(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20220719BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K5/10 Z
(21)【出願番号】P 2021099947
(22)【出願日】2021-06-16
(62)【分割の表示】P 2017061529の分割
【原出願日】2017-03-27
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016194672
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紘志
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚浩
(72)【発明者】
【氏名】松浦 睦
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116426(JP,A)
【文献】特開2015-130741(JP,A)
【文献】特開2010-124659(JP,A)
【文献】特開2009-148081(JP,A)
【文献】特開2003-209946(JP,A)
【文献】特開2004-135402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 24/00
H02K 5/10
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体部から径方向に延在する複数のティースを有するステータコアと、
前記複数のティースを前記ステータコアの軸方向の両側から覆うインシュレータと、
前記インシュレータを介して前記複数のティースそれぞれに巻回されるコイルと、
前記コイルを前記軸方向の両側から覆う環状の第1コイルカバー及び第2コイルカバーと、
前記ステータコアの前記複数のティースに前記径方向で対向配置されるロータと、
を備え、
前記インシュレータは、前記複数のティースそれぞれの先端部を前記軸方向の両側から覆うフランジ部を有し、
前記第1コイルカバー及び前記第2コイルカバーそれぞれは、円環部の径方向の一方側の周縁に前記軸方向に延在する第1の周壁と、前記円環部の前記径方向の他方側の周縁に前記軸方向に延在する第2の周壁とを有し、
前記第1コイルカバーの前記第1の周壁は、前記インシュレータの前記軸方向の一方側の前記フランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した前記隙間を形成し、
前記第2コイルカバーの前記第1の周壁は、前記インシュレータの前記軸方向の他方側の前記フランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した前記隙間を形成する、
レゾルバ。
【請求項2】
前記第1コイルカバー及び前記第2コイルカバーそれぞれは、前記複数のティースの先端の間の空間に配置される複数の突起部を有し、
前記第1コイルカバー及び前記第2コイルカバーそれぞれは、隣接する前記突起部の間に、前記突起部同士を連接する前記第1の周壁を備え、
前記第1コイルカバーの各突起部の先端と、前記第2コイルカバーの各突起部の先端とには、互いに向き合う段差を成す段部が形成され、前記第1コイルカバーの突起部の前記先端と、前記第2コイルカバーの突起部の前記先端は、径方向で隙間を隔てて重なり合う、請求項1に記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記第1コイルカバーの前記第1の周壁が前記ロータに対向する面と、前記一方側の前記フランジ部が前記ロータに対向する面とは、前記径方向で略一致し、
前記第2コイルカバーの前記第1の周壁が前記ロータに対向する面と、前記他方側の前記フランジ部が前記ロータに対向する面とは、前記径方向で略一致する、請求項1または2に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記ステータコアは、前記本体部の2つの主表面間を貫通するように複数の貫通孔が形成され、
前記第1コイルカバーは、前記第2の周壁から前記軸方向に延在する複数の第1係合部を有し、
前記第2コイルカバーは、前記第2の周壁から前記軸方向に延在する複数の第2係合部を有し、
前記複数の第1係合部それぞれと前記複数の第2係合部とそれぞれとは、前記複数の貫通孔それぞれを通じて互いに係合している、請求項1乃至3のいずれか1つに記載のレゾルバ。
【請求項5】
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記貫通孔の内部で互いに係合している、請求項4に記載のレゾルバ。
【請求項6】
前記インシュレータと接合する前記第1コイルカバーの前記第2の周壁には、互いに向き合う段差が形成されている、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のレゾルバ。
【請求項7】
前記インシュレータは、第1インシュレータ及び第2インシュレータから構成され、
前記第1インシュレータに形成されたピンが、前記第1コイルカバーに形成された穴に挿通され、前記第1インシュレータに形成された前記ピンを介して、前記第1コイルカバー及び前記第1インシュレータは結合し、
前記第2インシュレータに形成されたピンが、前記第2コイルカバーに形成された穴に挿通され、前記第2インシュレータに形成された前記ピンを介して、前記第2コイルカバー及び前記第2インシュレータは結合する、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のレゾルバ。
【請求項8】
前記インシュレータから前記ステータコアの径方向に延在する端子台部と、
前記端子台部に設けられ、前記コイルを構成する巻線の末端が絡げられている複数の端子と、
前記第1コイルカバーに設けられ、前記端子台部を覆う端子台カバー部と、
を備え、
前記端子台カバー部は、内部に設けられた複数の隔離部材を有し、
前記複数の端子それぞれは、前記複数の隔離部材により形成された複数の空間のそれぞれに、互いに離間されるように収容されている、請求項1乃至7のいずれか1つに記載のレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
回転角センサとして、レゾルバが知られている。レゾルバは、輪状のステータコアから放射状に延在する複数のティースを備えたステータと、ステータのティース部に対向配置されるロータとから構成される。ティースにはインシュレータを介してステータ巻線が巻回されてコイルを形成している。ステータ巻線は、励磁信号を入力する励磁巻線と、ロータの回転角度に応じて2相の信号を出力する2つの検出巻線とで構成されている。検出巻線からは、それぞれsinθに依存したsin相の信号と、cosθに依存したcos相の信号が出力される。レゾルバにおいては、例えば油中で用いた場合でも切削クズ等の異物がステータ巻線(コイル)側に侵入することを防止するため、ステータコアの両側にステータ巻線を覆う2つのコイルカバー(保護カバー)を取り付けた構成が知られている。
