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特許7106787染毛剤発泡用折り畳み式容器および染毛剤セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】染毛剤発泡用折り畳み式容器および染毛剤セット
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/24 20060101AFI20220720BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B65D5/24 E
A61Q5/10
A61K8/41
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018029453
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019142558
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】社本 行正
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260621(JP,A)
【文献】特開2011-212398(JP,A)
【文献】特開2010-215576(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0001096(KR,U)
【文献】特開2008-143574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/24
A61Q 5/10
A61K 8/41
A45D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシート材によって形成された、染毛剤を発泡させるために用いられる折り畳み式容器であって、
展開時に、
折り目を有する 四角形状の底面と、
前記底面から鈍角の傾斜角を成して折り返され、それぞれが開放辺を有する4つの側面であって、
前記底面を介して対向し、折り目を有する一対の台形状の第1の側面と、
前記底面を介して対向し、折り目を有さない一対の台形状の第2の側面と、を含む4つの側面とを備え、
前記第1の側面の内側には、前記側面を形成する際に折り畳み形成されたタブが溶着または接着されている、折り畳み式容器。
【請求項2】
請求項1に記載の折り畳み式容器において、
前記底面は、前記折り目として、対角を結ぶ2つの山折りの折り目と、前記第1の側面における前記折り目と連続する谷折りの折り目を有する、折り畳み式容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の折り畳み式容器において、
前記第1の側面および前記第2の側面は、前記底面と繋がり前記開放辺の対辺をなす底辺を有し、前記底辺の長さをLL、前記開放辺の長さをUL、前記折り畳み式容器の高さをHとするとき、
前記傾斜角は、180-(tan-1(2H/(UL-LL))×180/π)の式により規定され、
前記傾斜角は、100°~120°である、折り畳み式容器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の折り畳み式容器において、
前記第1の側面および前記第2の側面は、前記底面と繋がり前記開放辺の対辺をなす底辺を有し、前記底辺の一辺の長さと前記開放辺の一辺の長さの比(底辺/開放辺)は、0.52~0.76であり、
前記底辺の長さは9.0cm~15.0cmであり、前記開放辺の長さは16.0cm~22.0cmであり、前記折り畳み式容器の高さは、5.0cm~10.0cmの高さを有する、折り畳み式容器。
【請求項5】
請求項3に記載の折り畳み式容器において、
前記底辺の一辺の長さと前記開放辺の一辺の長さの比(底辺/開放辺)は、0.52~0.76であり、
前記底辺の長さは9.0cm~15.0cmであり、前記開放辺の長さは16.0cm~22.0cmであり、前記折り畳み式容器の高さは、5.0cm~10.0cmの高さを有する、折り畳み式容器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の折り畳み式容器において、
