(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置、紙葉類処理方法、および紙葉類処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G07D 11/237 20190101AFI20220720BHJP
G07D 11/26 20190101ALI20220720BHJP
【FI】
G07D11/237
G07D11/26
(21)【出願番号】P 2018046146
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 大生
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-156732(JP,A)
【文献】特開2002-179285(JP,A)
【文献】特開2016-199380(JP,A)
【文献】特開平11-208932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00 - 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送路に沿って搬送する搬送部と、
前記搬送路に沿って搬送されている紙葉類の状態を取得する状態取得部と、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が適正であるかどうかを判定する判定部と、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が、前記判定部によって適正でないと判定された紙葉類について、前記状態取得部で取得した当該紙葉類の状態を出力する出力部と、を備えた紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記搬送路において詰まりが発生した紙葉類についても、前記状態取得部で取得した当該紙葉類の状態を出力する、請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、紙葉類の状態に、前記搬送路における当該紙葉類の搬送速度を対応付けて出力する、請求項1、または2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
紙葉類の状態別に、前記搬送部における紙葉類の搬送動作の設定を対応付けた搬送動作設定情報を記憶する搬送動作設定情報記憶部と、
前記搬送部における紙葉類の搬送動作を、前記搬送動作設定情報を参照し、前記状態取得部で取得した当該紙葉類の状態に基づいて設定する搬送動作設定部と、を備えた請求項1~3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
搬送部が搬送路に沿って搬送している紙葉類の状態を状態取得部に取得させる状態取得ステップと、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が適正であるかどうかを判定する判定ステップと、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が、前記判定ステップで適正でないと判定された紙葉類について、前記状態取得ステップで取得させた当該紙葉類の状態を出力部において出力する出力ステップと、をコンピュータが実行する紙葉類処理方法。
【請求項6】
搬送部が搬送路に沿って搬送している紙葉類の状態を状態取得部に取得させる状態取得ステップと、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が適正であるかどうかを判定する判定ステップと、
前記搬送路における紙葉類の搬送速度が、前記判定ステップで適正でないと判定された紙葉類について、前記状態取得ステップで取得させた当該紙葉類の状態を出力部において出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させる紙葉類処理
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣、有価証券等の紙葉類を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送路に沿って搬送している紙幣について、金種および真偽等を識別し、当該紙幣を識別結果に応じた搬送先に搬送する紙幣処理装置がある。この種の紙幣処理装置は、現金自動預け払い機(ATM)、券売機、精算機等、紙幣を取り扱う様々な種類の機器で用いられている。
