(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】劣化状態検知装置、定着ユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2018121139
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 和子
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】矢野 壯
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197060(JP,A)
【文献】特開2011-186381(JP,A)
【文献】特開2017-207570(JP,A)
【文献】特開2011-033832(JP,A)
【文献】特開2017-026761(JP,A)
【文献】特開2006-126310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性ローラーの劣化状態を検知するための劣化状態検知装置であって、
前記弾性ローラーは、
直線状の回転軸を中心に回転可能な芯金と、
前記芯金を被覆し、弾性変形可能な材料からなる弾性層とを含み、
前記弾性層は、前記芯金の軸方向における端部に位置する層端部を有し、
前記劣化状態検知装置は、
前記層端部に発生する現象を検知可能な検知部と、
前記検知部において検知された前記現象に基づいて、前記層端部に亀裂が発生したことを示す亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号を送信する制御部とを備え
、
前記検知部は、前記層端部の膨出量の増大を前記現象として検知可能に構成されており、
前記制御部は、前記層端部の膨出量の変化に基づいて前記亀裂発生条件が成立したか否かを判定する、劣化状態検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったときに、前記亀裂発生条件が成立したと判定する、請求項1に記載の劣化状態検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記層端部に光を照射するとともに、前記層端部からの反射光を受けるセンサを有し、
前記制御部は、前記センサで受けた前記反射光の強度が設定値以下になったときに、前記層端部の膨出量の増大量が前記所定量以上となったと判定する、請求項2に記載の劣化状態検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、遮光部材をさらに有し、
前記遮光部材には、前記センサと前記層端部との間に配置されたスリットが設けられる、請求項3に記載の劣化状態検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサと、前記層端部に接触して配置された接触部材とを有し、
前記接触部材は、前記層端部の膨出量の増大に伴って、前記発光素子と前記受光素子との間に進入するように設けられ、
前記制御部は、前記発光素子から前記受光素子に向けて照射された光が前記接触部材によって遮られたときに、前記層端部の膨出量の増大量が前記所定量以上となったと判定する、請求項2に記載の劣化状態検知装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記層端部に接触する位置に配置されたひずみゲージを有し、
前記制御部は、前記ひずみゲージによって検出されたひずみが設定値以上になったときに、前記層端部の膨出量の増大量が前記所定量以上となったと判定する、請求項2に記載の劣化状態検知装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記層端部を挟んで互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサを有し、
前記制御部は、前記発光素子から前記受光素子に向けて照射された光が前記層端部によって遮られたときに、前記層端部の膨出量の増大量が前記所定量以上となったと判定する、請求項2に記載の劣化状態検知装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記層端部を撮像可能なセンサを有し、
前記制御部は、前記センサで検知された前記層端部の位置が予め設定された位置に到達したときに、前記層端部の膨出量の増大量が前記所定量以上となったと判定する、請求項2に記載の劣化状態検知装置。
【請求項9】
前記検知部は、前記層端部が膨出するように前記弾性層に圧接しながら前記弾性層に対して相対回転する圧接部材を含む、請求項
1から8のいずれか1項に記載の劣化状態検知装置。
【請求項10】
弾性ローラーの劣化状態を検知するための劣化状態検知装置であって、
前記弾性ローラーは、
直線状の回転軸を中心に回転可能な芯金と、
前記芯金を被覆し、弾性変形可能な材料からなる弾性層とを含み、
前記弾性層は、前記芯金の軸方向における端部に位置する層端部を有し、
前記劣化状態検知装置は、
前記層端部に発生する現象を検知可能な検知部と、
前記検知部において検知された前記現象に基づいて、前記層端部に亀裂が発生したことを示す亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号を送信する制御部とを備え、
前記検知部は、前記層端部からの粉体の発生を前記現象として検知可能に構成されており、
前記制御部は、前記層端部から生じた粉体の量が所定量以上となったときに、前記亀裂発生条件が成立したと判定する
、劣化状態検知装置。
【請求項11】
前記検知部は、前記層端部から生じた粉体を捕集する捕集部を有し、
前記制御部は、前記捕集部で捕集された粉体の量が所定量以上となったときに、前記亀裂発生条件が成立したと判定する、請求項10に記載の劣化状態検知装置。
【請求項12】
前記検知部は、前記捕集部のうち前記粉体が捕集される位置に向けて光を照射するとともに、前記粉体からの反射光を受信するセンサを有し、
前記制御部は、前記センサで受信した前記反射光の強度が設定値以下になったときに、前記粉体の量が前記所定量以上となったと判定する、請求項11に記載の劣化状態検知装置。
【請求項13】
前記検知部は、前記捕集部のうち前記粉体が捕集される位置を挟んで互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサを有し、
前記制御部は、前記発光素子から前記受光素子に向けて照射された光が前記粉体によって遮られたときに、前記粉体の量が前記所定量以上となったと判定する、請求項11に記載の劣化状態検知装置。
【請求項14】
前記検知部は、前記弾性層が圧縮変形するように前記弾性層に圧接しながら前記弾性層に対して相対回転する圧接部材と、前記圧接部材に付着した粉体を検知可能なセンサとを有し、
前記圧接部材は、前記層端部から前記芯金の軸方向の外向きに張り出す張り出し部を含むように配置されており、
前記センサは、前記張り出し部に付着した粉体を検知可能であり、
前記制御部は、前記センサで検知した前記粉体の量が前記所定量以上となったときに、前記亀裂発生条件が成立したと判定する、請求項10に記載の劣化状態検知装置。
【請求項15】
弾性ローラーの劣化状態を検知するための劣化状態検知装置であって、
前記弾性ローラーは、
直線状の回転軸を中心に回転可能な芯金と、
前記芯金を被覆し、弾性変形可能な材料からなる弾性層とを含み、
前記弾性層は、前記芯金の軸方向における端部に位置する層端部を有し、
前記劣化状態検知装置は、
前記層端部に発生する現象を検知可能な検知部と、
前記検知部において検知された前記現象に基づいて、前記層端部に亀裂が発生したことを示す亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号を送信する制御部とを備え、
前記検知部は、前記弾性ローラーの停止中において、前記層端部に発生する現象を検知する
、劣化状態検知装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記現象に基づいて、前記弾性ローラーの残りの寿命を示す寿命表示信号を送信する寿命算出部を有する、請求項1から
15のいずれか1項に記載の劣化状態検知装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記層端部における亀裂が前記亀裂発生条件の成立時よりも拡大したことを示す亀裂拡大条件が成立したときに、亀裂拡大信号を送信する、請求項1から
16のいずれか1項に記載の劣化状態検知装置。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか1項に記載の劣化状態検知装置と、
記録媒体にトナー像を定着させる前記弾性ローラーとを備える、定着ユニット。
【請求項19】
請求項
18に記載の定着ユニットを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、劣化状態検知装置、定着ユニットおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性ローラーにおける弾性層の劣化の検知に関し、たとえば、特開2016-130823号公報(以下、「特許文献1」という。)には、弾性層の表面温度の上昇に基づいて弾性層の劣化状態を判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されるように、芯金および弾性層を備える弾性ローラーの劣化状態を判定する装置が知られている。この他、弾性ローラーの寿命は、消耗品の消費具合、弾性ローラーを通過した記録媒体の枚数やサイズ、あるいは、使用環境などに基づいて予測されることもある。しかしながら、弾性ローラーに想定外の破断が生じ、使用不能になることがある。その破断を避けるために予測された寿命に到達するよりも相当程度早い段階で交換される。このことがコストアップを招いている。
