(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】軟磁性薄膜、薄膜インダクタおよび磁性製品
(51)【国際特許分類】
H01F 10/14 20060101AFI20220720BHJP
H01F 10/13 20060101ALI20220720BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20220720BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20220720BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01F10/14
H01F10/13
H01F10/16
H01F1/153 133
H01F1/153 108
C22C38/00 303S
(21)【出願番号】P 2018056858
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】天野 一
(72)【発明者】
【氏名】原田 明洋
(72)【発明者】
【氏名】堀野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】松元 裕之
(72)【発明者】
【氏名】荒 健輔
(72)【発明者】
【氏名】細野 雅和
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 康永
(72)【発明者】
【氏名】石田 未来
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-002076(JP,A)
【文献】特開2011-094229(JP,A)
【文献】特許第6226094(JP,B2)
【文献】特許第6160759(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 10/14
H01F 10/13
H01F 10/16
H01F 1/153
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(Fe
(1-α
)X1α)
(1-(a+b+c+d+e))M
aP
bSi
cB
dX2
eで表される組成を有する軟磁性薄膜であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はSn,Ge,Zn,Bi,Ag,Mn,As,Sb,C,Nおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはZr,Nb,Hf,Ta,W,Mo,VおよびTiからなる群から選択される1種以上であり、
0.015≦a≦0.100
0.010≦b≦0.100
0.001≦c≦0.050
0≦d≦0.005
0≦e≦0.100
0≦α≦0.300
であることを特徴とする軟磁性薄膜。
【請求項2】
b≧cである請求項1に記載の軟磁性薄膜。
【請求項3】
前記軟磁性薄膜はFe基ナノ結晶からなる構造を有し、
前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が3~30nmである請求項1または2に記載の軟磁性薄膜。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性薄膜を有する薄膜インダクタ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性薄膜を有する磁性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性薄膜、薄膜インダクタおよび磁性製品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルおよび磁心を共に薄膜とすることで作製される薄膜インダクタは主に高周波領域での使用が検討されている。また、高周波領域での使用の一例としてパワーインダクタとしての使用が検討されている。
【0003】
高周波領域でパワーインダクタとして薄膜インダクタを用いる場合における最大の問題点は渦電流損失である。渦電流損失を低減する方法としては、薄膜インダクタの磁心を絶縁膜および磁性膜を交互に積層させた多層構造とする方法が検討されている。磁性膜1枚あたりの厚さを低減し、磁性膜と磁性膜の間に絶縁膜を挿入することにより、シート抵抗が向上し、渦電流損失が低減される。具体的には、磁性膜の膜厚を0.1μm以下にすることで十分に渦電流損失が低減される。
【0004】
しかし、絶縁膜および磁性膜を交互に積層させた多層構造の作製には非常に大きなコストが発生する。また、積層数が多ければ多いほどコストは増大する。主にコスト削減の要求から、磁性膜の飽和磁束密度を向上させることが望まれている。飽和磁束密度が高いほど磁心の磁路断面積を小さくすることができる。その結果、膜厚を厚くしても、または、積層数を少なくしても、渦電流損失を低減することができる。例えば、飽和磁束密度を20%高くすることで、膜厚を20%厚くするか積層数を20%少なくすることができる。
【0005】
また、パワーインダクタにおいてはコアロスを少なくすることも重要である。コアロスはヒステリシス損失と渦電流損失との和で表される。ここで、ヒステリシス損失を低減させるためには保磁力を低下させることが重要である。
【0006】
以上より、特にパワーインダクタ用の軟磁性薄膜には、飽和磁束密度の向上、および、保磁力の低下が求められる。
【0007】
従来、薄膜インダクタの磁心にはCoZrTa、CoZrNb等のCo基アモルファス材が使用されてきた。特に、Co92Zr4Ta4は高い飽和磁束密度と低い保磁力とを併せ持つことが知られている。しかし、Co92Zr4Ta4はアモルファスを形成しにくい。そのため、成膜装置の基板冷却能力が不足すると結晶化してしまい、保磁力が著しく上昇してしまう。そのため、工業的にはよりアモルファスを形成しやすいCo89Zr5Ta6などが用いられている。しかし、Co89Zr5Ta6はCo92Zr4Ta4と比較して飽和磁束密度が十分に高くない。
【0008】
特許文献1には、急冷薄帯合金を熱処理することにより得られるナノ結晶材料が記載されている。これは、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であり、結晶粒径がナノオーダーである材料である。ナノ結晶材料は高い飽和磁束密度および低い保磁力を併せ持つ。
【0009】
