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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018113271
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019015720
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】62/529,668
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】野村 昭
(72)【発明者】
【氏名】農宗 千典
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227793(JP,A)
【文献】特開2012-063268(JP,A)
【文献】特開2000-065760(JP,A)
【文献】特開2014-035183(JP,A)
【文献】特開2006-047040(JP,A)
【文献】米国特許第05774212(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の外周面に含まれる被検査面の外観検査を行う検査装置であって、
前記被検査物は、厚み方向に幅を有する本体部と、前記本体部の外周面から径方向外側に突出する複数の突出部と、を有し、
前記被検査面は、隣り合う前記突出部の周方向に対向する一対の面の少なくともいずれかであり、
被検査物の表面に沿う仮想平面上において移動するとともに、前記被検査物の前記被検査面に向かって光を照射する照射装置と、
前記被検査物の前記被検査面を撮像範囲に含み、前記被検査面で反射された光を受光して、撮像結果としての輝度分布画像を生成するカメラと、
前記照射装置の位置が互いに異なり、かつ、前記被検査面と前記カメラと前記照射装置とが一直線上に並ばない、複数のタイミングで、前記カメラにより撮像された、複数の前記輝度分布画像を記憶する画像記憶部と、
複数の異なる前記輝度分布画像に基づいて、前記被検査面上の欠陥を検出する、欠陥検出部と、を備える検査装置。
【請求項2】
請求項に記載の検査装置であって、
前記照射装置を前記仮想平面に沿って移動させる移動機構と、
前記移動機構を動作制御する制御部と、を備える、検査装置。
【請求項3】
請求項に記載の検査装置であって、
前記制御部は、前記カメラの撮像のタイミングをさらに制御し、
前記制御部は、前記移動機構を動作および停止させることにより、前記照射装置を間欠的に移動させ、前記照射装置が移動していない状態のときに、前記カメラに撮像を実行させる、検査装置。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の検査装置であって、
前記厚み方向にみたときに、前記移動機構は、前記カメラが配置される位置を中心にして、前記照射装置を遊星運動させる、検査装置。
【請求項5】
請求項または請求項に記載の検査装置であって、
前記移動機構は、前記照射装置を、前記被検査物の周方向に沿って、円弧状に運動させる、検査装置。
【請求項6】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の検査装置であって、
前記照射装置、前記移動機構、および前記カメラは、前記被検査物に対して前記厚み方向の一方側に配置され、
前記照射装置および前記移動機構から前記被検査物までの前記厚み方向の距離は、いずれも、前記カメラから前記被検査物までの前記厚み方向の距離よりも大きい、検査装置。
【請求項7】
請求項に記載の検査装置であって、
前記被検査物をその軸線を中心にして回転させる回転機構と、
前記照射装置の移動、前記カメラの撮像タイミング、および前記回転機構の動作を制御する制御部と、をさらに備え、
前記被検査物は、その軸線を中心にして回転対称な形状を有するとともに、前記被検査面を複数有し、
前記制御部は、1の被検査面についての複数の前記輝度分布画像の取得が終了したら、前記回転機構を動作させて、直前に前記1の被検査面が配置されていた位置に、次の1の被検査面を配置する、検査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の検査装置であって、
前記欠陥検出部は、各画素について、輝度の大きさおよび移り変わりから推定される距離情報を算出し、前記各画素に前記距離情報を割り当ててなる距離画像を生成する、検査装置。
【請求項9】
被検査物の外周面に含まれる被検査面の外観検査を行う検査装置であって、
被検査物の表面に沿う仮想平面上において移動するとともに、前記被検査物の前記被検査面に向かって光を照射する照射装置と、