【0005】
このため、弾性ローラーにおいて、弾性層の劣化状態の検知精度をさらに高めることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、弾性ローラーの劣化状態を高精度に検知することが可能な劣化状態検知装置、定着ユニットおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明らは、弾性層の劣化が進行することにより、芯金の軸方向における弾性層の端部である層端部に亀裂が生じ、この亀裂に起因して弾性ローラーが破断することを見出した。この亀裂は、次の理由により生じると考えられる。すなわち、弾性ローラーの芯金の端部に接続された駆動軸は、この弾性ローラーに圧接される圧接部材に向けて付勢されているため、特に層端部において芯金から弾性層に作用する垂直抗力が大きくなる。このため、層端部のうち芯金の外周面に接する部位におけるせん断ひずみが特に大きくなり、この部位に亀裂が生じる。
【0008】
さらに、本発明者らは、その亀裂の発生に伴って、層端部に、少なくとも以下の現象が生じることを見出した。
(1)層端部は、圧接部材に押圧されることによって芯金の軸方向の外側に膨出する形状となるが、層端部に亀裂が生じると、この層端部の膨出量が増大する。膨出量は、亀裂の進行とともに次第に増大する。
(2)層端部に亀裂が生じると、弾性層と芯金との摩擦に起因して弾性層の粉体が生じ、この粉体が層端部に生じる。粉体の発生量は、亀裂の進行とともに次第に増大する。
【0009】
そこで、本発明者らは、上記のような、層端部に亀裂が発生したことに基づく現象を検知することにより、層端部への亀裂の発生、つまり、弾性層の劣化状態を高精度に検知可能であることに想到した。本発明は、上記の観点に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明に従った劣化状態検知装置は、弾性ローラーの劣化状態を検知するための劣化状態検知装置である。弾性ローラーは、直線状の回転軸を中心に回転可能な芯金と、芯金を被覆し、弾性変形可能な材料からなる弾性層とを含む。弾性層は、芯金の軸方向における端部に位置する層端部を有する。劣化状態検知装置は、層端部に発生する現象を検知可能な検知部と、検知部において検知された現象に基づいて、層端部に亀裂が発生したことを示す亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号を送信する制御部とを備える。
【0011】
本劣化状態検知装置は、層端部に発生する現象を検知可能な検知部を備えており、さらに、その現象に基づいて亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号を送信する制御部を備えている。よって、亀裂発生信号により、層端部に亀裂が生じたこと、すなわち、弾性ローラーの劣化状態を高精度に検知することができる。
【0012】
また好ましくは、検知部は、層端部の膨出量の増大を現象として検知可能に構成されている。制御部は、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定する。
【0013】
この態様では、層端部への亀裂の発生を有効に検知することができる。
【0014】
また好ましくは、検知部は、層端部に光を照射するとともに、層端部からの反射光を受けるセンサを有する。制御部は、センサで受けた反射光の強度が設定値以下になったときに、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったと判定する。
【0015】
この態様では、反射光を利用するという簡単な構成で層端部への亀裂の発生を検知することができる。
【0016】
さらに好ましくは、検知部は、遮光部材をさらに有する。遮光部材には、センサと層端部との間に配置されたスリットが設けられる。
【0017】
このようにすれば、層端部の膨出量の変化の検知精度が向上する。
【0018】
また好ましくは、検知部は、互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサと、層端部に接触して配置された接触部材とを有する。接触部材は、層端部の膨出量の増大に伴って、発光素子と受光素子との間に進入するように設けられている。制御部は、発光素子から受光素子に向けて照射された光が接触部材によって遮られたときに、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったと判定する。
【0019】
この態様では、層端部の膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0020】
また好ましくは、検知部は、層端部に接触する位置に配置されたひずみゲージを有する。制御部は、ひずみゲージによって検出されたひずみが設定値以上になったときに、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったと判定する。
【0021】
この態様においても、層端部の膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0022】
また好ましくは、検知部は、層端部を挟んで互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサを有する。制御部は、発光素子から受光素子に向けて照射された光が層端部によって遮られたときに、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったと判定する。
【0023】
この態様においても、層端部の膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0024】
また好ましくは、検知部は、層端部を撮像可能なセンサを有する。制御部は、センサで検知された層端部の位置が予め設定された位置に到達したときに、層端部の膨出量の増大量が所定量以上となったと判定する。
【0025】
この態様においても、層端部の膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0026】
また好ましくは、検知部は、層端部が膨出するように弾性層に圧接しながら弾性層に対して相対回転する圧接部材を含む。
【0027】
このようにすれば、より確実に層端部を膨出させることができる。
【0028】
また好ましくは、検知部は、層端部からの粉体の発生を現象として検知可能に構成されている。制御部は、層端部から生じた粉体の量が所定量以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定する。
【0029】
この態様においても、層端部への亀裂の発生を有効に検知することができる。
【0030】
また好ましくは、検知部は、層端部から生じた粉体を捕集する捕集部を有する。制御部は、捕集部で捕集された粉体の量が所定量以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定する。
【0031】
このようにすれば、粉体の飛散を抑制できるため、粉体の発生量をより正確に検知することができる。
【0032】
また好ましくは、検知部は、捕集部のうち粉体が捕集される位置に向けて光を照射するとともに、粉体からの反射光を受信するセンサを有する。制御部は、センサで受信した反射光の強度が設定値以下になったときに、粉体の量が所定量以上となったと判定する。
【0033】
この態様では、反射光を利用するという簡単な構成で粉体の発生量を検知することができる。
【0034】
また好ましくは、検知部は、捕集部のうち粉体が捕集される位置を挟んで互いに対向するように配置された発光素子および受光素子を含むセンサを有する。制御部は、発光素子から受光素子に向けて照射された光が粉体によって遮られたときに、粉体の量が所定量以上となったと判定する。
【0035】
この態様では、粉体の発生量の増大を容易に検知することができる。
【0036】
また好ましくは、検知部は、弾性層が圧縮変形するように弾性層に圧接しながら弾性層に対して相対回転する圧接部材と、圧接部材に付着した粉体を検知可能なセンサとを有する。圧接部材は、層端部から芯金の軸方向の外向きに張り出す張り出し部を含むように配置されている。センサは、張り出し部に付着した粉体を検知可能である。制御部は、センサで検知した粉体の量が所定量以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定する。
【0037】
この態様では、粉体の発生量の増大を容易に検知することができる。
【0038】
また好ましくは、制御部は、現象に基づいて、弾性ローラーの残りの寿命を示す寿命表示信号を送信する寿命算出部を有する。
【0039】
このようにすれば、弾性ローラーの残りの寿命を高精度に推定することができる。
【0040】
また好ましくは、制御部は、層端部における亀裂が亀裂発生条件の成立時よりも拡大したことを示す亀裂拡大条件が成立したときに、亀裂拡大信号を送信する。
【0041】
このようにすれば、亀裂発生信号および亀裂拡大信号により、2段階で弾性ローラーの劣化状態を判定することが可能となる。
【0042】