【0003】
上記構成では、例えば、輪状ステータの両端面に設けられた第1輪状巻線カバー及び第2輪状巻線カバーそれぞれに第1曲折部及び第2曲折部が形成され、輪状ステータの両端面に設けられた第1輪状絶縁カバー及び第2輪状絶縁カバーそれぞれに第3曲折部及び第4曲折部が形成される。そして、上記構成では、第1曲折部及び第2曲折部と第3曲折部及び第4曲折部とを互いに接触させることにより、外部ステータ巻線側への異物侵入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成例では、第1輪状巻線カバー及び第2輪状巻線カバー、並びに、第1輪状絶縁カバー及び第2輪状絶縁カバーは樹脂で成形された部材であるため、各部材の寸法を高精度で製作することは難しく、第1曲折部を第3曲折部の全周に亘って互いに接触させ、第2曲折部を第4曲折部の全周に亘って互いに接触させて異物の侵入を防止するためには、これらの部材を所定の圧力で当接する必要がある。その結果、一方、または両方の部材が変形する場合があり、レゾルバの信頼性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性をより向上させることができるレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るレゾルバは、環状の本体部から径方向に延在する複数のティースを有するステータコアと、前記複数のティースを前記ステータコアの軸方向の両側から覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記複数のティースそれぞれに巻回されるコイルと、前記コイルを前記軸方向の両側から覆う環状の第1コイルカバー及び第2コイルカバーと、前記ステータコアの前記複数のティースに前記径方向で対向配置されるロータと、を備え、前記インシュレータは、前記複数のティースそれぞれの先端部を前記軸方向の両側から覆うフランジ部を有し、前記第1コイルカバー及び前記第2コイルカバーそれぞれは、円環部の径方向の一方側の周縁に前記軸方向に延在する第1の周壁と、前記円環部の前記径方向の他方側の周縁に前記軸方向に延在する第2の周壁とを有し、前記第1コイルカバーの前記第1の周壁は、前記インシュレータの前記軸方向の一方側の前記フランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した前記隙間を形成し、前記第2コイルカバーの前記第1の周壁は、前記インシュレータの前記軸方向の他方側の前記フランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した前記隙間を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、信頼性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るレゾルバの模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す第1コイルカバー及び第2コイルカバーがステータコアに装着されたレゾルバを上面から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すレゾルバを底面から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すレゾルバからロータを外した状態のA-A線要部断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示すレゾルバからロータを外した状態のB-B線要部断面図である。
【
図8】
図8は、スロットに第1コイルカバー及び第2コイルカバーを装着した状態を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係るレゾルバの模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るレゾルバについて図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るレゾルバの模式的な分解斜視図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るレゾルバ1は、ロータ2と、ステータ3と、第1コイルカバー13と、第2コイルカバー14とを有するVR(バリアブルリラクタンス)型レゾルバである。ステータ3と、第1コイルカバー13と、第2コイルカバー14とは、ステータ構造を構成している。
【0012】
ロータ2は、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアを複数枚積層した積層構造を有しており、図示しないモータの回転軸に装着され、ステータ3の内側に配置されている。
図1に示す軸方向は、ロータ2に接続されたモータの回転軸の軸方向と一致する。また、
図1に示すように、径方向とは、軸方向と直交する方向と一致する。なお、径方向とは軸方向と直交する面と平行なあらゆる方向を意味するが、
図1では両矢線にて径方向のうちの一つを示している。
【0013】
ステータ3は、ステータコア4と、コイル9と、インシュレータ6とを有する。ステータコア4は、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアを所定枚数、軸方向に積層して構成されている。ステータコア4は、環状の本体部である環状部から径方向に延在する複数のティース5を有する。レゾルバ1がインナーロータ型である本実施形態では、ステータコア4は、環状の本体部である環状部から径方向内向きに延在する複数のティース5を有する。本実施形態では、ステータコア4は、10個のティース5を有しているが、その数は特に限定されない。各ティース5は、環状部の周方向において等角度間隔で配置されており、各ティース5それぞれの先端は、周方向に広がる先端部を有している。複数のティース5の間それぞれには、空間(スロット15)が形成される。
【0014】
コイル9は、インシュレータ6を介して複数のティース5それぞれに巻回される巻線である。コイル9は、励磁信号を入力する励磁巻線と、ロータ2の回転角度に応じて2相の信号を出力する検出巻線とから構成され、検出巻線は、sinθに依存したsin相の信号が出力されるsinθ検出巻線と、cosθに依存したcos相の信号が出力されるcosθ検出巻線とから構成されている。
【0015】