前記底辺の長さは13.0cmであり、前記開放辺の長さは17.2cmである、折り畳み式容器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の折り畳み式容器において、
前記折り畳み式容器は、少なくとも1000cmの容積を有する、折り畳み式容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の折り畳み式容器において、
前記折り畳み式容器は、折り畳み時に、最大長さが16.0cm~22.0cm、最大幅が5.0cm~10.0cmである、折り畳み式容器。
【請求項9】
染毛剤セットであって、
第1剤および第2剤を含む染毛剤と、
手揉み用の泡立部材と、
請求項1~8のいずれか一項に記載の折り畳み式容器と、
を備える染毛剤セット。
【請求項10】
請求項9に記載の染毛剤セットにおいて、
前記手揉み用の泡立部材は、網目状繊維材である、染毛剤セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、染毛剤を発泡させる際に用いられる折り畳み式容器および染毛剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
液だれなく簡単に毛髪を染色または脱色するために、染毛剤を発泡させて毛髪に塗布する手法が提案されている。染毛剤を発泡させる方法として、例えば、噴射剤を用いて缶容器から射出させる方法の他、染毛剤を容器に注ぎ振とうさせる方法、ネットを用いて発泡させる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-178478号公報
【0004】
しかしながら、スポンジやネットといった泡立部材を容器内において手揉みして染毛剤を発泡させる方法に適した容器については十分な検討がなされていなかった。例えば、染毛剤、泡立部材および容器からなる製品に用いられる場合には、製品箱内に収容可能であることが求められ、また、使用時には安定していることが求められる。なお、脱色剤においても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、泡立部材を手揉みして染毛剤を発泡させる際に適した折り畳み式容器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本開示は以下の種々の態様を採る。
【0007】
第1の態様は、1枚のシート材によって形成された、染毛剤を発泡させるために用いられる折り畳み式容器を提供する。第1の態様に係る折り畳み式容器は、展開時に、四角形状の底面と、前記底面から鈍角の傾斜角を成して折り返され、それぞれが開放辺を有する4つの側面であって、前記底面を介して対向し、折り目を有する一対の台形状の第1の側面と、折り目を有さない一対の台形状の第2の側面と、を含む4つの側面とを備える。
【0008】
第1の態様に係る折り畳み式容器によれば、泡立部材を手揉みして染毛剤を発泡させる際に適した折り畳み式容器が提供される。
【0009】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記底面は、対角を結ぶ2つの山折りの折り目と、前記第1の側面における前記折り目と連続する谷折りの折り目を有する。この場合には、折り畳み寸法を小さくすることができる。
【0010】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記第1の側面の内側には、前記側面を形成する際に折り畳み形成されたタブが溶着されていても良い。この場合には、折り畳み式容器の表面を平滑にすることができる。
【0011】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記第1の側面および前記第2の側面は、前記底面と繋がり前記開放辺の対辺をなす底辺を有し、前記底辺の長さをLL、前記開放辺の長さをUL、前記折り畳み式容器の高さをHとするとき、
前記傾斜角は、180-(tan-1(2H/(UL-LL))×180/π)の式により規定され、
前記傾斜角は、100°~120°であっても良い。この場合には、泡立てやすさ、容器の安定性、良好な使用性を実現することができる。
【0012】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記第1の側面および前記第2の側面は、前記底面と繋がり前記開放辺の対辺をなす底辺を有し、前記底辺の一辺の長さと前記開放辺の一辺の長さの比(底辺/開放辺)は、0.52~0.76であり、
