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特許7106992熱可塑性樹脂と接触する温調水の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂と接触する温調水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20220720BHJP
   B29B 13/04 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B29B9/06
B29B13/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018104647
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019209492
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克巳
(72)【発明者】
【氏名】木村 優也
(72)【発明者】
【氏名】村谷 孝博
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-137997(JP,A)
【文献】特開2005-351600(JP,A)
【文献】特開平08-138714(JP,A)
【文献】特開2012-153749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と接触する温調水の熱可塑性樹脂と接触時の温度をAとしたとき、
Aが10℃以上40℃以下であり、
(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上65℃以下の温度で、温調水を30分以上保持し、
前記温調水が、熱可塑性樹脂ペレット製造用の循環冷却水であることを特徴とする、
熱可塑性樹脂と接触する温調水の処理方法。
【請求項2】
(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上65℃以下の温度で30分以上温調水を循環する、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上65℃以下の温度で、熱可塑性樹脂と接触していない間に、温調水を30分以上保持する、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
Aが、20℃以上40℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載の処理方法。
【請求項5】
前記温調水が殺菌剤を含有しない、請求項1~4のいずれかに記載の処理方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項7】
(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上65℃以下の温度で、温調水を保持する時間が、30分以上1.5時間以下である、請求項1~6のいずれかに記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と接触する温調水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、家電製品や各種自動車用部品、コンピュータのハウジング等の射出成形材料、繊糸、編織物等の衣料品、タイヤコード、漁網、釣り糸等の工業用又はレジャー用フィラメント材料、食品包装用のフィルムや各種容器用シートあるいはボトル用材料として使用され、その種類によって、高強力、耐磨耗性、耐疲労性、良好な染色性、ガスバリヤー性等の化学的、機械的性質を有している。
【0003】
通常、バッチ式で重合した熱可塑性樹脂は、重合槽内を不活性ガスで加圧することにより、また、連続式の場合はギアポンプやスクリュー等の機械的な動力により、複数の吐出口からストランドと呼ばれる糸状に押し出された後、造粒装置によって冷却固化・切断してペレットとして製品化、もしくは固相重合用原料として使用される。この工程は一般に造粒工程と称される。
熱可塑性樹脂の造粒には数種の方法があるが、比較的低コストで機構が単純かつメンテナンスが容易であり、ペレット形状も安定していることから、溶融ストランドを水等の冷媒で冷却固化した後、カッター等で切断してペレット化する方法が一般的である(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-153749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような、溶融ストランドを水等の冷媒で冷却固化した後、切断してペレット化する方法では、一般に冷媒を循環して使用している。
本発明は、上述のような熱可塑性樹脂と接触する温調水中に、使用によりスライム等が発生し、その結果、安定して製造することが困難となる場合があることを見出した。
本発明は、上記の問題を解決するものであり、熱可塑性樹脂を安定して処理することが可能な、熱可塑性樹脂と接触する温調水を処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、温調水に対して特定の処理を行うことにより、温調水中のスライム等の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の〔1〕~〔9〕を提供する。
【0007】
