(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】原子層の研磨方法及びそのための研磨装置
(51)【国際特許分類】
C30B 33/00 20060101AFI20220720BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C30B33/00
C30B29/36 A
(21)【出願番号】P 2020515856
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 KR2018013178
(87)【国際公開番号】W WO2019088731
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0144433
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521036654
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ フュージョン エナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ、カン イル
(72)【発明者】
【氏名】ソク、ドン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ソ オク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン シク
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン リュル
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063186(JP,A)
【文献】特開2002-329690(JP,A)
【文献】特開2003-318156(JP,A)
【文献】特開2014-024702(JP,A)
【文献】特開2017-157836(JP,A)
【文献】特表2014-522104(JP,A)
【文献】特開平05-275402(JP,A)
【文献】特開平10-226892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 - 35/00
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる二つの元素を含む材料である試料の表面をスキャンして前記試料表面のピーク位置を測定するステップと、
前記試料の材料の成分である第1の原子と結合することができるガスとして、前記第1の原子以外の他の原子より第1の原子との結合率が高い第1の反応ガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第1の反応ガスが前記第1の原子と結合した第1の反応ガス層を形成するステップと、
前記第1の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第1の反応ガスと結合された前記第1の原子を前記試料から分離させるステップと、
前記第1の原子を分離するステップの後に、前記試料の材料の成分である第2の原子と結合することができるガスとして、前記第2の原子以外の他の原子より第2の原子との結合率が高い第2の反応ガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第2の反応ガスが前記第2の原子と結合した第2の反応ガス層を形成するステップと、
前記第2の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第2の反応ガスと結合された前記第2の原子を前記試料から分離させるステップと、
を含むことを特徴とする、
原子層の研磨方法。
【請求項2】
前記第1の反応ガス層を形成するステップから前記第2の原子を分離させるステップを繰り返して、平坦化の精度を増加させることを含むことを特徴とする
請求項1に記載の原子層の研磨方法。
【請求項3】
前記第1の原子を分離するステップと前記第2の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第1の反応ガス層を除去するステップを含むことを特徴とする
請求項1に記載の原子層の研磨方法。
【請求項4】
前記第1の原子を分離するステップと前記第2の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第1の反応ガス層を除去するステップを含み、
前記第2の原子を分離するステップと前記第1の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第2の反応ガス層を除去するステップを含むことを特徴とする
請求項2に記載の原子層の研磨方法。
【請求項5】
前記第1の反応ガス層を除去するステップは、前記第1の反応ガスと反応することができるガスのプラズマを照射することを含むことを特徴とする
