(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ディスプレイ要素の製造において使用するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/33 20060101AFI20220719BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220719BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20220719BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220719BHJP
【FI】
G09F9/33
G09F9/30 310
H01L21/52 C
H01L33/00 L
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081612
(22)【出願日】2021-05-13
(62)【分割の表示】P 2018521246の分割
【原出願日】2016-11-11
【審査請求日】2021-06-01
(32)【優先日】2015-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】特許業務法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】プルシェ、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ、パトリック ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー、ウィリアム
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-077940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0084482(US,A1)
【文献】特開2010-177390(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121051(WO,A1)
【文献】特表2015-500561(JP,A)
【文献】特表2014-533890(JP,A)
【文献】特表2006-525669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151602(US,A1)
【文献】特開2003-332184(JP,A)
【文献】特開2010-251360(JP,A)
【文献】国際公開第2014/204694(WO,A1)
【文献】特表2012-513103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
H01L 21/52
H01L 33/00 - 33/64
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル層に接着された
マイクロ発光ダイオード(μLED)デバイスのサブセットを選択的にピックアップするための方法であって、
各μLEDデバイスはμLEDエミッタを備え、前記μLEDエミッタは、メサ構造と、前記メサ構造内の発光源と、前記μLEDデバイスにおける前記メサ構造の頂部とは反対側の主発光面とを含み、前記方法は、
前記
μLEDデバイスのサブセットが前記ハンドル層に対して減少された接着度を有するように前記
μLEDデバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を
減少させることを含
み、
ここで、
前記ハンドル層に接着された前記μLEDデバイスは、前記μLEDデバイスのサブセットおよびμLEDデバイスの第2のサブセットを含み、
前記μLEDデバイスの第2のサブセットは、ピックアップツール(PUT)によって適用される力よりも大きい接着度で前記ハンドル層に接着され、
前記方法はさらに、
前記PUTによって、前記ハンドル層に対する前記
μLEDデバイスのサブセットの前記
減少された接着度よりも大きな力を前記
μLEDデバイスのサブセット
の主発光面に適用することによって前記
μLEDデバイスのサブセットを前記ハンドル層から分離すること、
ここで、前記力は、前記μLEDデバイスのサブセットが前記ハンドル層から分離されるときに、前記ハンドル層から前記μLEDデバイスの第2のサブセットを分離させない力であり、および
前記PUTによって、前記μLEDデバイスのサブセットをディスプレイ要素の基板に転写すること
を含む方法。
【請求項2】
前記
μLEDデバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を
減少させることは、前記
ハンドル層の微細構造の接着を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PUTは、前記
μLEDデバイスのサブセットに対する前記力を接着によって適用し、前記方法はさらに、前記PUTを前記
