(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】嗅覚能力導出方法、嗅覚能力導出プログラム、及び嗅覚能力導出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220720BHJP
G06Q 50/22 20180101ALI20220720BHJP
G09B 7/06 20060101ALI20220720BHJP
G09F 19/00 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
A61B10/00 X
G06Q50/22
G09B7/06
G09F19/00 J
(21)【出願番号】P 2018073463
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】松山 崇
(72)【発明者】
【氏名】岩井 幸一郎
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146005(WO,A1)
【文献】特開2016-129577(JP,A)
【文献】特開2017-049529(JP,A)
【文献】特開2001-174371(JP,A)
【文献】特開2010-051715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0139170(US,A1)
【文献】特開2018-029728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
G06Q 50/22
G09B 3/00
G09B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサにより、実現される方法であって、
前記プロセッサは、
画像処理部
として正解を含む複数の選択肢を表示
し、
におい成分放出処理部
として被トレーニング者の年齢に応じて定まる放出状態でにおい成分を放出
する指示を出力し、
受付処理部
として前記被トレーニング者による選択肢の選択結果を受け付け
、
前記受付処理部
として前記正解と前記選択結果とを比較して前記正解を選択したか否かを判定
し、
前記受付処理部
としてトレーニングの難易度のレベルを受け付け
、
前記画像処理部
として前記被トレーニング者の年齢に、前記におい成分に応じて設定された補正係数と、前記レベルに応じて設定された補正係数と、前記正解の選択がされた回数及び前記正解でない選択の回数に基づいて設定された補正係数と、を乗算して得た嗅覚年齢を算出
する嗅覚能力導出方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記におい成分放出処理部
として前記選択結果が前記正解の選択の場合、前記放出状態を、におい成分の放出量が少なくなるように変更し、前記選択結果が前記正解でない選択の場合には、前記放出状態を、におい成分の放出量が多くなるように変更し、変更した放出状態でにおい成分を放出
する指示を出力する請求項1に記載の嗅覚能力導出方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記におい成分放出処理部
として前記放出状態を、前記年齢と前記レベルとに応じて定める、
請求項1又は請求項2に記載の嗅覚能力導出方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記受付処理部
としてトレーニングの難易度のレベルを受け付けることを更に
実行し、
前記画像処理部
として前記難易度のレベルが高い程、正解の選択肢以外の選択肢として、前記正解の選択肢に類似する選択肢を表示する、
請求項1又は請求項2に記載の嗅覚能力導出方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記におい成分放出処理部
として前記におい成分を放出
する指示を出力する際、前記におい成分が放出される環境の湿度を所定の湿度に
する指示を出力する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、
記憶処理部
として前記嗅覚能力導出方法が実行される時に表示した複数の選択肢の情報を記憶することを更に
実行し、
前記画像処理部
として前記複数の選択肢を表示する際は、前記嗅覚能力導出方法が前回実行される時に表示された複数の選択肢ではない複数の選択肢を表示する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項1~請求項6の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法を実行させる嗅覚能力導出プログラム。
【請求項8】
プロセッサに嗅覚能力導出方法を実行させるための嗅覚能力導出プログラムを記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体に記憶されている嗅覚能力導出プログラムを実行することにより前記嗅覚能力導出方法を実行する処理装置と、
を備える嗅覚能力導出装置であって、
前記嗅覚能力導出方法は、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法である、
嗅覚能力導出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅覚能力導出方法、嗅覚能力導出プログラム、及び嗅覚能力導出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザが日常生活の中で感覚の異常の可能性に気づかせる感覚異常検出装置が開示されている。
特許文献2には、香料成分をマイクロカプセル化してパウダー状となし、このマイクロカプセルを、無臭で紙等に付着可能な粘性を有する固形べースに混入してスティック状に成型し、収納容器に装填してなることを特徴とするスティック型ニオイ提示具が開示されている。
特許文献3には、より簡単な方法でしかも楽しく意欲的に香りを学び、記憶することのできる嗅覚セットが開示されている。
特許文献4には、様々な実施形態で、患者の左右の鼻孔の嗅覚検知閾値を測定および判定することによって嗅覚機能障害を検知、評価および/または監視するための装置が開示されている。
特許文献5には、定量性や総合的な嗅覚機能の検査を健康診断の一項目として適切かつ簡便に検査できる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-171936号公報