インシュレータ6は、絶縁性樹脂の射出成形にて成形される。インシュレータ6は、複数のティース5をステータコア4の軸方向の両側から覆う、第1インシュレータ7及び第2インシュレータ8により構成される。また、インシュレータ6は、複数のティース5それぞれの先端を軸方向の両側から覆うフランジ部(フランジ部7a及びフランジ部8a)を有する。なお、
図1では、インシュレータ6として、複数のティース5の上側から装着される第1インシュレータ7が図示されており、複数のティース5の下側から装着される第2インシュレータ8は、図示されていない。
【0016】
インシュレータ6は、ステータコア4の径方向に延在する端子台部10を備える。本実施形態では、第1インシュレータ7は、ステータコア4の径方向外向きに延在する端子台部10を備える。端子台部10には複数の端子11(
図1では6本の端子11)が植設され、メス型のコネクタハウジング12も形成されている。端子台部10は第1インシュレータ7と同時に成形することができる。各端子11の一方端には、対応するコイル9を構成する巻線の末端が絡げられており、各端子11の他方端は、コネクタハウジング12の内部に突出している。各端子11の他方端は、外部コネクタと接続される。第1インシュレータ7と端子台部10とは、絶縁性樹脂の射出成形にて一体成形される。
【0017】
第1インシュレータ7は、環状部から径方向内向きに延在する複数の腕部(
図1では10個の腕部)を備える。これら腕部の先端にはフランジ部7aが設けられている。第1インシュレータ7の腕部は、ステータコア4の各ティース5の部分(上側)に装着される。フランジ部7aは、ティース5の先端部の上側を覆うとともに、腕部に巻回される巻線(コイル9)の巻き崩れを防止する。隣接する腕部間の根元(スロット15の奥)には、コイル9を構成する巻線の渡り線を支持する渡りピン7bが一体形成されている。本実施形態では、10本の渡りピン7bが形成されている。
【0018】
そして、第1インシュレータ7の腕部の根元の環状部には、樹脂ピン7cが一体に形成されている。
図1では、10本の樹脂ピン7cが、第1インシュレータ7の環状部に等角度間隔で形成されている。更に、端子台部10には、端子11の外周側に2本の樹脂ピン7cが一体に形成されている。すなわち、
図1に示す一例では、合計12本の樹脂ピン7cが第1インシュレータ7に形成されている。樹脂ピン7cについては、後述する。
【0019】
第2インシュレータ8は、第1インシュレータ7と同様に、環状部から径方向内向きに延在する複数の腕部(本実施形態では10個の腕部)を備える。これら腕部の先端にはフランジ部8aが設けられている。第2インシュレータ8の腕部は、ステータコア4の各ティース5の部分(下側)に装着される。フランジ部8aは、ティース5の先端部の下側を覆うとともに、腕部に巻回される巻線(コイル9)の巻き崩れを防止する。また、第2インシュレータ8の腕部の根元の環状部には、後述する樹脂ピン8cが一体に形成されている。本実施形態では、10本の樹脂ピン8cが、第2インシュレータ8の環状部に等角度間隔で形成されている。また、本実施形態では、第1インシュレータ7と第2インシュレータ8とがステータコア4に装着されると、10本の樹脂ピン8cは、10本の樹脂ピン7cと同じ箇所となるように、第2インシュレータ8に形成されている。
【0020】
なお、
図1では、渡りピン7bが第1インシュレータ7に形成されているが、本実施形態は、渡りピン7bが第2インシュレータ8に形成されている場合であっても良い。また、樹脂ピン7c及び樹脂ピン8cが形成される位置は、上記に限定されるものではない。例えば、樹脂ピン7cは、渡りピン7bの上に形成される場合であっても良い。また、例えば、渡りピン7bが第2インシュレータ8に形成されているのであれば、樹脂ピン8cは、渡りピン7bの上に形成される場合であっても良い。この場合、腕部の根元に樹脂ピン7c及び樹脂ピン8cを形成する構成に比べて、腕部に巻線を巻回する際、巻線機のノズルの動きの自由度が高くなる。また、樹脂ピン7cは、インシュレータ6の外形寸法の自由度が高ければ、渡りピン7bよりも外周側に形成しても良く、その位置は特に限定されない。この場合、腕部に巻線を巻回する際、巻線機のノズルの動きにおいて制約を受けることがない。
【0021】
また、上記の一例では、インシュレータ6は第1インシュレータ7と第2インシュレータ8とから構成されるが、本実施形態は、インサート成形によりステータコア4にインシュレータ6が一体成形で形成される場合であっても良い。即ち、第1インシュレータ7と第2インシュレータ8とが、インシュレータ6として一体成形されている場合であっても良い。また、上記の一例では、第1インシュレータ7と端子台部10とは射出成形にて一体成形されるが、本実施形態は、別部材で形成した端子台部10を装着した構成であっても良い。また、本実施形態は、コネクタハウジング12を形成しない構成であっても良い。
【0022】
次に、第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14について、
図1とともに、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、
図1に示す第1コイルカバーの斜視図であり、
図3は、
図1に示す第2コイルカバーの斜視図である。
【0023】
第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14は、その構成材料は限定されないが、本実施形態では樹脂からなり、例えば樹脂の射出成形にて成形される。樹脂としては、例えば絶縁性樹脂を用いることができる。第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14は、コイル9をステータコア4の軸方向の両側から覆って、コイル9を保護するコイルカバーである。
図1に示すように、第1コイルカバー13は、コイル9の上側から装着され、第2コイルカバー14は、コイル9の下側から装着される。
【0024】
図2に示すように、第1コイルカバー13は、本体を構成する円環部13aが全体的に環状であり、円環部13aは、外周縁に軸方向に延在する外周壁13bを備える。外周壁13bの一部には上述した端子台部10を覆う端子台カバー部13gが設けられている。
【0025】
端子台部10を覆う端子台カバー部13gは、内部に設けられた複数の隔離部材(仕切り板)を有し、複数の端子11それぞれは、複数の隔離部材により形成された複数の空間13hそれぞれに、互いに離間されるように収容されている。空間13hに端子11が収容される構成により、ステータ構造内部に侵入した異物によって端子11間が電気的に短絡するおそれを防止できる。
【0026】
図3に示すように、第2コイルカバー14は、本体を構成する円環部14aが全体的に環状であり、円環部14aは、外周縁に軸方向に延在する外周壁14bを備える。第2コイルカバー14の円環部14aの内径及び外径は、第1コイルカバー13の円環部13aの内径及び外径とそれぞれ略同じである。
