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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020504541
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2018008685
(87)【国際公開番号】W WO2019171481
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】水野 寿明
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢司
(72)【発明者】
【氏名】伊部 忠勝
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189684(WO,A1)
【文献】特開平10-224088(JP,A)
【文献】特開2014-067860(JP,A)
【文献】特開2016-025131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持する保持具と、
基板を搬送するとともに、所定の位置において固定的に保持する基板搬送保持装置と、
前記保持具を移動させる移動装置と、
前記移動装置を作動させて、前記保持具に保持された部品が前記所定の位置において固定的に保持された基板への接触を検出する検出センサと、
前記移動装置を作動させて、前記所定の位置において固定的に保持された基板の装着予定位置に異物が有るか否かを前記検出センサによって異物検出を実行しながら前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第1装着作業と、前記検出センサによって前記異物検出を実行することなく前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第2装着作業とを選択的に実行し、前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業において、前記第1装着作業に要する時間が前記第2装着作業に要する時間より長くなるように、かつ前記第1装着作業時における前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業に要する時間が変更できるように前記移動装置の作動する速度あるいは加速度を制御して、前記所定の位置において固定的に保持された基板に前記保持具に保持された部品を装着可能な制御装置と
を備える部品実装システム。
【請求項2】
前記部品実装システムは、
前記所定の位置において固定的に保持された基板の任意の位置に向かって光を照射して、光を照射した位置の基板の高さを検出可能な検出装置を備え、
前記制御装置は、
前記検出装置により検出された前記基板の高さを利用して前記第1装着作業を実行する請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
前記検出センサは、
非接触式のセンサである請求項1または請求項2に記載の部品実装システム。
【請求項4】
部品を保持する保持具と、
基板を搬送するとともに、所定の位置において固定的に保持する基板搬送保持装置と、
前記保持具を移動させる移動装置と、
前記移動装置を作動させて、前記保持具に保持された部品が前記所定の位置において固定的に保持された基板への接触を検出する検出センサと、
前記移動装置を作動させて、前記所定の位置において固定的に保持された基板の装着予定位置に異物が有るか否かを前記検出センサによって異物検出を実行しながら前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第1装着作業と、前記検出センサによって前記異物検出を実行することなく前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第2装着作業とを選択的に実行し、同一基板種の作成作業において、前記第1装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間が前記第2装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間より長くなるように、かつ前記第1装着作業時における前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業に要する時間が変更できるように前記移動装置の作動する速度あるいは加速度を制御して同一基板種を作成可能な制御装置と