請求項3に記載の原子層の研磨方法。
【請求項6】
前記第1の反応ガス層を除去するステップは、前記第1の反応ガスと反応することができるガスのプラズマを照射することを含み、
前記第2の反応ガス層を除去するステップは、前記第2の反応ガスと反応することができるガスのプラズマを照射することを含むことを特徴とする
請求項4に記載の原子層の研磨方法。
【請求項7】
前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスは、前記第1の原子及び第2の原子とそれぞれ結合して揮発性気体を形成することができるガスであることを特徴とする
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項8】
前記エネルギーをかけるには、不活性ガスのイオンを照射することを特徴とする
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項9】
前記不活性ガスのイオンの照射は、スパッタリングされない程度のエネルギーで行われることを特徴とする
請求項8に記載の原子層の研磨方法。
【請求項10】
前記不活性ガスのイオンの照射エネルギーは、1~100 eVであることを特徴とする
請求項8又は請求項9に記載の原子層の研磨方法。
【請求項11】
前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、及びキセノン中のいずれか一つを含むガスであることを特徴とする
請求項8~請求項10のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項12】
前記エネルギーをかけるには、電子を照射することを特徴とする、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項13】
前記エネルギーをかけるには、光エネルギーを照射することを特徴とする、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項14】
前記エネルギーをかけるには、不活性ガスの中性粒子を照射することを特徴とする、
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項15】
前記試料の原子と結合された反応ガスのみ残るように前記反応ガス層の形成後、チャンバーを排気させるステップを含むことを特徴とする、
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の原子層の研磨方法によるシリコンカーバイドの平坦化方法において、
前記試料は、シリコンカーバイドであり、
前記第1の反応ガスは、フッ素を含むガスであり、
前記第2の反応ガスは、酸素であることを特徴とする、前記シリコンカーバイドの平坦化方法。
【請求項17】
前記フッ素を含むガスによるステップを
実行し、その後に、前記第1の原子を前記試料から分離させるステップを実行し、その後に、前記酸素によるステップを実行することを特徴とする
請求項16に記載のシリコンカーバイドの平坦化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子層研磨システム及び研磨方法に関し、より詳細には、シリコンカーバイドに対する原子層研磨システム及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙用カメラのように、高解像度の映像の撮影が要求されて、レンズの精密な平坦化技術が求められている。特に、原子層単位の研磨まで要求されている実情である。
【0003】
しかし、従来の研磨技術は、物理的および化学的研磨手段を通じた研磨である。現在、研磨技術、例えば、Ion Beam Figuring装置の場合には、物理的な衝突によるスパッタリング現象を利用するため、原子単位の研磨が可能でない。
【0004】
特に、宇宙用光学レンズとして脚光を浴びているシリコンカーバイドのような材料は、硬度が非常に高く、化学的に非常に安定的であるため、研磨が難しい材料として知られている。このような材料の研磨のためにダイヤモンド粒子を粒子サイズによって工程に活用する技術とCARE法(Catalyst Surface Referred Etching)などがあるが、コストがかかり、原子層単位の精密な研磨が可能でない。
【0005】
現在は、原子層単位でレンズの表面を研磨する技術は存在しておらず、高解像度の撮影のためのニーズに合致していないのが実情である。そこで、このような技術ニーズに合致する新技術の研究が必要な時点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、原子層単位で試料の表面を研磨することができる技術を提供することである。
【0007】