μLEDデバイスのサブセットに接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PUTは、非選択的PUTである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記
μLEDデバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を
減少させることは、前記
μLEDデバイスのサブセットおよび/または前記
μLEDデバイスのサブセットが接着され
た前記ハンドル層の対応する部分を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記
μLEDデバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を
減少させることは、前記
μLEDデバイスのサブセットが接着され
た前記ハンドル層の対応する部分に光を照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光が紫外線(UV)光を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記UV光が、
UVレーザ、
UVLEDアレイ、
フォトリソグラフィマスクを通過したUV光源
のうちの1つまたは複数から生じる、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハンドル層に接着された前記
μLEDデバイスは、発光ダイオード(LED)デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ハンドル層に接着された前記
μLEDデバイスは、無機発光ダイオード(LED)デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記
メサ構造は、実質的に放物状
である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ハンドル層は、半導体ウェハ、UVテープ、熱剥離テープ、多層テープ、または接着調整層のうちの一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ハンドル層から前記
μLEDデバイスのサブセットを分離した後に、
前記
μLEDデバイスの第2のサブセットが前記ハンドル層に対して
減少された接着度を有するように、前記ハンドル層に接着された前記
μLEDデバイスの第2のサブセット間の接着度を
減少させること、および
前記PUTによって、前記ハンドル層に対する前記
μLEDデバイスの第2のサブセットの前記減少された接着度よりも大きな力を前記
μLEDデバイスの第2のサブセットに適用することによって前記
μLEDデバイスの第2のサブセットを前記ハンドル層から分離すること
をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記PUTによって前記
μLEDデバイスのサブセットを基板に転写することであって、前記基板から欠陥のある
μLEDデバイスを除去した基板の位置に前記
μLEDデバイスのサブセットを転写することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ウェハ上に前記
μLEDデバイスを製造すること、
前記ウェハ上の前記
μLEDデバイスを個片化すること、および
個片化した前記
μLEDデバイスを前記ハンドル層に接着すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
命令群を含むコンピュータプログラムを記憶した非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムの命令群は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき
、請求項1に記載の方法を実行するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する、非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ要素の製造において使用するための方法および装置に関する。
本発明は、ハンドル層からLEDダイの選択的取得を可能にする特定用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは至る所に存在し、多くのウェアラブル電子デバイス、スマートフォン、
タブレット、ラップトップ、デスクトップ、テレビ、およびディスプレイシステムの中核
要素である。今日の一般的なディスプレイ技術は、液晶ディスプレイ(LCD)から近年
における有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)にまで及ぶ。
【0003】
ディスプレイアーキテクチャは、各画素が別々に駆動されるか否かに応じた受動および
能動マトリックスディスプレイを含む。アクティブ駆動回路は、第1世代における30c
