(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】積層体、包装体及び包装物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220720BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018124214
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 亮
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016443(WO,A1)
【文献】特開2015-171798(JP,A)
【文献】特開2008-207823(JP,A)
【文献】特開2013-249070(JP,A)
【文献】特開2012-086462(JP,A)
【文献】特開2016-222332(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105524(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0125098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、
前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層と
、
低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層と
を具備した積層体であって、
前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、
前記第1シーラント層の他方の主面は、
前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、
前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上であ
り、
前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの比は1:2乃至5:1の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.915g/cm
3
乃至0.925g/cm
3
の範囲内にあり、前記第2シーラント層及び前記第1シーラント層の各々の厚さは5μm以上であり、前記第2シーラント層の厚さは25μm以下である積層体。
【請求項2】
前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが5.0g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にある請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
基材層と、
前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、
前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層と、
低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層と
を具備した積層体であって、
前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、
前記第1シーラント層の他方の主面は、前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、
前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上であり、
前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが5.0g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にある積層体。
【請求項4】
前記環状オレフィン系樹脂が有するガラス転移温度は75℃乃至85℃の範囲内にある請求項1
乃至3の何れか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1シーラント層が有する自由体積は0.100nm
3以下である請求項1
乃至4の何れか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの合計は10μm乃至60μmの範囲内にある請求項
1乃至5の何れか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材層と前記接着剤層との間に介在したバリア層を更に具備し、前記接着剤層は前記バリア層と接触している請求項1乃至
6の何れか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記バリア層はアルミニウム層又は無機酸化物薄膜を含んだ層を具備する請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1乃至
8の何れか1項に記載の積層体を、前記第1シーラント層が内容物を収容する空間と接するように含んだ包装体。
【請求項10】
請求項
9に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装体及び包装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料などとして使用される積層体では、シーラント層に熱可塑性樹脂が用いられている。この熱可塑性樹脂としては、ラミネート加工性及びヒートシール性に優れる点から、特には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等が使用されている。
【0003】
しかしながら、それら樹脂は、ヒートシールにおいて高い密着強度を達成できる反面で、食品や医薬品などに含まれる成分を吸着し易い。従って、それら樹脂からなるシーラント層を、内容物を収容する空間と接するように含んだ包装体は、内容物を変質又は劣化させ易い。
【0004】
このため、食品や医薬品などの包装に使用する積層体には、非吸着素材であるポリアクリロニトリル系樹脂(PAN)がシーラント層に用いられてきた。しかしながら、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルムは安定した調達が難しく、ポリアクリロニトリル系樹脂の代替材料を探す必要を生じている。
【0005】
特許文献1には、高速充填包装適性があり、内容物由来の揮発性成分の吸着が極端に少ない包装袋が記載されている。この包装袋は、基材層と低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とをこの順で積層した積層材料からなる。この文献では、低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層との厚み比率は、20:1乃至2:1の範囲内にある構造を採用している。
【0006】
特許文献2に記載された発明は、製膜性、非吸着性及びヒートシール性に優れたシーラント層を有する包装袋及び包装容器を提供することを目的としている。この文献には、上記の目的を達成するために、包装袋又は包装容器の蓋材に、基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有し、環状ポリオレフィン系樹脂組成物として所定の組成を有する積層体を使用することが記載されている。この発明では、シーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-207823号公報
【文献】特開2012-86876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、非吸着性に優れ、基材層とシーラント層との間の接着剤層が薄いにも拘らず、それらの接着強度に優れた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、基材層と、前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層と、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層とを具備した積層体であって、前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面は、前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上であり、前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの比は1:2乃至5:1の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.915g/cm
3
乃至0.925g/cm
3
の範囲内にあり、前記第2シーラント層及び前記第1シーラント層の各々の厚さは5μm以上であり、前記第2シーラント層の厚さは25μm以下である積層体が提供される。
本発明の第2側面によると、基材層と、前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層と、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層とを具備した積層体であって、前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面は、前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上であり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが5.0g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にある積層体が提供される。
本発明の第3側面によると、第1又は第2側面に係る積層体を、前記第1シーラント層が内容物を収容する空間と接するように含んだ包装体が提供される。
本発明の第4側面によると、第3側面に係る包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、非吸着性に優れ、基材層とシーラント層との間の接着剤層が薄いにも拘らず、それらの接着強度に優れた積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法を概略的に示す図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示す積層体1は、例えば、包装材料として使用する。この積層体は、包装材料以外の用途、例えば、電子機器の押し釦などの表面を覆うカバーフィルムとして使用することも可能である。
【0014】
この積層体1は、基材層11と、接着性樹脂層12と、バリア層13と、接着剤層14と、第1シーラント層16と、第2シーラント層15とを含んでいる。なお、本発明の積層体1において、基材層11と接着性樹脂層12との間、及び、接着性樹脂層12とバリア層13との間に接着剤層を設けてもよい。
【0015】
基材層11は、例えば、紙、樹脂フィルム又はそれらの組み合わせである。樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、又はセロハンを使用することができる。
【0016】
基材層11の主面には、印刷層を設けてもよい。印刷層は、基材層11の主面のうち、バリア層13側の主面に設けてもよく、その裏面に設けてもよく、それらの双方に設けてもよい。
【0017】
接着性樹脂層12は、基材層11とバリア層13との間に介在している。接着性樹脂層12は、基材層11とバリア層13とを接着させている。接着性樹脂層12は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリオレフィン樹脂を含んでいる。
【0018】