を備える部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を保持する保持具と、保持具を移動させる移動装置とを備える部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装システムは、部品を保持する保持具と、保持具を移動させる移動装置とを備え、移動装置の作動が制御されることで、保持具に保持された部品が基板等に装着される。下記特許文献には、そのような部品実装システムの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-186382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、適切に部品の装着作業を行うことが可能な部品実装システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、部品を保持する保持具と、基板を搬送するとともに、所定の位置において固定的に保持する基板搬送保持装置と、前記保持具を移動させる移動装置と、前記移動装置を作動させて、前記保持具に保持された部品が前記所定の位置において固定的に保持された基板への接触を検出する検出センサと、前記移動装置を作動させて、前記所定の位置において固定的に保持された基板の装着予定位置に異物が有るか否かを前記検出センサによって異物検出を実行しながら前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第1装着作業と、前記検出センサによって前記異物検出を実行することなく前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第2装着作業とを選択的に実行し、前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業において、前記第1装着作業に要する時間が前記第2装着作業に要する時間より長くなるように、かつ前記第1装着作業時における前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業に要する時間が変更できるように前記移動装置の作動する速度あるいは加速度を制御して、前記所定の位置において固定的に保持された基板に前記保持具に保持された部品を装着可能な制御装置とを備える部品実装システムを開示する。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本明細書は、部品を保持する保持具と、基板を搬送するとともに、所定の位置において固定的に保持する基板搬送保持装置と、前記保持具を移動させる移動装置と、前記移動装置を作動させて、前記保持具に保持された部品が前記所定の位置において固定的に保持された基板への接触を検出する検出センサと、前記移動装置を作動させて、前記所定の位置において固定的に保持された基板の装着予定位置に異物が有るか否かを前記検出センサによって異物検出を実行しながら前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第1装着作業と、前記検出センサによって前記異物検出を実行することなく前記保持具に保持された部品を前記基板の装着予定位置に装着する作業を行う第2装着作業とを選択的に実行し、同一基板種の作成作業において、前記第1装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間が前記第2装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間より長くなるように、かつ前記第1装着作業時における前記保持具に保持されたひとつあたりの部品の装着作業に要する時間が変更できるように前記移動装置の作動する速度あるいは加速度を制御して同一基板種を作成可能な制御装置とを備える部品実装システムを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、異物検出を実行しながら部品の装着作業を行う第1装着作業と、異物検出を行うことなく部品の装着作業を行う第2装着作業とが選択的に実行される。そして、ひとつあたりの部品の装着作業において、第1装着作業に要する時間が第2装着作業に要する時間より長くされている。若しくは、同一基板種の作成作業において、第1装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間が第2装着作業を用いた基板の作成作業に要する時間より長くされている。これにより、装着予定位置の異物の有無を適切に判断し、適切に部品の装着作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品実装機を示す斜視図である。
図2】部品実装機の部品装着装置を示す斜視図である。
図3】作業ヘッドの一部を示す側面図である。
図4】制御装置を示すブロック図である。
図5】異物の無い回路基材への装着作業を示す図である。
図6】異物の有る回路基材への装着作業を示す図である。
図7】作業ヘッドの下降速度と下降加速度と検知高さとの関係を示す表である。