また好ましくは、検知部は、前記弾性ローラーの停止中において、前記層端部に発生する現象を検知する。
【0043】
このようにすれば、弾性ローラーの停止中であっても、層端部への亀裂の発生を検知することができる。
【0044】
この発明に従った定着ユニットは、上述のいずれかに記載の劣化状態検知装置と、記録媒体にトナー像を定着させる弾性ローラーとを備える。
【0045】
この定着ユニットでは、定着装置に用いられる弾性ローラーの劣化状態を判定することができる。
【0046】
この発明に従った画像形成装置は、上述の定着ユニットを備える。
【0047】
このように構成された画像形成装置によれば、弾性ローラーの弾性層の劣化状態を高精度に検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
以上に説明したように、この発明によれば、弾性ローラーの劣化状態を高精度に検知することが可能な劣化状態検知装置、定着ユニットおよび画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第1実施形態の画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】下加圧ローラーの層端部の近傍と劣化状態検知装置とを概略的に示す図である。
【
図3】弾性層に亀裂が生じる前における弾性層の層端部の形状と、弾性層に亀裂が生じた後における弾性層の層端部の形状とを概略的に示す図である。
【
図5】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図6】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図7】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図8】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図9】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図10】
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の劣化状態検知装置の概略を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示される弾性ローラーの、芯金の中心軸を含む平面での断面図である。
【
図13】
図11に示される劣化状態検知装置の変形例を示す図である。
【
図14】
図11に示される劣化状態検知装置の変形例を示す図である。
【
図15】捕集部の表面と粉体との関係を概略的に示す図である。
【
図16】
図11に示される劣化状態検知装置の変形例を示す図である。
【
図17】本発明の第3実施形態の劣化状態検知装置の概略を示す断面図である。
【
図18】定着装置の変形例を概略的に示す図である。
【
図19】定着装置の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0051】
(第1実施形態)
【0052】
図1は、本発明の第1実施形態の画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。この画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。画像形成装置1は、中間転写ベルト21上で4色のトナー像を重ね合わせた後、搬送される記録媒体に二次転写することにより画像形成する。記録媒体は、たとえば、普通紙である。
【0053】
画像形成装置1には、タンデム方式が採用されている。タンデム方式では、YMCKの4色に対応する各感光体ドラム413が、中間転写ベルト21の走行方向(
図1中の矢印Aに示す方向)に沿って配置されている。タンデム方式では、一回の手順で、YMCKの4色のトナー像が順次、中間転写ベルト21上に転写される。
【0054】
画像形成装置1は、画像読取部10と、画像処理部30と、画像形成部40と、搬送部50と、定着装置60と、劣化状態検知装置100とを有する。
【0055】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)を有する。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Jを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数の原稿Jの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0056】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査する。原稿画像走査装置12は、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データーを生成する。この入力画像データーには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0057】
画像処理部30は、画像読取部10により生成された入力画像データーに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を有する。たとえば、画像処理部30は、階調補正データー(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。
【0058】
画像処理部30は、入力画像データーに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理、および、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データーに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0059】
画像形成部40は、画像形成ユニット41Y,41M,41C,41Kと、中間転写ユニット42とを有する。画像形成ユニット41Y,41M,41C,41Kと、中間転写ユニット42とは、画像処理部30により処理が施された画像データーに基づいて、Y成分、M成分、C成分およびK成分の各色のトナーによる画像を形成する。
【0060】
画像形成ユニット41Y,41M,41C,41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY,M,C,Kを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M,41C,41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0061】
画像形成ユニット41は、露光装置411と、現像装置412と、感光体ドラム413と、帯電装置414と、ドラムクリーニング装置415とを有する。感光体ドラム413は、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)を有する負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。感光体ドラム413のドラム径は、たとえば、80[mm]である。感光体ドラム413の外周面には、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)および電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)が順次積層されている。感光体ドラム413は、駆動モーター(不図示)から動力が伝達されることにより回転する。
【0062】
電荷発生層は、電荷発生材料(たとえば、フタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(たとえば、ポリカーボネイト)に分散させた有機半導体である。電荷発生層は、露光装置411により露光され、一対の正電荷と負電荷を生じる。
【0063】
電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(たとえば、ポリカーボネイト)に分散させたものからなる。電荷輸送層は、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0064】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、たとえば、半導体レーザーで構成される。露光装置411は、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。
【0065】
感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0066】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0067】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存するトナーを除去する。
【0068】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト21と、一次転写ローラー422と、複数の支持ローラー423と、二次転写部23と、ベルトクリーニング装置426とを有する。中間転写ベルト21は、無端状である。中間転写ベルト21は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは、駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。