〔1〕熱可塑性樹脂と接触する温調水の熱可塑性樹脂と接触時の温度をAとしたとき、Aが10℃以上50℃以下であり、(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で、温調水を30分以上保持することを特徴とする、熱可塑性樹脂と接触する温調水の処理方法。
〔2〕 前記温調水が循環温調水である、〔1〕に記載の処理方法。
〔3〕 (A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で30分以上温調水を循環する、〔2〕に記載の処理方法。
〔4〕 (A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で、熱可塑性樹脂と接触していない間に、温調水を30分以上保持する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の処理方法。
〔5〕 Aが、20℃以上40℃以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の処理方法。
〔6〕 前記温調水が殺菌剤を含有しない、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の処理方法。
〔7〕 前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の処理方法。
〔8〕 前記温調水が、冷却水である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の処理方法。
〔9〕 前記温調水が、熱可塑性樹脂ペレット製造用の循環冷却水である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を安定して処理することが可能な、熱可塑性樹脂と接触する温調水を処理する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態を用いて説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は、「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。すなわち、端点であるA及びBを含む数値範囲を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
【0010】
[温調水の処理方法]
本発明の熱可塑性樹脂と接触する温調水(以下、「本発明の温調水」ともいう。)の処理方法は、熱可塑性樹脂と接触する温調水の熱可塑性樹脂と接触時の温度をAとしたとき、Aが10℃以上50℃以下であり、(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で、温調水を30分以上保持することを特徴とする。
【0011】
本発明者は、熱可塑性樹脂と接触する温調水に、長期の使用によりスライム等が発生し、その結果、循環水用のストレーナーに詰まりが生じたり、廃水管や循環パイプに詰まりが生じ、安定して熱可塑性樹脂を温調水により処理できなくなることを見出した。
本発明者は、鋭意検討した結果、温調水を、特定の温度で特定の時間以上保持することにより、安定して熱可塑性樹脂を処理可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。上記の効果が得られる機構として、以下のように推定される。
すなわち、温調水を一定の条件で保持することにより、温調水中の微生物の増殖が抑制され、又は殺菌され、これにより、安定して熱可塑性樹脂を処理できるようになったものと推定される。
本発明の温調水の処理方法では、処理用の薬剤の添加を必要とせず、また、既に温調水の温度を調整のために温度調整用の熱交換器等を有する場合には、特段の追加の装置を必要とすることなく、温調水の処理が可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<温調水>
本発明において、「温調水」とは、温度が調整された水を意味するものであり、加温又は冷却された水を意味する。また、水は、井水、工業用水、純水、イオン交換水等のいずれでもよいが、経済性の観点及び不純物の混入を避ける観点から、工業用水又はイオン交換水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂と接触する温調水は、上述したように、熱可塑性樹脂の製造時に、溶融したストランドの冷却用に使用してもよく、また、熱可塑性樹脂からモノマーや残留する低分子成分を除去するために使用してもよく、特に限定されない。
これらの中でも、本発明の効果がより顕著である観点から、本発明において、温調水は冷却水であることが好ましい。
【0013】
熱可塑性樹脂と接触時の温調水の温度をAとしたとき、Aは10℃以上50℃以下である。
温調水を熱可塑性樹脂の冷却に使用する場合には、Aは、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
一方、温調水を熱可塑性樹脂からのモノマーや低分子成分の除去に使用する場合には、Aは、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは35℃以上、より更に好ましくは40℃以上である。
Aが10℃未満であると、温調水の温度管理が困難となる場合があり、Aが50℃を超えると、(A+25)℃以上の温度で処理する効果が低い場合がある。
【0014】
本発明において、温調水を(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で30分以上保持する。