m×40cmから第10世代(GEN10として知られる)における2.88m×3.1
5mまでのガラス基板サイズを有し得るガラスパネル上に、アモルファス、酸化物、また
はポリシリコン技術に基づくトランジスタが製造される薄膜トランジスタ(TFT)技術
を使用する。
【0004】
しかしながら、ほとんどのポータブルデバイス(すなわち、バッテリ駆動デバイス)で
は、ディスプレイは利用可能なバッテリ電力の大部分を使用する。加えて、ポータブルデ
バイスの最も一般的なユーザ問題は、ディスプレイの明るさが不十分であることである。
バッテリ寿命を延ばし、輝度レベルを向上させるには、電力消費を低減して、光源からよ
り高い輝度の発光を生成することが望ましいことがある。
【0005】
優れた電池性能と高輝度を提供する次世代のフラットディスプレイ画像発生器として、
無機発光ダイオード(ILED)ディスプレイが登場している。ILEDディスプレイは
、基本的なレベルにおいて、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの変形である
。OLEDは、2つのガラス面の間に挟まれて光を生成する有機またはポリマー材料に電
流を通過させる。ILEDは、ディスプレイの各画素(カラーディスプレイ用の3つの個
別の赤色、緑色、および青色LEDからなる)において有機LED材料をディスクリート
な標準LED(無機材料からなる)に置き換える。
【0006】
LED産業が多くの商業的機会、特にLED技術の開発課題を追求して、一般的な照明
用途における標準的な白熱電球からの置き換えを可能にしたことにより、標準的な(すな
わち、無機の)LEDデバイスが長年にわたり使用され、また、その性能(効率、輝度、
信頼性、および寿命)が長年にわたり最適化されている。すなわち、無機LEDは、開発
の乏しい新たなOLED材料よりもはるかに効率的であり輝度が高く信頼性が高い。
【0007】
ディスプレイの各画素において個別に切り換え可能な標準LED(R、G、B)の概念
は周知である。このアプローチは、大型情報ディスプレイに広く使用されている。しかし
ながら、標準LEDは通常、光の方向制御において非効率な平面チップであるため、これ
まで、このアプローチをより小さなディスプレイにまで縮小することはできなかった。ま
た、ラップトップまたはスマートフォンのディスプレイに必要な何百万もの画素のアセン
ブリは、標準的なアセンブリ製造技術を用いて実現可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書は、ILEDディスプレイのための製造アセンブリ方法、すなわち何百万もの
無機LEDダイをマトリクスアレイにアセンブリしてLEDディスプレイを作製する方法
を開示する。
【0009】
例示的な実施形態は、ダイを選択的に剥離して取得するためにハンドル層をパターン化
することで、選択可能なピックアップツール(PUT)をマイクロアセンブリで使用可能
にする方法に関する。
【0010】
ハンドル層は、UVテープとすることができる。このUVテープに対して、取得される
必要があるLED(つまりLEDデバイスの位置に対応したハンドル層の対応する部分)
の下方にのみ、UV光が選択的に照射(パターン化)される。それらLEDとテープとの
間の接着力が低下することで、マイクロアセンブリのピックアンドプレースのサイクルの
取得動作中に、選択されたチップの取得がPUTによって可能になる。
【0011】
UV光は、UVレーザ、UVLEDアレイ、またはUV光マスクなどの、パターニング
に使用可能な任意のUV源からの光とすることができる。
熱剥離テープ、多層テープ、または任意の接着切替層などの、他のハンドル層を代替的
に使用してもよい。
【0012】
この方法は、ウェハ/ハンドル層または基板からの既知の不良ダイの選択的除去、転写
印刷動作中に既知の良好ダイのみを配置するためのダイの選択的取得、または、転写印刷
サイクル中にPUT上のフルLEDアレイの低減サブセットの選択的取得を可能にする。
【0013】
あるいは、ハンドル層の照射パターン化処理は、ダイの取得を管理および制御するため
に、ハンドル層に対する特定のダイの接着を低減するのではなく、接着を高めることがで
きる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの実施形態は、ハンドル層に接着された電子デバイスのサブセットを選択的に
ピックアップするための方法を含む。この方法は、前記電子デバイスのサブセットが前記
ハンドル層に対して修正接着度を有するように、前記ハンドル層に対して接着された複数
の電子デバイスのうち電子デバイスのサブセット間の接着度を修正すること、および、ピ
ックアップツール(PUT)によって、前記ハンドル層に対する前記電子デバイスのサブ
セットの前記修正接着度よりも大きな力を前記電子デバイスのサブセットに適用すること
によって、前記電子デバイスのサブセットを前記ハンドル層から分離することを備える。
【0015】
前記PUTによって適用される前記力よりも大きな接着度によって、前記電子デバイス
