(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】膝保護用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/206 20110101AFI20220720BHJP
【FI】
B60R21/206
(21)【出願番号】P 2018169093
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】林 信二
(72)【発明者】
【氏名】袋野 健一
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 稔
(72)【発明者】
【氏名】尾方 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直紀
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0265262(US,A1)
【文献】特開2017-065431(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099669(WO,A1)
【文献】特開2008-120171(JP,A)
【文献】特開平06-199200(JP,A)
【文献】特開2011-213216(JP,A)
【文献】特開2008-126735(JP,A)
【文献】特開2004-203229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
、
前記ドア部が、
折り畳まれた前記エアバッグの下方から後方を覆うように、下壁部と後壁部とを有した断面L字状として、
前記下壁部の前部側に、開き時に撓んで、前記後壁部と前記下壁部の後部側とを後下方向に回転させるヒンジ部、を配設させ
ていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記下壁部が、前部付近で相互に連結される前下壁部と後下壁部とに分割されて、
前記ヒンジ部が、前記前下壁部の後方における前記後下壁部の前部付近に配設されていることを特徴とする
請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記下壁部と前記後壁部とが、相互の交差部位付近に、相互の交差角度を維持する変形抑制手段、を配設させていることを特徴とする
請求項1若しくは請求項2に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記後壁部が、前面側に、膨張時の前記エアバッグの突出方向を案内する案内部を設けて、配設されていることを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、膨張時の前記エアバッグに押されて接続状態を解除可能に、連結手段により連結されていることを特徴とする
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項6】
着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
、
折り畳まれた前記エアバッグの後方側を覆う後壁部が、
後下方向に回転して前記突出用開口を形成するドア本体部と、
該ドア本体部の上方に配置され、膨張する前記エアバッグに押されて後上方向に回転可能な補助ドア部と、
を備えて構成され、
前記ドア本体部の上端が、前記補助ドア部の下端に対し、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
ていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項7】
着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
、
前記収納部位の上方を覆う上壁部が、前記収納部位の後方を覆う後壁部と別体として、前記乗員の前方側の内装部材から前方に延設された内装延設部、から構成されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項8】
着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
、
前記収納部位の上方を覆う上壁部が、前記車体側部材側から後方に延びる車体側延設部、から構成されて
いることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項9】
着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続され
、
前記収納部位の下方と後方とを覆う下壁部と後壁部とが、前記車体側部材側に連結されるアンダカバー、から構成され
ていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
【請求項10】
折り畳まれた前記エアバッグの下方を覆う前記カバー材の下壁部が、車両のフロアとの間にスペースを空けて、前記フロアの上方で、前記フロアと対向するように配設されていることを特徴とする
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記収納部位の左右方向両側が、前記カバー材から延びる部位を配設させずに、開放されていることを特徴とする
請求項10に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座した乗員の脚部の前方に収納され、膨張用ガスの流入時、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膝保護用エアバッグ装置としては、乗員の膝を保護するエアバッグが、着座した乗員の脚部の前方に、折り畳まれて収納され、作動時、膨張用ガスを流入させて、収納部位から後上方向に向かって展開膨張していた(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグ装置では、膨張時のエアバッグに押されて開く部位が、薄肉のテア部で連結された上下のカバー部から構成されており、エアバッグの膨張時、テア部を破断させて、上下のカバー部が、それぞれ、上下に開き、開いた開口から、エアバッグが、上方へ展開膨張して、膝を受け止める構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の膝保護用エアバッグ装置では、テア部が、折り畳まれたエアバッグの後方側で左右方向に延びた一文字状に長く配設されており、破断時には、エアバッグの収納部位の内周側に、圧力が強く加わり、そして、破断の開裂が開始されるまで、突出用の開口側を除く収納部位の内周壁側には、圧力が加わることから、収納部位の周囲の部位は、耐圧性を有した強度が必要となり、重量増加を招き、軽量化が阻害されることとなっていた。