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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20220720BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220720BHJP
   G10K 11/28 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E04B2/74 551Z
E04B1/86 H
E04B2/74 561H
G10K11/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017110270
(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公開番号】P2018204289
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信一
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008158(JP,A)
【文献】特開平03-049398(JP,A)
【文献】特開平03-257497(JP,A)
【文献】実開昭51-158624(JP,U)
【文献】特開平04-006599(JP,A)
【文献】特開平07-107588(JP,A)
【文献】特開2004-015796(JP,A)
【文献】特開2006-108986(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083476(JP,U)
【文献】特開平07-231495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04B 1/86
G10K 11/28
H04M 1/19
H04R 1/34
E01B 19/00
E01F 8/00-8/02
E04H 1/12
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に前方から入射する音波を反射して収束させる互いに対向して配置される一対の集音部を備え、
前記一対の集音部の集音形状がいずれも回転放物面であり、前記一対の集音部の集音形状の焦点が前記一対の集音部間の空間に位置する室内スペースを区分する壁構造。
【請求項2】
前記一対の集音部の集音形状の焦点が異なる請求項1に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等の室内スペースを間仕切りによって区分することで会議や商談等を行う打合せブースを設けることが行われている。このように間仕切りによって打合せブースを設けることで、室内スペースを効率的に利用することができると共に、この室内スペース全体の活気を高めることができる。
【0003】
前記打合せブースは、室内スペースの効率的な利用や室内スペースの活性化の観点から、室内の事務スペース等の近くに存在することが望まれている。また、この打合せブースは、前記観点から十分な数が存在することが望まれており、そのため各打合せブースの小規模化が図られている。
【0004】
しかしながら、打合せブースの小規模化が図られる場合、この打合せブース内の会話が打合せブース外に漏洩するおそれが高くなる。このような点から、今日では間仕切りにスピーカーを設け、マスキング音を放音することによって、打合せブース内での会話が外部で聞き取れないようにする技術が実用化されている(特開2012-82585号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-82585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記公報に記載されているようにマスキング音を用いる場合、周囲の環境ノイズが大きくなるという問題が生じる。つまり、複数の打合せブースが隣接して設けられる場合、隣接する他の打合せブース内の会話を聞き取れなくするためのマスキング音によって打合せブース内での会話が聞き取り難くなり、打合せブース内で比較的大きな声で会話をする必要が生じるおそれがある。
【0007】
このような不都合に鑑みて、本発明は、周囲の環境ノイズを大きくすることなく、会話内容が外部に伝わり難くすることができる壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる複数の集音部を備え、前記複数の集音部の集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部である室内スペースを区分する壁構造である。
【0009】
当該壁構造は、少なくとも一対の前記集音部が対向配置されるとよい。
【0010】
当該壁構造は、前記複数の集音部が並列配置されるとよい。
【0011】