【0003】
また、予め設定された条件を満たす紙幣について、紙幣にかかるデータを収集する構成が提案されている(特許文献1等参照)。この特許文献1は、紙幣にかかるデータを収集する条件として、紙幣に対する真偽の識別結果(鑑別結果)、紙幣における正損の識別結果、紙幣の金種等を設定する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、紙幣の識別性能の向上を図る目的で、紙幣にかかるデータの収集を行っている。このため、特許文献1の構成では、搬送路において紙幣詰まりが発生することによる紙幣処理装置の稼働率の低下を抑制するためのデータの収集が適正に行えない。
【0006】
この発明の目的は、搬送路において紙葉類が詰まることによる稼働率の低下を抑制するのに有益なデータの収集が適正に行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の紙葉類処理装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0008】
状態取得部は、搬送部が搬送路に沿って搬送している紙葉類の状態を取得する。ここで言う、紙葉類は、紙幣、有価証券等であり、紙葉類の状態とは、しわ、折れ、汚れ等である。
【0009】
判定部は、搬送路における紙葉類の搬送速度が適正であるかどうかを判定する。出力部は、搬送路における紙葉類の搬送速度が、判定部によって適正でないと判定された紙葉類について、状態取得部で取得した当該紙葉類の状態を出力する。
【0010】
この構成では、出力部において出力された紙葉類の状態を収集することにより、搬送路における紙葉類の搬送速度が適正でなかった紙葉類の状態を収集することができる。紙葉類のしわ、折れ、汚れ等が、搬送路において紙葉類が詰まる主な原因である。また、搬送路における紙葉類の搬送速度の変化は、搬送部材(搬送ローラ、搬送ベルト等)と、紙葉類との当接面に生じる摩擦力が紙葉類のしわ、折れ、汚れ、破れ等によって変化することによって生じる。したがって、搬送路における紙葉類の搬送速度が適正でなかった紙葉類の状態を収集することにより、搬送路において詰まりが生じる可能性が低くない紙葉類の状態を収集することができる。すなわち、この構成によれば、搬送路において紙葉類が詰まることによる稼働率の低下を抑制するのに有益なデータの収集が適正に行える。
【0011】
また、出力部は、搬送路において詰まりが発生した紙葉類についても、状態取得部で取得した当該紙葉類の状態を出力するのが好ましい。このように構成すれば、搬送路において、実際に詰まった紙幣についても状態を収集できる。
【0012】
また、出力部は、紙葉類の状態に、搬送路における当該紙葉類の搬送速度を対応付けて出力する構成にしてもよい。このように構成すれば、収集した紙葉類の状態の分析がより細かく行える。
【0013】
さらに、紙葉類処理装置は、紙葉類の状態別に、搬送部における紙葉類の搬送動作の設定を対応付けた搬送動作設定情報を記憶する搬送動作設定情報記憶部と、搬送部における紙葉類の搬送動作を、搬送動作設定情報を参照し、状態取得部で取得した当該紙葉類の状態に基づいて設定する搬送動作設定部と、を備える構成にしてもよい。
【0014】
この場合、収集した紙葉類の状態の分析結果に基づく、搬送動作設定情報を搬送動作設定情報記憶部に記憶させることにより、紙葉類が搬送路に詰まるのを抑制できる。すなわち、搬送路において紙葉類が詰まることによる紙葉類処理装置の稼働率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、搬送路において紙葉類が詰まることによる稼働率の低下を抑制するのに有益なデータの収集が適正に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この例にかかる紙幣処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】この例にかかる紙幣処理装置の紙幣搬送路を示す概略図である。
【
図3】紙幣の搬送速度に対する判定レベルを説明する図である。
【
図4】紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態である紙幣処理装置について説明する。