なお、突出用の開口側を除く収納部位の内周壁の一部が、十分な強度を有していなければ、その一部が変形して、テア部の破断が遅れてしまい、迅速に、エアバッグを展開膨張させることができなくなることから、突出用の開口側を除く収納部位の内周壁側は、十分な強度が必要となっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張時のエアバッグを円滑に突出可能として、軽量化を図ることができる膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、着座した乗員の脚部の前方に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員の膝を受止可能に、収納部位から後上方向に向かって展開膨張するエアバッグ、を備えて構成される膝保護用エアバッグ装置であって、
折り畳まれた前記エアバッグが、
前記収納部位の周囲における前後と上下とに配置されるカバー材によって、覆われるとともに、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを内部に収納した状態として、前記インフレーターの車体側部材への固定手段を貫通させ、前記固定手段を使用して、前記インフレーターとともに、前記車体側部材に取付固定され、
前記カバー材が、
膨張時の前記エアバッグの突出用開口を形成するように、膨張する前記エアバッグに押されて後下方向に回転して開くドア部、を備えるととともに、
前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、作動時、インフレーターから供給される膨張用ガスにより、エアバッグが膨張すると、膨張するエアバッグに押されたドア部が後下方向に回転して開き、突出用開口が形成されることから、膨張するエアバッグが、突出用開口を経て、後上方向に向かって展開膨張し、乗員の膝を受止可能となる。そして、ドア部が、テア部でなく、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態で、先端を、対向するカバー材の部位に接続させており、ドア部が開く際には、破断部位を発生させずに、所定の分離面の接続部位を、単に、分離させるだけの小さな押圧力で、ドア部を開くことができて、ドア部を除くカバー材の部位が、耐圧性を考慮する高い強度を有さずに構成できて、軽量化を図ることができる。
【0008】
したがって、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、膨張時のエアバッグを円滑に突出可能として、軽量化を図ることができる。
【0009】
そして、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、折り畳まれた前記エアバッグの下方を覆う前記カバー材の下壁部が、車両のフロアとの間にスペースを空けて、前記フロアの上方で、前記フロアと対向するように配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、着座した乗員の前方における内装部材の下端におけるフロアの上方に、膝保護用エアバッグ装置が配設されることとなって、後下方向に回転して開くドア部の先端とその先端の接続される部位との接続部位を、乗員が目視し難く、外観意匠を考慮せずに構成できて、簡便な接続構造により、ドア部の先端を対向するカバー材の部位と接続させることができる。また、エアバッグ装置が、左右方向の幅寸法を大きくとっても、周辺部品との干渉が少ない内装部材の下端に搭載されることから、エアバッグの折畳形状として、左右方向の幅寸法を大きく確保でき、左右方向の幅寸法を狭くする折畳工程を少なくできて、折畳工数を低減でき、また、折畳時の折りも少なくできて、エアバッグの展開膨張自体を素早く完了でき、エアバッグが、迅速に、展開膨張を完了させて、乗員の膝を受け止めることができる。
【0011】
また、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記ドア部の先端が、対向する前記カバー材の部位に対して、膨張時の前記エアバッグに押されて接続状態を解除可能に、連結手段により連結されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、ドア部の先端が、対向するカバー材の部位に対して、連結手段により連結されており、エアバッグの膨張時以外では、ドア部を開き難くできて、エアバッグの収納部位内へのドア部付近からの異物の進入を、防止できる。
【0013】
また、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記ドア部が、折り畳まれた前記エアバッグの下方から後方を覆うように、下壁部と後壁部とを有した断面L字状として、下壁部の前部側に、開き時に撓んで、前記後壁部と前記下壁部の後部側とを後下方向に回転させるヒンジ部を配設させていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、膨張するエアバッグに押されて開くドア部が、折り畳まれたエアバッグの収納部位の下方と後方とを覆う下壁部と後壁部とから構成されて、下壁部の前部側のヒンジ部を回転中心として、後下方向に回転して開くことから、大きな突出用開口が形成されるとともに、ドア部の先端が、後壁部の上端となって、ドア部の開き時、対向するカバー材の部位から、後壁部に沿うように、下方に離脱する挙動となり、膨張時のエアバッグの圧力を下壁部が受けて、ドア部の先端が、対向するカバー材の部位から、容易に離脱でき、テア部の破断と相違することと相俟って、一層、円滑に、突出用開口を形成することができる。
【0015】
この場合、前記下壁部が、前部付近で相互に連結される前下壁部と後下壁部とに分割されて、前記ヒンジ部が、前記前下壁部の後方における前記後下壁部の前部付近に配設されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、下壁部における前下壁部と後下壁部との連結位置を調整して、ヒンジ部となる後下壁部の前部付近の配置位置を、調整することができ、ドア部の開き時における突出用開口の幅寸法等を、任意に、調整可能となる。
【0017】