前記底辺の長さは9.0cm~15.0cmであり、前記開放辺の長さは16.0cm~22.0cmであり、前記折り畳み式容器の高さは、5.0cm~10.0cmの高さを有しても良い。この場合には、泡立てやすさ、容器の安定性、良好な使用性を向上させることができる。
【0013】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記底辺の長さは13.0cmであり、前記開放辺の長さは17.2cmであっても良い。この場合には、泡立てやすさ、容器の安定性、良好な使用性を更に向上させることができる。
【0014】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記折り畳み式容器は、少なくとも1000cmの容積を有しても良い。この場合には、頭髪の染毛に求められる染毛剤量を満たすことができる。
【0015】
第1の態様に係る折り畳み式容器において、前記折り畳み式容器は、折り畳み時に、最大長さが16.0cm~22.0cm、最大幅が5.0cm~10.0cmであっても良い。この場合には、泡立てやすさ、容器の安定性、使用性を確保しつつ、規定の製品箱内へ収容することができる。
【0016】
第2の態様は、染毛剤セットを提供する。第2の態様に係る染毛剤セットは、第1剤および第2剤を含む染毛剤と、手揉み用の泡立部材と、第1の態様に係る折り畳み式容器と、を備える。第2の態様に係る染毛剤セットによれば、泡立部材を手揉みして染毛剤を発泡させる際に適した折り畳み式容器を備えることができる。
【0017】
第2の態様に係る染毛剤セットにおいて、前記手揉み用の泡立部材は、網目状繊維材であっても良い。この場合には、発泡操作を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る折り畳み式容器を斜め上方から見た説明図。
図2】第1の実施形態に係る折り畳み式容器の側面図。
図3】第1の実施形態に係る折り畳み式容器の正面図。
図4】第1の実施形態に係る折り畳み式容器の平面図。
図5】第1の実施形態に係る折り畳み式容器を形成する前の展開図。
図6】第1の実施形態に係る折り畳み式容器が折り畳まれた際の態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る、染毛剤を発泡させるために用いられる折り畳み式容器および染毛剤セットについて、図面を参照しつつ、実施形態に基づいて説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、染毛剤とは、染料を含まない脱色・脱染剤を含むヘアカラーの総称として用いられる。
【0020】
第1の態様形態:
図1は、第1の実施形態に係る折り畳み式容器を斜め上方から見た説明図である。図2は、第1の実施形態に係る折り畳み式容器の側面図である。図3は、第1の実施形態に係る折り畳み式容器の正面図である。図4は第1の実施形態に係る折り畳み式容器の平面図である。図5は第1の実施形態に係る折り畳み式容器を形成する前の展開図である。
【0021】
第1の実施形態に係る折り畳み式容器100は、図5に示す1枚のシート状の部材を折り目に従い折り曲げ加工することによって形成され、展開時には、有底で上部に向かって開口面の面積が広がる箱形形状を有している。折り畳み式容器100は、底面20A、一対の第1の側面20L、20R並びに一対の第2の側面20F、20Bを備えている。底面20Aは、四角形状を有する。本実施形態においては正方形を例にとって示すが、長方形であっても良い。底面20Aは、対角を結ぶ2本の山折りの折り目L1、L2、並びに底面20Aと連続する第1の側面20L、20Rの底辺22L、22Rの中点を結ぶ谷折りの折り目L3を有している。なお、本実施形態においては、折り畳み式容器100の内側に頂部が向かう折り目を山折り、折り畳み式容器100の外側に向かう折り目を谷折りと定義する。
【0022】