【0027】
図2に戻って、第1コイルカバー13の円環部13aには、円周方向に等ピッチ間隔で複数の貫通穴13fが形成され、端子台カバー部13gの外周側にも、複数の貫通穴13fが形成されている。本実施形態では、貫通穴13fは、円環部13aに10個形成され、端子台カバー部13gに2個形成されている。円環部13aの貫通穴13fは、第1インシュレータ7の環状部に形成された樹脂ピン7cと等しいピッチで形成されている。また、端子台カバー部13gの貫通穴13fは、端子台部10に形成された樹脂ピン7cと等しいピッチで形成されている。
【0028】
また、
図3に示すように、第2コイルカバー14の円環部14aには、円周方向に等ピッチ間隔で複数の貫通穴14fが形成されている。本実施形態では、貫通穴14fは、円環部14aに10個形成されている。円環部14aの貫通穴14fは、第2インシュレータ8の環状部に形成された樹脂ピン8cと等しいピッチで形成されている。
【0029】
図2に戻って、第1コイルカバー13の中央の開口13cの周縁には、外周壁13bと同じ軸方向に延在する複数の突起部13dが形成されている。各突起部13dの先端には、段部13eが形成されている。本実施形態では、突起部13dは、周方向に等ピッチ間隔で10個形成されている。突起部13dは、フランジ部7aの外形状に合わせて、円環部13a側に向かって周方向で徐々に幅広になっている。また、第1コイルカバー13は、隣接する突起部13d同士の間に、突起部13d同士と連接し、突起部13dと同じ軸方向に延在する内周壁13pを備えている。すなわち、第1コイルカバー13は、軸方向に延在する周壁として、第1の周壁である内周壁13pと、第2の周壁である外周壁13bと有する。
【0030】
また、
図3に示すように、第2コイルカバー14の中央の開口14cの周縁には、外周壁14bと同じ軸方向に延在する複数の突起部14dが形成されている。各突起部14dの先端には、段部14eが形成されている。本実施形態では、突起部14dは、フランジ部8aの外形状に合わせて、周方向に等ピッチ間隔で10個形成されている。突起部14dは、円環部14a側に向かって周方向で徐々に幅広になっている。また、第2コイルカバー14は、隣接する突起部14d同士の間に、突起部14d同士と連接し、突起部14dと同じ軸方向に延在する内周壁14pを備えている。すなわち、第2コイルカバー14は、軸方向に延在する周壁として、第1の周壁である内周壁14pと、第2の周壁である外周壁14bと有する。
【0031】
図2に戻って、突起部13dの内周面には、リブ13jが形成される。リブ13jは、円環部13aに立設されている。リブ13jは突起部13dと一体成形で形成され、突起部13dの内周面に対して略垂直方向に延在している。また、
図3に示すように、突起部14dの内周面には、リブ14jが形成される。リブ14jは、円環部14aに立設されている。リブ14jは突起部14dと一体成形で形成され、突起部14dの内周面に対して略垂直方向に延在している。リブ13jは、突起部13dの強度を補強し、リブ14jは、突起部14dの強度を補強している。
【0032】
上記の構造を有する第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14が、ステータコア4の軸方向両側からそれぞれ装着され、ステータ構造が構成される。本実施形態では、第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14は、ステータコア4の軸方向の両側から覆うように、インシュレータ6を介して結合される。
【0033】
具体的には、第1コイルカバー13は、第1インシュレータ7と結合され、第2コイルカバー14は、第2インシュレータ8と結合される。例えば、第1インシュレータ7に形成された樹脂ピン7cが、第1コイルカバー13に形成された貫通穴13fに挿通され、第1インシュレータ13に形成された樹脂ピン7cを介して、第1コイルカバー13及び第1インシュレータ7は結合する。また、例えば、第2インシュレータ8に形成された樹脂ピン8cが、第2コイルカバー14に形成された貫通穴14fに挿通され、第2インシュレータ14に形成された樹脂ピン8cを介して、第2コイルカバー14及び第2インシュレータ8は結合する。
【0034】
図4は、
図1に示す第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14がステータ3に装着されたレゾルバ1を上面から見た斜視図であり、
図5は、
図4に示すレゾルバ1を底面から見た斜視図である。また、
図6は、
図4に示すレゾルバ1からロータ2を外した状態のA-A線要部断面図であり、
図7は、
図4に示すレゾルバ1からロータ2を外した状態のB-B線要部断面図である。
図8は、スロット15に第1コイルカバー13及び第2コイルカバー14を装着した状態を示す図である。
【0035】
第2インシュレータ8に形成された各樹脂ピン8cを第2コイルカバー14に形成された各貫通穴14fに挿通し、貫通穴14fから突出した樹脂ピン8cの先端17を、赤外線カシメ、又は、熱カシメにて潰す(
図5及び
図7を参照)。本実施形態では、10個の先端17を、カシメにて潰す。これにより、第2コイルカバー14は第2インシュレータ8に結合する。また、第1インシュレータ7に形成された各樹脂ピン7cを第1コイルカバー13に形成された各貫通穴13fに挿通し、貫通穴13fから突出した樹脂ピン7cの先端16を、赤外線カシメ、又は、熱カシメにて潰す(
図4及び
図7を参照)。本実施形態では、12個の先端16を、カシメにて潰す。これにより、第1コイルカバー13は第1インシュレータ7に結合する。
【0036】
第1コイルカバー13と第1インシュレータ7とは複数の樹脂ピン7cで結合され、第2コイルカバー14と第2インシュレータ8とは複数の樹脂ピン8cで結合されるため、強固な結合強度を得ることができる。そして、第1コイルカバー13の表面において樹脂ピン7c(先端16)をカシメ固着し、第2コイルカバー14の表面において樹脂ピン8c(先端17)をカシメ固着するため、カシメの外観状態の確認作業を、目視により容易に行うことができる。これにより、ステータ構造及びレゾルバ1の信頼性をより向上させることができる。
【0037】
また、
図8に示すように、第1コイルカバー13が有する複数の突起部13d及び第2コイルカバー14が有する複数の突起部14dは、複数のティース5の先端の間の空間(スロット15)に配置される。突起部13d及び突起部14dは、それぞれティース5の先端の間(スロット15)に挿入されて配置される。ここで、
図2及び
図3を用いて説明したように、各突起部13dの先端には、段部13eが形成され、各突起部14dの先端には、段部14eが形成されている。
【0038】