の第2のサブセットが前記ハンドル層に接着される。この力は、前記電子デバイスのサブ
セットが前記ハンドル層から分離されるときに前記ハンドル層から前記電子デバイスの第
2のサブセットを分離させない力である。このため、前記電子デバイスのサブセットは前
記ハンドル層から選択的に分離される一方、前記電子デバイスの第2のサブセットは前記
ハンドル層に接着されたままとなる。
【0016】
前記接着度を修正することは、前記ハンドル層との前記電子デバイスのサブセットの前
記接着度を低下させることを含み得る。
前記PUTは、前記電子デバイスのサブセットに対する前記力を接着によって加え得る
。前記方法はさらに、前記PUTを前記電子デバイスのサブセットに接触させることを備
え得る。
【0017】
前記PUTは、非選択的PUTとすることができる。
前記電子デバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を修正することは、前
記電子デバイスのサブセットおよび/または前記電子デバイスのサブセットが接着された
箇所における前記ハンドル層の対応する部分を加熱することを含み得る。
【0018】
前記電子デバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を修正することは、前
記電子デバイスのサブセットおよび/または前記電子デバイスのサブセットが接着された
箇所における前記ハンドル層の対応する部分に液体の刺激を加えることを含み得る。
【0019】
前記電子デバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を修正することは、前
記ハンドル層の微細構造の接着を制御することを含み得る。
前記電子デバイスのサブセットと前記ハンドル層との間の接着度を修正することは、前
記電子デバイスのサブセットが接着された箇所における前記ハンドル層の対応する部分に
光を照射することを含み得る。
【0020】
前記光は紫外線(UV)光を含むものとすることができる。
前記UV光は、UVレーザ、UVLEDアレイ、またはフォトリソグラフィマスクを通
過したUV光源のうちの1つまたは複数から生じ得る。
【0021】
前記方法はさらに、前記ハンドル層から前記電子デバイスのサブセットを分離した後に
、前記電子デバイスの第2のサブセットが前記ハンドル層に対して修正接着度を有するよ
うに、前記ハンドル層に接着された前記電子デバイスの第2のサブセット間の接着度を修
正すること、および、前記PUTによって、前記ハンドル層に対する前記電子デバイスの
第2のサブセットの前記修正接着度よりも大きな力を前記電子デバイスの第2のサブセッ
トに適用することによって前記電子デバイスの第2のサブセットを前記ハンドル層から分
離することを含み得る。
【0022】
前記方法はさらに、前記PUTによって前記電子デバイスのサブセットを基板に転写す
ることであって、前記基板から欠陥のある電子デバイスを除去した基板の位置に前記電子
デバイスのサブセットを転写することを含み得る。
【0023】
前記方法はさらに、ウェハ上に前記電子デバイスを製造すること、前記ウェハ上の前記
電子デバイスを個片化すること、および、個片化した前記電子デバイスを前記ハンドル層
に接着することを含み得る。
【0024】
前記ハンドル層に接着された前記電子デバイスは、発光ダイオード(LED)デバイス
を含み得る。
前記ハンドル層に接着された前記電子デバイスは、無機LEDデバイスを含み得る。
【0025】
前記ハンドル層に接着された前記電子デバイスは、マイクロLED(μLED)デバイ
スを含み得る。各μLEDデバイスは、μLEDエミッタを含む。μLEDエミッタは、
実質的に放物状のメサ構造と、前記メサ構造内の発光源と、前記メサ構造の頂部とは反対
側における前記μLEDデバイスの主発光面とを含む。
【0026】
前記ハンドル層は、半導体ウェハ、UVテープ、熱剥離テープ、多層テープ、または接
着調節層のうちの一つを含み得る。
前記方法はさらに、前記電子デバイスのサブセットをディスプレイ要素の基板に前記P
UTを使用して転写することを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態は、命令群を含むコンピュータプログラムを記憶した非一時的なコ
ンピュータ読み取り可能記憶媒体を含み得る。前記命令群は、少なくとも1つのプロセッ
サによって実行されるとき、本明細書に記載される方法を実行するように前記少なくとも
1つのプロセッサを構成する。
【0028】
図面は、例示のみを目的として本開示の実施形態を示している。当業者であれば、以下
の説明から、本明細書で例示される構造および方法の代替の実施形態を、本明細書に記載
される開示の原理または利点から逸脱することなく用い得ることを容易に認識し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態によるμLEDデバイスの概略を示す図。
【
図2】一実施形態による、市販の平面LEDデバイスから出力されたビームプロファイル、μLEDデバイスから出力されたビームプロファイル、及び単一画素ビームの画像を示す図。