本発明の一目的は、シリコンカーバイドのような非常に強い材料も原子層単位で研磨することができる原子層研磨システム及び研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面として、本発明は、試料の表面をスキャンして前記試料表面のピーク位置を測定するステップと、前記試料の材料の成分である第1の原子と結合することができる第1の反応ガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第1の反応ガスが前記第1の原子と結合した第1の反応ガス層を形成するステップと、及び前記第1の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第1の反応ガスと結合された前記第1の原子を前記試料から分離させるステップとを含む原子層の研磨方法を提供する。
【0009】
本発明で使用される用語「研磨」は、試料の表面の高さの精度を減らす方法を意味し、さまざまな目的のために使用されることができ、例えば、平坦化の目的のために使用されることができる。
【0010】
本発明は、前記試料がお互いに異なる二つの元素を含む材料である場合、 前記第1の反応ガスは、前記試料の第1の原子と結合するガスとして、前記第1の原子以外の他の原子より第1の原子と結合率が高いガスであり、前記第1の原子を分離するステップの後に、前記試料の材料の成分である第2の原子と結合することができるガスとして、前記第2の原子以外の他の原子より第2の原子と結合率が高いガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第2の反応ガスが前記第2の原子と結合した第2の反応ガス層を形成するステップと、及び前記第2の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第2の反応ガスと結合された前記第2の原子を前記試料から分離させるステップとを含むことができる。
【0011】
前記試料は、レンズ、鏡などのような研磨対象を意味する。
【0012】
前記ピークとは、平面の研磨精度の測定時に得られる値として、他の平面の位置に比べて高さが高い位置をピークとする。
【0013】
前記試料の成分である原子は、試料がシリコンカーバイド(SiC)である場合、シリコン原子または炭素原子を意味する。
【0014】
この原子と結合することができるのは、化学的結合ボンドを形成することができることを意味する。炭素原子の場合、酸素分子または原子の露出に簡単に結合されるため、炭素と酸素の結合を意味する。同様に、シリコンの場合、フッ素含有ガスまたはフッ素原子の露出によって容易に結合されるため、シリコンとフッ素結合を意味する。
【0015】
第1の反応ガスと結合された試料の原子は、エネルギーをかけることにより試料から分離されることができる。例えば、イオンビームによるイオンをかけたり、電子をかけたり、中性粒子をかけたり、光エネルギーをかけることであることができる。
【0016】
前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスは、前記第1の原子及び第2の原子とそれぞれ結合して揮発性気体を形成することができるガスであることを特徴とし、前記エネルギーを受けて試料から分離されて揮発されることができる。
【0017】
例えば、不活性ガスイオンの衝突によってエネルギーを得て、試料から分離されることができる。また、前記不活性ガスのイオンの照射は、結合されたエネルギーのみが試料から分離されることができなければならず、そのためには、スパッタリングされない程度のエネルギーで行われることを特徴とする。好ましくは、前記不活性ガスのイオンの照射エネルギーは、1~100 eVであることができる。前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、及びキセノン中のいずれかの一つを含むガスであることができる。
【0018】
反応ガスと結合した原子一つが落ち出てくるので、原子単位で試料から研磨することができる。
【0019】
また、原子単位への分離をさらに確実にするために、前記試料の原子と結合された反応ガスのみ残るように前記反応ガス層の形成後、チャンバーを排気させるステップを含むことができる。
【0020】
前記第1の反応ガス層から前記第2の原子の分離ステップを繰り返して、研磨精度を増加させるのを含むことができる。
【0021】
前記第1の原子を分離するステップと前記第2の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第1の反応ガス層を除去するステップを含むことができる。前記第2の原子を分離するステップの後に、前記試料に残っている第2の反応ガス層を除去するステップを含むことができる。前記複数の反応ガス層を除去するステップは、前記複数の反応ガスと反応することができるガスのプラズマを照射することを含むことができる。前記プラズマは、好ましくは、水素プラズマであることができる。
【0022】