【0018】
<1.適用例>
この例にかかる紙幣処理装置は、券売機、精算機等に適用され、投入された紙幣に対して金種、および真偽を識別し、識別結果に応じて当該紙幣を処理する。この紙幣処理装置は、紙幣を搬送する搬送路において、紙幣詰まりを発生させる可能性が比較的高い紙幣について取得した当該紙幣の状態を出力する。また、この紙幣処理装置は、紙幣搬送路において実際に詰まり(紙幣詰まり)を発生させた紙幣についても取得した当該紙幣の状態を出力する。
【0019】
紙幣処理装置から出力された各紙幣の状態は、解析装置(不図示)において収集される。解析装置は、収集した紙幣の状態を用いて、紙幣搬送路において紙幣詰まりの発生する要因の解析や、紙幣詰まりの発生を抑制するための対策の検討等を行う。すなわち、紙幣処理装置は、紙幣搬送路において紙幣詰まりの発生する要因の解析や、紙幣詰まりの発生を抑制するための対策の検討等を行うのに有益な情報(紙幣の状態)を出力する。
【0020】
さらに、紙幣処理装置は、解析装置における紙幣詰まりの発生を抑制するための対策の検討結果に基づいて、紙幣の搬送動作を制御する。
【0021】
<2.構成例>
図1は、この例にかかる紙幣処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図2は、この例にかかる紙幣処理装置の紙幣搬送路を示す概略図である。紙幣処理装置1は、制御ユニット2と、紙幣搬送部3と、紙幣識別部4と、上位入出力部5とを備えている。
【0022】
制御ユニット2は、紙幣処理装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット2は、搬送速度判定部2a、搬送動作設定部2b、紙幣状態記憶部2c、および搬送動作設定情報記憶部2dを有している。搬送速度判定部2a、搬送動作設定部2b、紙幣状態記憶部2c、および搬送動作設定情報記憶部2dの詳細については後述する。
【0023】
紙幣搬送部3は、紙幣投入口3iにおいて投入された紙幣を紙幣搬送路11、12、13に沿って搬送する。
図2に示すように、紙幣搬送路11は、紙幣投入口3iと紙幣返却口3oを結ぶ。紙幣投入口3i、および紙幣返却口3oは、紙幣処理装置1本体正面側に位置している。紙幣搬送路11は、紙幣処理装置1本体内部でUターンさせた搬送路である。紙幣搬送路12は、
図2に示す分岐点Aにおいて、紙幣搬送路11から分岐させた搬送路である。この紙幣搬送路12は、紙幣投入口3iにおいて投入された紙幣を一時的に保留する保留部として利用される。紙幣搬送路12で保留される紙幣の枚数は、1枚であるとは限らない。紙幣搬送路12は、複数枚の紙幣を重ねた状態で保留する。紙幣搬送路13は、
図2に示す分岐点Bにおいて、紙幣搬送路12から分岐した搬送路である。この紙幣搬送路13の一端(分岐点Bと反対側の端部)は、紙幣収納カセット10につながっている。すなわち、紙幣搬送路13は、紙幣収納カセット10に収納する紙幣を搬送する搬送路である。
【0024】
分岐点A、および分岐点Bには、紙幣の搬送先を切り替えるフラッパ(不図示)が設けられている。紙幣搬送部3は、フラッパを制御することにより、紙幣の搬送先を切り替える。また、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送方向は、双方向である。具体的には、紙幣搬送路11における紙幣の搬送方向は、紙幣投入口3iから紙幣返却口3oに向かう方向、または紙幣返却口3oから紙幣投入口3iに向かう方向の切り替えることができる。同様に、紙幣搬送路12における紙幣の搬送方向は、分岐点Aから分岐点Bに向かう方向、または分岐点Bから分岐点Aに向かう方向に切り替えることができる。また、紙幣搬送路13における紙幣の搬送方向は、分岐点Bから紙幣収納カセット10に向かう方向、または紙幣収納カセット10から分岐点Bに向かう方向に切り替えることができる。
【0025】
紙幣搬送部3は、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送方向を個別に切り替える。具体的には、紙幣搬送部3は、図示していないモータの回転方向を制御することによって、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送方向を切り替える。紙幣搬送路11、12、13は、例えば紙幣を挟持して搬送する一対の搬送ローラを搬送方向に並べた構成である。紙幣搬送部3は、図示していない搬送モータの駆動制御によって搬送ローラを駆動する。紙幣搬送部3は、搬送モータの回転速度も制御する。