基材層11と接着性樹脂層12との間には、アンカーコート剤又は接着剤を含んだ接着層(図示せず)が介在していてもよい。一例によると、この接着層は、基材層11の主面上に、ウレタン系アンカーコート剤などのアンカーコート剤を塗布することで得られる。他の例によると、この接着層は、基材層11の主面上に、2液型ポリウレタン系接着剤などを塗布することで得られる。この接着層は、基材層11と接着性樹脂層12との接着をより強固にする。
【0019】
なお、接着性樹脂層12を設ける代わりに、基材層11とバリア層13とを、後述する接着剤によって接着させてもよい。
【0020】
バリア層13は、接着性樹脂層12を介して基材層11の一方の主面と接着している。バリア層13は、水蒸気及び酸素等の気体が積層体1を透過することを抑制する。
【0021】
バリア層13は、例えば、アルミニウム層又は無機酸化物薄膜を含んだ層である。例えば、バリア層13は、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム又は透明蒸着フィルムである。
【0022】
アルミニウム箔の厚さは、5μm乃至15μmの範囲内にあることが好ましく、5μm乃至9μmの範囲内にあることがより好ましい。アルミニウム箔が薄すぎると、基材層11と貼り合わせる際の取り扱いが困難である。アルミニウム箔は、過剰に厚くすると、厚さの増加に伴うバリア性の向上が見込めず、その結果、コスト高となる。また、この場合、積層体1の柔軟性が低下し、積層体1が扱い難いものとなる。
【0023】
アルミニウム蒸着フィルムは、樹脂フィルムの上にアルミニウム層を蒸着したフィルムである。
【0024】
樹脂フィルムは、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。樹脂フィルムの厚さは、特に制限される訳ではないが、3μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、6μm乃至30μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0025】
アルミニウム蒸着層の厚さは、5nm乃至100nmの範囲内にあることが好ましい。アルミニウム蒸着層が薄すぎると、水蒸気及び酸素等の気体の侵入を十分に防ぐことができない可能性がある。厚いアルミニウム蒸着層は、コスト高となるばかりでなく、蒸着層にクラックが入りやすくなり、バリア性の低下に繋がる懸念がある。
【0026】
透明蒸着フィルムは、樹脂フィルムの上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の手段により無機酸化物薄膜を形成したものである。
透明蒸着フィルムの樹脂フィルムとしては、アルミニウム蒸着フィルムの樹脂フィルムについて例示したものと同じフィルムを使用することができる。
【0027】
無機酸化物薄膜は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウム等の無機酸化物からなる。無機酸化物薄膜層の多くは、無色又は極薄く着色した透明な層であり、従って、透明蒸着フィルムは、積層体1に透明性が要求される場合に好適である。また、無機酸化物薄膜は、金属層とは異なりマイクロ波を透過させるため、バリア層13として透明蒸着フィルムを含んだ積層体1は、電子レンジで加熱する食品等の包装材への使用も可能である。
【0028】
無機酸化物薄膜の厚さは、5nm乃至300nmの範囲内にあることが好ましく、10nm乃至150nmの範囲内にあることがより好ましい。無機酸化物薄膜は、薄すぎると、均一な膜が得られないことや厚さが十分でないことがあり、バリア層13としての機能を十分に果たすことができない場合がある。無機酸化物薄膜が厚すぎると、積層体1を折り曲げたり引っ張ったりした場合に、無機酸化物薄膜に亀裂を生じる可能性がある。
【0029】
透明蒸着フィルムとしては、例えば、商品名「GL FILM」及び「PRIME BARRIER(登録商標)」(何れも凸版印刷株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0030】
なお、アルミニウム蒸着層や無機酸化物薄膜は、基材層11上に形成してもよい。また、接着性樹脂層12及びバリア層13は、基材層11が樹脂フィルムを含んでいる場合には省略してもよい。
【0031】
接着剤層14は、バリア層13上に設けられ、バリア層13と第2シーラント層15とを接着させている。接着剤層14は、例えば、接着剤からなる。
【0032】
接着剤は、例えば、溶剤系接着剤、水性系接着剤、反応系接着剤、及びホットメルト系接着剤の1以上である。
【0033】
溶剤系接着剤は、有機溶剤を溶媒として使用している接着剤である。溶剤系接着剤は、例えば、酢酸ビニル系溶剤系接着剤、ゴム系溶剤系接着剤、エーテル系溶剤系接着剤及びポリエステル系溶剤系接着剤である。
【0034】
水性系接着剤は、水を溶媒として使用している接着剤である。水性系接着剤は、例えば、酢酸ビニル樹脂系水性系接着剤、酢酸ビニル共重合樹脂系水性系接着剤、アクリル樹脂系水性系接着剤、エポキシ樹脂系水性系接着剤及びニトリルゴム系水水性系接着剤である。
【0035】
反応系接着剤は、化学反応によって硬化する接着剤である。反応系接着剤は、例えば、エポキシ樹脂系接着剤及びポリウレタン系接着剤である。ポリウレタン系接着剤は、1液型ポリウレタン系接着剤でもよく、水酸基を有する主剤とイソシアネート基を有する硬化剤とを混合して使用する2液型ポリウレタン系接着剤でもよい。ポリウレタン系接着剤は、好ましくは2液型ポリウレタン系接着剤である。
【0036】
ホットメルト系接着剤は、それに熱を加えることで溶け、その後冷却によって固まる接着剤である。ホットメルト系接着剤は、例えば、ポリアミド樹脂系接着剤及びポリエステル系接着剤である。
【0037】
接着剤層14の厚さは、0.1μm乃至1.0μmの範囲内にあり、0.3μm乃至1.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至1.0μmの範囲内にあることがより好ましい。なお、当該接着剤層14の厚さは接着剤を乾燥させた後の厚さである。接着剤層14の厚さを過剰に小さくすると、十分なシール強度を達成できない可能性がある。接着剤層14の厚さを過剰に大きくした場合、多くの用途において、過剰設計となり、コストの点で不利になる。また、接着剤層14は吸着を生じやすくなる。
【0038】
第1シーラント層16は、接着剤層14上に設けられている。第1シーラント層16は、積層体1にヒートシール性を付与している。第1シーラント層16の一方の主面は積層体1の最表面を構成している。第1シーラント層16の他方の主面は、第2シーラント層15のみを間に挟んで接着剤層14と隣接している。一例によれば、第1シーラント層16と第2シーラント層15とからなるフィルムは二層共押出フィルムである。
【0039】
第1シーラント層16は、積層体1にヒートシール性を付与するのに加え、積層体1の非吸着性を高める役割を担っている。
【0040】
第1シーラント層16は、環状オレフィン系樹脂からなる。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合させた開環メタセシス重合体(COP)、環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、即ち、環状オレフィンコポリマー(COC)、又はそれらの混合物であることが好ましい。
【0041】
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができる。環状オレフィンは、特には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
【0042】
ノルボルネン骨格を有する環状オレフィンから得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体を使用することができる。そのような開環メタセシス重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ZEONOR(ゼオノア;登録商標)」が挙げられる。ノルボルネン骨格を有する環状オレフィンから得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーを使用することもできる。そのような環状オレフィンコポリマーの市販品としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル(登録商標)」、及び、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売している「TOPAS(登録商標)」が挙げられる。
【0043】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、メタロセン触媒を使用してエチレンとノルボルネンとを共重合した共重合体である環状オレフィンコポリマーを好適に用いることができる。環状ポリオレフィンコポリマーは、環状オレフィンポリマーと同等の非吸着性を備え、かつ、安価に入手可能である。メタロセン触媒を使用してエチレンとノルボルネンとを共重合した共重合体としては、式(a)で表される繰り返し単位と式(b)で表される繰り返し単位とを含む共重合体を用いることができる。そのような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売している「TOPAS(登録商標)」が挙げられる。
【0044】
【0045】
【0046】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は60℃乃至85℃の範囲内にある。好ましくは、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は75℃乃至85℃の範囲内にある。環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高すぎると、高いヒートシール強度を達成することが困難となる。環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が低すぎると、高い非吸着性を達成することが困難となる。
【0047】
第1シーラント層16は、陽電子消滅寿命測定法により求められる高分子自由体積Vfのサイズが、0.10nm3以下の範囲内であることが好ましい。本発明者は、陽電子消滅寿命測定法により求められる高分子の自由体積と非吸着性との相関関係を見出している。陽電子消滅寿命測定法により求められる高分子の自由体積Vfのサイズが0.100nm3を超える場合、所望の非吸着性を得られない可能性がある。
【0048】
自由体積Vfは、例えば、陽電子消滅寿命測定法によって算出することができる。
陽電子消滅寿命測定法とは、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ps乃至数十nsオーダー)を測定し、その消滅寿命から試料中に存在する空孔の大きさ(約0.1nm乃至10nm)、数密度、大きさの分布などに関する情報を非破壊的に評価する手法である。陽電子の線源としては、放射性同位元素22Naを用いる方法などがある。
【0049】
ポリマーの陽電子消滅寿命を測定する方法として、まず、22NaCl水溶液を1cm×1cmのポリイミドフィルムで封入し、陽電子放射線源サンプルを作製する。次にポリマーを厚さが0.5mm乃至1mmとなるようにシート状に製膜するか、薄膜フィルム状のものを合計の厚さが0.5mm乃至1mmとなるように複数枚重ね合わせた後、1cm×1cmのサイズとしたポリマーサンプルを作製する。更に、陽電子放射線源サンプルを2組のポリマーサンプルでサンドイッチすることで、測定用サンプルを得る。
【0050】
測定用サンプルを室温、真空条件の試料チャンバーに設置し、線源である22Naの放射性分解によって生じる1.28MeVのγ線スタート信号と、陽電子消滅で生じる511keVのγ線ストップ信号の時間差を計測することを数百万回程度繰り返す。横軸に時間(ns)、縦軸にカウント数を統計することでプロットされた減衰曲線には、減衰の傾きが急な第1成分τ1、減衰の傾きがやや緩やかな第2成分τ2、減衰の傾きが緩やかな第3成分τ3などが含まれている。これをラプラス逆変換して、横軸に時間(ns)、縦軸に確率密度関数を取ると、τ1、τ2、τ3などの各τ成分の寿命の分布がピークとして現れる。
