(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ローションティッシュペーパー
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20220720BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A47K10/16 D
A47K10/16 C
D21H19/10 A
(21)【出願番号】P 2021009118
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2016255822の分割
【原出願日】2016-12-28
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138897(JP,A)
【文献】特開2015-067348(JP,A)
【文献】特開2008-239208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0062966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーの製造方法であって、
前記ローションティッシュペーパーは、紙厚が0.50mm/10枚以上0.90mm/10枚以下、
シート1プライあたりの坪量が13g/m
2以上22g/m
2以下、
前記薬液の含有量が
19.8質量%以上
25.4質量%以下、
滑らかさTS750が7dBV
2rms以上15dBV
2rms以下、
柔らかさTS7が6dBV2rms以上14dBV2rms以下、
しっかり感Dが2.2mm/N以上4.6mm/N以下、
であり、
厚さが15μm以上55μm以下、前記ローションティッシュペーパーの長手方向の寸法に対する取り出し口の長さの割合が
25%以上
46%以下、である略直方体のフィルムパックに収容され
、
前記フィルムパックに収容されるローションティッシュペーパーの入り数が、160組以上280組以下であり、前記ローションティッシュペーパーの紙厚及び入り数に応じて変化する前記フィルムパックの高さが、54mm以上96mm以下であ
る、ローションティッシュペーパーであって、
原反ロール
の片面に前記薬液をオフラインで塗布し、
薬液を塗布した前記原反ロールを、薬液を塗布した日から7日以上21日以下の期間保管し、
薬液を塗布した前記原反ロールを、インターフォルダ加工する、ローションティッシュペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェイシャルティッシュペーパーには、触感の滑らかさ、しっとり感、柔らかさ、ボリューム感が重要であると指摘されていた。滑らかさを有するティッシュペーパー製品を製造するためには、カレンダー処理の強度の強化や、ローション薬液の塗布等の手法が採用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
一般的に、ローション薬液が塗布されたローションティッシュペーパーは、紙カートンに収納されて、取り出し口から引き出して使用される。ここで、ローションティッシュペーパーは、ローション薬液の塗布量が多いほど、滑らかさやしっとり感が良化するが、一方で、コシ(剛性、しっかり感)は、低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-109693号公報
【文献】特開平9-296389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ローションティッシュペーパーの滑らかさやしっとり感を上げるためには、上記のとおり、ローション薬液の塗布量を多くすることが考えられるが、この場合には、ローションティッシュペーパーの積層体の高さが、ローションティッシュペーパーの自重により、経時的に低くなることで、紙カートンの取り出し口とローションティッシュペーパーの積層体の上面からの距離が大きくなり、ローションティッシュペーパーの最初の一枚が取り出しづらいという問題があった。また、ローション薬液が多量に塗布されたローションティッシュペーパーは柔らかいため、取り出し口から引き出す際、破れることも多かった。さらに、紙カートンからローションティッシュペーパーを引き出した後、次のローションティッシュペーパーが紙カートンに沿って倒れることにより、次のローションティッシュペーパーを取り出しにくくなる問題や、次の一組が紙カートンの中に落ちる所謂「ドロップバック」が発生する問題があった。一方、シートの強度を高くした場合、これらの問題は解決するが、ローションティッシュペーパーがごわごわした触感になる傾向にある。すなわち、ローション薬液を多量に塗布したローションティッシュペーパーにおいて、紙の滑らかさ、しっとり感等の質感と、ローションティッシュペーパーの最初の一枚の取り出し易さ等の操作性と、を両立させることが難しかった。したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、ボリューム感、滑らかさ、しっとり感等の質感、及び、最初の一枚の取り出し易さ、ドロップバックの発生しづらさ等の操作性が、いずれも良好なローションティッシュペーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、所定の厚さ及び取り出し口を有するフィルムパックに収容されており、紙厚、シート1プライあたりの坪量、滑らかさを調整し、所定量の薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1)本発明の第一の態様は、薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーの製造方法であって、前記ローションティッシュペーパーは、紙厚が0.50mm/10枚以上0.90mm/10枚以下、シート1プライあたりの坪量が13g/m2以上22g/m2以下、前記薬液の含有量が12質量%以上26質量%以下、滑らかさTS750が7dBV2rms以上15dBV2rms以下、であり、厚さが15μm以上55μm以下、前記ローションティッシュペーパーの長手方向の寸法に対する取り出し口の長さの割合が20%以上70%以下、である略直方体のフィルムパックに収容される、ローションティッシュペーパーであって、原反ロールに前記薬液をオフラインで塗布し、薬液を塗布した前記原反ロールを、薬液を塗布した日から7日以上21日以下の期間保管し、薬液を塗布した前記原反ロールを、インターフォルダ加工する、ローションティッシュペーパーの製造方法である。
【0008】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のローションティッシュペーパーの製造方法であって、前記ローションティッシュペーパーの柔らかさTS7が6dBV2rms以上14dBV2rms以下、しっかり感Dが2.2mm/N以上4.6mm/N以下であることを特徴とするものである。
【0009】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のローションティッシュペーパーの製造方法であって、前記フィルムパックに収容されるローションティッシュペーパーの入り数が、160組以上280組以下であり、前記ローションティッシュペーパーの紙厚及び入り数に応じて変化する前記フィルムパックの高さが、54mm以上96mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙厚、シート1プライあたりの坪量、滑らかさ、薬液の含有量が調整され、滑らかさ、しっとり感、ボリューム感がいずれも良好である、ローションティッシュペーパーを提供することができる。また、紙カートンではなく所定の厚さ及び取り出し口を有するフィルムパックに収容することで、ローションティッシュペーパーの積層体の高さに応じた容器の変形が可能になることから、最初の一枚の取り出し易さ、ドロップバックの発生しづらさ等の操作性が、良好なローションティッシュペーパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のローションティッシュペーパーの斜視図である。
【
図2】本発明のローションティッシュペーパーの製造に用いるマシンワインダーの一例を示す図面である。
【
図3】本発明のローションティッシュペーパーの製造に用いる保管装置の一例を示す図面である。
【
図4】本発明のローションティッシュペーパーの製造に用いるロータリー式インターフォルダの一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0013】
<ローションティッシュペーパー>
図1は、本発明のローションティッシュペーパー1の斜視図である。ローションティッシュペーパー1は、2プライのシートからなるものであって、原紙にカレンダー処理がなされ、薬液が塗布されているものである。そして、本発明のローションティッシュペーパー1は、紙厚、シート1プライあたりの坪量、滑らかさTS750、薬液の含有量が調整されている。また、本発明のローションティッシュペーパー1は、
図1に示すように、カートンではなく所定の厚さ及び取り出し口21を有するフィルムパック20に収容される。なお、本発明において、長手方向とは、フィルムパック20の取り出し口21に平行な方向であり、短手方向とは、長手方向に直交する方向である。
【0014】
[紙厚、坪量]
本発明のローションティッシュペーパー1における、紙厚は、0.50mm/10枚以上0.90mm/10枚以下であり、0.55mm/10枚以上0.85mm/10枚以下であることが好ましく、0.60mm/10枚以上0.80mm/10枚以下であることがより好ましい。なお、上記の紙厚は、1プライのシートを10枚重ねたときの紙厚を示す。また、本発明のローションティッシュペーパー1における、シート1プライあたりの坪量は、13g/m2以上22g/m2以下であり、14g/m2以上21g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上20g/m2以下であることがより好ましい。ローションティッシュペーパー1の紙厚やシート1プライあたりの坪量を上記の範囲内のものとすることにより、柔らかさとボリューム感とが両立可能なものとなる。なお、上記の坪量及び紙厚は、ローションティッシュペーパー1自体のものであって、薬液が塗布された状態のローションティッシュペーパー1についての坪量及び紙厚を意味する。
【0015】
[TS750、TS7、D]
本発明のローションティッシュペーパー1は、ティッシュソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により測定したときに、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が7dBV2rms以上15dBV2rms以下であり、8dBV2rms以上14dBV2rms以下であることが好ましく、9dBV2rms以上13dBV2rms以下であることがより好ましい。このTS750は、ローションティッシュペーパー1の滑らかさの指標であり、TS750が上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュペーパー1の平滑さがバランスよく維持される。
