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特許7106913音響機器、音響制御システム、音響制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】音響機器、音響制御システム、音響制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
H04R3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018054139
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019169767
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246660(JP,A)
【文献】特開2009-218882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125869(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/12
H03G 1/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパラメータに基づいてオーディオ信号を処理する信号処理部と、
前記オーディオ信号のレベルを調整するレベル調整部と、
前記オーディオ信号を入力して音を出力するスピーカと、
前記パラメータの切換指示を受け付けるインタフェースと、
前記パラメータの切換指示を受け付けた時に、第1タイミングから第2タイミングまでの間に前記レベル調整部のゲインを下げ、
前記第2タイミングから第3タイミングまでの間に 前記パラメータの切り替えを行い
前記第3タイミングから第4タイミングまでの間に、 所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量が所定値以下となるように、前記レベル調整部のゲインを上げる制御部と
を備える音響機器。
【請求項2】
前記インタフェースは、ネットワークを介して、前記パラメータの切換指示を受け付ける、
請求項1に記載の音響機器。
【請求項3】
前記所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量は、一定の変化率で変化する、
請求項1又は2に記載の音響機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の音響機器を複数備えた、
音響制御システム。
【請求項5】
所定のパラメータに基づいてオーディオ信号を処理し、
前記オーディオ信号のレベルを調整し、
前記オーディオ信号を入力して音を出力し、
前記パラメータの切換指示を受け付け、
前記パラメータの切換指示を受け付けた時に、第1タイミングから第2タイミングまでの間にレベル調整部のゲインを下げ、
前記第2タイミングから第3タイミングまでの間に 前記パラメータの切り替えを行い
前記第3タイミングから第4タイミングまでの間に、 所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量が所定値以下となるように、前記レベル調整部のゲインを上げる、
音響制御方法。
【請求項6】
ネットワークを介して、前記パラメータの切換指示を受け付ける、
請求項5に記載の音響制御方法。
【請求項7】
前記所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量は、一定の変化率で変化する、
請求項5又は6に記載の音響制御方法。
【請求項8】
所定のパラメータに基づいてオーディオ信号を処理し、
前記オーディオ信号のレベルを調整し、
前記オーディオ信号を入力して音を出力し、
前記パラメータの切換指示を受け付け、
前記パラメータの切換指示を受け付けた時に、第1タイミングから第2タイミングまでの間にレベル調整部のゲインを下げ、
前記第2タイミングから第3タイミングまでの間に 前記パラメータの切り替えを行い
前記第3タイミングから第4タイミングまでの間に、所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量が所定値以下となるように、前記レベル調整部のゲインを上げる、
