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特許7106797Pdナノ粒子を付着させるための改善された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】Pdナノ粒子を付着させるための改善された方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20220720BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20220720BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20220720BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B01J37/34
B01J23/44 Z
B01J23/63 Z
B01J37/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019554824
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061066
(87)【国際公開番号】W WO2018202637
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】17168889.8
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゴイ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン, アラン
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093686(US,A1)
【文献】特開2017-049231(JP,A)
【文献】特表2003-513788(JP,A)
【文献】国際公開第2015/044410(WO,A1)
【文献】特開平10-185779(JP,A)
【文献】特開平04-245204(JP,A)
【文献】OKITSU, Kenji et al.,Sonochemical Preparation and Catalytic Behavior of Highly Dispersed Palladium nanoparticles on Alumina,Chem. Mater.,米国,American Chemical Society,2000年09月14日,Vol. 12, No. 10,pp. 3006-3011,DOI: 10.1021/cm0001915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属酸化物上にPdナノ粒子を付着させる方法であって、以下のステップを含む方法
(a)Pd塩を水に溶解させて、Pd塩の水溶液を調製するステップであって、
前記Pd塩がPdCl又はNaPdClであり、少なくとも1つの界面活性剤が前記水溶液に添加されるステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を30~50kHzの周波数、及び30~80℃の温度で音波処理するステップ、
(c)ステップ(b)の溶液に還元剤を添加するステップ、
(d)ステップ(c)の溶液に前記金属酸化物を添加するステップ
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属酸化物が粉末形態又は層形態であり、別の材料をコーティングするために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音波処理が超音波浴及び/又は水浸探触子を使用することによって実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤がギ酸ナトリウムである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤がポリエチレングリコールである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、金属酸化物上にPdナノ粒子を調製及び付着させるための改善された方法に関する。
【0002】
Pdナノ粒子を含む触媒は非常によく知られており、広く使用されている触媒である。
【0003】
このような触媒の中で非常に卓越した種は、いわゆるリンドラー触媒である。
【0004】
リンドラー触媒は炭酸カルシウム担体上に付着されたパラジウムからなる不均一触媒であり、種々の形態の鉛によっても処理されている。
【0005】
同様の触媒には他の種もあり、これらは、パラジウムナノ粒子のみが付着されており、鉛を含まない。
【0006】
金属酸化物(触媒系の一部である)にPdナノ粒子をどのようにして付着させる(=ドープする)かが知られている方法がある。従来技術から知られている付着方法は、例えば、以下のような不都合を有する:
・ Hによる還元(通常の一般的な方法である)によって形成されたPdナノ粒子は、サイズ及び形状に関して明確に定義されたナノ粒子ではない。
・ H還元のためにHガスがPd塩溶液中にバブリングされ、これは、非常に過剰の還元剤が使用されることを意味する。
・ H法では、PdClがPd源として使用される。この塩を水中に溶解させるために、水溶性Pd複合体の形成を目的としてNaMoOが必要とされ、これは、より長い調製時間及び触媒表面へのモリブデンの負荷を意味する。他のPd塩の使用も同様にうまくいかず、逆の場合も同じである。
【0007】
現在、Pdナノ粒子を付着させる方法が音波処理ステップを含む場合、これらの不都合は克服されることが見出された。
【0008】
従って、本発明は、金属酸化物(又は金属酸化物の混合物)上にPdナノ粒子を付着させるための方法に関し、本方法は音波処理ステップを含む。
【0009】
さらに、Pd塩溶液が界面活性剤を含む場合にも、これらの不都合は克服されることが見出された。
【0010】
従って、本発明は、金属酸化物(又は金属酸化物の混合物)上にPdナノ粒子を付着させるための方法に関し、本方法は、音波処理ステップも界面活性剤も含む。
【0011】
