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特許7106948袋、梱包体、梱包体の製造方法、梱包体の開封方法及び開裂帯形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】袋、梱包体、梱包体の製造方法、梱包体の開封方法及び開裂帯形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20220720BHJP
   B65D 65/28 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B65D75/62 Z
B65D65/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018071670
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019182441
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506148165
【氏名又は名称】クリテックサ-ビス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236964
【氏名又は名称】富士インパルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靜生
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154905(JP,A)
【文献】特開2011-162261(JP,A)
【文献】特開2006-087452(JP,A)
【文献】特開2011-063273(JP,A)
【文献】特開2017-007699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
B65D 65/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口を有した、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋において、
該入口と反対側の少なくとも一部に開裂帯が設けられており、
該開裂帯は、該開裂帯の延在方向に配列された複数の凹部よりなり、
各凹部は、少なくとも一部が該開裂帯の延在方向に対して斜交方向に延びる溝状であり、
該凹部の深さが凹部の長手方向において変化していること 、及び
前記凹部及びその周縁部において、前記袋の一面側のフィルムと他面側のフィルムとが溶着されており、
該周縁部の溶着部の幅Tと前記フィルムの厚さtとの比T/tが0.3~10であること を特徴とする袋。
【請求項2】
請求項1において、前記凹部は、凹部の長手方向の途中部分が最も深く、該途中部分から凹部の両端側に向って徐々に浅くなっていることを特徴とする袋。
【請求項3】
請求項2において、前記フィルムの厚さtに対する前記凹部の最も深い部分の深さdの百分比d/t×100(%)は50~667%であることを特徴とする袋。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記開裂帯の延在方向Dと溝状部の延在方向Dとの交差角度θが5~30°であることを特徴とする袋。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記凹部の長手方向の一端から他端までの直線距離Lと、前記フィルムの厚さtとの比L/tは8~117であることを特徴とする袋。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記凹部はS字状に延在していることを特徴とする袋。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記袋の前記入口と反対側の辺が封止部によって封じられており、該封止部は前記開裂帯とは別に設けられていることを特徴とする袋。
【請求項8】
熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋内に被収容物が収容された梱包体において、
該袋の少なくとも一部に開裂帯が設けられており、
該開裂帯は、該開裂帯の延在方向に配列された複数の凹部よりなり、
各凹部は、少なくとも一部が該開裂帯の延在方向に対して斜交方向に延びる溝状であり、
該凹部の深さが凹部の長手方向において変化していること 、及び
前記凹部及びその周縁部において、前記袋の一面側のフィルムと他面側のフィルムとが溶着されており、
該周縁部の溶着部の幅Tと前記フィルムの厚さtとの比T/tが0.3~10であること を特徴とする梱包体。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の袋内に被収容物が封入された梱包体。