第1の側面20L、20Rは、それぞれ、底面20Aから鈍角の傾斜角θ1をなすように折り返され(図2参照)、底面20Aを介して対向する。第1の側面20L、20Rは、それぞれ台形状を有し、山折りの折り目L3L、L3Rを有している。第1の側面20L、20Rは、底面20Aと繋がる底辺22L、22Rと、底辺22L、22Rの対辺をなす開放辺21L、21Rとを備えている。折り目L3L、L3Rは、底面20Aにおける折り目L3と繋がり、底辺22L、22Rの中点と開放辺21L、21Rの中点とを結ぶ。第1の側面20L、20Rの内面には、第1の側面20L、20Rを形成する際、すなわち、折り畳み式容器100を形成する際に生じるタブTL、TRが畳み込まれている。本実施形態において、タブTL、TRは、第1の側面20L、20Rに熱溶着により接着されていおり熱溶着部HSが形成されている。なお、熱溶着に代えて、接着剤や接着材を用いて接着されても良い。第1の側面20L、20Rにのみ折り目L3L、L3Rを備えることにより、折り目を低減し、折り目に対する染毛剤の溜まりを低減することができる。
【0023】
第2の側面20F、20Bは、それぞれ、底面20Aから傾斜角θ1をなすように折り返され(図3参照)、底面20Aを介して対向する。第2の側面20F、20Bは、それぞれ台形状を有し、折り目を有していない。第2の側面20F、20Bは、底面20Aと繋がる底辺22F、22Bと、底辺22F、22Bの対辺をなす開放辺21F、21Bとを備えている。
【0024】
図2および図3に示すように、第1の側面20L、第2の側面20Fの各底辺22L、22Fは、長さLL(cm)を有し、各開放辺21L、21Fは、長さUL(cm)を有する。折り畳み式容器100は、高さH(cm)を有する。底面20Aと第1の側面20L、第2の側面20Fとがなす傾斜角θ1は、以下の式によって規定される。
θ1=180-(tan-1(2H/(UL-LL))×180/π)
なお、第1の側面20R、第2の側面20Bについても同様であり、以下では、第1の側面20L、第2の側面20Fを例にとって説明する。
【0025】
染毛剤を発泡させるための折り畳み式容器100としては、後述するように、傾斜角θ1は100°~120°であることが望ましい。また、各底辺22L、22Fの長さLLは、9.0~15.0cmであることが望ましく、各開放辺21L、21Fの長さULは16.0~22.0cmであることが望ましい。また、各底辺22L、22F、すなわち、底辺一辺に対する各開放辺21L、21F、すなわち、開放辺一辺の比(底辺/開放辺)は、0.52~0.76であることが望ましい。さらに、折り畳み式容器100の高さは5.0~10.0cmであることが望ましい。また、毛髪全体を染毛するために求められる量の発泡された染毛剤を生成するために、1000cm以上の容積を有していることが望ましい。
【0026】
図5に示すように、折り畳み式容器100は、1枚の樹脂製の加工前シート材100bを折り目L1、L2、L3、L3L、L3R、L4、L5、L6、L7に従って折り曲げることによって形成される。加工前シート材100bは、例えば、ポリプロピレン製であり、厚さは好ましくは0.1mm~0.3mm、より好ましくは0.18mmである。一枚のシート材を折り曲げて折り畳み式容器100が形成されるので、複数の面部材を組み合わせる場合に生じ得る各面の継ぎ目や接合部からの染毛剤の漏れを防止することができる。なお、折り目は、山折りまたは谷折りが共通する限り同一の符号で示されている。加工前シート材100bは、折り曲げ後に、底面20A、第1の側面20L、20R、第2の側面20F、20B、タブTL、TRを構成する、底面構成部20Ab、第1の側面構成部20Lb、20Rb、第2の側面構成部20Fb、20Bb、タブ構成部TLb、TRbを有している。加工前シート材100bは、内容物が視認できるように透明または半透明の樹脂であることが望ましい。
【0027】
図6は第1の実施形態に係る折り畳み式容器が折り畳まれた際の態様を示す説明図である。図6において、透過によって確認できる構成については()を付して示されている。折り畳み式容器100は、折り畳み時に、第1の側面20L、20Rがそれぞれ折り目L3L、L3Rに沿って折り曲げられ、第2の側面20F、20Bの内側に収納される。したがって、折り畳まれた折り畳み式容器100は、第2の側面20F、20Bが表面および裏面となる略板状形状を有する。折り畳まれた折り畳み式容器100は、長さL(cm)、幅W(cm)を有する。折り畳まれた折り畳み式容器100の最大長は16.0cm~22.0cm、最大幅は5.0cm~10.0cmである。
【0028】
折り畳み式容器100に対しては、染毛剤を泡立てるという側面、並びに、染毛剤、泡立部材と共に製品箱内に収容して販売される染毛剤セットに用いられるという側面から、以下の条件を満たすことが望まれる。
