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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】マイクロ発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20220719BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20220719BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20220719BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
H01L33/00 H
H01L33/48
G09F9/33
G09F9/00 338
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020526217
(86)(22)【出願日】2018-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2018085131
(87)【国際公開番号】W WO2019119706
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】201711393774.5
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519210686
【氏名又は名称】廈門三安光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN SAN’AN OPTOELECTRONICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 841-899, Min’an Avenue, Hongtang Town, Tong’an District Fujian 361100 China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】丁 ▲紹▼▲いん▼
(72)【発明者】
【氏名】范 俊峰
(72)【発明者】
【氏名】李 佳恩
(72)【発明者】
【氏名】徐 宸科
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-196693(JP,A)
【文献】特開2002-261335(JP,A)
【文献】特表2017-500757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0101304(US,A1)
【文献】特開2004-281630(JP,A)
【文献】特開2012-222315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0159065(US,A1)
【文献】特開2012-142489(JP,A)
【文献】特開2004-273596(JP,A)
【文献】特表2015-500573(JP,A)
【文献】特開2014-168034(JP,A)
【文献】特表2015-506591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242782(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103208489(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
G09F 9/00 - 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フレームを用意するステップと、
(2)前記フレームに犠牲層を設けるステップと、
(3)前記犠牲層の表面に転写材料層を設け、前記転写材料層は、少なくとも転写状態と安定状態とを有し、少なくとも前記転写状態において前記転写材料層は軟質材であるステップと、
(4)前記転写材料層を用いて複数のマイクロ発光ダイオードを転写し、前記マイクロ発光ダイオードによる押圧により前記転写材料層が陥没し、凹みを形成し、その深さは0.1~5μmであり、前記安定状態において、前記前記転写材料層は硬化して前記マイクロ発光ダイオードが前記転写材料層の前記凹みに挟み込まれることによりマイクロ発光素子アレイを得るステップと、
前記転写材料層に対する孔開け工程を少なくとも含み、前記マイクロ発光ダイオードに近い領域の前記転写材料層の一部を除去し、前記マイクロ発光ダイオードのトップ面の一部、又は、全部を露出させるようにするステップと、を有することを特徴とするマイクロ発光素子アレイの製造方法。
【請求項2】