また、ドア部が、下壁部と後壁部とを有した断面L字状としている場合には、前記下壁部と前記後壁部とが、相互の交差部位付近に、相互の交差角度を維持する変形抑制手段、を配設させていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、ドア部の開き時、変形抑制手段によって下壁部と後壁部との交差角度が維持されることから、後壁部の前面側を、展開膨張する際のエアバッグのガイド面として使用できて、エアバッグの上方への展開膨張を円滑にガイドすることができる。
【0019】
また、前記後壁部は、前面側に、膨張時の前記エアバッグの突出方向を案内する案内部を設けて、配設されていてもよい。
【0020】
このような構成でも、ドア部の開き時、後壁部の前面側に設けられた案内部により、エアバッグが、突出方向を案内されて、円滑に、展開膨張することができる。
【0021】
また、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、折り畳まれた前記エアバッグの後方側を覆う後壁部が、
後下方向に回転して前記突出用開口を形成するドア本体部と、
該ドア本体部の上方に配置され、膨張する前記エアバッグに押されて後上方向に回転可能な補助ドア部と、
を備えて構成され、
前記ドア本体部の上端が、前記補助ドア部の下端に対し、破断しない分離面を有し、かつ、開き可能な状態として、接続されていてもよい。
【0022】
このような構成では、突出用開口を形成する後壁部が、上下に二分されていることから、ドア本体部の先端と補助ドア部の先端とのそれぞれの回転移動量を少なくして、大きな突出用開口を確保できて、迅速に、エアバッグを後上方向に向かって展開膨張させることができる。
【0023】
また、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記収納部位の上方を覆う上壁部が、前記収納部位の後方を覆う後壁部と別体として、前記乗員の前方側の内装部材から前方に延設された内装延設部、から構成されていたり、あるいは、前記車体側部材側から後方に延びる車体側延設部、から構成されていてもよい。
【0024】
あるいは、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、前記収納部位の下方と後方とを覆う下壁部と後壁部とが、前記車体側部材側に連結されるアンダカバー、から構成されていてもよい。
【0025】
すなわち、折り畳まれたエアバッグの収納部位を囲うカバー材としては、折り畳んだエアバッグを収納する部位を囲っている車両側の部材を利用して、構成してもよい。
【0026】
さらに、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、折り畳まれた前記エアバッグの下方を覆う前記カバー材の下壁部が、車両のフロアとの間にスペースを空けて、前記フロアの上方で、前記フロアと対向するように配設されていれば、前記収納部位の左右方向両側が、前記カバー材から延びる部位を配設させずに、開放されていてもよい。
【0027】
上記のように、膝保護用エアバッグ装置が、着座した乗員の前方における内装部材の下端におけるフロアの上方に、配設されていれば、左右方向の幅寸法を大きくとっても、周辺部品との干渉が少ないことから、エアバッグの折畳形状として、左右方向の幅寸法を狭くする折畳工程を少なくして、左右方向の幅寸法を大きくしても、容易に、エアバッグを収納でき、かつ、左右に広がる展開膨張を考慮しなくともよくなり、そのため、収納部位の左右の両側を開放していても、エアバッグは、支障無く、後上方向に向かって展開膨張することができ、エアバッグの展開膨張自体を素早く完了できて、迅速に、乗員の膝を受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図2】第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略正面図である。
【
図4】第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置に使用するエアバッグの折畳工程を説明する図である。
【
図5】第2実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図6】第3実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図7】第3実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図8】第4実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図9】第4実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図10】第5実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図11】第5実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図12】第6実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図13】第6実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図14】第7実施形態の膝保護用エアバッグ装置の車両搭載状態の概略縦断面図である。
【
図15】第7実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図16】第8実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図17】第9実施形態の膝保護用エアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図18】エアバッグの折畳工程の変形例を説明する図である。
【
図19】エアバッグの折畳工程を他の変形例を説明する図である。
【
図20】インフレーターの変形例を示すエアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図21】インフレーターの他の変形例を示すエアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1は、
図1~3に示すように、着座した乗員としての運転者Mの膝Kを保護できるように、運転者Mの脚部Lの前方、すなわち、運転者Mの車両前方側であるステアリングコラム5の下方、詳しくは、車両の内装部材としてのインストルメントパネル(インパネ)8の下端8aに配設されるとともに、フロアFとの間にスペースSを空けて、フロアFの上方に配設されている。
【0030】
なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、膝保護用エアバッグ装置AB1を車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後に対応するものである。
【0031】
ステアリングコラム5は、
図1,3に示すように、ステアリングホイール4に連結されるステアリングシャフト6と、ステアリングシャフト6を覆うコラムカバー7と、を備えて構成される。コラムカバー7は、略四角筒形状等の合成樹脂製として、ステアリングシャフト6の軸方向に沿って、後上向きに配設され、下面7aを、略長方形形状とし、車両前後方向で、後上がりの曲面状に形成されている。
【0032】
膝保護用エアバッグ装置AB1は、
図1,2に示すように、折り畳まれたエアバッグ16、エアバッグ16に膨張用ガスを供給するインフレーター10、折り畳まれたエアバッグ16の収納部位20の少なくとも上下と前後とを囲うカバー材21と、を備えて構成されている。なお、エアバッグ16の収納部位20は、エアバッグ装置AB1の車両搭載部位と略一致するもので、インパネ8の下端8aに配設されている。
【0033】
エアバッグ16は、
図1~3の二点鎖線に示すように、膨張完了時の上端16aが、コラムカバー7の下面7aに到達して膨張を完了させるように構成され、膨張完了形状を略長方形板状としている。エアバッグ16は、膨張完了時の下端16b側の内部にインフレーター10を配設させ、インフレーター10のボルト13により、ボディ1側の図示しないインパネリンホースから延びる車体側部材としてのブラケット2に、取付固定されている。エアバッグ16は、
図4に示すように、インフレーター10を挿入させる開口18と、インフレーター10のボルト13を貫通させる取付孔17と、を備えている。
【0034】
インフレーター10は、左右方向に延びる円柱状の本体11と、本体11を挟持して保持するリテーナ12と、を備えて構成される。本体11には、作動時に膨張用ガスを吐出する複数の図示しないガス吐出口が配設されている。リテーナ12は、前方側に突出する複数(実施形態では2本)のボルト13を備えている。各ボルト13は、インフレーター10とエアバッグ16とを車体側部材としてのブラケット2に取付固定する固定手段を構成するものであり、エアバッグ16の取付孔17から突出して、既述のブラケット2の取付孔2aに挿通され、ナット14が締結されることにより、インフレーター10と折り畳まれたエアバッグ16とが車体側部材としてのブラケット2に取付固定される。なお、実施形態の場合、カバー材21の一部(下側部材22)も、インフレーター10やエアバッグ16とともに、エアバッグ組付体ASとして、一体的に、ボディ1側のブラケット2に取付固定されることとなる。
【0035】
カバー材21は、収納部位20の下方を覆う下壁部30、収納部位20の後方を覆う後壁部40、収納部位20の上方を覆う上壁部50、及び、収納部位20の前方を覆う前壁部55、を備えて構成されている。下壁部30は、既述したように、下方のフロアFとスペースSを空けて、フロアFと対向するように、配設されている。また、第1実施形態の場合、カバー材21は、オレフィン系可塑性エラストマー等の合成樹脂製としている。
【0036】
また、第1実施形態では、膨張するエアバッグ16に押されて開くドア部60が、後壁部40と下壁部30とから構成されて、下壁部30の前部30a側に配設されるヒンジ部65を回転中心として、後下方向に回転して開き、開き前の後壁部40側に、エアバッグ16の突出用開口67を形成する構成としている。
【0037】
ドア部60の先端60aは、上壁部50の後端50aに接続されている。但し、先端60aの接続構造は、上壁部50の後端50a付近の凹部77に、先端60aの凸部76を嵌めて連結させる連結手段75を設けた構造として、予め、ドア部60の先端60aと上壁部50とは、相互に別部材とした分離面62を設けて、接続されている。また、連結手段75としての凸部76を凹部77に嵌めて、ドア部60の先端60aを、対向する上壁部50の後端50aに接続させる第1実施形態の構造では、膨張するエアバッグ16にドア部60が押された際、ドア部60が、ヒンジ部65を回転中心として、後下方向に回転しようとし、容易に、凸部76が、凹部77から離脱できる嵌合形状としている。一方、単に、後壁部40を前方に押圧しても、凸部76が凹部77に嵌合されており、後壁部40の上端40a(60a)は、前方に移動せず、無用な開口は形成されず、収納部位20内への異物の混入は、防止される。
【0038】
なお、連結手段75の凸部76と凹部77とは、ドア部60の先端60aと上壁部50の後端50aとに対応して、左右方向に沿って、断続的に配設されているが、左右方向に沿って、連続的に形成してもよい。
【0039】
また、ドア部60の先端60aは、上壁部50の後端50aに対して、若干、前方側の奥まった位置に、接続されており、接続位置自体を、運転者Mから目視し難い位置に配設されている。
【0040】
さらに、第1実施形態では、下壁部30が、前壁部55の下端55bから後方へ延びる前下壁部31と、後壁部40の下端40bから前方に延びる後下壁部32と、に二分割されており、前壁部55の近傍の部位で、前下壁部31と後下壁部32とが、ボルト90とナット91を利用して、結合されており、前下壁部31の近傍の後下壁部32の前部32a付近に、ドア部60の開き時のヒンジ部65が、配設されている。ヒンジ部65は、周縁の部位に比べて、薄肉に形成されて、撓み易く構成されている。
【0041】
また、折り畳んだエアバッグ16の収納部位20の上方を覆う上壁部50は、第1実施形態の場合、インパネ8の下端8aで前方に延びるように配設された内装延設部8bから構成されている。換言すれば、カバー材21は、第1実施形態の場合、内装延設部8bからなる上側部材26と、下側部材22と、から構成されて、下側部材22が、前壁部55と前下壁部31とからなる前側部材23と、後下壁部32と後壁部40とからなる後側部材24と、を備えて構成されている。
【0042】
さらに、第1実施形態では、後壁部40と下壁部30との交差部位33付近に、後壁部40の前面40cと下壁部30との上面30cとを連結するように、三角板状の補強リブ69が、左右方向に沿って、複数配設されている(
図3参照)。補強リブ69は、後壁部40と下壁部30との交差角度θを維持するものであり、さらに、上面69aを、展開膨張時のエアバッグ16を滑らせて、後上方向に向かうエアバッグ16の展開膨張を案内可能な案内部70、としている。
【0043】
なお、第1実施形態では、折り畳まれたエアバッグ16の収納部位20の左右は、カバー材21が配設されておらず、開放状態としており、収納部位20の断面形状と同形状の四角形の開口28を、左右両側に露出させている(
図3参照)。
【0044】