図8】作業ヘッドの下降速度と下降加速度と検知高さとの関係を示すグラフである。
図9】反りの生じた回路基材への装着作業を示す図である。
図10】回路基材の高さの測定位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0010】
(A)部品実装機の構成
図1に、部品実装機10を示す。部品実装機10は、回路基材12に対する部品の実装作業を実行するための装置である。部品実装機10は、装置本体20、基材搬送保持装置22、部品装着装置24、マークカメラ26、高さセンサ27、パーツカメラ28、部品供給装置30、ばら部品供給装置32、制御装置(図4参照)36を備えている。なお、回路基材12として、回路基板、三次元構造の基材等が挙げられ、回路基板として、プリント配線板、プリント回路板等が挙げられる。
【0011】
装置本体20は、フレーム部40と、そのフレーム部40に上架されたビーム部42とによって構成されている。基材搬送保持装置22は、フレーム部40の前後方向の中央に配設されており、搬送装置50とクランプ装置52とを有している。搬送装置50は、回路基材12を搬送する装置であり、クランプ装置52は、回路基材12を保持する装置である。これにより、基材搬送保持装置22は、回路基材12を搬送するとともに、所定の位置において、回路基材12を固定的に保持する。なお、以下の説明において、回路基材12の搬送方向をX方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY方向と称し、鉛直方向をZ方向と称する。つまり、部品実装機10の幅方向は、X方向であり、前後方向は、Y方向である。
【0012】
部品装着装置24は、ビーム部42に配設されており、2台の作業ヘッド56,58と作業ヘッド移動装置62とを有している。作業ヘッド移動装置62は、図2に示すように、X方向移動装置63とY方向移動装置64とZ方向移動装置65とによって構成されている。X方向移動装置63及びY方向移動装置64は、それぞれ、電磁モータ(図4参照)66,68を有しており、各電磁モータ66,68の作動により、2台の作業ヘッド56,58が、一体的にフレーム部40上の任意の位置に移動する。また、Z方向移動装置65は、電磁モータ(図4参照)70,72を有しており、各電磁モータ70,72の作動により、スライダ74,76が個別に上下方向に移動する。そして、そのスライダ74,76に作業ヘッド56,58が着脱可能に装着されている。これにより、作業ヘッド56,58は、Z方向移動装置65によって、個別に上下方向に移動する。
【0013】
また、各作業ヘッド56,58は、回路基材12に部品を装着するものであり、下端面に設けられた吸着ノズル78を有している。吸着ノズル78は、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(図4参照)80に通じている。吸着ノズル78は、負圧によって電子部品を吸着保持し、保持した電子部品を正圧によって離脱する。また、作業ヘッド56,58は、吸着ノズル78に保持された部品の回路基材12への接触を検出するための検出センサ82を有している。
【0014】
詳しくは、作業ヘッド56,58は、図3に示すように、概して円筒状のホルダ86を有しており、そのホルダ86は、作業ヘッド56,58の下部において、保持軸88により上下方向にスライド可能保持されている。そして、ホルダ86は、圧縮コイルスプリング(図示省略)により、作業ヘッドに対して下方に向かって付勢されている。ただし、ホルダ86の下方への付勢は、ストッパ(図示省略)により所定の位置で規制されている。また、ホルダ86によって、吸着ノズル78が着脱可能に保持される。このような構造により、吸着ノズル78は、作業ヘッド56,58の下面において、上方に向かって押し込み可能に保持されている。
【0015】
また、検出センサ82は、非接触式の光電センサであり、照射部90と受光部92とを含み、照射部90から照射された光がホルダ86の側面において反射し、その反射した光を受光部92が受光する。ホルダ86の側面の上部には、フランジ部96が形成されており、ホルダ86の側面は段差面とされている。そして、ホルダ86が最も下方にスライドしている際に、照射部90から照射された光は、ホルダ86のフランジ部96に照射される。
【0016】