【文献】特許第3694409号公報
【文献】特開2004-433号公報
【文献】特表2017-529885号公報
【文献】特開2016-129577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3の発明は、においの放出濃度を可変することができないため、正確な嗅覚能力を測定することができない。特許文献4~5の発明は、検査を目的としているため、正確に嗅覚能力を測定できるかも知れないが、操作が煩雑で継続的に嗅ぐというトレーニングに必要な装備を具備していない。
【0005】
本発明は、におい成分の放出状態を変更させて、簡易に嗅覚能力を導出することができる嗅覚能力導出方法、嗅覚能力導出プログラム、及び嗅覚能力導出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本願の請求項1に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、プロセッサにより、実現される方法であって、前記プロセッサは、画像処理部として正解を含む複数の選択肢を表示し、におい成分放出処理部として被トレーニング者の年齢に応じて定まる放出状態でにおい成分を放出する指示を出力し、受付処理部として前記被トレーニング者による選択肢の選択結果を受け付け、前記受付処理部として前記正解と前記選択結果とを比較して前記正解を選択したか否かを判定し、前記受付処理部としてトレーニングの難易度のレベルを受け付け、前記画像処理部として前記被トレーニング者の年齢に、前記におい成分に応じて設定された補正係数と、前記レベルに応じて設定された補正係数と、前記正解の選択がされた回数及び前記正解でない選択の回数に基づいて設定された補正係数と、を乗算して得た嗅覚年齢を算出する、を含む。
【0007】
本発明は、正解を含む複数の選択肢を表示し、被トレーニング者の年齢に応じて定まる放出状態でにおい成分を放出し、前記被トレーニング者による選択肢の選択結果を受け付け、前記正解と前記選択結果とから、前記被トレーニング者の嗅覚能力を導出する。
本発明は、におい成分の放出状態を被トレーニング者の年齢に応じて変更させ、被トレーニング者に選択肢を選択させることで、被トレーニング者の嗅覚能力を導出する。よって、本発明は、におい成分の放出状態を変更させて、簡易に嗅覚能力を導出することができる
【0008】
請求項2に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、請求項1に記載の発明において、前記プロセッサは、前記におい成分放出処理部として前記選択結果が前記正解の選択の場合、前記放出状態を、におい成分の放出量が少なくなるように変更し、前記選択結果が前記正解でない選択の場合には、前記放出状態を、におい成分の放出量が多くなるように変更し、変更した放出状態でにおい成分を放出する指示を出力する。
請求項3に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記プロセッサは、前記におい成分放出処理部として前記放出状態を、前記年齢と前記レベルとに応じて定める。
請求項4に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記プロセッサは、前記受付処理部としてトレーニングの難易度のレベルを受け付けることを更に実行し、前記画像処理部として前記難易度のレベルが高い程、正解の選択肢以外の選択肢として、前記正解の選択肢に類似する選択肢を表示する。
請求項5に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記プロセッサは、前記におい成分放出処理部として前記におい成分を放出する指示を出力する際、前記におい成分が放出される環境の湿度を所定の湿度にする指示を出力する。
請求項6に記載の発明の嗅覚能力導出方法は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記プロセッサは、記憶処理部として前記嗅覚能力導出方法が実行される時に表示した複数の選択肢の情報を記憶することを更に実行し、前記画像処理部として前記複数の選択肢を表示する際は、前記嗅覚能力導出方法が前回実行される時に表示された複数の選択肢ではない複数の選択肢を表示する。
【0009】
請求項7に記載の発明の嗅覚能力導出プログラムは、コンピュータに請求項1~請求項6の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法を実行させる。
請求項8に記載の発明の嗅覚能力導出装置は、プロセッサに嗅覚能力導出方法を実行させるための嗅覚能力導出プログラムを記憶する記憶媒体と、前記記憶媒体に記憶されている嗅覚能力導出プログラムを実行することにより前記嗅覚能力導出方法を実行する処理装置と、を備える嗅覚能力導出装置であって、前記嗅覚能力導出方法は、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の嗅覚能力導出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、におい成分の放出状態を変更させて、簡易に嗅覚能力を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】嗅覚トレーニングシステムのブロック図である。
【
図2】
図2には、クライアント10のブロック図である。
【
図3】クライアント10のCPU22の機能ブロックである。
【
図4】サーバ12のCPU22の機能ブロックである。
【
図5】嗅覚トレーニングプログラムの一部のフローチャートである。
【
図6】嗅覚トレーニングプログラムの残りのフローチャートである。
【
図7】嗅覚トレーニングデータ処理プログラムのフローチャートである。
【
図11】複数の図柄の表示画面250を示す図である。
【
図14】レーダーチャート画面280を示す図である。
【
図15】においAについての年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係を示す図である。
【
図16】においの複数のグループの各々につて、複数の種類の各々についての異なる複数の図柄を示す図である。
【
図17】ユーザ毎の、過去の嗅覚トレーニングについて、各においについてどの図柄を用いたのかを示すユーザの履歴データと、今回の嗅覚トレーニングについて、各においについてどの図柄を用いるのかを示すユーザの履歴データと、を示す図である。
【
図18】正解テーブルと不正解テーブルとを示す図である。