前記凹みの深さが0.5~1.5μmであることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(4)で得られた前記マイクロ発光素子アレイが基板に接合されるステップ(5)を更に含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(5)の後に、前記犠牲層と前記フレームとを除去することを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)の後で且つ前記ステップ(3)の前に、前記犠牲層の前記フレームから離れた表面に分散して遮光層が設けられ、前記遮光層は隣接する前記マイクロ発光ダイオード間の前記犠牲層に対応する位置に分布していることを特徴とする請求項の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)では前記転写材料層は、光不透過性材料が用いられ、前記光不透過性材料は少なくとも反射材または光吸収材を含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記転写材料層を用いて前記マイクロ発光ダイオードアレイを転写するステップを有し、転写の方法にはインプリント加工またはピックアップ加工を含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ発光装置の領域に関し、具体的にはマイクロ発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
RGB LEDディスプレイアレイMLED(マイクロ発光ダイオード)構造では、転写材料の硬化または半硬化状態での接着性(例えばファンデルワールス力、磁気力)によって転写を行うが、転写力が十分ではないため、MLEDの転写歩留まりが低下する。
【0003】
一方、MLEDの間隔が近いので、どのMLEDもその発散角度によって発光領域が重なり、クロストークという光の干渉現象を発生させ、即ち異なる色のMLEDの発光が互いに干渉し合い、色のばらつき、むらを招く。例えば中国特許出願公開第1378291号公報では従来の規格のLEDサイドウォールによる遮断法が開示されているが、MLED技術に不適用であるため、大規模量産に不向きである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記背景技術の問題点を解決するために、本発明は、転写材料層とマイクロ発光ダイオードとを含むマイクロ発光素子であって、前記転写材料層は、少なくとも前記マイクロ発光ダイオードのトップ面とサイド面を覆い、前記転写材料層は、少なくとも転写状態と安定状態とに分けられるマイクロ発光素子を提供する。
【0005】
転写状態において、転写材料層は軟質材である。
【0006】
安定状態において、マイクロ発光ダイオードは転写材料層の凹みに配置されている。凹みは、その深さが0.1~5μmである。
【0007】
本発明によれば、好ましくは、転写材料層の材料は、BCB樹脂、シリコーン又はエポキシ樹脂を含む。
【0008】
本発明によれば、好ましくは、凹みには、柔軟性転写材料層への押圧によって形成された平滑な陥入開口が設けられている。
【0009】
本発明によれば、好ましくは、凹みは、その深さが0.5~1.5μmである。
【0010】
幾つかの実施例では、マイクロ発光素子は更に、転写材料層のマイクロ発光ダイオードから離れた一側に設けられた犠牲層を含んでいる。
【0011】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、犠牲層の転写材料層から離れた一側には、光透過性または光不透過性のフレームが設けられている。
【0012】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、前記犠牲層の材料は、GaN、AlGaN、InGaNGaSiN、GaMgNのうち1つまたはそれ以上の組み合わせである。これらの犠牲層材料はレーザにより除去されやすい。
【0013】
他の幾つかの実施例では、転写材料層には、光不透過性材料が用いられ、光不透過性材料は少なくとも反射材または光吸収材を含む。光不透過性材料の形状または構造によって発光の角度を設定することができる。
【0014】
他の幾つかの実施例によれば、好ましくは、マイクロ発光ダイオードのトップ面に対応する位置にある転写材料層には、光射出孔が設けられている。これによってトップ面の発光またはトップ面の電気接続が可能な条件をなすことができる。
【0015】
本発明によれば、好ましくは、マイクロ発光ダイオードは、マイクロ発光素子構造と発光の需要に応じて、フェイスアップ型マイクロ発光ダイオード、フリップ型マイクロ発光ダイオード、または垂直型マイクロ発光ダイオードより選んで用いることができる。
【0016】
幾つかの光学応用の需要を満たすために、本発明は、転写材料層と複数のマイクロ発光ダイオードを含むマイクロ発光素子アレイであって、転写材料層は、少なくともマイクロ発光ダイオードのトップ面、又は、サイド面を覆い、転写材料層は、少なくとも転写状態と安定状態とを有することを特徴とするマイクロ発光素子アレイをも提供する。
【0017】
転写状態において転写材料層は軟質材である。
【0018】
安定状態においてマイクロ発光ダイオードは転写材料層の凹みに配置されている。凹みは、その深さが0.1~5μmである。
【0019】
本発明によれば、好ましくは、転写材料層の材料は、BCB樹脂、シリコーン又はエポキシ樹脂を含む。
【0020】
本発明によれば、好ましくは、凹みには、柔軟性転写材料層への押圧によって形成された平滑な陥没開口が設けられている。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、凹みは、その深さが0.5~1.5μmである。