【0026】
また、紙幣搬送部3は、紙幣搬送路11、12、13の複数の位置に配置した光電センサ3a~3gにより、各光電センサ3a~3gの検知位置における紙幣の有無を検知する。また、紙幣搬送部3は、光電センサ3a~3gの検知信号を用いて、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度を取得する。具体的には、2つの光電センサ3a~3g間における紙幣の検知タイミングの時間差を計測し、計測した時間差と、その2つの光電センサ3a~3g間の距離(紙幣搬送路上の距離)とを用いて、紙幣の搬送速度を取得する。さらに、紙幣搬送部3は、図示していない搬送モータの回転速度を制御することによって、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度を制御することができる。紙幣搬送部3が、この発明で言う搬送部に相当する。
【0027】
なお、紙幣の搬送速度の検出は、ある1つの光電センサ3a~3gおいて、紙幣を検知してから、紙幣を検知しなくなるまでの時間を計測し、計測した時間と、搬送方向における紙幣の長さとを用いて、紙幣の搬送速度を取得してもよい。搬送方向における紙幣の長さは、その紙幣の金種によって定まる。
【0028】
紙幣識別部4は、紙幣搬送路11に沿って搬送されている紙幣の真偽や金種を識別する。紙幣識別部4は、紙幣の光学パターン(画像)を取得するための画像センサ4a、紙幣の磁気パターンを取得するための磁気センサ4b等を有している。紙幣識別部4は、特に図示していないが、紙幣の厚さを取得する厚みセンサ等も備えている。紙幣識別部4は、各種センサにより紙幣から取得した情報に基づき、その紙幣の真偽、金種等を識別する。
【0029】
また、紙幣識別部4は、画像センサ4aで取得した紙幣の光学パターン、磁気センサ4bで取得した紙幣の磁気パターン等に基づき、当該紙幣のしわ、折れ、汚れ、破れ等の項目毎に、状態を取得する。紙幣のしわ、折れ、汚れ、破れ等の状態が、この発明で言う紙葉類の状態に相当する。紙幣識別部4が、この発明で言う状態取得部に相当する。
【0030】
上位入出力部5は、この紙幣処理装置1を適用した券売機、精算機等の上位装置との間でデータを入出力するインタフェースである。上位入出力部5が、この発明で言う出力部に相当する。
【0031】
次に、制御ユニット2が有する、搬送速度判定部2a、搬送動作設定部2b、紙幣状態記憶部2c、および搬送動作設定情報記憶部2dについて説明する。搬送速度判定部2aは、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度が適正であるかどうかを判定する。上述したように、紙幣搬送部3が、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度を取得する。搬送速度判定部2aは、紙幣搬送部3において取得された紙幣の搬送速度が、
図3に示す判定レベルL0~L4のいずれの範囲に属するかを判定する。判定レベルL0は、搬送速度がva~vbの範囲であり、紙幣の搬送速度が適正であると判定されるレベルである。判定レベルL1は、搬送速度がvaよりも速い速度であり、紙幣の搬送速度が適正でなく、速いと判定されるレベルである。判定レベルL2は、搬送速度がvc~vbの範囲であり、紙幣の搬送速度が適正でなく、やや遅いと判定されるレベルである。判定レベルL3は、搬送速度がvd~vcの範囲であり、紙幣の搬送速度が適正でなく、遅いと判定されるレベルである。判定レベルL4は、搬送速度がvdよりも遅い速度であり、紙幣の搬送速度が適正でなく、かなり遅いと判定されるレベルである。搬送速度判定部2aが、この発明で言う判定部に相当する。
【0032】
搬送動作設定部2bは、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度、搬送経路を設定する。搬送動作設定部2bは、後述する搬送動作設定情報記憶部2dに記憶している搬送動作設定情報に基づき、紙幣の搬送速度、搬送経路を設定する。
【0033】