【請求項10】
熱可塑性合成樹脂フィルムを挟むための、ベース及び該ベースに対し接離方向移動可能な可動体と、
該ベース及び可動体の少なくとも一方に設けられており、前記フィルムに押し付けられるヒート線とを有する開裂帯形成装置であって、
該ヒート線は、直線状に延在した主線と、該主線に螺旋状に巻き付けられた副線とからなるか、又は複数本の素線を縒り合せたものであることを特徴とする開裂帯形成装置。
【請求項11】
請求項10において、前記主線の線径が0.3~0.5mmであり、前記副線の線径が0.2~0.5mmであることを特徴とする開裂帯形成装置。
【請求項12】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の袋の中に被収容物を収容する収容工程と、
該袋の入口をヒートシール装置によりヒートシール部を形成して封じる封止工程と
を有する梱包体の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、前記収容工程後、袋内を排気し、その後封止工程を行うことを特徴とする梱包体の製造方法。
【請求項14】
合成樹脂製の袋内に被収容物が封入されると共に、開封用の開裂帯が形成された梱包体を製造する方法において、
一端及び他端を有する寸胴状の合成樹脂フィルムの中に被収容物を収容する収容工程と、
寸胴状の該合成樹脂フィルムの前記一端を、ヒートシール装置により第1のヒートシール部を形成して封じる第1の封止工程と、
寸胴状の該合成樹脂フィルム内を排気する排気工程と、
寸胴状の該合成樹脂フィルムの前記他端を、ヒートシール装置により第2のヒートシール部を形成して封じる第2の封止工程と、
該第1及び第2のヒートシール部のうちの一方のヒートシール部(以下、ヒートシール部Aという。)又は該ヒートシール部Aよりも被収容物側に、このヒートシール部Aの形成前,形成時又は形成後に前記開裂帯を形成する開裂帯形成工程と
を有し、
該開裂帯は、該開裂帯の延在方向に配列された複数の凹部よりなり、
各凹部は、少なくとも一部が該開裂帯の延在方向に対して斜交方向に延びる溝状であり、
該凹部の深さが凹部の長手方向において変化しており、
前記凹部及びその周縁部において、前記袋の一面側のフィルムと他面側のフィルムとが溶着されており、
該周縁部の溶着部の幅Tと前記フィルムの厚さtとの比T/tが0.3~10であり、
前記被収容物の収容工程は、前記排気工程の前であって、かつ前記第1のヒートシール部の形成前又は形成後に行われることを特徴とする梱包体の製造方法。
【請求項15】
請求項又はに記載の梱包体を、ISO基準14644-1(JIS準拠)でISO7クラスより清浄度が高い環境下において、前記開裂帯に引張力を与えて開裂帯を開裂させることにより開封することを特徴とする梱包体の開封方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋と、該袋内に被収容物が収容された梱包体に係り、特に開封用の開裂帯を有する袋及び梱包体に関する。詳しくは、本発明は、被収容物が半導体製造装置部品であり、クリーンルームなどの高清浄度環境下にて開封されるのに好適な袋及び梱包体に関する。また、本発明は、この梱包体の製造方法と、梱包袋に開裂帯を形成するための開裂帯形成装置と、梱包体の開封方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置を用いて半導体を製造すると、半導体製造装置の部品表面にデポ膜と称される付着物が付着する。そこで、半導体製造装置から当該部品を取り外し、付着物を溶解若しくは崩壊・剥離除去した後、清浄度の高い環境下において超純水および超音波等による仕上げ洗浄(精密洗浄)が行われる。
【0003】
精密洗浄を行った部品の清浄度を保つために、精密洗浄した部品を密閉度が高い梱包袋に入れ、袋内の空気を脱気した後、熱溶着シーラー機でシールし、半導体製造工場に輸送する。
【0004】
熱溶着シーラー機でシールした梱包袋は、クリーンルーム等の高清浄度環境下で開封される。この梱包袋は、手で開封しようとしても容易に引き裂くことができず、カッターや鋏を使用して開封される。カッターや鋏を使用すると、部品の傷つき・破損の虞だけでなく、コンタミネーション(金属汚染)や作業者が誤って手を切傷する虞もあり、改善が望まれている。
【0005】
梱包袋に容易に手で開封ができる開裂帯を設けることが特許文献1~3に記載されている。
【0006】
特許文献1には、エンボスローラによって凹部を1列に配列してなる開裂帯を設けた包装用フィルムが記載されている。特許文献2,3には、切り込み又はミシン目状切目を設けて開封ラインを形成した包装袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-154905