【0016】
さらに、本発明のローションティッシュペーパー1は、ティッシュソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が6dBV2rms以上14dBV2rms以下であることが好ましく、7dBV2rms以上13dBV2rms以下であることがより好ましく、8dBV2rms以上12dBV2rms以下であることが更に好ましい。このTS7は、ローションティッシュペーパー1の柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュペーパー1の柔らかさがバランスよく維持される。
【0017】
加えて、本発明のローションティッシュペーパー1は、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したローションティッシュペーパー1のサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間でのサンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性(D)の測定値が2.2mm/N以上4.6mm/N以下であることが好ましく、2.6mm/N以上4.2mm/N以下であることがより好ましく、3.0mm/N以上3.8mm/N以下であることが更に好ましい。このDは、ローションティッシュペーパー1のしっかり感(フィルムパック20からローションティッシュペーパー1を取り出した際の、次のローションティッシュペーパー1の立ち具合)、しなやかさの指標であり、Dが上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュペーパー1のしっかり感としなやかさがバランスよく維持される。
【0018】
なお、TS750、TS7、及びDは、ローションティッシュペーパー1自体のものであって、薬液が塗布された状態のローションティッシュペーパー1についてのTS750、TS7、及びDを意味する。
【0019】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS750、TS7、及びDの測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。
【0020】
[GMT]
本発明のローションティッシュペーパー1は、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)と、乾燥時の横方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)の幾何平均(DMDT×DCDT)1/2で表されるDGMT(Dry Geometric Tensile strength)が1.0N/25mm以上2.5N/25mm以下であることが好ましく、1.1N/25mm以上2.1N/25mm以下であることがより好ましく、1.2N/25mm以上1.8N/25mm以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパー1のDGMTが上記の範囲内のものであることにより、ローションティッシュペーパー1の強度や、柔らかさが、バランス良く良好に維持される。なお、一般的には、坪量を上記の範囲内のものとし、原紙の強度や薬液の塗布量を調整することにより、上記のDGMTが調整される。
【0021】
[比容積]
本発明のローションティッシュペーパー1の比容積は、1組当り2.0cm3/g以上6.0cm3/g以下であることが好ましく、2.3cm3/g以上5.5cm3/g以下であることがより好ましく、2.5cm3/g以上5.0cm3/g以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパー1の比容積を上記の範囲内のものとすることにより、ふんわり感、柔らかさ、嵩高さがバランスよく維持され、滑らかさが良好なものとなる。比容積は、例えば、坪量や紙厚を調整することにより、調整することができる。
【0022】
[薬液]
本発明のローションティッシュペーパー1は、薬液を含有している。薬液としては、水性成分と油性成分とを含むものであり、さらに、水を含んでいることが好ましい。
【0023】
(水性成分)
水性成分としては、多価アルコール(2価以上の水酸基を有するアルコール)を挙げることができる。より具体的には、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等を挙げることができる。薬液中の多価アルコールの有効成分の割合は、72質量%以上92質量%以下であることが好ましく、76質量%以上87質量%以下であることがより好ましく、79質量%以上84質量%以下であることが更に好ましい。薬液中の多価アルコールの含有量を調整することにより、ローションティッシュペーパー1のしっとり感が良好なものとなる。なお、上記の多価アルコールは、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。薬液中の多価アルコールとしては、風合いに優れるグリセリンの含有量(水分を除く)が、薬液全体に対して50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0024】
