IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光デバイス 図1
  • 特許-光デバイス 図2
  • 特許-光デバイス 図3
  • 特許-光デバイス 図4
  • 特許-光デバイス 図5
  • 特許-光デバイス 図6
  • 特許-光デバイス 図7
  • 特許-光デバイス 図8
  • 特許-光デバイス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/126 20060101AFI20220720BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20220720BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G02B6/126
G02B6/125 301
G02F1/01 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018106540
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019211583
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】高林 和雅
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040946(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052343(WO,A1)
【文献】特開2013-195643(JP,A)
【文献】特開平05-005811(JP,A)
【文献】特開平06-130238(JP,A)
【文献】特開平02-287408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0264389(US,A1)
【文献】特開2006-65089(JP,A)
【文献】特開2011-34057(JP,A)
【文献】米国特許第4669815(US,A)
【文献】米国特許第5694496(US,A)
【文献】特開2002-26818(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140363(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094797(US,A1)
【文献】特開2015-45790(JP,A)
【文献】特表平6-508933(JP,A)
【文献】特開2010-139572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を分岐して第1の分岐光及び第2の分岐光を出力する光カプラと、
前記光カプラから出力される前記第2の分岐光の偏波方向を変換する偏波変換器と、
前記光カプラから出力される前記第1の分岐光と前記偏波変換器によって偏波方向が変換された前記第2の分岐光とを合成して偏波多重光を出力する偏波合成器と、
を有し、
前記偏波合成器は、前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光に関して、光の波長に関わらず光パワーが一定となる波長特性を有するとともに、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関して、光の波長が前記偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有し、
前記光カプラは、前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光に関して、光の波長が前記所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有するとともに、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関して、光の波長が前記所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが増加する波長特性を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記光カプラの波長特性は、前記光カプラから出力される前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比と、前記偏波合成器から出力される前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比の逆数との差の絶対値の、光の波長に関する積分値が最小となるように、決定される ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記光カプラの波長特性は、前記光カプラから出力される前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比が、前記偏波合成器から出力される前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比の逆数に等しくなるように、決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
入力光を分岐して第1の分岐光及び第2の分岐光を出力する光カプラと、
前記光カプラから出力される前記第2の分岐光の偏波方向を変換する偏波変換器と、
前記光カプラから出力される前記第1の分岐光と前記偏波変換器によって偏波方向が変換された前記第2の分岐光とを合成して偏波多重光を出力する偏波合成器と、
を有し、