【
図19】第12の変形例における正解画面260を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1には、嗅覚トレーニングシステムのブロック図が示されている。
図1に示すように、嗅覚トレーニングシステムは、クライアント10、サーバ装置(以下、「サーバ」という)12、及びにおい成分放出装置16を備えている。クライアント10とサーバ12とは、例えば、インターネットなどのネットワーク14を介して接続されている。におい成分放出装置16は、クライアント10からの命令に従って、複数、例えば、最大6種類のにおい成分を選択的に放出することができる。におい成分放出装置16は、6個のにおい成分タンクを有し、各タンクから各放出口を介してにおい成分を放出する。
クライアント10は、本開示の技術の嗅覚能力導出装置の一例である。
【0013】
ユーザは、におい成分放出装置16から放出されるにおい成分を嗅ぐことができる位置に位置して、後述する嗅覚トレーニングを行う。
【0014】
図2には、クライアント10のブロック図が示されている。
図2に示すように、クライアント10は、コンピュータ本体20を備えている。コンピュータ本体20は、バス30を介して相互に接続されたCPU22、ROM24、RAM26、及び入出力(I/O)ポート28を備えている。I/Oポート28には、表示装置32、入力装置34、通信装置36、及び記憶装置38が接続されている。ROM24(又は記憶装置38)には、後述する嗅覚トレーニングプログラム(
図5,
図6参照)が記憶されている。記憶装置38には、後述する正解テーブル及び不正解テーブル(
図18)が記憶されている。
嗅覚トレーニングプログラム(
図5,
図6参照)は、本開示の技術の嗅覚能力導出プログラムの一例である。CPU22は、本開示の技術の処理装置の一例である。ROM24(又は記憶装置38)は、本開示の技術の記憶媒体の一例である。
【0015】
サーバ12もクライアント10と同様の構成となっているので、その説明を省略する。なお、サーバ12のROM24(又は記憶装置38)には、嗅覚トレーニングデータ処理プログラムが記憶されている。サーバ12の記憶装置38には、各においについての年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係(
図15参照)が記憶されている。
【0016】
嗅覚トレーニングプログラムは、通信処理機能、画像処理機能、受付処理機能、におい成分放出処理機能、及び記憶処理機能を有する。クライアント10のCPU22が嗅覚トレーニングプログラムを実行すると、クライアント10のCPU22は、
図3に示すように、通信処理部42、画像処理部44、受付処理部46、におい成分放出処理部48、及び記憶処理部50として機能する。
【0017】
嗅覚トレーニングデータ処理プログラムは、通信処理機能、放出量決定処理機能、図柄決定処理機能、及び記憶処理を有する。サーバ12のCPU22が嗅覚トレーニングデータ処理プログラムを実行すると、サーバ12のCPU22は、
図4に示すように、通通信処理部62、放出量決定処理部64、図柄決定処理部66、及び記憶処理部68として機能する。
【0018】
図5、6には、嗅覚トレーニングプログラムのフローチャートが示されている。
図5、6を用いて、クライアント10による嗅覚トレーニング処理(嗅覚能力導出処理)を詳細に説明する。クライアント10のCPU22が嗅覚トレーニングプログラムを実行することで、
図5、6のフローチャートに示された嗅覚トレーニング処理が実現される。
【0019】
クライアント10の表示装置32の画面には、
図8に示す初期画面200が表示されている。初期画面200は、トレーニングボタン204と、におい調香ボタン206を備える。トレーニングボタン204は、嗅覚トレーニングを開始させる、即ち、嗅覚トレーニングプログラムをスタートさせるためのボタンである。におい調香ボタン206は、においの調香及び放出を指示するためのボタンである。
【0020】
トレーニングボタン204が押されると、嗅覚トレーニングプログラムがスタートし、ステップ72で、画像処理部44は、
図9に示す開始画面210を表示する。開始画面210は、ユーザの氏名を入力するための氏名入力領域212、ユーザのID番号を入力するためのID番号入力領域214、ユーザの生年月日を入力するための生年月日入力領域216、ユーザの性別を選択するための性別選択ボタン218を有する。開始画面210は、氏名、ID番号、生年月日、及び性別を既に登録したユーザのID番号の一覧表を表示するID番号一覧表表示領域224を有する。これらの登録済みのユーザは、ID番号一覧表表示領域224に表示されたID番号の一覧表から自己のID番号をクリックすると、氏名入力領域212~性別選択ボタン218に、登録済みの氏名、ID番号、生年月日、及び性別が設定される。
【0021】
開始画面210は、トレーニングのために使用するにおいの種類の数を入力するためのにおい種類数入力領域220、及びトレーニングの難易度のレベルを入力するための難易度レベル入力領域222を有する。上記のようににおい成分放出装置16は、最大6種類のにおいのにおい成分を放出することができる。におい種類数入力領域220には、1~6の中の値を入力する。トレーニングの難易度のレベルには、「1.容易」、「2.やや容易」、「3.標準」、「4.やや難」、「5.難」の5つのレベルがある。難易度レベル入力領域222がクリックされると、トレーニングの難易度の5つの各レベル名がプルダウンメニューとして表示される。ユーザは、所望のレベルを選択する。
【0022】
開始画面210は、トレーニング開始ボタン226、氏名入力領域212~難易度レベル入力領域222において入力されたデータを消去するためのデータクリアボタン228、及び、氏名入力領域212~難易度レベル入力領域222を介してデータを登録せずにトレーニングを開始させるデータ登録スキップボタン230を有する。
【0023】
ステップ74で、受付処理部46は、氏名入力領域212~難易度レベル入力領域222を介して入力されたユーザデータを受け付ける。ユーザデータには、ユーザの年齢のデータ(生年月日)を含む。
【0024】
ステップ76で、受付処理部46は、トレーニング開始ボタン226が押されたか否かを判断する。トレーニング開始ボタン226が押されたと判断されなかった場合、トレーニング開始ボタン226が押されるまで、当該判断が繰り返される。トレーニング開始ボタン226が押されたと判断された場合、ステップ78で、画像処理部44は、