【文献】特開平8-268467
【文献】実開平4-89760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、開裂が容易であり、また製造も容易である袋及び梱包体と、この梱包体の製造方法及び開封方法と、開裂帯形成装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の袋は、入口を有した、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋において、該入口と反対側の少なくとも一部に開裂帯が設けられており、該開裂帯は、該開裂帯の延在方向に配列された複数の凹部よりなり、各凹部は、少なくとも一部が該開裂帯の延在方向に対して斜交方向に延びる溝状であり、該凹部の深さが凹部の長手方向において変化していることを特徴とするものである。なお、開裂帯の一端は、袋の一側辺から始まる。
【0010】
本発明の梱包体は、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋内に被収容物が収容された梱包体において、該袋の少なくとも一部に開裂帯が設けられており、該開裂帯は、該開裂帯の延在方向に配列された複数の凹部よりなり、各凹部は、少なくとも一部が該開裂帯の延在方向に対して斜交方向に延びる溝状であり、該凹部の深さが凹部の長手方向において変化していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一態様の梱包体は、本発明の袋内に被収容物が封入されたものである。
【0012】
前記凹部は、凹部の長手方向の途中部分が最も深く、該途中部分から凹部の両端側に向って徐々に浅くなっていることが好ましい。
【0013】
前記フィルムの厚さtに対する前記凹部の最も深い部分の深さdの百分比d/t×100(%)は50~667%であることが好ましい。
【0014】
前記開裂帯の延在方向Dと溝状部の延在方向Dとの交差角度θは5~30°であることが好ましい。
【0015】
前記凹部の長手方向の一端から他端までの直線距離Lと、前記フィルムの厚さtとの比L/tは8~117であることが好ましい。前記凹部はS字状に延在していることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様では、前記凹部及びその周縁部において、前記袋の一面側のフィルムと他面側のフィルムとが溶着されており、該周縁部の溶着部の幅Tと前記フィルムの厚さtとの比T/tが0.3~10であることが好ましく、特に0.5~5.8が好ましい。
【0017】
本発明の開裂帯形成装置は、熱可塑性合成樹脂フィルムを挟むための、ベース及び該ベースに対し接離方向移動可能な可動体と、該ベース及び可動体の少なくとも一方に設けられており、前記フィルムに押し付けられるヒート線とを有する開裂帯形成装置であって、該ヒート線は、直線状に延在した主線と、該主線に螺旋状に巻き付けられた副線とからなるか、又は複数本の素線を縒り合せたものであることを特徴とする。
【0018】
この開裂帯形成装置では、前記主線の線径が0.3~0.5mmであり、前記副線の線径が0.2~0.5mmであることが好ましい。
【0019】
本発明の梱包体の製造方法は、本発明の袋の中に被収容物を収容する収容工程と、該袋の入口をヒートシール装置によりヒートシール部を形成して封じる封止工程とを有する。
【0020】
この梱包体の製造方法では、前記収容工程後、袋内を排気し、その後封止工程を行うことが好ましい。
【0021】
本発明の別態様の梱包体の製造方法は、合成樹脂製の袋内に被収容物が封入されると共に、開封用の開裂帯が形成された梱包体を製造する方法において、一端及び他端を有する寸胴状の合成樹脂フィルムの中に被収容物を収容する収容工程と、寸胴状の該合成樹脂フィルムの前記一端を、ヒートシール装置により第1のヒートシール部を形成して封じる第1の封止工程と、寸胴状の該合成樹脂フィルム内を排気する排気工程と、寸胴状の該合成樹脂フィルムの前記他端を、ヒートシール装置により第2のヒートシール部を形成して封じる第2の封止工程と、該第1及び第2のヒートシール部のうちの一方のヒートシール部(以下、ヒートシール部Aという。)又は該ヒートシール部Aよりも被収容物側に、このヒートシール部Aの形成前,形成時又は形成後に前記開裂帯を形成する開裂帯形成工程と