そして、
図6に示すように、段部13e及び段部14eは、互いに向き合う段差を成すように形成されている。これにより、段部13e及び段部14eは、互いに入れ子の状態で配置され、径方向で一部が僅かな隙間(例えば、0.02mm~1mmの隙間)を隔てて重なり合う。そのため、この重なり合う部分では、ステータコア4の内周側からはスロット15が直接見えない構造となっている。このような段部13e及び段部14eの配置構成によって、突起部13d及び突起部14dが互いにわずかに離間して間隙が有りながらも、隙間が屈曲して形成されるため、異物が通過し難くなり、その結果、スロット15内部への異物の侵入が防止又は抑制できる。
【0039】
また、インシュレータ6と第1コイルカバー13との外周側の接合箇所、すなわち第1インシュレータ7と外周壁13bとの接合箇所には、
図6及び
図7に示すように、互いに向き合う段差13nが形成されている。第1インシュレータ7の外周は、段差13nの箇所で、第1コイルカバー13と屈曲して対向配置されているため、異物が通過し難くなり、その結果、第1コイルカバー13の内側への異物の侵入を防止又は抑制できる。
【0040】
また、インシュレータ6と第1コイルカバー13の内周側の接合箇所、すなわちフランジ部7aと第1コイルカバー13(内周壁13p)との接合箇所は、
図7の領域Cの拡大図である
図9に示すように、隙間を介して互いに向き合う段差が形成されている。更に、インシュレータ6と第2コイルカバー14との内周側の接合箇所、すなわちフランジ部8aと第2コイルカバー14(内周壁14p)との接合箇所には、
図7の領域Dの拡大図である
図10に示すように、隙間を介して互いに向き合う段差が形成されている。このため、フランジ部7a及び第1コイルカバー13、並びに、フランジ部8a及び第2コイルカバー14は、互いに僅かに離間して対向する。また、スロット15は突起部13d及び突起部14dにより塞がれた構造となっている。その結果、インシュレータ6におけるフランジ部7a及びフランジ部8aの周囲は、第1コイルカバー13とフランジ部7aとの間に形成された屈曲した隙間及び第2コイルカバー14とフランジ部8aとの間に形成された屈曲した隙間とにより異物が通過し難くなり、その結果、フランジ部7a,8a、内周壁13p,14pに変形を生じさせることなく、コイルカバーの内側への異物侵入を防止又は抑制できる。
【0041】
ここで、フランジ部7a及び第1コイルカバー13(内周壁13p)により形成される段差、並びに、フランジ部8a及び第2コイルカバー14(内周壁14p)により形成される段差について、
図9及び
図10を用いてそれぞれ詳細に説明する。
図9は、
図7に示す領域Cの拡大図であり、
図10は、
図7に示す領域Dの拡大図である。
【0042】
図9に示すように、第1インシュレータ7の腕部の先端のフランジ部7aと、第1コイルカバー13の内周壁13pとは、僅かな隙間13mを隔てて対向配置されている。具体的には、第1インシュレータ7のフランジ部7aに段差部が形成されており、その段差部に第1コイルカバー13の内周壁13pが配設される。この時、内周壁13pとフランジ部7aとは軸方向及び径方向において僅かな隙間13mを隔てて対向配置される。例えば、隙間13mは、軸方向に0.01mm~0.5mmの隙間であり、径方向に0.02mm~0.5mmの隙間である。このように、第1インシュレータ7のフランジ部7aと第1コイルカバー13との間には僅かな隙間13mが屈曲して形成されるため、この屈曲した隙間13mによって異物の侵入を防止又は抑制できる。
【0043】
同様に、
図10に示すように、第2インシュレータ8の腕部の先端のフランジ部8aと、第2コイルカバー14の内周壁14pとは、僅かな隙間14mを隔てて対向配置されている。具体的には、第2インシュレータ8のフランジ部8aに段差部が形成されており、その段差部に第2コイルカバー14の内周壁14pが配設される。この時、内周壁14pとフランジ部8aとは軸方向及び径方向において僅かな隙間14mを隔てて対向配置される。例えば、隙間14mは、軸方向に0.01mm~0.5mmの隙間であり、径方向に0.02mm~0.5mmの隙間である。このように、第2インシュレータ8のフランジ部8aと第2コイルカバー14との間には僅かな隙間14mが屈曲して形成されるため、この屈曲した隙間14mによって異物の侵入を防止又は抑制できる。
【0044】
上述したように、本実施形態の構成では、第1コイルカバー13の第1の周壁である内周壁13pとインシュレータ6の軸方向の一方側のフランジ部7aとは、隙間13mを隔てて対向配置され、第2コイルカバー14の第1の周壁である内周壁14pとインシュレータ6の軸方向の他方側のフランジ部8aとは、隙間14を隔てて対向配置される。そして、本実施形態の構成では、第1コイルカバー13の第1の周壁である内周壁13pは、インシュレータ6の軸方向の一方側のフランジ部7aに形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間13mを形成し、第2コイルカバー14の第1の周壁である内周壁14pは、インシュレータ6の軸方向の他方側のフランジ部8aに形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間14mを形成する。かかる本実施形態の構成では、第1インシュレータ7のフランジ部7aと第1コイルカバー13とは僅かな隙間13mを隔てて対向配置され、第2インシュレータ8のフランジ部8aと第2コイルカバー14とは僅かな隙間14mを隔てて対向配置され、これら僅かな隙間13m及び隙間14mがそれぞれ屈曲して形成されるため、例えばフランジ部7a、内周壁13p、フランジ部8a及び内周壁14pに変形が生じることなく、異物の侵入を防止又は抑制できる。その結果、本実施形態の構成では、ステータ構造及びレゾルバ1の信頼性をより向上させることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態に係るレゾルバ1とは異なる構成のレゾルバに、インシュレータのフランジ部とコイルカバーとを僅かな隙間を隔てて対向配置する構成を適用する場合について説明する。
【0046】
図11は、第2の実施形態に係るレゾルバの模式的な分解斜視図である。また、
図12は、
図11に示すレゾルバのE-E線断面図であり、
図13は、
図11に示すレゾルバのF-F線断面図である。
【0047】
図11~13に示すように、第2の実施形態に係るレゾルバ100は、ロータ20と、ステータ30と、第1コイルカバー130と、第2コイルカバー140とを有するVR(バリアブルリラクタンス)型レゾルバである。ステータ30と、第1コイルカバー130と、第2コイルカバー140とは、ステータ構造を構成している。
【0048】