当該壁構造は、前記複数の集音部の集音形状の焦点が異なるとよい。
【0012】
前記二次曲線回転面が回転放物面であるとよい。
【0013】
なお、本発明において、「音波を反射して収束させる」とは、同一の点から入射する音波に対する表面の2以上の点での反射波が同一の点に到達することをいう。「二次曲線回転面」及び「回転放物面」は、複数の平面や球面で近似される面であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る壁構造は、例えば打合せブースを事務スペース等の外部スペースと区分するために用いられる。当該壁構造は、複数の集音部の前面が前記打合せブース側に向くよう配設される。当該壁構造は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる複数の集音部を備えており、複数の集音部の集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部であるので、当該壁構造によって区分される打合せブース内で比較的小さい声で会話をした場合でも、互いの声を比較的容易に聞き取らせることができる。そのため、話者の声が自然と小さくなり、外部に声が漏れて会話内容が第三者に聞き取られることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る壁構造により形成される打合せブースを示す模式的平面図である。
図2図1の壁構造のA-A線断面図である。
図3図1の壁構造とは異なる形態に係る壁構造により形成される打合せブースを示す模式的平面図である。
図4図1及び図3の壁構造とは異なる形態に係る壁構造により形成される打合せブースを示す模式的平面図である。
図5図1図3及び図4の壁構造とは異なる形態に係る壁構造により形成される打合せブースを示す模式的平面図である。
図6図5の複数の集音部の模式的正面図である。
図7図1図3図5の壁構造とは異なる形態に係る壁構造により形成される打合せブースを示す模式的平面図である。
図8図7の複数の集音部の模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0017】
[第一実施形態]
<壁構造>
図1及び図2の壁構造1は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる一対の集音部5a,5bを備える。具体的には、当該壁構造1は、一対のパネル部材2a,2bを備えており、この一対のパネル部材2a,2bがそれぞれ1つの集音部5a,5bを有する。当該壁構造1は、室内スペースを区分する壁構造であって、詳細には打合せブースを事務スペース等の外部スペースと区分するための壁構造である。当該壁構造1は、一対のパネル部材2a,2bを床面に配置することによって外部スペースから打合せブースを区分する。なお、当該壁構造1によって区分される区分構造は、当該壁構造1に加え、互いに向き合う話者P1,P2間に配置されるテーブル3と、話者が着座する一対の椅子4a,4bとを備える。当該壁構造1は、一対のパネル部材2a,2bによってテーブル3の近傍の空間を周囲の空間と区分することで室内スペースに打合せブースを画定する。当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bの集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部である。
【0018】
当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bの前面が打合せブース側に向くように配設される。当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bが対向配置されており、詳細には一対の集音部5a,5bが、テーブル3を挟んで前面同士を対向させるように配置されている。当該壁構造1によって区分される区分構造では、一対の集音部5a,5bに挟まれる中間位置にテーブル3が配置され、このテーブル3と一対の集音部5a,5bとの間に一対の椅子4a,4bが配置されている。なお、当該壁構造1では、一対の集音部5a,5bに挟まれる領域を除く空間において打合せブース及び外部スペースを区分する他のパネル部材を備えていてもよい。また、当該壁構造1は、図1及び図2に示すように、2人の話者P1,P2がテーブル3を挟んで一対一で会話をするために特に好適に用いられるが、より多くの話者による会話や、遠隔会議システムを使用するために用いることもできる。
【0019】
当該壁構造1は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる一対の集音部5a,5bを備えており、この一対の集音部5a,5bの集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部であるので、当該壁構造1によって区分される打合せブース内で比較的小さい声で会話をした場合でも、互いの声を比較的容易に聞き取らせることができる。そのため、話者P1,P2の声が自然と小さくなり、外部に声が漏れて会話内容が第三者に聞き取られることを抑制することができる。
