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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】懸濁型外用液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20220720BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 31/569 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K31/573
A61K31/56
A61K31/569
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017238188
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2018100266
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2016246528
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】緒方 真由美
(72)【発明者】
【氏名】菅原 謙
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】小比田 智子
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-067614(JP,A)
【文献】特表2014-501779(JP,A)
【文献】特開平11-130660(JP,A)
【文献】特開平10-259132(JP,A)
【文献】特開2006-083081(JP,A)
【文献】特開平09-020649(JP,A)
【文献】国際公開第95/003784(WO,A1)
【文献】特開2008-179623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)難水溶性薬物、 (b)結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種、(c)ジェランガム、及び(d)1価の金属塩含有することを特徴とする懸濁型外用液剤。
【請求項2】
(a)難水溶性薬物が、ベクロメタゾンのエステル誘導体及びその塩、フルチカゾンのエステル誘導体及びその塩、プレドニゾロン、プレドニゾロンのエステル誘導体及びその塩、モメタゾンのエステル誘導体及びその塩、フルオロメトロン、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の懸濁型外用液剤。
【請求項3】
(d)1価の金属塩含まれる金属が、ナトリウム又はカリウムである、請求項1又は2に記載の懸濁型外用液剤。
【請求項4】
粘膜適用製剤である、請求項1~3の懸濁型外用液剤。
【請求項5】
点鼻剤である、請求項1~4のいずれかに記載の懸濁型外用液剤。
【請求項6】
チキソトロピー性を示す、請求項1~5のいずれかに記載の懸濁型外用液剤。
【請求項7】
用時振とう型製剤である、請求項1~6のいずれかに記載の懸濁型外用液剤。
【請求項8】
(b)結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群なら選ばれる少なくとも1種、(c)ジェランガム、及び(d)1価の金属塩含有する液に、(a)分散させた難水溶性薬物を加える工程を含む、懸濁型外用液剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難水溶性薬物を含有する懸濁型外用液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の吸収効率や薬効を高めるために、アレルギー性鼻炎治療の点鼻剤、ドライ・アイ治療の点眼剤など直接粘膜に適用する製剤が開発されている。これらの局所適用製剤は、組織への刺激性を回避するために水性基剤が用いられるが、一般に有効成分である薬物の溶解性が低いために、懸濁型外用液剤として用いられることが多い。
懸濁型外用液剤は、通常、水に不溶又は難水溶性の有効成分である薬物を長期間にわたって安定に分散させるための分散剤として、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性又は水膨潤性の高分子が添加されている。例えば、難水溶性の薬効成分と多価アルコール、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、清涼化剤を含有する水性懸濁剤(特許文献1)や、水不溶性又は難水溶性薬物、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤(特許文献2)が知られている。
このような局所適用製剤は即効性があるため、対症療法的に用いられることが多いが、滞留性が劣るため十分な持続効果が得られていなかった。このため、持続的な効果が得られる製剤が望まれていた。
【0003】
一方、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤でゲル状にした製剤は、投与したときに薬物含有製剤が投与部位に付着し、有効成分の利用率が上がるため持続した効果が期待できる。しかし、ゲル状の製剤は一般的な点鼻剤、点眼剤等に汎用される容器では良好に患部に投与できないといった欠点がある。
【0004】
従来、塗布する前は液状で、塗布後に患部でゲル化し、患部での付着性を高めて薬物滞留性を向上した局所適用製剤として、ジェランガム、ペクチンおよびアルギン酸ソーダから選ばれる少なくとも1種のカチオン応答型高分子を含有する点鼻組成物(特許文献3)、水系溶媒にジェランガム及びペクチンから選ばれる少なくとも1種及びポリエチレングリコールを配合した粘膜適用液剤(特許文献4)、製剤中に溶解し、且つ、ゲル化していないジェランガムを含有することを特徴とする直腸、尿道及び膣適用半固形状製剤(特許文献5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-67614号公報