を有し、前記被収容物の収容工程は、前記排気工程の前であって、かつ前記第1のヒートシール部の形成前又は形成後に行われることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の梱包体の開封方法は、本発明の梱包体を、ISO基準14644-1(JIS準拠)でISO7クラスより清浄度が高い環境下において、前記開裂帯に引張力を与えて開裂帯を開裂させることにより開封することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、袋の開裂帯は、開裂帯延在方向に配列された複数の凹部を有している。凹部の少なくとも一部は、開裂帯延在方向に斜交する溝状となっており、この凹部の深さが凹部の長手方向において変化している(即ち、凹部の深さが凹部長手方向において均一とはなっていない。)。
【0024】
そのため、梱包体の開裂帯に引張力を与えると、凹部の一部に局部的に応力が集中し、当該一部において開裂が開始し、この開裂が凹部全体さらには開裂帯全体に広がり、梱包体が開封される。
【0025】
本発明の梱包体は、凹部の深さを一定とした従来例(例えば特許文献1)に比べて、開封に要する力が小さくて済み、開封が容易である。
【0026】
本発明の袋及び梱包体は、半導体製造装置部品、液晶、電子部品製造装置部品等の真空梱包体として好適であり、この梱包体はクリーンルームやクリーンベンチ内等の清浄度が高い環境下において、カッター、鋏等を使用せずに容易に開封することができる。
【0027】
清浄度の高い環境の清浄度としては、ISO7クラス(クラス10,000)より高い清浄度が好ましく、ISO6クラス(クラス1,000)より高い清浄度がより好ましい。このような環境としては、クリーンルームやクリーンベンチ等が挙げられる。
【0028】
本発明の開裂帯形成装置によると、かかる開裂帯を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る梱包体の正面図である。
図2図1の梱包体の一部の拡大図である。
図3図2のIII-III線に沿う拡大断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】梱包体の製造方法を示す説明図である。
図6】開裂帯形成装置を示す説明図である。
図7】ヒート線の平面図である。
図8】(a)は実施の形態に係る袋の正面図、(b)は(a)のB-B線に沿う模式的な拡大断面図である。
図9】(a)は実施の形態に係る袋の正面図、(b)は(a)のB-B線に沿う模式的な拡大断面図である。
図10】別の実施の形態に係る梱包体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る梱包体1の正面図であり、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋2の中に被収容物Cが真空封入されている。熱可塑性合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はナイロンフィルムや、これらの熱可塑性合成樹脂を内側に配し、シーラント剤としたフィルムなどが例示されるが、これに限定されない。
【0031】
袋2の入口2eに沿ってヒートシール部3が形成されている。ヒートシール部3では、袋2の一面側のフィルム2aと他面側のフィルム2bとが溶着され、これにより入口2eが封じられている。なお、ヒートシール前に袋2内が真空引きされている。
【0032】
入口2eと反対側の辺2gに沿って、該辺2gと略平行なD方向に延在するように、袋2の一方の側辺2cから他方の側辺2dにまで開裂帯4が延設されている。開裂帯4は、複数の凹部5をD方向に配列したものである。
【0033】
袋2は、辺2gが開裂帯4とは別個の封止部によって封じられていてもよく、開裂帯4を含むヒートシール部によって封じられたものであってもよい。即ち、開裂帯4と別に辺2gを封じるための封止部が設けられてもよく、辺2gを封じるためのヒートシール部に開裂帯4が一体に形成されていてもよい。ただし、開裂帯の強度と袋の内外を確実に遮断するためには、封じるためのヒートシール部と開裂帯とは別々に設ける方が好ましい。
【0034】
袋2は、最初から辺2g部分においてフィルム2aとフィルム2bとが一連につながっているものであってもよく、寸胴の熱可塑性合成樹脂フィルムの辺2g部分に開裂帯4とは別個のヒートシール部を形成して封じたものを使用することも可能である。
【0035】
ヒートシール部3と開裂帯4の形成は、いずれを先に行ってもよい。寸胴フィルムを用いる場合、辺2g側のヒートシール部、入口2e側のヒートシール部3及び開裂帯4の形成の順序は任意であり、どのような順序としてもよい。被収容物Cは、真空吸引前のいずれの段階で収容されてもよい。
【0036】
開裂帯4を一体に有したヒートシール部によって辺2gに沿う部分が封じられた袋2の一例を図8に示す。また、開裂帯4とは別個のヒートシール部2hによって辺2gに沿う部分を封じた袋2の一例を図9に示す。
【0037】