前記被検査物の前記被検査面を撮像範囲に含み、前記被検査面で反射された光を受光して、撮像結果としての輝度分布画像を生成するカメラと、
前記照射装置の位置が互いに異なり、かつ、前記被検査面と前記カメラと前記照射装置とが一直線上に並ばない、複数のタイミングで、前記カメラにより撮像された、複数の前記輝度分布画像を記憶する画像記憶部と、
複数の異なる前記輝度分布画像に基づいて、前記被検査面上の欠陥を検出する、欠陥検出部と、を備え、
前記欠陥検出部は、各画素について、輝度の大きさおよび移り変わりから推定される距離情報を算出し、前記各画素に前記距離情報を割り当ててなる距離画像を生成する、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査物の被検査面に、打痕等の欠陥があるか否かを、自動で検査するために用いる、検査装置が知られている。この種の検査装置については、例えば特開2007-33236号公報に開示されている。
【0003】
特開2007-33236号公報に記載の表面欠陥検査装置は、照明手段と、撮像手段と、光源制御装置と、欠陥検査装置とで構成される。この照明手段は、曲面上に順番に並んだ複数の光源(1a~1f)からなる。複数の撮像手段は、曲面上に順番に並んだ複数台のカメラ(2a~2f)からなる。光源制御装置(4)は、照明手段の複数の光源から各撮像時点に1つの光源を選択し当該光源の点灯および消灯を制御する。前記欠陥検査装置(5)は、前記撮像手段の複数のカメラから各撮像時点に1つのカメラを選択し当該カメラの撮像タイミングを制御するとともに、撮像した画像から検査対象物の欠陥を検出する。
【0004】
すなわち、特開2007-33236号公報に記載の表面欠陥検査装置では、光源の照射方向や撮像方向を変える場合に、光源(1a~1f)とカメラ(2a~2f)の組み合わせが選択される。特開2007-33236号公報に記載の表面欠陥検査装置では、このような光源角度と撮像角度との組み合わせにより、単一方向の光源照射角では検出不能な欠陥も検出することができ、検査精度を高められる、としている。
【文献】特開2007-33236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2007-33236号公報に記載の表面欠陥検査装置では、選択されたカメラ(2a~2f)に応じて、撮像範囲が変わってしまう。具体的には、撮像範囲を撮像した撮像画像のどの画素に、被検査面上のある位置が対応するかが、変わってしまう。そのため、例えば複数回の撮像で得られた撮像画像を相互に比較したいような場合に、選択したカメラの曲面上での取付角度等を考慮して、各撮像画像の各画素の対応関係を演算で求める必要が生じる。そのため、欠陥の検査のための演算処理が複雑になってしまう場合がある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、検査のために必要な演算処理をシンプルにしつつ、被検査面上の欠陥を精度よく検出することを可能にする、検査装置および検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明の1つの観点においては、被検査物の外周面に含まれる被検査面の外観検査を行う検査装置が提供される。この検査装置は、照射装置と、カメラと、画像記憶部と、欠陥検出部とを備える。前記照射装置は、被検査物の表面に沿う仮想平面上において移動するとともに、前記被検査物の被検査面に向かって光を照射する。前記カメラは、前記被検査物の前記被検査面を撮像範囲に含み、前記被検査面で反射された光を受光して、撮像結果としての輝度分布画像を生成する。前記画像記憶部は、前記照射装置の位置が互いに異なり、かつ、前記被検査面と前記カメラと前記照射装置とが一直線上に並ばない、複数のタイミングで、前記カメラにより撮像された、複数の前記輝度分布画像を記憶する。前記欠陥検出部は、複数の異なる前記輝度分布画像に基づいて、前記被検査面上の欠陥を検出する。
【0009】
本発明の別の1つの観点においては、被検査物の外周面に含まれる被検査面の外観検査を行う検査方法が提供される。この検査方法は、次のa)~c)の工程を有する。a)では、被検査物の表面に沿う仮想平面上において、光源を移動させるとともに、前記被検査物の前記被検査面に向かって前記光源から光を照射する。b)では、前記光源の位置が互いに異なり、かつ、前記被検査面と前記光源と撮像素子とが一直線上に並ばない、複数のタイミングで、前記被検査面で反射された光を受光した撮像結果としての輝度分布画像を、前記被検査面に対して固定的に設けられる前記撮像素子によって生成する。