第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、車両に搭載する際、まず、
図4のA,Bに示すように、開口18を利用して、エアバッグ16内にインフレーター10を収納して、取付孔17からボルト13をエアバッグ16外に突出させ、エアバッグ16を、上端16a側を下端16b側に接近させるように、ロール折りして、折り畳み、ついで、折り崩れを防止する破断可能な図示しないラッピング材で包む。また、下壁部30の前下壁部31と後下壁部32とは、ボルト90とナット91とを利用して、結合させておく。
【0045】
そして、折り畳んだエアバッグ16から突出するボルト13を、前壁部55の挿通孔55aに挿通させて、カバー材21の前壁部55、下壁部30、及び、後壁部40と、折り畳んだエアバッグ16と、インフレーター10と、を一体的に組み付けたエアバッグ組付体AS、を形成する。ついで、車両の制御回路から延びるインフレーター10の作動用の図示しないリード線をインフレーター10の本体11に接続させつつ、ドア部60の先端60aの凸部76を、車両に搭載済みのインパネ8の凹部77に嵌めるとともに、インフレーター10の各ボルト13を、ブラケット2の取付孔2aに挿通させて、ナット14止めすれば、エアバッグ組付体ASを、車体側部材としてのブラケット2に取付固定できて、膝保護用エアバッグ装置AB1を車両に搭載することができる。
【0046】
膝保護用エアバッグ装置AB1を車両に搭載した後、インフレーター10が作動されれば、インフレーター10の本体11から吐出される膨張用ガスにより、エアバッグ16が膨張して、膨張するエアバッグ16に押されたドア部60が、
図1,2の二点鎖線に示すように、ヒンジ部65を回転中心として、後下方向に回転して開き、突出用開口67が形成されることから、膨張するエアバッグ16が、突出用開口67を経て、後上方向に展開膨張し、乗員としての運転者Mの膝Kを受止可能となる。そして、ドア部60が、テア部でなく、破断しない分離面62を有し、かつ、開き可能な状態で、先端60aを、対向するカバー材21の部位(上壁部50の後端)50aに接続させており、ドア部60が開く際には、破断部位を発生させずに、所定の分離面62の接続部位を、単に、分離させるだけの小さな押圧力で、ドア部60を開くことができて、ドア部60を除くカバー材21の部位としての上壁部50や前壁部55が、耐圧性を考慮する高い強度を有さずに構成できて、軽量化を図ることができる。
【0047】
したがって、第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、膨張時のエアバッグ16を円滑に突出可能として、軽量化を図ることができる。
【0048】
そして、第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、折り畳まれたエアバッグ16の下方を覆うカバー材21の下壁部30が、車両のフロアFとの間にスペースSを空けて、フロアFの上方で、フロアFと対向するように配設されている。
【0049】
そのため、第1実施形態では、着座した乗員としての運転者Mの前方における内装部材としてのインパネ8の下端8aにおけるフロアFの上方に、膝保護用エアバッグ装置AB1が配設されることとなって、後下方向に回転して開くドア部60の先端60aとその先端60aの接続される部位(上壁部50の後端)50aとの接続部位を、運転者Mが目視し難く、特に、第1実施形態では、先端60aを後端50aより若干前方の奥まった位置に配設させて、接続位置自体を目視し難くしており、外観意匠を考慮せずに構成できて、簡便な接続構造により、ドア部60の先端60aを、対向するカバー材21の部位としての上壁部50の後端50aに接続させることができる。また、エアバッグ装置Mが、左右方向の幅寸法を大きくとっても、周辺部品との干渉が少ないインパネ8の下端8aに搭載されることから、
図4のBに示すように、エアバッグ16の折畳形状として、左右方向の幅寸法を大きく確保でき、左右方向の幅寸法を狭くする折畳工程を少なくできて(第1実施形態では無くすことができて)、折畳工数を低減でき、また、折畳時の折りも少なくできて、エアバッグ16の展開膨張自体を素早く完了でき、エアバッグ16は、迅速に、展開膨張を完了させて、運転者Mの膝Kを受け止めることができる。
【0050】
また、第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、ドア部60の先端60aが、対向するカバー材21の部位である上壁部50の後端50aに対して、膨張時のエアバッグ16に押されて接続状態を解除可能に、相互に嵌合する凸部76と凹部77とからなる連結手段75により連結されている。
【0051】
そのため、第1実施形態では、ドア部60の先端60aが、対向するカバー材の部位における上壁部50の後端50aに対して、連結手段75により連結されており、エアバッグ16の膨張時以外では、ドア部60を開き難くできて、エアバッグ16の収納部位20内へのドア部60付近からの異物の進入を、防止できる。
【0052】
また、第1実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、ドア部60が、折り畳まれたエアバッグ16の下方から後方を覆うように、下壁部30と後壁部40とを有した断面L字状として、下壁部30の前部30a側に、開き時に撓んで、後壁部40と下壁部30の後部30b側とを後下方向に回転させるヒンジ部65を配設させている。
【0053】
そのため、第1実施形態では、膨張するエアバッグ16に押されて開くドア部60が、折り畳まれたエアバッグ16の収納部位20の下方と後方とを覆う下壁部30と後壁部40とから構成されて、下壁部30の前部30a側のヒンジ部65を回転中心として、後下方向に回転して開くことから、大きな突出用開口67が形成されるとともに、ドア部60の先端60aが、後壁部40の上端40aとなって、ドア部60の開き時、対向するカバー材21の部位である上壁部50の後端50aから、後壁部40に沿うように、下方に離脱する挙動となり、膨張時のエアバッグ16の圧力を下壁部30が受けて、ドア部60の先端60aが、対向するカバー材21の上壁部50の後端50aから、容易に離脱でき、テア部の破断と相違することと相俟って、一層、円滑に、突出用開口67を形成することができる。
【0054】
さらに、第1実施形態では、下壁部30が、前部30a付近で相互に連結される前下壁部31と後下壁部32とに分割されて、ヒンジ部65が、前下壁部31の後方における後下壁部32の前部32a付近に配設されている。
【0055】
