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特許7106729異常判定装置及びそれに用いるプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】異常判定装置及びそれに用いるプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20220719BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220719BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
A61B5/0245 F
A61B5/0245 100T
A61B5/11 100
A61B5/113
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021124316
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2017231225の分割
【原出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2021178198
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】木暮 貴政
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110920(JP,A)
【文献】特開2015-012949(JP,A)
【文献】特開2017-047211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324432(US,A1)
【文献】特開2016-202346(JP,A)
【文献】国際公開第03/096892(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体信号を取得する生体信号取得部と、制御部とを備えた異常判定装置であって、
前記制御部は、
前記生体信号取得部から取得された生体信号が正しく検出されているときに、前記対象者の生体情報値を算出し、
所定時間の範囲において算出された生体情報値のうち、前記生体情報値が信頼性の高い状態で算出できた割合である算出率を算出し、
前記算出率が、前日に算出された算出率と比較して第1の閾値分低下している場合には、前記対象者の状態が異常であると判定する、
ことを特徴とする異常判定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記算出率が、前日に算出された算出率と比較して第1の割合閾値分低下していないが、数日の間に前記算出率が第2の閾値分低下している場合には、前記対象者の状態が異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記生体情報値は、心拍数であり、
前記制御部は、前記算出率が、前日に算出された算出率と比較して第1の割合閾値分低下している場合には、前記対象者の心肺機能に異常があると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記対象者が臥床かつ静止状態のときに取得された生体信号に基づいて、当該対象者の生体情報値を算出することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の異常判定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記対象者の睡眠状態を判定し、当該対象者の睡眠時において算出された生体情報値のうち、当該生体情報値の信頼性が高い割合を算出率として算出することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の異常判定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定時間の範囲として、一晩とすることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の異常判定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定時間の範囲として、少なくとも2日以上の複数日とすることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の異常判定装置。
【請求項8】
対象者の生体信号を取得する生体信号取得装置が接続されたコンピュータに、
前記生体信号取得装置から取得された生体信号が正しく検出されているときに、前記対象者の生体情報値を算出する機能と、