c)では、前記b)で生成した複数の前記輝度分布画像に基づいて、前記被検査面上の欠陥を検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の観点によれば、検査のために必要な演算処理をシンプルにしつつ、被検査面上の欠陥を精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る検査装置の概略的な構成を示す側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る検査装置の概略的な構成を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る検査装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る検査方法における、撮像処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る検査方法における、欠陥検出処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、変形例1に係る検査装置の概略的な構成を示す平面図である。
図7図7は、変形例2に係る検査装置の概略的な構成を示す側面図である。
図8図8は、その他の変形例に係る検査装置の概略的な構成を示す平面図である。
図9図9は、その他の変形例に係る検査装置の概略的な構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る検査装置および検査方法の例示的な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。本発明に係る検査装置および検査方法は、被検査物の外周面に含まれる被検査面の外観検査を行うための装置および方法である。以下では、被検査物の厚み方向および軸線に平行な方向を「軸方向」、軸方向に対して垂直な方向を「径方向」、被検査物の軸線を中心とする円に沿う方向を「周方向」と、それぞれ称して、説明を行う。
【0013】
<1.検査装置の構成>
本実施形態の検査装置1は、軸方向に厚みを有する被検査物100の、表面の打痕等の欠陥を検出するための外観検査を、自動で行う装置である。より詳細には、本実施形態の被検査物100は、軸方向に幅を有する本体部101と、この本体部101の外周面から径方向外側に突出する複数の突出部102と、を有する。本実施形態の被検査物100は、軸線に対して12回対称な形状を有する。
【0014】
本実施形態では、被検査物100の表面のうち、検査対象である被検査面102aは、隣り合う突出部102の周方向に対向する1対の面の、両方である。
【0015】
被検査物100としては、公知の様々な製品・部品等を適用し得るが、例えば複数の外歯を有する歯車としてもよい。あるいは、被検査物100を、径方向外側に突出する複数のティースを有するモータ用のステータコアとしてもよい。あるいは、被検査物100を、径方向外側に突出する複数の羽根を有するファンとしてもよい。なお、被検査物100をなす材料は、特定の材料には限定されない。したがって、被検査物100は、金属製であっても、あるいは樹脂製であってもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る検査装置1を側方からみたときの様子を、模式的に示している。図1中で、被検査物100は断面図で示してある。図2は、検査装置1を上方からみたときの様子を、模式的に示している。図3は、検査装置1の電気的な構成を示している。図1に示すように、検査装置1は、照射装置2と、カメラ3と、移動機構4と、回転機構5と、制御部6とを備える。また、後述するように、検査装置1は、制御部6内に、概念的な構成としての画像記憶部7および欠陥検出部8を有する。
【0017】
照射装置2は、被検査物100の被検査面102aに、光を照射する装置である。照射装置2は、発光部を有する。照射装置2は、この発光部から被検査面102aへ向けて光を投光する。発光部から投光される光は、例えば、白色光とされる。なお、照射装置2からの光の照射方向を、図1および図2中に符号Fで示してある。照射装置2からの光の照射方向Fは、常に被検査面102aの側へと向けられるように、制御部6によって制御される。本実施形態では、照射方向Fは、水平方向においてカメラ3に向かう方向と、軸方向において床面に向かう方向との、中間の方向とされている。別の言い方をすれば、本実施形態の照射方向Fは、斜め下向きであり、照射装置2からカメラ3の下方位置へ向かう方向とされている。
【0018】
カメラ3は、公知の構成の撮像装置である。本実施形態のカメラ3は、平面状に配列(2次元配列)された多数の光電変換素子を有する。各光電変換素子は、受光量に応じた電荷を蓄積する。カメラ3は、光電変換素子に入射した光を光電変換することによって、撮像結果としての輝度分布画像を生成する。輝度分布画像の各画素は、電荷に比例した輝度を有する。