ロータ20は、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアを複数枚積層した積層構造を有しており、図示しないモータの回転軸に装着され、ステータ30の内側に配置されている。
図11に示す軸方向は、ロータ20に接続されたモータの回転軸の軸方向と一致する。また、
図11に示すように、径方向とは、軸方向と直交する方向と一致する。なお、径方向とは軸方向と直交する面と平行なあらゆる方向を意味するが、
図11では両矢線にて径方向のうちの一つを示している。
【0049】
ステータ30は、ステータコア40と、コイル90と、インシュレータ60とを有する。ステータコア40は、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアを所定枚数、軸方向に積層して構成されている。ステータコア40は、環状の本体部である環状部から径方向に延在する複数のティース50を有する。レゾルバ100がインナーロータ型である本実施形態では、ステータコア40は、環状の本体部である環状部から径方向内向きに延在する複数のティース50を有する。本実施形態では、ステータコア40は、10個のティース50を有しているが、その数は特に限定されない。各ティース50は、環状部の周方向において等角度間隔で配置されており、各ティース50それぞれの先端は、周方向に広がる先端部を有している。複数のティース50の間それぞれには、空間(スロット150)が形成される。
【0050】
また、ステータコア40の環状部には、その2つの主表面間を貫通するように複数の貫通孔40aが形成されている。貫通孔40aは、後述するインシュレータ60により覆われる環状部の表面よりも外周側の位置に形成される。本実施形態では、貫通孔40aは5個形成されているが、その数は特に限定されない。また、本実施形態では、貫通孔40aは環状部の周方向において等角度間隔で配置されている。
【0051】
コイル90は、インシュレータ60を介して複数のティース50それぞれに巻回される巻線である。コイル90は、励磁信号を入力する励磁巻線と、ロータ20の回転角度に応じて2相の信号を出力する検出巻線とから構成され、検出巻線は、sinθに依存したsin相の信号が出力されるsinθ検出巻線と、cosθに依存したcos相の信号が出力されるcosθ検出巻線とから構成されている。
【0052】
インシュレータ60は、絶縁性樹脂の射出成形にて成形される。インシュレータ60は、複数のティース50をステータコア40の軸方向の両側から覆う第1インシュレータ70及び第2インシュレータ80により構成される。また、インシュレータ60は、複数のティース50それぞれの先端を軸方向の両側から覆うフランジ部(フランジ部70a及びフランジ部80a)を有する。なお、
図11では、インシュレータ60として、複数のティース50の上側から装着される第1インシュレータ70が図示されており、複数のティース50の下側から装着される第2インシュレータ80は、図示されていない。
【0053】
インシュレータ60は、ステータコア40の径方向に延在する端子台部110を備える。本実施形態では、第1インシュレータ70は、ステータコア40の径方向外向きに延在する端子台部110を備える。端子台部110には複数の端子111(
図11では6本の端子111)が植設され、メス型のコネクタハウジング112も形成されている。端子台部110は第1インシュレータ70と同時に成形することができる。各端子111の一方端には、対応するコイル90を構成する巻線の末端が絡げられており、各端子110の他方端は、コネクタハウジング112の内部に突出している。各端子111の他方端は、外部コネクタと接続される。第1インシュレータ70と端子台部110とは、絶縁性樹脂の射出成形にて一体成形される。
【0054】
第1インシュレータ70は、環状部から径方向内向きに延在する複数の腕部(
図11では10個の腕部)を備える。これら腕部の先端にはフランジ部70aが設けられている。第1インシュレータ70の腕部は、ステータコア40の各ティース50の部分(上側)に装着される。フランジ部70aは、ティース50の先端部の上側を覆うとともに、腕部に巻回される巻線(コイル90)の巻き崩れを防止する。また、第2インシュレータ80は、第1インシュレータ70と同様に、環状部から径方向内向きに延在する複数の腕部(本実施形態では10個の腕部)を備える。これら腕部の先端にはフランジ部80aが設けられている。第2インシュレータ80の腕部は、ステータコア40の各ティース50の部分(下側)に装着される。フランジ部80aは、ティース50の先端部の下側を覆うとともに、腕部に巻回される巻線(コイル90)の巻き崩れを防止する。
【0055】
なお、上記の一例では、インシュレータ60は第1インシュレータ70と第2インシュレータ80とから構成されるが、本実施形態は、インサート成形によりステータコア40にインシュレータ60が一体成形で形成される場合であっても良い。即ち、第1インシュレータ70と第2インシュレータ80とが、インシュレータ60として一体成形されている場合であっても良い。また、上記の一例では、第1インシュレータ70と端子台部110とは射出成形にて一体成形されるが、本実施形態は、別部材で形成した端子台部110を装着した構成であっても良い。また、本実施形態は、コネクタハウジング112を形成しない構成であっても良い。
【0056】
次に、第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140について、説明する。第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140は、その構成材料は限定されないが、本実施形態では樹脂からなり、例えば樹脂の射出成形にて成形される。樹脂としては、例えば絶縁性樹脂を用いることができる。第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140は、コイル90をステータコア40の軸方向の両側から覆って、コイル90を保護するコイルカバーである。
図11に示すように、第1コイルカバー130は、コイル90の上側から装着され、第2コイルカバー140は、コイル90の下側から装着される。
【0057】
図11に示すように、第1コイルカバー130は、本体を構成する円環部130aが全体的に環状であり、円環部130aは、外周縁に軸方向に延在する外周壁130bを備える。外周壁130bの一部には上述した端子台部110を覆う端子台カバー部130cが設けられている。端子台部110を覆う端子台カバー部130cは、内部に設けられた複数の隔離部材(仕切り板)を有し、複数の端子111それぞれは、複数の隔離部材により形成された複数の空間それぞれに、互いに離間されるように収容されている。端子台カバー部130c内部に形成された空間に端子11が収容される構成により、ステータ構造内部に侵入した異物によって端子111間が電気的に短絡するおそれを防止できる。また、