特許文献2には、Co87Zr5Nb8組成からなる非晶質合金層と、当該非晶質合金層を自然酸化した自然酸化層と、で多層化した高周波用磁性薄膜が記載されている。
【0010】
しかし、膜厚0.5μm以下の薄膜の形態で十分に高い飽和磁束密度と十分に低い保磁力とを併せ持つナノ結晶材料は実現できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-322546号公報
【文献】特開2005-109246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高い飽和磁束密度および低い保磁力を有する軟磁性薄膜等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係る軟磁性薄膜は、
組成式(Fe(1-α)X1α)(1-(a+b+c+d+e))MaPbSicBdX2eで表される組成を有する軟磁性薄膜であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はSn,Ge,Zn,Bi,Ag,Mn,As,Sb,C,Nおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはZr,Nb,Hf,Ta,W,Mo,VおよびTiからなる群から選択される1種以上であり、
0.015≦a≦0.100
0.010≦b≦0.100
0<c≦0.050
0≦d≦0.005
0≦e≦0.100
0≦α≦0.300
であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る軟磁性薄膜は、上記の組成を有することにより、軟磁性薄膜全域に均一な粒径のFe基ナノ結晶を生成させやすくなる。そして、均一な粒径のFe基ナノ結晶を生成させた軟磁性薄膜は高い飽和磁束密度と低い保磁力とを併せ持つ。
【0015】
本発明に係る軟磁性薄膜ではb≧cであってもよい。
【0016】
本発明に係る軟磁性薄膜はFe基ナノ結晶からなる構造を有していてもよく、
前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が3~30nmであってもよい。
【0017】
本発明に係る薄膜インダクタは前記軟磁性薄膜を有する。
【0018】
本発明に係る磁性製品は前記軟磁性薄膜を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係る軟磁性薄膜は、
組成式(Fe(1-α)X1α)(1-(a+b+c+d+e))MaPbSicBdX2eで表される組成を有する軟磁性薄膜であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はSn,Ge,Zn,Bi,Ag,Mn,As,Sb,C,Nおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはZr,Nb,Hf,Ta,W,Mo,VおよびTiからなる群から選択される1種以上であり、
0.015≦a≦0.100
0.010≦b≦0.100
0<c≦0.050
0≦d≦0.005
0≦e≦0.100
0≦α≦0.300
である。
【0021】
上記の組成を有する軟磁性薄膜は非晶質(アモルファス)としやすい。そして、当該軟磁性薄膜を熱処理する場合には、全域に均一な粒径のFe基ナノ結晶を生成しやすい。そして、Fe基ナノ結晶を含む軟磁性合金は高い飽和磁束密度および低い保磁力を有しやすい。
【0022】
言いかえれば、上記の組成を有する軟磁性薄膜からは、全域に均一な粒径のFe基ナノ結晶を生成させた軟磁性薄膜を得やすい。
【0023】
Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノオーダーであり、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)である結晶のことである。本実施形態においては、平均粒径が3~30nmであるFe基ナノ結晶を生成させることが好ましい。このようなFe基ナノ結晶を均一に生成させた軟磁性合金は、飽和磁束密度が高くなりやすく、保磁力が低くなりやすい。
【0024】
これに対し、粒径が30nm以上である異常粒成長した結晶が生じる場合には、軟磁気特性が低下し、特に保磁力が高くなりやすい。本実施形態に係る軟磁性薄膜は全域に均一な粒径のFe基ナノ結晶を生成しやすく、異常粒成長した結晶が生じにくい。
【0025】
なお、本実施形態に係る軟磁性薄膜の厚みは任意である。例えば20nm以上3000nm以下としてもよい。また、用途によって好適な厚みを適宜選択してもよい。
【0026】
以下、本実施形態に係る軟磁性薄膜の各成分について詳細に説明する。
【0027】
MはZr,Nb,Hf,Ta,W,Mo,VおよびTiからなる群から選択される1種以上である。また、Mの種類としてはZr,Hf,NbおよびTaからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、ZrおよびHfからなる群から選択される1種以上を含むことがさらに好ましく、Zrを含むことが特に好ましい。Mを含有することで飽和磁束密度が高くなりやすく、保磁力が低くなりやすくなる。
【0028】
Mの含有量(a)は0.015≦a≦0.100を満たす。Mの含有量(a)は0.050≦a≦0.100であることが好ましい。aが小さい場合には、保磁力が高くなりやすくなる。aが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなり、保磁力が高くなりやすくなる。
【0029】
Pの含有量(b)は0.010≦b≦0.100を満たす。Pの含有量(b)は0.020≦b≦0.100を満たすことが好ましい。bが小さい場合には、保磁力が高くなりやすくなる。bが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。
【0030】
Siの含有量(c)は0<c≦0.050を満たす。Siの含有量(c)は0.001≦c≦0.050を満たすことが好ましく、0.005≦c≦0.030を満たすことがより好ましい。cが小さい場合には、保磁力が高くなりやすくなる。cが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなり、保磁力が高くなりやすくなる。
【0031】
さらにb≧cであることが好ましい。b≧cである場合には、特に飽和磁束密度が高くなりやすくなり、保磁力が低くなりやすくなる。
