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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】タッチパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
G06F3/041 450
G06F3/041 495
G06F3/041 640
G06F3/041 660
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021029618
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022075456
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】202011217895.6
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519308156
【氏名又は名称】ティーピーケイ アドバンスド ソリューションズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TPK ADVANCED SOLUTIONS INC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チーメイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リウ カンユー
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099776(WO,A1)
【文献】特開2016-157442(JP,A)
【文献】特開2019-036016(JP,A)
【文献】特表2015-535627(JP,A)
【文献】国際公開第2012/015284(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に配置された非可視領域とを有するタッチパネルであって、
基板と、
前記基板上及び少なくとも前記可視領域に配置されたナノ金属導電層と、
前記基板上及び前記非可視領域に配置されたトレース層であって、前記ナノ金属導電層に電気的に接続されている前記トレース層と、
前記トレース層を覆う第1のパッシベーション層と、
前記第1のパッシベーション層の少なくとも一部を覆う第2のパッシベーション層と、を備え、前記第1のパッシベーション層は、前記第2のパッシベーション層とは異なるヤング率を有
前記第1のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有し、前記第2のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有するか、又は、前記第1のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有し、前記第2のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有する、
タッチパネル。
【請求項2】
前記第1のパッシベーション層は、前記非可視領域にのみ配置され、前記トレース層上に直接配置され、前記第2のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に配置される、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第1のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に配置され、前記非可視領域の前記トレース層上に直接配置され、前記第2のパッシベーション層は、前記非可視領域にのみ配置される、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第1のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に配置され、前記非可視領域の前記トレース層上に直接配置され、前記第2のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に配置される、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記第1のパッシベーション層及び前記第2のパッシベーション層のそれぞれは、10μm未満の厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第1のパッシベーション層及び前記第2のパッシベーション層は、それぞれ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項7】
可視領域と、前記可視領域の少なくとも一方の側に配置された非可視領域とを有するタッチパネルの製造方法であって、
基板上へのナノ金属導電層の形成と、
前記基板上及び前記非可視領域におけるトレース層の形成と、
前記トレース層を覆う第1のパッシベーション層の形成と、
前記第1のパッシベーション層上への第2のパッシベーション層の形成と、前記第1のパッシベーション層の少なくとも一部の被覆と、を含み、前記第1のパッシベーション層は、前記第2のパッシベーション層とは異なるヤング率を有
前記第1のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有し、前記第2のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有するか、又は、前記第1のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有し、前記第2のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有する、
タッチパネルの製造方法。
【請求項8】