処理を、音響機器に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、信号処理部のプリセットの切換指示を受け付け可能な音響機器に関し、特に、出力する音の音量制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、音量固定解除後のハードウェアボリュームが示す音量設定値とソフトウェア制御による音量設定値とが異なる場合に対処した音声出力装置を開示している。特許文献1の音声出力装置は、ユーザの音量操作の意図を反映した適切な音量変化を実現するものである。特許文献1は、音量が固定される機能が搭載された音声出力装置において、音量固定解除後にユーザの意図しない音量操作により急激な音量の変化を防止することが開示されている。特許文献1の音声出力装置は、これを実現するために、ハードウェアボリュームとソフトウェアボリュームとの2種類の音量設定値を備え、音量固定解除後の音量の差を緩やかに変化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-182639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の音声出力装置においては、オーディオ信号のプリセット切換に追従してアンプのゲイン変化を制御する方法について開示していない。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、外部からプリセットの切換指示を受け付けた場合に、ユーザに対しプリセットの切換前後の音量変化に違和感を生じないように音量制御する音響機器、音響制御システム、音響制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態である音響機器は、所定のパラメータに基づいてオーディオ信号を処理する信号処理部と、前記オーディオ信号のレベルを調整するレベル調整部と、前記オーディオ信号を入力して音を出力するスピーカと、前記パラメータの切換指示を受け付けるインタフェースと、前記パラメータの切換指示を受け付けた時に、前記レベル調整部のゲインを下げ、その後、所定の時間幅における前記レベル調整部のゲインの変化量が所定値以下となるように、前記レベル調整部のゲインを上げる制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の一実施形態によれば、プリセットの切換指示を受け付けた場合であっても、ユーザに対しプリセットの切換前後の音量変化に違和感を生じないように音量制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る音響機器の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るゲイン変更動作の例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、ゲイン変更動作の変形例を示す図である。
図5図5は、ゲイン変更動作の変形例を示す図である。
図6図6は、ゲイン変更動作の変形例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る音響機器の一例の構成を示すブロック図である。
図8図8は、第2実施形態に係る音響機器の表示器、オーディオI/O、及びネットワークI/Fの外観の一例を示す図である。
図9図9は、プリセットを説明するための図である。
図10図10は、第2実施形態に係る音響制御システムの構成を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に係る音響制御システムのミキサの構成を示すブロック図である。
図12図12Aは、第2実施形態に係るゲイン変更動作の第2の例を示す図であり、図12Bは、従来の参考例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照しながら、音響機器の具体的な構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る音響機器の構成を示す図である。図1においては、オーディオ信号の流れを破線で示す。
【0010】
図1に示すように、音響機器1は、構成としてCPU107、インタフェース(I/F)102、DSP(Digital Signal Processor)10、及びスピーカユニット111を備えている。DSP10は、信号処理部18及びレベル調整部19を備えている。CPU107は、インタフェース(I/F)102及びDSP10に接続されている。レベル調整部19は、信号処理部18、及びスピーカユニット111に接続されている。なお、音響機器1においては、スピーカユニット111が本発明における「スピーカ」の一例であり、CPU107が本発明における「制御部」の一例である。
【0011】
