスが標的の消化されたゲノム断片の末端にある場合、ExoCETのクローニング効率はT4polの6~8倍だった(
図1fおよび
図5b)。このことは、ほとんどのin vitro構築産物は、末端結合部は1つだけ(>85%)を有しており、In vitro構築された環状産物と2つの直鎖DNA分子の同時形質転換後にRecETによって産生された組換えプラスミドは、ExoCETの高効率にほとんど寄与しなかったことを示す。ExoCETダイレクトクローニング実験を設計する際、相同ボックスの位置はクローニング効率のために非常に重要だった。最高のクローニング効率を達成するために、両方の相同ボックスを標的DNA断片の末端に配置した。事実、T4polエキソヌクレアーゼとin vitroアニーリングの効果を発揮するために、少なくとも1つの相同ボックスを末端に配置した。しかしながら、RecE/RecTはそれを限局化して組換えすることができるため、もう一方の相同ボックスを標的DNA断片の内側に配置することができる。このことは、相同ボックスの1つを標的断片の3’末端の最末端に配置し、標的遺伝子の5’末端を内側の相同ボックスを使用してプロモーターとリボソーム結合部位の制御下に直接配置することができることから、ダイレクトクローニングを使用して発現ベクターを構築する場合に非常に有利だった。
【0129】
実施例3
【0130】
RecEおよびRecTの両者はExoCETに必要
【0131】
RecTは一本鎖DNAアニーリングタンパク質であり、発明者らはRecTがT4pol(3’エキソヌクレアーゼ)によって産生された一本鎖DNA領域をアニーリングでき、ExoCET技術システムではRecEは必要ない場合があると仮定した。この推測を検証するために、本発明者らは、T4polで処理したDNA基質を、RecTおよびRedγ(pSC101-Tg)を発現しRecEを発現しない大腸菌細胞に形質転換したところ、RecTとT4polとの相互作用を認めなかった。したがって、ExoCETにはRecEとRecTの両方が必要だった(
図5c)。RecAでは、ダイレクトクローニングの効率がある程度改善された。
【0132】
実施例4
【0133】
大きなDNA断片のダイレクトクローニングの検証
【0134】
ExoCET技術の優位性を検証するため、本発明者らは、ExoCET技術を使用して、従来RecET技術で行うことが困難であったいくつかの実験を行った。フォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens)のゲノムには2つの大きな遺伝子クラスターがある:37.5 kb plu3535-3532と52.6 kb plu2670。本発明者らがRecET技術を用いてこれら2つの遺伝子クラスターをダイレクトクローニングすることは非常に困難であり、効率はそれぞれわずか2/12および0/483だった。一方、発明者はExoCET技術を使用することにより、それぞれ10/12および11/17の妥当な割合を達成した(表2)。
【0135】
表2 ExoCETを使用した、細菌、哺乳類細胞、およびヒトの血液からのゲノムDNAの大きな断片のダイレクトクローニング
【表2】
【0136】
さらに、以前、発明者は、ストレプトマイセス・アルビカンス(Streptomyces albicans)ゲノムから106 kbサリノマイシン遺伝子クラスターをダイレクトクローニングする試みに失敗した。そのため、発明者はそれを3つの断片に分割し、段階的にクローニングを実行し、完全な遺伝子クラスターに統合する必要があった(参考文献43)。しかしながら、ExoCETを介して、本発明者らは、相同ボックスおよびEcoRV消化ゲノムDNAを備えたBACベクターを使用することにより、106kbサリノマイシン遺伝子クラスターをBACベクターにダイレクトクローニングすることができ、妥当な割合の2/24を得た(表2および
図6)。106kbのサリノマイシン遺伝子クラスターの両側にEcoRV制限部位があったため、本発明者らはそれを染色体から放出させ、ベクターにクローニングすることができた。大きなDNA断片をクローニングする場合、標的DNA断片の両側に適切な制限部位を見つけることが困難な場合があるが、プログラム可能なヌクレアーゼを使用すると、特にRNAを介したエンドヌクレアーゼ-Cas9のように、制限部位の制限を排除できる(参考文献48、49)。この考えを確かめるために、本発明者らは、Cas9を使用して、EcoRVに非常に近い染色体から106kbサリノマイシン遺伝子クラスターを放出し、次に同じBACベクターを使用して同じ106kb DNA断片をBACベクターにクローニングした。同様のクローニング効率が最終的に得られた(表2および
図6)。したがって、ExoCETは、RecETと比較して、大きなDNA断片のダイレクトクローニングにおいて非常に優れたパフォーマンスを示した。
【0137】