前記光カプラは、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関する前記偏波合成器の波長特性を打ち消す波長特性を有し、
前記光カプラの波長特性は、前記光カプラから出力される前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比と、前記偏波合成器から出力される前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光及び前記第2の分岐光の光パワーの比の逆数との差の絶対値の、光の波長に関する積分値が最小となるように、決定されることを特徴とする光デバイス。
【請求項5】
入力光を分岐して第1の分岐光及び第2の分岐光を出力する光カプラと、
前記光カプラから出力される前記第2の分岐光の偏波方向を変換する偏波変換器と、
前記光カプラから出力される前記第1の分岐光と前記偏波変換器によって偏波方向が変換された前記第2の分岐光とを合成して偏波多重光を出力する偏波合成器と、
を有し、
前記偏波合成器は、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関して、光の波長が前記偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有し、かつ光の波長が前記偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域において前記第1の分岐光の光パワーよりも変動の大きい波長特性を有し、
前記光カプラは、前記偏波多重光に含まれる前記第1の分岐光に関して、光の波長が前記偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有するとともに、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関して、光の波長が前記偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域の端部に近づくほど光パワーが増加する波長特性を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項6】
前記光カプラは、幅が異なる2つの光導波路を有する非対称型の方向性結合器、又は、幅が同一であり且つ長さが異なる2つの光導波路を有する非対称型のマッハツェンダ干渉計であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の伝送容量の拡大に伴い、偏波多重方式を用いた光デバイスが用いられることがある。偏波多重方式とは、偏波が互いに直交する信号光を合成した偏波多重光を利用して二つの独立したデータを一度に伝送する伝送方式である。
【0003】
偏波多重方式が適用された光デバイスでは、光デバイスに入力された入力光が光カプラによって2つの分岐光に分岐され、一方の分岐光の偏波方向が偏波変換器によって変換される。そして、偏波方向が変換された一方の分岐光と偏波方向が変換されていない他方の分岐光とが偏波合成器によって合成された後、偏波多重光として出力される。光カプラ、偏波変換器及び偏波合成器は、光デバイスの小型化の観点から、例えば1つの基板上に配置される。光カプラ及び偏波合成器としては、例えば、2つの導波路間で光結合を行う方向性結合器等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-65089号公報
【文献】特開平2-287408号公報
【文献】特開2011-34057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偏波合成器は、偏波多重光に含まれる2つの分岐光のうちの一方の分岐光に関して、光の波長が偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域(以下「動作波長帯域」と呼ぶ)の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有している。偏波多重方式が適用された光デバイスでは、上記した偏波合成器の波長特性に起因して、偏波多重光が劣化する可能性がある。すなわち、偏波合成器から出力される偏波多重光に含まれる2つの分岐光のうちの一方の分岐光の光パワーの最小値が動作波長帯域の端部において予め許容されたスペック値以下の範囲まで低下する虞がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、偏波合成器の波長特性に起因した偏波多重光の劣化を抑制することができる光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する光デバイスは、一つの態様において、入力光を分岐して第1の分岐光及び第2の分岐光を出力する光カプラと、前記光カプラから出力される前記第2の分岐光の偏波方向を変換する偏波変換器と、前記光カプラから出力される前記第1の分岐光と前記偏波変換器によって偏波方向が変換された前記第2の分岐光とを合成して偏波多重光を出力する偏波合成器と、を有し、前記光カプラは、前記偏波多重光に含まれる前記第2の分岐光に関する前記偏波合成器の波長特性を打ち消す波長特性を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する光デバイスの一つの態様によれば、偏波合成器の波長特性に起因した偏波多重光の劣化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施例に係る光デバイスの構成例を示す図である。
図2図2は、本実施例における偏波合成器の構成例を示す図である。