【
図3】一実施形態によるμLEDアセンブリプロセスの概要を概略的に示す図。
【
図4A】一実施形態による例示的な「ピックアンドプレース」プロセスの概要を概略的に示す図。
【
図4B】一実施形態による例示的な「ピックアンドプレース」プロセスの概要を概略的に示す図。
【
図4C】一実施形態による例示的な「ピックアンドプレース」プロセスの概要を概略的に示す図。
【
図4D】一実施形態による例示的な「ピックアンドプレース」プロセスの概要を概略的に示す図。
【
図4E】一実施形態による例示的な「ピックアンドプレース」プロセスの概要を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書は、概して、マイクロアセンブリのための選択可能ピックアップツール(PU
T)を実現する方法を開示する。
本発明におけるμLED技術は、光出力を方向付けし、ユーザによって観察される輝度
レベルを最大にするミクロンサイズのILEDデバイスを指す。米国特許第7,518,
149号に開示されるμLEDは、方向付けした光を供給する、すなわちその光が必要な
場所にのみ供給するために特別に開発された次世代LED技術である。
【0031】
μLEDは、典型的には直径が20μm未満であり、チップから放出される準コリメー
ト光ビームを形成するために、ウェハプロセス工程中に放物面構造がLEDダイ上に直接
エッチングされる(
図1、
図2参照)。マイクロILEDエミッタは、国際出願公開WO
2004/097947号(または米国特許第7,518,149号)で提案されたもの
と同様のマイクロILED構造を含み、高い抽出効率を有し、その形状に由来して準コリ
メート光を出力する。
図1は、基板302の上に半導体エピタキシャル層304が配置さ
れたマイクロILD300を示している。エピタキシャル層104は、メサ306の形状
に形成される。アクティブ(または発光)層308は、メサ構造306内に封入される。
メサ306は、光透過または発光面310とは反対側に切頭頂部を有している。また、メ
サ306は、デバイス内で生成または検出された光の反射エンクロージャを形成するよう
にほぼ放物形状を有している。矢印312は、アクティブ層308から放射された光がど
のようにLEDデバイス300から出射されるのに十分な角度で(すなわち、全反射の角
度内で)メサ306の壁で光出射面310に向けて反射されるのかを示している。
図1に
は示されていないが、デバイスの電気コンタクトパッドは、発光面310とは反対側の面
に配置されている。
【0032】
上記形状を有する構造は、その形状を有していないまたは標準的なLEDチップと比べ
て、低い照明角度での効率を大きく増加させる(
図2参照)。このようにμLEDの効率
が向上され、μLEDのコリメート出力が増加することにより、人間の目に見える光をナ
ノアンペアの駆動電流のみを用いて生成することが可能となる。
【0033】
図3には、青色および緑色発光μLEDにおけるサファイア材料系上のGaNをベース
とした「μアセンブリ準備」(Assembly ready)プロセスフローが開示されている。なお
、本発明は、本開示において提案されたこの材料系や一連のプロセスフローに限定される
ものではない。
【0034】
プロセスは、ILEDチップ製造およびアセンブリ準備に適合した基板とエピ層および
/またはテンプレートとを有した、サファイアウェハ上にGaNを持つ構造から始まる。
プロセスの最初のステップは、μLEDデバイスの製造と、それと共に行われるpおよ
びnコンタクトパッドの製造である。μLEDの製造後、ハードマスクを画定するための
フォトリソグラフィと、典型的には隣接デバイス間のGaNエピ層/テンプレートにおい
て2μmの幅および3~5μmの深さのトレンチをエッチングするドライエッチング方法
(例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)または誘導結合プラズマ(ICP
)エッチングツール)との組み合わせによって、ウェハ上のチップが部分的に個片化され
る。一例として、SiOxハードマスクを堆積し、深掘りUVレジストおよびフォトリソ
グラフィツールを用いてパターニングすることにより、CF4/CHF3のICPエッチ
ング化学反応を用いてSiOxに区画パターンを転写する。その後、GaNをエッチング
するための第2の塩素系エッチング化学反応が続く。ハードマスクは分離のためにデバイ
ス上に残される。
【0035】
部分的な個片化の後、機械的(またはハンドル)層(すなわち、テープ)が後続の処理
ステップのためのハンドル層として機能するものとして上面に適用される。ハンドル層が
適用されると、レーザビームを用いてサファイア基板を除去するレーザ取り外しプロセス
が適用される。レーザ取り外し処理は、エキシマレーザ光を用いてサファイア基板をGa
Nエピ層から分離する技術である。この技術は、HB(高輝度)LEDおよびフレキシブ
ルディスプレイの製造において、高スループットおよび高品質のために重要である。
【0036】
サファイア基板が取り外されると、構造体は組み立ての準備が整う。アセンブリは、ピ