【0032】
Bの含有量(d)は0≦d≦0.005を満たす。すなわち、Bは含有しなくてもよい。また、Bの含有量(d)は0≦d≦0.001を満たすことが好ましく、d=0が最も好ましい。Bの含有量が小さくなるほど飽和磁束密度が高くなりやすく、保磁力が低くなりやすい。dが大きすぎる場合には、保磁力が高くなりやすくなる。
【0033】
X2はSn,Ge,Zn,Bi,Ag,Mn,As,Sb,C,Nおよび希土類元素から選択される1種以上である。X2の含有量(e)は0≦e≦0.100を満たす。すなわち、X2は含有しなくてもよい。X2の含有量(e)は0≦e≦0.050であることが好ましい。X2の含有量が多すぎる場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。
【0034】
Feの含有量(1-(a+b+c+d+e))については、特に制限はないが0.780≦1-(a+b+c+d+e)≦0.910を満たすことが好ましい。上記の範囲を満たす場合には飽和磁束密度を向上させやすく、保磁力を低下させやすくなる。
【0035】
また、本実施形態に係る軟磁性合金においては、Feの一部をX1で置換してもよい。
【0036】
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上である。FeからX1への置換量(α)はα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、0≦α≦0.300を満たす。αが大きすぎる場合には保磁力が大きくなりやすい。
【0037】
なお、本実施形態に係る軟磁性薄膜は上記以外の元素(例えば、Al、Zn、Ga、Sなど)を不可避的不純物として含んでいてもよい。また、上記以外の元素は軟磁性合金100重量%に対して合計で1重量%未満、含んでいてもよい。
【0038】
以下、本実施形態に係る軟磁性薄膜の製造方法について説明する
【0039】
本実施形態に係る軟磁性薄膜の製造方法には特に限定はない。例えばスパッタリングにより製造する方法が挙げられる。
【0040】
まず、薄膜をスパッタリングさせる基板を準備する。基板の種類は任意である。例えば、シリコン基板、熱酸化膜付きシリコン基板、フェライト基板、非磁性フェライト基板、サファイア基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。しかし、基板の種類はこれらに限定されず、各種セラミック基板や各種半導体基板を用いることが可能である。
【0041】
次に、準備した基板に対してスパッタリングを行うことで所定の組成を有する軟磁性薄膜を成膜する。スパッタリング時の成膜速度および成膜時間を制御することにより得られる軟磁性薄膜の厚さを制御することができる。成膜速度は例えば5Å/min以上1000Å/min以下とすることができる。また、成膜圧力は0.03Pa以上10Pa以下としてもよい。
【0042】
また、スパッタリング時の雰囲気は不活性ガス中である事が望ましい。例えばAr雰囲気中であってもよい。Ar雰囲気中でスパッタリングを行う場合には、Arガス流量2sccm以上200sccm以下としてもよい。
【0043】
なお、成膜直後の薄膜についてXRD測定を行うことで、成膜直後の薄膜が非晶質(アモルファス)であることが確認できる。
【0044】
次に、得られた薄膜に熱処理(アニール)を行う。
【0045】
具体的には、成膜後、スパッタ装置から取り出した基板を真空装置内に移動させ、1x10-1Pa以下の高真空状態まで真空引きした後に高真空状態で熱処理を行い、Fe基ナノ結晶を生成させる。
【0046】
熱処理条件は任意であり、薄膜の組成に応じて適宜選択してもよい。例えば、熱処理時間は1分以上300分以下、熱処理温度は400℃以上650℃以下である。
【0047】
得られた薄膜の磁気特性の測定方法は任意である。例えば、VSMを用いて測定することができる。
【0048】
さらに、XRD測定により結晶構造の確認および結晶粒径の測定を行うことができる。そして、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であり、結晶粒径が30nm以下の結晶のみからなるナノ結晶相であるか、それとも、結晶粒径が30nm超の結晶を含む結晶相からなっているかを確認することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0050】
本実施形態に係る軟磁性薄膜の用途には特に制限はない。例えば薄膜インダクタが挙げられる。特に薄膜パワーインダクタに好適に用いることができる。さらに、磁性製品、例えば各種フィルタなどに本実施形態に係る軟磁性薄膜を用いてもよく、方位センサ等の磁気センサ等に本実施形態に係る軟磁性薄膜を用いてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0052】
次に、サンプル基板に対して、スパッタリングにより下表1に示す所定の組成の薄膜を成膜した。薄膜の厚さは100nmとした。スパッタ装置としては株式会社エイコー製スパッタ装置ES350を用いた。スパッタリングはArガス流量20sccmのAr雰囲気中で行った。また、成膜速度は120Å/min(12nm/min)、成膜圧力は0.3Paとした。
【0053】
なお、成膜直後の薄膜についてPanalytical,Inc製XRD(Empyrean)を用いてXRD測定を行った。全ての実施例について成膜直後は非晶質であることを確認した。なお、XRD測定は回折角度2θが35°~60°である範囲について行った。
【0054】
成膜後、スパッタ装置から取り出したサンプル基板を真空装置内に移動させ、2x10-2Pa以下の高真空状態まで真空引きした後に高真空状態で熱処理を行った。真空中熱処理装置としてはアドバンス理工株式会社製RTA3000を用いた。
【0055】
熱処理後の薄膜についてVSMを用いて磁気特性を測定した。磁気特性は株式会社玉川製作所製VSM(TM-VSM261483-HGC)を用いて測定した。磁気特性としては飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcについて測定した。また、測定磁場は-1000Oe~+1000Oeとした。飽和磁束密度Bsは1.50T以上を良好とした。保磁力Hcは4.0Oe以下を良好とした。
【0056】