図10に示す案内画面240を表示装置32の画面に表示する。案内画面240は、嗅覚トレーニングの方法を説明するメッセージを表示するメッセージ表示領域242と、開始ボタン244とを有する。
【0025】
ステップ80で、受付処理部46は、開始ボタン244が押されたか否かを判断する。開始ボタン244が押されたと判断されなかった場合、開始ボタン244が押されたと判断されるまで、当該判断を繰り返す。開始ボタン244が押されたと判断された場合、ステップ82で、通信処理部42は、氏名~難易度レベルのユーザデータを、サーバ12に送信する。サーバ12は、後述する嗅覚トレーニングデータ処理プログラム(
図7参照)を実行し、各におい成分の単位時間当たりの放出量と各においの図柄のデータを送信するので、ステップ84で、通信処理部42は、各におい成分の単位時間当たりの放出量と各においの図柄のデータを受信する。図柄は各においについて複数あり、各においについて正解の図柄も指定されている。
【0026】
ステップ86で、におい成分放出処理部48は、嗅覚トレーニングプログラムで使用する詳細には後述する変数n、niを0に初期化する。ステップ88で、におい成分放出処理部48は、変数nを1インクリメントする。変数nは、においの各種類を識別する。例えば、におい種類数入力領域220に6が入力された場合、変数nは、6種類のにおいを識別する。変数n=1~6で、においA~Fを識別する。上記のように、各においについて正解の図柄が指定されているので、変数n=1~6で、においA~Fの正解の図柄も識別される。
【0027】
ステップ89で、画像処理部44は、
図11に示すように、正解のにおいnに対応する図柄を含む複数の図柄の表示画面250を表示装置32の画面に表示する。表示画面250は、正解のにおいnに対応する図柄を含む5つの図柄と、「分からない」と回答するための図柄とを表示する領域252niを有する。表示画面250は、におい放出開始ボタン254、回答をキャンセルするためのキャンセルボタン256、及び次のにおいに移動することを指示する指示ボタン258を有する。
【0028】
ステップ90で、におい成分放出処理部48は、においnのにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnを、Pn0に設定するように、におい成分放出装置16に指示する。
【0029】
ステップ91で、受付処理部46は、におい放出開始ボタン254が押されたか否かを判断する。におい放出開始ボタン254が押されたと判断されなかった場合、におい放出開始ボタン254が押されたと判断されるまで、当該判断を繰り返す。におい放出開始ボタン254が押されたと判断された場合、ステップ92で、におい成分放出処理部48は、においnのにおい成分を単位時間当たり放出量Pnで放出するように、におい成分放出装置16に指示する。におい成分放出装置16は、当該指示に従って、においnのにおい成分を単位時間当たり放出量Pnで放出する。
【0030】
ここで、におい成分放出装置16は、においnのにおい成分を単位時間当たり放出量Pnで放出することを1回行ってもよく、複数回(例えば、2回)行ってもよい。
【0031】
ステップ94で、におい成分放出処理部48は、niを1インクリメントする。
【0032】
においnのにおい成分が放出されると、ユーザは、放出されたにおい成分に対応するにおいの図柄を、入力装置34を介して、選択する。例えば、変数n=1では、リンゴのにおいのにおい成分が放出される。
図11の表示画面250の領域252niには、正解のにおいn=1に対応する図柄(リンゴ)を含む5つの図柄(みかん、リンゴ、バナナ、メロン、キウイ)と、「分からない」を回答するための図柄とが含まれる。
【0033】
ユーザは、放出されたにおい成分を嗅ぎ、例えば、においnはリンゴのにおいであると判断した場合には、リンゴの図柄を選択する。においnはみかんのにおいであると判断した場合には、みかんの図柄を選択する。においnがどのにおいなのか分からない場合には、「分からない」を回答するための図柄を選択する。
【0034】
ステップ98で、受付処理部46は、回答があったか否かを判断する。回答があったと判断されなかった場合には、ステップ100で、受付処理部46は、一定時間が経過したか否かを判断する。一定時間が経過したと判断されなかった場合には、本処理はステップ98に戻る。回答があったと判断されず、当該一定時間が経過したと判断された場合には、ステップ102で、画像処理部44は、回答がなかった旨のメッセージである不回答メッセージを表示装置32の画面に表示する。ステップ102の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ108に進む。
【0035】
ステップ98で、回答があったと判断された場合には、ステップ104で、受付処理部46は、正解の図柄が選択されたか否かを判断する。上記のように変数n=1~6で、においA~Fが識別され、各においの正解の図柄も識別されるので、回答として選択された図柄が、正解の図柄であるか否かを判断することにより、正解の図柄が選択されたか否かを判断することができる。
【0036】
例えば、変数n=1において、リンゴの図柄が選択され、正解の図柄が選択されたと判断された場合には、嗅覚トレーニング処理は、ステップ106に進む。
【0037】
一方、例えば、変数n=1において、リンゴの図柄が選択されなかった場合、例えば、別の図柄(例えば、メロンの図柄)が選択されたり、「分からない」の図柄が選択されたり、した場合には、正解の図柄が選択されなかったと判断する。 正解の図柄が選択されなかったと判断された場合、嗅覚トレーニング処理は、ステップ108に進む。
【0038】
ステップ104で、正解の図柄が選択されたと判断された場合には、ステップ106で、記憶処理部50は、
図18に示す不正解テーブルのにおいnの行のni-1番目に不正解が記憶されているか否かを判断する。
【0039】
不正解テーブル及び正解テーブルは、
図18に示すように、においnの行のniで識別される領域に、嗅覚トレーニングが行われた結果を記憶するテーブルである。
【0040】
ステップ106が最初に実行されるときには、不正解テーブルのにおいnの行のni-1番目に不正解が記憶されていると判断されず、嗅覚トレーニング処理は、ステップ112に進む。
【0041】
ステップ110で、画像処理部44は、
図12に示す正解画面260を表示装置32の画面に表示する。正解画面260は、中断ボタン262、正解メッセージを表示する正解メッセージ表示領域264、現在の進行状況を表示する進行状況表示領域266、上記領域252niを含む。ステップ106の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ112に進む。
