(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220720BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2018127611
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慶太
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013639(JP,A)
【文献】特開2007-156276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0247789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着装置と、
前記定着装置によって定着されるトナー像を形成する画像形成部と、を備え、
前記定着装置は、
芯金と、当該芯金の外周面を覆う弾性部
とを有する加圧ローラーと、
前記加圧ローラーに対向し、前記弾性部を押圧することで定着ニップ部を形成する加圧部と、
前記加圧ローラーと当接して回転することにより前記加圧ローラーの回転を補助する回転補助部
と、
前記加圧ローラーと前記回転補助部とが当接する当接状態と、前記加圧ローラーと前記回転補助部とが離間した離間状態とを切り替える圧接離間機構と、
前記回転補助部を回転させる駆動部と、を含み、
前記圧接離間機構および前記駆動部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記回転補助部が前記加圧ローラーに当接された状態のまま前記加圧ローラーが回転し始める際に、前記回転補助部が回転するように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記加圧ローラーの回転速度が所定の速度に達した際に前記回転補助部が前記加圧ローラーから離間するように前記圧接離間機構を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記弾性部は、多孔質である、請求項1に記載の
画像形成装置。
【請求項3】
前記定着装置は、回転可能に構成され、前記加圧ローラーと対向配置された無端状の定着ベルトをさらに
含み、
前記加圧部は、前記定着ベルトの内周側に配置され、前記定着ベルトを介して前記加圧ローラーを押圧するパッド部を含む、請求項1または請求項2に記載の
画像形成装置。
【請求項4】
前記回転補助部は、少なくとも1つ以上の回転補助ローラーを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の
画像形成装置。
【請求項5】
前記回転補助ローラーは、芯金と、前記芯金を覆う弾性層とを含み、
前記弾性層の表面硬度は、前記加圧ローラーの表面硬度よりも小さい、請求項4に記載
の
画像形成装置。
【請求項6】
前記回転補助部は、複数の巻回ローラーと、前記複数の巻回ローラーによって巻回され
た回転補助ベルトとを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の
画像形成装置。
【請求項7】
前記回転補助部の前記加圧ローラーへの食い込み量は、前記定着ニップ部における前記加圧部の前記加圧ローラーへの食い込み量よりも小さい、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の
画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記回転補助部および前記加圧ローラーが離間し、かつ、前記加圧部が前記弾性部を押圧した状態における前記加圧ローラーのトルクよりも、前記回転補助部および前記加圧ローラーが当接し、かつ、前記加圧部が前記弾性部を押圧した状態における前記加圧ローラーのトルクが小さくなるように前記駆動部を制御す
る、請求項
1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着装置は、前記加圧ローラーを回転させるサーボモーターを含み、
前記制御部は、前記サーボモーターから前記加圧ローラーのトルクを検出し、検出した
トルクに応じて前記駆動部を制御する、請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記定着装置は、前記加圧ローラーを回転させるパルスモーターと、前記パルスモーターに取付けられ、前記加圧ローラーのトルクを検出するトルク検出部とを含み、
前記制御部は、前記トルク検出部によって検出されたトルクに応じて前記駆動部を制御
する、請求項
8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芯金および上記芯金を覆う弾性層を有する加圧部材と、上記加圧部材に対向配置されニップ部を形成する定着部材とを備える定着装置が、たとえば、特開2012-159865号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される定着装置において、上記加圧部材が上記定着部材に押圧された状態で回転すると、加圧部材の弾性層の外周には、定着部材との摩擦に起因して、加圧部材の回転方向と反対の方向に応力が作用する。一方、加圧部材の弾性層の内周には、芯金の回転に起因して加圧部材の回転方向に応力が作用する。このように、弾性層の外周側および内周側に反対方向の力が作用し、弾性層にせん断応力が作用する。上記せん断応力が作用することにより、弾性層が破断する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、加圧ローラーの弾性層に作用するせん断応力を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る定着装置は、加圧ローラーと、加圧部と、回転補助部とを備えている。上記加圧ローラーは、弾性部を有している。上記加圧部は、上記加圧ローラーに対向している。上記加圧部は、上記弾性部を押圧することで定着ニップ部を形成している。上記回転補助部は、上記加圧ローラーと当接して回転することにより上記加圧ローラーの回転を補助する。
