IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フレキシブ リミテッドの特許一覧 ▶ フレキシブ ロボティックス インコーポレイテッドの特許一覧

特許7106759軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット
<>
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図1
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図2
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図3
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図4
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図5
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図6
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図7
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図8
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図9
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図10
  • 特許-軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】軸力センサ、該センサを備えるロボットグリッパーおよびロボット
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20220719BHJP
   G01L 1/04 20060101ALI20220719BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01L1/00 F
G01L1/04
B25J19/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021522926
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019040060
(87)【国際公開番号】W WO2020009959
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/693,034
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521006211
【氏名又は名称】フレキシブ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FLEXIV LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521006222
【氏名又は名称】フレキシブ ロボティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FLEXIV ROBOTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジァン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン スチュアン
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6501746(JP,B2)
【文献】特許第5735882(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第3136069(EP,A1)
【文献】特許第6214072(JP,B1)
【文献】特許第4963138(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪、外輪、および前記内輪と前記外輪との間に接続された接続部材を含む感知膜であって、前記接続部材は、その検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である、感知膜と、
少なくとも2つの信号組であって、前記少なくとも2つの信号組の各信号組は、前記内輪および前記外輪の一方に接続される信号送信機と、前記内輪および前記外輪の他方に接続される信号受信機とを含
前記少なくとも2つの信号組は、前記感知膜の円周方向に沿って対向して配置される第1の信号組および第2の信号組を含み、前記第1の信号組および第2の信号組は、前記感知膜に軸方向荷重が加えられる場合に反対の信号変化傾向を有する、
軸力センサ。
【請求項2】
前記信号送信機は磁石であり、前記信号受信機はホール効果センサである、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項3】
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、反対であり、