図9の袋2では、(a)の通り、開裂帯4よりも辺2g側にヒートシール部2hが側辺2cから側辺2dまで延設されている。図8の袋2では、かかるヒートシール部2hは設けられていない。その代り、図8では、後述のLの範囲においてもフィルム2a,2bが溶着しており、開裂帯4によって袋2内と辺2g側とが気密に隔絶されている。
【0038】
前記凹部5は、D方向に対し斜交するD方向に延在した中央溝状部5aと、中央溝状部5aの一端側に連なる湾曲溝状部5bと、他端側に連なる湾曲溝状部5cとを有している。この斜交角度すなわちD方向とD方向との交差角度θは5~30°特に7~13°程度が好ましい。
【0039】
湾曲溝状部5bは、中央溝状部5aから入口2e側に向う方向に湾曲し、湾曲溝状部5cは中央溝状部5aから入口2eと反対側に向う方向に湾曲しており、これにより凹部5は略S字状(逆S字状を包含する。)となっている。
【0040】
凹部5は、その長手方向の中央付近が最も深くなっており、長手方向の両端側に向って徐々に浅くなっている。なお、図示のように、凹部5はフィルム2bにまで食い込むように設けられている。この実施の形態では、凹部5は、フィルム2a側から凹陥し、フィルム2bからは出っ張っている。凹部5の最深部の深さdは、フィルム2aの厚さtの50~667%特に150~500%程度であることが好ましい。凹部5の両端間の直線距離Lはフィルム2aの厚さtの8~117倍特に25~44倍であることが好ましい。フィルム2a,2bは一連一体となっており、それらの厚さは等しい。フィルム2a,2bの厚さtは30~300μm特に50~200μm程度が好ましい。
【0041】
隣接する凹部5同士の間の最短距離Lはフィルム2aの厚さtの0.4~10倍程度が好ましく、特に1.1~6.7程度が好ましい。
【0042】
凹部5同士の間においても、フィルム2a,2bを溶着(融着)させることにより、前述の図8の通り、袋2の辺2gに沿う部分を、開裂帯4を有したヒートシール部によって封じることができる。
【0043】
なお、辺2gを開裂帯4とは別個のヒートシール部2hによって封じた図9の袋2であっても、開裂帯4の凹部5同士の間(L部分)においてフィルム2a、2bが溶着されてもよい。この場合、ヒートシール部2hと開裂帯4との間の部分に空気が残留していても問題はないが、開裂帯4を形成する際に袋2内を排気して該部分に空気を残留させないことが好ましい。
【0044】
この梱包体1は、開裂帯4よりも被収容物C側を一方の手で掴み、開裂帯4よりも辺2g側を他方の手で掴んで引っ張ることにより開封される。開裂帯4が凹部5の配列体よりなり、かつ凹部5の深さがその長手方向において不均一であるため、凹部5の一部に局部的に引張応力が集中し、当該部分から凹部5が開裂を開始する。凹部5の一部が開裂を開始すると、この開裂が開裂帯4の全体に伝播し、梱包体1が開封される。この梱包体1は、開封に要する力が小さくて済み、開封が容易である。
【0045】
この凹部5の配列体よりなる開裂帯4は、図7に示すヒート線20を押し付けることにより形成されたものである。次に、この開裂帯4を形成するためのヒート線20を有した開裂帯形成装置10について説明する。
【0046】
この開裂帯形成装置10は、本体部11と、該本体部11から前方に張り出す受け部(ベース)12と、該受け部12の上方に配置されたレバー部(可動体)13等を有している。レバー部13は、本体部11内に設けられた支持軸(図示略)周りに回動自在に支持され、駆動装置(図示略)によって上下方向に回転可能とされている。受け部12とレバー部13は均一に幅10~20mm接触可能となっており、受け部12の接触部上面にはヒート線20が設けられている。ヒート線20はレバー部13に設けられてもよい。
【0047】
ヒート線20は、図7に示すように、直線状に延在した主線21と、該主線21に螺旋状に巻き付けられた副線22とを有する。主線21及び副線22は、ニクロム線などの抵抗発熱体よりなる。主線21の線径は0.3~0.5mm特に0.32~0.45mmであることが好ましい。副線22の線径は0.2~0.5mm程度が好ましい。
【0048】
袋2の辺2g側を受け部12とレバー部13との間に差し込み、開裂帯4の形成予定領域をヒート線20上に配置した後、ヒート線20に通電して130~160℃程度に発熱させ、レバー部13を押し下げる。これにより、ヒート線20の副線22がフィルム2aに食い込み、各凹部5が形成されて開裂帯4が形成される。また、このときに、ヒート線20の熱によって、フィルム2a,2b同士が開裂帯4部分と、その周縁部において溶着されてもよい。この場合、凹部5の周縁部におけるフィルム2a,2b同士の溶着部の幅Tとフィルム厚さtとの比T/tは0.3~10特に0.5~5.8であることが好ましい。この開裂帯形成装置10は、本発明のいずれの態様の梱包体の製造にも用いることができる。