【0069】
たとえば、K成分用の一次転写ローラー422Kよりも中間転写ベルト21の走行方向の下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、中間転写ベルト21の走行速度を一定に保持しやすくなる。ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0070】
中間転写ベルト21は、導電性および弾性を有する。中間転写ベルト21は、表面に体積抵抗率がたとえば8~11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト21については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
【0071】
一次転写ローラー422は、中間転写ベルト21の内周面側に配置される。一次転写ローラー422は、感光体ドラム413に対向して配置される。一次転写ローラー422は、中間転写ベルト21を挟んで、感光体ドラム413に圧接される。これにより、一次転写ニップ部N1が形成される。
【0072】
中間転写ベルト21が一次転写ニップ部N1を通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト21に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト21の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与する。これにより、トナー像は中間転写ベルト21に静電的に転写される。
【0073】
中間転写ベルト21上に静電転写されたトナー像は、その後二次転写部23に搬送される。記録媒体が二次転写部23を通過する際、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー33に二次転写バイアスを印加し、記録媒体の二次転写ローラー33と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与する。これにより、トナー像は記録媒体に静電的に転写される。
【0074】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト21の外周面に接触する。ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト21の表面に残留するトナーを除去する。
【0075】
トナー像が転写された記録媒体は二次転写部23を通過した後、定着装置60に搬送される。定着装置60は、トナー像が二次転写された記録媒体を加熱および加圧することにより、記録媒体にトナー像を定着させる。定着装置60の詳細については後述する。
【0076】
搬送部50は、記録媒体を搬送する。搬送部50は、給紙部51と、排紙部52と、搬送経路部53とを有する。給紙部51は、給紙トレイユニット51a,51b,51cを有する。給紙トレイユニット51a,51b,51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。
【0077】
給紙トレイユニット51a,51b,51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53に搬送される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部は、記録媒体の傾きおよび片寄りを補正する。記録媒体は、搬送経路部53を通じて二次転写部23に搬送される。二次転写部23において、中間転写ベルト21上のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、その後の定着装置60において定着工程が施される。
【0078】
定着装置60を通過した記録媒体は、排紙部52に搬送される。排紙部52は、搬送ローラー対(排紙ローラー対)52aを有する。画像形成された記録媒体は、搬送ローラー対52aを通じて外部に排出される。
【0079】
続いて、定着装置60の構造について詳細に説明する。
【0080】
図1に示されるように、定着装置60は、上加圧ローラー61と、本発明の「弾性ローラー」に相当する下加圧ローラー71と、駆動源M(
図2を参照)とを有する。
【0081】
上加圧ローラー61は、たとえば加熱ローラーである。上加圧ローラー61は、芯金62と、弾性層63と、熱源64とを有する。
【0082】
芯金62は、円筒状に形成されている。芯金62は、たとえばアルミニウムからなる。芯金62は、直線状の回転軸を中心に回転可能である。芯金62の両端部には、駆動軸(不図示)が接続されている。
【0083】
弾性層63は、芯金62を被覆する。弾性層63は、弾性変形可能な材料からなる。弾性層63は、たとえばシリコンゴムからなる。なお、トナー像の離形性を得るために、上加圧ローラー61は、弾性層63を被覆するPFAからなる層(不図示)をさらに有していてもよい。
【0084】
熱源64は、芯金62の内側に配置されている。熱源64は、発光することで芯金62を内側から加熱する。熱源64は、たとえば、複数のハロゲンヒーターからなる。各ハロゲンヒーターは、芯金62の中心軸回りに等しい間隔を置いた状態で配置されている。弾性層63の温度を検知可能な温度センサ(不図示)として非接触サーミスタが設けられており、熱源64は、その温度センサの検出値が所定の目標温度となるように制御される。
【0085】
下加圧ローラー71は、芯金72と、弾性層73とを有する。
【0086】
芯金72は、円筒状に形成されている。芯金72は、たとえばアルミニウムからなる。芯金72は、直線状の回転軸を中心に回転可能である。芯金72には、ギヤ(不図示)を介して駆動源Mが接続されている。芯金72は、駆動源Mの駆動によって回転駆動される。
【0087】
弾性層73は、芯金72を被覆している。弾性層73は、弾性変形可能な材料からなる。たとえば、弾性層73は、耐熱性を有するシリコンゴムまたはフッ素ゴムや、シリコンゴムまたはフッ素ゴムベースの発泡体からなる。発泡体は、独立発泡体でも連続発泡体でもよい。弾性層73の厚みは、通常、1mm以上に設定される。なお、弾性層73の表面に、摩擦係数を下げるために、PTFAやPFAなどのフッ素系の材料からなる層が設けられてもよい。また、弾性層73は、多層構造であってもよい。
【0088】
上加圧ローラー61の芯金62の両端部に接続された駆動軸は、ばね(不図示)により下加圧ローラー71に向けて付勢されている。これにより、上加圧ローラー61の弾性層63が下加圧ローラー71の弾性層73に圧接される。たとえば、弾性層73が一定の割合(たとえば20%~50%)で圧縮されるように、ばねが駆動軸を下加圧ローラー71に向けて付勢する。このため、駆動源Mによって下加圧ローラー71が回転されることにより、上加圧ローラー61が従動回転する。上加圧ローラー61の弾性層63および下加圧ローラー71の弾性層73間には、定着ニップ部が形成される。
【0089】
図2は、下加圧ローラーの層端部の近傍と劣化状態検知装置とを概略的に示す図である。上加圧ローラー61の弾性層63が下加圧ローラー71の弾性層73に圧接されることにより、
図2に示されるように、芯金72の軸方向における弾性層73の端部である層端部73Aのうち、弾性層63と芯金72との間に位置する部位である第1部位73aは、芯金72の軸方向の外側(
図2の左側)に膨出する形状となる。
【0090】
劣化状態検知装置100は、下加圧ローラー71の弾性層73の劣化状態を検知可能な装置である。この劣化状態検知装置100と下加圧ローラー71とにより、定着ユニットが構成される。
【0091】
弾性層73の劣化が進行すると、層端部73Aに亀裂が生じる。この亀裂は、次の理由により生じると考えられる。すなわち、上加圧ローラー61に接続された駆動軸が下加圧ローラー71に向けて付勢されているため、特に層端部73Aにおいて芯金72から弾性層73に作用する垂直抗力が大きくなる。このため、層端部73Aのうち芯金72の外周面に接する部位(以下、「界面部」という。)におけるせん断ひずみが特に大きくなり、この界面部に亀裂が生じる。
【0092】
図3は、弾性層に亀裂が生じる前における弾性層の層端部の形状と、弾性層に亀裂が生じた後における弾性層の層端部の形状とを概略的に示す図である。
図3に示されるように、層端部73Aに亀裂Cが生じると、層端部73Aの第1部位73aの膨出量が増大する。第1部位73aの膨出量は、亀裂Cの進行とともに次第に増大する。上記のように、界面部に亀裂Cが生じるため、第1部位73aの膨出量の増大は、特に、界面部の近傍において顕著となる。
【0093】
本実施形態では、劣化状態検知装置100は、この現象(第1部位73aの膨出量の増大)に基づいて弾性層73の劣化状態を検知する。
図2に示されるように、劣化状態検知装置100は、検知部110と、制御部120とを有する。
【0094】
検知部110は、層端部73Aに発生する現象を検知可能に構成されている。本実施形態では、検知部110は、現象として、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を検知可能である。検知部110は、光を照射するとともに反射光を受けるセンサ112を有する。
図2に示されるように、センサ112は、層端部73Aに光を照射するとともに、層端部73Aからの反射光を受ける位置に設けられている。センサ112は、たとえば、芯金72の軸方向について第1部位73aと対向する位置に設けられる。センサ112は、反射光に基づく出力信号を制御部120に送る。なお、センサ112は、層端部73Aに超音波を送信するとともに、層端部73Aからの反射波を受信するものであってもよい。あるいは、センサ112として、レーザーレベルセンサが用いられてもよい。