このため、ホルダ86が最も下方に位置し、照射部90から照射された光がフランジ部96において反射した場合と、ホルダ86が上方に向かってスライドし、照射部90から照射された光がフランジ部96より下方の側面において反射した場合とでは、各々の検出高さが異なることから、検出センサ82による検出値が異なる。つまり、ホルダ86により保持された吸着ノズル78が、最も下方にスライドしている箇所から、上方に向かって所定量、押し込まれることで、照射部90からホルダ86の側面に照射される箇所がフランジ部96からフランジ部96の下方に移動し、検出センサ82による検出値が変化する。このような構造により、検出センサ82は、吸着ノズル78に保持された部品が回路基材12に接触した際に、圧縮コイルスプリングが更に圧縮されて、吸着ノズル78が、最も下方にスライドしている箇所から、上方に向かって所定量、押し込まれたことを検出する。つまり、検出センサ82は、吸着ノズル78に保持された部品の回路基材12への接触を検出する。これにより、後に詳しく説明するが、吸着ノズル78に保持された部品の回路基材12への装着時において、作業ヘッド56,58の下降、つまり、Z方向移動装置65の電磁モータ70,72の作動が、例えば、作動速度や作動加速度、あるいは、作動時間等を考慮して制御される。
【0017】
また、マークカメラ26は、図2に示すように、下方を向いた状態でスライダ74に取り付けられており、作業ヘッド56とともに、X方向,Y方向およびZ方向に移動する。これにより、マークカメラ26は、作業ヘッド移動装置62の作動により任意の位置に移動し、フレーム部40上の任意の位置を撮像する。
【0018】
また、高さセンサ27も、スライダ74に取り付けられている。高さセンサ27は、レーザ光反射式の測長センサであり、レーザ光を用いて、回路基材12の高さを検出する。つまり、高さセンサ27が、作業ヘッド移動装置62の作動により、クランプ装置52に保持された回路基材12の上方に移動する。そして、高さセンサ27が回路基材12に向かってレーザ光を照射し、回路基材12により反射した反射光を受光する。これにより、回路基材12と高さセンサ27との間の距離が測長され、回路基材12の任意の位置の高さが検出される。
【0019】
また、パーツカメラ28は、図1に示すように、フレーム部40上の基材搬送保持装置22と部品供給装置30との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、部品を保持する作業ヘッド56,58が、作業ヘッド移動装置62の作動によりパーツカメラ28の上方に移動することで、パーツカメラ28が、吸着ノズル78に保持された部品を撮像する。
【0020】
また、部品供給装置30は、フレーム部40の前後方向での一方側の端部に配設されている。部品供給装置30は、トレイ型部品供給装置100とフィーダ型部品供給装置(図4参照)102とを有している。トレイ型部品供給装置100は、トレイ上に載置された状態の部品を供給する装置である。フィーダ型部品供給装置102は、テープフィーダ、スティックフィーダ(図示省略)によって部品を供給する装置である。
【0021】
ばら部品供給装置32は、フレーム部40の前後方向での他方側の端部に配設されている。ばら部品供給装置32は、ばらばらに散在された状態の複数の部品を整列させて、整列させた状態で部品を供給する装置である。つまり、任意の姿勢の複数の部品を、所定の姿勢に整列させて、所定の姿勢の部品を供給する装置である。
【0022】
制御装置36は、図4に示すように、コントローラ110、複数の駆動回路112、画像処理装置116を備えている。複数の駆動回路112は、上記搬送装置50、クランプ装置52、電磁モータ66,68,70,72、正負圧供給装置80、トレイ型部品供給装置100、フィーダ型部品供給装置102、ばら部品供給装置32に接続されている。コントローラ110は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路112に接続されている。これにより、基材搬送保持装置22、部品装着装置24等の作動が、コントローラ110によって制御される。また、コントローラ110は、画像処理装置116にも接続されている。画像処理装置116は、マークカメラ26およびパーツカメラ28によって得られた画像データを処理するものであり、コントローラ110は、画像データから各種情報を取得する。さらに、コントローラ110は、検出センサ82及び高さセンサ27に接続されており、検出センサ82及び高さセンサ27からの検出値を取得して演算する。
【0023】
(B)部品実装機の作動
部品実装機10では、上述した構成によって、基材搬送保持装置22に保持された回路基材12に対して電子部品の装着作業が行われる。具体的には、回路基材12が、作業位置まで搬送され、その位置において、クランプ装置52によって固定的に保持される。次に、マークカメラ26が、回路基材12の上方に移動し、回路基材12を撮像する。そして、コントローラ110は、その撮像データに基づいて、クランプ装置52による回路基材12の保持位置の誤差などを演算する。
【0024】
また、部品供給装置30若しくは、ばら部品供給装置32が、所定の供給位置において、電子部品(図5参照)120を供給する。そして、作業ヘッド56,58の何れかが、部品の供給位置の上方に移動し、下降することで、その作業ヘッド56,58に装着された吸着ノズル78によって、電子部品120が吸着保持される。
【0025】