【文献】特開2008-179623号公報
【文献】特許第4457422号
【文献】特許第5200365号
【文献】特許第5217136号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
難水溶性薬物を安定に分散配合した懸濁型外用液剤において、患部での付着性を向上させるためにジェランガムを配合すると、難水溶性薬物が沈降してしまい、分散安定性が低下してしまうといった問題点を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、1価の金属塩を配合すると、難水溶性薬物が長期間にわたって安定に分散できる懸濁型外用液剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かかる本発明の態様は次のとおりである。
(1)(a)難水溶性薬物、 (b)結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種、(c)ジェランガム、及び(d)1価の金属塩及び1価の金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする懸濁型外用液剤、
(2)(a)難水溶性薬物が、ベクロメタゾンのエステル誘導体及びその塩、フルチカゾンのエステル誘導体及びその塩、プレドニゾロン、プレドニゾロンのエステル誘導体及びその塩、モメタゾンのエステル誘導体及びその塩、フルオロメトロン、及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の懸濁型外用液剤、
(3)(d)1価の金属塩又は1価の金属の水酸化物に含まれる金属が、ナトリウム又はカリウムである、(1)に記載の懸濁型外用液剤、
(4)粘膜適用製剤である、(1)~(3)の懸濁型外用液剤、
(5)点鼻剤である、(1)~(4)のいずれかに記載の懸濁型外用液剤、
(6)チキソトロピー性を示す、(1)~(5)のいずれかに記載の懸濁型外用液剤、
(7)用時振とう型製剤である、(1)~(6)のいずれかに記載の懸濁型外用液剤、
(8)(b)結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びその塩からなる群なら選ばれる少なくとも1種、(c)ジェランガム、及び(d)1価の金属塩及び1価の金属の水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する液に、(a)分散させた難水溶性薬物を加える工程を含む、懸濁型外用液剤の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、患部での付着性が高く、かつ、難水溶性薬物が長期間にわたって安定に分散できる懸濁型外用液剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、難水溶性薬物としては、日本薬局方の溶解度表記で水にほとんど溶けない、極めて溶けにくいものを指し、例えばベタメタゾン及び/又はその塩、プレドニゾロン、プレドニゾロンのエステル誘導体及び/又はその塩、ヒドロコルチゾン及び/又はその塩、ベクロメタゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、モメタゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、クロベタゾール及び/又はその塩、デキサメタゾン及び/又はその塩、ジフルコルトロン、クロベタゾン及び/又はその塩、フルチカゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオロメトロン、ハルシノニド、プロピオン酸デプロドン等を挙げることができ、これらは通常医薬品として用いられる品質のものを使用することができる。また、これらの難水溶性薬物を1種又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これら難水溶性薬物のうち、好ましいのはベクロメタゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、フルチカゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、プレドニゾロンのエステル誘導体及び/又はその塩、モメタゾンのエステル誘導体及び/又はその塩、フルオロメトロン、トリアムシノロンアセトニドである。このうち好ましいのは、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、プレドニゾロン、プレドニゾロン酢酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、フルオロメトロン、トリアムシノロンアセトニドであり、さらに好ましくはベクロメタゾンプロピオン酸エステルである。
難水溶性薬物の含有量は、医薬品として配合される一般的な量であり、具体的には、本発明の懸濁型外用液剤全体の0.01~0.3重量%である。
【0011】
本発明で用いる(b)成分としては、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩が挙げられる。カルボキシメチルセルロースの塩のうち好ましいのはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。これらは分散剤であり、懸濁型外用液剤にチキソトロピー性を付与する成分である。また、本発明の結晶セルロース・カルメロースナトリウムとしては、旭化成ケミカルズ社製のセオラスRC-A591NF等が使用できる。本発明の(b)成分の好ましい配合量は懸濁型外用液剤全体の0.1~10重量%であり、より好ましくは0.1~3重量%であり、最も好ましいのは1~2重量%である。また(b)成分としては結晶セルロース・カルメロースナトリウムが好ましい。