【0020】
一般に、集音部5a,5bの集音形状の音源位置が入射波が平行となる無限遠である場合、この音源から放出された音波は前記集音形状の焦点に収束しやすい。これに対し、本発明者の知見によると、一対の集音部5a,5bが対向配置されており、この一対の集音部5a,5b間に音源が存在する場合、この一対の集音部5a,5b間に音声利得の高い領域を発現することができる。具体的には、一対の集音部5a,5b間に音源が存在する場合、この音源から一方の集音部5a,5bに入射した音波は、総体として平面視及び側面視で帯状の領域を形成しつつ他方の集音部5a,5b側に反射される。従って、当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bが対向配置されていることで、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0021】
(パネル部材)
一対のパネル部材2a,2bは、集音部5a,5bと、集音部5a,5bを一定の高さに調節すると共に、集音部5a,5bより下方を仕切る腰壁部6とを有する。集音部5a,5bは、例えば板状であり、一方の表面に前述の集音形状が形成されている。
【0022】
一対の集音部5a,5bの二次曲線回転面の回転軸は同一直線状に配されることが好ましい。また、一対の集音部5a,5bの二次曲線回転面の回転軸は、打合せブースにおいて想定される2人の話者P1,P2の頭部を通る水平な軸であることが好ましい。そのため、当該壁構造1は、腰壁部6が、集音部5a,5bの高さ位置、つまり前記二次曲線回転面の回転軸の高さ位置、を調節可能な高さ調節機構を有することが好ましい。当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bの集音形状間に音源が存在する場合、この集音形状の間に音声利得の高い領域を発現させることができるので、前記構成によると話者P1,P2により的確に互いの声を聞き取らせやすい。さらに、当該壁構造1は、前述のように集音形状の中心軸を調節することで、話者P1,P2に応じて音声利得の高い領域を容易に発現させやすい。
【0023】
一対の集音部5a,5bの集音形状は等しいことが好ましい。当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bの集音形状が等しいことで、この集音形状の間に音声利得の高い領域を発現させやすい。
【0024】
一対の集音部5a,5bの集音形状の焦点は異なることが好ましい。当該壁構造1は、一対の集音部5a,5bの集音形状の焦点が異なることで、一対の集音部5a,5b間に音声利得の高い領域を発現させやすい。なお、一対の集音部5a,5bの集音形状の焦点としては、例えば打合せブースにおいて想定される各集音部5a,5bの前方に位置する話者P1,P2の頭部近傍であることが好ましい。
【0025】
前記二次曲線回転面としては、回転放物面又は回転楕円面が好ましく、回転放物面がより好ましい。前記二次曲線回転面が回転放物面であることによって、一対の集音部5a,5b間に音源が存在する場合に、この音源から放音される音が前記二次曲線回転面の焦点に収束することを抑えつつ、一対の集音部5a,5b間に音声利得の高い領域を発現させやすい。
【0026】
〔テーブル〕
テーブル3は、話者P1,P2の着席位置を誘導する誘導構造を有することが好ましい。この誘導構造としては、話者P1,P2の胴が入り込むよう天板に形成された切欠き3aが挙げられる。このように、テーブル3が誘導構造を有することによって、当該壁構造1によって音が収束する位置に話者P1,P2を誘導し、会話が打合せブースの外部に漏れることをより容易に防止することができる。なお、「話者の胴が入り込むよう形成された切欠き」とは、実際に話者P1,P2が切欠き3aの中に入り込んで使用するものに限定されるものではなく、話者P1,P2がテーブル3の天板の側縁から適当な間隔を空けて着座するために設けられる切欠きを含む。
【0027】
[第二実施形態]
<壁構造>
図3の壁構造11は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる4つの集音部5a~5dを備える。具体的には、当該壁構造11は、4つのパネル部材2a~2dを備えており、これらのパネル部材2a~2dがそれぞれ1つの集音部5a~5dを有する。当該壁構造11は、室内スペースを区分する壁構造であって、詳細には打合せブースを事務スペース等の外部スペースと区分するための壁構造である。当該壁構造11は、4つのパネル部材2a~2dを床面に配置することによって外部スペースから打合せブースを区分する。なお、当該壁構造11によって区分される区分構造は、当該壁構造11に加え、話者P1~P4に対応する4つの辺を有する平面視略矩形状の天板を有するテーブル13と、話者P1~P4が着座する4つの椅子(不図示)とを備える。当該壁構造11は、4つのパネル部材2a~2dによってテーブル13の近傍の空間を周囲の空間と区分することで室内スペースに打合せブースを画定する。当該壁構造11は、4つの集音部5a~5dの集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部である。当該壁構造11におけるパネル部材2a~2dの具体的構成としては、図1及び図2の壁構造1のパネル部材2a,2bと同様とすることができる。