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、前記感知膜の延長方向と実質的に垂直であり、
前記第1の信号組および前記第2の信号組の各信号組における前記ホール効果センサは、前記感知膜の径方向に沿って、対応する前記磁石から離間して配置される、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項4】
保持構造をさらに含み、
前記内輪に中心孔が設けられ、
前記保持構造は、
前記中心孔を貫通し、前記内輪に接続される中軸と、
前記中軸に接続され、前記感知膜と実質的に平行に延びる支持板と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の軸力センサ。
【請求項5】
前記支持板に取り付けられ、前記感知膜の円周方向において前記少なくとも2つの信号組に対応する位置に配置されるシールド構造をさらに含み、
前記シールド構造は、前記少なくとも2つの信号組を封止して前記少なくとも2つの信号組を信号干渉から保護する、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項6】
前記支持板に取り付けられ、前記外輪を取り囲むハードストップをさらに含み、
前記ハードストップと前記外輪の上側および下側の両方との間にクリアランスが存在し、前記ハードストップは前記外輪の過度の歪みを防止する、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項7】
前記信号送信機は前記外輪に取り付けられ、
前記信号受信機は、前記支持板に取り付けられ、前記感知膜の軸方向または径方向において前記信号送信機と位置合わせされている、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項8】
前記信号受信機は前記外輪に取り付けられ、
前記信号送信機は、前記支持板に取り付けられ、前記感知膜の軸方向または径方向において前記信号受信機と位置合わせされている、
ことを特徴とする請求項に記載の軸力センサ。
【請求項9】
キャッチ機構と、前記キャッチ機構に作用する力を測定する軸力センサとを含み、
前記軸力センサは、
内輪、外輪、および前記内輪と前記外輪との間に接続された接続部材を含む感知膜であって、前記接続部材は、その検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である感知膜と、
少なくとも2つの信号組であって、前記少なくとも2つの信号組の各信号組は、前記内輪および前記外輪の一方に接続される信号送信機と、前記内輪および前記外輪の他方に接続される信号受信機とを含
前記少なくとも2つの信号組は、前記感知膜の円周方向に沿って対向して配置される第1の信号組および第2の信号組を含み、前記第1の信号組および第2の信号組は、前記感知膜に軸方向荷重が加えられる場合に反対の信号変化傾向を有する、
ロボットグリッパー。
【請求項10】
前記信号送信機は磁石であり、前記信号受信機はホール効果センサであり、
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、反対であり、
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、前記感知膜の延長方向と実質的に垂直であり、
前記第1の信号組および前記第2の信号組の各信号組における前記ホール効果センサは、前記感知膜の径方向に沿って、対応する前記磁石から離間して配置される、
ことを特徴とする請求項に記載のロボットグリッパー。
【請求項11】
前記軸力センサは保持構造をさらに含み、前記内輪に中心孔が設けられ、
前記保持構造は、
前記中心孔を貫通し、前記内輪に接続される中軸と、
前記中軸に接続され、前記感知膜と実質的に平行に延びる支持板とを含む、
ことを特徴とする請求項に記載のロボットグリッパー。
【請求項12】
前記軸力センサは、前記支持板に取り付けられ、前記感知膜の円周方向において前記少なくとも2つの信号組に対応する位置に配置されるシールド構造をさらに含み、
前記シールド構造は、前記少なくとも2つの信号組を封止し、前記少なくとも2つの信号組を信号干渉から保護する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットグリッパー。
【請求項13】
前記軸力センサは、前記支持板に取り付けられ、前記外輪を取り囲むハードストップをさらに含み、
前記ハードストップと前記外輪の上側および下側の両方との間にクリアランスが存在し、前記ハードストップは前記外輪の過度の歪みを防止する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットグリッパー。
【請求項14】
少なくとも1つの軸力センサを備えるロボットであって、
前記少なくとも1つの軸力センサにおける各軸力センサは、
内輪、外輪、および前記内輪と前記外輪との間に接続された接続部材を含む感知膜であって、前記接続部材はその検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である感知膜と、
少なくとも2つの信号組であって、前記少なくとも2つの信号組の各信号組は、前記内輪および前記外輪の一方に接続される信号送信機と、前記内輪および前記外輪の他方に接続される信号受信機とを含