【0095】
制御部120は、検知部110において検知された現象に基づいて、層端部73Aに亀裂Cが発生したことを示す亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号S1を送信する。
【0096】
本実施形態では、亀裂発生条件は、層端部73Aのうちの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったことに設定されている。なお、増大量ΔDは、現在の第1部位73aの先端の位置と下加圧ローラー71の駆動開始時の第1部位73aの先端の位置との差である。第1部位73aの膨出量が増大すると、反射光の反射方向や反射量が変化する。特に、界面部の近傍においては、第1部位73aの膨出量が増大するにしたがって、センサ112で受光する反射量が次第に少なくなる。このため、制御部120は、センサ112での反射光の強度が設定値以下になったとき、増大量ΔDが所定量以上であると判定する。
【0097】
亀裂発生信号S1は、たとえば、報知信号として、画像形成装置1の操作パネルや、画像形成装置1の設置場所から離間した管理室内のフィードバック装置や、ユーザーのコンピューター等に表示される。
【0098】
制御部120は、層端部73Aにおける亀裂Cが亀裂発生条件の成立時よりも拡大したことを示す亀裂拡大条件が成立したときに、亀裂拡大信号S2を送信する。亀裂拡大条件は、第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量よりも大きな量以上になったことに設定されている。制御部120は、センサ112が受けた反射光の強度が設定値よりも小さな基準値以下になったとき、増大量ΔDが所定量よりも大きな量以上であると判定する。
【0099】
亀裂拡大信号S2は、たとえば、駆動源Mの停止信号として用いられる。
【0100】
制御部120は、上記の現象(本実施形態では、第1部位73aの膨出量の増大)に基づいて、下加圧ローラー71の残りの寿命を示す信号である寿命表示信号S3を送信する。この寿命表示信号S3は、たとえば、画像形成装置1の操作パネルや、管理室内のモニターに表示される。
【0101】
図4は、制御部の機能を説明する図である。以下、
図4を参照しながら、制御部120の機能について説明する。
図4に示されるように、制御部120は、受信部121と、設定部122と、比較部123と、記憶部124と、寿命算出部125とを有する。
【0102】
受信部121は、センサ112の出力信号を受信するとともに、この出力信号を比較部123と寿命算出部125とに送信する。
【0103】
設定部122には、設定値と、設定値よりも小さな値である基準値とが設定される。設定値は、下加圧ローラー71の駆動開始から所定時間(たとえば、下加圧ローラー71の交換が推奨される時間)経過したときの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDであって上記の所定量に対応する値である。具体的に、設定値は、下加圧ローラー71の駆動開始から所定時間経過したときのセンサ112の出力信号であって予め試験により取得された値である。基準値は、下加圧ローラー71の駆動開始から上記の所定時間よりも長い時間(たとえば、下加圧ローラー71の駆動を強制的に停止する必要がある時間)経過したときの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDであって上記の所定量よりも大きな量に対応する値である。具体的に、基準値は、下加圧ローラー71の駆動開始から所定時間よりも長い時間経過したときのセンサ112の出力信号であって予め試験により取得された値である。これら設定値および基準値は、外部から設定部122に入力される。設定部122は、設定値に対応する第1信号と、基準値に対応する第2信号とを比較部123に送信する。
【0104】
比較部123は、受信部121から受信した出力信号と設定部122から受信した各信号とを比較する。具体的に、比較部123は、出力信号と第1信号とを比較し、出力信号が第1信号以下であるときに亀裂発生信号S1を送信する。比較部123は、出力信号と第2信号とを比較し、出力信号が第2信号以下であるときに亀裂拡大信号S2を送信する。
【0105】
記憶部124は、下加圧ローラー71の破断時あるいはその直前のセンサ112の出力信号であって予め試験により取得されたものに対応する値を記憶する。この値は外部から記憶部124に入力される。記憶部124は、その値に対応する寿命信号を寿命算出部125に送信する。
【0106】
寿命算出部125は、受信部121から受信した出力信号と記憶部124から受信した寿命信号とに基づいて下加圧ローラー71の残りの寿命を算出するとともに、その残りの寿命を示す信号である寿命表示信号S3を送信する。
【0107】
ここで、下加圧ローラー71の破断の要因となる層端部73Aへの亀裂Cの発生は、特許文献1に記載されるように、弾性層の表面温度を監視することでは、正確に把握することが困難である。理由は、界面部における亀裂Cの発生は、芯金72と弾性層73との接着状態で決まるためである。
【0108】
これに対し、本実施形態の劣化状態検知装置100は、層端部73Aに亀裂Cが発生したことに基づく現象(第1部位73aの膨張量の増大)を検知可能な検知部110を備えている。さらに、劣化状態検知装置100は、その現象に基づいて亀裂発生条件が成立したと判定した場合に、亀裂発生信号S1を送信する制御部120を備えている。よって、亀裂発生信号S1により、層端部73Aに亀裂Cが生じたこと、すなわち、弾性層73の劣化状態を高精度に検知することができる。
【0109】
また、制御部120は、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったときに亀裂発生条件が成立したと判定する。この態様では、層端部73Aへの亀裂Cの発生を効果的に検知することができる。
【0110】
具体的に、制御部120は、センサ112で受けた反射光の強度が設定値以下になったときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。この態様では、反射光を利用するという簡単な構成で層端部73Aへの亀裂Cの発生を検知することができる。
【0111】
また、制御部120は、層端部73Aにおける亀裂Cが亀裂発生条件の成立時よりも拡大したことを示す亀裂拡大条件が成立したとき(センサ112で受信した反射光の強度が設定値よりも小さな基準値以下になったとき)に、亀裂拡大信号S2を送信する。よって、亀裂発生信号S1および亀裂拡大信号S2により、2段階で下加圧ローラー71の劣化状態を判定することが可能となる。
【0112】
また、制御部120は、上記の現象に基づいて、下加圧ローラー71の残りの寿命を示す寿命表示信号S3を送信する寿命算出部125を有する。このため、下加圧ローラー71の残りの寿命を高精度に推定することができる。よって、下加圧ローラー71の交換回数が減り、コストを削減できる。
【0113】
以下、
図5~
図10を参照しながら、検知部110の変形例について説明する。
図5~
図10は、
図2に示される検知部の変形例を示す図である。
【0114】
(第1変形例)
図5に示される例では、検知部110は、センサ112と層端部73Aの第1部位73aとの間に配置された遮光部材113をさらに有している。遮光部材113には、第1部位73aの膨出量が増大したことに起因する反射光がスリットでブロックされ、基準の反射光のみが通過可能な位置にスリットが設けられている。制御部120は、スリットを通じてセンサ112で受けた反射光の強度が設定値以下になったときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。この態様では、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の変化の検知精度が向上する。
【0115】
(第2変形例)
図6に示される例では、センサ112は、透過光の利用により層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を検知している。具体的に、センサ112は、互いに対向するように配置された発光素子112aおよび受光素子112bを含んでいる。各素子112a,112bは、第1部位73aを挟んで芯金72の軸方向と直交する方向に互いに対向するように配置されている。受光素子112bでの受光量は、発光素子112aから照射された光が第1部位73aで遮られることによって激減する。制御部120は、受光素子112bで受信した光の強度が設定値以下になったときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。この態様においても、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0116】
(第3変形例)
図7に示される例では、検知部110は、層端部73Aの第1部位73aを撮像可能なセンサ(たとえばCCDカメラやCMOSセンサ)112を有する。制御部120は、センサ112で検知された層端部73Aの第1部位73aの位置が予め設定された位置に到達したときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。この態様においても、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0117】