【0012】
本発明において、(c)成分のジェランガムは、Shpingomonas elodeaが菌体外に算出する多糖類であり、カルシウムイオンやナトリウムイオンなどのカチオンに応答してゲル化する性質から、種々医薬品や食品に配合されている。本発明で用いるジェランガムの好ましい配合量は、懸濁型外用液剤全体の0.01~2重量%であり、さらに好ましい範囲は0.01~0.1重量%である。
【0013】
本発明で用いる(d)成分の1価の金属塩又は1価の金属の水酸化物に含まれる金属としては、ナトリウムやカリウム等を挙げることができる。金属塩に含まれる酸としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、塩酸、硫酸、酒石酸、酢酸、硝酸、コハク酸、マレイン酸等を挙げることができる。本発明の1価の金属塩と1価の金属の水酸化物は1種又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これら1価の金属塩と1価の金属の水酸化物のうち、好ましいのはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、エデト酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、さらに好ましくはクエン酸ナトリウムである。
本発明で用いる1価の金属塩と1価の金属の水酸化物の好ましい配合量は、懸濁型外用液剤全体の0.01~5重量%であり、より好ましくは0.1~1重量%である。
【0014】
本発明の懸濁型外用液剤には、殺菌剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血管収縮剤、抗アレルギー剤、ビタミン、アミノ酸、ピント調節剤、収斂剤、清涼化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤、溶解補助剤などの通常配合することができる他の有効成分、添加剤などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0015】
本発明の懸濁型外用液剤の調製は、常法により、精製水に難水溶性薬物、結晶セルロース・カルメロースナトリウム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ジェランガム、1価の金属塩及び必要があればその他の成分を混合した後、必要に応じて酸及び/又は塩基によりpHの調節を行い、最終的に精製水により容量調整をする製造方法が最も簡便である。
【0016】
本発明の懸濁型外用液剤は、粘膜適用製剤又は皮膚適用製剤等として使用することができるが、粘膜適用製剤が好ましい。具体的には、点眼剤、点鼻剤、口腔用剤、咽頭用剤、直腸適用剤、尿道適用剤、膣適用剤が好ましく、より好ましくは点鼻剤である。また、本発明の懸濁型外用液剤は、使用直前に振とうする用時振とう型製剤が好ましい。
【0017】
また、本発明の懸濁型外用液剤は、チキソトロピー性を示す液剤であることが好ましい。本発明において、チキソトロピー性とは、一定のせん断力を加えると見かけの粘度が低下し、静置により見かけの粘度が回復する性質を示すものである。本発明におけるチキソトロピー性を示す懸濁型外用液剤とは、使用前の静置時には一定の粘度を有することから難水溶性薬物が均一に分散している状態を維持し易く、使用時に一定のせん断力を加える(例:本発明の液剤を含んだ容器を軽く振とうする)ことにより粘度が下がるため容器から吐出しやすくなるものである。そして、本発明の懸濁型外用液剤は、噴霧等により吐出されて患部に付着するとジェランガムの性質により粘度が上昇してゲル化する。そのため、患部における滞留性がよく、結果として難水溶性薬物の効果がより発揮できるものである。
【実施例
【0018】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中、%は重量%を意味する。また試験例中の遠心分離は、長期間保存時の分散安定性を評価する方法として実施した。一般的に懸濁型外用液剤のような懸濁剤を長期間保存すると、懸濁剤中の液体(溶媒)及び固体(分散質)はいずれも地球の重力を受けるため、密度の大きい物質が沈降する。例えば懸濁剤を1年間静置した場合、重力の積算値は1(年)×365(日)×24(時間)×1(×g)となる。これは8760(×g)の力を1時間加えた場合の積算値と同等であり、遠心分離などにより一方向に大きな力を加えることで、懸濁剤の沈降挙動を短時間で予測することができる。遠心分離後の沈降物重量が少なければ、長期間保存した際も懸濁剤は沈降しづらく、分散安定性が高いと言える。また懸濁剤中の薬物濃度が遠心分離前後で変化しなければ、長期間保存した際も懸濁剤中に薬物が均一に分散できていると言える。
【0019】
実施例1
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル 0.1g
結晶セルロース・カルメロースナトリウム 2.0g
ジェランガム 0.025g
クエン酸ナトリウム 0.2g
ベンザルコニウム塩化物 0.015g
精製水 全100g
精製水60.0gに結晶セルロース・カルメロースナトリウム2.0gを加えてホモミキサーで8000rpm30分間攪拌して分散させ、精製水17.66gに溶解したジェランガム0.025g、クエン酸ナトリウム0.2gを加えて4500rpm15分間攪拌後、精製水20.0gに溶解したベンザルコニウム塩化物0.015g及び分散させたベクロメタゾンプロピオン酸エステル0.1gを加え、ホモミキサーで5000rpm10分間攪拌して懸濁液を得た。