CPU107は、記憶媒体である不図示のメモリに記憶されているプログラムを読み出して、所定の機能を実現する。
【0012】
I/F102は、例えば音響機器1の筐体の一部に設けられたスイッチ、摘まみ、又はタッチパネル等からなり、ユーザの操作を受け付ける。なお、I/F102は、本発明におけるインタフェースの一例である。ユーザは、I/F102を介してプリセットの切換を指示する。
【0013】
プリセットとは、DSP10がミキシング、イコライジング、又はコンプレッシング等の信号処理を行うための内容を予め規定したものである。プリセットは、予め複数設定されており、音響機器1における不図示のメモリに記憶されている。ユーザは、複数のプリセットからいずれか一つを選択することで、プリセットの切換に基づいたパラメータの切換を容易に指示することができる。
【0014】
信号処理部18は、所定のプリセットのパラメータに基づいて、音響機器1の外部から入力されたオーディオ信号を処理する。信号処理部18は、オーディオ信号に、例えば、ミキシング、イコライジング、又はコンプレッシング等の処理を施す。CPU107は、プリセットのパラメータに基づいた処理を行うために必要なDSP10の係数を決定する。信号処理部18は、CPU107が決定した係数に従ってオーディオ信号の処理を行う。信号処理部18は、信号処理後のオーディオ信号を、レベル調整部19に出力する。
【0015】
レベル調整部19は、CPU107の指示に基づいて信号処理部18で信号処理が施されたオーディオ信号のレベルを調整した後に、レベル調整したオーディオ信号をスピーカユニット111へ出力する。スピーカユニット111は、レベル調整部19から出力されたオーディオ信号を入力して音を出力する。なお、図1において、本来、信号処理部18とレベル調整部19との間に、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するD/A変換器があるが、これについては省略されている。なお、レベル調整部19は、信号処理部18の前段に配置されていてもよい。
【0016】
CPU107は、I/F102を介して、プリセットの切換指示を受け付ける。CPU107は、プリセットの切換指示を受け付けた時に、DSP10に現在設定されているパラメータを新たなプリセットのパラメータに切換える。また、CPU107は、プリセットの切換指示を受け付けると、レベル調整部19のゲインを調整する制御を行う。
【0017】
次に、CPU107がレベル調整部19のゲインを調整する制御の方法、すなわち音響制御方法について、図2のグラフ及び図3のフローチャートを参照して説明する。
【0018】
図2は、第1実施形態に係るゲイン変更動作の例を示す図である。図中のグラフの横軸は時間(単位は秒)を示している。縦軸は、レベル調整部19におけるゲイン(単位はdB)を示している。グラフ中の太い実線は、ゲインの変化を示す。なお、図2のゲインは、説明のために最小値の0dBを基準としていて、当該最小値は、ほぼ無音の状態であると仮定している。
【0019】
図3は、第1実施形態に係る音響機器の動作を示すフローチャートである。
【0020】
まず、CPU107は、I/F102を介して、プリセットの切換指示を受け付けたか否かを判断する(s11)。CPU107は、プリセットの切換指示を受け付けた場合(s11がYesの場合)、レベル調整部19のゲインを下げる(s12)。CPU107は、DSP10にレベル調整部19のゲインを下げるようにDSP10に指示する。レベル調整部19は、信号処理部18で処理されたオーディオ信号を受信して、ゲインを下げるようにレベル調整する。CPU107は、プリセットの切換指示を受け付けていない場合(s11がNoの場合)、レベル調整部19のゲインをそのまま維持する。
【0021】
図2のグラフに示すように、CPU107は、例えば、タイミングt1においてプリセットの切換指示を受け付ける。CPU107は、ゲインが0dBになるようにレベル調整部19のゲインを下げる。図2の例では、CPU107は、タイミングt1からタイミングt2の間に、ゲインを20dBから0dBまで下げる。つまり、CPU107は、-20dB/秒の変化率でゲインを下げる。
【0022】
その後、所定の時間(図2の例では1秒)が経過してタイミングt3に達するまでCPU107は、レベル調整部19のゲインを0dBに維持する。CPU107は、タイミングt2からタイミングt3までの間に、信号処理部18に現在設定されているパラメータを新たなプリセットのパラメータに切換える(s13)。タイミングt2からタイミングt3までの間の時間の長さは、信号処理部18がプリセットの切換に要する時間よりも十分長く設定されている。これにより、音響機器1は、プリセットの切換時に意図しない音が発生することを防止する。