前記少なくとも2つの信号組は、前記感知膜の円周方向に沿って対向して配置される第1の信号組および第2の信号組を含み、前記第1の信号組および第2の信号組は、前記感知膜に軸方向荷重が加えられる場合に反対の信号変化傾向を有する、
ロボット。
【請求項15】
前記信号送信機は磁石であり、前記信号受信機はホール効果センサであり、
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、反対であり、
前記第1の信号組の磁石の磁化方向と、前記第2の信号組の磁石の磁化方向とは、前記感知膜の延長方向と実質的に垂直であり、
前記第1の信号組および前記第2の信号組の各信号組における前記ホール効果センサは、前記感知膜の径方向に沿って、対応する前記磁石から離間して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項16】
前記軸力センサは保持構造をさらに含み、前記内輪に中心孔が設けられ、
前記保持構造は、
前記中心孔を貫通し、前記内輪に接続される中軸と、
前記中軸に接続され、前記感知膜に平行に延びる支持板とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項17】
前記軸力センサは、
前記支持板に取り付けられ、前記感知膜の円周方向において前記少なくとも2つの信号組に対応する位置に配置されるシールド構造であって、前記少なくとも2つの信号組を封止し、前記少なくとも2つの信号組を信号干渉から保護するシールド構造と、
前記支持板に取り付けられ、前記外輪を取り囲むハードストップであって、前記ハードストップと前記外輪の上側および下側の両方との間にクリアランスが存在し、前記外輪の過度の歪みを防止するハードストップと、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は米国特許法第119条(e)節により、2018年07月02日に出願され、出願名称が「LOW CROSSTALK AXIAL FORCE SENSOR」で出願番号が62/693034である米国特許出願に基づいて優先権を主張する。該米国特許出願の開示内容は、援用により本願に含まれている。
【0002】
この発明は、センサ構造および技術に関し、特に軸力センサ、該軸力センサを備えるロボットグリッパーおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
単軸ロードセルは、自動化産業ならびに研究室で広く使用されている。従来の単軸ロードセルは、通常、複雑な感知構造を必要とするストレインゲージを使用してたわみを測定する。使用されるセンサは、製造公差、温度変化、および衝撃荷重に敏感であり、頻繁な再校正が必要である。複数のストレインゲージは、通常、軸外荷重を補償するために、感知構造内で互いに対向する位置に取り付けられる。複数のストレインゲージは組立による誤差が生じやすい。
【発明の概要】
【0004】
上記に鑑みて、本発明は、軸力センサ、軸力センサを備えるロボットグリッパーおよびロボットを提供することを目的とする。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明で採用される技術案は軸力センサを提供する。該軸力センサは、感知膜と、少なくとも2つの信号組とを含む。感知膜は、内輪、外輪、および内輪と外輪との間に接続された接続部材を含む。接続部材は、検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である。各信号組は、信号送信機および信号受信機を含む。信号送信機は、内輪および外輪の一方に接続される。信号受信機は、内輪および外輪の他方に接続される。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明で採用される他の技術案はロボットグリッパーを提供する。該ロボットグリッパーは、キャッチ機構と軸力センサとを含む。軸力センサは、キャッチ機構に作用する力を測定するために利用する。軸力センサは、感知膜と、少なくとも2つの信号組とを含む。感知膜は、内輪、外輪、および内輪と外輪との間に接続された接続部材を含む。接続部材は、その検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である。各信号組は、信号送信機および信号受信機を含む。信号送信機は、内輪および外輪の一方に接続される。信号受信機は、内輪および外輪の他方に接続される。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明で採用される他の技術案は、少なくとも1つの軸力センサを備えるロボットを提供する。軸力センサは、感知膜と、少なくとも2つの信号組とを含む。感知膜は、内輪、外輪、および内輪と外輪との間に接続された接続部材を含む。接続部材は、その検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である。各信号組は、信号送信機および信号受信機を含む。信号送信機は、内輪および外輪の一方に接続される。信号受信機は、内輪および外輪の他方に接続される。
【0008】