実施例1の粘度をB型回転粘度計(TVB-10M/東機産業(株))にて2種類の条件で測定した。粘度は回転数6rpmのとき1637mPa・s(M2プローブ、1分後)、回転数60rpmのとき278mPa・s(M3プローブ、1分後)となった。回転数を上げる(加わるせん断力が大きくなる)ことで粘度が低下しており、実施例1がチキソトロピー性を示すことが確認できた。
【0020】
実施例1に準じて製造した実施例2~3及び比較例1~3を下記表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
(試験例1)
実施例1、2、3、比較例1、3で調製した液剤8.5gを透明ガラス管に充填してサンプルとした。このサンプルを遠心機で1000rpm10分間遠心分離した後、上清を全て取り除いた。沈降物を50℃2日間乾燥させた後、沈降物の重量を測定した。ガラス管に充填したサンプル中の精製水以外の成分に対する沈降物の重量の割合を算出し、沈降率とした。なお比較例2は調製直後に製剤が2層に分離し、薬物を均一に分散できなかったため試験を実施しなかった。
【0023】
(試験例2)
実施例1、2、3、比較例1、3で調製した液剤8.5gを透明ガラス管に充填してサンプルとした。このサンプルを遠心機で1000rpm10分間遠心分離した後、懸濁剤を1g採取した。懸濁剤中の難水溶性薬物濃度を液体クロマトグラフィー(LC-2010CHT/島津製作所(株))を用いて測定した。遠心分離前の懸濁剤中の難水溶性薬物濃度を100%とし、これに対して遠心分離後の液剤上部の薬物濃度を算出した。なお比較例2は調製直後に製剤が2層に分離し、薬物を均一に分散できなかったため試験を実施しなかった。
【0024】
結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
難水溶性薬物に結晶セルロース・カルメロースナトリウムとジェランガムを配合した液剤は、分散安定性が悪かったが(比較例1)、クエン酸ナトリウムを配合すると分散安定性が向上することが分かった(実施例1~2)。また、難水溶性薬物とジェランガムとクエン酸ナトリウムを配合した液剤は直後に2層に分離し、難水溶薬物を安定に分散できなかった(比較例2)。さらに、難水溶性薬物と結晶セルロース・カルメロースナトリウムとクエン酸ナトリウムを配合した液剤では、分散安定性が悪かった(比較例3)。以上の結果より、本発明の液剤は長期間保存した場合にも分散安定性が高いと考えられる(実施例1~3)。
【0027】
実施例1に準じて製造した実施例4~10及び比較例4の処方及び試験例1の結果を下記表3に示す。比較例4は調製翌日に製剤が2層に分離し、薬物を均一に分散できなかったため試験を実施しなかった。
【0028】
【表3】
【0029】
難水溶性薬物に結晶セルロース・カルメロースナトリウムとジェランガムとクエン酸ナトリウムを配合した液剤(実施例4~10)は、試験例1の結果が実施例1~3と同程度であり、長期間保存した場合にも分散安定性が高いと考えられる。また、1価の金属塩でなく2価の金属塩を配合した液剤は翌日に2層に分離し、難水溶性薬物を安定に分散できなかった(比較例4)。
【0030】
以下に本発明の処方例を示す。
【0031】
処方例1
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル 0.1g
結晶セルロース・カルメロースナトリウム 2.0g
ジェランガム 0.025g
クエン酸ナトリウム 0.2g
ベンザルコニウム塩化物 0.015g
ポリソルベート80 0.005g
グリセリン 0.4g
プロピレングリコール 0.4g
クエン酸 0.03g
メントール 0.004g
精製水 全100g
精製水59.5gに結晶セルロース・カルメロースナトリウム2.0gを加えてホモミキサーで8000rpm30分間攪拌して分散させ、精製水17.51gに溶解したジェランガム0.025g、クエン酸ナトリウム0.2gを加えて4500rpm15分間攪拌後、精製水19.8gに溶解したベンザルコニウム塩化物0.015g及び分散させたベクロメタゾンプロピオン酸エステル0.1gを加え、ホモミキサーで5000rpm10分間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液にポリソルベート80を0.005g、グリセリン0.4g、プロピレングリコール0.4g、クエン酸0.03g及びメントール0.004gを加えて溶解させた。
【0032】
処方例2
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル 0.1g
結晶セルロース・カルメロースナトリウム 2.0g
ジェランガム 0.025g
クエン酸ナトリウム 0.2g
ベンザルコニウム塩化物 0.015g
ポリソルベート80 0.05g
グリセリン 3.0g
プロピレングリコール 15g
クエン酸 0.1g
メントール 0.01g
精製水 全100g
精製水60.0gに結晶セルロース・カルメロースナトリウム2.0gを加えてホモミキサーで8000rpm30分間攪拌して分散させ、精製水9.5gに溶解したジェランガム0.025g、クエン酸ナトリウム0.2gを加えて4500rpm15分間攪拌後、精製水10.0gに溶解したベンザルコニウム塩化物0.015g及び分散させたベクロメタゾンプロピオン酸エステル0.1gを加え、ホモミキサーで5000rpm10分間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液にポリソルベート80を0.05g、グリセリン3.0g、プロピレングリコール15g、クエン酸0.1g及びメントール0.01gを加えて溶解させた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、患者のコンプライアンスのよい、分散性の良好な難水溶性薬物含有懸濁型外用液剤を提供することができる。