(油性成分)
油性成分としては、各種シリコーン油、流動パラフィン、鉱物油、ワックス等を挙げることができる。これらの成分は、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。これらの成分は、ローションティッシュペーパー1の滑らかさに寄与する。本発明においては、ローションティッシュペーパー1中の油性成分の含有量が0.03質量%以上0.35質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下であることがより好ましく、0.07質量%以上0.15質量%以下であることが更に好ましい。これにより、ローションティッシュペーパー1の滑らかさを効果的に向上させつつ、滑らかさを向上させすぎることによる加工適性の低下も効果的に防止することができる。本発明においては、特に、この油性成分がシリコーン油及び/又はシアバターであることが好ましく、シリコーン油であることがより好ましく、アミノ変性シリコーン油であることが更に好ましい。この場合、ローションティッシュペーパー1中の、このシリコーン油(アミノ変性シリコーン油)及び/又はシアバターの含有量が、上記の含有量であることが好ましい。薬液中のシリコーン油及び/又はシアバターの配合量は、0.1質量%以上1.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下であることが更に好ましい。これにより、薬液の特性を劣化させることなく、ローションティッシュペーパー1の滑らかさを効果的に向上させることができる。
【0025】
(薬液の粘度)
薬液の粘度は、塗布ムラや塗布ロールへのウェブの付着などのトラブルを避ける観点から、回転数60rpmにおけるB型粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下となることが好ましく、15mPa・s以上60mPa・s以下となることがより好ましく、20mPa・s以上40mPa・s以下となることが更に好ましい。なお、B型粘度は、東機産業社製粘度計を用いて液温が40℃の条件下で測定する。B型粘度が上記の範囲内のものであることにより、薬液の塗布量のコントロールを良好なものとすることができるとともに、操業性も良好に維持される。
【0026】
(薬剤含有量)
本発明のローションティッシュペーパー1中の薬剤含有量は、12質量%以上26質量%以下であり、14質量%以上24質量%以下であることが好ましく、16質量%以上22質量%以下であることがより好ましい。ここで、「薬液」は水分を含むため、「薬剤含有量」は薬液中の水分を除く成分の、ローションティッシュペーパー1中の含有量に相当する。
【0027】
薬剤含有量は、JIS P 8111(1998)条件下において調湿させた所定質量のローションティッシュペーパー1製品を分母(A)(g)とし、所定質量のローションティッシュペーパー1製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。なお、(B)の算出は、例えばローションティッシュペーパー1をアセトン/エタノール抽出することにより、定量することができる。
(薬剤含有量)=(B)÷(A)×100(%)
【0028】
薬剤含有量を上記の範囲内のものとすることにより、ローションティッシュペーパー1の柔らかさ、滑らかさ及びしっとり感が良好なものとなるとともに、シワの発生や、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ内での断紙等が防止されて、加工適性が良好に維持される。
【0029】
(ティッシュペーパー原料)
ローションティッシュペーパー1を構成する2プライのシートは、パルプを主成分とするものであり、好ましくは、50質量%以上のパルプを含有する。ローションティッシュペーパー1の製造に使用できるパルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプが挙げられるが、本発明のローションティッシュペーパー1は、パルプとして木材パルプ100%から成るものであってもよく、木材パルプの他に、古紙パルプや非木材パルプを含んでいてもよい。パルプ以外の成分としては、填料、合成繊維、天然繊維等を挙げることができる。目標とする品質を得るためには、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%以上50質量%以下と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%以上80質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが好ましく、NBKP:25質量%以上45質量%以下と、LBKP:55質量%以上75質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることがより好ましい。
【0030】
上記LBKPの材種としては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。また、上記のパルプ比率の木材パルプ100質量部に対し、古紙パルプを50質量部程度まで含有させてもよい。古紙パルプは品質のバラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するため、木材パルプに対する配合量を20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以下とすることが更に好ましく、古紙パルプを配合しないことが最も好ましい。古紙パルプとしてはミルクカートン由来が好ましい。