前記第1のパッシベーション層の形成と、前記第2のパッシベーション層の形成とは、印刷、スリットコーティング、噴霧、インクジェット印刷、又はこれらの組み合わせを含む、請求項に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項9】
前記トレース層は、前記ナノ金属導電層が形成された後に形成される、請求項又はに記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項10】
前記トレース層は、前記ナノ金属導電層が形成される前に形成される、請求項又はに記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項11】
前記第1のパッシベーション層は前記非可視領域にのみ形成され、前記トレース層上に直接形成され、前記第2のパッシベーション層は前記可視領域及び前記非可視領域に形成される、請求項7~10のいずれか一項に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項12】
前記第1のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に形成され、前記非可視領域の前記トレース層上に直接形成され、前記第2のパッシベーション層は、前記非可視領域にのみ形成される、請求項7~10のいずれか一項に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項13】
前記第1のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に形成され、前記非可視領域の前記トレース層上に直接形成され、前記第2のパッシベーション層は、前記可視領域及び前記非可視領域に形成される、請求項7~10のいずれか一項に記載のタッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネル技術に関し、特にフレキシブルタッチパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは操作が簡単であるという特徴を有し、そのため使いやすい。タッチパネルは現在、スマートフォンやタブレットコンピュータなどの様々な電子製品に広く使用されている。ウェアラブル電子機器の普及に伴い、折り曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルタッチパネルの需要が徐々に増加している。
【0003】
信頼性を向上させ、環境破壊を防止するために、通常、パッシベーション層が既存のタッチパネルに追加される。しかしながら、パッシベーション層の構造は、タッチパネルの柔軟性(屈曲性)を損なうことが多い。したがって、屈曲性と信頼性を両立させたタッチパネルを提供することが望まれている。
【0004】
本開示のいくつかの実施形態によれば、タッチパネルのトレース層上に二層のパッシベーション層が設けられ、当該二層のパッシベーション層は、トレース層の屈曲性と抗酸化能力とを向上するために、1GPa未満のヤング率を有するソフトパッシベーション層と、2GPa~4GPaのヤング率を有するハードパッシベーション層とを含む。
【0005】
本開示のいくつかの実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に配置された非可視領域とを有するタッチパネルが提供され、基板と、基板上及び少なくとも可視領域に配置されたナノ金属導電層と、基板上及び非可視領域に配置されたトレース層であって、トレース層は前記ナノ金属導電層に電気的に接続されているトレース層と、トレース層を覆う第1のパッシベーション層と、第1のパッシベーション層の少なくとも一部を覆う第2のパッシベーション層と、を含み、第1のパッシベーション層は、第2のパッシベーション層とは異なるヤング率を有する。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、非可視領域にのみ配置され、トレース層上に直接配置され、第2のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に配置される。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に配置され、非可視領域のトレース層上に直接配置され、第2のパッシベーション層は、非可視領域にのみ配置される。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に配置され、非可視領域のトレース層上に直接配置され、第2のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に配置される。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有し、第2のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有するか、又は、第1のパッシベーション層は2GPa~4GPaのヤング率を有し、第2のパッシベーション層は1GPa未満のヤング率を有する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層及び第2のパッシベーション層のそれぞれは、10μm未満の厚さを有する。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層及び第2のパッシベーション層は、それぞれ、アクリル樹脂、エポキシ、ポリアミド、又はこれらの組合せを含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によれば、可視領域と、可視領域の少なくとも一方の側に配置された非可視領域とを有するタッチパネルの製造方法が提供され、基板上へのナノ金属導電層の形成と、基板上及び非可視領域におけるトレース層の形成と、トレース層を覆う第1のパッシベーション層の形成と、第1のパッシベーション層上に第2のパッシベーション層を形成と、第1のパッシベーション層の少なくとも一部の被覆と、を含み、第1のパッシベーション層は、第2のパッシベーション層とは異なるヤング率を有する。