図3図3は、本実施例における偏波合成器の波長特性の一例を示す図である。
図4図4は、本実施例における光カプラの構成例を示す図である。
図5図5は、本実施例における光カプラの波長特性の一例を示す図である。
図6図6は、比較例の光カプラが用いられた場合に偏波合成器から出力される偏波多重光に含まれる分岐光の光パワーの波長特性の一例を示す図である。
図7図7は、実施例の光カプラが用いられた場合に偏波合成器から出力される偏波多重光に含まれる分岐光の光パワーの波長特性の一例を示す図である。
図8図8は、変形例における光カプラの構成例を示す図である。
図9図9は、上記実施例及び変形例に係る光デバイスが実装された光送受信モジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する光デバイスの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
【実施例
【0011】
図1は、本実施例に係る光デバイス1の構成例を示す図である。図1に示す光デバイス1は、基板10と、光導波路11と、光カプラ12と、光変調器13と、光変調器14と、偏波変換器15と、偏波合成器16とを有する。光デバイス1は、偏波多重方式が適用された光デバイスである。
【0012】
基板10は、光導波路11、光カプラ12、光変調器13、光変調器14、偏波変換器15及び偏波合成器16を搭載する基板である。
【0013】
光導波路11は、基板10上に形成されている。光導波路11は、光源から発せられる入力光が入力される入力導波路21と、分岐導波路22,23と、偏波多重光を出力するための出力導波路24とを有する。
【0014】
光カプラ12は、入力導波路21、分岐導波路22及び分岐導波路23に接続されており、光の分岐を行う。すなわち、光カプラ12は、入力導波路21から入力される入力光を2つの分岐光に分岐して、一方の分岐光を分岐導波路22へ出力するとともに、他方の分岐光を分岐導波路23へ出力する。以下では、光カプラ12から分岐導波路22へ出力される分岐光を「第1の分岐光」と呼び、光カプラ12から分岐導波路23へ出力される分岐光を「第2の分岐光」と呼ぶ。光カプラ12の構成については、後に詳述する。
【0015】
光変調器13は、分岐導波路22に設けられており、例えばマッハツェンダ型の光導波路を有する。光変調器13は、光カプラ12から出力される第1の分岐光を電気信号により変調し、変調された第1の分岐光を偏波合成器16へ出力する。光変調器14は、分岐導波路23に設けられており、例えばマッハツェンダ型の光導波路を有する。光変調器14は、光カプラ12から出力される第2の分岐光を電気信号により変調し、変調された第2の分岐光を偏波変換器15へ出力する。
【0016】
偏波変換器15は、分岐導波路23に設けられており、光変調器14から出力される第2の分岐光の偏波方向を変換する。
【0017】
偏波合成器16は、出力導波路24、分岐導波路22及び分岐導波路23に接続されており、光の合成を行う。すなわち、偏波合成器16は、光変調器13から出力される第1の分岐光と、偏波変換器15を通過して偏波方向が変換された第2の分岐光とを合成し、偏波方向が互いに直交する2つの分岐光を含む偏波多重光を出力導波路24へ出力する。
【0018】
図2は、本実施例における偏波合成器16の構成例を示す図である。偏波合成器16は、対称型の方向性結合器であり、図2に示すように、幅が同一である2つの光導波路161,162を有する。光導波路161の入力端161aは、分岐導波路22に接続されており、光導波路161の出力端161bは、出力導波路24に接続されている。光導波路162の入力端162aは、分岐導波路23に接続されており、光導波路162の出力端162bは、終端されている。光導波路161及び光導波路162は、光導波路161と光導波路162とが互いに近接する領域163を形成しており、この領域163において光結合が行われる。すなわち、光変調器13から出力される第1の分岐光は、光導波路161の入力端161aから入力され、光導波路161を通過する。また、偏波変換器15を通過して偏波方向が変換された第2の分岐光は、光導波路162の入力端162aから入力され、領域163において光導波路161に結合される。これにより、偏波方向が互いに直交する第1の分岐光及び第2の分岐光が光導波路161において合成され、得られた偏波多重光が光導波路161の出力端161bから出力導波路24へ出力される。
【0019】
図3は、本実施例における偏波合成器16の波長特性の一例を示す図である。図3において、横軸は、光の波長を示し、縦軸は、偏波合成器16から出力される光の光パワーを示している。偏波合成器16は、偏波多重光に含まれる第1の分岐光及び第2の分岐光に関して、それぞれ例えば図3に示すような波長特性を有している。すなわち、偏波合成器16は、偏波多重光に含まれる第1の分岐光に関して、光の波長に関わらず光パワーが一定となる波長特性を有している。また、偏波合成器16は、偏波多重光に含まれる第2の分岐光に関して、光の波長が偏波多重光に割り当てられた所定の波長帯域(以下「動作波長帯域」と呼ぶ)の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有している。
【0020】
したがって、光デバイス1では、図3に示したような偏波合成器16の波長特性に起因して、偏波合成器16から出力される偏波多重光が劣化する可能性がある。すなわち、偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる第2の分岐光の光パワーの最小値が動作波長帯域の端部において予め許容されたスペック値以下の範囲まで低下する虞がある。
【0021】