【0023】
所定の時間が経過し、タイミングt3に到達すると(s14がYesの場合)、CPU107は、レベル調整部19のゲインを所定の変化率で目標のゲイン値まで上げる(s15)。また、所定の時間が経過しタイミングt3に到達していない場合は(s14がNoの場合)、CPU107は、レベル調整部19のゲインを0dBに維持する。
【0024】
ここで、所定の変化率とは、単位時間あたりのゲインの変化量である。所定の変化率は、図2の例では、+4dB/秒である。本発明においては、CPU107は、所定の時間幅におけるレベル調整部19のゲインの変化量が所定値以下となるようにレベル調整部19のゲインを上げる。例えば、CPU107は、図2では、タイミングt3からt4まで5秒かけて、ゲインを+20dB上昇させるため、単位時間あたりの変化量は+20dBよりも小さい値になる。そのため、タイミングt3からt4までの音量は、緩やかに変化することになる。これにより、スピーカユニット111から出力される音の音量は、緩やかに変化する。従って、音響機器1は、プリセットの切換指示を受け付けた場合であっても、急激な音量変化が発生することなく、ユーザの聴感上の違和感なく所定の音量に上昇させることができる。
【0025】
なお、ゲインの変化態様は、パラメータの切換が行われた時に急激な音量変化が生じない範囲であれば設定可能である。例えば、以下に示すような第1実施形態に係るCPU107におけるゲイン変更動作の変形例が挙げられる。図4図5、及び図6は、ゲイン変更動作の変形例を示す図である。
【0026】
ゲイン変更動作は、図2に示すような線形に変化させる例に限るものではない。ゲイン変更動作は、所定の時間幅におけるレベル調整部19のゲインの変化量が所定値以下となる状態であればよい。例えば、図4図5、及び図6に示す変更動作であっても、タイミングt3からタイミングt4の間においては、レベル調整部19のゲインは0から4まで変化するため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0027】
図4に示すように、ゲインの変化態様は、曲線的に変化させてもよい。この場合、CPU107は、音量の絶対値が低いときは音量変化が目立たないようにゆっくりとレベル調整部19のゲインを上げ、その後レベル調整部19のゲインが大きくなるにつれ速やかにレベル調整部19のゲインを上げる。これにより、音響機器1は、音量の変化が目立ち易い状況(音量の絶対値が低い場合)でも、音量変化を目立ち難くすることができ、かつ音量の変化が目立ち難い状況(音量の絶対値が高い場合)では速やかにレベル調整部19のゲインを上げることができる。
【0028】
図5に示すように、ゲイン変更動作は、所定の時間幅において段階的にレベル調整部19のゲインを増加させてもよい。図5に示す場合、CPU107は、所定の時間幅におけるレベル調整部19のゲインが0.5秒毎に2dB大きくなるようにゲインを変更する。CPU107は、このようなゲイン変更動作をすることも可能である。この場合も、CPU107は、所定の時間幅(例えば5秒)におけるレベル調整部19のゲインの変化量が所定値(例えば20dB)以下となるようにレベル調整部19のゲインを上げることになる。
【0029】
図6に示すように、ゲイン変更動作は、所定の時間幅においてレベル調整部19のゲインの変化率を変化させてもよい。図6に示す場合、レベル調整部19のゲインの変化率は、タイミングt3から2秒後までは+1.25dB/秒であり、続く1秒間は+2.5dB/秒であり、さらにその後の2秒間は+7.5dB/秒である。図6に示す場合も、図4に示す場合と同様に、CPU107は、音量の絶対値が低いときは音量変化が目立たないようにゆっくりとレベル調整部19のゲインを上げ、その後ある程度の音量になった後は速やかにレベル調整部19のゲインを上げる。これにより、音響機器1は、音量の変化が目立ち易い状況(音量の絶対値が低い場合)でも、音量変化を目立ち難くすることができ、かつ音量の変化が目立ち難い状況(音量の絶対値が高い場合)では速やかにレベル調整部19のゲインを上げることができる。
【0030】
次に、音響機器1の一例について説明する。図7は、音響機器1の一例のスピーカの構成を示すブロック図である。図7に示すスピーカ13Aは、本発明の「音響機器」の一例である。なお、スピーカ13Aは、音響機器1と同じ構成の部分については説明を省略する。図8は、スピーカ13Aの表示器、オーディオI/O、及びネットワークI/Fの外観の一例を示す図である。図9は、プリセットを説明するための図である。
【0031】