【0042】
ステップ112で、記憶処理部50は、
図18に示す正解テーブルのにおいnの行のni番目に記憶する。例えば、n=3でかつni=1であれば、
図18に示すように、においC(n=3で識別される)の行の1番目の領域に正解を示す「〇」を記憶する。
【0043】
ステップ112の処理が実行される場合には、正解が選択されているので(ステップ104:Y)、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnでにおいを認識することができる能力を有すると判断できる。この場合、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnよりも小さい放出量でにおいを認識することができる能力を有する場合がある。本実施の形態では、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnよりも小さい放出量でにおいを認識することができる能力を有するか否かを確かめるため、まず、ステップ114で、におい成分放出処理部48は、においnのにおい成分の単位時間当たりの放出量PnをPn/2に設定する。なお、2で割ることに限定されず、Pn←Pn-Δp等のように、一定量Δp減少させるようにしてもよい。そして、嗅覚トレーニング処理は、ステップ91に戻る。よって、ステップ91~104が実行される。
【0044】
ステップ91~104が実行され、前回よりも少ない放出量でにおい成分が放出されるので、ユーザは、正解の図柄が選択しない場合もある。この場合、ステップ104が否定判定となり、ステップ108で、記憶処理部50は、正解テーブル(
図18参照)のにおいnの行のni-1番目に正解が記憶されているか否かを判断する。
【0045】
例えば、
図18のn=3(においC)でかつni=2の場合、ni-1番目=1番目の領域に正解(「〇」)が記憶されているので、ステップ108が肯定判定となる。この場合には、
図6のステップ124で、記憶処理部50は、不正解(「×」)を、正解テーブルのにおいn(=3)の行のni(=2)番目に記憶する。ステップ124の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ126に進む。
【0046】
上記例とは異なり、例えば、n=1(においA)で最初にステップ92が実行され、ユーザが不正解を選択した場合には、ステップ108は否定判定となる。この場合には、ステップ118で、画像処理部44は、
図13に示す不正解画面270を表示装置32の画面に表示する。不正解画面270は、中断ボタン272、不正解メッセージを表示する不正解メッセージ表示領域274、現在の進行状況を表示する進行状況表示領域276、上記領域252niを含む。ステップ118の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ120に進む。
【0047】
ステップ120で、記憶処理部50は、
図18に示すように、不正解テーブルのにおいn(=1)の行のni(=1)番目に不正解(「×」)を記憶する。
【0048】
ステップ120の処理が実行される場合には、不正解が選択されているので(ステップ104:N)、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnでにおいを認識することができる能力を有しないと判断できる。この場合、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnよりも大きい放出量でにおいを認識することができる能力を有しない場合がある。本実施の形態では、ユーザは、現在のにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnよりも大きい放出量でにおいを認識することができる能力を有しないか否かを確かめるため、まず、ステップ122で、におい成分放出処理部48は、においnのにおい成分の単位時間当たりの放出量Pnを2*Pnに設定する。なお、2をかけることに限定されず、Pn←Pn+Δp等のように、一定量Δp増加させるようにしてもよい。そして、嗅覚トレーニング処理は、ステップ91に戻る。よって、ステップ91~104が実行される。
【0049】
ステップ91~104が実行され、ユーザは、正解の図柄を選択する場合もある。この場合、ステップ106で正解画面260(
図12参照)が表示され、ステップ106で、記憶処理部50は、不正解テーブル(
図18参照)のにおいnの行のni-1番目に不正解が記憶されているか否かを判断する。上記例の場合(n=1でかつni=2)、ni-1番目=1番目の領域に正解(「×」)が記憶されているので、この例の場合には、ステップ116で、記憶処理部50は、正解(「〇」)を、不正解テーブルのにおいn(=1)の行のni(=2)番目に記憶する。ステップ116の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ126に進む。
【0050】
ステップ126で、画像処理部44は、においnの臭覚年齢を算出する。
例えば、不正解テーブル(
図18参照)において、n=1の場合(においA)、ni=1の領域に「×」、ni=2の領域に「〇」が記憶されている。これは、このユーザは、においAでは、最初の放出量Pn0では、においAを認識することができる能力を有しないが、放出量2*Pn0では、においAを認識することができる能力を有していると判断できる。
【0051】
ユーザの嗅覚年齢は、次のように算出される。まず、各においについては、ユーザの年齢を補正するにおい係数(kn)が予め定められている。また、トレーニングの難易度のレベルに応じて、ユーザの年齢を補正する補正係数Aが定められている。更に、正解や不正解の回数に応じて、ユーザの年齢を補正する補正係数Bが定められている。ユーザの嗅覚年齢は、(ユーザの年齢)×kn×A×Bという嗅覚年齢算出式に基づいて、計算される。このように、ユーザの嗅覚年齢は、不正解又は正解1回について1歳増加又は減少するのではなく、においの種類、トレーニングの難易度のレベル、及び正解や不正解の回数に応じて定まる。
【0052】
ステップ126の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ128に進む。
【0053】