【0051】
自由体積Vfは、ポリマーの非晶部に形成される数nmオーダーの半径Rの球体状の空孔として表され、陽電子と電子が互いのクーロン力によって結合することで形成されるオルトポジトロニウムの寿命τ3に影響を及ぼす。
【0052】
球体状として仮定した自由体積Vfの半径R(nm)と、オルトポジトロニウムの寿命τ3(ns)の関係は、次の式(1)によって表される。
【0053】
【0054】
式(1)より、球体状の自由体積Vfの半径R(nm)を算出することが出来、次の式(2)より、自由体積Vf(nm3)を算出することが出来る。
【0055】
【0056】
第1シーラント層16は、添加剤を更に含むことができる。添加剤は、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、及び着色剤の1以上である。滑剤としては、例えば、高級脂肪酸金属塩、脂肪族アルコール、ポリグリコール、トリグリセリド、ワックス、フェノール系化合物、又は、それらの1以上を含んだ混合物を加工性を改善する目的で好適に使用することができる。ワックスは、天然由来のワックス、例えば、モンタンワックスなどの鉱物系ワックスであってもよく、ポリエチレンワックスなどの合成ワックスであってもよい。
【0057】
環状オレフィン系樹脂と添加剤との合計量に占める添加剤の量の割合は、1.0重量%以下であることが好ましく、5.0重量%以下であることがより好ましい。
【0058】
第1シーラント層16の厚さは、好ましくは5μm以上である。また、第1シーラント層16の厚さは、好ましくは10μm乃至50μmの範囲内であり、より好ましくは10μm乃至30μmの範囲内である。第1シーラント層16を過剰に薄くすると、第1シーラント層16の製膜が不安定となり、吸着を抑制する効果が小さくなることがある。第1シーラント層16を過剰に厚くした場合、第1シーラント層16の厚さの増加に伴う吸着抑制効果の向上は僅かである。
【0059】
第1シーラント層16と基材層11との間の接着強度は、0.8N/15mm以上であり、1.0N/15mm以上であることが好ましく、1.7N/15mm以上であることがより好ましく、3.0N/15mm以上であることが更に好ましい。基材層11と第1シーラント層16との間の接着強度が小さい場合、十分なシール強度を達成できない可能性がある。基材層11と第1シーラント層16との間の接着強度が過剰に大きい場合、多くの用途において、過剰設計となり、コストの点で不利である。上記の接着強度は、例えば、4.0N/15mm以下である。
【0060】
第2シーラント層15は、接着剤層14と第1シーラント層16との間に介在している。
第2シーラント層15は、低密度ポリエチレン樹脂からなる。第2シーラント層15が存在することで、第1シーラント層16のヒートシール強度を高める効果が期待できる。更に、第2シーラント層15は、製膜時において第1シーラント層16にネックインを生じにくくする。加えて、第2シーラント層15は、第1シーラント層16に対して良好な接着強度を示す。
【0061】
低密度ポリエチレン樹脂は、高圧法など公知の製造方法によって得られる。低密度ポリエチレン樹脂は、例えば、ナフサを熱分解して得られたエチレンを重合させることで得られる。低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、例えば、「LC607K」(190℃、21.168NにおけるMFR;8.0g/10分、密度;0.919g/cm3)及び「LC520」(190℃、21.168NにおけるMFR;3.6g/10分、密度;0.923g/cm3)が挙げられる。これら樹脂は、いずれも日本ポリエチレン株式会社製である。
【0062】
低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が、3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあることが好ましく、4.0g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあることがより好ましく、5g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にあることが更に好ましい。なお、ここで述べるメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210:1999に準拠した方法で得られた測定値である。メルトフローレート(MFR)は、具体的には、190℃で2.16kgfの荷重を樹脂に掛けた時に10分間で吐出される樹脂重量の測定値である。以下、用語「メルトフローレート(MFR)」は、この方法によって得られる値を意味することとする。
【0063】
低密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が環状オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)と大きく異なる場合、第1シーラント層16及び第2シーラント層15を押出ラミネート法によって形成する際に、製膜が不安定となることがある。
【0064】
低密度ポリエチレン樹脂として、メルトフローレート(MFR)が上記範囲内にあるものを使用した場合、押出ラミネートに適した物性が得られ、しかも、高速製膜を行った場合にも不都合を生じ難い。そして、この場合、均質な層を容易に形成することができる。
【0065】
低密度ポリエチレン樹脂の密度は、0.915g/cm3乃至0.925g/cm3の範囲内にあることが好ましく、0.915g/cm3乃至0.922g/cm3の範囲内にあることがより好ましい。低密度ポリエチレン樹脂の密度が小さすぎると、第2シーラント層15の製膜が不安定となる可能性が高い。低密度ポリエチレン樹脂の密度が高すぎると、製膜が不安定になる。なお、ここで述べる密度とは、JIS K7112:1999に準拠した方法で得られた測定値である。
【0066】
第2シーラント層15に含まれる低密度ポリエチレン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とは主鎖に対する側鎖の分岐の炭素数が異なる。低密度ポリエチレン樹脂は、炭素数約20個を超える長鎖分岐を有する。一方、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、炭素数約20個を超える長鎖分岐を有さない。低密度ポリエチレン樹脂は、押出製膜時における耳揺れ現象やネックイン現象が発生しにくいという点で直鎖状低密度ポリエチレン樹脂よりも優れる。また、低密度ポリエチレン樹脂は、引裂性においても直鎖状低密度ポリエチレン樹脂よりも優れる。
【0067】
押出ラミネート法を用いて低密度ポリエチレン樹脂と環状オレフィン系樹脂を積層する場合は、低密度ポリエチレン樹脂の融点が100℃乃至120℃の範囲内にあれば良好に製膜できる。また、低密度ポリエチレン樹脂の融点は、100℃乃至110℃の範囲内にあることがより好ましい。融点が120℃以上になると、耳揺れ現象やネックイン現象により加工が困難となりやすい。
【0068】
第2シーラント層15の厚さは、好ましくは5μm以上である。また、第2シーラント層15の厚さは、好ましくは5μm乃至30μm未満の範囲内であり、より好ましくは5μm乃至25μmの範囲内である。第2シーラント層15を過剰に薄くすると、第2シーラント層15の製膜が不安定となる。第2シーラント層15を過剰に厚くすると、吸着を生じやすくなる。
【0069】
第1シーラント層16の厚さと第2シーラント層15の厚さとの比は、1:2乃至5:1の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1:1乃至5:1の範囲内にある。この比が過剰に小さい場合、吸着を十分に抑制することができない。この比が過剰に大きい場合、第2シーラント層15の製膜が不安定になるか、又は長期保管時において吸着を抑制することができない。
【0070】
第1シーラント層16の厚さと第2シーラント層15の厚さとの合計は、好ましくは10μm乃至60μmの範囲内にあり、より好ましくは10μm乃至30μmの範囲内にある。この合計を過剰に小さくすると、十分な初期シール強度を達成できないか、又は、長期保管時のシール強度劣化が顕著になる可能性がある。この合計を過剰に大きくした場合、多くの用途において、過剰設計となり、コストの点で不利になる。
【0071】
第2シーラント層15は、添加剤を更に含むことができる。添加剤は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、及び着色剤の1以上である。
【0072】
低密度ポリエチレン樹脂と添加剤との合計量に占める添加剤の量の割合は、1.0重量%以下であることが好ましく、5.0重量%以下であることがより好ましい。
【0073】
なお、接着性樹脂層12及びバリア層13は省略してもよい。接着性樹脂層12及びバリア層13を省略した場合、接着剤層14は、基材層11と第2シーラント層15との間に介在し、基材層11と第2シーラント層15とを接着させる。
【0074】
上述した積層体1は、接着剤層14と、第1シーラント層16と、第2シーラント層15とに上述した構成を採用している。そのため、この積層体1は、第1シーラント層16による吸着を生じ難く、基材層11と第1シーラント層16との間の接着剤層14が薄いにも関わらず、高い接着強度を有し、それらのデラミネーションを生じ難い。
【0075】
なお、積層体1は、引裂性が良好であることが好ましい。引裂性が良好であることとは、手で容易に引き裂くことが出来、かつ引き裂き時に直線的に引き裂くことが出来ることを意味する。
【0076】
以下、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法の例について説明する。
【0077】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法を概略的に示す図である。
図2に示す方法では、ロールツーロール方式で積層体を製造する。
具体的には、先ず、基材層11が巻出ロール17より巻き出される。基材層11は、ガイドロール18a、18b及び18c、接着剤塗布部19を通過する。
【0078】
接着剤塗布部19で、基材層11の一方の主面に接着剤が塗布される。接着剤は、例えば、上述した接着剤である。基材層11の主面に接着剤が塗布されると、基材層11の上に接着剤層14が形成される。以下、基材層11と接着剤層14とを備えた積層体を第1積層体とする。
【0079】
第1積層体は、ガイドロール18d及び18eを通過し、乾燥炉20で乾燥される。乾燥炉20は、第1積層体を乾燥させる。
【0080】
乾燥された第1積層体は、次いで、互いに向き合ったニップロール24と冷却ロール25との間へと搬送される。
【0081】
Tダイ23には、第1押出部21から第1シーラント層16の材料が供給される。更に、Tダイ23には、第2押出部22から第2シーラント層15の材料が供給される。Tダイ23は、上記ニップロール24と冷却ロール25との間に第1シーラント層16の材料と第2シーラント層15の材料とを供給する。この供給により、第1シーラント層16と第2シーラント層15とが接着剤層14上に形成される。
【0082】
第1シーラント層16の材料と第2シーラント層15の材料とが供給された積層体は、冷却ロール25によって冷却される。このようにして、積層体1を得る。
積層体1は、その後、ガイドロール18fを経て、巻取ロール26で巻き取られる。
【0083】
次に、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法の他の例を説明する。
先ず、基材層11を準備し、その一方の主面にアンカーコート剤を塗布して、接着層を形成する。
【0084】
次に、接着性樹脂層12の原料を加熱融解させ、この溶融した原料を間に挟んで、基材層11とバリア層13とをサンドイッチラミネーションする。この際、基材層11上に形成した接着層が接着性樹脂層12と接するようにする。なお、基材層11とバリア層13とは、ドライラミネートによって貼り合わせてもよい。
【0085】
次に、バリア層13上に、接着剤を塗布して接着剤層14を形成する。