図11に示すように、第2コイルカバー140は、本体を構成する円環部140aが全体的に環状であり、円環部140aは、外周縁に軸方向に延在する外周壁140bを備える。第2コイルカバー140の円環部140aの内径及び外径は、第1コイルカバー130の円環部130aの外径及び内径とそれぞれ略同じである。
【0058】
また、第1コイルカバー130は、外周壁130bから軸方向に延在する複数の第1係合部131(本実施形態では5個の第1係合部131)を備える。第1係合部131は板状であり、その先端には、開口132が形成されている。本実施形態では、第1係合部131は第1コイルカバー130の周方向において等角度間隔で配置されている。また第1コイルカバー131は、円環部130aの内周縁から第1係合部131と同じく軸方向に延在する複数の突起部130d(実施形態では10個の突起部130d)を備えている。各突起部130dの先端には、段部130eが形成されている。本実施形態では、突起部130dは、フランジ部70aの外形状に合わせて、第1コイルカバー130の周方向において等角度間隔で配置されている。また、突起部130dは、円環部130a側に向かって周方向で徐々に幅広になっている。また、第1コイルカバー130は、隣接する突起部130d同士の間に、突起部130d同士と連接し、突起部130dと同じ軸方向に延在する内周壁130pを備えている。すなわち、第1コイルカバー130は、軸方向に延在する周壁として、第1の周壁である内周壁130pと、第2の周壁である外周壁130bと有する。
【0059】
また、第2コイルカバー140は、外周壁140bから軸方向に延在する複数の第2係合部141(本実施形態では5個の第2係合部141)を備える。第2係合部141は板状であり、その先端には、係合爪142が形成されている。本実施形態では、第2係合部141は第2コイルカバー140の周方向において等角度間隔で配置されている。また第2コイルカバー140は、円環部140aの内周縁から第2係合部141と同じく軸方向に延在する複数の突起部140d(実施形態では10個の突起部140d)を備えている。各突起部140dの先端には、段部140eが形成されている。本実施形態では、突起部140dは、第2コイルカバー140の周方向において等角度間隔で配置されている。また、突起部140dは、フランジ部80aの外形状に合わせて、円環部140a側に向かって周方向で徐々に幅広になっている。また、第2コイルカバー140は、隣接する突起部140d同士の間に、突起部140d同士と連接し、突起部140dと同じ軸方向に延在する内周壁140pを備えている。すなわち、第2コイルカバー140は、軸方向に延在する周壁として、第1の周壁である内周壁140pと、第2の周壁である外周壁140bと有する。
【0060】
第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140をステータ30に装着する際には、第1コイルカバー130と第2コイルカバー140とを軸方向の両側からステータ30に近づけ、第1コイルカバー130の各突起部130dを、各ティース50の先端部を上側から覆っているフランジ部70aの間に挿入し、第2コイルカバー130の各突起部140dを、各ティース50の先端部を下側から覆っているフランジ部80aの間に挿入する(
図13参照)。これと同時に、第1コイルカバー130の第1係合部131と第2コイルカバー140の各第2係合部141とをステータコア40の環状部に形成された各貫通孔40aに挿入し、各貫通孔40aを通じて各第1係合部131の開口132に各第2係合部141の係合爪142を係合させる(
図12参照)。
【0061】
これにより、第1コイルカバー130と第2コイルカバー140とが、各第1係合部131と各第2係合部141とによって結合される。更に、突起部130dは、隣り合うフランジ部70aの間に配置され、突起部140dは、隣り合うフランジ部80aの間に配置される。これにより各スロット150は、対向する突起部130d及び突起部140dによって、ステータコア40の内側に対して塞がれる。
【0062】
第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140のステータ30への装着は、係合爪142と開口131との係合によって容易に行うことができる。また、
図12にも示すように、本実施形態では、各第1係合部131と各第2係合部141とは、各貫通孔40aの内部で互いに係合しているので、第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140は、装着後に外れにくくなる。
【0063】
第1コイルカバー130及び第2コイルカバー140をステータ30に装着することによって、コイル90及び端子台部110が覆われる。これにより、コイル90、コイル90を構成する巻線及び端子台部111が露出しないため、コイル90、コイル90を構成する巻線及び端子111の損傷が防止される。
【0064】
ここで、上述したように、各突起部130dの先端には、段部130eが形成され、各突起部140dの先端には、段部140eが形成されている。そして、
図13に示すように、段部130e及び段部140eは、互いに向き合う段差を成すように形成されている。これにより、段部130e及び段部140eは、互いに入れ子の状態で配置され、径方向で一部が僅かな隙間(例えば、0.02mm~1mmの隙間)を隔てて重なり合う。そのため、この重なり合う部分では、ステータコア40の内周側からはスロット150が直接見えない構造となっている。このような段部130e及び段部140eの配置構成によって、突起部130d及び突起部140dが互いにわずかに離間して間隙が有りながらも、隙間が屈曲して形成されるため、異物が通過し難くなり、その結果、スロット150内部への異物の侵入が防止又は抑制できる。
【0065】
なお、第2の実施形態は、突起部130dの内周面及び突起部140dの内周面には、第1の実施形態で説明した突起部13d及び突起部14dと同様に、強度を補強するために、リブが形成されても良い。
【0066】
また、インシュレータ60と第1コイルカバー130の内周側の接合箇所、すなわちフランジ部70aと第1コイルカバー130(内周壁130p)との接合箇所は、
図12の領域Gの拡大図である
図14に示すように、隙間を介して互いに向き合う段差が形成されている。更に、インシュレータ60と第2コイルカバー140との内周側の接合箇所、すなわちフランジ部80aと第2コイルカバー140(内周壁140p)との接合箇所には、
図12の領域Hの拡大図である