紙幣状態記憶部2cは、紙幣投入口3iにおいて投入された紙幣について、投入日時、金種、搬送速度の判定レベル、紙幣詰まりの発生有無、紙幣画像、紙幣の状態等を対応付けた紙幣関連データを記憶する。紙幣の状態には、紙幣のしわ、折れ、汚れ、破れ等の状態が含まれている。紙幣識別部4が、紙幣の金種、紙幣画像、紙幣の状態を取得する。搬送速度判定部2aが、紙幣の搬送速度の判定レベルを判定している。また、紙幣詰まりの発生有無は、紙幣搬送部3において検出される。
【0034】
なお、制御ユニット2は、現在日時を計時する時計機能を有しており、紙幣が紙幣投入口3iに投入された時刻を検出できる構成である。また、紙幣関連データは、上記した一部の項目が欠落しているものであってもよいし、他の項目が追加されたものであってもよい。
【0035】
搬送動作設定情報記憶部2dは、金種毎に、紙幣の状態別に、搬送モータの回転速度、および搬送経路を対応付けた搬送動作設定情報を記憶する。例えば、紙幣の状態が、紙幣のしわ、折れ、汚れ、破れの4項目であり、各項目の状態が3段階で分類されている場合、搬送動作設定情報は、各金種の紙幣について、合計81のパターンのそれぞれに、搬送モータの回転速度、および搬送経路を対応付けた情報である。この搬送動作設定情報は、上述した解析装置における紙幣詰まりの発生を抑制するための対策の検討結果に基づいて生成されたものである。
【0036】
なお、搬送モータの回転速度が同じであっても、紙幣搬送路における紙幣の搬送速度が同じであるとは限らない。すなわち、搬送モータの回転速度が同じであっても、搬送ローラと、紙幣との当接面に生じる摩擦力が、紙幣のしわ、折れ、汚れ、破れ等によって変化するため、紙幣搬送路における紙幣の搬送速度が同じにならないこともある。
【0037】
紙幣処理装置1の制御ユニット2は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる紙葉類処理プログラムを実行したときに、搬送速度判定部2a、および搬送動作設定部2bとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる紙葉類処理プログラムを展開する領域や、このプログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。また、このメモリは、紙幣状態記憶部2c、および搬送動作設定情報記憶部2dとして利用される領域も有している。この紙幣状態記憶部2c、および搬送動作設定情報記憶部2dは、制御ユニット2に接続された記憶素子、または記憶媒体(不揮発性メモリ、揮発性メモリ、ハードディスク、ソリッドステートドライブ等)で構成してもよい。また、制御ユニット2は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる紙葉類処理方法を実行するコンピュータである。
【0038】
<3.動作例>
まず、
図2を参照しながら、この紙幣処理装置1における通常時の紙幣の搬送経路について簡単に説明しておく。この紙幣処理装置1は、紙幣投入口3iに投入された紙幣を紙幣搬送路11に沿って搬送し、紙幣識別部4で紙幣の真偽、金種を識別する。紙幣識別部4で真偽、または金種が識別できなかった紙幣は、紙幣搬送路11に沿って搬送され、紙幣返却口3oに放出される。紙幣識別部4で真偽、および金種が識別できた紙幣は、紙幣搬送路11、に沿って搬送され、分岐点Aで紙幣搬送路12に送られ、紙幣搬送路12で一時保留される。上述したように、紙幣搬送路12は、複数枚の紙幣を重ねた状態で保留することもある。紙幣処理装置1は、取引の終了が上位装置から通知されると、紙幣搬送路12に保留されている紙幣を、分岐点Bで紙幣搬送路13に送り、紙幣収納カセット10に収納する。
【0039】
詳細については、後述するが、この紙幣処理装置1は、紙幣識別部4において紙幣の真偽、および金種が識別された紙幣であっても、紙幣返却口3oに放出する場合がある。また、この紙幣処理装置1は、取引の終了が上位装置から通知される前であっても、紙幣識別部4において紙幣の真偽、および金種が識別された紙幣を、紙幣搬送路12で一時保留することなく、紙幣収納カセット10に収納する場合もある。
【0040】
なお、この例にかかる紙幣処理装置1は、上述したように、紙幣投入口3iに投入された紙幣を紙幣収納カセット10に収納する構成であるが、紙幣収納カセット10に収納している紙幣を釣銭等として紙幣返却口3o(または紙幣投入口3i)に放出しない構成である。