本発明において、温調水が熱可塑性樹脂と接触していない間に、(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で30分以上温調水を保持することが好ましい。ここで、「熱可塑性樹脂と接触していない間」とは、温調又は低分子除去を目的とする熱可塑性樹脂が温調水系内(温調水が循環温調水である場合には、熱交換器及び循環ポンプを含む循環式配管全体)に存在しない状態をいう。
なお、熱可塑性樹脂が影響を受けない範囲で、熱可塑性樹脂が温調水系内に存在することを排除するものではない。
本発明において、温調水を(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上で30分以上保持することにより、微生物の発生が抑制され、又は殺菌され、温調水で、安定して熱可塑性樹脂を処理することが可能である。
温調水を保持する温度が55℃以上であっても、熱可塑性樹脂と接触時の温度(A)に対して、(A+25)℃未満であると、加温による効果が得られない場合がある。一方、(A+25)℃以上であっても、55℃未満の場合も同様に、加温による効果が得られない場合がある。
また、温調水を30分以上保持する温度は、(A+25)℃を満たす前提で、55℃以上であり、好ましくは60℃以上である。また、上限は特に限定されないが、常圧で処理する観点から、100℃以下であり、設備への負担を軽減する観点からは、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは65℃以下である。
温調水を保持する時間は、微生物の増殖をより抑制し、又は殺菌する観点から、30分以上である。また、処理時間の上限は、生産性の観点から、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下、より更に好ましくは1.5時間以下である。なお、温調水を保持する温度が60℃未満である場合には、45分以上保持することが好ましい。
【0015】
前記温調水は、循環温調水でもよく、滞留温調水でもよいが、熱可塑性樹脂と接触する温調水の温度を一定に保つ観点から、循環温調水であることが好ましい。
貯留槽自体を加温又は冷却して、温調水の温度を一定に保つ滞留温調水では、大量の熱可塑性樹脂を処理する場合には、温度変化を十分に抑制することが困難な場合がある。
一方、温調水が、熱交換器を備える循環式配管中の循環温調水である場合には、大量の熱可塑性樹脂と接触する場合であっても、温度をより一定に保つことが可能である。
ここで、温調水が循環温調水である場合には、(A+25)℃以上であり、かつ、55℃以上の温度で30分以上、温調水を循環させることが好ましい。これにより循環式配管全体を上記の温度の範囲で保持された温調水が循環することとなり、配管の内壁に付着した微生物等に対しても、その増殖の抑制又は殺菌に有効である。
【0016】
温調水には、スライム等の微生物の発生を抑制する観点から、殺菌剤を添加してもよいが、温調水と接触した熱可塑性樹脂に不純物が付着することを抑制する観点からは、殺菌剤を含有しないことが好ましい。
温調水中の殺菌剤の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、より更に好ましくは含有しないことである。
ここで、殺菌剤とは、殺菌作用及び抗菌作用の少なくとも一方を有する薬剤を意味する。
【0017】
温調水には、熱可塑性樹脂のペレットで発生する静電気を抑制する目的で、帯電防止剤を添加したり、配管中のスケールの発生を抑制する目的で、スケール防止剤を添加してもよい。
【0018】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)等のビニル系ポリマー;(メタ)アクリル酸及びそのエステルに由来する構成単位を有するアクリルポリマー;ポリオールとポリイソシアネートとの重付加により得られるポリウレタン;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド;ポリアミドイミド等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のような比較的ガラス転移温度の低い樹脂は、熱可塑性樹脂を溶融押出して、ストランドを形成する方法による製造に適しており、本発明において好適に使用することができ、特にポリアミド樹脂が好適である。
【0019】
本発明において、温調水と接触する熱可塑性樹脂は、樹脂ペレット製造時のストランドに限定されるものではなく、紡糸された熱可塑性樹脂でもよく、フィルム状の熱可塑性樹脂でもよく、特に限定されない。
また、温調水と接触させる目的としては、溶融又は加温された熱可塑性樹脂の冷却に限定されるものではなく、モノマー、オリゴマー等の低分子成分の除去、熱可塑性樹脂中の水分量の調整等を目的とするものであってもよい。
【0020】
より具体的には、以下の工程1~3を含む樹脂ペレットの製造方法において、工程2で使用される温調水として、本発明の温調水を使用する場合が例示される。
工程1:溶融状態の熱可塑性樹脂をダイからストランド状に抜き出す工程
工程2:抜き出されたストランド状の樹脂を温調水を用いて冷却する工程
工程3:冷却されたストランド状の樹脂を裁断して樹脂ペレットを得る工程
なお、工程2において、(i)ストランド状の樹脂を槽内に充填された温調水に浸漬する方法や、(ii)スライダー上を流れる温調水とストランド状の樹脂とを接触させる方法が例示されるが、冷却効率や、装置の簡便さの観点から、上記(ii)の方法が好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、モノマー除去で使用される温調水として、本発明の温調水を使用する場合が例示される。