本発明によれば、軸力センサは、複数組の信号送信機および信号受信機を含む。これらの信号送信機および信号受信機は、軸外荷重の解消および温度補償に用いることができる。これにより、軸力センサは、それに作用する軸力をより正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、本発明の実施形態における技術案を明確に説明するために、実施形態の説明において使用される図面を簡単に説明する。以下の説明における図面は、本発明の例示的な実施形態に過ぎない。当業者はこれらの図面に基づいて創造的な作業なしに他の実施形態を得ることもできるであろう。
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る軸力センサの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る軸力センサの感知膜の概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る軸力センサの断面図であり、シールド構造を例示的な構造として示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る軸力センサの断面図であり、ハードストップを例示的な構造として示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る軸力センサに取り付けられた2つの信号組の例示的な配置を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る軸力センサに取り付けられた2つの信号組の例示的な配置を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る軸力センサにおける信号組の一例示的な構成を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る軸力センサにおける信号組の一例示的な構成を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る軸力センサにおける信号組の一例示的な構成を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係るグリッパーの概略図である。
図11】本発明の一実施形態に係るロボットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面および実例を参照して本発明を詳細に説明する。説明される実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の実施形態のサブセットを表す。当業者は本発明の実施形態に基づいて創造的な作業なしに他の実施形態を想到することができ、これらの実施形態はすべて本発明の範囲に属する。
【0012】
図1を参照する。本発明の実施形態に係る軸力センサ100が示されている。軸力センサ100は、感知膜10、保持構造30、シールド構造40およびハードストップ50を含む。図2に示すように、感知膜10は、内輪11、外輪12、接続部材13および中心孔14を含む。接続部材13は、内輪11と外輪12との間に接続されてもよい。一実施形態において、感知膜10は1つ以上の頑丈な材料(例えば、アルミニウム合金、チタン合金、およびステンレス鋼合金)からなるものでもよい。接続部材13は、検出される軸力の方向において、他の荷重方向よりも柔軟である。例えば、接続部材13は、感知膜10の軸方向において適度に柔軟であるが、他の荷重方向においてはかなり堅い(例えば、他の荷重方向において力およびモーメントに対して剛性が高い)。したがって、軸力以外の力やモーメントは、構造を大幅に歪ませてセンサの出力を変更することができない。
【0013】
図3は、信号組20を示す、軸力センサ100の例示的な断面図である。信号組20が示されている。各信号組20は、信号送信機21および信号受信機22を含む。信号送信機21および信号受信機22は、感知膜10の異なる部分に接続されてもよい。すなわち、一例では、信号送信機21が感知膜10の内輪11に接続されている場合には、信号受信機22が感知膜10の外輪12に接続されてもよい。他の例では、信号送信機21が感知膜10の外輪12に接続されている場合には、信号受信機22が感知膜10の内輪11に接続されてもよい。感知膜10の外輪12(または内輪11)に軸方向荷重が加えられると、外輪12は内輪11に対して歪み、信号受信機22の読み取り値が変化する。
【0014】
一実施形態において、軸力センサ100は、2つの信号組20のみを含む。2つの信号組20は、感知膜10の円周方向に沿って対向して配置されてもよい。感知膜10に軸方向荷重が加えられると、2つの信号組20は反対の信号変化傾向を示す。従って、合力は、一方を他方から差し引いてから2で割ることによって(例えば、差動出力を計算することによって)導出することができる。感知膜10に軸外荷重(例えば、曲げモーメント)が加えられると、2つの信号組20は同じ信号変化傾向を示す。従って、この荷重による歪みは、一方を他方から差し引くことにより互いに打ち消される。他の例では、温度変化による信号変化は、2つの信号組を同じ傾向で変化させるので、一方を他方から差し引くことにより、温度変化の影響も抑制することができる。ほとんどの非抵抗性感知方法は温度変化に敏感ではないので、完全に打ち消されなくてもセンサに対する温度変化の影響は小さくなる。
【0015】