他の側面として、本発明は、前記原子層の研磨方法によるシリコンカーバイドの平坦化方法として、前記試料は、シリコンカーバイドであり、前記第1の反応ガスは、フッ素を含むガスであり、前記第2の反応ガスは、酸素であるシリコンカーバイドの平坦化方法を提供する。シリコンカーバイドの場合、酸素プラズマ処理を先に実行する場合、表面に露出されているシリコンの酸化によって表面粗さが増加する問題が発生することができる。これにより、第1の反応ガスとしてフッ素を含むガスを使用して、表面に露出されたシリコンを先に除去することが平坦化に有利である。
【0023】
他の側面として、本発明は、前記試料が位置するチャンバーと、前記チャンバー内部を真空状態に維持するか、前記試料の原子と結合された反応ガスのみ残るように前記反応ガス層の形成後、チャンバーを排気させるように構成されるポンプ50を含む前記試料の表面をスキャンして前記試料表面のピーク位置を測定する試料スキャン部と、及び前記試料の表面に向けて、前記反応ガス及び前記不活性ガスイオンを噴射するように構成される噴射部を含む原子層研磨のための装置を提供する。
【0024】
前記噴射部は、不活性ガスイオン噴射ノズル及び前記反応ガス噴射ノズルを含むことができる。前記噴射部は、前記試料に残っている反応ガス層を除去するための前記複数の反応ガスと反応することができるガスのプラズマ照射手段を含むことができる。前記噴射部は、前記ピーク点に移動するために、x軸、y軸、及びz軸に沿って移動可能であり、垂直方向を基準にθの角度に傾いられるように構成されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、シリコンカーバイドのような硬度が非常に高く、化学的に非常に安定的な試料の表面を原子単位で精密に研磨することができる。また、試料の表面を局部的に研磨することができる。噴射部が自由に移動されるので、噴射部が小さくても十分に必要な研磨点を研磨することができる。また、不活性ガスイオンを噴射するプラズマの直径を制御して、研磨領域を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1a】本発明の一実施例に係る研磨システムの模式図である。
【
図1b】
図1aに示された噴射部がX軸及びY軸に沿って移動する形態を例示した図面である。
【
図2】
図1のAとして、本発明の一実施例に係る噴射部の模式図である。
【
図3】
図1のAとして、本発明の一実施例に係る噴射部の模式図である。
【
図4】
図2及び
図3に示された噴射部の平面を示した図面である。
【
図5】実施例1の第1の反応ガスとして、酸素を使用し、第2の反応ガスとして、フッ素含有ガスを使用した方法によるSiCのエッチング後、原子顕微鏡の測定結果である。
【
図6】実施例2の第1の反応ガスとして、フッ素含有ガスを使用し、第2の反応ガスとして、酸素を使用した方法によるSiCのエッチング後、原子顕微鏡の測定結果である。
【
図7】実施例3の実施例2でプラズマエネルギーを調整した場合、局部的部分の表面粗さが変化しないことを示す原子顕微鏡の測定結果である。
【
図8】本発明の原子層エッチングを説明する模式図である。
【
図9】100 Wで実施例3を実行した条件で100 回のエッチングによる段差を示す。
【
図10】原子層エッチング方法に応じて、プラズマ電力を200 W、150 W、100 Wに調整してエッチングした場合、原子層エッチングサイクル(ALE cycle)当たりエッチング率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の方法で意味ない限り、複数の表現を含む。本出願では、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、構成要素等が存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や構成要素などが存在しないか付加されることがなしを意味するものではない。
【0028】
別に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持っている。一般的に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上持つ意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0029】
本発明の原子層研磨システムは、原子層研磨装置(Atomic layer polishing device)を利用するものであり、研磨を目的とする地点の表面から一つの原子層を除去し、精巧に目標しようとする研磨点を研磨することができるものである。これは、ion beam figuringと同様の概念や、物理的に除去するのではなく、原子を一層ずつ除去するものであり、より洗練された精密な研磨が可能である。
【0030】
図1aに、本発明の一実施例に係る研磨システムの模式図の一部を示した。ただし、
図1aは、本発明を説明するための目的にすぎず、本発明は、
図1aに開示され構成に限定されるものではない。また、本発明の構成要素のいくつかの構成は、