より具体的には、特許第5686498号公報に記載されているように、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの製造において、未延伸ポリアミドフィルムをモノマー除去工程で処理し、その後、水分調整工程で水分率を2~10質量%としてから、同時二軸延伸する方法が例示される。上記モノマー除去工程において、本発明の温調水を使用してもよい。
これらの中でも、本発明の温調水は、熱可塑性樹脂ペレット製造用の冷却水であることが好ましく、熱可塑性樹脂ペレット製造用の循環冷却水であることがより好ましい。
【0021】
〔ポリアミド樹脂〕
以下、本発明において熱可塑性樹脂として好適に使用されるポリアミド樹脂について説明する。
ポリアミド樹脂としては、ジアミン成分とジカルボン酸成分の重縮合により得られたポリアミド、又はラクタムの開環重合により得られたポリアミドが例示され、ジアミン成分とジカルボン酸成分の重縮合により得られたポリアミドであることが好ましく、溶融重縮合法により行うことが好ましい。
ポリアミド樹脂としては、ポリ(6-アミノヘキサン酸)(ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサンメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン10,10)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン6,9)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン4,6)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン4,10)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン5,6)、ポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン5,10)等のホモポリマー、カプロラクタム-ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン6,6/6)、ポリ[メチレンビス(2-メチルシクロヘキシル)ドデカミド](ナイロンMACM12)、ポリ[4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ドデカミド](ナイロンPACM12)等の共重合体が例示できる。
また、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(MXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(MXD12)、ポリ(1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンアジパミド)(BAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)が挙げられる。
更に、ポリ(ヘキサメチレンイソフタラミド)(ナイロン6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)(ナイロン6T)、ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ナイロン6I/6T)、ポリ(トリメチル)ヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6-3-T)、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマー(ナイロン6/MXDI)、カプロラクタム/ヘキサメチレンイソフタラミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリ[メチレンビス(2-メチルシクロヘキシル)イソフタラミド/メチレンビス(2-メチルシクロヘキシル)テレフタラミド/ドデカミド](ナイロンMACMI/MACMT/12)等が例示される。
【0022】
溶融重縮合法の好適な例としては、ジアミンを溶融したジカルボン酸に直接加えて重縮合する、いわゆる直接重合法が挙げられる。より具体的には、反応槽中で溶融状態にあるジカルボン酸を撹拌しながら、ジアミンを連続的又は間欠的に添加し、縮合水を除去しながら重縮合すると共に、ジアミンを添加する間、生成するポリマーの融点よりも下回らないように反応温度を上昇させる。ここで、ジアミンを添加する間、反応系を加圧することが好ましい。また、ジアミン添加が終了した後も、好ましくは加圧を継続しつつ、生成するポリアミドの融点より下回らないように温度を制御しつつ更に反応を継続してもよい。ただし、以上の反応については、常圧で実施してもよい。その後、漸次減圧して常圧未満の圧力にして更に一定時間反応を継続してもよい。なお、本製造方法における反応温度の上限値は、通常、得られるポリアミドの融点+30℃程度以下に制御される。
【0023】
また、溶融重縮合法は、直接重合法に限定されず、ジカルボン酸と、ジアミンとからなるナイロン塩を、水の存在下、加圧下で加熱して行うナイロン塩法で行ってもよい。
更には、重縮合反応は、ジアミン及びジカルボン酸からなるポリアミドのオリゴマーを押出機で溶融混練して反応させる反応押出法で行ってもよい。反応押出法は、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの比較的大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。
【0024】