所定時間の範囲において算出された生体情報値のうち、前記生体情報値が信頼性の高い状態で算出できた割合である算出率を算出する機能と、
前記算出率が前日に算出された算出率と比較して第1の閾値分低下している場合には、前記対象者の状態が異常であると判定する機能と、
を実現することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から患者の心拍数や、心拍リズムの異常を判定する装置が知られている。心拍数や心拍リズムの異常としては、例えば不整脈がある。不整脈は、例えば心電図においてR波の頂点から次のR波の頂点までの時間であるR-R時間が不規則な場合は、不整脈等の異常があると判定される。
【0003】
例えば、特許文献1では、脈波情報を取得可能な取得部と、脈波情報に基づいて、所与の単位区間毎の拍間隔情報を求める拍間隔算出部と、不整脈に関する情報を求める判定部と、を含む生体情報処理システムが開示されている。ここで、判定部は、N(Nは2以上の整数)回分の所与の単位区間を含む所与の統計区間において、所与の単位区間毎に求められたN個の拍間隔情報に基づいて、拍間隔の変動指標及び所与の分布からの乖離指標を求め、変動指標及び乖離指標に基づいて、不整脈に関する情報を求めることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、生体情報を計測するセンサと、予め設定された規格化情報に基づいて前記生体情報の値を変換することにより、前記生体情報を規格化する規格化回路と、前記生体情報または前記規格化された生体情報について、予め定められた時間内における予め定められた値以上の変化量を検出し、前記変化量が大きいほど低い信頼性を示す信頼性情報を生成する信頼性情報生成回路とを具備する生体情報計測器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-42386号公報
【文献】特許第5692097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、取得された生体情報に基づいて適切に患者の異常状態を判定することが可能な異常判定装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の異常判定装置は、対象者の生体信号を取得する生体信号取得部と、制御部とを備えた異常判定装置であって、前記制御部は、前記生体信号取得部から取得された生体信号に基づいて、前記対象者の生体情報値を算出し、所定時間の範囲において算出された生体情報値のうち、前記生体情報値が信頼性の高い状態で算出できた割合である算出率を算出し、前記算出率が所定割合以下の場合には、前記対象者の状態が異常であると判定する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のプログラムは、対象者の生体信号を取得する生体信号取得装置が接続されたコンピュータに、前記生体信号取得装置から取得された生体信号に基づいて、前記対象者の生体情報値を算出する機能と、所定時間の範囲において算出された生体情報値のうち、前記生体情報値が信頼性の高い状態で算出できた割合である算出率を算出する機能と、前記算出率が所定割合以下の場合には、前記対象者の状態が異常であると判定する機能と、を実現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異常判定装置及びプログラムによれば、取得された生体情報に基づいて適切に患者の異常状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における全体を説明するための図である。
図2】第1実施形態における構成を説明するための図である。
図3】従来におけるR-R間隔について説明するための図である。
図4】第1実施形態における生体情報値データのデータ構造の一例を示す図である。
図5】第1実施形態におけるパラメータテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
図6】第1実施形態における構成を説明するための図である。
図7】第1実施形態における心拍数算出処理を説明するための動作フローである。
図8】第1実施形態における患者状態判定処理を説明するための動作フローである。
図9】第1実施形態における実施例を説明するための図である。
図10】第2実施形態における患者判定処理を説明するための動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための一つの形態について説明する。比較例では、例えば心電計を利用してR-R間隔の不規則性から不整脈等の生体信号の異常を検出している。しかし、呼吸運動や心弾動を計測する非装着の体動センサでは、R-R間隔を正しく検出することが難しいため、不整脈等の生体情報の異常を判定することは難しかった。