図1aに図示しなかったが、省略された構成要素であっても、必ず選択的に追加される構成要素に対応されるわけではなく、必要な構成要素に対応することができる。
【0031】
この目的のために、本発明の一実施例に係る、研磨システムは、チャンバー10と、前記チャンバー10内の上側に設置されて試料20を固定する試料固定部30と、前記チャンバー内に設置されて前記試料の表面をスキャンして前記試料表面の平坦度をスキャンする試料スキャン部と、前記チャンバー内の下側に設置され、3軸方向に移動可能であり、前記試料に向けて、少なくとも1種の反応ガス及び不活性ガスイオンを噴射する複数の噴射ノズル41、43、45を備えた噴射部40と、前記噴射部と連結されたガス供給源と、前記噴射部と連結された不活性ガスイオン供給源と、及び前記チャンバーに設置されて、前記チャンバーの内部気体を吸引し、外部に排気して、前記チャンバーの内部を真空状態に維持させるポンプ50とを含む。
【0032】
前記試料について、研磨対象である試料の種類は、反応ガスの適切な選択に基づいて、任意の試料が選択されることができる。本発明の以下の実施例は、シリコンカーバイドを中心に説明する。しかし、これは単に説明の目的のためであるだけで、本発明は、必ずしもシリコンカーバイド試料に限定されるものではない。
【0033】
前記研磨システムは、チャンバーを含む。前記チャンバーの形状または構成などは、特に限定されるものではなく、本出願が属する通常の技術分野で使用されるチャンバーであることができる。ただし、外部から密閉されて、内部が真空状態を維持する。
【0034】
前記チャンバーの内面上側には、試料固定部が備えられる。前記試料固定部は、前記試料を固定する治具(jig)である。ただし、本発明は、範囲内で任意な形に変形可能である。
【0035】
前記研磨システムは、固定された試料をスキャンする試料スキャン部を含む。スキャン部は、スキャナ(scanner)として、画像情報をコンピュータに入力する装置である。例えば、スキャンを目的とするオブジェクトをCCDカメラで1ライン分撮影して、その情報をデジタル信号でコンピュータに送信し、それを軸方向に走査して平面の画像情報を受け入れる。前記試料スキャン部は、前記デジタル情報を、後述する研磨制御部に送信する。また、数ナノ範囲で測定が可能で、非常に精密な研磨を行うことができるようにする。
【0036】
前記研磨制御部は、前記試料スキャン部から前記試料をスキャンして、形成された平坦情報データを送付されて、前記データを分析してピーク位置を導出して、後述する噴射部を制御して、本発明が目的しようとするところにより、前記試料を研磨する。
【0037】
前記研磨システムは、噴射部を含む。前記噴射部は、前記チャンバーの内面下側に設置され、3軸方向に沿って移動可能であり、前記試料を向けて、少なくとも1種の反応ガス及び不活性ガスイオンを噴射する複数の噴射ノズルを備える。
【0038】
図1bは、
図1aに示された噴射部がX軸及びY軸に沿って移動する形式を例示した図面である。
【0039】
前記噴射部は、前記試料の研磨が必要であると判断された研磨点を研磨するために、
図1a及び
図1bに示されたx軸、y軸、及びz軸のうち少なくとも一つ以上の軸に沿って移動可能であり、垂直方向の基準にθの角度で傾くことができる。上述した研磨制御部から研磨が必要な研磨点に信号またはデータを受信し、意図するところにより、x軸、y軸、及びz軸のうち少なくとも一つ以上の軸に沿って移動し、垂直方向を基準にθの角度で移動することが好ましい。特に、マイクロメートルの範囲で正確に移動及びポジショニングが可能で、非常に精密に研磨点に移動することができる。
【0040】
また、一実施例として、
図2及び
図3に噴射部の一部の構成と、試料と研磨プロセスの模式図を示し、
図4は、
図2及び
図3に示された噴射部の平面を示した図面である。
【0041】
前記
図2~
図4に示したように、前記噴射部40は、第1の反応ガス噴射ノズル43、第2の反応ガス噴射ノズル45、及び不活性ガスイオン噴射ノズル41を含むことができる。ここで、一例として、前記第1の反応ガス噴射ノズル43は、前記不活性ガスイオン噴射ノズル41と同軸であり、前記第1の反応ガス噴射ノズル43の直径は、前記不活性ガスイオン噴射ノズル41より大きい。また、前記第2の反応ガス噴射ノズル45は、前記第1の反応ガス噴射ノズル43と同軸であり、前記第2の反応ガス噴射ノズル45の直径は、前記第1の反応ガス噴射ノズル43より大きい形態を提供することができる。
【0042】
本発明の原子層エッチングを説明する模式図として、
図8を参照しながら以下のように説明する。
【0043】
前記第1の反応ガス噴射ノズル43を介して、第1の反応ガスが試料に向けて噴射される。前記第1の反応ガスは、フッ素、例えば、CF
4、SF
6またはNF
3であり、前記第2の反応ガスは、酸素を含むガスである。
図8では、CF
4にてフッ素含有ガスを例示している。フッ素含有ガスがシリコンカーバイド試料に向けて噴射されると、試料の表面に蒸着され、下記反応式1に従った反応が発生する。
【0044】