このような構成では、下壁部30における前下壁部31と後下壁部32との連結位置を調整して、ヒンジ部65となる後下壁部32の前部32a付近の配置位置を、調整することができ、ドア部60の開き時の突出用開口67の開口幅OWやドア部60の回転半径R等を、任意に、調整可能となる。
【0056】
例えば、
図5に示す第2実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB2では、前下壁部31Aを、第1実施形態の前下壁部31より長くし、前下壁部31Aに対してボルト90とナット91とにより連結される後下壁部32Aのヒンジ部65Aを、第1実施形態のヒンジ部65より後方位置に配置させている。
【0057】
なお、この第2実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB2では、下壁部30Aの前下壁部31Aと後下壁部32Aとの長さの割合が第1実施形態と異なるだけで、カバー材21の後壁部40、上壁部50、及び、前壁部55や、エアバッグ16やインフレーター10は、第1実施形態と同様としている。
【0058】
この第2実施形態では、ヒンジ部65Aを、第1実施形態の配置位置より、後方にずらしており、作動時、突出用開口67Aの開口幅OW、換言すれば、閉状態から開状態となるドア部60Aの先端60aの上下方向の幅寸法OWが狭められ、かつ、ドア部60Aの回転半径Rも小さくなって、その狭められた突出用開口67Aからエアバッグ16が展開膨張する挙動となる。そのため、例えば、エアバッグ16の展開膨張初期に、ドア部60Aの周囲に干渉物がある場合には、好適に、エアバッグ16を展開膨張させることができる。
【0059】
また、第1実施形態では、下壁部30と後壁部40とが、相互の交差部位33付近に、相互の交差角度θを維持する変形抑制手段としての複数の補強リブ69、を配設させている。
【0060】
そのため、第1実施形態では、ドア部60の開き時、変形抑制手段の補強リブ69によって下壁部30と後壁部40との交差角度θが維持されることから、後壁部40の前面40c側を、展開膨張する際のエアバッグ16のガイド面として使用できて、エアバッグ16の上方への展開膨張を円滑にガイドすることができる。
【0061】
さらに、後壁部40は、前面40c側に、膨張時のエアバッグ16の突出方向を案内する案内部70を設けて、配設されている。第1実施形態の案内部70は、補強リブ69の斜め上方向に延びる上面69aから構成されている。
【0062】
このような構成でも、ドア部60の開き時、後壁部40の前面40c側に設けられた案内部70により、エアバッグ16が、突出方向を斜め上方向に案内されて、円滑に、展開膨張することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、ドア部が後下方向に開く一枚扉タイプとしたが、
図6,7に示す第3実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB3のように、ドア部を上下に開く2枚扉タイプとしてもよい。すなわち、折り畳まれたエアバッグ16の後方側を覆う後壁部40Bが、下側部41と上側部42との上下二分割されて、下側部41を含んだ部位が、後下方向に回転して突出用開口67Bを形成するドア本体部44として構成され、ドア本体部44の上方の上側部42の部位が、膨張するエアバッグ16に押されて後上方向に回転可能な補助ドア部46として、構成されている。そして、ドア本体部44の上端44aが、補助ドア部46の下端46bに対し、破断しない分離面62Bを有し、かつ、開き可能な状態として、接続されている。第3実施形態の場合、ドア本体部44の上端44aと補助ドア部46の下端46bとの連結手段75Bは、相互に、離脱可能に係合する鉤状のフック79,80から形成されている。また、補助ドア部46は、上壁部50Bの後端50aとの間に、薄肉のヒンジ部47を配設させている。ドア本体部44は、後壁部40Bの下端40b側と下壁部30Bとを含めた断面L字形としており、下壁部30Bの前部30a側のヒンジ部65Bにより、後下方向に開く構成としている。なお、鉤状のフック79,80は、左右方向に沿って、断続的に配設してもよいし、連続的に配設してもよい。
【0064】
この第3実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB3では、作動時、突出用開口67Bを形成する後壁部40Bが、上下に二分されていることから、ドア本体部44の先端(上端)44aと補助ドア部46の先端(下端)46bとのそれぞれの回転移動量を少なくして、大きな突出用開口67Bを確保できて、迅速に、エアバッグ16を後上方向に向かって展開膨張させることができる。
【0065】
なお、この第3実施形態のカバー材21Bは、下壁部30B及び後壁部40Bの下側部41、からなる下側部材22bと、前壁部55B、上壁部50B、及び、後壁部40Bの上側部42、からなる上側部材26と、から構成されており、前端側のフランジ部22a,26a相互を、ボルト93とナット94とを利用して、結合し、また、連結手段75Bのフック79,80相互を係合させて、形成されている。
【0066】
また、ドア部の先端と対向するカバー材の部位との接続構造としては、
図8,9に示す第4実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB4のように、ドア部60Cの先端60aに、上壁部50Cの後端50aに設けた係止孔83に離脱可能に挿入係止される係止突起82、を設けて、係止突起82と係止孔83とから、ドア部60Cの先端60aと対向するカバー材21Cの部位(上壁部50Cの後端)50aとの連結手段75C、を構成している。連結手段75Cの係止突起82と係止孔83とは、ドア部60Cの先端60aと上壁部50Cの後端50aとにおいて、左右方向に沿って、断続的に配設されており、連結手段75Cの配設されていない部位では、先端60aが、平坦面として、上壁部50Cの平坦な下面に、当接されている。勿論、左右方向に沿って、連続的に、連結手段75Cを配設してもよい。
【0067】
この膝保護用エアバッグ装置AB4では、作動時、インフレーター10からの膨張用ガスによって、エアバッグ16が膨張すれば、ドア部60Cが膨張するエアバッグ16に押されて、係止突起82が係止孔83から抜け、ドア部60Cが、ヒンジ部65Cを回転中心として、後下方向に回転し、突出用開口67Cが形成されて、エアバッグ16が、突出用開口67Cを経て、後上方向に展開膨張することとなる。勿論、このような連結手段75Cでも、係止突起82と係止孔83とは、別体とした分離面62Cを設けて、テア部のような破断を起こすこと無く、分離することとなる。
【0068】