【0049】
図10は別の実施の形態に係る梱包体1’の正面図であり、熱可塑性合成樹脂フィルムよりなる袋2の中に被収容物Cが真空封入されている。熱可塑性合成樹脂フィルムとしては、前述のものを用いることができる。
【0050】
袋2の入口2eに沿ってヒートシール部3が形成されている。ヒートシール部3では、袋2の一面側のフィルム2aと他面側のフィルム2bとが溶着され、これにより入口2eが封じられている。なお、ヒートシール前に袋2内が真空引きされている。
【0051】
ヒートシール部3よりも被収容物C側に、ヒートシール部3と略平行なD方向に延在するように、袋2の一方の側辺2cから他方の側辺2dにまで開裂帯4が延設されている。開裂帯4の構成は上記と同一である。
【0052】
梱包体1’は、例えば、辺2g部分が封じられた袋2内に被収容物Cを収容し、入口2e側に開裂帯4及びヒートシール部3を形成することにより製造される。ヒートシール前に袋2内が真空吸引される。開裂帯4とヒートシール部3とはいずれが先に形成されてもよい。
【0053】
この梱包体1’においても、最初から辺2g部分においてフィルム2aとフィルム2bとが一連につながっている袋2を用いる代りに、寸胴の熱可塑性合成樹脂フィルム内に被収容物Cを入れた後、辺2g部分にヒートシール部を形成して封じる工程を経て梱包体1’を製造することも可能である。
【0054】
寸胴のフィルムを用いて梱包体1’を製造する場合、辺2g側のヒートシール部の形成と、入口2e側のヒートシール部3と、開裂帯4の形成との順序は任意である。
【0055】
被収容物Cの収容は、真空吸引前であればいずれの段階で行われてもよい。例えば、最初から寸胴内に被収容物を入れておいてもよく、一部のヒートシールや開裂帯を形成した後に被収容物を入れてもよい。
【0056】
本発明においては、袋状のフィルム及び寸胴状のフィルムのいずれを用いた梱包体であっても、開裂帯4は一側辺から他側辺まで連続したものとなっていなくてもよい。例えば、開裂帯は一側辺から他側辺に向う途中まで設けられてもよい。また、開裂帯は、一側辺から入口2e又は辺2gに向って設けられてもよい。この場合、開裂帯は入口2e又は辺2gにまで到達してもよく、到達しなくてもよい。
【0057】
本発明の開裂帯を設けた梱包体は、清浄度の高い環境下において開封されて使用される被収容物を収容する場合に適している。清浄度の高い環境の清浄度としては、ISO7クラス(クラス10,000)より高い清浄度が好ましく、ISO6クラス(クラス1,000)より高い清浄度がより好ましい。このような環境としては、クリーンルームやクリーンベンチ等が挙げられる。
【0058】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。例えば、ヒート線としては、2本の素線(線状抵抗発熱体)を縒り合せたものを用いてもよい。
【実施例
【0059】
厚さ80μmのポリエチレン製フィルムよりなる25×25cmの袋に対し、図7に示すヒート線20を備えた図6の開裂帯形成装置を用いて開裂帯4を形成した。ヒート線20の主線21として、長さ300mmで線径が0.20、0.32、0.40、又は0.45の鉄クロム電熱線(FCHW2)を用いた。副線22としては、線径が0.20、0.32、0.40又は0.45mmの鉄クロム電熱線(FCHW2)を用いた。副線22を主線21の長さ300mmに対して40~47回転にて螺旋状に巻き付けた。開裂帯形成時の通電電流値は10.5A、発熱最高温度は250℃、押し付け圧力は0.4MPa、加熱時間は2.5secとした。
【0060】
開裂帯4が形成された各袋2について「耳ちぎり」特性及び「開封」特性を評価した。「耳ちぎり」とは、最初に開裂帯にそってフィルムシートのちぎれやすさを示す。「開封」とは、ちぎれたあとの、溶着したフィルムシートの離れ具合を示す。結果を表1に示す。また、引き裂き最大荷重と引き裂き荷重の中央値の測定結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1における評価においては、「耳ちぎり」及び「開封」のいずれも実用的には評価が4以上であれば良く、5以上であることがより望ましい。
【0063】
表1より、主線の太さとしては、0.32~0.45mmが望ましい。0.45mmより太くなると溶着面積が増え耳ちぎりおよび開封が行いにくくなる。0.32mmよりも細くなると、開裂帯のパターンが変化し、耳ちぎりはやりにくいものの、ちぎれると溶着面積が少ないため開封性は良好になる。
【符号の説明】
【0064】
1,1’ 梱包体
2 袋
2h,3 ヒートシール部
4 開裂帯
5 凹部
10 開裂帯形成装置
20 ヒート線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10