【0028】
当該壁構造11は、4つの集音部5a~5dの前面が打合せブース側に向くよう配設される。当該壁構造11は、一対の集音部5a,5bがテーブル13を挟んで対向配置されており、かつ他対の集音部5c,5dがテーブル13を挟んで対向配置されている。当該壁構造11は、各集音部5a~5dがそれぞれテーブル13の1つの辺に対向するよう配設されている。つまり、一対の集音部5a,5b同士及び他対の集音部5c,5d同士は平行に配設され、一対の集音部5a,5bと他対の集音部5c,5dとは垂直に配設されている。なお、当該壁構造11では、一対の集音部5a,5b及び他対の集音部5c,5dに挟まれる領域を除く空間において打合せブース及び外部スペースを区分する他のパネル部材を備えていてもよい。また、当該壁構造11は、4人の話者P1~P4がテーブル13を囲んで会話をするために特に好適に用いられるが、より多くの話者による会話や、遠隔会議システムを使用するために用いることもできる。
【0029】
当該壁構造11は、一対の集音部5a,5bが対向配置され、かつ他対の集音部5c,5dが対向配置されているので、一対の集音部5a,5b間及び他対の集音部5c,5d間に音源が存在する場合、これらの集音部5a~5d間に音声利得の高い領域を発現することができる。つまり、例えば一対の集音部5a,5b間に音源が存在する場合、この音源から一対の集音部5a,5bのうちの一方の集音部5a,5bに入射した音波は、総体として平面視及び側面視で帯状の領域を形成しつつ一対の集音部5a,5bのうちの他方の集音部5a,5b側に反射される。また、他対の集音部5c,5d間に音源が存在する場合、この音源からこの他対の集音部5c,5dのうちの一方の集音部5c,5dに入射した音波は、総体として平面視及び側面視で帯状の領域を形成しつつ他対の集音部5c,5dのうちの他方の集音部5c,5d側に反射される。そのため、当該壁構造11は、一対の集音部5a,5bが対向配置され、かつ他対の集音部5c,5dが対向配置されていることによって利得の高い領域を拡大することができ、話者P1~P4の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0030】
4つの集音部5a~5dの集音形状の焦点は異なることが好ましい。当該壁構造11は、4つの集音部5a~5dの集音形状の焦点が異なることで、一対の集音部5a,5b間及び他対の集音部5c,5d間に音声利得の高い領域を発現させやすい。なお、各集音部5a~5dの集音形状の焦点としては、例えば打合せブースにおいて想定される各集音部5a~5dの前方に位置する話者P1~P4の頭部近傍であることが好ましい。
【0031】
一対の集音部5a,5bの二次曲線回転面の回転軸は同一直線状に配されることが好ましく、かつ他対の集音部5c,5dの二次曲線回転面の回転軸は同一直線状に配されることが好ましい。また、一対の集音部5a,5bの二次曲線回転面の回転軸は、打合せブースにおいて想定される2人の話者P1,P2の頭部を通る水平な軸であることが好ましく、他対の集音部5c,5dの二次曲線回転面の回転軸は、打合せブースにおいて想定される2人の話者P3,P4の頭部を通る水平な軸であることが好ましい。
【0032】
〔テーブル〕
テーブル13は、話者P1~P4の着席位置を誘導する誘導構造を有することが好ましい。この誘導構造としては、話者P1~P4の胴が入り込むよう天板の4辺に形成された切欠き13aが挙げられる。このように、テーブル13が誘導構造を有することによって、当該壁構造11によって音が収束する位置に話者P1~P4を誘導し、会話が打合せブースの外部に漏れることをより容易に防止することができる。
【0033】
[第三実施形態]
<壁構造>