【0031】
なお、ローションティッシュペーパー1に適正な強度を確保するため、通常の手段で原料配合した後、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解処理としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるフリーネス(カナダ標準ろ水度)の変化量ΔFで20mL以上200mL以下、より好ましくは50mL以上120mL以下となるよう、ろ水度を低下させることが好ましい。なお、乾燥紙力増強剤を使用してもよく、湿潤紙力増強剤を使用することが好ましい。
【0032】
(ローションティッシュペーパーの寸法)
本発明のローションティッシュペーパー1を折り畳む前の短手方向の寸法は、170mm以上250mm以下であることが好ましく、180mm以上240mm以下であることがより好ましく、200mm以上220mm以下であることが更に好ましい。また、ローションティッシュペーパー1の長手方向の寸法は、180mm以上260mm以下であることが好ましく、190mm以上250mm以下であることがより好ましく、210mm以上230mm以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパー1の寸法は、フィルムパック20の寸法、性質に合わせて適合させればよい。
【0033】
[フィルムパック]
本発明のローションティッシュペーパー1は、紙カートンではなく所定の厚さ及び取り出し口21を有するフィルムパック20に収容される。上記のフィルムパック20に収容されることで、ローションティッシュペーパー1の積層体の高さに応じた容器の変形が可能になり、容器からの最初の一枚を取り出し易くなり、また、ドロップバックが低減され、操作性の良好なローションティッシュペーパー1を提供することができる。
【0034】
(材質)
フィルムパック20の材質は、特に限定されないが、ポリエチレン又はポリプロピレンを用いることが好ましく、柔軟性を持たせてローションティッシュペーパー1の残り数に応じてフィルムパック20を変化させる観点からポリエチレンを用いることがより好ましい。また、フィルムパック20の強度及び柔軟性の観点から、フィルムパック20の厚さは、15μm以上55μm以下であり、20μm以上40μm以下であることが好ましく、25μm以上35μm以下であることがより好ましい。フィルムパック20が薄いと、強度が弱く破れやすくなり、逆にフィルムパック20が厚すぎると、ローションティッシュペーパー1の残り数に応じたフィルムパック20の変形がしづらくなり、ドロップバックが起こりやすくなる。
【0035】
(フィルムパックの包装形態)
フィルムパック20の包装形態は公知の方法を用い、特に限定されないが、ピロー包装、又はキャラメル包装、又はガゼット包装を用いることが好ましく、柔軟性を持たせてローションティッシュペーパー1の残り数に応じてフィルムパック20を変化させる観点から、ピロー包装を用いることがより好ましい。
【0036】
(フィルムパックの寸法)
フィルムパック20の短手方向の寸法は、95mm以上150mm以下であることが好ましく、105mm以上140mm以下であることがより好ましく、115mm以上130mm以下であることが更に好ましい。また、フィルムパック20の長手方向の寸法は、200mm以上260mm以下が好ましく、210mm以上250mm以下であることがより好ましく、220mm以上240mm以下であることが更に好ましい。
【0037】
(取り出し口の長さ)
フィルムパック20の取り出し口21の長さは、ローションティッシュペーパー1の長手方向の寸法に対して20%以上70%以下であり、30%以上60%以下であることが好ましく、40%以上50%以下であることがより好ましい。取り出し口21の寸法を上記の範囲とすることで、ローションティッシュペーパー1をより取り出し易くすることができ、取り出した際のローションティッシュペーパー1の破れも低減される。また、ドロップバックも効果的に低減することができる。
【0038】
(ローションティッシュペーパーの入り数とフィルムパックの高さ)
フィルムパック20に収容されるローションティッシュペーパー1の入り数は、160組以上280組以下であることが好ましく、180組以上260組以下であることがより好ましく、200組以上240組以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパー1の紙厚及び入り数に応じて変化するフィルムパック20の高さは、54mm以上96mm以下であることが好ましく、61mm以上89mm以下であることがより好ましく、68mm以上82mm以下であることが更に好ましい。このように、ローションティッシュペーパー1の入り数を一定の範囲とし、ローションティッシュペーパー1の紙厚及び入り数に応じた一定の範囲において、フィルムパック20の高さに変化性を持たせることで、ローションティッシュペーパー1の最初の一枚の取り出し易さを、効果的に向上させることができる。
【0039】
<ローションティッシュペーパーの製造方法>
【0040】
[ローションティッシュペーパーの製造方法]
本発明のローションティッシュペーパー1は、例えば以下のように、(i)プライアップ及びカレンダー処理、(ii)薬液の塗布及び保管、(iii)インターフォルダ加工、の順で製造することができる。