なお、この第4実施形態のカバー材21Cでは、第3実施形態と同様に、収納部位20の周囲(下方と後方)の下壁部30Cと後壁部40Cが一体的な下側部材22Cとして形成されて、収納部位20の周囲(前方と上方)の前壁部55Cと上壁部50Cとが一体的な上側部材26Cとして形成されて、前部側のフランジ部22a,26a相互を、ボルト93とナット94とを利用して、結合されて、カバー材21Cが形成されている。
【0069】
また、ドア部の先端と対向するカバー材の部位との接続状態では、
図10,117に示す第5実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB5のように、単に、当接する状態としてもよい。
【0070】
すなわち、ドア部60Dの先端60aが、上壁部50Dの後端50aにおける僅かに前側の奥まった位置(運転者Mが目視し難い位置)に対して、単に、平面的な分離面62Dとして、当接しているだけであり、エアバッグ16が膨張すれば、ドア部60Dが、先端60aを上壁部50Dの下面50bから離脱させつつ、後下方向に回転して、突出用開口67Dを形成することから、エアバッグ16が、突出用開口67Dを経て、後上方向に展開膨張することとなる。
【0071】
なお、この第5実施形態のカバー材21Dは、上壁部50Dが、第1実施形態と同様に、内装部材8の下端8a側から前方に延設された内装延設部8bから構成されて、内装延設部8bからなる上側部材26Dと、前壁部55D、下壁部30D、及び、後壁部40からなる下側部材22Dと、から構成されている。また、この第5実施形態では、ドア部60Dが、後壁部40Dの下端40bに配置された薄肉のヒンジ部65Dを回転中心として、後下方向に開く構成としており、このように、ドア部60Dは、後壁部40Dのエリアにだけ、配設されていてもよい。
【0072】
また、カバー材としては、折り畳んだエアバッグ16やインフレーター10を取り付ける前から、予め、搭載部材付近に配設されている車体側部材から延びる部材を、利用して構成してもよい。すなわち、折り畳まれたエアバッグの収納部位を囲うカバー材としては、折り畳んだエアバッグを収納する部位を囲っている車両側の部材を利用して、構成してもよい。
【0073】
例えば、
図12,13に示す第6実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB6のように、カバー材21Eとしての上壁部50Eを、車体側部材としてのブラケット2から後方へ延びる車体側延設部3から構成してもよい。また、カバー材21Eとしての下壁部30Eを、インパネ8の下端8a側に配設されるアンダカバー9から構成してもよい。このアンダカバー9は、インパネリンホースから延びる車体側部材としてのブラケット2Dに、ボルト96とナット97とを利用して、取付固定されている。さらに、カバー材21Eの前壁部55Eも、車体側部材としてのブラケット2自体から構成されている。
【0074】
なお、第6実施形態のアンダカバー9は、カバー材21Eの下壁部30Eと後壁部40Eとを構成し、さらに、前部側の薄肉のヒンジ部65Eを回転中心として、後下方向に開くドア部60Eも構成している。
【0075】
また、ドア部60Eの先端60aは、対向するカバー材21Eの上壁部50Eの後端50aに対して、分離面62Eを設けて、接続されている。この接続部位には、エアバッグ16の押圧時には容易に分離するものの、エアバッグ16の非押圧時に不用意に分離しないように、連結手段75Eとしての接着剤85を配設させている。
【0076】
さらに、第1実施形態では、ドア部60が開いて形成されるエアバッグ16の突出用開口67を、カバー材21の後壁部40側に配設した場合を示したが、
図14,15に示す第7実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB7のように、カバー材21Fの下壁部30Fに、ドア部60Fを配設させてもよい。カバー材21Fは、上壁部50Fと後壁部40Fとが、内装部材8から延設された内装延設部8b,8cから形成されて、エアバッグ16の展開膨張時、下壁部30Fのドア部60Fが、前壁部55Fの下端55b側のヒンジ部65Fを回転中心として、後下方向に開いて、下壁部30Fの下方側に、突出用開口67Fを形成する。そのため、エアバッグ16は、下方に展開した後、後上方向に展開して、運転者Mの膝Kの前方側に展開膨張することとなる。なお、符号53の部材は、上壁部50Fと後壁部40Fとを連結する三角板状の補強リブである。
【0077】
また、第1実施形態では、カバー材21の上壁部50が、内装部材としてのインパネ8の下端8aで前方に延びる内装延設部8bから構成されているが、
図16に示す第8実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB8のように、カバー材21Gの上壁部50Gの後端50a側を、斜め上方向に延ばして、その下面をエアバッグ16の展開膨張時に上方に展開し易いガイド面50bとするように構成してもよい。
【0078】
この第8実施形態では、エアバッグ16の展開膨張時、下壁部30Gと後壁部40Gとからなるドア部60Gが、前壁部55Gの下端55b側のヒンジ部65Gを回転中心として、後下方向に開いて、上壁部50Gの後端50aの下方側に、突出用開口67Gを形成し、そして、エアバッグ16は、突出用開口67Gから後方へ突出するとともに、上開きの傾斜面としてのガイド面50bに沿って、円滑に、後上方向に展開して、運転者の膝の前方側に展開膨張することとなる。
【0079】
なお、ドア部60Gの先端60aは、対向する上壁部50Gの後端50aに対し、若干、隙間を設けて配設されており、先端60aと後端50aとが、相互に、離隔された分離面62Gを有し、非接触状態として、接続されるように(連なるように)、配設されている。勿論、先端60aと後端50aとは、相互に当接させて、当接状態として接続させて、連なるように配設させてもよい。
【0080】
さらに、第1実施形態では、インフレーター10の固定手段としてのボルト13を、車体側部材としてのブラケット2の前後方向に貫通する取付孔2aに挿入させて、インフレーター10をブラケット2に取付固定しているが、
図17に示す第9実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB9のように、車体側部材としてのブラケット2Hの下端から後方に延びる車体側延設部3Hに、上下方向に貫通する取付孔2aを設けて、インフレーター10の固定手段としてのボルト13を、車体側延設部3Hの取付孔2aに貫通させてナット14止めしてもよい。また、第9実施形態では、このナット14止め時、下壁部30Hの前部32aも、エアバッグ16とともに、車体側延設部3Hに取付固定している。
【0081】