ックアンドプレース技術と、本明細書に開示されるようなハンドル層への各電子デバイス
の接着の修正とを用いて実施することができる。
【0037】
本明細書に開示される製造プロセスは、電気回路を形成する半導体チップのアセンブリ
に対処する。一つの実施形態は、製品を表示するためのILED画像発生器とすることが
できる。
【0038】
このため、開示される方法および装置の目的は、薄膜トランジスタ(TFT)回路を含
み得るガラスパネル上での処理および操作のためにピックアップツール(PUT)に対し
て接触および適合可能に特に設計される複数のILEDチップを使用した画像発生器およ
び関連する製造方法を提供することにある。
【0039】
具体的に、本明細書は、ダイが取り付けられたハンドル層の接着特性を操作することに
より、ピックアップツール(PUT)を用いてハンドル層からILEDダイ(デバイス)
を選択的に取得(ピッキング)可能にする方法を開示する。この方法は、マイクロアセン
ブリを使用してLEDダイをウェハまたは他の基板(ハンドル層)からガラスパネルまた
は類似の基板に転写する状況に特に適している。
【0040】
ハンドル層の接着は、外部刺激によって選択的かつ局所的に感作され適合される。この
刺激は、例えば、光活性化、熱活性化、液体活性化、またはハンドル層の接着特性を制御
する微細構造を持つようにハンドル層を構造化することによって行うことができる。この
刺激は、転送サイクルの取得動作中にPUTがLEDウェハと接触する前に、PUTによ
って取得される特定のダイに対して(または、PUTによってピックアップされないダイ
に対して)適用され得る。
【0041】
この方法は、処理ウェハからの欠陥またはパラメトリック欠陥の結果として既知の良好
ダイの選択的取得、またはILEDダイのフルアレイのサブセットを用いてフル画像発生
器のアセンブリを完了する場合にそのサブセットの取得を容易にする。この方法は、修理
または交換サイクルの一部として、ウェハまたは基板から不良ダイを取得するためにも適
用され得る。
【0042】
一般的に、ダイの2次元アレイをピックアップするように構成されたPUTは、ダイの
ソース(ウェハまたは他の基板上に位置し得る)と接触すると、PUTにより適用される
取得力によってすべての位置でダイを取得し得る。このようなシステムを設計するには、
PUTの取得力がLEDダイと処理ウェハ/基板との間の接着力を超えることを保証する
必要がある。しかしながら、この基本的な状況では、これらの力の均衡を選択的に変化さ
せていくつかの特定のダイが取得されないままとすることはできない。本明細書に開示さ
れる方法および装置は、そのような選択を可能にする。これは、LEDダイと処理ウェハ
/基板との間の接着力を取得動作の前に修正して、いくつかのダイ(選択されたダイ)の
みがPUTによる取得力よりも小さな接着力(接着度)を有するようにしてこれらのダイ
が取得されることを保証することによって達成される。同様の方法を用いて、既知の不良
ダイを基板から選択的に除去することができる。
【0043】
ディスプレイを構築するために、ILEDの第1のセットがハンドル層からPUTによ
り取得(pick)され、ガラスパネル(任意で、ILEDを制御するTFT回路を含む)上
に載置(place)される。このシーケンスは、LEDの第2のセットで繰り返され、その
後、ディスプレイが完全に占有されるまで繰り返される。LEDの各セットは、数千のL
EDで構成され得る。
【0044】
取得および載置ステップの成功は、プロセスの異なるステップ間における接着性の制御
に基づく。
実際、PUTによるLEDの良好な取得のためには、PUTとLEDとの接着は、LE
Dとハンドルとの接着よりも強くなければならない。同様に、LEDをうまく載置するた
めには、受け取り基板とLEDとの接着は、PUTとLEDとの接着よりも強くなければ
ならない。あるいは、載置サイクル中のPUTとLEDとの接着は、オン/オフされるよ
うに切り替えられてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態は、特定のLEDに対応する領域においてLEDハンドル層をパタ
ーニングすることにより、その接着性を制御し、選択されたLEDを取得するべく選択的
に剥離する方法を含む。
【0046】
初めに、LEDとハンドルとの接着はPUTとLEDとの接着よりも強い。選択された
LEDの下方におけるLEDとハンドルとの接着が選択的に低下させられることで、その
LEDとハンドルとの接着がPUTとLEDとの接着よりも小さくなる。この場合、選択
されたLEDはPUTによって取得される一方、他のLEDはハンドル層に留まる。
【0047】
ハンドル層は、例示的な構成では、UVテープである。このUVテープに対して、取得
される必要があるLEDの下方にのみ、パターン化されたUV光が照射される。これらの
LEDとテープとの間の接着力が低下することで、PUTによるチップの取得が可能とな
る。
【0048】
UV光は、パターニングに使用可能な任意のUV源からの光とすることができる。例え
ば、UVレーザ、UVμLEDアレイ(マスクレスフォトリソグラフィ)、または標準的