そこで、光デバイス1では、光カプラ12は、偏波多重光に含まれる第2の分岐光に関する偏波合成器16の波長特性を打ち消す波長特性を有している。
【0022】
ここで、光カプラ12の波長特性を説明する前に、その前提として、光カプラ12の構成について、説明する。図4は、本実施例における光カプラ12の構成例を示す図である。光カプラ12は、非対称型の方向性結合器であり、図4に示すように、幅が異なる2つの光導波路121,122を有する。本実施例では、光導波路122の幅は、光導波路121の幅よりも大きい。光導波路121の入力端121aは、終端されており、光導波路121の出力端121bは、分岐導波路22に接続されている。光導波路122の入力端122aは、入力導波路21に接続されており、光導波路122の出力端122bは、分岐導波路23に接続されている。光導波路121及び光導波路122は、光導波路121と光導波路122とが互いに近接する領域123を形成しており、この領域123において光結合が行われる。すなわち、入力導波路21から入力される入力光は、光導波路122の入力端122aから入力され、光導波路122を通過する。また、光導波路122を通過する入力光の一部は、領域123において光導波路121に結合される。これにより、入力光が第1の分岐光及び第2の分岐光に分岐され、第1の分岐光が光導波路121の出力端121bから分岐導波路22へ出力され、第2の分岐光が光導波路122の出力端122bから分岐導波路23へ出力される。
【0023】
図5は、本実施例における光カプラ12の波長特性の一例を示す図である。図5において、横軸は、光の波長を示し、縦軸は、光カプラ12から出力される光の光パワーを示している。光カプラ12は、光カプラ12から出力される第1の分岐光及び第2の分岐光に関して、それぞれ例えば図5に示すような波長特性を有している。すなわち、光カプラ12は、光カプラ12から出力される第1の分岐光に関して、光の波長が動作波長帯域の端部に近づくほど光パワーが低下する波長特性を有している。また、光カプラ12は、光カプラ12から出力される第2の分岐光に関して、光の波長が動作波長帯域の端部に近づくほど光パワーが増加する波長特性を有している。このような第2の分岐光に関する光カプラ12の波長特性によって、図3に示したような第2の分岐光に関する偏波合成器16の波長特性が打ち消される。その結果、偏波合成器16の波長特性に起因する偏波多重光の劣化を抑制することが可能となる。
【0024】
図5に示すような光カプラ12の波長特性は、光カプラ12から出力される第1の分岐光及び第2の分岐光の光パワーの比が、偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる第1の分岐光及び第2の分岐光の光パワーの比の逆数となるように、決定される。偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる第1の分岐光及び第2の分岐光の光パワーの比Ratio_PBC(λ)は、以下の式(1)により表される。
【0025】
Ratio_PBC(λ)=Pb2(λ)/Pb1(λ) ・・・ (1)
ただし、λ:光の波長、Pp1(λ):偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる第1の分岐光の光パワー、Pp2(λ):偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる第2の分岐光の光パワー
【0026】
また、光カプラ12から出力される第1の分岐光及び第2の分岐光の光パワーの比Ratio_Couper(λ)は、以下の式(2)により表される。
【0027】
Ratio_Couper(λ)=Pc2(λ)/Pc1(λ) ・・・ (2)
ただし、λ:光の波長、Pc1(λ):光カプラ12から出力される第1の分岐光の光パワー、Pc2(λ):光カプラ12から出力される第2の分岐光の光パワー
【0028】
したがって、光カプラ12の波長特性は、以下の式(3)が満たされるように、決定される。
【0029】
Ratio_PBC(λ)=1/Ratio_PBC(λ) ・・・ (3)
【0030】
ただし、実際には、動作波長帯域内の全ての波長において上記式(3)を満足する光カプラ12の波長特性を設計することは、困難である。そのため、光カプラ12の波長特性は、動作波長帯域におけるRatio_PBC(λ)と1/Ratio_PBC(λ)との差の絶対値の積分値が最小となるように、調整されてもよい。
【0031】
また、光カプラ12の波長特性を調整するためのパラメータとしては、例えば、光導波路121,122の各々の幅、領域123における光導波路121と光導波路122との間隔等がある。光デバイス1の製造者は、例えば、光導波路121,122の各々の幅、領域123における光導波路121と光導波路122との間隔等を適切な値に調整することで、上記式(3)を満足する光カプラ12の波長特性を設計することができる。
【0032】
次に、図6及び図7を用いて、光カプラ12の波長特性による偏波合成器16の出力の変化を説明する。図6は、比較例の光カプラが用いられた場合に偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる分岐光の光パワーの波長特性の一例を示す図である。図7は、実施例の光カプラ12が用いられた場合に偏波合成器16から出力される偏波多重光に含まれる分岐光の光パワーの波長特性の一例を示す図である。比較例の光カプラは、比較例の光カプラから出力される第1の分岐光及び第2の分岐光に関して、光の波長に関わらず光パワーが一定となる波長特性を有している。また、光カプラ12は、光カプラ12から出力される第1の分岐光及び第2の分岐光に関して、それぞれ例えば図5に示すような波長特性を有している。