図4の壁構造21は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる複数の集音部25a~25jを備える。具体的には、当該壁構造21は、複数のパネル部材22a~22jを備えており、これらのパネル部材22a~22jがそれぞれ1つの集音部25a~25jを有する。当該壁構造21は、室内スペースを区分する壁構造であって、詳細には打合せブースを事務スペース等の外部スペースと区分するための壁構造である。当該壁構造21は、複数のパネル部材22a~22jを床面に配置することによって外部スペースから打合せブースを区分する。なお、当該壁構造21によって区分される区分構造は、当該壁構造21に加え、互いに向き合う話者P1,P2間に配置されるテーブル3と、話者が着座する一対の椅子(不図示)とを備える。当該壁構造21は、複数のパネル部材22a~22jによってテーブル3の近傍の空間を周囲の空間と区分することで室内スペースに打合せブースを画定する。当該壁構造21は、複数の集音部25a~25jの集音形状が二次曲線回転面又はこの二次曲線回転面の一部である。当該壁構造21におけるテーブル3は、図1及び図2のテーブル3と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
当該壁構造21は、複数のパネル部材22a~22jによって構成される一対のパネル部材群23a,23bを有する。一対のパネル部材群23a,23bは、複数のパネル部材22a~22jの集音部25a~25jの前面が打合せブース側を向くように構成される。当該壁構造21によって区分される区分構造では、一対のパネル部材群23a,23bに挟まれる中間位置にテーブル3が配置され、このテーブル3と一対のパネル部材群23a,23bとの間に一対の椅子が配置されている。なお、当該壁構造21では、一対のパネル部材群23a,23bの複数の集音部25a~25jに挟まれる領域を除く空間において打合せブース及び外部スペースを区分する他のパネル部材を備えていてもよい。また、当該壁構造21は、2人の話者P1,P2がテーブル3を挟んで一対一で会話をするために特に好適に用いられるが、より多くの話者による会話や、遠隔会議システムを使用するために用いることもできる。
【0035】
当該壁構造21は、一対のパネル部材群23a,23bが対向配置されているので、一対のパネル部材群23a,23bの間、詳細には一対のパネル部材群23a,23bの集音部25a~25jの間、に音源が存在する場合、一対のパネル部材群23a,23dの集音部25a~25j間に音声利得の高い領域を発現することができる。具体的には、一対のパネル部材群23a,23b間に音源が存在する場合、この音源から一方のパネル部材群23a,23bの各パネル部材22a~22jの集音部25a~25jに入射した音波は、それぞれ総体として平面視及び側面視で帯状の領域を形成しつつ他方のパネル部材群23a,23bの集音部25a~25j側に反射される。そのため、当該壁構造21は、一対のパネル部材群23a,23bが対向配置されることで、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0036】
(パネル部材群)
一対のパネル部材群23a,23bは、話者P1,P2の背面側を囲むように構成されている。詳細には、一対のパネル部材群23a、23bは、平面視で話者P1,P2の背面方向に凸になるよう複数のパネル部材22a~22jをアーチ状に配設して構成されている。
【0037】
各パネル部材22a~22jは、集音部25a~25jと、集音部25a~25jを一定の高さに調節すると共に、集音部25a~25jより下方を仕切る腰壁部(不図示)とを有する。集音部25a~25jは、例えば板状であり、一方の表面に前述の集音形状が形成されている。
【0038】
一方のパネル部材群23aを構成するパネル部材22a~22eの集音部25a~25eは、他方のパネル部材群23bを構成するパネル部材22f~22jの集音部25f~25jと対向配置されることが好ましい。具体的には、一方のパネル部材群23aの集音部25aが他方のパネル部材群23bの集音部25fと対向配置され、一方のパネル部材群23aの集音部25bが他方のパネル部材群23bの集音部25gと対向配置され、一方のパネル部材群23aの集音部25cが他方のパネル部材群23bの集音部25hと対向配置され、一方のパネル部材群23aの集音部25dが他方のパネル部材群23bの集音部25iと対向配置され、一方のパネル部材群23aの集音部25eが他方のパネル部材群23bの集音部25jと対向配置されることが好ましい。当該壁構造21は、一方のパネル部材群23aを構成するパネル部材22a~22eの集音部25a~25eと、他方のパネル部材群23bを構成するパネル部材22f~22jの集音部25f~25jとが対向配置されることで、一対のパネル部材群23a,23b間に音源が存在する場合に、対向する各集音部25a~25j間に音声利得の高い領域を発現することができる。そのため、当該壁構造21は、一方のパネル部材群23aを構成するパネル部材22a~22eの集音部25a~25eと、他方のパネル部材群23bを構成するパネル部材22f~22jの集音部25f~25jとが対向配置されることによって利得の高い領域を拡大することができ、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0039】
各集音部25a~25jの集音形状の焦点は異なることが好ましい。当該壁構造21は、各集音部25a~25jの集音形状の焦点が異なることで、一対のパネル部材群23a,23b間に音声利得の高い領域を発現させやすい。