図7に示すように、スピーカ13Aは、表示器101、ユーザインタフェース(I/F)152、オーディオI/O(Input/Output)103、フラッシュメモリ104、RAM105、ネットワークインタフェース(I/F)106、CPU107、DSP108、D/A変換器109、アンプ110、及びスピーカユニット111を備えている。表示器101、ユーザI/F152、オーディオI/O103、フラッシュメモリ104、RAM105、ネットワークインタフェース(I/F)106、CPU107、DSP108、D/A変換器109、及びアンプ110は、バス151に接続されている。アンプ110は、D/A変換器109及びスピーカユニット111に接続されている。なお、ユーザI/F152は、本発明における「インタフェース」の一例であり、DSP108は、本発明における「信号処理部」の一例であり、アンプ110は、本発明における「レベル調整部」の一例である。
【0032】
図8に示すように、表示器101、オーディオI/O103、及びネットワークI/F106は、スピーカ13Aの筐体の一部に設けられている。表示器101は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又はOLED(Organic Light-Emitting Diode)等からなり、種々の情報を表示する。ユーザI/F152は、スイッチ、摘まみ、又はタッチパネル等からなり、パラメータの切換指示等のユーザの操作を受け付ける。ユーザI/F152がタッチパネルである場合、該ユーザI/F152は、表示器101とともに、GUI(Graphical User Interface以下略)を構成する。
【0033】
DSP108は、オーディオI/O(Input/Output)103又はネットワークインタフェース(I/F)106を介して入力されるオーディオ信号に、信号処理を施す。DSP108は、信号処理後のオーディオ信号を、アンプ110に出力する。
【0034】
CPU107は、図9に示すようなプリセットに基づいたパラメータをDSP108に設定する。プリセットは、予め複数設定されており、フラッシュメモリ104に記憶されている。本実施形態においては、1から10までの10個のプリセットが予め設定されている。これにより、ユーザは、プリセットの選択肢(1~10)からいずれか一つを選択することで、パラメータの切換を容易にできる。
【0035】
CPU107は、記憶媒体であるフラッシュメモリ104に記憶されているプログラムをRAM105に読み出して、所定の機能を実現する。CPU107は、表示器101にユーザの操作を受け付けるための画像を表示し、ユーザI/F152を介して、当該画像に対する選択操作等を受け付けることで、GUIを実現する。例えば、図8に示すようにCPU107は、プリセットの選択肢(1~10)を表示器101に表示する。ユーザは、プリセットの選択肢(1~10)からいずれか一つのプリセットを選択することができる。また、CPU107は、ネットワークI/F106を介して、プリセットの変更指示を受け付けてもよい。
【0036】
CPU107は、プリセットの変更指示を受け付けた時に、変更指示で選択されたプリセットに基づくパラメータをフラッシュメモリ104から読み出す。CPU107は、DSP108に現在設定されているパラメータを新たなプリセットのパラメータに切換える。CPU107は、プリセットの変更指示を受け付けると、アンプ110のゲインを調整し、音量制御を行う。
【0037】
なお、CPU107が読み出すプログラムは、自装置内のフラッシュメモリ104に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU107は、該サーバから都度プログラムをRAM105に読み出して実行すればよい。
【0038】
次に、第2実施形態に係る音響制御システムについて説明する。なお、第2実施形態に係る音響制御システムの説明において、第1実施形態に係る音響機器と同様の構成については説明を省略する。
【0039】
図10は、第2実施形態に係る音響制御システムの構成を示す図である。音響制御システム7は、ミキサ71、複数のスイッチ(スイッチ12A、スイッチ12B)、及び複数のスピーカ(スピーカ13A~スピーカ13F)を備えている。スピーカ13A~スピーカ13Fは概ね同様の構成であるため、必要に応じてスピーカ13Aを代表して説明を行う。
【0040】