【0022】
幾つかの実施例では、マイクロ発光素子アレイは更に、転写材料層のマイクロ発光ダイオードから離れた一側に設けられた犠牲層を含んでいる。
【0023】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、犠牲層の転写材料層から離れた一側にはフレームが設けられている。光取出しの需要に応じて、光透過性または光不透過性のフレームを選んで用いる。
【0024】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、犠牲層の材料は、GaN、AlGaN、InGaN、GaSiN、GaMgNのうち1つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0025】
他の幾つかの実施例では、マイクロ発光ダイオードのトップ面に対応する位置にある転写材料層には、光射出孔が設けられている。
【0026】
本発明によれば、好ましくは、マイクロ発光ダイオードは、フェイスアップ型マイクロ発光ダイオード、フリップ型マイクロ発光ダイオード、または垂直型マイクロ発光ダイオードより選んで用いることができる。
【0027】
他の幾つかの実施例では、隣接するマイクロ発光ダイオードの間の転写材料層のマイクロ発光ダイオードから離れた一面には、光不透過性材料が設けられている。
【0028】
他の幾つかの実施例によれば、好ましくは、光不透過性材料はモザイク状に転写材料層内に設けられている。
【0029】
他の幾つかの実施例によれば、好ましくは、光不透過性材料は反射性または光吸収性の材料である。
【0030】
他の幾つかの実施例によれば、好ましくは、金属または非金属を含む。
【0031】
他の幾つかの実施例によれば、好ましくは、マイクロ発光素子アレイは、マイクロ発光ダイオードの一側にマイクロ発光ダイオードと接合される接合基板を含んでいる。
【0032】
本発明によれば、好ましくは、マイクロ発光ダイオードは、赤色発光ダイオード、青色発光ダイオード、緑色発光ダイオードまたはそれらの組み合わせを含む。これは、様々な色光の組み合わせの需要を満たしている。
【0033】
本発明は、上記のマイクロ発光素子及びマイクロ発光素子アレイを基に更にマイクロ発光素子アレイの製造方法をも提供する。本発明に係る製造方法は、
【0034】
(1)フレームを用意するステップ;
【0035】
(2)フレームに犠牲層を設けるステップ;
【0036】
(3)犠牲層の表面に転写材料層を設け、転写材料層は、少なくとも転写状態と安定状態とに分けられ、転写状態において転写材料層は軟質材であるステップ;及び
【0037】
(4)転写材料層を用いてマイクロ発光ダイオードアレイを転写し、転写材料層はマイクロ発光ダイオードによる押圧により転写材料層が陥没し、凹みを形成し、その深さは0.1~5μmであり、マイクロ発光ダイオードが転写材料層の凹みに挟み込まれることによりマイクロ発光素子アレイを得るステップを含む。
【0038】
本発明によれば、好ましくは、製造方法は、ステップ(4)で得られたマイクロ発光素子アレイが基板に接合されるステップ(5)を有する。
【0039】
本発明によれば、好ましくは、凹みは、その深さが0.5~1.5μmである。
【0040】
幾つかの実施例では、ステップ(5)の後で、犠牲層とフレームとを除去する。
【0041】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、ステップ(2)の後で且つステップ(3)の前に、犠牲層のフレームから離れた表面に分散的に遮光層が設けられ、遮光層は隣接するマイクロ発光ダイオード間の犠牲層に対応する位置に分布している。
【0042】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、ステップ(3)では転写材料層は、光不透過性材料が用いられ、光不透過性材料は少なくとも反射材または光吸収材を含む。
【0043】
幾つかの実施例によれば、好ましくは、ステップ(4)の後に、転写材料層に対する孔開け工程を少なくとも含み、マイクロ発光ダイオードに近い領域の転写材料層の一部を除去し、マイクロ発光ダイオードのトップ面の一部、又は、全部を露出させるようにする。
【0044】
本発明によれば、好ましくは、転写材料層を用いてマイクロ発光ダイオードアレイを転写するステップを有し、転写の方法にはインプリント加工またはピックアップ加工を含む。
【発明の効果】
【0045】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明において陳述するが、一部は明細書から明白なものであり、或いは本発明を実施することにより理解される。本発明の目的及びその他の利点は、明細書、特許請求の範囲、添付の図面により特に示される構造によって実現し獲得される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図面は本発明のより一層の理解のために供するものであり、また明細書の一部を構成するものであり、本発明の実施例と共に本発明の解釈に用いられ得るが、本発明の限定するものではない。また、図面における数値は概要を示すにすぎず、比率に応じて描かれたものではない。