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層の形成と、及び第2のパッシベーション層の形成とは、印刷、スリットコーティング、噴霧、インクジェット印刷、又はこれらの組み合わせを含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態によれば、トレース層は、ナノ金属導電層が形成された後に形成される。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態によれば、トレース層は、ナノ金属導電層が形成される前に形成される。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、非可視領域にのみ形成され、トレース層上に直接形成され、第2のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に形成される。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に形成され、非可視領域のトレース層上に直接形成され、第2のパッシベーション層は、非可視領域にのみ形成される。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第1のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に形成され、非可視領域のトレース層上に直接形成され、第2のパッシベーション層は、可視領域及び非可視領域に形成される。
【0019】
本開示の実施形態のタッチパネルは、種々のタイプのタッチデバイスの分野に適用することができる。本開示の上記の目的、特徴、及び利点をより明確かつ理解しやすくするために、いくつかの実施形態を以下に列挙し、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の実施形態において、図面を参照して詳細に説明する。なお、業界の標準的な慣行によれば、種々の特徴は、縮尺通りに描かれていない。実際、種々の特徴の寸法は、議論を明確にするために任意に増加又は減少させることができる。
図1】本開示の第1の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
図2】本開示の第2の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
図3】本開示の第3の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
図4】本開示の第4の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
図5】本開示の第5の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
図6】本開示の第6の実施形態による例示的なタッチパネルの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の開示は、本開示の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態又は例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素及び配置の具体例を以下に記載する。当然のことながら、これらは単なる例であり、限定を意図するものではない。例えば、以下の説明における第2の特徴の上方又は特徴上の第1の特徴の形成は、第1及び第2の特徴が直接接触して形成される実施形態を含むことができ、また、第1及び第2の特徴が直接接触しないように、第1及び第2の特徴の間に追加の特徴が形成され得る実施形態を含むこともできる。さらに、本開示は、様々な実施例において参照番号及び/又は文字を繰り返すことができる。この繰り返しは、単純化及び明瞭化のためのものであり、それ自体は、議論された種々の実施形態及び/又は構成の間の関係を決定づけるものではない。
【0022】
さらに、「下方(beneath)」、「下(below)」、「下側(lower)」、「上、上方(above)」、「上(upper)」などの空間的な関係を示す用語を本明細書で使用して、図に示されるように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係の説明を容易にすることができる。空間的な関係を示す用語は、図に示された方向に加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる方向を包含するように意図される。装置は、他の方向に方向づけられてもよく(90度又は他の方向に回転)、本明細書で使用される空間的な関係を示す記述子は、同様に、それに応じて解釈されてもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「約(about)」及び「おおよそ(approximately)」は、値の20%、好ましくは値の10%、より好ましくは値の5%、3%、2%、1%、又は0.5%以内で変化する所与の量の値を示す。なお、明細書に記載されている量はおおよその量であり、「約」又は「おおよそ」について具体的な記載がない場合でも、「約」及び「おおよそ」を含意することができる。
【0024】