ステップ128で、におい成分放出処理部48は、nがにおい種類数入力領域220に入力した値Nであるか否かを判断する。n=Nでないと判断された場合には、未だ嗅覚トレーニングがされていないにおいがあるので、ステップ130で、画像処理部44は、においを変更することを報知するにおい変更報知画面を表示装置32の画面に表示する。ステップ130の後は、嗅覚トレーニング処理は、ステップ88に戻って、以上の処理(ステップ88~128)が実行される。
【0054】
指定された数のすべてのにおいについて嗅覚トレーニングが終了すると、ステップ128が肯定判定となる。これにより、例えば、
図18の正解テーブル及び不正解テーブルに、トレーニング結果に応じた内容(「〇」、「×」)が記憶される。
【0055】
ステップ128が肯定判定の場合、嗅覚トレーニング処理は、ステップ132に進む。ステップ132で、画像処理部44は、ユーザの嗅覚能力を、例えば、
図14に示すようにレーダーチャート画面280で、表示装置32の画面に表示する。レーダーチャート画面280は、嗅覚年齢表示領域281、レーダーチャート領域282、日付領域284、及びボタン286~290を有する。
【0056】
嗅覚年齢表示領域281には、ユーザの嗅覚年齢が表示される。
図14に示す例では、嗅覚年齢算出式に従って算出されたにおいA~Fについてユーザの嗅覚年齢の平均値を求め、求めた平均値として、45歳が表示されている。
【0057】
レーダーチャート領域282は、ユーザの各においの嗅覚能力をレーダーチャートで表示する領域である。プロットの方法は次の通りである。上記のようにトレーニングの難易度のレベルには、「1.容易」、「2.やや容易」、「3.標準」、「4.やや難」、「5.難」がある。例えば、「3.標準」が選択された場合、プロットの基準は3を基準とする。「1.容易」、「2.やや容易」が選択された場合、プロットの基準はそれぞれ2、1である。一方、「4.やや難」、「5.難」が選択された場合、プロットの基準はそれぞれ4、5である。そして、各においについて1回間違えで、基準から「-1」、2回間違えで、基準から「-2」の点にプロットする。一方、各においについて1回正解後、更に少ない放出量で正解した時、基準から「+1」、更に少ない放出量で正解した時、基準から「+2」にプロットする。なお、上限及び下限になった場合には、それぞれ5の場所、0の場所にプロットする。
【0058】
更に、ユーザの嗅覚年齢(各においの嗅覚年齢の平均値)とユーザの実年齢との差に応じて定まる嗅覚能力を示すメッセージが次のように予め定められている。例えば、差が+10歳以上の範囲の場合、「嗅覚機能が衰えています」、+10歳未満で+3歳以上の範囲の場合、「初級」(標準以下)」、+3歳未満で-3歳より大きい範囲の場合、「中級(年齢相応)」のメッセージが定められている。差が-3歳以下で-10歳より大きい範囲の場合、「上級(標準以上)」、-10歳以下の範囲の場合、「ソムリエ(調香師)」が定められている。
図14の例では、当該ユーザの実年齢は43歳であり、上記求めたユーザの嗅覚年齢(平均値)は45歳であった。よって、ユーザの嗅覚年齢(平均値)とユーザの実年齢との差は、+2歳であり、+3歳未満で-3歳より大きい範囲であるので、当該差に応じて定まる嗅覚能力として、「中級(年齢相応)」が表示されている。
【0059】
日付領域284は、嗅覚トレーニングをした日付を表示する領域である。ボタン286~290は、結果の保存を指示するボタン、嗅覚トレーニングを再度実行することを指示するボタン、嗅覚トレーニングを終了することを指示するボタンである。
【0060】
ボタン290が押された場合には、ステップ134で、画像処理部44は、図示しない終了画面を表示装置32の画面に表示して、処理は終了する。
【0061】
図7には、嗅覚トレーニングデータ処理プログラムのフローチャートが示されている。
図7を用いて、サーバ12による嗅覚トレーニングデータ処理を詳細に説明する。サーバ12のCPU22が嗅覚トレーニングデータ処理プログラムを実行することで、
図7のフローチャートに示された嗅覚トレーニングデータ処理が実現される。嗅覚トレーニングデータ処理プログラムがスタートすると、ステップ152で、通通信処理部62は、クライアント10からユーザデータを受信したか否かを判断する。ユーザデータを受信したと判断されなかった場合には、ユーザデータを受信したと判断されるまで、当該判断を繰り返す。
【0062】
ユーザデータを受信したと判断した場合には、ステップ154で、放出量決定処理部64は、ユーザデータからユーザの年齢を抽出し、ステップ156で、放出量決定処理部64は、複数のにおいの各々における年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係から、抽出した年齢に対応するにおい成分の単位時間当たりの放出量を、各においについて取得する。
【0063】
ここで、年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係を説明する。なお、以下では、n=1の場合(においA)について説明するが、他のにおいB~FもにおいAと概念は同様であるので、その説明を省略する。
【0064】
図15には、においAについての年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係が示されている。におい成分の単位時間当たりの放出量は、次の実験により決定されている。即ち、同年齢の複数の被験者を対象にして、におい成分の放出量を徐々に増加させながら、複数の被験者の各々がにおいを認識できた放出量を求める実験をした。においを認識できるようになった単位時間当たりの放出量の平均値を、におい成分の単位時間当たりの放出量とする。
【0065】
以上の関係は、各においA~Fについて求めて、サーバ12の記憶装置38に記憶されている。ステップ156では、放出量決定処理部64は、各においA~Fについての上記関係と、ユーザの年齢AGOに対応するにおい成分の単位時間当たりの放出量Pn0を、各においについて取得する。
【0066】
ステップ158で、放出量決定処理部64は、各においについて取得したにおい成分の単位時間当たりの放出量を、難易度の設定されたレベルに応じて修正する。上記のように難易度レベル入力領域222には、「1.容易」、「2.やや容易」、「3.標準」、「4.やや難」、「5.難」の5つのレベルがある。「3.標準」が設定された場合には、放出量の修正量は0である。「2.やや容易」が設定された場合には、ステップ156で取得された放出量の2倍の値にする。「1.容易」が設定された場合には、ステップ156で取得された放出量の4倍の値にする。「4.やや難」が設定された場合には、ステップ156で取得された放出量の1/2倍の値にする。「5.やや難」が設定された場合には、ステップ156で取得された放出量の1/4倍の値にする。