【0019】
カメラ3は、床面に対して固定的に配置されている。カメラ3の撮像範囲は、床面に対して不動である。別の言い方をすれば、撮像対象の被検査面102aは、常にカメラ3の撮像範囲内の所定の位置に所定の大きさ・角度で含まれる。
【0020】
移動機構4は、照射装置2を軸方向に対して垂直な仮想平面S1に沿って移動させるための機構である。図1中に、仮想平面を符号Sで示してある。本実施形態の移動機構4は、レールを有する。レールの軌道は、仮想平面S1に沿って、環状に配置される。照射装置2は、レールに沿って移動する移動子に、アーム部41およびヒンジ部42を介して連結される。図2中に2点鎖線で示すように、本実施形態のレールの軌道R1は、軸方向にみたときに、カメラ3の位置を中心とする円形状とされる。これにより、照射装置2は、カメラ3の位置を通り軸方向に延びる回転軸を中心にして、遊星運動する。移動機構4は、制御部6によって動作制御される。ただし、移動機構4には、他の公知の様々な機構を用い得る。
【0021】
図1に示すように、照射装置2、カメラ3、および移動機構4は、被検査物100に対して軸方向の一方側に配置されている。また、照射装置2から被検査物100までの軸方向の距離L2は、カメラ3から被検査物100までの軸方向の距離L1よりも大きい(L1<L2)。さらに、移動機構4から被検査物100までの軸方向の距離L3は、上記の距離L2よりも大きい(L2<L3)。このようにすれば、カメラ3の撮像範囲に照射装置2や移動機構4が入ってしまう虞がない。
【0022】
回転機構5は、被検査物100をその軸線を中心にして回転させるための機構である。回転機構5としては、公知の様々な方式の機構を用い得るが、本実施形態の回転機構5は、テーブル部51と、当該テーブル部51を下方から回転可能に支持する柱状の支持部52と、を有する。電動機等の動力供給源からテーブル部51に回転動力が供給されることにより、テーブル部51が支持部52に対して回転する。本実施形態では、回転機構5が1回動作される毎に、テーブル部51が30°だけ、軸方向にみて時計回りに回転される。回転機構5が動作することにより被検査物100が回転する方向を、図2中に実線矢印で示してある。
【0023】
以下では、検査装置1の制御系の構成について、図3を参照して詳細に説明する。図3に示す制御部6は、検査装置1内の各部を動作制御するための手段である。本実施形態の制御部6は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有するコンピュータにより構成されている。制御部6は、上述した照射装置2、カメラ3、移動機構4、および回転機構5と、それぞれ電気的に接続されている。制御部6は、上記の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを上記のメモリに一時的に読み出し、コンピュータプログラムに基づいて、上記のプロセッサが演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、上記のハードウェアとソフトウェアとの協働によって、検査装置1における撮像処理や後述する欠陥検出の処理が進行する。
【0024】
制御部6は、移動機構4を動作制御することにより、照射装置2を、カメラ3の位置を通り軸方向に延びる回転軸Cを中心として、45°ずつ間欠的に移動させる。別の言い方をすれば、制御部6は、照射装置2を45°移動させる度に、当該照射装置2の移動を一時停止させる。
【0025】
また、制御部6は、所定のタイミングでカメラ3に撮像を実行させる。以下では、このタイミングを「撮像タイミング」と称する。
【0026】
また、制御部6は、回転機構5を動作制御することにより、テーブル部51の上に載置された被検査物100を、軸線を中心にして間欠的に回転させる。具体的には、制御部6が回転機構5を1回動作させる度に、被検査物100が30°だけ時計回りに回転する。
【0027】
画像記憶部7は、上記の記憶部に概念的に含まれる。画像記憶部7は、複数の被検査面102aのそれぞれについて、カメラ3で撮像して得られた輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を記憶する。別の言い方をすれば、画像記憶部7は、それぞれ複数(本実施形態では、8画像)存在する輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を、その画像を撮像したときに検査対象であった1の被検査面102aと対応付けて、記憶する。
【0028】