・製品箱の寸法には、広く用いられている既存の寸法が存在しており、販売店の陳列棚の寸法は既存の製品箱の寸法、例えば、高さが22cm、幅が10cm、奥行きが10cmに合わせて決定されている。したがって、既存の寸法よりも大きな製品箱は棚に入らず陳列販売できない場合がある。また、寸法が大きければ大きいほど運搬および保管にコストがかかる。したがって、折り畳み式容器は、既存の寸法の製品箱に収容可能な寸法を有していることが求められる。
・使用に至るまで長期にわたり保存された後であっても、折り畳み式容器100には、直ちに所望の形状に復元する復元性が求められる。復元性が悪い場合、例えば、復元の程度が低い場合には染毛剤を上手く発泡させることができず、復元に時間を要する場合には、ユーザの使い勝手を阻害してしまう。
・折り目や角が少ない折り畳み式容器が求められる。角や折り目か多い複雑な構造の折り畳み式容器では、角や折り目に溜まる混合液の量が増え、折り畳み式容器に投入した染毛剤の全量を効率よく発泡させることができない可能性がある。
・発泡の対象が、染毛剤または脱色剤であり、折り畳み式容器から周囲に泡が飛び散らないことが求められる。周囲が染毛剤に含まれる染料により染色されたり、脱色剤によって脱色されてしまうおそれや、発泡に用いられる薬剤の減量により色むらの原因にもなる。
・通常、染毛剤は、アルカリ剤と酸化剤、酸化染料を含有しており、肌との接触を避けるため手袋が用いられる。したがって、手袋で守られていない、例えば、腕に泡が付着することなく泡立て可能な折り畳み式容器が求められる。
・例えば、泡立てネットといった泡立部材を手で揉み込んで染毛剤を発泡させる場合、手が入れやすくかつ折り畳み式容器内において手を動かしやすい形状が求められる。また、手揉みによって染毛剤を発泡させている際に容易に染毛剤がこぼれ出さないことが求められる。
【0029】
以上の点を考慮して、染毛剤を発泡させるための折り畳み式容器100として適した寸法特性について検証した。検証に際しては、以下の組成を有する染毛剤を用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
表1および表2における注釈の意味は以下の通り。
※1 PLANTACARE 2000UP(BASF社)
※2 GreenAPG 0810(Shanghai Fine Chemical社)
※3 マーコート550(Lubrizol社)
※4 混合果実抽出液P(香栄興業株式会社)
※5 キレスビット D-1(キレスト株式会社)
※6 TURPINAL SL(ソルーシア・ジャパン株式会社)
各剤の使用量 第1剤:第2剤=42g:63g
【0032】
折り畳み式容器100内において、手揉みにて染毛剤を発泡させるための泡立部材としては、以下の特性を有する網目状繊維材、すなわち、泡立てネット、を用いた。なお、折り畳み式容器100と、表1および表2に示す染毛剤と、泡立てネットによって染毛剤セットが構成される。
株式会社ミツヒロ社製 ナイロンボールタイプ(14g)
網目数M=12メッシュ
線形h=0.18mm
目開きOP=1.94
開口率E=83.7%
【0033】
発泡手順、すなわち、泡立ては以下の手順で行った。
(1)折り畳まれた状態の折り畳み式容器を展開して折り畳み式容器100を形成し、泡立てネットを入れ第1剤と第2剤を泡立てネットにかけるように投入する。
(2)ゴム製の手袋を着用し泡立てネットを握るように折り畳み式容器100内で揉み込み泡立てる。このとき「泡立てネットの揉み込み」と「液を泡立てネットに染みこませるため、底面を円を描くように数回かき混ぜる」を繰り返すことにより泡立てることが望ましい。
(3)泡が折り畳み式容器100内に一杯になるか、混合液全量が泡になるまで泡立てを継続する。
(4)得られた泡状の混合液をゴム手袋を着用した手に泡を直接のせて、毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775S」)の毛髪全体に手で塗布し、指を立ててやさしく髪全体を揉み込んで頭の上でも泡立てる。混合液の全量が泡状になる前に折り畳み式容器100容器を満たした場合は、再度、残りの混合液を用いて泡立てを行い泡となった混合液を塗布する。
(5)20分間放置後洗い流し、シャンプー・コンディショナーをした後、乾燥する。
【0034】