次いで、接着剤層14上に、第2シーラント層15と第1シーラント層16とを押出ラミネート法により形成する。即ち、接着剤層14上に、第2シーラント層15の原料と第1シーラント層16の原料とを共押出して、第2シーラント層15と第1シーラント層16とを形成する。
【0086】
なお、積層体1から接着性樹脂層12及びバリア層13を省略した場合には、基材層11上に、押出ラミネート法により、第2シーラント層15及び第1シーラント層16を形成する。具体的には、接着剤層14上に、第2シーラント層15と第1シーラント層16とを押出ラミネート法により形成する。
以上のようにして、積層体1を得る。
【0087】
この方法によれば、第1シーラント層16と第2シーラント層15とを備えたシーラント層を別途形成しておき、これをラミネートする方法と比較して、積層体1をより低いコストで製造することができる。
【0088】
ところで、環状オレフィン系樹脂を含む第1シーラント層16と、低密度ポリエチレン樹脂を含む第2シーラント層15とを押出ラミネート法で形成する場合、以下の課題がトレードオフの関係で存在していた。
【0089】
・樹脂の加熱溶融温度が高いと、環状オレフィン系樹脂が着色し、外観不良となる。
・樹脂の加熱溶融温度が低いと、第1シーラント層と基材層との間で十分な接着強度が得られない。
【0090】
本発明者は、鋭意検討のうえ、第1シーラント層16の厚さと第2シーラント層15の厚さとを所定の範囲とし、第2シーラント層15に用いる低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)及び密度を所定の範囲とすることにより、外観不良が無く、特に高い接着強度と特に高い非吸着性とを備える積層体が得られることを見出した。
以上、本発明の第1の実施形態に係る積層体について説明した。
【0091】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
【0092】
図3に示す積層体1は、第2シーラント層15を備えていないこと以外は、
図1に示す積層体1と同じ積層体である。したがって、第2の実施形態に係る積層体において、第1シーラント層16の一方の主面は積層体1の最表面を構成し、第1シーラント層16の他方の主面は接着剤層14と接触している。
【0093】
第2の実施形態に係る積層体において、接着剤層14は、ポリウレタン系接着剤からなることが好ましい。ポリウレタン系接着剤は、2液型ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。2液型ポリウレタン系接着剤は、製造時に第1シーラント層16にオゾン処理(O3処理)を行うことにより、特に高い接着強度を実現できる。
【0094】
第2の実施形態に係る積層体は、第2シーラント層15を形成しないこと以外は、第1の実施形態に係る積層体の製造方法と同じ方法によって製造することができる。
【0095】
上述したように、本発明の一実施形態に係る積層体1は、例えば、包装材料として利用することができる。この場合、この包装材料を含んだ包装体は、上述した積層体1を、内容物を収容する空間に第1シーラント層16が接するように含む。包装体は、袋であってもよく、開口を有する容器本体とこの開口を塞ぐ蓋とを含んだ容器であってもよい。後者の場合、積層体1は、蓋の少なくとも一部として使用することができる。
【0096】
この包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装物品において、内容物はどのようなものであってもよい。一例によれば、内容物は、貼付剤などの医薬品である。具体的には、例えば、サリチル酸メチルなどを含む貼付剤である。他の例によれば、内容物は、化粧品又は食品である。具体的には、例えば、酢酸トコフェロールを含む化粧水である。
【0097】
この包装物品は、積層体1における第1シーラント層16が薬剤成分などを透過し難く、薬剤成分などの浸透を原因としたデラミネーションなどを生じにくい。そのため、包装体を密封した状態において長期保存したとしても、デラミネーションなどに起因した積層体1の性能劣化は生じ難い。また、第1シーラント層16は吸着を生じ難いため、内容物が含んでいる成分、例えば、液状又はペースト状の成分は、第1シーラント層16へ吸着し難い。即ち、この包装物品は、内容物の劣化を生じ難い。
【0098】
以下に、本発明に係る積層体の例を記載する。
(1)本発明の一実施形態は、第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある第1接着剤層と、前記第1接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層とを具備した積層体であって、前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面は、前記第1接着剤層と接触しているか、または、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層のみを間に挟んで前記第1接着剤層と隣接し、前記第1基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上である積層体に係る。
(2)本発明の他の実施形態は、前記積層体は前記第2シーラント層を更に具備し、前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの比は1:2乃至5:1の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.915g/cm3乃至0.925g/cm3の範囲内にあり、前記第1及び第2シーラント層の各々の厚さは5μm以上であり、前記第2シーラント層の厚さは25μm以下である(1)に記載の積層体に係る。
(3)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層は二軸延伸ポリプロピレンフィルムである(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第1接着剤層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(4)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第1接着剤層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(5)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層とを更に具備し、前記第1基材層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記バリア層はアルミニウム層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第2接着剤層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面がバリア層と接触している。また、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、他方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(6)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層と、前記第1基材層と前記第2接着剤層との間に介在した接着性樹脂層とを更に具備し、前記第1基材層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記接着性樹脂層はポリエチレン層であり、前記バリア層はアルミニウム層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、接着性樹脂層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2接着剤層と接触している。また、第2接着剤層は、一方の面が接着性樹脂層と接触し、もう一方の面がバリア層と接触している。更に、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、もう一方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、もう一方の面が第2シーラント層と接触している。
(7)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層とを更に具備し、前記第1基材層はセロハンであり、前記バリア層はアルミニウム層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第2接着剤層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面がバリア層と接触している。また、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、他方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(8)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層と、前記第1基材層と前記第2接着剤層との間に介在した接着性樹脂層とを更に具備し、前記第1基材層はセロハンであり、前記接着性樹脂層はポリエチレン層であり、前記バリア層はアルミニウム層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、接着性樹脂層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2接着剤層と接触している。また、第2接着剤層は、一方の面が接着性樹脂層と接触し、もう一方の面がバリア層と接触している。更に、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、もう一方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、もう一方の面が第2シーラント層と接触している。
(9)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層とを更に具備し、前記第1基材層は紙と二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと前記紙及び前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートの間に介在した接着剤とからなり、前記バリア層はアルミニウム層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第2接着剤層は、一方の面が第1基材層を構成している二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと接触し、他方の面がバリア層と接触している。また、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、他方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(10)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層と、前記バリア層と前記第1接着剤層との間に介在した第2基材層とを更に具備し、前記第1基材層は紙であり、前記バリア層はアルミニウム層であり、前記第2基材層はナイロン層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、第2接着剤層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面がバリア層と接触している。また、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、他方の面が第2基材層と接触している。更に、第2基材層は、一方がバリア層と接触し、もう一方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面が第2基材層と接触し、他方の面が第2シーラント層と接触している。