欠陥検出部8は、被検査面102a上の欠陥を検出するための処理部である。欠陥検出部8は、制御部6に概念的に含まれる。すなわち、欠陥検出部8の機能は、制御部6のプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、実現される。本実施形態の欠陥検出部8は、複数の被検査面102aのそれぞれについて、その1の被検査面102aに対応する複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を画像記憶部7から読み出し、これらの画像を総合的に評価することにより、その1の被検査面102a上の欠陥を検出する。欠陥検出部8の具体的な処理内容については、後に詳述する。
【0029】
<2.被検査面の撮像処理>
以上のような構成の検査装置1を用いて、被検査物100の複数の被検査面102aについての外観検査を行う場合、図4のような処理がなされる。図4は、被検査面102aの撮像処理の流れを示すフローチャートである。即ち、まず初めに、被検査物100が、軸線が回転機構5のテーブル部51の回転軸と一致する状態で、テーブル部51に載置される。このとき、被検査物100は、1の被検査面102aがカメラ3の撮像範囲に包含されるように配置される。
【0030】
被検査物100がテーブル部51の上にセットされた状態で、移動機構4が動作制御されることにより、照射装置2が仮想平面S1に沿って、カメラ3の周りを、移動および停止を繰り返しながら、一周する。本実施形態では、照射装置2の軌道R1上の、軸方向にみて45°おきの地点が、照射装置2の移動が停止する地点とされる。図2中に、照射装置2が移動を停止する8つの地点を符号B1,B2,・・・,B8で示している。照射装置2がこれら8つの地点B1,B2,・・・,B8に到達した時点が、上述の撮像タイミングとされる。なお、照射装置2の移動が一時停止されるいずれの地点B1,B2,・・・,B8においても、被検査面102aと、カメラ3と、照射装置2とは、一直線上には並ばない。また、照射装置2の発光部は、被検査物100の外観検査が実行される間、常に発光した状態とされる。
【0031】
撮像タイミングにおいて、カメラ3が制御部6によって動作制御されることにより、撮像が実行される。別の言い方をすれば、照射装置2が位置決めされた状態で(ステップS81)、カメラ3での撮像が行われる(ステップS82)。この間、照射装置2は、移動を停止した状態に保たれる。これにより、カメラ3の光電変換素子が、被検査面102aに照射されて当該被検査面102aで正反射または乱反射された光を受光する。その結果、上記輝度分布画像が生成される。
【0032】
1の撮像タイミングにおいて、撮像が終了したら、制御部6は、設定された全ての撮像タイミングでの撮像が終了したか否かの判断をする(ステップS83)。別の言い方をすれば、制御部6は、予定していた全ての地点(照射位置)B1,B2,・・・,B8に照射装置2を配置した状態での、撮像が終了したか否かの判断をする。この判断の結果、未だ撮像を実行していない地点がある場合には(ステップS83,No)、制御部6は、移動機構4を動作制御して、照射装置2を次の地点まで移動させる(ステップS84)。その後、この照射位置で照射装置2の移動の停止および位置決めが行われ(ステップS81)、この状態で撮像(ステップS82)が行われる。
【0033】
上述のような、照射装置2の位置決め(ステップS81)、およびカメラ3での撮像(ステップS82)が、撮像が未終了の照射位置が無くなるまで、繰り返し行われる。そして、全ての照射位置B1,B2,・・・,B8での撮像が終了したら(ステップS83,Yes)、続いて制御部6は、他の被検査面102aについても撮像が終了したか否かの判断をする(ステップS85)。この判断の結果、未だ撮像を実行していない被検査面102aがある場合には(ステップS85,No)、制御部6は、回転機構5のテーブル部51を30°分だけ時計回りに回転させる(ステップS86)。これにより、次の1の被検査面102aについての外観検査に移行する(ステップS81~S84)。
【0034】
制御部6は、全ての被検査面102aについて、それぞれ8つの輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が揃うまで、上述の処理を繰り返す。
【0035】
以上のような処理により、本実施形態では、照射装置2が8つの地点B1,B2,・・・,B8に停止している状態のそれぞれについて、上記輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が生成される。その結果、各被検査面102aについて、光が被検査面102aに照射される向きが様々(8通り)に異なる、8つの輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が得られる。