次に、作業ヘッド56,58がパーツカメラ28の上方に移動し、吸着ノズル78により保持された電子部品120が、パーツカメラ28によって撮像される。そして、コントローラ110は、撮像データに基づいて、吸着ノズル78に保持された電子部品120の姿勢などを演算する。そして、電子部品120を保持する作業ヘッド56,58が、回路基材12の上方に移動し、下降することで、保持している部品を、回路基材12の保持位置の誤差,部品の保持姿勢の誤差等を補正して、回路基材12上に装着する。
【0026】
この際、作業ヘッド56,58に保持された電子部品120を回路基材12の上面に装着するべく、作業ヘッド56,58を下降させる駆動源、つまり、Z方向移動装置65の電磁モータ70,72の作動が、検出センサ82による検出値に基づいて制御される。詳しくは、電磁モータ70,72は、エンコーダの検出値に従って位置制御が行われており、電磁モータ70,72の作動時において、エンコーダの検出値に基づいて、作業ヘッド56,58に保持されている電子部品120の下面の高さである実際の高さ(以下、「実部品高さHR」と記載する)が演算される。一方、回路基材12の上面の装着位置のZ軸座標,電子部品120の高さ寸法等に基づいて、電子部品120の目標とする装着高さ(以下、「目標部品高さHM」と記載する)が、予め設定されている。なお、目標部品高さHMは、回路基材12の上面のZ軸座標より僅かに下方に位置するように設定されている。
【0027】
ただし、電子部品120の回路基材12への適切な装着を担保するべく、検出センサ82による検出値が利用される。詳しくは、電子部品120の寸法の誤差等により、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降しても、吸着ノズル78に保持された電子部品120が回路基材12の上面に接触していない状態となる場合がある。そして、このような状態で、吸着ノズル78による電子部品120の保持が解除されると、電子部品120の回路基材12への適切な装着を担保することができない。
【0028】
そこで、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降した後も、電磁モータ70,72の作動を停止させず、作業ヘッド56,58を下降させる。すると、吸着ノズル78に保持された電子部品120が回路基材12の上面に接触し、電子部品120の回路基材12への接触が、検出センサ82によって検出される。そして、電子部品120の回路基材12への接触が、検出センサ82により検出されたときの所定のタイミングで、電磁モータ70,72の作動が停止する。つまり、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降するように、電磁モータ70,72の作動が制御されているが、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降していない場合は、電磁モータ70,72の作動は停止しない。そして、電子部品120の回路基材12への接触が検出センサ82により検出されたことをトリガーとして、電磁モータ70,72の作動が停止する。
【0029】
そして、電磁モータ70,72の作動が停止すると、吸着ノズル78に僅かに正圧が供給され、吸着ノズル78は、電子部品120を離脱する。このように、Z方向移動装置65の電磁モータ70,72の作動が、検出センサ82による検出値に基づいて制御されることで、電子部品120は、回路基材12に接触した状態で、吸着ノズル78による保持が解除される。これにより、電子部品120の回路基材12への適切な装着を担保することが可能となる。なお、電子部品120の装着時における電磁モータ70,72の作動速度は、サイクルタイムの短縮を図るべく、電磁モータ70,72の最高出力、ないしそれに近い出力で作動させ、電子部品の装着に係る保持具の移動速度として、具体的には、最高速度でおよそ500mm/sec(加速度換算でおよそ2G)とされている。
【0030】
また、部品実装機10では、装着作業実行時に、装着予定位置に異物が有るか否かを検出センサ82によって判断する異物検出を行うことが可能とされている。具体的には、例えば、図6に示すように、装着予定位置に異物130が存在している場合に、電子部品120の装着作業が実行されると、異物130の上に電子部品120が装着されることとなる。このような場合には、電磁モータ70,72の作動制御時に、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降する前に、吸着ノズル78に保持された電子部品120が異物130に接触し、その接触により、検出センサ82が電子部品120への何らかの部材の接触を検出する。このように、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降する前に、検出センサ82が、吸着ノズル78に保持された電子部品120への何らかの部材の接触を検出した場合は、装着予定位置に異物130や落下部品が存在する可能性が高いこととなる。