【0041】
(i)プライアップ及びカレンダー処理
図2はマシンワインダー100の一例を示す。
【0042】
マシンワインダー100に第一次原反ロール11を2本セットし、ヤンキー面が外側になるように2プライ重ね合わせてプライアップし、カレンダー機101でカレンダー処理を行い、第二次原反ロール12を得る。
【0043】
(ii)薬液の塗布及び保管
カレンダー処理後の第二次原反ロール12にオフラインで薬液を塗布して第三次原反ロール13を得る。
【0044】
オフラインで薬液を第二次原反ロール12に塗布することで、オンラインと比べて、加工までの保管期間がある分、第三次原反ロール13に薬液を浸透させて定着させることができ、オンラインと比べてより多量の薬剤を均質に第二次原反ロール12に塗布することも可能である。
【0045】
オフラインで、第二次原反ロール12に薬液を塗布する方法は、一般に使用する方法、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロール塗布、スプレー塗布等を用いることができるが、フレキソ印刷であることが好ましい。フレキソ印刷であると、他の印刷方式と比較して、薬液を多量に塗布することができ、また、塗布量を容易に調整することができる。
【0046】
第二次原反ロール12に薬液を塗布する際は、第二次原反ロール12の片面のみ(内巻側、外巻側どちらか一方)に塗布することが好ましい。これにより、第三次原反ロール13として巻き取られた際に、第三次原反ロール13の片面に塗布された薬液が、接するもう片方の面に浸透しやすく、結果として第二次原反ロール12の外巻側と内巻側の両側に薬液を塗布するよりも、薬液を第三次原反ロール13に均質に浸透させ定着させることができる。また、塗布量を調整しやすくすることもできる。
【0047】
第三次原反ロール13を保管する期間は、第三次原反ロール13に薬液を塗布した日から7日以上21日以下であることが好ましく、8日以上20日以下であることがより好ましく、10日以上18日以下であることが更に好ましい。上記の数値範囲内とすることで、後述するインターフォルダ加工時に、第三次原反ロール13のシートにシワが発生しづらく、かつ第三次原反ロール13のシートの破断が少ないものとすることができ、加工適性を良好なものとすることができる。
【0048】
第三次原反ロール13を保管する方法は、特許第5933384号公報に記載された保管装置を用いることが好ましい。
図3は、第三次原反ロール13を保管する保管装置の一例を示す図である。例えば、薬液が塗布された第三次原反ロール13の外周面13aにラッピングフィルム111を隙間なく巻き付け、ラッピングフィルム111の上に、外周面13aを締め付ける締め付けバンド112を巻き掛け、第三次原反ロール13を載せるロールホルダー113の上に、第三次原反ロール13を設置面117に対して巻き芯を水平方向に設置して保管することが好ましい。この構成によれば、第三次原反ロール13の外周面13aは、ラッピングフィルム111に加え、締め付けバンド112によっても締め付けられるため、単にラッピングフィルム111で包んだ場合に比べ、第三次原反ロール13の形態安定性が格段に高まる。したがって、薬液塗布後の第三次原反ロール13の変形を効果的に抑制することができる。
【0049】
ロールホルダー113は、第三次原反ロール13の下部を受けて保持する受け面114を有し、受け面114は、第三次原反ロール13の外周面13aに沿って曲面上に形成されていることが好ましい。この構成によれば、自重によって最も変形し易い第三次原反ロール13の下部を、曲面状の受け面114で安定的に受けて保持することにより、第三次原反ロール13の下部の変形を防ぐことができる。これにより、第三次原反ロール13の変形をより効果的に抑制することができる。
【0050】
ロールホルダー113は、受け面114を上面に備える支持部115を有し、支持部115は、芯材及び芯材の反りを防ぐ面材を積層した紙製の積層板で構成され、支持部115の上面には、受け面114を形成する面材が設けられる一方、支持部115の下面には、面材が設けられていないことが好ましい。この構成によれば、紙製の軽い積層板で支持部115を構成することで、ロールホルダー113の軽量化及び取り扱い性の向上を図ることができる。また、第三次原反ロール13を支持する支持部115の下面に面材が無いため、第三次原反ロール13から荷重を受けると、支持部115が良好に湾曲する。これに対して、支持部115の下面に面材があると、支持部115の下面の剛性が増すため、支持部115の下面の変形が抑えられてしまう。この点、上記構成によれば、面材の無い支持部115の下面が良好に湾曲するので、第三次原反ロール13をより安定的に保管することができる。なお、ロールホルダー113は、支持部115を設置面117から浮かして支持する脚部116を有していてもよい。
【0051】
(iii)インターフォルダ加工
薬液が塗布され、所定の期間保管された第三次原反ロール13のシートを加工することで、ローションティッシュペーパー1を得る。
【0052】
第三次原反ロール13の加工は、公知のインターフォルダ加工により行うことができ、各第三次原反ロール13の各シートを折り畳んで掛け合わせながら交互に積層して加工することで、ポップアップ式に取り出し可能なローションティッシュペーパーを得ることが好ましい。ポップアップ式に取り出し可能であれば、各第三次原反ロール13の各シートを中央でV字折りやZ字折り等で折り畳んでもよい。