図1】本発明に係る製造方法のステップ(1)~(3)を示す図である。
図2】本発明に係る製造方法のステップ(4)を示す図である。
図3】本発明に係る製造方法のステップ(4)を示す図である。
図4】本発明に係る製造方法のステップ(5)を示す図である。
図5】本発明に係る製造方法のステップ(5)を示す図である。
図6】本発明に係る転写材料層が光不透過性材料を用いたマイクロ発光素子アレイ構造を示す図である。
図7】本発明に係る単一のマイクロ発光素子を示す図である。
図8】本発明に係る転写材料層が光不透過性材料を用いた単一のマイクロ発光素子を示す図である。
図9】本発明に係る転写材料層が必要以上に押圧された時にマイクロ発光ダイオードの整列が異常になった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図中の各符号の表示は以下のとおりである。
110 フレーム 200 マイクロ発光ダイオード、
120 犠牲層 210 発光拡張構造
130 転写材料層 220 電極
131 凹み 300 封止基板
132 穴
【0048】
以下、図面を参照して本発明の幾つかの具体的な実施例の詳細について説明するが、本発明に係る保護的範囲は以下の実施例に関する記述及び説明に制限されない。
【0049】
本発明に用いられる技術用語は具体的な実施方式を記述する目的で使われ、本発明に制限されないことを理解されたい。本発明において技術用語の「包含」、「含む」が使われているのは、記述の特徴、全体、ステップ、素子、及び/又は封止部材の存在を説明するためであって、一つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、素子、封止部材、及び/又はそれらの組み合わせの存在や増加を除外するのではないことを更に理解されたい。
【0050】
特に定義されていない限り、本発明に用いられるあらゆる用語(技術的用語及び科学用語)は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解される意味と同様の意味を持つことを理解されたい。そして、本発明において明確に定義するもの以外、本発明に使われる用語はこれらの用語が当該明細書の文脈と関わる分野の意味と一致する意味を有すること、且つ理想化したり正式過ぎる意味で捉えないようにすることを更に理解されたい。
【0051】
現在のマイクロ発光素子のピックアップ手段は、真空吸引を用いてマイクロ発光ダイオードチップを吸着する手法、または、ファンデルワールス力を含む接着力でマイクロ発光ダイオードチップを吸着する手法が広く採用されているが、この2つの手法は、マイクロ発光ダイオードチップが小さいため、操作が難しく、転写歩留まりが良くない。従って、製造コストを抑制することが困難である。
【0052】
以下、マイクロ発光素子アレイの製造方法を開示する。この製造方法は、マイクロ発光素子アレイの製造方法を含む以外、多くのマイクロ発光素子の転写過程において転写歩留まりが低い問題点を解決する技術方法をも含む。
【0053】
図1を参照すると、ステップ(1)では、フレーム110を用意する。フレーム110は、光透過性材料又は光不透過性材料のどちらを用いてもよい。本実施例によれば、位置合わせの操作性を考慮すると、光透過性又は透明の材料が好ましく、例えばサファイア等を選んで用いる。回路性能を考慮すると、光不透過性の金属材を用いることも可能である。
【0054】
ステップ(2)では、フレーム110に犠牲層120が形成される。本実施例では概ね有機金属気相成長法で一層の窒化ガリウム系有機物、例えば、GaN/AlGaN、InGaN、GaSiN、GaMgNの1つ又はそれ以上の組み合わせを用いて成長させる。有機金属気相成長法は、高い緻密性を有しており、且つ窒化ガリウム系材料は良好な光透過性を有し、マイクロ発光素子を転写する時に容易に位置合わせを行うことができる。また、良好な光透過性を有し広く採用されている犠牲層材料を選んでもよく、例えば光分解材料、化学分解材料を選ぶことができる。
【0055】
ステップ(3)では、犠牲層120の表面に、転写材料層130が形成される。転写材料層130は少なくとも転写状態と安定状態とに分けられる。転写状態とは、主としてマイクロ発光ダイオード200をピックアップする時の状態を指し、安定状態とは、主として転写材料層130の通常状態である。軟質材を選んだ場合、転写状態が即ち安定状態であり得る。重要なのは、転写状態では、転写材料層130が軟質材である点である。
【0056】
本実施例によれば、数種類の選択可能な転写材料層130が用意される。例えばBCB樹脂、シリコーン、エポキシ樹脂、紫外硬化性樹脂などが用意される。
【0057】
紫外硬化性樹脂を例とする場合、転写状態の場合、紫外硬化性樹脂は軟質材である。転写過程において、紫外硬化性樹脂をマイクロ発光ダイオードとのピックアップ部とし、紫外硬化性樹脂にマイクロ発光ダイオード200に対する力を施すと、紫外硬化性樹脂にはマイクロ発光ダイオード200の押圧によって凹みが形成され、一方、マイクロ発光ダイオード200がこの凹みに入り込み、また紫外硬化性樹脂に押圧される。このように押圧によるクランプ力によってマイクロ発光ダイオード200を転写させる。
【0058】