【0031】
そこで、そのような場合、つまり、実部品高さHRが目標部品高さHMまで下降する前に、検出センサ82により電子部品120への何らかの部材の接触が検出された場合に、吸着ノズル78に保持された電子部品120は離脱されない。つまり、回路基材12に装着されない。そして、吸着ノズル78に保持された電子部品120は、廃棄ボックスなどに廃棄され、その電子部品120の装着作業はスキップされる。これにより、異物130の上への電子部品120の装着を防止することが可能となる。なお、装着作業のスキップ,異物130の存在などは、パネル装置に表示され、その旨が作業者に告知され、作業者により各種の対応が実行される。
【0032】
なお、異物検出を実行しながら装着作業が実行される場合は、異物検出を実行せずに装着作業が実行される場合と比較して、ひとつあたりの電子部品120の装着作業において、装着作業に要する時間が長くされている。つまり、異物検出を実行しながら装着作業が実行される場合は、異物検出を実行せずに装着作業が実行される場合と比較して、回路基材12の作成作業に要する時間が長くされている。延いては、同一基板種を複数作成した場合において、異物検出を実行しながら装着作業が実行され作成された基板は、異物検出を実行せずに装着作業が実行され作成された基板よりも作成に要する時間は長くかかる。つまり、具体的には、異物検出を実行しながら装着作業が実行される場合は、異物検出を実行せずに装着作業が実行される場合と比較して、装着作業時の作業ヘッド56,58の下降速度,下降加速度、つまり、電磁モータ70,72の作動速度,作動加速度が低く制限される。これは、作業ヘッド56,58が高速で下降するほど、検出センサ82による検出精度が低下するためである。
【0033】
具体的には、装着対象の電子部品120として、装着面が平坦面とされ、部品寸法が42.9mm角の部品を採用し、その部品の装着予定位置の中央に異物130を載置する。ちなみに、異物130のサイズは、1005cの電子部品、つまり、幅1mm×高さ0.5mmとされている。そして、実部品高さHRが目標部品高さHMとなるように、電磁モータ70,72の作動を制御し、検出センサ82によって電子部品120の回路基材12への接触が検出されたタイミングの実部品高さHRが特定される。そして、特定された実部品高さHRと目標部品高さHMとの差が、検出センサ82による検知高さとして演算される。また、作業ヘッド56,58の下降速度および、下降加速度を変化させて、電磁モータ70,72の最大出力(速度100%、加速度100%)での作動態様と、速度を10%に抑制した出力(速度10%、加速度100%)での作動態様と、速度を7%かつ加速度を76%に抑制した出力(速度7%、加速度76%)での作動態様と、速度を4%かつ加速度を50%に抑制した出力(速度4%、加速度50%)での作動態様と、速度を1%かつ加速度を20%に抑制した出力(速度1%、加速度20%)での作動態様と、速度を0.1%かつ加速度を1%に抑制した出力(速度0.1%、加速度1%)での作動態様との6つの作動態様の各々で、検知高さが2回分、演算される。
【0034】
それら6つの作動態様の各々での検知高さ(μm)を比較した結果として、図7及び図8に示す。図から解るように、速度及び加速度が抑制されるほど、つまり、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が遅いほど、検知高さ(μm)は高くなり、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が速いほど、検知高さ(μm)は低くなる。また、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が遅いほど、検知高さ(μm)のバラツキは小さくなり、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が速いほど、検知高さ(μm)のバラツキは大きくなる。つまり、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が遅いほど、検出センサ82による検出精度は高くなり、作業ヘッド56,58の下降速度及び下降加速度が速いほど、検出センサ82による検出精度は低くなる。具体的には、例えば、速度を0.1%かつ加速度を1%に抑制した出力での作動態様では、0.5mm(500μm)の高さの異物130を、約450μmの精度で高さ検出できる。一方、最大出力(速度100%、加速度100%)での作動態様では、0.5mm(500μm)の高さの異物130を、約150μmの精度でしか高さ検出できない場合がある。
【0035】