本発明は、水分及び酸素の浸透を阻止する能力を向上させると同時にタッチパネルの屈曲性を向上させるために、ソフトパッシベーション層とハードパッシベーション層とを組み合わせた二層のパッシベーション層構造を提供する。図1は、本開示の第1の実施形態に係るタッチパネル100の断面図である。本開示の実施形態のタッチパネル100は、基板110と、ナノ金属導電層120と、トレース層130と、ハードパッシベーション層140と、ソフトパッシベーション層150とを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、タッチパネル100は、可視領域100Aと非可視領域100Bとを含んでいる。非可視領域100Bは、通常、可視領域100Aを囲むように可視領域100Aの少なくとも一方の側に位置するか、可視領域100Aの両側に位置するか、又は可視領域100Aの一方の側にのみ位置している。図1では、可視領域100Aと非可視領域100Bの範囲を破線で示しているが、その範囲は例示的なものであり、本開示の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、非可視領域100Bは、トレース層130と一列に並んでいなくてもよく、基板110の中心に向かって延びていてもよい。
【0026】
図1に示すように、タッチパネル100では、ナノ金属導電層120は基板110上に配置されている。いくつかの実施形態において、ナノ金属導電層120は、可視領域100A内に配置され、非可視領域100B内へと延びる。さらに、いくつかの実施形態において、ナノ金属導電層120は、タッチ位置を感知するために、パターニング工程によって互いに絶縁された複数のナノ金属導電電極(不図示)を形成することができる。
【0027】
トレース層130は、基板110の上方の非可視領域100Bに配置され、また、トレース層130は、ナノ金属導電層120と電気的に接続するために使用される。より具体的には、トレース層130は、パターニング工程によって互いに絶縁された複数の周辺リード線(不図示)を形成することができ、各周辺リード線は、ナノ金属導電電極によって感知されたタッチ信号を処理ユニット(不図示)に伝送するために、上述のナノ金属導電電極のいずれかに電気的に接続される。
【0028】
いくつかの実施形態において、ソフトパッシベーション層150は、非可視領域100B内にのみ配置され、トレース層130を覆うようにトレース層130上に直接配置される。ハードパッシベーション層140は、可視領域100A及び非可視領域100Bに配置される。ハードパッシベーション層140は、ソフトパッシベーション層150を覆うように非可視領域100B内のソフトパッシベーション層150上に配置され、ハードパッシベーション層140は、ナノ金属導電層120を覆うように可視領域100Aのナノ金属導電層120上に配置される。ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140は、以下に詳細に説明するように、異なるヤング率を有するパッシベーション層である。
【0029】
いくつかの実施形態において、基板110の材料は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COP)等、又はこれらの組合せのような可撓性の透明基板を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ナノ金属導電層120は、銀ナノワイヤ(SNW)層であってもよい金属ナノワイヤ層を含み、金属ナノワイヤ層の耐久性を向上させるために、オーバーコート(OC)をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、ナノ金属導電層120は、スクリーンコーティング、印刷、積層、ロールツーロール等の工程によって基板上に堆積させることができる。続いて、リソグラフィ工程及びエッチング工程などの工程を使用して、ナノ金属導電層120をパターン形成することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、トレース層130の周辺リード線は、銅-ニッケル(CuNi)、銅(Cu)、銀(Ag)、銀-パラジウム-銅合金(AgパラジウムCu、APC)等、又はそれらの組合せを含む金属トレースとすることができる。いくつかの実施形態において、トレース層130は、ナノ金属導電層120が形成された後に形成されてもよい。代替の実施形態では、トレース層130は、ナノ金属導電層120が形成される前に形成されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、ソフトパッシベーション層150は、1GPa未満、例えば、0.5~1GPaのヤング率を有し、ハードパッシベーション層140は、2GPa~4GPa、例えば、2GPa~3GPaのヤング率を有する。いくつかの実施形態において、ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140の材料は、それぞれ、アクリル、エポキシ樹脂、ポリアミド(PA)又はそれらの組合せを含むことができる。ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140の材料は、上述したヤング率を満足するものであれば、これらに限定されない。ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140は、異なる材料、又は異なるヤング率を有する同一又は同様の材料であってもよい。ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140は、印刷、スリットコーティング、噴霧又はインクジェット印刷工程によって形成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ソフトパッシベーション層150の厚さは10μm未満、例えば、3~10μmであり、ハードパッシベーション層140の厚さは10μm未満、例えば、2~5μmである。いくつかの実施形態において、ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140を含む(又は、からなる)二層のパッシベーション層の厚さは、5~20μmの範囲内であり、例えば5~10μmである。二層のパッシベーション層の厚さが20μmを超えると、その超過した厚さによりタッチパネル100の屈曲性や効果に影響を及ぼし得る。
【0034】