幾つかの実施例では、BCB樹脂(Benzocyclobutene)を例とする場合、転写状態では、BCB樹脂を加熱する。なお、この場合、加熱温度は180~250℃、加熱時間は0.5~2時間である。加熱後のBCB樹脂は、柔軟性のある半硬化素材になり、この状態のBCB樹脂は、転写材として用いられるのにふさわしい。BCB樹脂の耐熱性により、製造工程においてシリコーンよりも優れた性能を有するが、シリコーンマイクロ発光素子アレイと封止基板300を共晶させる時、共晶の高温により変形する可能性があり、マイクロ発光ダイオード200を押圧すると、マイクロ発光ダイオード200の配列の乱れを引き起こす。本実施例では、加熱時間が短すぎる、又は、温度が低すぎると、BCB樹脂が適切な半硬化効果を得ることができず、加熱時間が長すぎる、又は、温度が高すぎると、逆に硬化し過ぎ、有効なクランプ力を得ることができず、転写過程において、マイクロ発光ダイオードがぶれやすくなる。
【0059】
図2図3を参照すると、ステップ(4)では、整列されたマイクロ発光ダイオードアレイを用意する。そして、転写材料層130を用いて複数のマイクロ発光ダイオード200をまとめて転写する。転写材料層130がマイクロ発光ダイオード200によって押圧されると陥没し凹み131が形成される。BCB樹脂を転写材料層130とする例では、押圧力は0.01~0.5kg/mm2であることが好ましい。マイクロ発光ダイオード200が転写材料層130の凹み131に挟み込まれている場合、凹み131の深さが0.1~5μmであり、好ましくは、凹み131の深さは0.5~1.5μmである。このようにして本発明に係るマイクロ発光素子アレイが得られる。
【0060】
図4図5を参照すると、ステップ(5)では、マイクロ発光素子アレイが封止基板300に結合される。そして、犠牲層120とフレーム110とは化学分解又は物理分離によって除去される。本実施例ではGaN犠牲層120を例に挙げ、レーザ光を用いて犠牲層120を除去すると共にフレーム110を剥離する。剥離を簡単に行うために、幾つかの実施手法においてパターン化された表面を有するフレーム110を用いることが可能である。
【0061】
本実施例の実施過程では、光の需要を満たすために、例えばディスプレイに応用されるように、マイクロ発光ダイオード200は複数種の波長を含む。ディスプレイにおいて一般的に使われているRGBの画素の組み合わせは、赤色、緑色、青色の波長のマイクロ発光ダイオード200を選んで用い、異なる波長のマイクロ発光ダイオード200が隣接して配置されると共に、従来の課題におけるクロストークのような光干渉を解消するために、ステップ(2)の後、ステップ(3)の前では、犠牲層120のフレーム110から離れた表面に分散して遮光層140が設けられている。遮光層140は隣接するマイクロ発光ダイオード200間の犠牲層120に対応する位置に分布している。ステップ(3)では、遮光層140を覆うように転写材料層130が形成される。本実施例によれば、遮光層140としては、光吸収材または反射材のどちらを選んでもよい。本実施例では、クロム(Cr)を遮光層140として用いる。
【0062】
図6を参照すると、上記の遮光層140の代替手段として、ステップ(3)の転写材料層130は光不透過性材料を用いてもよい。光不透過性材料は少なくとも反射材または光吸収材を含む。本実施例では、好ましくは、BCB樹脂にTiOをドーピングする。このように構成されると、転写材料層130の凹み131を用いて好ましい光射出経路を形成することができる。
【0063】
幾つかの実施例では、ステップ(4)の後で、転写材料層130に孔開け工程を行い、マイクロ発光ダイオード200に近い領域の転写材料層130の一部を除去するステップを有することが少なくとも必要となる。このようにマイクロ発光ダイオード200のトップ面の一部または全部を露出させることによって、トップ面からの発光の需要を満足することができ、あるいはマイクロ発光ダイオード200の露出した表面によって、転写材料層の反射マスク状構造を利用して、光取出し効果を高め、トップ面の回路接続の構造を選択することができる。
【0064】
本実施例によれば、転写材料層130を用いて複数のマイクロ発光ダイオード200を転写するステップを有し、転写にはインプリント加工またはピックアップ加工を含むことが予測される。
【0065】
図7を参照すると、以下の一部の実施例では、転写材料層130と、マイクロ発光ダイオード200と、を備え、転写材料層130は少なくともマイクロ発光ダイオード200のトップ面、又は、サイド面を覆うように設けられ、転写材料層130は少なくとも転写状態と安定状態とに分けられるマイクロ発光素子を開示する。
【0066】
転写状態において転写材料層130は軟質材である。
【0067】
安定状態において、マイクロ発光ダイオード200は転写材料層130の凹み131に配置されている。1つの好ましい実施条件において、マイクロ発光ダイオード200は凹み131の中央に位置し、これは、凹み131のマイクロ発光ダイオード200に対する押圧力が均一であることを意味する。凹み131はその深さが0.1~5μmであり、0.5~1.5μmであることが好ましい。
【0068】
マイクロ発光ダイオード200に対するクランプ力に類似する押圧機能を実現するために、転写材料層130はその材料選択範囲にBCB樹脂、シリコーン又はエポキシ樹脂が含まれる。凹み131には、平滑な陥入開口が設けられている。この陥入開口はマイクロ発光ダイオード200に対して押圧力を有する。