(11)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層と、前記第1基材層と前記第1接着剤層との間に介在した接着性樹脂層とを更に具備し、前記第1基材層は紙であり、前記バリア層はアルミニウム層であり、前記接着性樹脂層はエチレン-メタクリル酸共重合体層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、接着性樹脂層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2接着剤層と接触している。また、第2接着剤層は、一方の面が接着性樹脂層と接触し、もう一方の面がバリア層と接触している。更に、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、もう一方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、もう一方の面が第2シーラント層と接触している。
(12)本発明の更に他の実施形態は、前記第1基材層と前記第2シーラント層との間に介在したバリア層と、前記第1基材層と前記バリア層との間に介在した前記第2接着剤層と、前記第1基材層と前記第1接着剤層との間に介在した接着性樹脂層とを更に具備し、前記第1基材層は紙であり、前記バリア層はアルミニウム層であり、前記接着性樹脂層はポリエチレン層である(2)に記載の積層体に係る。この積層体では、例えば、接着性樹脂層は、一方の面が第1基材層と接触し、他方の面が第2接着剤層と接触している。また、第2接着剤層は、一方の面が接着性樹脂層と接触し、もう一方の面がバリア層と接触している。更に、バリア層は、一方の面が第2接着剤層と接触し、もう一方の面が第1接着剤層と接触している。更に、第1接着剤層は、一方の面がバリア層と接触し、もう一方の面が第2シーラント層と接触している。
【0099】
以下に、本発明に係る積層体の別の例を記載する。
(1)本発明の一実施形態は、基材層と、前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層とを具備した積層体であって、前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面は、前記接着剤層と接触しているか、または、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上である積層体に係る。
(2)本発明の他の実施形態は、前記第1シーラント層の他方の主面は前記接着剤層と接触し、前記第1シーラント層の厚さは10μm乃至40μmの範囲内にあり、前記第1シーラント層は未延伸である(1)に記載の積層体に係る。
(3)本発明の他の実施形態は、前記基材層と前記接着剤層との間にバリア層を更に具備する(1)又は(2)に記載の積層体に係る。
(4)本発明の更に他の実施形態は、前記バリア層はアルミニウム層又は無機酸化物薄膜を含んだ層を具備する(3)に記載の積層体に係る。
(5)本発明の更に他の実施形態は、前記基材層と前記バリア層との間に接着性樹脂層を更に具備する(3)又は(4)に記載の積層体に係る。
(6)本発明の更に他の実施形態は、前記接着性樹脂層がポリエチレンを含む(5)に記載の積層体に係る。
(7)本発明の更に他の実施形態は、前記第1シーラント層は樹脂として環状オレフィン系樹脂のみを含む(1)乃至(6)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(8)本発明の更に他の実施形態は、前記第1シーラント層は環状オレフィン系樹脂及び任意の添加剤のみを含む(1)乃至(6)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(9)本発明の更に他の実施形態は、前記添加剤は、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、及び着色剤の1以上である(8)に記載の積層体に係る。
(10)本発明の更に他の実施形態は、前記滑材は、高級脂肪酸金属塩、脂肪族アルコール、ポリグリコール、トリグリセリド、ワックス、フェノール系化合物、又は、それらの1以上を含んだ混合物である(9)に記載の積層体に係る。
(11)本発明の更に他の実施形態は、前記第1シーラント層は環状オレフィン系樹脂のみを含む(1)乃至(6)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(12)本発明の更に他の実施形態は、前記接着剤層は接着剤からなり、前記接着剤は溶剤系接着剤、水性系接着剤、反応系接着剤、及びホットメルト系接着剤の1以上である(1)乃至(11)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(13)本発明の更に他の実施形態は、前記接着剤層は反応系接着剤からなり、前記反応系接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤及びポリウレタン系接着剤の少なくとも一方である(1)乃至(11)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(14)本発明の更に他の実施形態は、前記反応系接着剤は前記ポリウレタン系接着剤であり、前記ポリウレタン系接着剤は2液型ポリウレタン系接着剤である(13)に記載の積層体に係る。
(15)本発明の更に他の実施形態は、前記基材層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである(1)乃至(14)の何れか1つに記載の積層体に係る。
(16)本発明の更に他の一実施形態は、(1)乃至(15)の何れか1つに記載の積層体を、前記シーラント層が内容物を収容する空間と接するように含んだ包装体に係る。
(17)本発明の更に他の一実施形態は、(16)に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品に係る。
【0100】
以下に、本発明に係る積層体の製造方法の例を記載する。
(1)本発明の一実施形態は、積層体の製造方法であって、
基材層の上に厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層を形成することと、
ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂を含む第1シーラント層を、前記第1シーラント層の一方の主面が前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面が前記接着剤層と接触するように、押出ラミネートにより形成すること、または、前記第1シーラント層と低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層とを、前記第1シーラント層の一方の主面が前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面が前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接するように、押出ラミネートにより形成することとを含み、
前記接着剤層と前記第1シーラント層とを含む積層構造は、前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度が0.8N/15mm以上となるように形成する積層体の製造方法に係る。
(2)本発明の他の実施形態は、前記積層構造の形成を含むプロセスをロールツーロール方式によって行う(1)に記載の積層体の製造方法に係る。
(3)本発明の更に他の実施形態は、前記環状オレフィン系樹脂が有するガラス転移温度は75℃乃至85℃の範囲内にある(1)又は(2)に記載の積層体の製造方法に係る。
(4)本発明の更に他の実施形態は、前記第1シーラント層が有する自由体積は0.100nm3以下である(1)乃至(3)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(5)本発明の更に他の実施形態は、前記第1シーラント層と前記第2シーラント層とを、前記第1シーラント層の一方の主面が前記積層体の最表面を構成し、前記第1シーラント層の他方の主面が前記第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接するように、押出ラミネートにより形成することを更に含む(1)乃至(4)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(6)本発明の更に他の実施形態は、前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの比が1:2乃至5:1の範囲内となるように前記第1及び第2シーラント層とを形成し、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にある(5)に記載の積層体の製造方法に係る。
(7)本発明の更に他の実施形態は、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが5.0g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にある(5)又は(6)に記載の積層体の製造方法に係る。
(8)本発明の更に他の実施形態は、前記低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.915g/cm3乃至0.925g/cm3の範囲内にある(5)乃至(7)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(9)本発明の更に他の実施形態は、前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの合計は10μm乃至60μmの範囲内にあり、前記第2シーラント層及び前記第1シーラント層の各々の厚さは5μm以上である(5)乃至(8)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(10)本発明の更に他の実施形態は、前記第2シーラント層の厚さは25μm以下である(5)乃至(9)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(11)本発明の更に他の実施形態は、前記基材層の上に前記接着剤層を形成する前に、前記基材層の上にバリア層を形成することを更に含む(1)乃至(10)の何れか1つに記載の積層体の製造方法に係る。
(12)本発明の更に他の実施形態は、前記バリア層はアルミニウム層又は無機酸化物薄膜を含んだ層を具備する(11)に記載の積層体の製造方法に係る。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例及び比較例を記載する。
<実施例1>
以下の方法により、基材層とバリア層と接着剤層と第1シーラント層とを備えた積層体を製造した。
【0102】
先ず、基材層として、厚さが12μmである二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。具体的には、フタムラ化学株式会社製「FE2001」を準備した。また、バリア層として、厚さが9μmのアルミニウム箔を準備した。
【0103】
次に、基材層の一方の主面にアンカーコート剤を塗布し、続いて、この主面とバリア層とが接着性樹脂層を間に挟んで向き合うように、基材層とバリア層とをサンドイッチラミネートした。ここでは、接着性樹脂層の材料としてはポリエチレン(PE)を使用し、その厚さは15μmとした。
【0104】
次いで、バリア層の表面にアンカーコート剤を塗布し、厚さが0.5μmとなるように接着剤層を形成した。
次いで、接着剤層上に第1シーラント層を形成した。具体的には、接着剤層上に、押出ラミネート法により、COC樹脂からなる層を形成した。また、押出ラミネート法において、ラミネート前にO3処理を行った。
【0105】