【0040】
一方のパネル部材群23aを構成するパネル部材22a~22eの集音部25a~25eが他方のパネル部材群23bを構成するパネル部材22f~22jの集音部25f~25jと対向配置される場合、対向配置される集音部22a~22j同士の集音形状は等しいことが好ましい。また、対向配置される集音部22a~22j同士の二次曲線回転面の回転軸は同一直線状に配されることが好ましい。
【0041】
各パネル部材22a~22jの集音部25a~25jの集音形状は、二次曲線回転面の一部であることが好ましい。また、前記二次曲線回転面としては、回転放物面又は回転楕円面が好ましく、回転放物面がより好ましい。前記二次曲線回転面が回転放物面であることによって、一対のパネル部材群23a,23b間に音源が存在する場合に、この音源から放音される音が前記二次曲線回転面の焦点に収束することを抑えつつ、一対のパネル部材群23a,23b間に音声利得の高い領域を発現させやすい。
【0042】
[第四実施形態]
<壁構造>
図5の壁構造31は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる複数の集音部35a~35eを備える。具体的には、当該壁構造31は、複数のパネル部材32a~32eを備えており、これらのパネル部材32a~32eがそれぞれ1つの集音部35a~35eを有する。当該壁構造31は、室内スペースを区分する壁構造であって、詳細には打合せブースを事務ブース等の外部スペースと区分するための壁構造である。当該壁構造31は、複数のパネル部材32a~32eを床面に配置することによって外部スペースから打合せブースを区分する。なお、当該壁構造31によって区分される区分構造は、当該壁構造31に加え、複数のパネル部材32a~32eの前面側において複数のパネル部材32a~32eに背を向けた状態で隣あう話者P1,P2の前方に配置されるテーブル33と、話者P1,P2が着座する一対の椅子(不図示)とを備える。当該壁構造31は、複数のパネル部材32a~32eによってテーブル33の近傍の空間を周囲の空間と区分することで室内スペースに打合せブースを画定する。当該壁構造31は、複数の集音部35a~35eの集音形状が二次曲線回転面又は二次曲線回転面の一部である。
【0043】
当該壁構造31は、複数のパネル部材32a~32eによって構成される1つのパネル部材群34を有する。このパネル部材群34は、複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eの前面が打合せブース側を向くように構成される。また、このパネル部材群34は、複数の集音部35a~35eが並列配置されており、具体的には複数のパネル部材32a~32eが集音部35a~35eの側面同士を接するように直線状に配置されている。当該壁構造31によって区分される区分構造では、テーブル33上に遠隔会議端末Tが載置されている。この遠隔会議端末Tは、スピーカ及びマイクを有し、このスピーカによって話者P1,P2に向けて音声を放音可能に構成されている。なお、当該壁構造31では、複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eと遠隔会議端末Tとに挟まれる領域を除く空間において打合せブース及び外部スペースを区分する他のパネル部材を備えていてもよい。また、当該壁構造31は、遠隔会議端末Tを用いた遠隔会議システムを使用するために特に好適に用いられるが、複数の話者がテーブル33を囲んで対話するために用いられてもよい。
【0044】
当該壁構造31は、複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eが側面同士を接するように並列配置されているので、音源と複数の集音部35a~35eとの間に音声利得の高い領域を発現することができる。具体的には、複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eが側面同士を接するように並列配置されている場合、音源から各パネル部材32a~32eの集音部35a~35eに入射した音波は、それぞれ各集音部35a~35eの焦点側に収束しつつ反射される。そのため、当該壁構造31によると、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0045】
(パネル部材)
各パネル部材32a~32eは、集音部35a~35eと、集音部35a~35eを一定の高さに調節すると共に、集音部35a~35eの下方を仕切る腰壁部(不図示)とを有する。集音部35a~35eは、例えば板状であり、一方の表面に前述の集音形状が形成されている。
【0046】