さらに言えば、異物130が、装着予定位置の中央でなく、装着予定位置の端に載置されるほど、異物130の検出精度は低下する。具体的には、例えば、異物130が装着予定位置の中央にある場合には、速度を0.1%かつ加速度を1%に抑制した出力での作動態様で、0.5mm(500μm)の高さの異物130を、約450μmの精度で高さ検出できる。一方、異物130が装着予定位置の中央から20mmオフセットされている場合には、速度を0.1%かつ加速度を1%に抑制した出力での作動態様であっても、0.5mm(500μm)の高さの異物130を、約350μmの精度でしか高さ検出できない。
【0036】
このため、異物検出を実行しながら装着作業が実行される場合は、装着作業時の作業ヘッド56,58の下降速度、及び下降加速度を、制限する必要がある。ただし、装着作業時の作業ヘッド56,58の下降速度、及び下降加速度を制限すると、実装時間、延いてはサイクルタイムの短縮を図ることができないため、下降速度、及び下降加速度の制限は、少ないことが好ましい。
【0037】
そこで、下降速度、及び下降加速度の制限は、検出センサ82による検出精度、つまり、異物130の検出精度とサイクルタイムとのバランスにより、作業者が任意に設定することが可能とされている。つまり、作業者がサイクルタイムの短縮を優先する場合には、下降速度、及び下降加速度の制限が少なくなるように、作業ヘッド56,58の下降速度、及び下降加速度が設定され、作業者が異物130の検出精度を優先する場合には、下降速度、及び下降加速度の制限が多くなるように、作業ヘッド56,58の下降速度、及び下降加速度が設定される。これにより、装着作業の条件や作業内容に応じて、異物130の検出精度とサイクルタイムとのバランスを図ることが可能となる。
【0038】
つまり、部品実装機10では、異物検出を実行しながらの装着作業(以下、「第1装着作業」と記載する)と、異物検出を実行しない装着作業(以下、「第2装着作業」と記載する)とが選択的に実行可能とされている。そして、第2装着作業では、実装作業において発生する振動によって実装作業や実装精度に影響が出ないように予め設定された、電磁モータ70,72が最大出力ないし、それに近い出力で作動されることで、サイクルタイムの短縮を図ることが可能とされている。一方、第1装着作業では、電磁モータ70,72の作動出力が抑制されることで、サイクルタイムは長くなるが、異物130の検出を行うことができる。さらに、第1装着作業では、電磁モータ70,72の作動出力を任意に設定することができるため、異物130の検出精度とサイクルタイムとのバランスを図ることができる。これらは、実装する部品種や生産する基板種に応じて設定が可能である。
【0039】
なお、第1装着作業では、異物130の検出精度を挙げるべく、回路基材12の反り等を考慮して、異物検出が実行される。具体的には、例えば、図9に示すように、回路基材12に反りが生じているにも拘らず、回路基材12の反りを考慮せずに、目標部品高さが設定されると、回路基材12が下反りしているにも拘らず、目標部品高さがHM1に設定される場合がある。このように、目標部品高さがHM1に設定され、実部品高さHRが目標部品高さHMとなるように、電磁モータ70,72の作動が制御されると、実部品高さHRが目標部品高さHM1となったタイミングで、検出センサ82による検出値が変化する。つまり、実部品高さHRが目標部品高さHM1まで下降した後に、吸着ノズル78に保持された電子部品120の接触が検出センサ82により検出される。このため、このような場合には、上述したように、装着予定位置に異物130は存在しないと判断され、電子部品120が異物130の上で離脱されてしまう。
【0040】
一方で、回路基材12の反りを考慮して、目標部品高さが設定されると、目標部品高さはHM2(<HM1)に設定される。このように、目標部品高さがHM2に設定されると、実部品高さHRが目標部品高さHM2まで下降する前に、吸着ノズル78に保持された電子部品120の接触が検出センサ82によって検出される。このような場合には、上述したように、装着予定位置に異物130が存在すると判断され、電子部品120は離脱されない。
【0041】
そこで、部品実装機10では、回路基材12の反りを考慮して、目標部品高さHMが設定される。具体的には、回路基材12が装着作業位置に搬送され、クランプ装置52により位置決め保持されると、作業ヘッド56,58が回路基材12の上方に移動する。そして、作業ヘッド56,58を保持するスライダ74,76に取り付けられた高さセンサ27によって、回路基材12の高さが検出される。この際、図10に示すように、回路基材12を9等配するような位置150a~iが、高さセンサ27により測定され、各測定位置150a~iの回路基材12の高さが検出される。そして、例えば、装着予定位置160を囲む4カ所の測定位置150d,e,g,hに基づいて、装着予定位置160の回路基材12の高さが演算される。続いて、装着予定位置160の回路基材12の高さ,電子部品120の高さ寸法等に基づいて、目標部品高さHMが演算される。これにより、回路基材12の反りを考慮して、目標部品高さHMが設定される。そして、実部品高さHRが、その設定された目標部品高さHMとなるように、電磁モータ70,72の作動が制御されることで、回路基材12に反りなどが生じている場合であっても、異物130の検出を適切に行うことが可能となる。