【0053】
インターフォルダとしては、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダを例示できるが、ロータリー式インターフォルダ120を使用することが好ましい。ローションティッシュペーパーは、ローションを塗布しないティッシュペーパーより強度が低いため、マルチスタンド式インターフォルダに比べて大きなテンションがかからず、且つ、加工速度の遅いロータリー式インターフォルダ120で加工した方が断紙しにくい。
【0054】
具体的には、
図4に示すように、2個の第三次原反ロール13をロータリー式インターフォルダ120にセットし、ロータリー式インターフォルダ加工機121にて折り畳み、ローションティッシュペーパーの積層体14を製造し、フィルムパック20に収容する。また、
図4に示すように、積層体14をフィルムパック20に挿入する前に積層体14を圧縮することが好ましい。この加工は、積層体14を載置してフィルムパック20に搬送する搬送装置122の直上に圧縮装置123を設け、両者の間に積層体14を通すことで積層体14を圧縮するようになっている。このように積層体14を圧縮すると、圧縮処理前はローションティッシュペーパーを嵩高にし、その後の圧縮処理で所定の高さ寸法に調整することができるので、あらかじめ圧縮を過度に行った原紙に薬液塗布する場合に比べると柔かくなる。
<実施例>
【0055】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
<実施例1から17、参考例1から4、比較例1から10>
木材パルプとして、表1から表3に示すパルプ組成(質量%)の、NBKPとLBKPから、原紙を抄紙した後、この原紙にカレンダー、プライアップ処理を施した。次に、この原紙に対して、表1から表3に示すローション薬液をグラビア塗布装置にてオフライン塗布し、次いでロータリー式インターフォルダにて、ローションティッシュペーパーの積層体を形成し、更にフィルムパックに収容した。なお、表1から表3中、多価アルコールはグリセリンであり、油性成分は、アミノ変性シリコーン油とシアバターの混合物である。得られたローションティッシュペーパーについて、TS750、TS7、D、紙中の薬液含有量を計測するとともに、使用感、ボリューム感、しっとり感、滑らかさ、使いやすさ(ドロップバック頻度)、フィルムパックの強度(破れにくさ)、取り出し時のローションティッシュペーパーの破れにくさ、柔らかさ、しっかり感(カートンからローションティッシュペーパーを取り出した際の、次のローションティッシュペーパーの立ち具合)、フィルムパックの交換頻度、フィルムパックの見栄えについて5段階評価を行った。
【0057】
シートの坪量:JIS P 8124に基づいて測定し、シート1枚当たりに換算した。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は1プライのシートを10枚重ねて行い、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
フィルムの厚さ:JIS Z 1702に基づいて測定した。
なお、坪量、紙厚、TSA、フィルムパックの厚さ、フィルムパックの高さの測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持した後に行った。
【0058】
モニター20人による以下の評価を行った。
使用感:フィルムパックから取り出したローションティッシュペーパーを展開して使用(鼻をかむ、汚れをふき取る等)した時の、使用感(紙のごわつき、水分の浸透等)を総合的に評価した。
ボリューム感:フィルムパックから取り出したローションティッシュペーパーを展開して手に持ったときのボリューム感、及び、製品の紙厚を評価した。
しっとり感:フィルムパックから取り出したローションティッシュペーパーを展開して手に持ったときのしっとり感を評価した。
滑らかさ:フィルムパックから取り出したローションティッシュペーパーを展開して使用(鼻をかむ)した時の、ローションティッシュペーパーが肌に触れる滑らかさを評価した。
使いやすさ(ドロップバック頻度):ローションティッシュペーパー使用時の、ドロップバックの頻度を評価した。
フィルムパックの強度(破れにくさ):フィルムパックの破れにくさを評価した。
取り出し時のローションティッシュの破れにくさ:フィルムパックからローションティッシュペーパーを取り出した時の破れにくさについて評価した。
柔らかさ:カートンから取り出したローションティッシュペーパーを展開して手に持ったときの柔らかさを評価した。
しっかり感:カートンからローションティッシュペーパーを取り出した際の、次のローションティッシュペーパーの立ち具合を評価した。
フィルムパック交換頻度:フィルムパックの交換頻度について評価した。
フィルムパックの見栄え:フィルムパックの見栄えについて評価した。
評価は、従来品と同等なものを「3」とし、これよりやや優れているを「4」、優れているを「5」とした。同様に、「3」より劣っているを「2」、著しく劣っているを「1」とした。評価が3から5であれば問題ない。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
表1から表3より、本発明によれば、使用感、ボリューム感、しっとり感、滑らかさ、使いやすさ、フィルムパックの強度、取り出し時のローションティッシュペーパーの破れにくさが、いずれも良好なローションティッシュペーパーを得られたことが分かる。