【0036】
<3.欠陥検出の処理>
各被検査面102aについて、光が被検査面102aに照射される向きが様々(8通り)に異なる、8つの輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が生成され、画像記憶部7に格納されたら、欠陥検出部8は、被検査面102a上の欠陥を検出するための処理を行う。以下では、その処理の流れを、図5を参照して説明する。
【0037】
初めに、欠陥検出部8は、1の被検査面102aの8つの輝度分布画像P1,P2,・・・,P8のそれぞれについて、周囲の画素との輝度値の差が第1閾値Th1以上の画素が集合する所定面積以上の画像領域を特定する(ステップS101)。本実施形態では、この画像領域を、欠陥がある領域に対応しているとして検出する。
【0038】
続いて、欠陥検出部8は、1の被検査面102aの8つの輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を相互に参照したときに、輝度値の移り変わり(例えば、変化量、あるいは偏差)が第2閾値Th2以上の画素が集合する所定面積以上の画像領域を特定する(ステップS102)。本実施形態では、この画像領域も、欠陥がある領域に対応しているとして検出する。
【0039】
取得した輝度分布画像は、例えば、ディスプレイ等を通じて、外観検査を行うオペレータが参照できるように表示してもよい。その場合、欠陥がある領域に対応する箇所を着色する等の方法により強調表示してもよい。
【0040】
以上で示したように、本実施形態の検査装置1は、照射装置2と、カメラ3と、画像記憶部7と、欠陥検出部8とを備える。カメラ3は、照射装置2の位置が異なる複数のタイミングで、撮像を実行する。欠陥検出部8は、撮像結果としての複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8に基づいて、被検査面102a上の欠陥を検出する。
【0041】
ここで、被検査面上の打痕等の欠陥箇所では、正常な表面と比べて反射強度が低かったり、あるいは、光が照射される向き等に応じて反射強度が大きく変化したりする傾向がある。この点、本実施形態の検査装置1によれば、複数の異なる方向から光を照射して撮像された複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を参照して、総合的に、欠陥を検出することができる。よって、欠陥を精度よく検出することができる。また、カメラ3の撮像範囲を変更することなく、照射装置2のみを移動させて、複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を得る。このため、カメラの移動距離・角度等を考慮して各輝度分布画像の各画素の対応関係を演算で求める必要がなく、演算処理がシンプルとなる。
【0042】
また、本実施形態の検査装置1では、いずれの撮像タイミングにおいても、被検査面102aと、カメラ3と、照射装置2とは、一直線上には並ばない。これにより、取得した輝度分布画像の一部分または全体がカメラ3の影で暗く写ってしまうことを抑制することができる。その結果、精度よく被検査面102a上の欠陥を検出することができる。
【0043】
また、本実施形態の検査装置1においては、被検査面102aは、隣り合う突出部102の周方向に対向する1対の面の少なくともいずれかである。このような被検査面102aは、隣り合う突出部102の間のスペースが狭隘な場合には、一般的には欠陥の撮影が難しい。しかしながら、本実施形態では、カメラ3を、被検査面102aを撮像範囲に含む所定の位置に固定し、照射装置2を仮想平面S1に沿って移動させる。これにより、光が照射される向きが異なる複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を容易に得ることができる。その結果、従来の方法では観察し難い被検査面102aについても、良好に欠陥の検査をすることができる。特に、隣り合う突出部102の間のスペースが狭隘な場合、カメラ3を設置可能な位置は大きく制限されるが、照射装置2は移動の自由度が高いため、照射装置2を動かすことにより、被検査面102aに光が照射される向きを様々に変えやすい。
【0044】
また、本実施形態の検査装置1は、移動機構4と、制御部6とを備える。ここで、例えば移動機構4を、レールに沿って移動する構成とした場合、移動機構4を、仮想平面S1に沿ってコンパクトにレイアウトすることができる。よって、検査装置1を小型化することができる。
【0045】