【0042】
なお、部品実装機10は、部品実装システムの一例である。高さセンサ27は、検出装置の一例である。制御装置36は、制御装置の一例である。作業ヘッド移動装置62は、移動装置の一例である。吸着ノズル78は、保持具の一例である。検出センサ82は、検出センサ及び光電センサの一例である。
【0043】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、検出センサ82として、照射部90と受光部92とを有する反射型の光電センサが採用されているが、非接触式の光電センサであれば、輻射型の光電センサ,透過型の光電センサ,リフレクタ型の光電センサ等を採用することが可能である。光電センサの替わりとして高さセンサのようなレーザセンサを採用してもよい。同様に、また、非接触式の光電センサに限られず、プローブ等の接触式のセンサを利用して、吸着ノズル78に保持された電子部品120の接触を検出してもよい。ただし、接触式のセンサは耐久性、応答範囲や応答精度、ならびに応答時間などの応答性に問題がある場合があることから、非接触式のセンサを採用することが好ましい。
【0044】
また、上記実施例では、第1装着作業が実行される場合に、第2装着作業が実行される場合と比較して、電磁モータ70の作動速度及び作動加速度が制限されているが、電磁モータ70の作動速度と作動加速度との一方のみが制限されてもよい。このように、電磁モータ70の作動速度と作動加速度との一方のみが制限された場合であっても、異物130の有無を適切に判断することができる。
【0045】
また、上記実施例では、同一の部品、つまり、電子部品120の装着時において、第1装着作業が実行される場合に、第2装着作業が実行される場合と比較して、電磁モータ70の作動速度等が制限されているが、第1装着作業と第2装着作業とで装着対象の部品が異なる場合においても、電磁モータ70の作動速度等が制限されてもよい。つまり、第1装着作業時にA部品を装着する際の電磁モータの作動速度等が、第2装着作業時にB部品を装着する際の電磁モータの作動速度等より制限されてもよい。ただし、A部品とB部品との寸法が明らかに異なる場合は、一般的に、部品寸法が大きいほど、電磁モータの作動速度等は制限されるため、A部品とB部品との寸法は、概ね同じ大きさ、つまり、A部品とB部品とは、概ね同じ大きさのグループの部品である。
【0046】
また、高さセンサ27の取り付け位置はスライダ74,76には限定されない。具体的には、ホルダ86とともに動く作業ヘッド56,58等の移動体は勿論、回路基材12の装着作業位置に搬送される経路に固定的に取り付けられていてもよい。つまり、回路基材上の任意の位置の高さを検出できるような箇所に取り付けられていればよい。そのためには、複数の高さセンサを用いてもよいし、センサを取り付けるその位置が検出さえできれば、上下動作するものに取り付けられていてもよい。
【0047】
また、高さセンサ27は、回路基材12の位置でなく、部品の装着予定位置そのものを検出してもよい。
【0048】
また、ホルダ86の下方への付勢手段は圧縮スプリングに限定されない。エアダンパーや各種弾性部材、磁性ダンパー等、付勢手段であればよい。また、電磁モータで保持軸を上下動作させる作用ヘッドと同様の態様を付勢手段に採用して、電磁モータの出力値を付勢力として制御および管理してもよい。
【0049】
以上を鑑みると、実施態様である付勢手段をなくすことも可能である。たとえば、保持軸で作業ヘッドを上下動作させる電磁モータの出力値を付勢力にかわるように制御および管理することで付勢力に変わる付勢手段として置き換えてもよい。つまりは、実施態様では、作業ヘッドが電磁モータで上下動作するものの、電磁モータで、吸着ノズルを上下動作させる機構のものであれば同様の考え方が採用可能である。たとえば、Z軸スライドが上下動作する機構の部品実装機では、Z軸スライドの動作軸に同様の考え方が適用可能である。
【0050】
また、上記実施例では、本発明が、吸着ノズル78に保持された電子部品120の装着作業に適用されているが、チャック等の複数の把持爪に保持された電子部品120の装着作業に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10:部品実装機(部品実装システム) 27:高さセンサ(検出装置) 36:制御装置 62:作業ヘッド移動装置(移動装置) 78:吸着ノズル(保持具) 82:検出センサ(センサ)
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図10