(反応式1)
【0045】
SiC + SF6 -> SiC-C + SiF4
【0046】
即ち、シリコンカーバイドのシリコン原子一つがフッ素原子と結合して、不活性気体イオン(Arイオン)によるスパッタリングにならない程度の弱い衝突によって、シリコンカーバイドから分離される。即ち、原子単位の一層が除去される。
【0047】
次に、酸素がシリコンカーバイド試料に向けて噴射されると、試料の炭素と結合して、表面に蒸着され、下記反応式2に従った反応が発生する。
【0048】
(反応式2)
【0049】
SiC + O2 -> SiC-Si + CO2
【0050】
即ち、シリコンカーバイドの炭素原子一つが酸素原子と結合して、不活性気体イオン(Arイオン)によるスパッタリングにならない程度の弱い衝突によって、シリコンカーバイドから分離される。即ち、原子単位の一層が除去される。
【0051】
前記不活性ガスイオンは、プラズマビームを利用して噴射されることが好ましい。加えて、前記プラズマビームの照射直径を制御して、ビームの照射量を制御することにより、前記研磨点の研磨範囲を制御することができる。特に、プラズマビームを様々な方法で制御可能であり、様々なプラズマビームを適用することができる。
【0052】
前記研磨システムは、前記噴射部と連結され、前記噴射部でガスを供給するガス供給源を含む。前記反応ガスが複数である場合、ガス供給源も複数備えることが好ましい。
【0053】
また、前記研磨システムは、前記噴射部と連結され、前記噴射部で不活性ガスイオンを供給する不活性ガスイオン供給源を含む。前記不活性ガスイオンが複数である場合、不活性ガスイオン供給源も複数備えることが好ましい。
【0054】
そして、前記研磨システムは、ポンプ50を備える。前記ポンプ50は、前記チャンバーの内部気体を吸引し、外部に排気して、前記チャンバーの内部を真空状態に維持させる。上述したように、試料の研磨時に生成される様々な気体を吸引して、外部に連結された排出口に内部気体を除去する。
【0055】
このような研磨システムを介して、研磨点を正確に分析して、精巧に試料を研磨することができる。また、研磨点が複数である場合、第1の研磨点を研磨し、前記噴射部が移動して第2の研磨点を研磨して、複数の研磨点を順次に研磨することができる。
【0056】
上記では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解できるだろう。
【0057】
[実施例1]
【0058】
ステップS1)シリコンカーバイド試料として、4"の直径及び350 μmの厚さの4H-SiCウェハ、Off 4°のシリコンカーバイドを用意し、これをチャンバー内に位置させた後、200 mTorrで排気した。
【0059】
ステップS2)その後、まずは、シリコンカーバイドの試料表面に酸素を15 秒間注入した後、酸素-炭素反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを30 秒間ポンピングして排気させた。
【0060】
ステップS3)その後、200 WのArプラズマからArイオンを前記酸素-炭素反応ガス層に15 秒間注入した。
【0061】
ステップS4)その後、水素プラズマを注入して残りの酸素-炭素反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した。
【0062】
ステップS5)その後、CF4ガスを試料表面に15 秒間注入した後、フッ素-シリコン反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを60 秒間ポンピングして排気させた。
【0063】
ステップS6)その後、200 WのArプラズマからArイオンを前記フッ素-シリコン反応ガス層に15 秒間注入した。
【0064】
ステップS7)その後、水素プラズマを注入して残りのフッ素-シリコン反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した。
【0065】
ステップS2)乃至ステップS7)を100 回繰り返した。その表面を原子顕微鏡で測定して、表面粗さを確認した。
図5に示されたように、局部的表面の粗さが増加することができることを示している。その理由は、最初に酸素工程を先に行うと、酸化されて局部的に厚くなることができるからと考えられ、原子レベルで粗さは増加したと考えられる。
【0066】
[実施例2]
【0067】
ステップS1)シリコンカーバイド試料として、4"の直径及350 μmの厚さの4H-SiCウェハ、Off 4°のシリコンカーバイドを用意し、これをチャンバー内に位置させた後、200 mTorrで排気した。
【0068】
ステップS2)その後、まずは、シリコンカーバイドの試料表面にCF4を15 秒間注入した後、フッ素-シリコン反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを30 秒間ポンピングして排気させた。
【0069】