また、本実施形態の検査装置1においては、制御部6は、照射装置2を間欠的に移動させ、照射装置2が移動していない状態のときに、カメラ3に撮像を実行させる。これにより、照射装置2の移動が停止している状態のときに、輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が撮像される。このため、ピンぼけ等の少ない鮮明な輝度分布画像P1,P2,・・・,P8を得ることができる。その結果、精度よく欠陥の検査を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態の検査装置1においては、照射装置2の移動の軌道(軌跡)R1は、カメラ3が配置される位置を中心とする円状である。これにより、1の被検査面102aに対して照射される光の向きを、仮想平面S1に対して垂直な方向にみたときに、360°変化させることができる。よって、被検査面102a上の凹凸等に起因する輝度分布画像P1,P2,・・・,P8上での濃淡の現れ方を、様々に変化させることができる。その結果、ある方向から光を照射したのでは検出不能な欠陥箇所も、他の方向からの光の照射によって検出することができ、欠陥箇所の検出漏れを大幅に抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態の検査装置1においては、L1<L2<L3の大小関係が成立している。これにより、照射装置2および移動機構4は、カメラ3の撮像範囲に入り込まない。したがって、照射装置2および移動機構4が撮像結果に入ってしまう虞がない。また、照射装置2、移動機構4、およびカメラ3を、被検査物100に対して軸方向の一方側に配置するため、被検査物100を平面状のテーブル部51の上に載置して検査することが可能となる。これにより、ピンぼけ等の画像不良を防止できる。その結果、良質な輝度分布画像P1,P2,・・・,P8が得られる。
【0048】
さらに、本実施形態の検査装置1は、回転機構5を備える。被検査物100は、その軸線を中心にして回転対称(本実施形態では、12回対称)な形状を有するとともに、被検査面102aを複数有する。制御部6は、1の被検査面102aについての複数の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8の取得が終了したら、回転機構5を動作させて、直前に1の被検査面102aが配置されていた位置に、次の1の被検査面102aを配置する。これにより、直前の1の被検査面102aについて欠陥の検査を行うために、照射装置2およびカメラ3に対してした制御処理を、次の1の被検査面102aについても繰り返し行うことにより、次の1の被検査面102aの欠陥検査を容易に行うことができる。このように、1の被検査面102aの検査のために、その都度、カメラ3の位置を設定したり、照射装置2の位置や移動の態様を調整したりする必要がないので、制御がシンプルとなる。
【0049】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
<4-1.変形例1>
あるいは、移動機構が、照射装置2を、仮想平面S1に沿いつつ、かつ、被検査物100の周方向に沿って、円弧状に運動させるものとしてもよい。斯かる場合の照射装置2の移動の軌跡R2を、図6中に2点鎖線で示してある。この場合、照射装置2の移動距離を短くすることができる。
【0051】
<4-2.変形例2>
あるいは、仮想平面を、被検査物100の厚み方向に対して平行とし、照射装置2を、この仮想平面上を軸方向に沿って移動させてもよい。斯かる場合の仮想平面S2、および照射装置2の移動の軌跡R3を、図7中に2点鎖線で示してある。この場合、例えば水平方向に長い形状の打痕を、検出しやすくなる。
【0052】
<4-3.変形例3>
あるいは、仮想平面を、被検査物の厚み方向に対して斜めに広がる面としてもよい。すなわち、仮想平面は、被検査物の少なくとも一部の表面に沿う平面であればよい。
【0053】
<4-4.その他の変形例>
上記の実施形態では、被検査物100は、軸線に対して12回対称な形状を有していたが、これに限るものではない。上記に代えて、被検査物を、軸線に対して8回対称、あるいは24回対称な形状等としてもよい。また、被検査物は、必ずしも回転対称な形状に限定されるものではなく、少なくとも1つの被検査面を有していればよい。
【0054】