なフォトリソグラフィマスクを介して照射される標準的なUV光源とすることができる。
【0049】
図4A~4Eは、UVテープの場合の全体的なピックアンドプレースのプロセスの概要
を示している。
UVテープの代わりに他のハンドル層を使用することができる。いくつかの例として、
熱剥離テープ(選択されたLEDの下方の領域がレーザまたは任意の選択的熱源を介して
加熱される)、多層テープ(選択されたLEDの下層がレーザまたは任意の選択的蒸発源
によって気化される)、または接着切り替え層(UV接着剤、UVワックスなど)で覆わ
れた基板が挙げられる。
【0050】
PUTは、接着パラメータを満たす任意のタイプおよび材料とすることができる。UV
テープはPUTとして使用することもできる。ここで、取得ステップの後にUV照射して
PUTとLEDとの接着を減少させることにより載置を容易化することができる。ピック
アンドプレースのシーケンスごとに新しいUVテープが使用される。
【0051】
市販のILEDディスプレイにおいては、すべてのLEDが機能していなければならな
い。典型的なLED製造環境では、ウェハ上のすべてのLEDが試験される。これは一般
には、ウェハ上の各LEDのPおよびNコンタクトとの電気コンタクトを行う特定のLE
D試験装置を使用することによって実現される。しかしながら、ILEDディスプレイ用
のLEDが製造される場合、LEDダイは他の照明用途向けに製造されるものよりも多数
桁小さく、4インチウェハ上に1億個の別個のLEDダイが存在する可能性がある。これ
は、各ダイを試験して既知の良好ダイ(KGD)マップを作成することは不可能ではない
にしても困難である。
【0052】
本明細書に開示されるような選択可能ピックアップ方法の1つの使用は、選択可能PU
Tを使用して、未試験LEDウェハを用いた高歩留まりのILEDディスプレイの製造を
提供する製造フローを可能にする。このようなフローにおいて、PUTは、最初のピック
アンドプレースのサイクル中においてあらゆる場所でLEDを取得する。次に、LEDを
ガラスパネルで試験する。2回目のピックアンドプレースのサイクルでは、試験サイクル
中にLEDの不良または欠落が検出されたガラスパネル上の位置と一致するPUTの位置
でのみLEDが取得される。この選択可能な取得は、提案された方法および装置によって
可能となる。このような追加のピックアンドプレースのサイクルを使用することにより、
本明細書において概要を説明した選択可能ピックアップ方法を使用して、ガラス基板上の
各位置(全ての動作ディスプレイ画素)に動作LEDが配置されることを保証することが
でき、それによって、非選択可能PUTは、最後の試験サイクル中にLEDの不良または
欠落が検出されたガラスパネル上の位置に一致するPUT上の位置におけるLEDのみを
取得する。
【0053】
提案された選択可能ピックアップ方法の別の使用は、適切な試験方法がKGDマップを
作成するために使用された後などに、そのKGDマップをLEDウェハに利用可能な状況
に関する。これは、上記したプロセスの変形である。選択可能ピックアップ方法を使用し
て、ピックアンドプレースのサイクル中に欠陥ダイのピックアップを排除/防止すること
ができ、それにより、不良ダイがガラス基板上に載置されないようにすることができる。
上記した後続のピックアンドプレースサイクルは、この理由のために直前のピックアンド
プレースサイクルでLEDを受け取っていないガラス基板上の任意の位置を埋め戻す。
【0054】
提案された選択可能ピックアップ方法の別の使用は、LEDウェハを上述した提案され
たILEDディスプレイ製造プロセスに使用する前にそのLEDウェハを「修復」するこ
とである。選択可能ピックアップ方法を使用して、欠陥LEDのアレイをウェハまたはハ
ンドル層から選択的に除去(およびダンプ)することができる。次いで、交換用のダイを
別のウェハから取得して、不良ダイが除去された第1のウェハ位置に置くことができる。
欠陥ダイが除去されたすべての位置を埋め戻すにはこのような交換サイクルが複数回必要
になり得る。このアプローチは、100%のLED歩留まりを有するLEDウェハ/ハン
ドル層を作製し得る。上述した製造プロセスへの入力としてのこのようなウェハ/ハンド
ル層は、100%歩留まりのILEDディスプレイを生成し得る。
【0055】
コンピュータプログラムは、上述した方法のいずれかを提供するように構成され得る。
コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に提供され得る。コン
ピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品とすることができる。この製品は、
非一時的なコンピュータ使用可能な記憶媒体を含み得る。コンピュータプログラム製品は
、上記方法を実行するように構成された記憶媒体に具現化されたコンピュータ読み取り可
能なプログラムコードを有し得る。コンピュータプログラム製品は、少なくとも1つのプ
ロセッサに上記方法の一部またはすべてを実行させるように構成され得る。
【0056】