【0012】
なお、比較例の方法について一例を説明すると、患者に装着した電極により、心電図を取得する。図3は、心電図の波形の一部を示したものである。ここで、例えば心電図のR-R間隔の不規則性を判定する。そして、R-R間隔が不規則である場合は、不整脈となっていると判定する。
【0013】
しかし、心電計により心電図を取得するためには、対象者に電極等を装着する必要がある。また、対象者が動いたりすることで電極がずれたり筋電位などのノイズが混入すると、正しい波形が取得出来なかった。とくに、心電計により心電図を取得する機会は限られるため、不整脈等の異常に気づくことが遅れるという課題があった。たとえば、通常の健常者では1年に1回の定期健康診断で心電図検査をするくらいしか機会がない。
【0014】
そこで、以下記載された異常判定装置等では、取得される生体情報のデータ算出率を利用することにより、容易に生体情報の異常を判定することができることとなる。また、対象者への負担が少ないことから、夜間睡眠中の安定した生体情報を長期間取得することも可能となり、生体情報の異常を見逃す可能性を低くすることができることとなる。
【0015】
[1.第1実施形態]
[1.1 システム全体]
図1は、本発明の異常判定装置を適用したシステム1の全体概要について説明するための図である。図1に示すように、システム1は、ベッド10の床部と、マットレス20の間に載置される検出装置3と、検出装置3より出力される値を処理するため処理装置5を備えて構成されている。この検出装置3、処理装置5とで異常判定システム(異常判定装置)として機能する。
【0016】
マットレス20に、対象者(以下、一例として「患者P」とする)が在床すると、対象者である患者Pの生体信号として体振動(人体から発せられる振動)を検出装置3が検出する。そして、検出された振動に基づいて、患者Pの生体情報値が算出される。本実施形態においては、算出された生体情報値(少なくとも、呼吸数、心拍数、活動量)を、患者Pの生体情報値として出力・表示することができる。なお、例えば検出装置3に記憶部、表示部等を設けることにより一体に形成されてもよい。また、処理装置5は、汎用的な装置で良いため、コンピュータ等の情報処理装置に限られず、例えばタブレッドやスマートフォン等といった装置で構成されてもよい。
【0017】
また、対象者としては、病気療養中の者であったり、介護が必要なものであったりしてもよい。また、介護が必要でない健康な者であっても、高齢者でも子供でも、障害者でも、人でなくても動物でも良い。
【0018】
ここで、検出装置3は、厚さが薄くなるようにシート状に構成されている。これにより、ベッド10と、マットレス20の間に載置されたとしても、患者Pに違和感を覚えさせることなく使用できるため、寝床での生体情報値を長期間測定できることとなる。すなわち、対象者が臥床時、静止状態、安静時に患者の状態として生体情報値等を取得することとなる。
【0019】
なお、検出装置3は、患者Pの生体信号(体動や呼吸運動や心弾動等)を取得できればよい。本実施形態においては、体振動に基づいて心拍数や呼吸数を算出しているが、例えばマイクロ波レーダーやレーザースペックルセンサを用いて体表面の変位に基づいて算出したり、取得された映像等により患者Pの生体信号を取得したり、歪みゲージ付きアクチュエータを利用したりしても良い。また、内蔵された加速度センサ等を利用することにより、例えばベッド10上に載置されたスマートフォンや、タブレット等で実現してもよい。
【0020】
[1.2 本実施形態の構成]
つづいて、システム1の構成について、図2を用いて説明する。本実施形態におけるシステム1は、検出装置3と、処理装置5とを含む構成となっており、各機能部(処理)は、生体信号取得部110以外についてはどちらで実現されても良い。すなわち、これらの装置を組み合わせることにより、異常判定装置として機能する。
【0021】
なお、システム1は、異常を判定し、出力する先はスタッフであったり、家族であったりしても良い。また、異常と判定されたときに、出力する方法としては、単に音や画面表示で表示しても良いし、メール等で携帯端末装置に送信しても良い。また、他の端末装置等に送信をしても良い。
【0022】
システム1(異常判定装置)は、制御部100と、生体信号取得部110と、生体情報値算出部120と、信頼性評価部125と、睡眠状態判定部130と、患者状態判定部140と、記憶部150と、入力部160と、出力部170とを含んでいる。
【0023】