容器の評価は以下の評価方法で行った。
25℃の条件下でパネラー10名が泡立て・染毛操作を行い評価した。
(A)「泡立てやすさ」の評価基準
「手が動かしやすく泡立てやすい」、「手を動かしにくく泡立てにくい」の2択で評価を行い、「手が動かしやすく泡立てやすい」と回答したパネラー数が、
10~8名を優(1)、7~5名を可(2)、4名以下を不可(3)とした。
(B)「容器の安定性」の評価基準
「容器が安定していて容器から泡がこぼれない」、「容器が不安定で泡がこぼれた」の2択で評価を行い、「容器が安定していて容器から泡がこぼれない」と回答したパネラー数が、
10~8名を優(1)、7~5名を可(2)、4名以下を不可(3)とした。
(C)「使用性」の評価基準
「手袋で守られていない腕の部分や周囲を汚すことなく染毛できた」、「手袋で守られていない腕の部分や周囲に泡がついてしまい汚してしまった」の2択で評価を行い、「手袋で守られていない腕の部分や周囲を汚すことなく染毛できた」と回答したパネラー数が、
10~8名を優(1)、7~5名を可(2)、4名以下を不可(3)とした。
その上で、3つの評価基準の総合評価結果として、可(2)2つまでを合格とした。
【0035】
【表3】
【0036】
表3においては、開放辺長ULおよび高さHを一定とし、底辺長LLを変化させた場合の検証結果が実施例1~3として示されている。開放辺長ULは、製品箱内への収容や使用性の観点から17.2cmとした。なお、厳密に17.2cmであることは求められず、例えば、16.0cm~22.0cmといったように、概ね17cm前後であれば良い。折り畳み式容器100は、泡立てやすさ(A)、容器の安定性(B)、使用性(C)を向上させるために、第1の側面20L、20Rおよび第2の側面20F、20Bは、底面20Aとからは傾斜角θ1をなして折り返されている。すなわち、第1の側面20L、20Rおよび第2の側面20F、20Bは、底面20Aから開口部に向かって開口面積が広がるように勾配角を備えることによって、容器に対する手のひらの出し入れを容易にし、また、容器内における泡立て操作時に開放辺21F、21B、21L、21Rと手首の干渉を防止または低減している。
【0037】
【表4】
【0038】
表4においては、開放辺長ULおよび底辺長LLを一定とし高さHを変化させた場合、底辺長LLおよび高さHを一定とし開放辺長ULを変化させた場合、高さを一定とし、開放辺長ULおよび底辺長LLを変化させた場合の検証結果が実施例4~実施例10として示されている。高さHは、製品箱内への収容や使用性の観点から8cmとした。なお、厳密に8cmであることは求められず、例えば、5cm~10cmといったように、概ね8cm前後であれば良い。
【0039】
表3および表4の検証結果によれば、傾斜角θ1が、100°~120°であれば、泡立てやすさ(A)の評価において不可(3)はなく、また、傾斜角θ1が100°~114°であれば、泡立てやすさ(A)、容器の安定性(B)のいずれの評価においても優(1)のみとなる。傾斜角θ1が100°未満の場合、泡立てやすさ(A)の評価は不可(3)であり、泡立てやすさ(A)の観点からは傾斜角θ1は100°以上であることが望ましい。すなわち、傾斜角θ1が直角に近くなるに連れて容器に対する手のひらの出し入れが容易でなくなる。また、高さHが高くなると容器内において泡立部材を手揉み等する発泡操作の際に開放辺が手首等に当たってしまい、泡立てにくさをもたらす(比較例5、8)。したがって、高さHは13cm未満、さらに10cm以下であることが望ましい。さらに、底辺長LLが短い、すなわち、容器の接地面積が小さくなると容器内における発泡操作に伴う手のひらの動きが制限される(比較例1)。したがって、底辺長LLは、7cm以上であり、さらには、10cm以上であることが望ましい。
【0040】
一般的に、開放辺長ULが長くなると、開放面積が大きくなり手のひらのみならず、手首や腕も容器内に入り易くなり、発泡された染毛剤と接触し易くなり、使用性が低下する。また、容器の容積が1000cm未満となると、容器から発泡された染毛剤があふれ易くなり、手首や腕に付着し使用性が低下する(比較例4)。製品箱の寸法制限により、開放辺長ULおよび底辺長LLとして取り得る長さは制限されるため、高さHが低くなると求められる容積を確保できなくなる。表3および表4の検証結果によれば、使用性(C)の観点からは、開放辺長ULの長さは22cm以下であること、さらには、20cm以下であることが望ましく、高さHは5cm以上であることが望ましい。