各機器は、ネットワークケーブルを介して接続されている。例えば、ミキサ71は、スイッチ12Aに接続されている。スイッチ12Aは、スイッチ12B及びスピーカ13Aに接続されている。スイッチ12Bは、スイッチ12A及びスピーカ13Dに接続されている。スピーカ13A、スピーカ13B、及びスピーカ13Cは、スイッチ12Aに、デイジーチェーンで接続されている。また、スピーカ13D、スピーカ13E、及びスピーカ13Fも、スイッチ12Bに、デイジーチェーンで接続されている。ミキサ71は、ネットワークで接続されている他の機器からオーディオ信号を入力する、又は他の機器に対してオーディオ信号を出力する。
【0041】
図11は、第2実施形態に係る音響制御システムのミキサの構成を示すブロック図である。図11に示すように、ミキサ71は、ネットワークを介して接続されているスピーカ13A~スピーカ13Fにオーディオ信号を送信する。また、ミキサ71は、プリセットの変更の指示を行う。
【0042】
ミキサ71は、表示器201、ユーザI/F202、オーディオI/O(Input/Output)203、信号処理部(DSP)204、ネットワークI/F205、CPU206、フラッシュメモリ207、及びRAM208を備えている。これら構成は、バス271を介して接続されている。
【0043】
CPU206は、ミキサ71の動作を制御する制御部である。CPU206は、記憶媒体であるフラッシュメモリ207に記憶された所定のプログラムをRAM208に読み出して実行することにより各種の動作を行なう。例えば、CPU206は、プリセットの変更指示をスピーカ13A~スピーカ13Fにそれぞれ出力する。
【0044】
なお、CPU206が読み出すプログラムも、自装置内のフラッシュメモリ207に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU206は、該サーバから都度プログラムをRAM208に読み出して実行すればよい。
【0045】
信号処理部204は、各種信号処理を行なうためのDSPから構成される。信号処理部204は、オーディオI/O203又はネットワークI/F205を介して入力されるオーディオ信号に、ミキシング、イコライジング、又はコンプレッシング等の信号処理を施す。信号処理部204は、信号処理後のオーディオ信号を、オーディオI/O203又はネットワークI/F205を介して、スピーカ13A等の他の機器に出力する。
【0046】
ユーザは、ユーザI/F202を介して、ミキサ71にスピーカ13A~スピーカ13Fのプリセットの変更指示を入力する。CPU206は、ユーザI/F202を介して受け付けたプリセットの変更指示を、ネットワークI/F205を介して、スピーカ13A~スピーカ13Fに送信する。スピーカ13A~スピーカ13Fは、それぞれ、ネットワークI/F106を介して、プリセットの変更指示を受け付ける。このように、音響制御システム7においては、複数の音響機器(スピーカ13A~スピーカ13F)は、ネットワーク経由でプリセットの変更指示を受け付ける。
【0047】
次に、スピーカ13A~スピーカ13Fでプリセットの変更指示を行う場合におけるゲイン変更動作について説明する。図12A(Fig.12A)は、第2実施形態に係るゲイン変更動作の例を示す図である。図12B(Fig.12B)は、従来の参考例を示す図である。図12Aにおいては、スピーカ13Aのゲインを実線で、スピーカ13Bのゲインを破線で示す。なお、図12Aにおいては説明の便宜上、スピーカ13A及びスピーカ13Bを代表して説明する。
【0048】
複数の音響機器に対してネットワーク経由でプリセットの変更指示を行う場合、ネットワークの負荷の違いにより、各スピーカのDSP108は異なるタイミングでプリセットの変更指示を受信する場合がある。例えば、ネットワークにおける通信負荷が高い場合には、プリセットの変更指示を受信するタイミングが遅れる。また、各スピーカの信号処理部108の負荷によってパラメータの切換に要する時間が異なる場合がある。例えば、DSP108が多数のエフェクト処理を行なっていて、複雑な信号処理を行なっている場合、プリセットの変更指示を受信してから、実際にプリセットの変更が行なわれるまでに要する時間が長くなる。
【0049】
図12Bに示すように、従来の参考例においては、所定の時間幅におけるアンプのゲインの変化量が所定値より大きくなるように各スピーカのアンプのゲインを上げている。図12Bの参考例においては、2秒の間に、ゲインは20dB上昇する。この様に、アンプのゲインを急激に上昇させると、ネットワークの負荷が高い状態のスピーカと、ネットワークの負荷が低いスピーカとの間で、プリセットの変更指示を受信するタイミングが遅れる場合に、スピーカ間の音量差が大きくなる。また、この様に、アンプのゲインを急激に上昇させると、信号処理部の負荷が高い状態のスピーカと、信号処理部の負荷が低いスピーカとの間でも、スピーカ間の音量差が大きくなる。例えば、図12Bでは、ゲインを上昇させるまでの時間差が1秒あるため、スピーカ間で10dBの音量差が生じている。