制御部100は、システム1(異常判定装置)の動作を制御する。例えば、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置で構成されている。制御部100は、記憶部150に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種処理を実現することとなる。なお、本実施形態においては、制御部100は全体として動作しているが、検出装置3、処理装置5のそれぞれに設けることもできるものである。
【0024】
生体信号取得部110は、患者Pの生体信号を取得する。本実施形態では、一例として、圧力変化を検出するセンサを利用して生体信号の一種である体振動が取得される。そして取得された体振動は、呼吸数、心拍数、活動量などの生体情報値データに変換されて出力される。更に、体振動データに基づいて患者の臥床状態(例えば、患者Pが臥床しているか否か、在床、離床や端座位等)を取得したり、後述するように睡眠状態(睡眠、覚醒)を取得したりすることも可能である。
【0025】
なお、本実施形態における生体信号取得部110は、例えば、圧力センサにより患者の体振動を取得し、体振動から呼吸や心拍を取得するが、荷重センサにより、患者の重心位置(体動)の変化により生体信号を取得することとしても良いし、レーダーにより、体表面や寝具の変位に基づいて生体信号を取得することとしても良いし、マイクロフォンを設けることにより、マイクロフォンが拾う音に基づいて生体信号を取得しても良い。何れかのセンサを用いて、患者の生体信号を取得出来れば良い。
【0026】
すなわち、生体信号取得部110は、検出装置3のような装置に設けられても良いし、外部のセンサ装置から生体信号を受信する構成としても良い。
【0027】
生体情報値算出部120は、患者Pの生体情報値(呼吸数・心拍数など)を算出している。本実施形態では、生体信号取得部110より取得された体動から呼吸成分・心拍成分を抽出し、呼吸間隔、心拍間隔に基づいて呼吸数、心拍数を求めても良い。また、体動の周期性を分析(フーリエ変換等)し、ピーク周波数から呼吸数、心拍数を算出してもよい。
【0028】
信頼性評価部125は、生体情報値算出部120により出力された生体情報値の信頼性が高いか否かを判定する。ここで、生体情報値の信頼性が高いか低いかの評価は、例えば、特開2017-47211号公報(出願日:2016年9月1日、発明の名称:生体情報出力装置、生体情報出力方法及びプログラム)に記載の信頼性評価方法を援用できる。この特許出願は援用によりその全体が組み込まれるが、具体的な方法としては、以下の何れかの方法を利用する。
【0029】
(1)算出条件による信頼性評価
信頼性評価部125は、生体情報を算出する場合の算出条件に基づいて信頼性評価を行う。例えば、患者が臥床状態ではない場合、すなわち、離床しているときや、患者が座位の状態のときには、信頼性が低いと判定する。また、床ずれ予防用エアマットなどの機器と外部接続している場合には、当該外部機器が振動を発生しているときには、信頼性が低いと判定する。このとき、信頼性評価部125は、信頼性評価を行うのに、患者状態判定部140を利用してもよい。
【0030】
(2)生体情報算出過程における信頼性評価
信頼性評価部125は、生体情報を算出する過程において信頼性を評価する。例えば、呼気・吸気や拍動間隔のばらつき(標準偏差や変動係数等)が大きい場合に信頼性が低いと評価する。また、フィルタ後の波形の振幅の大きさ・ばらつきに基づき、信頼性を評価する。すなわち、振幅のばらつきがある場合は信頼性が低いと評価する。
【0031】
例えば、通常は短時間内の心拍(呼吸)間隔はほぼ等しくなる。したがって、心拍(呼吸)間隔のばらつきが大きい場合は、ノイズが大きいために、未検出や誤検出があると判定され、信頼性が低いと評価する。
【0032】
また、複数のセンサを設けている場合には、複数のセンサから算出された値の差異に基づいて信頼性を評価する。すなわち、複数のセンサについて、差異が大きい場合には信頼性が低いと評価する。
【0033】
また、体動データの周期性の分析により生体情報を算出している場合には、例えば、周波数スペクトルのピークの突出程度や、複数のセンサの値の検出値のばらつきから信頼性を評価することも可能である。
【0034】
(3)算出された呼吸数・心拍数の信頼性評価
信頼性評価部125は、算出された心拍数、呼吸数が、以前に算出された値から大きく乖離した場合には信頼性が低いと判定する。例えば、心拍数において今まで算出されていた値から2倍以上の値が算出されている場合や、呼吸数が閾値以上に変動した場合等である。
【0035】
また、過去数回(例えば算出された生体情報5回)の平均値を算出し、当該平均値から大きく離れた値であったり、傾き(微分値)が急峻な場合には信頼性が低いと判定しても良い。また、信頼性としては、段階的に出力しても良い。例えば、前回算出された生体情報から2倍以上(又は2分の1以下)となった場合には信頼性はかなり低いと、1.5倍以上2倍未満(又は2分の1以上3分の2未満)の場合には信頼性が少し低いと判定しても良い。