【0033】
図6に示すように、比較例の光カプラが用いられた場合、偏波合成器16の波長特性に起因して、偏波多重光に含まれる第2の分岐光の光パワーの最小値が動作波長帯域の端部において予め許容されたスペック値以下の範囲まで低下した。
【0034】
一方、実施例の光カプラ12が用いられた場合、第2の分岐光に関する光カプラ12の波長特性によって第2の分岐光に関する偏波合成器16の波長特性が打ち消される。このため、実施例の光カプラ12が用いられた場合、偏波多重光に含まれる第2の分岐光の光パワーの最小値が動作波長帯域の端部において改善され、予め許容されたスペック値を満たした。すなわち、光カプラ12を用いることによって、偏波合成器16の波長特性に起因する偏波多重光の劣化を抑制することができた。
【0035】
以上のように、本実施例に係る光デバイス1は、光カプラ12と、偏波変換器15と、偏波合成器16とを有する。光カプラ12は、入力光を分岐して第1の分岐光及び第2の分岐光を出力する。偏波変換器15は、光カプラ12から出力される第2の分岐光の偏波方向を変換する。偏波合成器16は、光カプラ12から出力される第1の分岐光と偏波変換器15によって偏波方向が変換された第2の分岐光とを合成して偏波多重光を出力する。光デバイス1では、光カプラ12は、偏波多重光に含まれる第2の分岐光に関する偏波合成器16の波長特性を打ち消す波長特性を有する。
【0036】
この光デバイス1の構成により、偏波合成器16の波長特性に起因した偏波多重光の劣化を抑制することができる。
【0037】
(変形例)
なお、上記実施例では、光カプラ12が非対称型の方向性結合器である例を示したが、開示の技術はこれに限定されない。例えば、光カプラは、非対称型のマッハツェンダ干渉計であってもよい。図8は、変形例における光カプラ32の構成例を示す図である。
【0038】
光カプラ32は、非対称型のマッハツェンダ干渉計であり、図8に示すように、幅が同一であり且つ長さが異なる2つの光導波路321,322を有する。光導波路321の入力端321aは、終端されており、光導波路321の出力端321bは、分岐導波路22に接続されている。光導波路322の入力端322aは、入力導波路21に接続されており、光導波路322の出力端322bは、分岐導波路23に接続されている。光導波路321及び光導波路322は、光導波路321と光導波路322とが互いに近接する領域323,324を形成しており、これら領域323,324において光結合が行われる。すなわち、入力導波路21から入力される入力光は、光導波路322の入力端322aから入力され、光導波路322を通過する。また、光導波路322を通過する入力光の一部は、領域323,324において光導波路321に結合される。これにより、入力光が第1の分岐光及び第2の分岐光に分岐され、第1の分岐光が光導波路321の出力端321bから分岐導波路22へ出力され、第2の分岐光が光導波路322の出力端322bから分岐導波路23へ出力される。
【0039】
光カプラ32は、光カプラ12と同様に、偏波多重光に含まれる第2の分岐光に関する偏波合成器16の波長特性を打ち消す波長特性を有している。光カプラ32は、光カプラ32から出力される第1の分岐光及び第2の分岐光に関して、それぞれ例えば図5に示すような波長特性を有している。
【0040】
光カプラ32の波長特性を調整するためのパラメータとしては、例えば、2つの光導波路321,322の長さの差等がある。光デバイス1の製造者は、例えば、2つの光導波路321,322の長さの差等を適切な値に調整することで、上記式(3)を満足する光カプラ12の波長特性を設計することができる。
【0041】
また、上記実施例では、分岐導波路22に光変調器13が設けられ、分岐導波路23に14が設けられる例を示したが、光変調器13,14に代えて他の部品が分岐導波路22及び分岐導波路23に設けられてもよい。分岐導波路22及び分岐導波路23に設けられる他の部品としては、特定の波長の光を透過させる光フィルタ等がある。
【0042】
(適用例)
上述した光デバイス1は、例えば光信号を送受信する光送受信モジュールに適用することが可能である。図9は、上記実施例及び変形例に係る光デバイス1が実装された光送受信モジュール100の構成例を示す図である。図9に示すように、光送受信モジュール100は、LD(Laser Diode)101と、光デバイス1と、ドライバ103と、受信回路104と、DSP(Digital Signal Processor)105とを有する。また、受信回路104は、TIA(Transimpedance Amplifier)104aを有する。ドライバ103から出力されるRF信号によって光デバイス1の光変調器13,14が駆動され、光デバイス1は、LD101からの入力光を分岐して得られる第1の分岐光及び第2の分岐光を変調及び偏波多重し、得られた偏波多重光を光信号として送出する。
【0043】
受信回路104は、光信号を受信し、光電変換等の所定の光受信処理を実行し、得られた受信信号をTIA104aを介してDSP105へ出力する。
【0044】
DSP105は、受信回路104から出力される受信信号に対して、例えばデジタル復調及び復号等の所定のデジタル信号処理を実行する。また、DSP105は、送信データに対して符号化及びデジタル変調などの所定のデジタル信号処理を実行し、得られたデータ信号をドライバ103へ出力する。このデータ信号は、ドライバ103によって、光変調に用いられるRF信号に変換され、光デバイス1の光変調器13,14を駆動する。
【符号の説明】
【0045】
1 光デバイス
12、32 光カプラ
15 偏波変換器
16 偏波合成器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9