【0041】
図4は、この例にかかる紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。紙幣処理装置1は、取引の開始が上位装置から上位入出力部5に入力されるのを待つ(s1)。紙幣処理装置1は、取引の開始が上位装置から上位入出力部5に入力されると、紙幣が紙幣投入口3iに投入されるか、取引の終了が上位装置から上位入出力部5に入力されるのを待つ(s2、s3)。
【0042】
紙幣処理装置1は、s2で紙幣が紙幣投入口3iに投入されたことを検知すると、今回投入された紙幣の搬送を開始する(s4)。紙幣識別部4が、s4で搬送を開始した紙幣について、真偽、金種の識別を行うとともに、その紙幣の状態を取得する。また、紙幣搬送部3が、s4で搬送を開始した紙幣の搬送速度を取得する。
【0043】
紙幣処理装置1は、紙幣識別部4において取得された紙幣の状態に基づく紙幣関連データを紙幣状態記憶部2cに記憶する(s5)。また、搬送動作設定部2bが、紙幣識別部4において取得された紙幣の状態に基づき、紙幣の搬送経路および搬送モータの回転速度を決定する(s6)。s6では、紙幣を紙幣搬送路12に一時保留する搬送経路、紙幣を紙幣収納カセット10に収納する搬送経路、または紙幣を紙幣返却口3oに放出する搬送経路のいずれかに決定する。搬送動作設定部2bは、s6では、搬送動作設定情報記憶部2dに記憶している搬送動作設定情報の中から、紙幣識別部4において取得された紙幣の状態に該当する搬送モータの回転速度、および紙幣の搬送経路を読み出し、ここで読み出した搬送モータの回転速度、および搬送経路に決定する。
【0044】
上述したように、搬送動作設定情報は、解析装置における紙幣詰まりの発生を抑制するための対策の検討結果に基づいて生成されたものである。搬送動作設定情報について説明を補足する。解析装置は、例えば、紙幣の状態を、以下に示す(a)~(d)の4つの事象に分類する。
(a)通常時の搬送モータの回転速度、および通常時の搬送経路で紙幣詰まりが発生する可能性が低い
(b)搬送モータの回転速度を低速にすれば、通常時の搬送経路で紙幣詰まりが発生する可能性を低くできる
(c)搬送モータの回転速度を低速にすることにより、紙幣詰まりが発生する可能性を低くできるが、重ね合わせて保留した紙幣搬送路12から繰り出すときに紙幣詰まりが発生する可能性を低くできない
(d)搬送モータの回転速度を低速にしても、紙幣詰まりが発生する可能性を低くできない
解析装置は、
上記(a)に分類した紙幣の状態に対して、通常時の搬送モータの回転速度、および通常時の搬送経路を対応付け、
上記(b)に分類した紙幣の状態に対して、通常時よりも低速の搬送モータの回転速度、および通常時の搬送経路を対応付け、
上記(c)に分類した紙幣の状態に対して、通常よりも低速の搬送モータの回転速度、および紙幣搬送路12で一時保留することなく、紙幣収納カセット10に収納する搬送経路を対応付け、
上記(d)に分類した紙幣の状態に対して、通常よりも低速の搬送モータの回転速度、および紙幣返却口3oに放出する搬送経路を対応付け、
た搬送動作設定情報を生成する。
【0045】
なお、搬送動作設定情報は、上記した手法ではなく、他の手法で作成されてもよい。また、上記の例では、紙幣の状態を4つの事象に分類する場合を例にしているだけであり、分類する事象の個数はいくつであってもよい。
【0046】
紙幣処理装置1は、解析装置によって生成された搬送動作設定情報を搬送動作設定情報記憶部2dに記憶している。
【0047】
紙幣搬送部3は、s6で決定した搬送モータの回転速度、および紙幣の搬送経路で、今回投入された紙幣を搬送する。搬送速度判定部2aは、紙幣搬送路11、12、13における紙幣の搬送速度が適正であるかどうかを判定する(s7)。また、紙幣処理装置1は、s6で決定された紙幣の搬送動作が通常搬送(通常時の搬送モータの回転速度、および通常時の搬送経路)であったかどうかを判定する(s8)。紙幣処理装置1は、s7で紙幣の搬送速度が適正でないと判定された場合、またはs8で紙幣の搬送動作が通常搬送でないと判定された場合、出力フラグをオンする(s9)。
【0048】
紙幣処理装置1は、紙幣搬送部3による紙幣の搬送が完了すると、紙幣の搬送動作を停止し(s10、s11)、s2に戻る。
【0049】