【0036】
算出された心拍数、呼吸数が、所定の閾値を超えたり、閾値未満の場合は、信頼性が低いと判定する。例えば、呼吸数が0や1の場合であったり、心拍数が200を超えている場合等は、信頼性が低いと判定する。なお、当該閾値は測定者によって設定されても良いし、患者の年齢、健康状態により設定されるものであっても良い。
【0037】
睡眠状態判定部130は、患者の睡眠状態を判定している。例えば、生体信号取得部110により取得された生体信号に基づいて、患者の睡眠状態を判定する。睡眠状態としては「覚醒」「睡眠」と判定しても良いし、更に睡眠を「レム睡眠」「ノンレム睡眠」と判定しても良いし、眠りの深さを判定しても良い。
【0038】
患者状態判定部140は、患者の状態を上述した生体信号や、生体情報値に基づいて判定する。本実施形態では、患者の心拍数や、心拍リズムの異常を判定し、生体情報(例えば、心拍)が異常であるか否かを判定する。なお、本実施形態では、生体情報値として、心拍数に基づいて患者の不整脈を検出し、患者の状態を判定することができる。
【0039】
記憶部150は、システム1が動作するための各種データ及びプログラムを記憶している。制御部100は、記憶部150に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現することとなる。記憶部150は、例えば半導体メモリや、磁気ディスク装置等により構成されている。
【0040】
記憶部150は、生体情報値データ152と、睡眠状態データ154と、パラメータテーブル156とが記憶されている。
【0041】
生体情報値データ152は、生体情報値算出部120から出力された生体情報値を主に記憶する。図4は、生体情報値データ152のデータ構成の一例について説明した図である。生体情報値データ152は、生体情報値が算出された日時(例えば、「2017/11/16 02:30:30」)毎に、生体情報値として心拍数(例えば、「58」)が記憶されている。なお、生体情報値データ152は、所定時間毎の生体情報値が記憶されればよい。したがって、生体情報値(心拍数)のみが、所定時間毎に記憶されるだけであってもよい。
【0042】
また、ここで生体情報値が所定時間毎に記憶されるのは、生体情報値データ152に記憶されるタイミングである。したがって、例えば生体情報値を算出する基準となる時間は算出前60秒間であってもよい。すなわち、生体情報値を算出する場合の基準となる時間と、生体情報値を記憶(出力)する時間とは異なっていてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、生体情報値として心拍数が記憶されているが、呼吸数等他の生体情報値が記憶されてもよい。
【0044】
睡眠状態データ154は、患者の睡眠状態が記憶されている。睡眠状態判定部130により判定された睡眠状態として、「睡眠」「覚醒」が記憶される。このとき、睡眠の質(深さ)を記憶してもよいし、「在床」「離床」といった状態が記憶されてもよい。制御部100(患者状態判定部140)は、睡眠状態データ154を参照することにより、患者の一晩の睡眠時間を取得することができる。
【0045】
パラメータテーブル156は、本実施形態で利用されるパラメータが記憶されている。図4に示すように、パラメータテーブル156には、算出率計算時間(例えば、「5時間」)が記憶されている。また、パラメータテーブル156には、心拍数算出率閾値(例えば、「80%」)及び/又は心拍数非算出率閾値(例えば、「20%」)が記憶されている。
【0046】
パラメータの内容については後述するが、算出率計算時間は、心拍数算出率(心拍数非算出率)を算出するうえで、基準となる時間が記憶されている。また、心拍数算出率閾値は、算出率計算時間内において、心拍数が適切に算出されていると判定するための閾値である。心拍数非算出率閾値は、算出率計算時間内において、心拍数が適切に算出されていないと判定するための閾値である。この2つの算出率は合計すれば100%となる場合は、何れかが記憶されればよい。また、異なる基準を利用する場合は、それぞれが記憶されてもよい。
【0047】
入力部160は、測定者が種々の条件を入力したり、測定開始の操作入力をしたりするときに利用される。例えば、ハードウェアキーや、ソフトウェアキーといった何れかの入力手段により実現される。
【0048】
出力部170は、睡眠状態や、心拍数、呼吸数といった生体情報値を出力したり、異常を報知したりするときに利用される。出力部170としては、ディスプレイ等の表示装置であっても良いし、警報等を報知する報知装置(音出力装置)であっても良い。また、データを記憶する外部記憶装置や、データを通信路で送信する送信装置等であっても良い。また、他の装置に対して通報する場合の通信装置であっても良い。