上記の実施形態では、照射装置2は、当該照射装置2の移動中、常に発光しているとしたが、これに限るものではない。上記に代えて、撮像タイミング、すなわち、撮像するために照射装置2を位置決めした状態の間に限り、照射装置2を発光させてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、図2に示すように、隣り合う突出部102の周方向に対向する1対の面102aの両方が、カメラ3の撮像範囲に含まれているものとした。これによれば、1の輝度分布画像P1,P2,・・・,P8に、対向する両方の被検査面102aが写されるので、これら両面を同時に外観検査することができる。しかしながら、これに限るものではなく、カメラ3の撮像範囲に1対の面102aのうちの一方の被検査面102aのみが含まれるものとしてもよい。その場合、輝度分布画像P1,P2,・・・,P8上で被検査面102aが支配する画像領域の割合が広くなり、欠陥の検査がより行いやすくなる。なお、回転機構5で被検査物100を間欠的に回転させながら、全て(上記実施形態では、12個)の一方側の被検査面102aの撮像をし終えた後、被検査物100の端面を上下に反転させてテーブル部51にセットして、続いて反対側の被検査面102aの撮像を順次行えば、全ての被検査面102aについての欠陥検査を行うことができる。
【0056】
上記の実施形態では、被検査物100の軸線を上下方向に向けて欠陥検出を行っていたが、これに限るものではない。上記に代えて、例えば被検査物100の軸線を水平方向に向けて、欠陥検出を行ってもよい。
【0057】
上記の実施形態では、照射装置2、カメラ3、および移動機構4が、被検査物100の軸方向の一方側(上方側)に配置されるものとしたが、必ずしもこれに限らない。上記に代えて、照射装置2および移動機構4を被検査物100の軸方向の一方側に配置し、カメラ3を被検査物100の軸方向の他方側に配置してもよい。あるいは、径方向にみたときに、カメラ3の位置と、被検査物100の位置とが、重なっていてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、照射装置2から被検査物100までの軸方向の距離L2は、カメラ3から被検査物100までの軸方向の距離L1よりも大きい(L1<L2)としていたが、斯かる距離の大小関係は必須ではない。上記に代えて、照射装置2から被検査物100までの距離を、カメラ3から被検査物100までの距離よりも小さくしてもよい。具体的には、例えば図8に示すように、被検査物100の厚み方向にみたときに、仮想平面S3が被検査物100とカメラ3との間の位置に配置されていてもよい。図6に示した例では、照射装置2は、径方向に垂直な仮想平面S3上を、径方向および軸方向(厚み方向)の両方に垂直な方向に延びる移動軌跡R4に沿って直線運動する。
【0059】
上記の変形例2では、仮想平面S2を、被検査物100の厚み方向に対して平行とし、照射装置2を、この仮想平面S2上を軸方向に沿って移動させていた。図7に示した例では、照射装置2から被検査物100までの径方向の距離は、カメラ3から被検査物100までの径方向の距離よりも遠かった。しかしながら、これに代えて、照射装置2から被検査物100までの距離を、カメラ3から被検査物100までの距離と略同じとしてもよい。具体的には、例えば図9に示すように、被検査物100の径方向にみたときに、カメラ3の位置が略仮想平面S4上に配置されていてもよい。図9に示した例では、照射装置2の移動軌跡R5は軸方向に延びる直線状であり、カメラ3はこの厳雄軌跡R5に沿って直線運動する。当該移動軌跡R5は、厚み方向にみたときにカメラ3と周方向に並ぶようにレイアウトされている。
【0060】
上記の実施形態で示した、欠陥検出部8が行う処理の流れは、一例に過ぎず、他の方法で欠陥が検出されてもよい。例えば、光切断法等によって画素毎に距離情報を付与して、当該距離情報も考慮して欠陥検出を行ってもよい。
【0061】
被検査物100の厚みは、当該被検査物100の径方向の寸法よりも大きくてもよい。具体例を1つ挙げると、被検査物をネジとし、被検査面をそのネジ溝に沿う斜面としてもよい。
【0062】
また、検査装置1の細部の構成や、各位置のレイアウト等については、本願の各図に図示されたものと異なっていてもよい。例えば、照射位置B1,B2,・・・B8の数を増減したり、互いの間隔を変更したりしてもよい。その場合、ソフトウェア的な変更で足りるので、被検査物100の形状・性質等に応じて、流動的な欠陥検査の実施が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、検査装置および検査方法に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 検査装置
2 照明装置(光源)
3 カメラ(撮像素子)
4 移動機構
5 回転機構
6 制御部
7 画像記憶部
8 欠陥検出部
100 被検査物
101 本体部
102 突出部
102a 被検査面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9