図6に示すように、各パネル部材32a~32eの集音部35a~35eの集音形状は、二次曲線回転面の一部であることが好ましい。当該壁構造31は、例えばパネル部材群34の左右方向中央部に配設されるパネル部材32cの集音部35cの集音形状を、音源(つまり、遠隔会議端末Tのスピーカ)及びこのパネル部材32cの左右方向中央を回転軸が通る二次曲線回転面の一部とし、このパネル部材32cの左右方向外側に配設されるパネル部材32a,32b,32d,32eの集音部35a,35b,35d,35eの集音形状を、音源及び各パネル部材32a,32b,32d,32eの左右方向中央よりもパネル部材群34における左右方向中央側を回転軸が通る二次曲線回転面の一部とすることができる。これにより、当該壁構造31は、遠隔会議端末Tから放音される音をパネル部材群34の左右方向中央側に反射させ、この音声を話者P1,P2に聞き取りやすくすることができる。なお、当該壁構造31では、前記集音形状をテーブル33よりも上側のみに形成してもよい。
【0047】
また、各パネル部材32a~32eの集音部35a~35eの二次曲線回転面の回転軸は、話者P1,P2の想定される頭部間に位置することが好ましい。二次曲線回転面の回転軸が話者P1,P2の想定される頭部間に位置することで、一方の話者P1の声を他方の話者P2側に反射させ、かつ他方の話者P2の声を一方の話者P1側に反射させやすい。つまり、当該壁構造31は、各パネル部材32a~32eの集音部35a~35eの二次曲線回転面の回転軸が音源間に位置することで、各音源から放音される音に対する音声利得の高い領域を他の音源側に発現しやすい。そのため、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0048】
複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eの集音形状の焦点は異なることが好ましい。このように、複数のパネル部材32a~32eの集音部35a~35eの集音形状の焦点が異なることによって、パネル部材群34の前面側に音声利得の高い領域を発現させやすい。これにより、話者P1,P2の頭部が予め想定される位置からずれた場合でも、話者P1,P2が音声を聞き取り難くなるおそれが低い。
【0049】
前記二次曲線回転面としては、回転放物面又は回転楕円面が好ましく、回転放物面がより好ましい。前記二次曲線回転面が回転放物面であることによって、遠隔会議端末Tから放音される音や話者P1,P2の声が前記二次曲線回転面の焦点に収束することを抑えつつ、パネル部材群34の前面側に音声利得の高い領域を発現させやすい。
【0050】
〔テーブル〕
テーブル33は、話者P1,P2の着席位置を誘導する誘導構造である切欠き33aを有することが好ましい。また、テーブル33は、遠隔会議端末Tを載置する位置を示す位置決め構造(不図示)を有することが好ましい。この位置決め構造としては、例えば遠隔会議端末Tの載置位置を示す着色によるマーキング、遠隔会議端末Tを載置するための台座等が挙げられる。
【0051】
[第五実施形態]
<壁構造>
図7の壁構造41は、前面に前方から入射する音波を反射して収束させる複数の集音部45a~45jを備える。具体的には、当該壁構造41は、複数のパネル部材42a~42jを備えており、これらのパネル部材42a~42jがそれぞれ1つの集音部45a~45jを有する。当該壁構造41は、室内スペースを区分する壁構造であって、詳細には打合せブースを事務ブース等の外部スペースと区分するための壁構造である。当該壁構造41は、複数のパネル部材42a~42jによって構成される対向する一対のパネル部材群43a,43bを有する。一対のパネル部材群43a,43bは、複数のパネル部材42a~42jの集音部45a~45jの前面が打合せブース側を向くように配設されている。また、当該壁構造41によって区分される区分構造は、当該壁構造41に加え、一対のパネル部材群43a,43bの間に配設されるテーブル3と、話者P1,P2が着座する椅子(不図示)とを備える。テーブル3は、互いに向き合う話者P1,P2に対応する対向する2辺を有する天板を備えており、この2辺が一対のパネル部材群43a,43bの対向方向に配設されている。つまり、当該壁構造41は、一対のパネル部材群43a,43bが話者P1,P2の側方に位置するよう構成されている。当該壁構造41は、複数のパネル部材42a~42jを床面に配置することによって外部スペースから打合せブースを区分する。当該壁構造41は、複数のパネル部材42a~42jによってテーブル3の近傍の空間を周囲の空間と区分することで室内スペースに打合せブースを画定する。当該壁構造41は、前記集音形状が二次曲線回転面又は二次曲線回転面の一部である。当該壁構造41におけるテーブル3は、図1及び図2のテーブル3と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