ステップS3)その後、200 WのArプラズマからArイオンをフッ素-シリコン反応ガス層に15 秒間注入した。
【0070】
ステップS4)その後、水素プラズマを注入して残りの酸素-炭素反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した。
【0071】
ステップS5)その後、酸素ガスを試料表面に15 秒間注入した後、酸素-炭素反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを60 秒間ポンピングして排気させた。
【0072】
ステップS6)その後、200 WのArプラズマからArイオンを前記酸素-炭素反応ガス層に15 秒間注入した
【0073】
ステップS7)その後、水素プラズマを注入して残りの酸素-炭素反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した。
【0074】
ステップS2)乃至ステップS7)を100 回繰り返した。その表面を原子顕微鏡で測定して、表面粗さを確認した。
図6に示されたように、局部的表面の粗さが変化しないことを示している。ガス条件を変えて実験した場合にも、表面粗さが少量であるが増加されることが確認され、1サイクルに0.6 nmずつエッチングされ、これはArプラズマによるスパッタリングのためと考えられる。
【0075】
[実施例3]
【0076】
実施例2で以下のようにプラズマエネルギーを下げてスパッタリングを防ぎ、SiC原子層エッチングを行った。
【0077】
ステップS1)シリコンカーバイド試料として、4"の直径及び350 μmの厚さの4H-SiCウェハ、Off 4°のシリコンカーバイドを用意し、これをチャンバー内に位置させた後、200 mTorrで排気した。
【0078】
ステップS2)その後、まずは、シリコンカーバイドの試料表面にCF4を15 秒間注入した後、フッ素-シリコン反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを30 秒間ポンピングして排気させた。
【0079】
ステップS3)その後、150 WのArプラズマからArイオンを前記フッ素-シリコン反応ガス層に15 秒間注入した。
【0080】
ステップS4)その後、水素プラズマを注入して残りの酸素-炭素反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した。
【0081】
ステップS5)その後、酸素ガスを試料表面に15 秒間注入した後、酸素-炭素反応ガス層のみ試料表面に残るように、チャンバーを60 秒間ポンピングして排気させた。
【0082】
ステップS6)その後、150 WのArプラズマからArイオンを前記酸素-炭素反応ガス層に15 秒間注入した。
【0083】
ステップS7)その後、水素プラズマを注入して残りの酸素-炭素反応ガス層を除去し、30 秒間パージ(0m Torr)過程を実行した
【0084】
ステップS2)乃至ステップS7)を100 回繰り返した。その表面を原子顕微鏡で測定して、表面粗さを確認した。
図7に示されたように、150 Wで表面粗さは増加しないが、エッチング率は0.6 nmレベルであった。
【0085】
再び100 Wの条件で100 回エッチングを行い、測定した単体を
図9に示した。1 回のエッチングに略0.3 nmがエッチングされたことを確認できた。また、追加で、プラズマ電力を200 W、150 W、100 Wに調整してエッチングした場合、原子層エッチングサイクル(ALE cycle)あたりエッチング率を
図10を介して提供する。プラズマ電力が大きくなる場合、不活性粒子によるスパッタリング効果が発生するようになって、原子レベルのエッチング時に予想されるよりも高いエッチング率を見せるようになる。
本開示は、以下の実施形態を含む。
<1> 原子層の研磨方法において、
試料の表面をスキャンして前記試料表面のピーク位置を測定するステップと、
前記試料の材料の成分である第1の原子と結合することができる第1の反応ガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第1の反応ガスが前記第1の原子と結合した第1の反応ガス層を形成するステップと、及び
前記第1の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第1の反応ガスと結合された前記第1の原子を前記試料から分離させるステップとを含むことを特徴とする、前記原子層の研磨方法。
<2> 前記試料がお互いに異なる二つの元素を含む材料である場合、前記第1の反応ガスは、前記試料の第1の原子と結合するガスとして、前記第1の原子以外の他の原子より第1の原子と結合率が高いガスであり、前記第1の原子を分離するステップの後に、前記試料の材料の成分である第2の原子と結合することができるガスとして、前記第2の原子以外の他の原子より第2の原子と結合率が高いガスを前記測定されたピークの位置に向けて噴射して、前記ピークの表面に前記第2の反応ガスが前記第2の原子と結合した第2の反応ガス層を形成するステップと、及び