【0067】
ステップ160で、図柄決定処理部66は、ユーザの履歴データから、各においについて、過去の複数回のトレーニングにおいて使用されなかった図柄を選択する。
【0068】
図16には、においの複数のグループ、例えば、6個のグループの各々につて、複数の種類、例えば、5種類の各々について異なる複数の図柄が示されている。例えば、果物のグループには、みかん、リンゴ、バナナ、メロン、キウイの5種類が含まれる。各種類について異なる複数、例えば、5個の図柄のデータが記憶されている。みかんについては、5個の異なる図柄A1-1、A1-2、・・・A1-5がある。リンゴについては、5個の異なる図柄A2-1、A2-2、・・・A2-5がある。バナナについては、5個の異なる図柄A3-1、A3-2、・・・A3-5がある。メロンについては、5個の異なる図柄A4-1、A4-2、・・・A4-5がある。キウイについては、5個の異なる図柄A5-1、A5-2、・・・A5-5がある。その他のグループについても同様である。なお、A1-1等は、図柄の識別情報(例えば、番号)である。これらの図柄のデータは、対応する番号に対応して、サーバ12の記憶装置38に記憶されている。
【0069】
図17には、ユーザ毎に、過去の嗅覚トレーニングについて、各においについてどの図柄を用いたのかを示すユーザの履歴データが示されている。例えば、ユーザ(〇〇 〇〇)については、〇〇年〇〇月〇〇日〇〇:〇〇の開始時刻で開始された嗅覚トレーニングでは、例えば、においAについては、A1-1、A1-2、・・・A1-5の番号が記憶され、図柄A1-1、A1-2、・・・A1-5が使用されたことが認識できる。他のにおいについても同様に番号が記憶され、どの図柄が使用されたのか認識できる。なお、その他の開始日時に開始された嗅覚トレーニングについても同様である。
【0070】
そして、ステップ160では、図柄決定処理部66は、ユーザの履歴データから、各においについて、過去の複数回、例えば、3回のトレーニングにおいて使用されなかった図柄を選択する。
図17に示す例では、例えば、においAについては、過去の3回では、A1-1・・・、A1-2・・・、A1-3・・・で識別される種類の図柄が使用されていることが認識できるので、今回は、これら以外の種類、例えば、A1-4、A2-4、・・・で識別される図柄を選択する。
【0071】
ステップ162で、通通信処理部62は、ステップ158で修正された各においのにおい成分の単位時間当たりの放出量、及び、ステップ160で選択された各図柄のデータを送信する。
【0072】
ステップ164で、記憶処理部68は、ユーザの履歴データに、今回の各図柄の番号A1-4、A2-4、・・・A5-4を追加する。
【0073】
以上説明したように本実施の形態では、簡便に楽しく嗅覚トレーニングをすることができるので、嗅覚トレーニングを継続して実行するようにユーザを導くことができる。
ところで、加齢とともに嗅覚が低下すること(PSYCHOGERIATRICS 2011;11:196-20499)や嗅覚能力低下と死亡率、認知症の関連性が報告されている(PLOS ONE 2014;9;e107541、日老医誌2013;50:243-248)。また、嗅覚トレーニングによって、嗅覚能力が向上することも報告されている(Laryngoscope 2009;119:496-499)。
本実施の形態により、嗅覚トレーニングを継続して、例えば、1日数回継続的に実行することによって、嗅神経細胞の数が増え、脳内回路のネットワークが強まり、ユーザは、嗅覚能力の向上、更には、認知症予防、長寿命化も可能となる。また、日々の健康チェックも可能となる。
【0074】
次に、種々の変形例を説明する。なお、以下の各変形例を任意に組み合わせることもできる。例えば、第1の変形例~第12の変形例を全て組み合わせたり、第1の変形例~第12の変形例の内の2つ以上で12未満の変形例を組み合わせたりしてもよい。
(第1の変形例)
上記実施の形態では、
図1に示すように、嗅覚トレーニングシステムは、クライアント10、サーバ12、及びにおい成分放出装置16を備えている。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、クライアント10のみを備え、サーバ12の機能もクライアント10が担うようにしてもよい。
【0075】
(第2の変形例)
におい成分放出装置16は、6個のにおい成分タンクを有し、各タンクから各放出口を介してにおい成分を放出している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、複数のにおい成分タンクと1つの放出口とを備え、複数のにおい成分タンクから所定の比率でにおい成分を取り出し混合して所定のにおい成分を生成して放出する構成のにおい成分放出装置を用いてもよい。
【0076】
(第3の変形例)
上記実施の形態では、におい成分を放出する際、環境湿度は問わない。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、ユーザが、におい成分放出装置16からのにおい成分を嗅ぐ空間の湿度を予め定められた最適湿度、例えば、50%の相対湿度(RH(relative humidity)))にしながらにおい成分を放出するようにしてもよい。この場合、におい成分放出装置は、におい成分が水分に付着しないように、気化して加湿するようにしてもよい。
【0077】
(第4の変形例)
上記実施の形態では、一回目に正解又は不正解を選択した場合、不正解又は正解になるまで嗅覚トレーニングを繰り返す際、図柄は変更していない。本開示の技術はこれに限定されない。種類は同じであるが、異なる図柄を提示するようにしてもよい。例えば、最初の嗅覚トレーニングでは、A1-1、A2-1、・・・A5-1の図柄が用いられた場合、繰り返しの次の嗅覚トレーニングでは、A1-2、A2-2、・・・A5-2の図柄を用いるようにする等である。
【0078】
(第5の変形例)
上記実施の形態では、一回目に正解を選択した場合、不正解になるまで、におい成分の放出量を小さく(ステップ114)して嗅覚トレーニングを繰り返している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、一回目に正解を選択した場合、直ちに、別のにおいについて嗅覚トレーニングをするようにしてもよい。
【0079】
(第6の変形例)