第1シーラント層の材料としては、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売しているTOPASを使用した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が1.8g/10分であり、密度が1.01g/cm3であり、ガラス転移温度が78℃であった。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.092nm3であった。
【0106】
第1シーラント層の厚さは、30μmとした。
以上のようにして、積層体を得た。
【0107】
<実施例2>
接着剤層の厚さを0.2μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法により積層体を製造した。
【0108】
<実施例3>
接着剤層の厚さを0.9μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法により積層体を製造した。
【0109】
<実施例4>
第1シーラント層の材料として、COC樹脂であるTOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売しているTOPASを使用したこと以外は実施例1と同様の方法により積層体を製造した。この樹脂のガラス転移温度は65℃である。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.093nm3であった。
【0110】
<実施例5>
以下の方法により、基材層とバリア層と接着剤層と第1及び第2シーラント層とを備えた積層体を製造した。
【0111】
先ず、実施例1で使用した基材層と同じ基材層と、実施例1で使用したバリア層と同じバリア層とを準備した。
【0112】
次に、基材層の一方の主面にアンカーコート剤を塗布し、続いて、この主面とバリア層とが接着性樹脂層を間に挟んで向き合うように、基材層とバリア層とをサンドイッチラミネートした。ここでは、接着性樹脂層の材料としてはポリエチレンを使用し、その厚さは15μmとした。
【0113】
次いで、バリア層の表面にポリウレタン系接着剤を塗布し、厚さが0.5μmとなるように接着剤層を形成した。
【0114】
次いで、接着剤層上に第1及び第2シーラント層を形成した。具体的には、接着剤層上に、押出ラミネート法により、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層と、その上に設けられ、環状オレフィンコポリマー(COC)樹脂からなる第1シーラント層とを形成した。
【0115】
第1シーラント層の材料としては、実施例1で使用した第1シーラント層の材料と同じ樹脂を使用した。
【0116】
第2シーラント層の材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を使用した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が7.0g/10分であり、密度が0.918g/cm3であり、融点が106℃であった。
【0117】
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さは、それぞれ、20μm及び10μmとした。即ち、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を2:1とし、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの合計は30μmとした。
以上のようにして、積層体を得た。
【0118】
<比較例1>
以下の方法により、基材層とバリア層と接着剤層と第1シーラント層とを備えた積層体を製造した。
【0119】
先ず、実施例1で使用した基材層と同じ基材層と、実施例1で使用したバリア層と同じバリア層とを準備した。
次に、基材層の一方の主面にドライラミネート接着剤を塗布し、基材層とバリア層とを接着させた。
次いで、バリア層の表面にドライラミネート接着剤を塗布し、厚さが2.5μmとなるように接着剤層を形成した。
【0120】
次いで、接着剤層上に第1シーラント層をラミネートした。
第1シーラント層としては、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売しているTOPASを使用した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が1.8g/10分であり、密度が1.01g/cm3であり、ガラス転移温度が78℃であるCOC樹脂からなる。また、第1シーラント層について陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.092nm3であった。
第1シーラント層の厚さは30μmとした。
以上のようにして、積層体を得た。
【0121】
<比較例2>
接着剤層の厚さを0.5μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。
【0122】
<比較例3>
第1シーラント層の材料として、ガラス転移温度が110℃であるCOC樹脂を使用したこと以外は実施例1と同様の方法により積層体を製造した。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.090nm3であった。
【0123】
<比較例4>
第1シーラント層の材料としてCOC樹脂の代わりに低密度ポリエチレンを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により積層体を製造した。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.155nm3であった。
【0124】
<比較例5>
第1シーラント層の材料として、COC樹脂の代わりにポリアクリロニトリル系樹脂(PAN)を使用したこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。なお、接着剤層は厚みが0.5μmとなるように形成した。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.085nm3であった。
【0125】
<比較例6>
第1シーラント層としてポリアクリロニトリル系樹脂(PAN)からなるフィルムを使用したこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。なお、接着剤層は厚みが2.5μmとなるように形成した。このフィルムについて陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.085nm3であった。
【0126】
<比較例7>
第1シーラント層の材料としてCOC樹脂の代わりにエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)を使用したこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。EVOH樹脂としては、EVOH樹脂に含まれるエチレンとビニルアルコールとの合計モル数に占めるエチレンのモル数の割合が44mol%である樹脂を用いた。なお、接着剤層は厚みが0.5μmとなるように形成した。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.065nm3であった。
【0127】
<比較例8>
第1シーラント層として、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH樹脂)からなるフィルムを使用したこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。このフィルム中のEVOH樹脂に含まれるエチレンとビニルアルコールとの合計モル数に占めるエチレンのモル数の割合は44mol%であった。なお、接着剤層は厚みが2.5μmとなるように形成した。このフィルムについて陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.065nm3であった。
【0128】
<比較例9>
第1シーラント層の材料としてCOC樹脂の代わりに非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用したこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。非結晶性ポリエチレンテレフタレートとしては、ポリエチレンテレフタレートとグリコールとの共重合体であるPET-Gを使用した。なお、接着剤層は厚みが0.5μmとなるように形成した。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.079nm3であった。
【0129】
<比較例10>
第1シーラント層として、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムを使用したこと以外は比較例1と同様の方法により積層体を製造した。非結晶性ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートとグリコールとの共重合体であるPET-Gを含むフィルムを使用した。このフィルムについて陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.079nm3であった。なお、接着剤層は厚みが2.5μmとなるように形成した。
【0130】
<実施例6>
以下の方法により、基材層とバリア層と接着剤層と第1及び第2シーラント層とを備えた積層体を製造した。
【0131】
先ず、基材層として、厚さが12μmである二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。具体的には、フタムラ化学株式会社製FE2001を準備した。また、バリア層として、厚さが7μmのアルミニウム箔を準備した。
【0132】
次に、基材層の一方の主面にアンカーコート剤を塗布し、続いて、この主面とバリア層とが接着性樹脂層を間に挟んで向き合うように、基材層とバリア層とをサンドイッチラミネートした。ここでは、接着性樹脂層の材料としてはポリエチレンを使用し、その厚さは15μmとした。
【0133】
次いで、バリア層の表面にポリウレタン系接着剤を塗布し、厚さが0.5μmとなるように接着剤層を形成した。
【0134】
次いで、接着剤層上に第1及び第2シーラント層を形成した。具体的には、接着剤層上に、押出ラミネート法により、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層と、その上に設けられ、環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1シーラント層とを形成した。
【0135】
第1シーラント層の材料としては、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHが製造し、ポリプラスチックス株式会社が販売しているTOPAS(登録商標)を使用した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレートが1.8g/10分であり、密度が1.01g/cm3であり、ガラス転移温度が78℃であった。また、第1シーラント層のみからなるポリマーシートを作製し、陽電子消滅寿命測定法における自由体積Vfのサイズを算出した結果は、0.092nm3であった。
【0136】
第2シーラント層の材料としては、低密度ポリエチレン樹脂を使用した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレートが7.0g/10分であり、密度が0.918g/cm3であり、融点が約106℃であった。
【0137】
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さは、それぞれ、20μm及び10μmとした。即ち、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を2:1とし、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの合計は30μmとした。
以上のようにして、積層体を得た。
【0138】