本開示では、水分及び酸素の浸透を阻止する能力を向上し、タッチパネル100の屈曲性を向上するために、柔軟性に優れたソフトパッシベーション層150は、よりコンパクトなハードパッシベーション層140と組み合わされて構成される。具体的には、非可視領域100Bにおいて、ソフトパッシベーション層150とハードパッシベーション層140とを含む二層のパッシベーション層をトレース層130の上に配置することにより、トレース層130の屈曲性と抗酸化能力とを同時に向上させることができる。さらに、ハードパッシベーション層140が覆っていることにより、可視領域100Aに位置するナノ金属導電層120の抗酸化能力が向上される。
【0035】
図2は、本開示の第2の実施形態に係るタッチパネル200の断面図である。タッチパネル200と、第1の実施形態のタッチパネル100との構造の違いは、ハードパッシベーション層140とソフトパッシベーション層150の構成が入れ替わっている点である。すなわち、タッチパネル200では、ハードパッシベーション層140は非可視領域100B内にのみ配置され、トレース層130を覆うようにトレース層130上に直接配置される。ソフトパッシベーション層150は、可視領域100A及び非可視領域100Bに配置される。非可視領域100Bでは、ソフトパッシベーション層150がハードパッシベーション層140上に配置されてハードパッシベーション層140を覆っており、可視領域100Aでは、ソフトパッシベーション層150がナノ金属導電層120上に配置されてナノ金属導電層120を覆っている。
【0036】
タッチパネル200の非可視領域100Bにおいて、ソフトパッシベーション層150とハードパッシベーション層140とを含む二層のパッシベーション層をトレース層130の上に配置することにより、トレース層130の屈曲性と抗酸化能力とを同時に向上させることができる。さらに、ソフトパッシベーション層150が覆っていることにより、可視領域100A内に位置するナノ金属導電層120の屈曲性が向上される。
【0037】
図3は、本開示の第3の実施形態に係るタッチパネル300の断面図である。タッチパネル300と第1の実施形態のタッチパネル100との構造の違いは、タッチパネル300では、ソフトパッシベーション層150が非可視領域100B内に配置されているだけでなく、可視領域100Aにまで延びていることであり、全体構造としては、ソフトパッシベーション層150は、非可視領域100B内のトレース層130上に直接配置されてトレース層130を覆い、可視領域100A内のナノ金属導電層120上に配置されてナノ金属導電層120を覆っている。これに対して、ハードパッシベーション層140は、非可視領域100B内のソフトパッシベーション層150上にのみ対応して配置される。
【0038】
タッチパネル300の非可視領域100B内では、ソフトパッシベーション層150とハードパッシベーション層140とを含む二層のパッシベーション層をトレース層130の上に設けることにより、トレース層130の屈曲性と抗酸化能力とを同時に向上させることができる。さらに、ソフトパッシベーション層150が覆っていることにより、可視領域100A内のナノ金属導電層120の屈曲性も向上される。
【0039】
図4は、本開示の第4の実施形態に係るタッチパネル400の断面図である。タッチパネル400と第3の実施形態のタッチパネル300との構造の違いは、ハードパッシベーション層140とソフトパッシベーション層150の構成が入れ替わっている点である。具体的には、タッチパネル400では、ハードパッシベーション層140は、非可視領域100B内に配置されているだけでなく、可視領域100Aまで延びており、全体的な構造としては、非可視領域100B内では、ハードパッシベーション層140がトレース層130上に直接配置されてトレース層130を覆っており、可視領域100A内では、ハードパッシベーション層140がナノ金属導電層120上に配置されてナノ金属導電層120を覆っている。これに対して、ソフトパッシベーション層150は、非可視領域100B内のハードパッシベーション層140上にのみ対応して配置される。
【0040】
タッチパネル400の非可視領域100Bでは、ソフトパッシベーション層150とハードパッシベーション層140とを含む二層のパッシベーション層をトレース層130の上に配置することにより、トレース層130の屈曲性と抗酸化能力とを同時に向上させることができる。さらに、ハードパッシベーション層140が覆っていることにより、可視領域100A内のナノ金属導電層120の抗酸化能力も向上される。
【0041】
図5は、本開示の第5の実施形態に係るタッチパネル500の断面図である。タッチパネル500と第3の実施形態のタッチパネル300との構造の違いは、ハードパッシベーション層140が非可視領域100B内に配置されているだけでなく、可視領域100Aまで延びており、ハードパッシベーション層140がソフトパッシベーション層150を完全に覆うようにソフトパッシベーション層150上に配置されている点である。すなわち、タッチパネル500では、トレース層130及びナノ金属導電層120上を、完全に積層された二つの層であるソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140が覆うために、ソフトパッシベーション層150はトレース層130及びナノ金属導電層120上に直接配置され、ハードパッシベーション層140はソフトパッシベーション層150上に配置される。
【0042】
タッチパネル500では、ソフトパッシベーション層150及びハードパッシベーション層140を含む二層のパッシベーション層をトレース層130及びナノ金属導電層120の上に配置することにより、トレース層130及びナノ金属導電層120の曲げ性能及び抗酸化能力を同時に向上させることができる。
【0043】
図6は、本開示の第6の実施形態に係るタッチパネル600の断面図である。タッチパネル600と第5の実施形態のタッチパネル500との構造の違いは、ハードパッシベーション層140とソフトパッシベーション層150の構成が入れ替わっている点である。すなわち、タッチパネル600では、ハードパッシベーション層140は、トレース層130及びナノ金属導電層120上に直接配置するために非可視領域100B内及び可視領域100A内に配置され、ソフトパッシベーション層150は、ハードパッシベーション層140上に配置され、ハードパッシベーション層140を完全に覆うために、非可視領域100B内及び可視領域100A内に配置される。