本発明の様々な例において、より多くの組(例えば、3組、4組、またはそれ以上)の信号送信機21および信号受信機22を使用してもよい。このような例では、より正確な軸外荷重の解消および温度補償方法を行えるようにすることによって、複数組の信号送信機21および信号受信機22の使用で、軸力センサ100がそれに作用する軸力をより正確に測定することができるようになる。一例では、信号送信機21および/または信号受信機22は、誘導性、容量性、抵抗性、光学的であってもよく、または他の信号形態を使用してもよい。一実施形態では、信号送信機21は磁石であってもよく、信号受信機22はそれに対応するホール効果センサであってもよい。
【0016】
ホール効果センサは以下のように動作する。ホール効果センサは、磁化軸に垂直な(すなわち、図5のY軸方向の)磁場強度を検出し、そして、磁石の磁化軸(すなわち、図5で紙面を出入りするZ軸)に沿って移動可能である場合には、センサの変位とセンサにより検出された磁場強度との関係は実質的に線形である。ホール効果センサは、磁化軸に垂直な(すなわち、図5のY軸方向の)磁場強度を検出し、そして、磁石の磁化軸に垂直な方向(すなわち、図5のY軸)に沿って移動可能である場合には、検出された磁場強度とセンサの変位との関係は線形性が低く、多項式の関数などの非線形関数でモデル化することができる。
【0017】
また、ホール効果センサは、磁化軸に垂直な(すなわち、図5のY軸方向の)磁場強度を検出し、そして、磁石の磁化軸に垂直な第2の垂直方向(すなわち、図5のX軸方向)に沿って移動可能である場合には、その検出された磁場強度が変化しない。したがって、信号送信機21が磁石であり、信号受信機22がホール効果センサである該実施態様において、信号送信機21および信号受信機22を適切に配置し、信号受信機22により検出された磁場強度を測定することによって、外輪12の内輪11に対する軸力センサの軸方向における変位を導出することができる。さらに、この変位と、軸力センサ100に作用する軸力との関係を取得することができる(例えば、軸力センサ100をモデル化したり、または軸力センサ100のプロトタイプをテストすることにより)。したがって、軸力センサ100に作用する軸力は、信号組20の信号受信機22の読み取り値に基づいて取得することができる。
【0018】
図5を参照し、一実施形態では、磁石21a(すなわち、信号送信機21a)の磁化方向は、磁石21b(すなわち、信号送信機21b)の磁化方向と反対であってもよい。また、磁石21aおよび21bの磁化方向はいずれも感知膜10の延長方向と実質的に垂直でもよい。すなわち、磁石21aおよび21bの磁化方向は、軸力センサ100の軸方向と平行であってもよい。
【0019】
図5及び図6に示すように、ホール効果センサ22aおよび22b(すなわち、信号受信機22aおよび22b)は、感知膜10の径方向において対応する磁石21aおよび21bから離間して配置されてもよい。これにより、軸力センサ100に軸力が加えられると、ホール効果センサ22aおよび22bは、軸力センサ100の軸方向において磁石21aおよび21bに対して移動することができる。したがって、ホール効果センサ22aおよび22bの変位と、その検出された磁場強度との関係は、実質的に線形となる。これは、構造のモデル化および軸力の計算を容易にする。他の実施形態において、2つの信号組20は、軸力センサ100に軸力が加えられたときに同じ信号変化傾向を示すように配置されてもよい。この場合、上記の減算方法はもはや適用できなくなるが、2つの信号組20の出力は、多項式フィッティングを適用するなどして、異なる方法で処理することができる。
【0020】
なお、図5および6に示される信号組20の配置は例示に過ぎず、信号組20は他の構成で配置されてもよい。例えば、図7図9は軸力センサ100の各信号組20のいくつかの可能な構成を示す。ここで、Z方向は軸力センサ100の軸方向を表し、Y方向は軸力センサ100の径方向を表す。これらの構成のいくつかでは、ホール効果センサ(すなわち、信号受信機22)の対応する磁石(すなわち、信号送信機21)に対する軸方向変位と、その検出された磁場強度との関係は、線形ではない場合がある。しかしながら、ホール効果センサの相対的な軸方向変位がその検出された磁場強度の値に大きく影響する限り、それを利用して軸力センサ100に加えられる軸力を計算することができる。
【0021】
図1から図4を参照する。軸力センサ100の保持構造30は、中軸31および支持板32を含む。一態様において、保持構造30は剛性材料からなる。例えば、保持構造30は、感知膜10と同じ材料から構成されていてもよい。感知膜10の内輪11には、中心孔14が設けられてもよい。中軸31は中心孔14を貫通してもよく、一例では内輪11に接続されてもよい。支持板32は中軸31に接続されてもよく、感知膜10と実質的に平行に延びてもよい。
【0022】
一態様において、保持構造30および感知膜10は、独立の部材である。他の態様において、保持構造30および感知膜は、1つの部材として製造することができる。一例では、保持構造30は、軸力センサ100の構成部材を設置するためのより多くのスペースを形成することができ、軸力センサ100と他の外部構成部材との接続を容易にすることができる。例えば、軸力センサ100はロボットのアクチュエータに適用され、保持構造30はモータアセンブリの被駆動端またはアクチュエータの出力端(例えば、出力フランジ)に接続されてもよい。
【0023】