<実施例7>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ25μm及び5μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を5:1とした。
【0139】
<実施例8>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ10μm及び20μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1:2とした。
【0140】
<実施例9>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ15μm及び10μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1.5:1とした。
【0141】
<実施例10>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ10μm及び15μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1:1.5とした。
【0142】
<実施例11>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ15μm及び15μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1:1とした。
【0143】
<実施例12>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ20μm及び5μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を4:1とした。
【0144】
<実施例13>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ15μm及び5μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を3:1とした。
【0145】
<実施例14>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ20μm及び30μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1:1.5とした。
【0146】
<実施例15>
第1シーラント層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ20μm及び25μmとしたこと以外は実施例6と同様の方法により積層体を製造した。即ち、本例では、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を1:1.25とした。
【0147】
<実施例16>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が3.6g/10分であり、密度が0.923g/cm3であり、融点が111℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0148】
<実施例17>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が8.0g/10分であり、密度が0.919g/cm3であり、融点が107℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0149】
<実施例18>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が8.4g/10分である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0150】
<実施例19>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が4.0g/10分であり、密度が0.923g/cm3であり、融点が111℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0151】
<実施例20>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が5.0g/10分であり、密度が0.922g/cm3であり、融点が109℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0152】
<実施例21>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が10.5g/10分であり、融点が107℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0153】
<実施例22>
第2シーラント層の原料として、実施例6で使用した低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が13.0g/10分であり、密度が0.919g/cm3であり、融点が107℃である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。
【0154】
<比較例11>
第2シーラント層の原料として、低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が9.0g/10分であり、密度が0.912g/cm3であり、融点が120℃であった。
【0155】
<比較例12>
第2シーラント層の原料として、低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法により積層体を製造した。この樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168N(=2.16kgf)である場合のメルトフローレート(MFR)が3.8g/10分であり、密度が0.903g/cm3であり、融点が98℃であった。
【0156】
<実施例23>
以下の方法により、基材層とバリア層と接着剤層と第1シーラント層とを備えた積層体を製造した。
【0157】
先ず、基材層として、厚さが12μmである二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を準備した。具体的には、フタムラ化学株式会社製FE2001を準備した。また、バリア層として、厚さが7μmのアルミニウム箔(Al)を準備した。
【0158】
次に、基材層の一方の主面に2液型ポリウレタン系接着剤を塗布し、続いて、この主面とバリア層とが接着性樹脂層を間に挟んで向き合うように、基材層とバリア層とをサンドイッチラミネートした。ここでは、接着性樹脂層の材料としてはポリエチレン(PE)を使用し、その厚さは15μmとした。
【0159】
次いで、バリア層の表面に2液型ポリウレタン系接着剤(アンカーコート剤A)を塗布し、厚さが0.5μmとなるように接着剤層を形成した。
次いで、接着剤層上に第1シーラント層を形成した。具体的には、接着剤層上に、押出ラミネート法により、未延伸のCOC樹脂層を形成した。また、押出ラミネート法において、ラミネート前にO3処理を行った。
【0160】
第1シーラント層の材料としては、実施例6で使用した樹脂と同じCOC樹脂を使用した。
また、第1シーラント層の厚さは、30μmとした。
以上のようにして、積層体を得た。
【0161】
<実施例24>
2液型ポリウレタン系接着剤(アンカーコート剤B)を用いて接着剤層を形成したこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0162】
<実施例25>
ポリオレフィン系接着剤(アンカーコート剤C)を用いて接着剤層を形成したこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0163】
<実施例26>
ポリオレフィン系接着剤(アンカーコート剤C)を用いて接着剤層を形成したこと、及び、押出ラミネート法においてO3処理を行わなかったこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0164】
<実施例27>
第1シーラント層の厚さを40μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0165】
<実施例28>
第1シーラント層の厚さを10μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0166】
<実施例29>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ0.1μm及び40μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0167】
<実施例30>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ0.1μm及び30μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0168】
<実施例31>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ0.1μm及び10μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0169】
<実施例32>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ1.0μm及び40μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0170】
<実施例33>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ1.0μm及び30μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0171】
<実施例34>
接着剤層及び第1シーラント層の厚さをそれぞれ1.0μm及び10μmとしたこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0172】
<実施例35>
基材層に2液型ポリウレタン系接着剤を塗布しなかったこと、並びに、接着性樹脂層及びバリア層を設けなかったこと以外は、実施例23と同様の方法により積層体を製造した。
【0173】
以下の表1、表2及び表3に製造した積層体を纏めた。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
表1の「製造方法」と表記した列において、「押出ラミネート」は、押出ラミネート法により未延伸の第1シーラント層を形成したことを表し、「ドライラミネート」は、延伸された第1シーラント層を別途形成しておき、これをラミネートしたことを表す。
【0178】
表1及び表2において、「シーラント層の比」と表記した列には、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの比を記載している。
【0179】
「シーラント層の合計厚さ」と表記した列には、第1シーラント層の厚さと第2シーラント層の厚さとの合計を記載している。
【0180】
表3の「バリア層」と表記した列において、「〇」は、積層体がバリア層を備えていることを表し、「×」は積層体がバリア層を備えていないことを表す。
【0181】
「表面処理」と表記した列において、「オゾン処理」は、オゾン処理を行ったことを表し、「無」は表面処理を行わなかったことを表す。
【0182】
<評価>
(接着強度)
実施例1乃至4、23乃至34並びに比較例1乃至10に係る積層体について、バリア層と第1シーラント層との接着強度を調べた。前記積層体から、幅が15mm、長さが10cmである試験片を切り出し、これら試験片に対して、JIS K6854-3:1999に記載されたはく離法に準拠した方法を用いて、バリア層と第1シーラント層との間の接着強度[N/15mm]を測定した。具体的には、これら試験片に対して、引張速度300mm/分で剥離を行った。
【0183】
また、実施例5乃至22並びに比較例11及び12に係る積層体について、上述した方法と同様の方法によって、バリア層と第2シーラント層との間の接着強度を調べた。