次に、本発明者らは、ExoCETの効率が哺乳類ゲノムから大きなDNA断片をダイレクトクローニングする要件を満たすことができるかどうかを試験した。本発明者らは、SwaIを使用して、マウスゲノムからWnt4遺伝子を含む45kb断片を放出した(
図7a)。そして、発明者はExoCETを介して8/25の妥当な割合を取得した(
図7b)。本発明者らは、このDNA断片をクローニングするためのギブソン構築(参考文献1)の使用も試験した。ギブソン構築は、T5exo、Phusion DNAポリメラーゼ、およびTaq DNAリガーゼを使用して、互いの間に相同ボックスを持つDNA分子を構築する。本発明者らは、ギブソン構築DNA産物をpSC101-BAD-ETgA-tetを含むアラビノース誘導および非誘導大腸菌GB05-dirに形質転換することにより、多数のコロニー(181,000および257,000)を得た。そして、60個のコロニーが検出されたが、正しいクローンは得られず(
図7b)、すべて自己環状化のp15A空ベクターだった。
【0138】
実施例5
【0139】
ExoCETを使用するDNA断片の構築
【0140】
ギブソン構築は複数の断片DNA構築の方法であることから、本発明者らは、いくつかのDNA多重断片構築実験を通じてExoCETとギブソン構築を比較した(
図7c). これらのDNA断片はPCRによって増幅され、末端に40 bpの相同ボックスがあった。ExoCETおよびGibson構築の効率は、7の断片および10の断片構築の実験で良好だった。ギブソン構築によるin vitro構築産物が、RecE、RecT、RedγおよびRecA(ギブソンおよびETgA)を発現する大腸菌細胞に形質転換されたとき、構築の効率と精度が大幅に向上した(
図7d)。ExoCETは13を超えるDNA断片を構築することができず、ギブソンは16を超えるDNA断片を構築することができなかった。一方、ギブソンおよびETgAでは、少なくとも20のDNA断片を構築し54.9 kbのプラスミドにできた。したがって、in vitro構築とRecET組換えを組み合わせることで、DNA構築の利点が明らかになった。
【0141】
実施例6
【0142】
ExoCETを使用するハプロタイプ同質標的ベクターの構築
【0143】
ExoCETを使用して、血液、疾患関連細胞株などを含む哺乳類ゲノムからDNA断片をダイレクトクローニングし、SNPのハプロタイプ研究を促進し、ヌクレアーゼ媒介ヒト幹細胞を標的とするハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング(HIT)ベクターを迅速に構築することもできる。生物医学研究における患者、臍帯血または初期化体細胞から単離されたヒト幹細胞の重要性はますます注目された。幹細胞ゲノムの正確な修飾に関する研究も広く注目されていた。ヒトの遺伝的多様性が複雑であったため、ヒトゲノムの形質転換は実験マウスのゲノムの構造化よりも困難だった。相同組換えにおける同質性(配列類似性)の重要性は、遺伝子ターゲティングにマウス胚性幹細胞を使用するときに、何年も前に理解された(参考文献14)。
【0144】
配列ミスマッチ相同組換えの影響は十分に研究されていない。例えば、単一のミスマッチ(SNPまたはインデル)がどの程度の組換え効率を低下させ得るのか。ミスマッチ組換え部位の距離は、組換え効率にどのように影響したか。複数のミスマッチは組換え効率にどのように影響したか。これらの問題はまだ明確にされていない。いずれにせよ、遺伝子ターゲティングに同一の配列を使用することが明らかに強く推奨されるため、ExoCETは理想的な相同ボックスを迅速に取得するため効果的である。PCRによるゲノムから相同ボックスを増幅する方法とは異なり、ExoCETは、断片の大きさに制限されず、突然変異を導入せず、DNAハプロタイプを維持できる。さらに、相同ボックスの末端は、遺伝子型判定の形式(サザンブロッティングまたはライゲーションPCRなど)に従って選択することもでき、相同ボックスの長さを最適化できる。したがって、ExoCETは、特にCRISPR/Cas9(参考文献15)と組み合わせると、個別のゲノム手術に利点をもたらす。
【0145】
本発明者らは、哺乳動物ゲノムを操作するための同質遺伝子ターゲティングベクターを構築するためにExoCETを使用した。マウス胚性幹細胞研究での経験(参考文献50)を考えると、本発明者らは、ヒトまたはマウスのゲノムから同質遺伝子相同ボックスとして5~10kbのDNA断片をダイレクトクローニングすることを目指した(
図8a、
図9a)。これらのDNA断片が同じ遺伝子であるだけでなく、多型ハプロタイプも維持していることは注目に値するため、発明者はそれをHIT(ハプロタイプ同質遺伝子ターゲティング)ベクターと呼んだ。本発明者らは、ExoCETにより、ヒトゲノム(in vitro培養細胞株およびヒト血液)およびマウス(in vitro培養細胞株)から8~9kbのDNA断片をダイレクトクローニングした(
図8bおよび
図9b)。次に、選択マーカーと他の機能性エレメント(参考文献16)をRedαβ組換え工学によりHITベクターに挿入した(