一実施形態において、図3に示すように、信号送信機21は外輪12に取り付けられ、信号受信機22は、支持板32に取り付けられ、感知膜10の軸方向または径方向において信号送信機21と位置合わせされている。これらの実施形態では、保持構造30は感知膜10の内輪11に接続されているので、信号受信機22も間接的に内輪11に接続されている。他の実施形態において、信号受信機22は外輪12に取り付けられ、信号送信機21は支持板32に取り付けられ、感知膜10の軸方向または径方向において信号受信機22と位置合わせされている。このような他の実施形態では、信号受信機22は外輪12に接続され、信号送信機21は内輪11に接続される。
【0024】
一実施形態において、軸力センサ100は、シールド構造40をさらに含む。一態様では、シールド構造40は、支持板32に取り付けられ、感知膜10の円周方向において信号組20に対応して配置されてもよい。シールド構造40は、信号組20を封止して信号組20を信号中断および/または干渉から保護することができる。一例では、シールド構造40の構造および材料は、信号組20のタイプに基づくものである。例えば、信号組20に磁気信号を用いる場合には、シールド構造40は、スーパーマロイ(super malloy)、スーパーミューメタル合金(super mumetal alloy)、SANBOLD、パーマロイ(permalloy)、炭素鋼、マルテンサイト鋼などの高透磁率材料から作製することができる。信号組20に光信号を用いる場合には、シールド構造40は、遮光材料(不透明なプラスチック、金属、またはゴムなど)から作製することができる。なお、他の実施形態では、シールド構造40は代替的に感知膜10に取り付けられてもよく、本発明はそれに限定されない。
【0025】
一実施形態において、軸力センサ100は、ハードストップ50をさらに含む。ハードストップ50は、支持板32に取り付けられ、感知膜10の外輪12を取り囲むことができる。ハードストップ50は、例えばC字形状の構造を有してもよい。他の例では、ハードストップ50は、様々な適切な構成をいくらでも採りうる。いくつかの実施態様では、ハードストップ50と外輪12の上側および下側の両方との間にクリアランス(図示せず)が存在し、ハードストップ50は、外輪12の過度の歪みを防止するために利用される。過負荷に起因した過度の歪みが発生すると、剛性の高いハードストップ50は、外輪12のそれ以上の歪みを防止して、感知膜10を降伏および疲労から保護することができる。一例では、図示のように、軸力センサ100は1つのハードストップ50だけを含む。他の例では、軸力センサ100は、複数のハードストップ50を含む。
【0026】
本発明は、さらに、ロボットグリッパーを提供する。図10に示すように、ロボットグリッパー700は、キャッチ機構701と軸力センサ702とを含む。軸力センサ702は、キャッチ機構701に作用する力を測定するために利用する。軸力センサ702の構造および機能は、上記の実施形態のいずれの軸力センサ(例えば、例示的な軸力センサ100)と同様であってもよい。ロボットグリッパー700は、駆動アセンブリ703およびシェル704をさらに含む。駆動アセンブリ703は、軸力センサ702に接続され、キャッチ機構701を駆動するように構成されることができる。キャッチ機構701及び駆動アセンブリ703は、シェル704に任意の適切な方法で取り付けられることができる。図10に示されるロボットグリッパー700の構造は単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを、当業者は理解すべきである。軸力センサ702は、本発明の他の例において、任意の適切な構造および構成のロボットグリッパーと共に使用することができる。
【0027】
本発明は、さらに、少なくとも1つの軸力センサを備えるロボットを提供する。図11に示すように、ロボットグリッパー800は、複数のロボットアーム801およびエンドエフェクタ802を含む。エンドエフェクタ802はグリッパーであってもよく、該グリッパーにはグリッパーの把持力を測定する軸力センサ(図示せず)が取り付けられてもよい。例えば、エンドエフェクタ802は、上記のような軸力センサ702を用いるロボットグリッパー700であってもよい。他の例では、エンドエフェクタ802は、本明細書に記載されるような任意の適切な軸力センサを用いる任意の他の適切なグリッパーであってもよい。さらに、ロボット800は、実際の設計要件に基づいて、(例えば、アクチュエータ内に設けられる)他の力センサを含む。少なくとも1つの該軸力センサは、構造が上記の実施形態のいずれかの軸力センサと同様であってもよい。
【0028】
当業者は、さらなる詳細な説明がなくても、前述の説明を使用して本発明を最大限に利用することができると考えられる。本明細書に開示される実施例および実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものではない。上述の実施形態の詳細事項を、説明の基本原理から逸脱することなく変更することができることは、当業者にとって自明である。すなわち、上記の明細書に具体的に記載された実施形態の種々の変更及び改良は、全て請求項の範囲内である。例えば、記載された様々実施形態の特徴に対して任意で適切に組み合わせることが予想できるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11