CCDカメラやCMOSセンサなどのセンサ112によって、亀裂Cを直接検知してもよい。
【0118】
(第4変形例)
図8に示される例では、検知部110は、接触部材114をさらに有している。この例では、センサ112は、発光素子112aおよび受光素子112bを含んでいる。接触部材114は、層端部73Aの第1部位73aに接触し、かつ、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大に伴って発光素子112aと受光素子112bとの間に進入するように設けられている。制御部120は、発光素子112aから受光素子112bに向けて照射された光が接触部材114によって遮られたときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。各素子112a,112bの位置は、制御部120が各信号S1,S2を送信する時間や、弾性層73の圧縮度、硬度に応じて設定される。この態様においても、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0119】
(第5変形例)
図9に示される例では、検知部110は、層端部73Aの第1部位73aに接触する位置に配置されたひずみゲージ112を有する。制御部120は、ひずみゲージ112よって検出されたひずみが設定値以上になったときに、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが所定量以上となったと判定する。この態様においても、層端部73Aの第1部位73aの膨出量の増大を容易に検知することができる。
【0120】
(第6変形例)
図10に示される例では、検知部110は、圧接部材116をさらに有する。圧接部材116は、層端部73Aのうち第1部位73aとは異なる部位73bが膨出するように弾性層73に圧接しながら弾性層73に対して相対回転する。圧接部材116は、弾性層73のうち第1部位73aの膨出に対する影響が少ない部位(弾性層73のうち芯金72を基準にして第1部位73aが位置する側とは反対側の部位)を圧接している。圧接部材116は、任意の割合で弾性層73を圧接する。圧接のタイミングは、常時でもよいし、記録媒体が所定枚(たとえば10000枚)通過した後でもよいし、下加圧ローラー71の駆動時における第1部位73aの膨出量の検知時でもよい。圧接部材116による圧接は、下加圧ローラー71の駆動中に行われてもよいし、停止中に行われてもよい。この態様では、より確実に層端部73Aを膨出させることができる。
【0121】
(第2実施形態)
次に、
図11および
図12を参照しながら、本発明の第2実施形態の劣化状態検知装置100について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態の劣化状態検知装置の概略を示す斜視図である。
図12は、
図11に示される弾性ローラーの、芯金の中心軸を含む平面での断面図である。なお、
図11および
図12では、上加圧ローラー61の図示は省略されている。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0122】
弾性層73の層端部73Aに亀裂Cが生じると、弾性層73と芯金72との摩擦に起因して弾性層73の粉体Pが生じ、この粉体Pが層端部73Aに生じる。粉体Pの発生量は、亀裂Cの進行とともに次第に増大する。
【0123】
本実施形態では、劣化状態検知装置100は、この現象(層端部73Aでの粉体Pの発生)に基づいて弾性層73の劣化状態を検知する。本実施形態では、劣化状態検知装置100による検知時に、下加圧ローラー71が圧縮されている必要はない。
【0124】
検知部110は、現象として、層端部73Aからの粉体Pの発生を検知可能に構成されている。検知部110は、センサ112に加え、層端部73Aから生じた粉体Pを捕集する捕集部118を有する。捕集部118は、センサ112から照射された光を透過する材料からなる。捕集部118は、円筒状に形成されている。捕集部118は、界面部の直径よりも大きな内径を有する。捕集部118は、芯金72の周囲に配置されている。捕集部118は、その中心軸と芯金72の中心軸とが一致するように配置される。
【0125】
図11および
図12に示されるように、センサ112は、捕集部118のうち粉体Pが捕集される位置に向けて光を照射するとともに、粉体Pからの反射光を受信する位置に設けられている。理由は、粉体Pの存在によって反射光の強度が変わるためである。センサ112は、たとえば、芯金72の径方向に対して捕集部118と対向する位置に設けられる。
【0126】
本実施形態では、亀裂発生条件は、層端部73Aから生じた粉体Pの量が所定量以上となったことに設定されている。より詳細には、亀裂発生条件は、捕集部118で捕集された粉体Pの量が所定量以上となったことに設定されている。捕集部118に粉体Pが堆積すると、反射光の反射量が低下する。このため、制御部120は、センサ112が受信した反射光の強度が設定値以下になったときに、粉体Pの量が所定量以上となったと判定する。つまり、制御部120は、センサ112が受信した反射光の強度が設定値以下になったとき、亀裂発生条件が成立したと判定し、亀裂発生信号S1を送信する。
【0127】
亀裂拡大条件は、粉体Pの発生量が所定量(亀裂発生条件の成立時の堆積量)よりも多い量以上となったことに設定されている。制御部120は、センサ112が受信した反射光の強度が設定値よりも小さな基準値以下になったとき、粉体Pの発生量が所定量よりも多い量以上となったと判定し、亀裂拡大信号S2を送信する。
【0128】
設定部122には、第1実施形態と同様、設定値と基準値とが設定される。本実施形態では、設定値は、下加圧ローラー71の駆動開始から所定時間(たとえば、下加圧ローラー71の交換が推奨される時間)経過したときの粉体Pの発生量であって上記の所定量に対応する値である。基準値は、下加圧ローラー71の駆動開始から上記の所定時間よりも長い時間(たとえば、下加圧ローラー71の駆動を強制的に停止する必要がある時間)経過したときの粉体Pの発生量であって上記の所定量よりも大きな量に対応する値である。
【0129】
以上に説明したように、本実施形態の劣化状態検知装置100においても、亀裂発生信号S1により、層端部73Aに亀裂Cが生じたこと、すなわち、弾性層73の劣化状態を高精度に検知することができる。
【0130】
また、検知部110は、粉体Pを捕集する捕集部118を有するため、粉体Pの飛散が抑制される。よって、粉体Pの発生量をより正確に検知することができる。
【0131】
本実施形態において、センサ112は、色の違いを検知する反射センサで構成されてもよい。この場合、捕集部118に粉体Pが捕集される前は、センサ112は、芯金72の色の波長によるスペクトルを受信する。一方、捕集部118に粉体Pが捕集されると、センサ112は、芯金72の色の波長によるスペクトルに加え、弾性層73を構成する材料の色の波長によるスペクトルも受信する。
【0132】
制御部120は、各スペクトルの受信量の差が設定値以上になったときに、粉体Pの発生量が所定量以上となったと判定する。
【0133】
この態様においても、層端部73Aからの粉体Pの発生量を容易に検知することができる。
【0134】
また、センサ112は、粉体Pの発生量を直接撮像可能なイメージセンサで構成されてもよい。この場合、制御部120は、粉体Pの堆積量が所定量以上となったと判定した場合に、亀裂発生信号S1を送信する。
【0135】
以下、
図13~
図16を参照しながら、検知部110のその他の変形例について説明する。
図13、
図14および
図16は、
図11に示される検知部の変形例を示す図である。
図15は、捕集部の表面と粉体との関係を概略的に示す図である。なお、
図13および
図14では、上加圧ローラー61の図示は省略されている。
【0136】
(第1変形例)
図13に示される例では、センサ112は、透過光の利用により粉体Pの発生量を検知している。具体的に、センサ112は、互いに対向するように配置された発光素子112aおよび受光素子112bを含んでいる。各素子112a,112bは、捕集部118のうち粉体Pが捕集される位置を挟んで芯金72に光があたらず、かつ芯金72の軸方向と直交する方向に互いに対向するように配置されている。制御部120は、受光素子112bで受信した光の強度が設定値以下になったとき(発光素子112aから受光素子112bに向けて照射された光が粉体Pによって遮られたとき)に、層端部73Aからの粉体Pの発生量が所定量以上となったと判定する。この態様においても、層端部73Aからの粉体Pの発生量を容易に検知することができる。
【0137】
(第2変形例)
図14に示される例では、捕集部118は、芯金72の径方向に層端部73Aから離間した位置に配置されている。理由は、駆動中弾性層73の圧接が解除されたとき(弾性層73が上加圧ローラー61の弾性層63から離間したとき)に、粉体Pが飛散するためである。つまり、捕集部118は、層端部73Aから飛散した粉体Pを捕集できる位置に設けられる。捕集部118は、粉体Pを受ける受け面118aを有する。受け面118aは、芯金72の径方向について芯金72から離間する方向に凸となるように湾曲する形状を有している。受け面118aは、弾性層73を構成する材料の色、つまり、粉体Pの色とは異なる色に形成されている。
【0138】