【0049】
上述した構成のうち、生体情報値算出部120、信頼性評価部125、睡眠状態判定部130と、患者状態判定部140は、ソフトウェアにより実現されてもよい。例えば、記憶部150に記憶されたソフトウェアを制御部100が読み出して実行する。ソフトウェアが実行されると、制御部100が各構成として実現されることとなる。
【0050】
また、図2はシステム1として概念的に構成を説明したものである。これらの構成は、例えば1つの振動検出可能な装置で実現されてもよいし、図1のように、検出装置3、処理装置5と分かれて構成されてもよい。また、処理装置5の代わりに、同じサービスを提供可能な外部サーバで実現されてもよい。
【0051】
図2のシステム1を、図1の検出装置3及び処理装置5で実現する場合について、図6を参照して説明する。検出装置3は、制御部300と、センサである生体信号取得部320と、記憶部330と、通信部390とを含んでいる。
【0052】
また、制御部300は、記憶部330に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、生体情報値算出部310として機能する。生体信号取得部320で取得された生体信号に基づいて、生体情報値算出部310は生体情報値を算出する。そして、算出された生体情報値は、生体情報値データ340に記憶されたり、通信部390を介して、処理装置5に送信されたりする。また、併せて生体信号取得部320で取得された生体信号も、通信部390を介して処理装置5に送信可能である。
【0053】
検出装置3から処理装置5に生体情報値(生体情報)を送信するタイミングや、生体情報値データ340に生体情報値(生体情報)を記憶するタイミングとしては、リアルタイムであってもよいし、所定時間毎であってもよい。
【0054】
なお、生体信号取得部320は、図2の生体信号取得部110であり、生体情報値算出部310は、図2の生体情報値算出部120である。また、通信部390は、例えば、ネットワーク(例えば、LAN/WAN)に接続可能な通信インタフェースである。
【0055】
処理装置5は、制御部500と、記憶部530と、入力部540と、出力部550と、通信部590とを含んでいる。処理装置5は、検出装置3から、通信部590を介して生体情報値や、生体信号を受信する。受信された生体情報値は、生体情報値データ532に記憶される。
【0056】
制御部500は、記憶部530に記憶されているソフトウェア(プログラム)を実行することにより、信頼性評価部502、睡眠状態判定部504又は患者状態判定部506として機能する。受信された生体情報値や、生体信号に基づいて、信頼性評価部502は、生体情報値の信頼性を判定したり、睡眠状態判定部504は睡眠状態を判定したり、患者状態判定部506は、患者状態を判定する。
【0057】
なお、信頼性評価部502は、図2の信頼性評価部125である。睡眠状態判定部504は、図2の睡眠状態判定部130である。患者状態判定部506は、図2の患者状態判定部140である。入力部540は、図2の入力部160である。出力部550は、図2の出力部170である。記憶部530は、図2の記憶部150である。
【0058】
したがって、記憶部530に記憶される生体情報値データ532は図2の生体情報値データ152と、睡眠状態データ534は図2の睡眠状態データ154と、パラメータテーブル536はパラメータテーブル156と同じものである。
【0059】
[1.3 処理の流れ]
[1.3.1 心拍数算出処理]
生体情報値算出部120が生体情報値として、心拍数を算出する場合の処理について説明する。
【0060】
生体情報値算出部120は、生体情報値を算出する。具体的には、生体情報値算出部120は、生体信号取得部110により生体信号が検出されており、患者が心拍数算出条件に合致している場合に生体信号から心拍数を算出する(ステップS102;Yes→ステップS104;Yes→ステップS106)。ここでいう心拍数算出条件とは、算出条件による信頼性評価であり、例えば正しくセンサが心拍数の信号を検出しているか等である。
【0061】
ここで、ステップS102において、生体信号が検出される場合は、患者が在床していることを示している。また、ステップS104において、制御部100(生体情報値算出部120)は、患者が心拍数算出条件に合致しているか否かを判定する。例えば、患者が臥床中で外部からの振動入力がなく静止状態の時・静止時(活動量が「0」)の場合や、睡眠状態判定部130が患者の睡眠状態が睡眠と判定している場合に、心拍数を算出する。
【0062】