【0044】
タッチパネル600では、ソフトパッシベーション層150とハードパッシベーション層140とを含む二層のパッシベーション層をトレース層130及びナノ金属導電層120の上に設けることにより、トレース層130及びナノ金属導電層120の曲げ性能及び抗酸化能力を同時に向上させることができる。
【0045】
ナノ金属導電層に対する本開示の実施形態の二層のパッシベーション層の保護能力を評価するために、ナノ金属導電層及びパッシベーション層を含む構造体について高温高湿(HTHH)試験を実施した。試験温度は85℃、湿度は85%であり、ナノ金属導電層のシート抵抗変化率が計算された。試験結果を表1に示す。単層のソフトパッシベーション層、単層のハードパッシベーション層、及びソフトパッシベーション層及びハードパッシベーション層を含む二層のパッシベーション層を含む構造をそれぞれ試験した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すデータによれば、高温高湿条件下において、二層のパッシベーション層構造を有するナノ金属導電層は、シート抵抗変化率10%未満の要件を満たす。また、二層のパッシベーション層構造は特に長期間(例えば、240時間を超える試験)にわたってより良好な保護能力を示した。
【0048】
さらに、ナノ金属導電層自体がより優れた可撓性及び屈曲性を有するので、次のステップは、パッシベーション層がナノ金属導電層の金属トレースの屈曲性を向上し得るかどうかを試験することである。金属トレースとパッシベーション層を含む構造物を曲げ試験し、金属トレースの配線抵抗変化を測定した。試験結果を以下の表2及び表3に示す。単層のソフトパッシベーション層、単層のハードパッシベーション層、並びにソフトパッシベーション層及びハードパッシベーション層を含む二層のパッシベーション層を含む構造をそれぞれ試験した。曲げ方向はパッシベーション層の外方向に対する基板の動的曲げであり、曲げR角半径は3mm、曲げ速度は1秒間に1回であった。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表2から、曲げ後、単層のハードパッシベーション層を上に配置した金属トレースの配線抵抗は異常であり、過負荷(OL)となり、金属トレースとパッシベーション層の両方に亀裂(クラック)が生じていることが分かる。表3から、二層のパッシベーション層構造を上に配置した金属トレースの配線抵抗は、曲げ後も異常がないことが分かる。したがって、単層のハードパッシベーション層と比較して、二層のパッシベーション層は、金属トレースの屈曲性を大幅に向上することができる。
【0052】
さらに、金属トレースとパッシベーション層を含む構造に試験温度65℃、湿度90%でHTHH試験を行い、酸化現象を観察した。試験結果を表4に示す。単層のソフトパッシベーション層、単層のハードパッシベーション層、並びにソフトパッシベーション層及びハードパッシベーション層を含む二層のパッシベーション層を含む構造をそれぞれ試験した。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から、上に配置された単層のハードパッシベーション層又はソフトパッシベーション層を有する金属トレースが、240時間後に酸化を開始したことが分かる。ソフトパッシベーション層の前にハードパッシベーション層を金属トレース上に配置した二層のパッシベーション層構造の下では、金属トレースは360時間後に酸化し始めた。ハードパッシベーション層の前にソフトパッシベーション層を金属トレース上に配置した二層のパッシベーション層構造の下では、金属トレースは未酸化のままであり、500時間の試験に合格した。二層のパッシベーション層構造は、単層のパッシベーション層よりも金属トレースに対して優れた抗酸化能力を提供することができる。
【0055】
以上の試験結果から、単層のソフトパッシベーション層又は単層のハードパッシベーション層と比較して、金属トレース又はナノ金属導電層上のハードパッシベーション層及びソフトパッシベーション層を含む二層のパッシベーション層構造の保護性能が良好であることが分かる。さらに、単層のハードパッシベーション層と比較して、二層のパッシベーション層構造は、金属トレースに良好な曲げ性能を持たせることができる。したがって、タッチパネルに二層のパッシベーション層を設けることにより、デバイスの屈曲性と抗酸化能力とを同時に向上させることができ、二層のパッシベーション層は、タッチパネルの信頼性を向上させ、長寿命化させることができる。
【0056】
上記は、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を概説する。当業者は、本明細書で紹介した実施形態の同じ目的を実行するため、及び/又は同じ利点を達成するために、他の工程及び構造を設計又は修正するための基礎として、本開示を容易に使用できることを理解すべきである。当業者はまた、そのような等価構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しないこと、及びそれらが本開示の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書の様々な変更、置換、及び変更を行うことができることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0057】
100 タッチパネル
100A 可視領域
100B 非可視領域
110 基板
120 ナノ金属導電層
130 トレース層
140 ハードパッシベーション層
150 ソフトパッシベーション層
200 タッチパネル
300 タッチパネル
400 タッチパネル
500 タッチパネル
600 タッチパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6