センサ112は、色の違いを検知する反射センサで構成されている。センサ112は、受け面118aのうち粉体Pが捕集される位置に向けて光を照射するとともに、粉体Pからの反射光を受信する位置に設けられている。受け面118aに粉体Pが捕集される前は、センサ112は、受け面118aの色の波長によるスペクトルを受信する。一方、受け面118aに粉体Pが捕集されると、センサ112は、受け面118aの色の波長によるスペクトルに加え、弾性層73を構成する材料の色の波長によるスペクトルも受信する。
【0139】
制御部120は、各スペクトルの受信量の差が設定値以上になったときに、粉体Pの発生量が所定量以上となったと判定する。
【0140】
この態様においても、層端部73Aからの粉体Pの発生量を容易に検知することができる。
【0141】
この場合において、
図15に示されるように、捕集部118の受け面118aに粗面加工を施してもよい。この加工は、たとえば紙やすりにより行われる。粉体Pの大きさは、0.3mm~1mm径程度であるため、受け面118aの粗さは、その径に応じて設定される。
【0142】
このようにすれば、粉体Pと受け面118aとの接触面積が増大するため、粉体Pと受け面118aとの間に生じるファンデルワールス力が大きくなる。よって、粉体Pが受け面118aから離脱することを抑制できる。
【0143】
あるいは、芯金72のうち弾性層73の外側に位置する露出部(弾性層73に被覆されていない部位)の表面に粗面加工が施されてもよい。この場合、露出部に粉体Pが捕集される。
【0144】
また、層端部73Aから飛散した粉体Pの飛散を抑制する遮蔽板を層端部73Aの外側に設けてもよい。
【0145】
また、この例において、センサ112は、粉体Pの発生量を直接撮像可能なイメージセンサで構成されてもよい。
【0146】
(第3変形例)
図16に示される例では、上加圧ローラー61に変えて、加熱ローラー80が用いられている。加熱ローラー80は、芯金81と、芯金81を被覆する被覆層(不図示)と、芯金81の内側に配置された熱源(不図示)とを有する。芯金81の軸方向における当該芯金81の長さは、同方向における弾性層73の長さよりも大きい。被覆層は、PFAまたはPTFEからなる。被覆層は、弾性層73を構成する材料とは異なる色を有する材料からなることが好ましい。加熱ローラー80は、弾性層73が圧縮変形するように弾性層73に圧接しながら弾性層73に対して相対回転する。加熱ローラー80は、層端部73Aから芯金72の軸方向の外向きに張り出す張り出し部81aを含むように配置される。この加熱ローラー80は、検知部110の一部を構成する「圧接部材」に相当する。つまり、この例では、定着装置60の一部を構成する加熱ローラー80が、検知部110の一部をも構成している。
【0147】
層端部73Aから粉体Pが発生すると、その粉体Pの少なくとも一部は張り出し部81aに付着する。この例では、センサ112は、張り出し部81aの表面に付着した粉体Pを検知する。センサ112は、張り出し部81aに付着した粉体Pを検知可能な位置に設けられている。たとえば、センサ112は、芯金81の径方向に張り出し部81aから離間した位置に設けられる。なお、センサ112として、CCDカメラが用いられ、このCCDカメラで粉体Pの飛散の程度を検知してもよい。
【0148】
制御部120は、センサ112で検知した粉体Pの量が所定量以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定する。
【0149】
(第3実施形態)
次に、
図17を参照しながら、本発明の第3実施形態の劣化状態検知装置100について説明する。
図17は、本発明の第3実施形態の劣化状態検知装置の概略を示す断面図である。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0150】
弾性層73の層端部73Aに亀裂Cが生じると、層端部73Aのうち芯金72の径方向について亀裂Cよりも外側で、かつ、層端部73Aのうち芯金72を基準として第1部位73aが位置する側とは反対側に位置する部位73cは、芯金72に対して芯金72の径方向に僅かに振動する。これは、部位73cが芯金72から剥離しており、かつ、上加圧ローラー61の弾性層63に押し付けられていないためである。部位73cの振動幅は、亀裂Cの進行とともに次第に増大する。
【0151】
本実施形態では、劣化状態検知装置100は、この現象(層端部73Aの部位73cの振動)に基づいて弾性層73の劣化状態を検知する。具体的に、センサ112は、部位73cの振動を検知する。センサ112は、部位73cに向けて光を照射するとともに、部位73cからの反射光を受信する位置に設けられている。センサ112は、たとえば、芯金72の軸方向について部位73cと対向する位置に設けられている。
【0152】
本実施形態では、亀裂発生条件は、部位73cの振動幅が所定量以上となったことに設定されている。部位73cが振動すると、センサ112の出力信号も振動する。このため、制御部120は、センサ112の出力信号の振幅が特定の値以上となったときに、亀裂発生条件が成立したと判定し、亀裂発生信号S1を送信する。
【0153】
亀裂拡大条件は、部位73cの振動幅が所定量よりも大きな量以上となったことに設定されている。制御部120は、センサ112の出力信号の振幅が特定の値よりも大きな値以上となったときに、亀裂拡大条件が成立したと判定し、亀裂拡大信号S2を送信する。
【0154】
設定部122には、設定値と、設定値よりも大きな値である規定値とが設定される。本実施形態では、設定値は、下加圧ローラー71の駆動開始から所定時間(たとえば、下加圧ローラー71の交換が推奨される時間)経過したときの部位73cの振動幅であって上記の所定量に対応する値である。規定値は、下加圧ローラー71の駆動開始から上記の所定時間よりも長い時間(たとえば、下加圧ローラー71の駆動を強制的に停止する必要がある時間)経過したときの部位73cの振動幅であって上記の所定量よりも大きな量に対応する値である。
【0155】
以上に説明したように、本実施形態の劣化状態検知装置100においても、亀裂発生信号S1により、層端部73Aに亀裂Cが生じたこと、すなわち、弾性層73の劣化状態を高精度に検知することができる。
【0156】
なお、上記各実施形態において、弾性ローラーを備える定着装置60は、種々変更されてもよい。
図18および
図19は、定着装置の変形例を概略的に示す図である。
【0157】
図18に示されるように、定着装置は、芯金62および弾性層63からなる上加圧ローラー61と、加熱ローラー62と、熱源64と、定着ベルト66とを有していてもよい。
【0158】
加熱ローラー62は、円筒状に形成されている。加熱ローラー62は、たとえばアルミニウムからなる。加熱ローラー62の表面には、PTFAからなる層が設けられてもよい。定着ベルト66は、加熱ローラー62と上加圧ローラー61とにかけ回されている。定着ベルト66は、加熱ローラー62によって加熱される。
【0159】
あるいは、
図19に示されるように、下加圧ローラー71が定着ベルト66を介してパッド部材65に押し付けられる構成でもよい。パッド部材65は、定着ベルト66の内周側に配置されており、熱伝導率が低く弾性を有する樹脂材料からなる。パッド部材65は、シリコンゴム、フッ素ゴム、PES、PPSなどで構成される。パッド部材65は、下加圧ローラー71の表面形状に倣うように凹面に形成されてもよい。パッド部材65は、剛体のパッドホルダー67に保持されている。パッドホルダー67は、アルミニウム、鉄、SUSまたは耐熱性を有する樹脂で形成される。パッドホルダー67のうち記録媒体の通過方向における上流側の部位は、定着ベルト66が沿うように湾曲している。パッドホルダー67は、定着ベルト66と対向する側にパッド部材65を保持する凹部を有している。
【0160】
定着ベルト66は、加熱ローラーおよびパッド部材65間に所定のテンションで張架されている。定着ベルト66は、
図18に示される加熱ローラー62と同様の加熱ローラーによって加熱される。パッド部材65と下加圧ローラー71との間に定着ニップ部が形成される。
【0161】
また、劣化状態検知装置100は、定着装置60の下加圧ローラー71に限らず、画像形成装置1内の他の箇所に用いられる弾性ローラー(二次転写ローラー33など)の劣化状態の検知も可能である。
【0162】
また、劣化状態検知装置100は、下加圧ローラー71の停止中に下加圧ローラー71の劣化状態を検知することも可能である。この場合、検知部110は、下加圧ローラー71の停止中において、層端部73Aに発生する現象を検知する。
【0163】
また、制御部120による亀裂拡大信号S2の送信は、省略されてもよい。この場合、亀裂発生信号S1は、報知信号および駆動源Mの停止信号のいずれかとして用いられる。
【実施例】
【0164】
次に、定着装置60の実施例について、比較例とともに説明する。実施例1~実施例6は、第1実施形態の実施例であり、実施例7~実施例10は、第2実施形態の実施例である。
図20は、実施例と比較例の結果を示す表である。
【0165】
(実施例1)
この実施例では、第1実施形態の定着装置60および劣化状態検知装置100が用いられた。具体的に、上加圧ローラー61は、芯金62と、弾性層63と、PFAからなる層と、熱源64とを有する。芯金62は、アルミニウムからなる厚さ5mmの円筒で構成されている。芯金62の直径は50mmである。弾性層63は、シリコンゴムからなり、厚さは1.5mmである。PFAからなる層は、弾性層63を被覆しており、厚さは30μmである。熱源64は、複数のハロゲンヒーターからなる。複数のハロゲンヒーターの定格電力の総計は、1500Wに設定された。
【0166】