【0041】
一般的に、底辺長LLが短い、すなわち、容器の接地面積が小さくなると容器の安定性は低下する(比較例1)。また、底辺長LLが短い、あるいは、高さHが低いと、容器に求められる容積を確保できなくなる(比較例1、4)。この結果、容器の安定性(B)が低下する。表3および表4の検証結果によれば、容器の安定性(B)の観点からは、底辺長LLの長さは7cm以上であり、さらには、10cm以上であることが望ましく、高さHは5cm以上であることが望ましい。
【0042】
以上の検証結果をまとめると、折り畳み式容器100は、傾斜角θ1として、100°~120°を有し、容積として1000cm以上であることが望ましい。また、底辺長LLの長さと開放辺長ULの長さとの比(底辺/開放辺)が0.52~0.76であると共に、底辺長LLが9.0cm~15.0cmであり、開放辺長ULが16.0cm~22.0cmであり、高さHが5.0cm~10.0cmであることがさらに望ましい。さらに、底辺長LLが13.0cmであり、開放辺長ULが17.2cmであり、高さHが5.0cm~10.0cmであることが望ましい。この場合には、求められる容積を確保しつつ、折り畳み時にコンパクトであり、また、泡立てやすさ(A)、容器の安定性(B)および使用性(C)に優れた折り畳み式容器100を実現することができる。
【0043】
本実施形態に係る折り畳み式容器100によれば、泡立部材を手揉みして染毛剤を発泡させる際に適した折り畳み式容器が提供される。より具体的には、本実施形態に係る折り畳み式容器100は、泡立てやすさ(A)、容器の安定性(B)および使用性(C)に優れる。優れた泡立てやすさ(A)、容器の安定性(B)および使用性(C)を実現するために本実施形態に係る折り畳み式容器100は、
・既存の寸法の製品箱に収容可能な寸法を有し、
・使用に至るまで長期にわたり保存された後であっても、直ちに所望の形状に復元する復元性を有し、
・折り目や角が少なく、
・周囲に泡が飛び散らず、手袋で守られていない、手首や腕に泡が付着することなく泡立て可能であり、
・泡立部材を手で揉み込んで染毛剤を発泡させる場合に、手が入れやすくかつ容器内において手を動かし易く、手揉みによって染毛剤を発泡させている際に容易に染毛剤がこぼれ出さない、特性を有している。
【0044】
また、本実施形態における折り畳み式容器100を備える染毛剤セットは、泡立部材、例えば、網目状繊維材、ネット、スポンジを用いて染毛剤を発泡させることができるので、染毛剤の成分処方幅を拡大することができる。すなわち、泡立部材を用いた発泡操作によれば、噴射剤や振とう操作等により発泡させる場合よりも容易に発泡が可能であり、発泡のために染毛剤の成分が制約されることはない。また、折り畳み式容器100に染毛剤の全量を投入し、発泡させることが可能であるから、毛髪への塗布の途中で再度、染毛剤を容器から吐出させる等の操作を行うことなく染毛操作を継続することができる。さらに、折り畳み式容器100を使用することによって製品箱の寸法をコンパクト化することや染毛剤セットを内包する製品を軽量化することができる。
【0045】
その他の実施形態:
(1)上記第1の実施形態においては、染毛剤を用いているが、同様にして表5および6に示す第1剤および第2剤からなる脱色剤が用いられても良い。なお、表5および表6における注釈の意味は表1および表2における注釈と同じ意味である。
【0046】
【表5】
【表6】
【0047】
以上、実施形態に基づき本開示について説明してきたが、上記した実施の形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
20A…底面、20L、20R…第1の側面、20F、20B…第2の側面、20Ab…底面構成部、20Lb、20Rb…第1の側面構成部、20Fb、20Bb…第2の側面構成部、21F、21B、21L、21R…開放辺、22F、22B、22L、22R…底辺、TL、TR…タブ、TLb、TRb…タブ構成部、HS…熱溶着部、L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7…折り目、100…折り畳み式容器、100b…加工前シート材、θ1…傾斜角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6