図8cおよび
図9c)。
【0146】
実施例7
【0147】
ExoCETを使用する哺乳動物細胞の遺伝子型判定
【0148】
修飾されたゲノムの遺伝子型判定の最も信頼できる方法としても使用できるが、一方でサザンブロッティングおよびライゲーションPCRは偽陽性シグナルを生成する可能性がある。哺乳類の遺伝子型判定研究では、長距離PCRが偽陽性シグナルを生じやすいため、以前の本発明者らは、サザンブロッティングによるロングセグメントPCRによってスクリーニングされたKmt2d-AID-neoでターゲティングされたマウス胚性幹細胞の確認を望んでいた。しかしながら、発明者は良いプローブを得ることはなかった。したがって、本発明者らは、ExoCET法を使用して、4つの可能性のあるKmt2d-AID-neoでターゲティングされたマウス胚性幹細胞のゲノムから全ターゲティングエレメントを含むDNA断片をクローニングした(
図10a)。ExoCETによってクローニングされた組換えプラスミドは制限分析とDNA配列決定にかけ、その結果4つの細胞が正常にターゲティングされ、単一のターゲティングが行われたことが示された(
図10b)。さらに、本発明者らは、ExoCETを使用して、以前に取得したOct4-Venus-neo、Nanog-Cherry-neo、Gata2-Venus-neoおよびSet1b-TC-neoターゲティングマウス胚性幹細胞を再検証することに成功した(表3)。これらのターゲティングされた細胞は、サザンブロッティングにより以前に検証されていた。これらの結果は、ExoCET遺伝子型判定に部位制限がないことを示した。ロングレンジPCRおよびサザンブロッティングでは、正確なシグナルが得られなかったことから、本発明者らは、以前、Klf4-Venus-neoでターゲティングされたマウス胚性幹細胞がうまくターゲティングされたかどうかを決定できなかった。本発明者らは、ExoCETを使用して、ゲノム上の対応する領域にカナマイシン耐性を有するDNA断片をクローニングしなかった(表3)。クローニングされたクロラムフェニコール耐性プラスミドの制限分析により、それらの50%に野生型DNA配列が含まれていることがわかった(
図11)。したがって、本発明者らは、この細胞が正しくターゲティングされていないことを完全に知っていた。
【0149】
表3 ExoCET遺伝子型判定の実験データ
【表3】
【0150】
表3の*は制限分析後を意味する。
【0151】
表3の**は残り10個は分子内組換え(クローニングされた標的配列に40 bpを超える11個のダイレクトリピートを含む)されたことを意味する。
【0152】
表4 最適化ExoCET 遺伝子型判定を要する Oct4-Venus-neoでターゲティングされたマウス胚性幹細胞のゲノムDNAの量
【表4】
【0153】
表4の*は制限分析後を意味する。
【0154】
ExoCET遺伝子型判定は、ロングレンジPCRと比較して偽陽性シグナルを生成しなかった。サザンブロッティングと比較して、ExoCET遺伝子型判定はよりシンプルで、ハイブリダイゼーションプローブの面倒なスクリーニングを必要としなかった。ExoCET遺伝子型判定において、インタクトのターゲティング要素の放出のための制限酵素部位は容易に入手可能であり、十分に準備されたゲノムの場合、遺伝子型決定の結果は3日で得られた。より重要なことに、ExoCETは決して偽陽性信号を生成しなかった。ターゲティング要素には選択マーカーがあったため、500 ngの制限酵素ゲノムDNAである限りクローニング効率を高めるのに十分である(表4)。ExoCET遺伝子型判定のスループットを高めるには、96ウェルプレートで培養した細胞を使用できる。
【0155】
実施例8
【0156】
ExoCETクローニング技術のメタゲノム試料への適用
【0157】
全ゲノム配列決定結果の機能分析には、発現ベクター構築の簡単かつ迅速な方法が必要である。本開示の方法によれば、本発明者らは、3.0×109bpゲノムから最大50kbのDNA断片をクローニングすることができる。この目的を達成するために、本発明者らは、メタゲノミクスを模倣するために1ngのP.ホスホレウム(P. phosphoreum)ゲノムDNAを10μgの枯草菌(Bacillussubtilis)ゲノムDNAに希釈した。この実験では、ExoCETによって14 kb lux遺伝子クラスターのクローニングに成功し、かなりの効率が得られた(表5)。通常、環境試料には104種以上が含まれていることから(参考文献51~53)、その結果、発明者は、ExoCETクローニング技術をメタゲノム試料に適用するように動機付けられ得る。
【0158】
表5 14 kb lux 遺伝子クラスターはExoCETを使用した希釈P.ホスホレウム(P. phosphoreum)ゲノムからダイレクトクローニングされた
【表5】
【0159】
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