下加圧ローラー71は、芯金72と、弾性層73とを有する。芯金72は、アルミニウムからなり、芯金径10mm、弾性層被覆部分は厚さ5mmで構成されている。弾性層73は、多孔質のシリコンゴムからなり、厚さが10mmである。弾性層73の外径は、40mmである。弾性層73の表面の回転速度は、340mm/secである。弾性層73のゴム硬度は26度である。このゴム硬度は、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計C型により測定された。
【0167】
上加圧ローラー61の芯金62に接続された駆動軸には、ばね(不図示)によって下加圧ローラー71に向けて380N~900Nの荷重がかけられている。定着ニップ部の幅は、8mmであり、定着ニップ部の長さは、320mmである。
【0168】
センサ112は、反射型のセンサであり、芯金72の軸方向に層端部73Aから30mm離間した位置に設けられた。センサ112の焦点は、第1部位73aのうち界面部から芯金72の径方向の外側に3mm離間した位置に設定された。
【0169】
設定部122には、設定値として、第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが1mmに対応する値が設定された。
【0170】
耐久時間を短縮するために、弾性層73の圧縮は50%とし、搬送速度を340mm/sに設定した。このことは、以下の各実施例および比較例についても同様である。
【0171】
以上の条件で定着装置60の運転を開始し、70時間経過後に、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。これにより、画像形成装置1の操作画面に下加圧ローラー71の交換警告が表示された。そして、運転開始から95時間経過後、制御部120は、亀裂拡大信号S2を送信した。これにより、定着装置60が停止した。定着装置60の停止時において、下加圧ローラー71の弾性層73に破断は見られなかった。破断とは、芯金72から弾性層73が剥離した状態を意味する。
【0172】
(実施例2)
この実施例では、
図19に示される定着装置と、第1変形例の劣化状態検知装置100を用いた。具体的に、下加圧ローラー71は、芯金径10mm、弾性層被覆部分は厚さ5mmアルミニウムからなる芯金72と、多孔質状のシリコンゴムからなる厚さ10mmの弾性層73とを有している。弾性層73の外径は、40mmである。下加圧ローラー71は、ギヤを介して駆動源(図示略)が接続されている。弾性層73の表面速度は、340mm/secである。
【0173】
加熱ローラーは、厚さ1mmのアルミニウムからなり、外径が70mmの円筒状に形成された芯金と、芯金の表面に設けられたPTFEからなる層とを有している。このような加熱ローラーは、比較的小さな熱容量になっている。
【0174】
熱源64として、複数のハロゲンヒーターが用いられ、これらの定格電力の総計は、1500Wに設定された。
【0175】
パッドホルダー67は、アルミニウムからなる。パッド部材65は、シリコンゴムからなる。パッド部材65およびパッドホルダー67は、図示略のサイドシャーシーに固定した。
【0176】
定着ベルト66は、基材と、弾性層と、離形層とを有している。基材は、厚さ70mmのポリイミドからなり、外径が250mmの円筒状に形成されている。弾性層は、基材の表面に設けられている(積層されている)。弾性層は、厚さ200μmのシリコンゴムからなる。離形層は、弾性層の表面に設けられている(積層されている)。離形層は、厚さ30μmのPFAからなるチューブで構成されている。このような定着ベルト66は、比較的小さな熱容量になっている。
【0177】
加熱ローラーの近傍には、定着ベルト66の表面温度を検知可能な温度センサ(不図示)が設けられている。温度センサは、定着ベルト66の走行方向の上流側の部位に対向するように配置されている。温度センサとして、非接触センサ(サーモパイル)が使用された。
【0178】
この実施例の結果は、実施例1と同じであった。
【0179】
(実施例3)
第1実施形態の第4変形例の劣化状態検知装置100を用いた。接触部材114は、第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが1mmになったときに、発光素子112aから受光素子112bに向けて照射された光を遮る位置に設定された。
【0180】
この実施例の結果は、実施例1と同じであった。
【0181】
(実施例4)
第1実施形態の第5変形例の劣化状態検知装置100を用いた。ひずみゲージ112は、第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが1mmになったときに、第1部位73aに接する位置に設けられた。
【0182】
この実施例の結果は、実施例1と同じであった。
【0183】
(実施例5)
第1実施形態の第2変形例の劣化状態検知装置100を用いた。発光素子112aおよび受光素子112bは、第1部位73aの膨出量の増大量ΔDが1mmになったときに、発光素子112aから受光素子112bに向けて照射された光が第1部位73aによって遮られる位置に設けられた。
【0184】
この実施例の結果は、実施例1と同じであった。
【0185】
(実施例6)
第1実施形態の第3変形例の劣化状態検知装置100を用いた。センサ112としてCCDカメラを用いた。CCDカメラは、第1部位73aを撮像可能な位置に設置された。増大量ΔDは、1mmに設定された。
【0186】
この実施例の結果は、実施例1と同じであった。
【0187】
(実施例7)
この実施例では、第2実施形態の定着装置60および劣化状態検知装置100を用いた。設定部122には、設定値として、下加圧ローラー71の駆動開始から70時間経過したときの粉体Pの発生量であって上記の所定量に対応する値が設定された。
【0188】
以上の条件で定着装置60の運転を開始し、80時間経過後、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。そして、運転開始から92時間経過後、制御部120は、亀裂拡大信号S2を送信した。定着装置60の停止時において、下加圧ローラー71の弾性層73に破断は見られなかった。
【0189】
(実施例8)
第2実施形態の第1変形例の劣化状態検知装置100を用いた。粉体Pが存在しない場合、受光素子112bは、透過光を100%受光する。一方、粉体Pが堆積されるにしたがって、受光素子112bでの受光量は次第に減少する。
【0190】
この実施例の結果、定着装置60の運転開始から80時間経過後、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。そして、運転開始から91時間経過後、制御部120は、亀裂拡大信号S2を送信した。定着装置60の停止時において、下加圧ローラー71の弾性層73に破断は見られなかった。
【0191】
(実施例9)
第2実施形態の第2変形例の劣化状態検知装置100を用いた。センサ112として、カラーマークセンサーを用い、受け面118aの色を検知した。
【0192】
この実施例の結果、定着装置60の運転開始から80時間経過後、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。そして、運転開始から92時間経過後、制御部120は、亀裂拡大信号S2を送信した。定着装置60の停止時において、下加圧ローラー71の弾性層73に破断は見られなかった。
【0193】
(実施例10)
第2実施形態の第3変形例の劣化状態検知装置100を用いた。センサ112として変位センサを用い、張り出し部81aの表面の凹凸を検知した。
【0194】
この実施例の結果、定着装置60の運転開始から80時間経過後、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。そして、運転開始から90時間経過後、制御部120は、亀裂拡大信号S2を送信した。定着装置60の停止時において、下加圧ローラー71の弾性層73に破断は見られなかった。
【0195】
(比較例1)
劣化状態検知装置100を用いなかった。この結果、定着装置60の運転開始から100時間経過後、下加圧ローラー71は破断した。
【0196】
(比較例2)
センサ112は、下加圧ローラー71の弾性層73のうち、芯金72の軸方向における中央部の表面状態を検知した。この結果、定着装置60の運転開始から100時間経過するまでは、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信せず、定着装置60の運転開始から100時間経過後、制御部120は、亀裂発生信号S1を送信した。このとき、下加圧ローラー71は破断していた。つまり、制御部120は、下加圧ローラー71の破断と同時に亀裂発生信号S1を送信した。下加圧ローラー71の破断後に下加圧ローラー71を交換する場合、破断した弾性層73の破片によって交換後の画像形成に問題が生じる。
【0197】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0198】
この発明は、劣化状態検知装置、定着ユニットおよび画像形成装置に適用される。
【符号の説明】
【0199】
1 画像形成装置、10 画像読取部、30 画像処理部、40 画像形成部、50 搬送部、60 定着装置、61 加熱ローラー、71 弾性ローラー、72 芯金、73 弾性層、73A 層端部、73a 第1部位、73b 第2部位、100 劣化状態検知装置、110 検知部、112 センサ、113 遮光部材、114 接触部材、116 圧接部材、118 捕集部、120 制御部、121 受信部、122 設定部、123 比較部、124 記憶部、125 寿命算出部、C 亀裂、P 粉体。