前記第2の反応ガス層が蒸着された前記ピーク位置にエネルギーをかけて、前記第2の反応ガスと結合された前記第2の原子を前記試料から分離させるステップとを含むことを特徴とする
<1>に記載の原子層の研磨方法。
<3> 前記第1の反応ガス層から前記第2の原子の分離ステップを繰り返して、平坦化の精度を増加させることを含むことを特徴とする
<2>に記載の原子層の研磨方法。
<4> 前記第1の原子を分離するステップと前記第2の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第1の反応ガス層を除去するステップを含むことを特徴とする
<2>に記載の原子層の研磨方法。
<5> 前記第1の原子を分離するステップと前記第2の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第1の反応ガス層を除去するステップを含み、及び
前記第2の原子を分離するステップと前記第1の反応ガス層を形成するステップとの間に、前記試料に残っている第2の反応ガス層を除去するステップを含むことを特徴とする
<3>に記載の原子層の研磨方法。
<6> 前記複数の反応ガス層を除去するステップは、前記複数の反応ガスと反応することができるガスのプラズマを照射することを含むことを特徴とする
<4>または<5>に記載の原子層の研磨方法。
<7> 前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスは、前記第1の原子及び第2の原子とそれぞれ結合して揮発性気体を形成することができるガスであることを特徴とする
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<8> 前記エネルギーをかけるには、不活性ガスのイオンを照射することを特徴とする
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<9> 前記不活性ガスのイオンの照射は、スパッタリングされない程度のエネルギーで行われることを特徴とする
<8>に記載の原子層の研磨方法。
<10> 前記不活性ガスのイオンの照射エネルギーは、1~100 eVであることを特徴とする
<9>に記載の原子層の研磨方法。
<11> 前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、及びキセノン中のいずれかの一つを含むガスであることを特徴とする
<8>に記載の原子層の研磨方法。
<12> 前記エネルギーをかけるには、電子を照射することを特徴とする、
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<13> 前記エネルギーをかけるには、光エネルギーを照射することを特徴とする、
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<14> 前記エネルギーは、不活性ガスの中性粒子を照射することを特徴とする、
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<15> 前記試料の原子と結合された反応ガスのみ残るように前記反応ガス層の形成後、チャンバーを排気させるステップを含むことを特徴とする、
<1>または<2>に記載の原子層の研磨方法。
<16> <2>の原子層の研磨方法によるシリコンカーバイドの平坦化方法において、
前記試料は、シリコンカーバイドであり、
前記第1の反応ガスは、フッ素を含むガスであり、
前記第2の反応ガスは、酸素であることを特徴とする、前記シリコンカーバイドの平坦化方法。
<17> 前記フッ素を含むガスによるステップを開始すると、前記酸素によるステップを実行することを特徴とする
<16>に記載のシリコンカーバイドの平坦化方法。
<18> <1>の原子層研磨のための装置において、
前記試料が位置するチャンバーと、
前記チャンバー内部を真空状態に維持するか、前記試料の原子と結合された反応ガスのみ残るように前記反応ガス層の形成後、チャンバーを排気させるように構成されるポンプを含む前記試料の表面をスキャンして前記試料表面のピーク位置を測定する試料スキャン部と、及び
前記試料の表面に向けて、前記反応ガス及び前記エネルギーを伝達するように構成される噴射部を含むことを特徴とする、前記原子層研磨のための装置。
<19> 前記噴射部は、エネルギー伝達ノズル及び前記反応ガス噴射ノズルを含むことを特徴とする
<18>に記載の原子層研磨のための装置。
<20> 前記噴射部は、前記試料に残っている反応ガス層を除去するための前記複数の反応ガスと反応することができるガスのプラズマ照射手段を含むことを特徴とする
<18>に記載の原子層研磨のための装置。
<21> 前記噴射部は、前記ピーク点に移動するために、x軸、y軸、及びz軸に沿って移動可能であり、垂直方向を基準にθの角度に傾いられるように構成されることを特徴とする
<18>に記載の原子層研磨のための装置。