当該壁構造41は、各パネル部材群43a,43bにおいて、複数の集音部45a~45jが並列配置されている。詳細には、各パネル部材群43a,43bにおいて、複数のパネル部材42a~42jは、集音部45a~45jの側面同士が接する状態で平面視直線状に配設されている。なお、当該壁構造41では、一対のパネル部材群43a,43bの集音部45a~45jに挟まれる領域を除く空間において打合せブース及び外部スペースを区分する他のパネル部材を備えていてもよい。また、当該壁構造41は、一対のパネル部材群43a,43bを側方に配した状態で話者P1,P2がテーブル3を挟んで向き合って会話をするために特に好適に用いられるが、一対のパネル部材群43a,43bの対向方向に向き合う話者による会話や、遠隔会議システムを使用するために用いることもできる。
【0053】
(パネル部材群)
一方のパネル部材群43aのパネル部材42a~42eは、他方のパネル部材群43bのパネル部材42f~42jと対向配置されている。より詳細には、一方のパネル部材群43aのパネル部材42a~42eの集音部45a~45eは、他方のパネル部材群43bのパネル部材42f~42jの集音部45f~45jと対向配置されている。
【0054】
各パネル部材42a~42jは、集音部45a~45jと、集音部45a~45jを一定の高さに調節すると共に、集音部45a~45jより下方を仕切る腰壁部(不図示)とを有する。集音部45a~45jは、例えば板状であり、一方の表面に前述の集音形状が形成されている。
【0055】
図8に示すように、各パネル部材42a~42jの集音部45a~45jの集音形状は、二次曲線回転面の一部であることが好ましい。また、各パネル部材群43a,43bにおいて複数のパネル部材42a~42jの集音部45a~45jの集音形状の焦点は異なることが好ましい。また、各パネル部材42a~42jの集音部45a~45jの集音形状は、回転軸が各パネル部材42a~42jの平面方向と垂直で、かつ各パネル部材42a~42jの左右方向中央を通る二次曲線回転面の一部であることが好ましい。この構成によると、一対のパネル部材群43a,43bの延在方向(各パネル部材群43a,43bにおいて複数のパネル部材42a~42jが連続する方向)の一方側から入射した声を前記延在方向の他方側に反射させやすい。具体的には、一対のパネル部材群43a,43bの延在方向の一方側に音源が存在する場合、音源から各パネル部材42a~42jの集音部45a~45jに入射した音波は、各集音部42a~42j毎に異なる点に収束しつつ一対のパネル部材群43a,43bの延在方向の他方側に反射される。これにより、一対のパネル部材群43a,43bの延在方向の一方側に音源が存在する場合、前記延在方向の他方側に音声利得の高い領域を発現しやすい。なお、音声利得の高い領域の発現位置を制御する点からは、対向配置される集音部45a~45j同士の集音形状は等しいことが好ましい。
【0056】
当該壁構造41は、一対のパネル部材群43a,43bの延在方向の一方側から入射した声を一対のパネル部材群43a,43bの延在方向の他方側に向けて反射させやすいので、一方の話者P1の声を他方の話者P2に向けて効率よく反射させ、かつ他方の話者P2の声を一方の話者P1に向けて効率よく反射させることができるので、話者P1,P2の声を小さくした場合でも互いの声を容易に聞き取らせやすい。
【0057】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0058】
例えば当該壁構造は、必ずしも各パネル部材が1つの集音部を有する必要はなく、1つのパネル部材が複数の集音部を有していてもよい。この場合、当該壁構造は、例えば1つのパネル部材のみから構成されてもよい。
【0059】
前記パネル部材の具体的構成は、特に限定されるものではなく、例えば前述の腰壁部を有しなくてもよい。
【0060】
当該壁構造によって区分される区分構造におけるテーブル及び椅子の具体的構成及び個数は特に限定されるものではない。例えば前記テーブルは、着席位置の誘導構造や遠隔会議端末を載置する位置を示す位置決め構造を有しなくてもよい。また、当該壁構造は、必ずしもテーブル及び椅子を備えなくてもよい。
【0061】
当該壁構造は、建物の一部をなす固定壁や天井を形成するために使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明の壁構造は、周囲の環境ノイズを大きくすることなく、会話内容が外部に伝わり難くすることができるので、室内スペースを分割して打合せブースを形成するために特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,11,21,31,41 壁構造
2a~2d,22a~22j,32a~32e,42a~42j パネル部材
3,13,33 テーブル
3a,13a,33a 切欠き
4a,4b 椅子
5a~5d,25a~25j,35a~35e,45a~45j 集音部
6 腰壁部
23a,23b,34,43a,43b パネル部材群
P1~P4 話者
T 遠隔会議端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8