【0050】
これに対して、本実施形態の音響制御システム7においては、プリセットの変更指示を行う場合、各スピーカ(スピーカ13A~スピーカ13F)のCPU107は、各スピーカのゲインを所定の時間幅におけるアンプ110のゲインの変化量が所定値以下となるように目標のゲイン値まで上げる。図12Aの例においては、CPU107は、5秒をかけて、ゲインを20dB上昇させている。この様に、アンプのゲインを緩やかに上昇させる場合、ネットワークの負荷の違いによりプリセットの変更指示を受信するタイミングが遅れる場合、あるいは信号処理部の負荷の違いにより実際にプリセットの変更が行なわれるまでに要する時間が異なる場合でも、スピーカ間の音量差は小さい。例えば、図12Aでは、ゲインを上昇させるまでの時間差が1秒あるが、スピーカ間では4dB程度の音量差しかない。
【0051】
図12Aのグラフに示すように、スピーカ13AのCPU107は、例えば、タイミングt3からタイミングt4の間に、スピーカ13Aのアンプ110のゲインを0dBから4dBまで緩やかに一定の変化率+4dB/秒で上げる。また、スピーカ13BのCPU107は、スピーカ13Bのアンプ110のゲインも同様に一定の変化率で上げる。
【0052】
図12Aの様に、スピーカ13Bにおけるプリセットの変更指示を受信するタイミングがスピーカ13Aより1秒遅い場合、スピーカ13A及びスピーカ13Bのアンプ110のゲイン差は、タイミングt3からタイミングt4の間のいずれの経過時間において、4dB以下である。これに対して、仮に、従来の参考例においてアンプのゲインの変化率が+10dB/秒である場合、プリセットの変更指示を受信するタイミングが1秒異なるスピーカ間のゲイン差は、いずれの経過時間においても、10dB程度になる。このように、本実施形態の音響制御システム7は、複数のスピーカがネットワークを介してプリセットの変更指示を受け付けた場合であっても、各スピーカのアンプ110のゲインを緩やかに一定の変化率で増加することによって、各スピーカのアンプ110のゲインの差を低く抑えることができる。すなわち、音響制御システム7は、プリセットの切換指示を受け付けた場合であっても、プリセットの切換前後の各スピーカ間での音量変化の差を低く抑制することができる。従って、音響制御システム7は、プリセットの切換指示を受け付けた場合であっても、ユーザに対し各スピーカにおける音量変化に違和感を生じないように音量制御することができる。
【0053】
また、音響制御システム7においては、各スピーカのアンプ110のゲインは一定の変化率で線形に上げることが好ましい。音響制御システム7において各スピーカのアンプ110のゲインを一定の変化率で上げることによって、各スピーカのアンプ110のゲイン差が概ね一定に維持される。例えば、図12Aに示すように、CPU107が各スピーカのアンプ110のゲインを一定の変化率+4dB/秒で上げるように制御する場合であって、スピーカ間におけるプリセットの変更指示を受信するタイミングが1秒異なる場合について説明する。この場合、スピーカ間のアンプ110のゲイン差は、タイミングt3の1秒後からタイミングt4の間のいずれの経過時間においても4dBである。これにより、音響制御システム7は、プリセットの変更指示を受け付けた場合であっても、各スピーカのアンプ110のゲインの差をある程度一定にすることができる。従って、音響制御システム7は、各スピーカから出力される音の音量差がある程度一定であるため、各スピーカ間の音量変化の違いを抑制することができる。従って、音響制御システム7は、プリセットの切換指示を受け付けた場合であっても、ユーザに対し各スピーカにおける音量変化に違和感を生じないように音量制御することができる。
【0054】
なお、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1…音響機器
7…音響制御システム
10…DSP
12A,12B…スイッチ
13A,13B,13C,13D,13E,13F…スピーカ
18…信号処理部
19…レベル調整部
71…ミキサ
101…表示器
102…インタフェース
103…オーディオI/O
104…フラッシュメモリ
105…RAM
106…ネットワークインタフェース
107…CPU
108…DSP
109…D/A変換器
110…アンプ
111…スピーカユニット
151…バス
201…表示器
204…信号処理部
206…CPU
207…フラッシュメモリ
208…RAM
271…バス
図1
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