さらに、XRD測定により結晶構造の確認および結晶粒径の測定を行った。なお、XRD測定は回折角度2θが35°~60°である範囲について行った。XRD測定はPanalytical,Inc製XRD(Empyrean)を用いて行った。そして、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であり、結晶粒径が30nm以下の結晶のみからなるナノ結晶相であるか、それとも、結晶粒径が30nm超の結晶を含む結晶相からなっているかを確認した。結果を表1に示す。なお、全ての実施例および比較例でFeの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であることが確認された。また、全ての実施例でFe基ナノ結晶の平均粒径が3~30nmであることが確認された。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表1は軟磁性合金として従来から知られている組成を有する軟磁性薄膜を上記の方法で作製した結果を示す。比較例1~3は粒径の大きな結晶が生じた。また、比較例1~8は飽和磁束密度Bsおよび/または保磁力Hcが良好ではなかった。
【0068】
表2はMがZrのみでありBおよびX2を含まない場合において、Zrの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0069】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例1~5は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0070】
これに対し、Zrの含有量が小さすぎる比較例9は保磁力Hcが高くなった。また、Zrの含有量が大きすぎる比較例10は飽和磁束密度Bsが低下し、保磁力Hcが高くなった。
【0071】
表3はMがZrのみでありBおよびX2を含まない場合において、Pの含有量(b)とSiの含有量(c)との和を一定にしてPとSiとの比率を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0072】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例4~11は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。特にb≧cである実施例4~10は、b<cである実施例11と比較して飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが優れる結果となった。また、Siの含有量(c)が小さすぎる比較例11は保磁力Hcが高くなった。
【0073】
表4はMがZrのみでありBおよびX2を含まない場合において、Pの含有量(b)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0074】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例4、12~16は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0075】
これに対し、Pの含有量が小さすぎる比較例13は保磁力Hcが高くなった。Pの含有量が大きすぎる比較例14は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0076】
表5はMがZrのみでありBおよびX2を含まない場合において、Siの含有量(c)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0077】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例14、18、19は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0078】
これに対し、Siの含有量が大きすぎる比較例15は飽和磁束密度Brが低下し、保磁力Hcが高くなった。
【0079】
表6はMがZrのみでありX2を含まない場合において、Bの含有量(d)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0080】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例20~22は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0081】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例16は保磁力Hcが高くなった。
【0082】
表7は実施例4からMの種類を変化させた実施例を記載したものである。
【0083】
Mの種類が変化しても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例23~29は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0084】
表8は実施例4からX2の種類を変化させた実施例を記載したものである。
【0085】
X2の種類が変化しても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例30~36は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0086】
表9は実施例4からX2(C)の含有量を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0087】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例30、37、38は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0088】
これに対し、X2の含有量が大きすぎる比較例17は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0089】
表10は実施例4についてFeの一部をX1で置換した実施例および比較例を記載したものである。
【0090】
Feの一部をX1で置換しても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例39~41は良好な特性を示した。
【0091】
これに対し、FeからX1への置換量が大きすぎる比較例18は保磁力Hcが上昇した。