このエアバッグ装置AB9では、カバー材21Hの前壁部55Hが、ブラケット2H自体から構成され、上壁部50Hが、インパネ8の下端8aの前方に延びる内装延設部8bから構成され、下壁部30Hと後壁部40Hとからなるドア部60Hが、下壁部30Hの前部32a側のヒンジ部65Hを回転中心として、後下方向に開いて、突出用開口67Hを形成し、そして、エアバッグ16は、突出用開口67Hから後上方向に展開して、運転者の膝の前方側に展開膨張することとなる。
【0082】
なお、この第9実施形態では、ドア部60Hの先端60aの接続構造は、第1実施形態と同様であり、上壁部50Hの後端50a付近の凹部77に、先端60aの凸部76を嵌めて連結させる連結手段75を設けた構造としている。
【0083】
また、第1実施形態では、エアバッグ16の左右方向の幅寸法を狭めずに、折り畳んだ場合を示したが、
図18のA,B,Cに示すように、左右の幅寸法を狭め、そして、
図18のDに示すように、ロール折りしたり、あるいは、
図19のA,B,Cに示すように、ロール折りした後、左右の幅寸法を狭めるように、左右の縁16c,16d側を折って、収納部位20に収納するようにしてもよい。なお、
図18のA,Bに示す左右の幅寸法を狭める折り畳みは、左右の縁16c,16dを折る折り畳みであり、
図18のA,Cに示す左右の幅寸法を狭める折り畳みは、左右の縁16c,16d側をエアバッグ16内に押し込む折り畳みである。
【0084】
さらに、第1実施形態では、インフレーター10が、本体11と、本体11を保持し、かつ、固定手段としてのボルト13を有したリテーナ12と、から構成されるものを例示したが、
図20に示すインフレーター10Iのように、リテーナを有さずに構成されて、インフレーター10I自体から固定手段としてのボルト13が突設される構成としてもよい。なお、図例では、第7実施形態のエアバッグ装置AB7のインフレーター10を、インフレーター10Iに変更して図示している。
【0085】
さらに、
図21に示すインフレーター10Jのように、固定手段として、車体側部材としてのブラケット2Jの取付孔2aに、挿入するだけで、インフレーター10Jを、エアバッグ16とともに、ブラケット2Jに取付固定できる組付ピン100、を使用してもよい。この組付ピン100は、インフレーター10Jから突出する係止軸部101と、圧縮コイルばね105と、円環状のばね座104と、を備え、係止軸部101は、インフレーター10Jから突出する首部102と、首部102の先端で、円錐台形状に拡開する係止頭部103と、を備えて構成されている。コイルばね105は、インフレーター10Jとばね座104との間に配設され、ばね座104は、取付孔2aの内径寸法より大きな外形寸法を有して、コイルばね105の前端側を支持し、そして、首部102を挿通させている。係止頭部103は、取付孔2aを挿通可能としているものの、ブラケット2Jの前面側の取付孔2aの下縁側周縁に、左右方向に延びるように配置された棒状のばね材106に、係止される寸法としている。ばね材106は、係止頭部103の取付孔2aの挿入時には、下方へ移動するものの、首部102が配置されれば、移動前の上方側に復帰し、係止頭部103を抜け不能に係止することとなる。そのため、この組付ピン100では、係止頭部103を取付孔2aに貫通させれば、ばね材106が撓んで、係止頭部103の挿入を許容し、そして、首部103が、ばね材106の位置に配置されれば、復元して、ばね材106が、インフレーター10Jを後方移動させないように、係止頭部103を抜け不能に係止する。この時、ブラケット2Jの後面側の取付孔2aの周縁とインフレーター10Jとの間には、ばね座104を介在させて、インフレーター10Jをブラケット2Jから後方側に付勢するコイルばね105が配設されていることから、インフレーター10Jの前方移動が規制される。そのため、インフレーター10Jは、前後移動が規制されて、ブラケット2Jに取付固定されることとなる。このように、インフレーター10Jの固定手段としては、ワンタッチで、ブラケット2Jに取付固定できる組付ピン100を使用してもよい。
【0086】
なお、
図21では、第6実施形態のエアバッグ装置AB6のインフレーター10を、インフレーター10Jに変更し、取付孔2aの周縁にばね材106を配設させて、図示している。
【0087】
また、図例では、運転者Mの膝Kを保護するために、運転者Mの車両前方側に配置される膝保護用エアバッグ装置AB1,AB2,AB3,AB4,AB5,AB6,AB7,AB8,AB9を例に採り説明したが、助手席に着座した助手席搭乗者の膝を保護可能な膝保護用エアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
2,2D,2H,2J…(車体側部材)ブラケット、3,3H…車体側延設部、8…(内装部材)インパネ、8a…下端、8b…(上壁部)内装延設部、8c…(後壁部)内装延設部、9…アンダカバー、10,10I,10J…インフレーター、13…(固定手段)ボルト、16…エアバッグ、20…(エアバッグ)収納部位、21,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21H…カバー材、30,30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30H…下壁部、30a…前部、30b…後部、30c…上面、31,31A…前下壁部、32,32A…後下壁部、32a…前部、33…(下壁部部と後壁部との)交差部位、40,40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G,40H…後壁部、40c…後面、44…ドア本体部、44a…上端、46…補助ドア部、46b…下端、50,50B,50C,50D,50E,50F,50G,50H…上壁部、50a…後端、55,55B,55C,55D,55E,55F,55G,55H…前壁部、60,60A,60B,60C,60D,60E,60F,60G,60H…ドア部、60a…先端、
62,62B,62C,62D,62E,62F,62G,62H…分離面、65,65A,65B,65C,65E,65G,65H…ヒンジ部、67,67A,67B,67C,67D,67E,67F,67G,67H…突出用開口、69…(変形抑制手段)補強リブ、69a…上面、70…案内部、75,75B,75C,75E…連結手段、76…凸部、77…凹部、79…フック、80…フック、82…係止突起、83…係止孔、85…接着剤、100…(固定手段)組付ピン、
θ…(下壁部と後壁部との)交差角度、M…(乗員)運転者、L…脚部、K…膝、F…フロア、S…スペース、AB1,AB2,AB3,AB4、AB5,AB6,AB7…膝保護用エアバッグ装置。