本明細書では、コンピュータ実装方法、装置(システムおよび/またはデバイス)、お
よび/またはコンピュータプログラム製品のブロック図またはフローチャートを参照する
ことにより、種々の方法および装置を説明している。ブロック図および/またはフローチ
ャートのブロックや、ブロック図および/またはフローチャートのブロックの組み合わせ
は、1つまたは複数のコンピュータ回路によって実行されるコンピュータプログラム命令
によって実装可能であることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎
用コンピュータ回路、専用コンピュータ回路、および/または他のプログラム可能データ
処理回路のプロセッサ回路に提供されてコンピュータを生成し、コンピュータのプロセッ
サおよび/または他のプログラム可能データ処理装置により実行されメモリ位置に記憶さ
れた値を変換しトランジスタを制御する命令は、それらの回路内の他のハードウェア構成
要素とともに、ブロック図および/またはフローチャートで指定された機能/動作を具現
化することにより、それらブロック図および/またはフローチャートで指定された機能/
動作を実現するための手段(機能)および/または構造を形成する。
【0057】
また、コンピュータプログラム命令は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶され
て、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置を特定の方法で機能させるよ
うに指示することにより、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶された命令が、ブロ
ック図および/またはフローチャートで指定された機能/動作を具現化する命令を含み、
製造物品を生成できるようにする。
【0058】
有形の非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、電子的、磁気的、光学的、電
磁的、または半導体のデータ記憶システム、装置、またはデバイスを含み得る。コンピュ
ータ読み取り可能記憶媒体の具体的な例は、ポータブルコンピュータディスケット、ラン
ダムアクセスメモリ(RAM)回路、読み出し専用メモリ(ROM)回路、消去可能プロ
グラマブル読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)回路、ポータブル
なコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、およびポータブルなデジタ
ルビデオディスク読み出し専用メモリ(DVD/Blu-ray(登録商標))を含む。
【0059】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータおよび/または他のプログラム可能デー
タ処理装置にロードされ、コンピュータおよび/または他のプログラム可能装置で一連の
動作ステップを実行させて、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される
命令は、ブロック図および/またはフローチャートで指定された機能/動作を具現化する
ためのステップを提供する。
【0060】
従って、本発明は、プロセッサ上で実行されるハードウェアおよび/またはソフトウェ
ア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)で実施することが
でき、これらは総称して「回路」、「モジュール」またはその類型とすることができる。
【0061】
いくつかの代替の実施形態では、ブロックに示されている機能/動作は、フローチャー
トに記載された順序とは異なる場合があり得る。例えば、連続して示された2つのブロッ
クは実際には実質的に同時に実行されてもよく、あるいは、関連する機能/動作に応じて
ブロックが逆の順序で実行されてもよい。また、フローチャートおよび/またはブロック
の所与のブロックの機能は複数のブロックに分離されてもよく、および/またはフローチ
ャートおよび/またはブロックの2つ以上のブロックの機能が少なくとも部分的に統合さ
れてもよい。最後に、図示されているブロックの間に他のブロックが追加/挿入されても
よい。
【0062】
上述した実施形態の説明は、例示のために提示されたものであり、包括的であること、
または開示された正確な形態に特許権を限定することを意図するものではない。当業者で
あれば、上記の開示に照らして多くの変更および変形が可能であることを理解し得る。
【0063】
本明細書で使用される言語は、主に、読みやすさおよび教示目的のために選択されたも
のであり、本発明の主題を描写または制限するために選択されていない場合がある。従っ
て、特許権の範囲は、この詳細な説明によってではなく、本明細書に基づく出願に対して
発行されるすべての請求項によって制限されることが意図される。したがって、実施形態
の開示は、特許請求の範囲に記載されている特許権の範囲を例示するものであって、これ
に限定されるものではない。