また、紙幣処理装置は、上位装置から取引終了にかかる入力があると、紙幣搬送路12に一時保留している紙幣を紙幣収納カセット10に搬送し、収納する(s12)。紙幣処理装置1は、出力フラグがオンされていれば、s5で記憶した紙幣関連データを上位装置に出力し(s13、s14)、紙幣状態記憶部2cに記憶している紙幣関連データを削除して(s15)、s1に戻る。紙幣処理装置1は、出力フラグがオンされていなければ、s15で紙幣状態記憶部2cに記憶している紙幣関連データを削除して、s1に戻る。s15では、出力フラグのリセット(オフにする。)も実行される。
【0050】
また、この
図4では特に示していないが、紙幣処理装置1は、紙幣詰まりが発生した場合、s14以降の処理を実行する。すなわち、紙幣処理装置1は、紙幣詰まりが発生した場合、その時点において、紙幣状態記憶部2cに記憶している紙幣関連データを上位装置に出力する。
【0051】
このように、この例にかかる紙幣処理装置1は、取引毎に、その取引で処理した紙幣にかかる紙幣関連データを紙幣状態記憶部2cに一時的に記憶する。紙幣処理装置1は、紙幣詰まりが発生する可能性が低い紙幣のみ処理した取引については、紙幣状態記憶部2cに一時的に記憶した紙幣関連データを上位装置に出力しない。言い換えれば、紙幣処理装置1は、紙幣詰まりが発生する可能性が低くない紙幣を処理した取引については、紙幣状態記憶部2cに一時的に記憶した紙幣関連データを上位装置に出力する。すなわち、紙幣処理装置1は、搬送路において紙幣が詰まることによる稼働率の低下を抑制するための対策等を検討するのに有益なデータを上位装置に出力する。
【0052】
なお、上位装置は、適当なタイミングで紙幣処理装置1から取得した紙幣関連データを解析装置に送信する構成であってもよいし、係員等が上位装置に記憶されている紙幣処理装置1から入力された紙幣関連データを記憶媒体(ハードディスク、SSD、USBメモリ、CD等)にコピーし、この記憶媒体にコピーされた紙幣関連データを解析装置に読み取らせてもよい。
【0053】
<4.変形例>
上記では、紙幣を1枚ずつ紙幣投入口3iに投入する構成の紙幣処理装置1を例にして説明したが、紙幣処理装置1は、複数枚の紙幣を重ねた状態で投入できる紙幣投入部を有する構成であってもよい。
【0054】
また、紙幣処理装置1は、入金用紙幣収納カセット、および出金用紙幣収納カセットを有する構成であってもよい。この場合、出金用紙幣収納カセットに収納されている紙幣を、釣銭等として放出できる。また、紙幣処理装置1は、金種別に紙幣収納カセットを設け、入金紙幣を出金紙幣として利用する構成であってもよい。
【0055】
また、上記では、紙幣を処理する紙幣処理装置1を例にして説明したが、小切手、手形等の有価証券を取り扱う構成の紙葉類処理装置であってもよい。
【0056】
また、上記の例では、紙幣詰まりが発生する可能性が低くない紙幣を処理した取引において、本取引で処理した全ての紙幣について紙幣関連データを上位装置に出力する構成であるとしたが、紙幣詰まりが発生する可能性が低くない紙幣についてのみ、その紙幣にかかる紙幣関連データを上位装置に出力する構成にしてもよい。ただし、紙幣詰まりが発生した場合には、上記した例のように、紙幣状態記憶部2cに記憶している紙幣関連データを上位装置に出力するのがよい。
【0057】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0058】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
紙葉類を搬送路(11、12、13)に沿って搬送する搬送部(3)と、
前記搬送路(11、12、13)に沿って搬送されている紙葉類の状態を取得する状態取得部(4)と、
前記搬送路(11、12、13)における紙葉類の搬送速度が適正であるかどうかを判定する判定部(2a)と、
前記搬送路(11、12、13)における紙葉類の搬送速度が、前記判定部(2a)によって適正でないと判定された紙葉類について、前記状態取得部(4)で取得した当該紙葉類の状態を出力する出力部(5)と、を備えた紙葉類処理装置(1)。
【符号の説明】
【0059】
1…紙幣処理装置
2…制御ユニット
2a…搬送速度判定部
2b…搬送動作設定部
2c…紙幣状態記憶部
2d…搬送動作設定情報記憶部
3…紙幣搬送部
3a~3g…光電センサ
3i…紙幣投入口
3o…紙幣返却口
4…紙幣識別部
4a…画像センサ
4b…磁気センサ
5…上位入出力部
10…紙幣収納カセット
11,12、13…紙幣搬送路