【0069】
マイクロ発光素子には更に転写材料層130のマイクロ発光ダイオード200から離れた一側に設けられる犠牲層120を含むことができる。犠牲層120の転写材料層130から離れた一側には、光透過性または光不透過性のフレームが設けられている。犠牲層120とフレーム110を設けるのは、主には転写材料層130が比較的薄く、安定した支持力を十分に提供できない可能性があるためであり、封止基板300に接合する前に犠牲層120とフレーム110を介して接合する必要があり、フレーム110によって支えられる。
【0070】
本実施例によれば、犠牲層120の材料は、GaN、AlGaN、InGaN、GaSiN、GaMgNのうち1つまたはそれ以上の組み合わせを含む。実際に応用する場合、犠牲層120は透明であり、除去又は分解しやすい材料を用いるのが好ましい。
【0071】
図8を参照すると、実施例の変形として、転写材料層130には光不透過性材料が用いられる。光不透過性材料は少なくとも反射材または光吸収材を含む。マイクロ発光ダイオード200のトップ面に対応する位置にある転写材料層130には、光取出し又は回路接続のための通し孔が設けられている。マイクロ発光ダイオード200は、フェイスアップ型マイクロ発光ダイオード、フリップ型マイクロ発光ダイオード、または垂直型マイクロ発光ダイオードであるが、これらに制限されない。
【0072】
図4図6を参照すると、マイクロ発光素子アレイに対する市場の要求を解決するために、本実施例は、マイクロ発光素子アレイであって、転写材料層130と複数のマイクロ発光ダイオード200とを備え、転写材料層130は、少なくともマイクロ発光ダイオード200のトップ面とサイド面を覆うように設けられ、転写材料層130は、少なくとも転写状態と安定状態とを有するように構成されるマイクロ発光素子アレイを提供する。
【0073】
転写状態では、転写材料層130は軟質材である。
【0074】
図9を参照すると、転写材料層130は必要以上に押圧され、凹み131の深さが深すぎれば、マイクロ発光ダイオード200の一部が押圧されて回転することがある。これによって、マイクロ発光ダイオード200の配列が乱れる。このため、安定状態において、マイクロ発光ダイオード200は転写材料層130の凹み131に配置されている。凹み131の深さが0.1~5μmであれば、より高い転写歩留まりを実現することができる。本発明によれば、凹み131の深さは0.5~1.5μmであることがより好ましい。
【0075】
転写材料層130の材料としては、BCB樹脂、シリコーン又はエポキシ樹脂を含む。凹み131は、軟質転写材料層への押圧によって形成された平滑な陥没開口を含む。マイクロ発光素子アレイは更に転写材料層130のマイクロ発光ダイオード200から離れた一側に設けられた犠牲層120を含んでいる。犠牲層120の転写材料層130から離れた一側にはフレーム110が設けられている。光取出しの需要に応じて、光透過性または光不透過性のフレーム110を選んで用いる。犠牲層120の材料は、GaN、AlGaN、InGaN、GaSiN、GaMgNのうち1つまたはそれ以上の組み合わせを含む。
【0076】
他の実施変形では、マイクロ発光ダイオード200のトップ面に対応する位置にある転写材料層130には、光射出穴132が設けられている。
【0077】
マイクロ発光ダイオード200は、異なる需要に応じて、フェイスアップ型マイクロ発光ダイオード、フリップ型マイクロ発光ダイオード、または垂直型マイクロ発光ダイオードを選ぶ。
【0078】
他の幾つかの実施例では、隣接するマイクロ発光ダイオード200の間の転写材料層130のマイクロ発光ダイオード200から離れた一面は、光不透過性材料を有する。光不透過性材料はモザイク状に転写材料層130内に設けられるかまたは転写材料層130の表面に分布している。光不透過性材料は反射性または光吸収性の材料である。光不透過性材料は金属または非金属を含むことに制限されない。
【0079】
封止部材としては、マイクロ素子アレイはマイクロ発光ダイオード200の一側にマイクロ発光ダイオード200と接合される接合基板300を含んでいる。
【0080】
例えば、ディスプレイのような複数種の画素の要求に応じるために、マイクロ発光ダイオードは赤色発光ダイオード、青色発光ダイオード、緑色発光ダイオード又はこれらの任意の組み合わせを含み、各色光元素の組み合わせを満たす。マイクロ発光ダイオードは全体的に発光拡張構造210とその電極220等の一連のチップ構造を含む。
【0081】
以上の説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の技術の分野における通常の知識を有する者でも本発明の原理から逸脱することなくいくらかの改善及び変更をすることができ、これらの改善及び変更をも本発明の保護の範囲としてみなすべきである。
【符号の説明】
【0082】
110 フレーム
120 犠牲層
130 転写材料層
131 凹み
132 穴
140 遮光層
200 マイクロ発光ダイオード
210 発光拡張構造
220 電極
300 封止基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9