重縮合が終了して得られた溶融状態にあるポリアミドは、例えば反応槽の底部に備えられたダイからストランド状に抜き出す。また、ストランドを抜き出すときのポリアミドの温度は、ポリアミドが溶融状態に保たれるように、ポリアミドの融点以上であればよいが、融点以上、(融点+30℃)以下の温度であることが好ましい。
【0025】
≪ジカルボン酸単位≫
本発明に好適なポリアミド中のジカルボン酸単位は、炭素数4~20のα,ω-脂肪族ジカルボン酸を30モル%以上含むことが好ましい。炭素数4~20のα,ω-脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸(別名:ノナメチレンジカルボン酸)、1,10-デカンジカルボン酸(別名:デカメチレンジカルボン酸)等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸及びセバシン酸がより好ましい。
炭素数4~20のα,ω-脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸単位としては、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
≪ジアミン単位≫
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明において、ポリアミドは、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外にも、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム、ω-エナントラクタム等のラクタム類、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、9-アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸等のその他のモノマー成分由来の単位を、性能を損なわない範囲で含有していてもよい。
また、本発明のポリアミドペレットには、その性能を損なわない範囲で、ポリアミド以外の他の任意成分が適宜含有されてもよい。ただし、ポリアミドは、ペレットにおける主成分となり、その含有量は、ペレット全体に対して、特に限定されないが、通常、80質量%以上程度、好ましくは90質量%以上である。
【0028】
本発明において、得られた樹脂ペレットは、必要に応じて他の任意成分を混合したうえで、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形等の公知の成形方法により、所望の形状の成形品に成形することが可能である。成形品としては、特に限定されないが、フィルム、シート、積層フィルム、積層シート、チューブ、ホース、パイプ、中空容器、ボトル、繊維、各種形状の部品等種々のものが挙げられる。
また、本発明の樹脂ペレットは、更に固相重合することで、高分子量化及び結晶化したペレットとしてもよい。高分子量化及び結晶化したペレットも、上記と同様に、各成形方法で各種成形品に成形可能である。
【実施例
【0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実験例1]
温調水として、ポリアミド樹脂であるナイロン6,6の樹脂ペレット製造において、循環冷却水として使用しており、ポリアミド樹脂との接触時の温度は、25℃である、温調水(イオン交換水)を使用した。
樹脂ペレット製造用の循環冷却水である温調水を、50℃、55℃、及び60℃の温度条件において、30分及び60分処理した後、室温で4日間培養し、菌の生育状況を観察した。また、比較例として、未処理の温調水で同様に培養を行った。
上記の培養は、サニ太くん(一般生菌用、JNC(株)製)を使用し、試料溶液1mLにて培養を行った。
結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1中の数字は、コロニー数を意味する。
未処理の場合、及び50℃にて30分又は60分保持した場合には、菌の生育は抑制されず、コロニー数は50より多かった。一方、55℃で30分保持した場合には、コロニー数は10未満となり、明らかな菌数の抑制が認められた。
また、55℃で60分処理、60℃で30分又は60分処理した場合には、菌の生育が完全に抑制され、4日間培養後のコロニー数は0であり、温調水中の上記培養にて生育可能な菌が、完全に死滅したことが示された。
【0033】
[実験例2]
ポリアミド樹脂ペレットの製造に使用している循環温調水を使用した製造ユニットにおいて、実施例では、循環温調水を60℃に加温して、30分間配管内を循環させ、その後、該温調水を廃棄し、新たに水道水を入れるというサイクルを、3日に一度行った。
一方、比較例では、単に循環温調水を3日に一度廃棄して、新たに水道水を入れるというサイクルを、3日に一度行った。
実施例及び比較例において、同様の製造条件でポリアミド樹脂ペレットの製造を行い、30日後のストレーナーの目詰まりを目視で評価した。また、配管の内部へのスライムの付着を、触診で評価した。
その結果、実施例では、30日後においても、ストレーナーの目詰まりや、配管の内部へのスライムの付着は全く認められなかった。
一方、比較例では、ストレーナーの目詰まりが発生しつつあり、スライム状の微生物がストレーナーに付着していた。また、配管内部を触診したところ、ぬるつきが発生しており、スライムの発生を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の温調水の処理方法によれば、ストレーナーの目詰まりや、配管内のスライムの付着が抑制され、熱可塑性樹脂を安定して処理することができる。