ステップS106において、心拍数の算出方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、体動データをフィルタリングし、心拍成分を抽出し、心拍間隔を1拍動毎に推定する。そして、心拍間隔に基づいて心拍数が算出される。
【0063】
他には、体動データの周期性の分析を行い、ピーク周波数から心拍数を求めるといった方法により算出しても良い。
【0064】
また、本実施形態では所定時間毎として、30秒毎に体動データに基づいて算出された値を利用する。具体的には、30秒間の時間窓内で推定された心拍間隔や30秒間の時間窓内の体動データのピーク周波数に基づいて心拍数を30秒毎に算出する。
【0065】
つづいて、信頼性評価部125により、算出された心拍数の信頼性が高いか否かを判定する(ステップS108)。算出された心拍数の信頼性が高いか否かは、上述した信頼性評価部125の説明で行った手法や、特開2017-47211号公報(出願日:2016年9月1日、発明の名称:生体情報出力装置、生体情報出力方法及びプログラム)に記載の信頼性評価方法を利用して行う。
【0066】
ここで、信頼性評価部125により算出された心拍数の信頼性が高いと判定された場合、生体情報値算出部120は、当該心拍数をそのまま出力する(ステップS108;Yes→ステップS110)。他方、信頼性評価部125により、信頼性が低い場合と判定された場合、心拍数は出力されない(ステップS108;No→ステップS112)。具体的には、生体情報値算出部120は、心拍数としてエラーを出力してもよいし、何も出力しなくてもよい。生体情報値算出部120は、心拍数を生体情報値データ152に記憶する。
【0067】
[1.3.2 患者状態判定処理]
つづいて、患者状態判定処理について、図8を参照して説明する。まず、生体情報値データ152に、患者状態を判定するために必要な時間分(すなわち、算出率計算時間分)の生体値情報が記憶されているか否を判定する。
【0068】
算出率計算時間は、パラメータテーブル156に記憶されている。ここで、算出率計算時間は、所定の時間以上であればよい。好ましくは30分~10時間であり、より好ましくは4時間~8時間といった、睡眠時間に対応するものが好ましい。
【0069】
したがって、1晩(午後11時から午前6時)や、消灯時間(午後9時から午前6時)や、就床時間(就床時刻から起床時刻)といった指定であってもよい。また2日間や、3日間といった複数日であってもよいし、複数日のうち、就床時間や睡眠時間が5時間を超えた日のみを集計するといった指定であってもよい。
【0070】
つづいて、患者状態判定部140は、心拍数算出率を算出する(ステップS154)。これは、上記算出率計算時間において、高い信頼性で心拍数が算出された時間の割合を心拍数算出率として計算する。そして、患者状態判定部140は、心拍数算出率が、心拍数算出率閾値以下であるか否かを判定する(ステップS156)。心拍数算出率閾値は、パラメータテーブル156に記憶されており、図4に基づけば「80%」である。
【0071】
したがって、患者状態判定部140は、心拍数算出率が「80%」以下の場合は、心拍異常(例えば、不整脈や心房細動の傾向がある、心肺機能に異常がある)と判定し、心拍異常と出力する(ステップS158)。
【0072】
なお、図8において、心拍数算出率を計算しているが、心拍数が高い信頼性で算出されなかった割合、すなわち心拍数非算出率を利用してもよい。
【0073】
患者状態判定部140は、算出率計算時間において、正しく心拍数が算出されなかった時間の割合を心拍数非算出率として計算する。そして、患者状態判定部140は、心拍数非算出率が、心拍数非算出率閾値より大きい(以上)か否かを判定する。心拍数非算出率は、パラメータテーブル156に記憶されており、図4に基づけば「20%」である。
【0074】
したがって、患者状態判定部140は、心拍数非算出率が「20%」を超えた場合は、心拍異常と判定し、心拍異常と出力する。
【0075】
[1.4 実施例]
本実施形態における実施例について、図9を参照して説明する。図9は、心拍に異常があった人(心房細動が検出される人)と、健常者とのグラフである。30秒毎に算出される心拍数を用いて生成されているグラフであり、全てのグラフは、左側が心房細動を患っている患者であり、右側が健常者を示している。
【0076】
図9(a)は、心拍数の平均を示した図であり、図9(b)は心拍数の変動係数(CV値)を示した図である。これらのグラフから分かるように、従来の指標だけでは、患者と健常者を正しく判別することができない。
【0077】
図9(c)は、心拍数非算出率を示した図である。非算出率が、概ね「20%」のところを中間にして、心房細動を患っている患者と、健常者とでは、分布が別れている。