図15に示すように、互いに向き合う段差が形成されている。このため、フランジ部70a及び第1コイルカバー130、並びに、フランジ部80a及び第2コイルカバー140は、互いに僅かに離間して対向する。また、スロット150は突起部130d及び突起部140dにより塞がれた構造となっている。その結果、インシュレータ60におけるフランジ部70a及びフランジ部80aの周囲は、第1コイルカバー130とフランジ部70aとの間に形成された屈曲した隙間及び第2コイルカバー140とフランジ部80aとの間に形成された屈曲した隙間とにより異物が通過し難くなり、その結果、コイルカバーの内側への異物侵入を防止又は抑制できる。
【0067】
ここで、フランジ部70a及び第1コイルカバー130(内周壁130p)により形成される段差、並びに、フランジ部80a及び第2コイルカバー140(内周壁140p)により形成される段差について、
図14及び
図15を用いてそれぞれ詳細に説明する。
図14は、
図12に示す領域Gの拡大図であり、
図15は、
図12に示す領域Hの拡大図である。
【0068】
図14に示すように、第1インシュレータ70の腕部の先端のフランジ部70aと、第1コイルカバー130の内周壁130pとは、僅かな隙間130mを隔てて対向配置されている。具体的には、第1インシュレータ70のフランジ部70aに段差部が形成されており、その段差部に第1コイルカバー130の内周壁130pが配設される。この時、内周壁130pとフランジ部70aとは軸方向及び径方向において僅かな隙間130mを隔てて対向配置される。例えば、隙間130mは、軸方向に0.01mm~0.5mmの隙間であり、径方向に0.02mm~0.5mmの隙間である。このように、第1インシュレータ70のフランジ部70aと第1コイルカバー130との間には僅かな隙間130mが屈曲して形成されるため、この屈曲した隙間130mによって異物の侵入を防止又は抑制できる。
【0069】
同様に、
図15に示すように、第2インシュレータ80の腕部の先端のフランジ部80aと、第2コイルカバー140の内周壁140pとは、僅かな隙間140mを隔てて対向配置されている。具体的には、第2インシュレータ80のフランジ部80aに段差部が形成されており、その段差部に第2コイルカバー140の内周壁140pが配設される。この時、内周壁140pとフランジ部80aとは軸方向及び径方向において僅かな隙間140mを隔てて対向配置される。例えば、隙間140mは、軸方向に0.01mm~0.5mmの隙間であり、径方向に0.02mm~0.5mmの隙間である。このように、第2インシュレータ80のフランジ部80aと第2コイルカバー140との間には僅かな隙間140mが屈曲して形成されるため、この屈曲した隙間140mによって異物の侵入を防止又は抑制できる。
【0070】
上述したように、第2の実施形態の構成では、第1コイルカバー130の第1の周壁である内周壁130pとインシュレータ60の軸方向の一方側のフランジ部70aとは、隙間130mを隔てて対向配置され、第2コイルカバー140の第1の周壁である内周壁140pとインシュレータ60の軸方向の他方側のフランジ部80aとは、隙間140を隔てて対向配置される。そして、本実施形態の構成では、第1コイルカバー130の第1の周壁である内周壁130pは、インシュレータ60の軸方向の一方側のフランジ部70aに形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間130mを形成し、第2コイルカバー140の第1の周壁である内周壁140pは、インシュレータ60の軸方向の他方側のフランジ部80aに形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間140mを形成する。かかる本実施形態の構成では、第1の実施形態と同様に、第1インシュレータ70のフランジ部70aと第1コイルカバー130とは僅かな隙間130mを隔てて対向配置され、第2インシュレータ80のフランジ部80aと第2コイルカバー140とは僅かな隙間140mを隔てて対向配置され、これら僅かな隙間130m及び隙間140mがそれぞれ屈曲して形成されるため、例えばフランジ部70a、内周壁130p、フランジ部80a及び内周壁140pに変形が生じることなく、異物の侵入を防止又は抑制できる。その結果、本実施形態の構成では、ステータ構造及びレゾルバ100の信頼性をより向上させることができる。
【0071】
なお、上記では、レゾルバ1及びレゾルバ100がインナーロータ型である場合について説明したが、上記の実施形態は、ティースが環状部から径外方に延在し、ロータの内側にステータコアが配置されるアウターロータ型のレゾルバにも適用可能である。アウターロータ型のレゾルバに上記構成を適用した場合、第1コイルカバーの第1の周壁である外周壁とインシュレータの軸方向の一方側のフランジ部とは、隙間を隔てて対向配置され、第2コイルカバーの第1の周壁である外周壁とインシュレータの軸方向の他方側のフランジ部とは、隙間を隔てて対向配置される。そして、第1コイルカバーの第1の周壁である外周壁は、インシュレータの軸方向の一方側の前記フランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間を形成し、第2コイルカバーの第1の周壁である外周壁は、インシュレータの軸方向の他方側のフランジ部に形成された段差部に配設され、当該段差部との間に屈曲した隙間を形成する。これにより、軸方向の一方側のフランジ部、第1コイルカバーの外周壁、軸方向の他方側のフランジ部及び第2コイルカバーの外周壁に変形が生じることなく、異物の侵入を防止又は抑制できる。その結果、アウターロータ型のステータ構造及びレゾルバの信頼性をより向上させることができる。
【0072】
また、樹脂ピンの数や形成位置も、信頼性が担保できる程度の結合強度を有していれば、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0073】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、100 レゾルバ、2、20 ロータ、3、30 ステータ、4、40 ステータコア、40a 貫通孔、5、50 ティース、6、60 インシュレータ、7、70 第1インシュレータ、7a、8a、70a、80a フランジ部、7b 渡りピン、7c、8c 樹脂ピン、8、80 第2インシュレータ、9、90 コイル、10、110 端子台部、11、111 端子、12、112 コネクタハウジング、13、130 第1コイルカバー、13a、14a、130a、140a 円環部、13b、14b、130b、140b 外周壁、13c、14c 開口、13d、14d、130d、140d 突起部、13e、14e、130e、140e 段部、13f、14f 貫通穴、13g、130c 端子台カバー部、13h 空間、13j、14j リブ、13m、14m、130m、140m 隙間、13n 段差、13p、14p、130p、140p 内周壁、131 第1係合部、132 開口、14、140 第2コイルカバー、141 第2係合部、142 係合爪、15、150 スロット、16、17 先端