上記実施の形態では、一回目に不正解を選択した場合、正解になるまで、におい成分の放出量を大きく(ステップ122)して嗅覚トレーニングを繰り返している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、一回目に不正解を選択した場合、最大、「提示した図柄の数-2」回まで嗅覚トレーニングをするようにしてもよい。
【0080】
(第7の変形例)
上記実施の形態では、各においについての年齢とにおい成分の単位時間当たりの放出量との関係(
図15参照)を、性別を問わず決定している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、性別毎に、上記関係(
図15)を決定し、性別の情報を加味して放出量を決定するようにしてもよい。また、におい成分の単位時間当たりの放出量は、次の実験により決定してもよい。即ち、同年齢の複数の被験者を対象にして、におい成分の放出量を徐々に増加させながら、複数の被験者の内の何人がにおいを認識できたかを求める実験をする。過半数の人がにおいを認識できるようになった単位時間当たりの放出量を、におい成分の単位時間当たりの放出量とする。
【0081】
(第8の変形例)
上記実施の形態では、年齢に応じてにおい成分の単位時間当たりに放出量を定めている。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、単位時間当たりに放出量は一定であるが、年齢に応じてにおい成分の放出時間を定めるようにしてもよい。また、年齢に応じて、単位時間当たりに放出量の濃度勾配を定めるようにしてもよい。つまり、年齢に応じて、におい成分の放出状態、具体的には、単位時間当たりに放出量、放出時間、及び単位時間当たりに放出量の濃度勾配の少なくとも1つを定めるようにしてもよい。
【0082】
(第9の変形例)
上記実施の形態では、難易度のレベルに関わらず表示する図柄の個数は一定している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、難易度のレベルが高くなるに従って、表示する図柄の個数を多くするようにしてもよい。
【0083】
(第10の変形例)
上記実施の形態では、におい成分を放出する際に表示する図柄は、難易度のレベルに関わらず、においの属するグループに属する種類の図柄としている。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、難易度のレベルが「1.容易」の場合には、正解のグループを含む5つのグループから1つずつ図柄(例えば、A1-1、B1-1、C1-1、D1-1、E1-1)を選択して表示する。難易度のレベルが、「2.やや容易」、「3.標準」、「4.やや難」の場合に従って、正解のにおいに、比較的類似するにおいの図柄の枚数を多くする。難易度のレベルが「5.難」の場合には、正解のグループの中の正解のにおいを含む5種類の図柄(例えば、A1-1、A2-1、A3-1、A4-1、A5-1)を表示する。
【0084】
(第11の変形例)
上記実施の形態では、各においについてユーザの嗅覚年齢は、嗅覚年齢算出式に応じて定まる、即ち、においの種類、トレーニングの難易度のレベル、及び正解や不正解の回数に応じて総合的に定まるようにしている。本開示の技術はこれに限定されず、次のようにしてもよい。
【0085】
各においについてユーザの嗅覚年齢が大きくなる(老いる)場合は、次の3通りある。
第1に、最初のにおい放出で正解を選択しても、トレーニングの難易度のレベルとして、「1.容易」、「2.やや容易」が選択された場合である。なお、「1.容易」が選択された場合は、「2.やや容易」が選択された場合より、嗅覚年齢が高くなる(老いる)。
第2に、不正解が連続する回数が多くなる場合である。
第3に、最初のにおい放出で正解を選択しても、表示する図柄が、より匂いの違いがはっきりする図柄である場合である。
本開示の技術では、ユーザの嗅覚年齢を、第1~第3の場合の少なくとも1つの場合に応じて定める。上記実施の形態は、第1の場合と第2の場合とが組み合わされている。
【0086】
各においについてユーザの嗅覚年齢が小さくなる(若返る)場合は、次の3通りある。
第4に、最初のにおい放出で正解を選択しても、トレーニングの難易度のレベルとして、「4.やや難」、「5.難」が選択された場合である。なお、「5.難」が選択された場合は、「4.やや難」が選択された場合より、嗅覚年齢が小さくなる(若返る)。
第5に、正解が連続する回数が多くなる場合である。
第6に、最初のにおい放出で正解を選択しても、表示する図柄が、より匂いの違いがはっきりしない図柄である場合である。
本開示の技術では、ユーザの嗅覚年齢を、第4~第6の場合の少なくとも1つの場合に応じて定める。上記実施の形態は、第4の場合と第5の場合とが組み合わされている。
【0087】
(第12の変形例)
以上説明した実施の形態では、最初に正解した場合、不正解になるまで同じにおいを、濃度を薄くしながら放出し、また、最初に不正解の場合、正解になるまで同じにおいを、濃度を濃くしながら放出する。よって、
図12に示す正解した場合の正解画面260の正解メッセージ表示領域264、及び
図13に示す不正解の場合の不正解画面270の不正解メッセージ表示領域274に「ニオイがでてきます。・・・」のメッセージが表示される。本開示の技術はこれに限定されず、次のようにしてもよい。
図12に示す正解した場合の正解画面260の正解メッセージ表示領域264「更に薄いニオイがでてきます。・・・」のメッセージを表示したり、
図13に示す不正解の場合の不正解画面270の不正解メッセージ表示領域274に「更に濃いにおいがでてきます。・・・」のメッセージを表示したり、してもよい。
また、一旦あるにおいを放出した場合、正解、不正解、非選択時間が一定時間経過した場合の何れでも、別のにおいを放出するようにしてもよい。この場合、
図19示すように正解画面260の正解メッセージ表示領域264には「違うニオイでてきます。・・・」のメッセージを表示してもよい。不正解画面270の不正解メッセージ表示領域274にも同様に、「違うニオイがでてきます。・・・」のメッセージを表示してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 クライアント
12 サーバ
14 ネットワーク
16 におい成分放出装置
22 CPU
42 通信処理部
44 画像処理部
46 受付処理部
48 におい成分放出処理部
50 記憶処理部
62 通信処理部
64 放出量決定処理部
66 図柄決定処理部
68 記憶処理部