【0184】
そして、実施例35に係る積層体について、上述した方法と同様の方法によって、基材層と第1シーラント層との間の接着強度を調べた。
【0185】
(非吸着性及び耐内容物性)
実施例1乃至5及び比較例1乃至10に係る積層体から、縦が10cm及び横が10cmの寸法を有している袋を製造した。次に、これら袋にサリチル酸メチル又は化粧水(酢酸トコフェロール)を充填し、これらをヒートシールによって封止した。次いで、このようにして得られた包装物品を40℃で30日間放置し、その後、サリチル酸メチル又は化粧水(酢酸トコフェロール)が積層体の第1シーラント層へ吸着しているか否かを確認した。確認の後、実施例1乃至4及び比較例1乃至10に係る積層体については、上記の(接着強度)で述べた方法と同様の方法によって、バリア層と第1シーラント層との間の接着強度を調べた。また、実施例5に係る積層体については、上記の(接着強度)で述べた方法と同様の方法によって、バリア層と第2シーラント層との間の接着強度を調べた。
【0186】
実施例6乃至22及び比較例11及び12に係る積層体についても、上記と同様の袋を製造した。これら袋にツロブテロール2mgを含有する貼付剤を充填し、これらをヒートシールによって封止した。次いで、このようにして得られた包装物品を40℃で1週間または6か月間放置し、その後、貼付剤の有効成分が積層体の第1シーラント層へ吸着しているか否かを確認した。確認の後、これら積層体についても、上述した方法と同様の方法によって、バリア層と第2シーラント層との間の接着強度を調べた。
【0187】
実施例23乃至35に係る積層体についても、上記と同様の袋を製造した。これら袋に貼付剤を充填し、これらをヒートシールによって封止した。次いで、このようにして得られた包装物品を40℃で1週間放置し、その後、貼付剤の有効成分が積層体の第1シーラント層へ吸着しているか否かを確認した。確認の後、これら積層体についても、上述した方法と同様の方法によって、バリア層と第1シーラント層との間の接着強度を調べた。
【0188】
なお、比較例2、3、5、7及び9に係る積層体から製造した包装袋は、接着剤層と第1シーラント層との接着性が低く、袋として使用することができなかった。したがって、比較例2、3、5、7及び9に係る積層体から得られる包装物品については、非吸着性及び耐内容物性を評価することができなかった。
【0189】
結果を上記の表3並びに以下の表4及び表5に纏める。
【0190】
【0191】
【0192】
表3、表4及び表5の「接着強度[N/15mm]」と表記した列において、「〇」は、接着強度が0.8N/15mm以上であったことを表す。「×」は、接着強度が0.8N/15mm未満であったことを表す。
【0193】
また、「非吸着性」と表記した列において、「◎」は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が1重量%未満であったことを表し、「○」は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が1重量%以上3重量%未満であったことを表し、「△」は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が3重量%以上5重量%未満であり、使用可能なレベルであったことを表し、「×」は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が5重量%以上であり、包装物品が使用困難なレベルであったことを表している。
【0194】
また、「耐内容物性」と表記した列において、「〇」は、内容物を保管した後の包装物品における積層体の接着強度が0.8N/15mm以上であったことを表す。「×」は、内容物を保管した後の包装物品における積層体の接着強度が0.8N/15mm未満であったことを表す。
【0195】
また、「製膜性」と表記した列において、「○」は、押出ラミネート法によって第1シーラント層を形成した際に、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が10%未満であったことを表す。「△」は、押出ラミネート法によって第1シーラント層を形成した際に、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が10%以上20%未満の範囲内であり、積層体が使用可能なレベルであったことを表す。「×」は、押出ラミネート法によって第1シーラント層を形成した際に、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が20%以上であり、積層体が使用困難なレベルであったことを表している。
【0196】
また、「引裂性」と表記した列において、「○」は、包装物品が手で容易に引裂くことが出来、かつ引裂き時に直線的に引裂くことが出来たことを意味する。「×」は、包装物品が手で引裂くことが困難であったか、引裂き時に直線的に引裂けなかったことを表している。
【0197】
表3に示すように、実施例23乃至35に係る積層体から袋を製造した包装物品は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が3重量%未満であり、使用可能なレベルであった。
【0198】
また、実施例23乃至35に係る積層体は、バリア層と第1シーラント層との間の接着強度に優れ、デラミネーションが生じることはなかった。
【0199】
また、実施例23乃至35に係る積層体は、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が20%未満であり、使用可能なレベルであった。
【0200】
表4に示すように、実施例1乃至5に係る積層体から袋を製造した包装物品は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が3重量%未満であり、使用可能なレベルであった。
【0201】
また、実施例1乃至5に係る積層体は、接着強度に優れ、デラミネーションが生じることはなかった。そして、実施例1乃至5に係る積層体は、耐内容物性にも優れていた。
【0202】
表5に示すように、内容物を袋に封入してから1週間後において、実施例6乃至22に係る積層体から袋を製造した包装物品は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が3重量%未満であり、使用可能なレベルであった。また、内容物を袋に封入してから6か月後において、これら包装物品は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が5重量%未満であり、使用可能なレベルであった。
【0203】
また、実施例6乃至22に係る積層体は、バリア層と第2シーラント層との間の接着強度に優れ、デラミネーションが生じることはなかった。
【0204】
また、実施例6乃至22に係る積層体は、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が20%未満であり、使用可能なレベルであった。
【0205】
また、実施例6乃至22に係る積層体から袋を製造した包装物品は、手で容易に引裂くことが出来、かつ引裂き時に直線的に引裂くことが出来た。
【0206】
一方、比較例1、4、及び10に係る積層体から袋を製造した包装物品は、内容物の有効成分の内、積層体の第1シーラント層に吸着された割合が5重量%以上であり、使用困難なレベルであった。比較例1に係る積層体は、接着剤層が厚いため、内容物の有効成分を吸着しやすいと考えられる。また、比較例4に係る積層体は、第1シーラント層の自由体積が大きいため、サリチル酸メチルや化粧水を吸着しやすく、非吸着性に優れないと考えられる。また、比較例10に係る積層体の第1シーラント層は小さい自由体積を有していた。しかしながら、比較例10に係る積層体の第1シーラント層の材料と内容物であるサリチル酸メチルとは何れもエステルであるため、第1シーラント層はサリチル酸メチルを吸着しやすかった。
【0207】
また、比較例6及び8に係る積層体は、耐内容物性に優れていなかった。
【0208】
また、比較例2、3、5、7及び9に係る積層体は、バリア層と第1シーラント層との間の接着強度が0.8N/15mm未満と非常に弱く、デラミネーションが生じた。比較例11及び12に係る積層体も、バリア層と第2シーラント層との間の接着強度が0.1N/15mm未満と非常に弱く、デラミネーションが生じた。このことから、ドライラミネート接着剤の厚さが薄すぎると、高い接着強度を達成することが難しいと考えられる。また、比較例5、7及び9に係る積層体の第1シーラント層の材料は、何れも、押出ラミネートに適していなかった。
【0209】
また、比較例11及び12に係る積層体は、押出ラミネート法によってシーラント層を形成した際に、溶融フィルムの耳揺れ現象やネックイン現象によって生じるロス率が20%以上であり、使用困難なレベルであった。
また、比較例11及び12に係る積層体から袋を製造した包装物品は、手で引裂くことが困難であり、直線的に引裂くことも出来なかった。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
基材層と、
前記基材層上に設けられ、厚さが0.1μm乃至1.0μmの範囲内にある接着剤層と、
前記接着剤層上に設けられ、ガラス転移温度が60℃乃至85℃の範囲内にある環状オレフィン系樹脂からなる第1シーラント層と
を具備した積層体であって、
前記第1シーラント層の一方の主面は前記積層体の最表面を構成し、
前記第1シーラント層の他方の主面は、前記接着剤層と接触しているか、または、低密度ポリエチレン樹脂からなる第2シーラント層のみを間に挟んで前記接着剤層と隣接し、 前記基材層と前記第1シーラント層との間の接着強度は0.8N/15mm以上である積層体。
[2]
前記環状オレフィン系樹脂が有するガラス転移温度は75℃乃至85℃の範囲内にある項1に記載の積層体。
[3]
前記第1シーラント層が有する自由体積は0.100nm
3
以下である項1又は2に記載の積層体。
[4]
前記積層体は前記第2シーラント層を更に具備した項1乃至3の何れか1項に記載の積層体。
[5]
前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの比は1:2乃至5:1の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが3.6g/10分乃至13.0g/10分の範囲内にあり、前記低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.915g/cm
3
乃至0.925g/cm
3
の範囲内にあり、前記第2シーラント層及び前記第1シーラント層の各々の厚さは5μm以上であり、前記第2シーラント層の厚さは25μm以下である項4に記載の積層体。
[6]
前記低密度ポリエチレン樹脂は、温度が190℃であり、荷重が21.168Nにおけるメルトフローレートが5.0g/10分乃至10.5g/10分の範囲内にある項4又は5に記載の積層体。
[7]
前記第2シーラント層の厚さと前記第1シーラント層の厚さとの合計は10μm乃至60μmの範囲内にある項4乃至6の何れか1項に記載の積層体。
[8]
前記基材層と前記接着剤層との間に介在したバリア層を更に具備し、前記接着剤層は前記バリア層と接触している項1乃至7の何れか1項に記載の積層体。
[9]
前記バリア層はアルミニウム層又は無機酸化物薄膜を含んだ層を具備する項8に記載の積層体。
[10]
項1乃至9の何れか1項に記載の積層体を、前記第1シーラント層が内容物を収容する空間と接するように含んだ包装体。
[11]
項10に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。
【符号の説明】
【0210】
1…積層体、11…基材層、12…接着性樹脂層、13…バリア層、14…接着剤層、15…第2シーラント層、16…第1シーラント層、17…巻出ロール、18a…ガイドロール、18b…ガイドロール、18c…ガイドロール、18d…ガイドロール、18eガイドロール、18f…ガイドロール、19…接着剤塗布部、20…乾燥炉、21…第1押出部、22…第2押出部、23…Tダイ、24…ニップロール、25…冷却ロール、26…巻取ロール。