【0078】
したがって、心拍数非算出率(心拍数算出率)を利用することにより、適切に患者の状態、生体情報の異常を判定することができる。また、異常判定された場合は、当該情報を出力することができる。
【0079】
[2.第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と構成・処理等は略同一である。第1実施形態と異なるのは、図8の患者状態判定処理を、図10の患者状態判定処理に置き換えたものである。
【0080】
以下、図10を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の処理については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
心拍数算出率を算出した後(ステップS154)、患者状態判定部140は、前日との比較で心拍数算出率が第1判定割合閾値分低下していた場合、心拍異常を出力する(ステップS202;Yes→ステップS204)。本実施形態では、1日だけでなく、前日と比較することで、患者の状態を判定する。なお、第1判定割合閾値としては、パラメータテーブル156に記憶されていてもよい、好ましくは5%~30%である。これは、例えば急に心拍数算出率が低下した場合、何らかの異常があるとして報知する。
【0082】
また、前日との比較では心拍算出率が第1判定割合閾値内であるが、数日の間に心拍数算出率が第2判定割合閾値分低下していれば、何らかの異常があるとして心拍異常を出力する(ステップS202;No→ステップS206;Yes→ステップS204)。
【0083】
なお、第2判定割合閾値としては、パラメータテーブル156に記憶されていてもよい、好ましくは10%~20%である。
【0084】
このように、本実施形態によれば、前日や数日間の心拍数算出率について変動を判定することにより、より適切に患者の状態を判定することができる。
【0085】
[3.効果]
このように、本実施形態によれば、非装着型の体動(振動)センサを利用することで不整脈等の生体情報の異常を適切に判定することができるようになる。従来の心電図を利用して生体情報の異常を判定する場合、対象者に直接電極をつけたりする必要があった。そのため、患者にとって負担が大きかった。
【0086】
しかし、本実施形態では、例えば対象者が寝るときに、対象者とベッド装置との間に載置するだけでよく、対象者にとって負担の少ない方法で生体情報の異常を判定することができるようになった。
【0087】
とくに、不整脈の発生頻度はその時間分布も含めて明らかではないため、検査によって発見されるまでには長い時間を要していた。本実施形態では、負担が少ない方法で長時間測定することも容易となる。また、長時間測定することで、発見までの時間を短くできるだけでなく、誤差が少なくなり、判定精度が向上することにも利用することができる。
【0088】
[4.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0089】
また、本実施形態においては、検出装置3で出力された結果に基づき、処理装置5において生体情報を出力しているが、検出装置3で全て算出してもよい。また、端末装置(例えばスマートフォン、タブレット、コンピュータ)にアプリケーションをインストールして実現するだけでなく、例えばサーバ側で処理をして、処理結果を端末装置に返しても良い。
【0090】
例えば、検出装置3から、生体情報をサーバにアップロードすることで、サーバ側で上述した処理を実現してもよい。この検出装置3は、例えば加速度センサ、振動センサを内蔵したスマートフォンのような装置で実現してもよい。
【0091】
また、実施形態において各装置で動作するプログラムは、上述した実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えば、RAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDD、SSDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。
【0092】
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 システム
100 制御部
110 生体信号取得部
120 生体情報値算出部
125 信頼性評価部
130 睡眠状態判定部
140 患者状態判定部
150 記憶部
152 生体情報値データ
154 睡眠状態データ
156 パラメータテーブル
160 入力部
170 出力部
10 ベッド
20 マットレス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10