新規の方法の利点は、例えば、以下のことである:
・ 新規の方法を用いて形成されるPdナノ粒子はほぼ球形であり、サイズに関して明確に定義されている。
・ Hガスが使用されない。
・ 非常に高速かつ効率的な方法である。
【0012】
ドープされたパラジウムナノ粒子は表面上で互いに分離されていてもよいし、あるいは凝集して、種々のサイズのパラジウムナノ粒子のクラスタを形成していてもよい。
【0013】
Pdナノ粒子がドープされる金属酸化物は粉末形態(又は他の固体形態)であってもよいし、あるいは金属酸化物は層として使用されることも可能であり、これは、別の材料をコーティングするために使用される。金属酸化物(1つの金属からの)であることも、種々の金属酸化物の混合物であることも可能である。
【0014】
音波処理は、本発明に従う方法の必要不可欠な部分である。
【0015】
音波処理は、サンプル中の粒子を攪拌するために音響エネルギーを適用する行為である。超音波周波数(20kHz超)が通常使用され、超音波処理(ultrasonication又はultra-sonication)としても知られているプロセスがもたらされる。これは通常、超音波浴又は超音波プローブを用いて適用される。
【0016】
本発明に従う方法は、通常(そして好ましくは)、以下のステップを含む:
(a)任意選択的にポリエチレングリコールを添加して、Pd塩の水溶液を調製するステップ
(b)ステップ(a)の溶液を加熱し、溶液に音波処理を行うステップ
(c)還元剤、好ましくは、ギ酸塩の溶液をPd溶液に添加するステップ
(d)金属酸化物粉末を添加するステップ
(e)ステップ(d)で得られた懸濁液をろ過及び乾燥させるステップ。
【0017】
それにより、触媒として優れた特性を有する粉末が得られる。
【0018】
[ステップ(a)]
Pd塩を水(又は水性溶媒(水が少なくとも1つの他の溶媒と混合されていることを意味する))中に溶解させる。一般的に知られており、使用されている任意のPd塩を使用することができる。適切な塩はPdCl又はNaPdClである。1つのPd塩であることも、2つ以上のPd塩の混合物であることも可能である。さらに、少なくとも1つの界面活性剤を溶液に添加することが有利である。適切なのは、すなわちポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はグルコサミドである。
【0019】
[ステップ(b)]
ステップの溶液を通常高温まで加熱する。通常、溶媒(又は使用される溶媒混合物)の沸点よりも高い温度までは加熱しない。通常、30℃~80℃の間の温度まで加熱する。音波処理は通常30~50kHzの周波数で実行する。音波処理ステップの持続期間は、通常、少なくとも10分であり、好ましくは20分超(適切及び好ましい範囲は30~120分)である。音波処理ステップの最長持続期間は重要でない。音波処理ステップは、超音波浴又は水浸探触子の使用により実行することができる。又はさらに、両方の方法の組合せも可能である。
【0020】
[ステップ(c)]
ステップ(b)の溶液に還元剤を添加する。通常、ギ酸ナトリウム溶液である。しかしながら、他のギ酸塩(又はギ酸塩の混合物)も使用され得る。任意選択的に(代わりに、又は加えて)、Hガス、L-アスコルビン酸、及び/又はギ酸を添加することも可能である。
【0021】
[ステップ(d)]
ステップ(c)の溶液に金属酸化物粉末(又は金属酸化物粉末の混合物)を添加する。通常、反応混合物を攪拌する。
【0022】
[ステップ(e)]
最後に、ステップ(d)の懸濁液をろ過し、結果として得られるドープされた金属酸化物粉末を通常洗浄及び乾燥させる。
【0023】
一部のステップを数回実行できることは明白である。例えば、音波処理はステップ(b)だけでなく他のステップにおいても行うことが可能である。次に、そのようにして得られた触媒は、使用の前に活性化される。
【0024】
以下の実施例は、本発明を説明するのに役立つ。他に記載されなければ、割合は全て重量に関するものであり、温度は摂氏温度で示される。
【0025】
[実施例]
[酸化物粉末触媒の調製]
テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム(0.48mmol)を133mLのMillipore水中に溶解させ、PEG-MS40(3.2mmol)を添加した。溶液を60℃まで加熱し、この温度で音波処理を開始した。新たに調製したギ酸ナトリウム溶液(16mM、67mL)を添加した。溶液をこの温度でさらに60分間音波処理し、次に室温まで冷却した後、所望の酸化物粉末を添加した。
【0026】
Sasol Performance Chemicalからの以下の市販の混合酸化物を使用した:
PURALOX(登録商標)SCFa-160/Ce20(81.0%のAl/19.0%のCeO
PURALOX(登録商標)TH100/150Ti10(89.6%のAl/10.4%のTiO
PURALOX(登録商標)SCFa-190Zr20(78.8%のAl/21.2%のZrO
PURALOX(登録商標)Mg28/100(71.2%のAl/28.8%のMgO)。
【0027】
[アルキンからアルケンへの選択的な半水素化からの結果]
典型的な水素化実験において、125mLのオートクレーブ反応器に、40.0gの2-メチル-3-ブチン-2-オール(MBY)、所望の量の酸化物粉末触媒、及び6mgの硫黄含有触媒毒/mgPdを添加した。水素化反応の間、加熱/冷却ジャケットにより等温条件(338K)を保持した。反応器にガスエントレインメント攪拌機を取り付けた。窒素雰囲気下で、必要値の純粋な水素を供給した。窒素でパージした後、反応器を水素でパージし、所望の温度に加熱した。実験中、外部リザーバーから水素を供給することにより、反応器内の圧力(3.0バール)を保持した。反応混合物を1000rpmで攪拌した。MBYの最低転化率95%から始めて、液体サンプル(200μL)を反応器から周期的に取り出し、ガスクロマトグラフィ(HP6890シリーズ、GCシステム)により分析した。選択性は、全ての反応生成物と比較した、所望の半水素化生成物(2-メチル-3-ブテン-2-オール(MBE))の量として報告される。
【0028】
【表1】
【0029】
新規の方法を用いることによって作製された触媒は、より優れた選択性を示すことが分かる。