【0007】
上記定着装置において、上記弾性部は、多孔質である。
上記定着装置は、無端状の定着ベルトをさらに備えている。上記定着ベルトは、回転可能に構成されている。上記定着ベルトは、上記加圧ローラーと対向配置されている。上記加圧部は、上記定着ベルトの内周側に配置されている。上記加圧部は、上記定着ベルトを介して上記加圧ローラーを押圧するパッド部を含む。
【0008】
上記定着装置において、上記回転補助部は、少なくとも1つ以上の回転補助ローラーを含む。
【0009】
上記定着装置において、上記回転補助ローラーは、芯金と、上記芯金を覆う弾性層とを含む。上記弾性層の表面硬度は、上記加圧ローラーの表面硬度よりも小さい。
【0010】
上記定着装置において、上記回転補助部は、複数の巻回ローラーと、上記複数の巻回ローラーによって巻回された回転補助ベルトとを含む。
【0011】
上記定着装置において、上記回転補助部の上記加圧ローラーへの食い込み量は、上記定着ニップ部における上記加圧部の上記加圧ローラーへの食い込み量よりも小さい。
【0012】
本開示に係る画像形成装置は、上記のいずれかの局面の定着装置と、上記定着装置によって定着されるトナー像を形成する画像形成部とを備えている。
【0013】
上記画像形成装置において、上記定着装置は、上記加圧ローラーおよび上記回転補助部の当接状態と離間状態とを切り替える圧接離間機構と、上記回転補助部を回転させる駆動部とを含む。上記画像形成装置は、上記圧接離間機構および上記駆動部を制御する制御部をさらに備えている。上記制御部は、上記回転補助部が上記加圧ローラーに当接された状態のまま上記加圧ローラーが回転し始める際に、上記回転補助部が回転するように上記駆動部を制御する。上記制御部は、上記加圧ローラーの回転速度が所定の速度に達した際に上記回転補助部が上記加圧ローラーから離間するように上記圧接離間機構を制御する。
【0014】
上記画像形成装置において、上記定着装置は、上記回転補助部を回転させる駆動部を含む。上記画像形成装置は、制御部をさらに備える。上記制御部は、上記回転補助部および上記加圧ローラーが離間し、かつ、上記加圧部が上記弾性部を押圧した状態における上記加圧ローラーのトルクよりも、上記回転補助部および上記加圧ローラーが当接し、かつ、上記加圧部が上記弾性部を押圧した状態における上記加圧ローラーのトルクが小さくなるように上記駆動部を制御する。
【0015】
上記画像形成装置において、上記定着装置は、上記加圧ローラーを回転させるサーボモーターを含む。上記制御部は、上記サーボモーターから上記加圧ローラーのトルクを検出し、検出したトルクに応じて上記駆動部を制御する。
【0016】
上記画像形成装置において、上記定着装置は、上記加圧ローラーを回転させるパルスモーターと、トルク検出部とを含む。上記トルク検出部は、上記パルスモーターに取付けられ、上記加圧ローラーのトルクを検出する。上記制御部は、上記トルク検出部によって検出されたトルクに応じて上記駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本開示では、加圧ローラーの弾性層に作用するせん断応力を抑制できる画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1の画像形成装置の概略図である。
【
図3】非通紙部が表面処理された加圧ローラーを示す概略斜視図である。
【
図4】非通紙部に凹凸が形成された回転補助ローラーを示す概略斜視図である。
【
図5】実施の形態1の第二駆動部の構成を示す概略図である。
【
図6】実施の形態1の制御方法を示す概略図である。
【
図8】実施の形態2の第二駆動部を示す概略図である。
【
図9】実施の形態2の第二駆動部および加圧ローラーの概略斜視図である。
【
図10】実施の形態2の制御方法を示す概略図である。
【
図14】実施例1から実施例7、および比較例1から比較例3の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、画像形成装置として、電子写真方式を採用したいわゆるタンデム型のカラープリンターおよびこれに具備された画像形成装置を例示して説明を行なう。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
<画像形成装置100>
図1は、実施の形態1の画像形成装置100の概略図である。
図1を参照して、実施の形態1の画像形成装置100の概略的な構成および動作について説明する。
【0021】
画像形成装置100は、装置本体72と、収容部9と、制御装置101とを主として備えている。装置本体72は、記録媒体としての用紙Sに画像を形成するための部位である画像形成部72Aと、画像形成部72Aに用紙Sを供給するための部位である給紙部72Bとを含んでいる。収容部9は、画像形成部72Aおよび後述する定着装置1に供給するための用紙Sを収納するものであり、給紙部72Bに着脱自在に設けられている。
【0022】
画像形成装置100の内部には、複数のローラー3が設置されており、これにより用紙Sが所定の方向に沿って搬送される搬送経路4が、上述した画像形成部72Aおよび給紙部72Bに跨って構築されている。
図1中に示すように、装置本体72には、画像形成部72Aに用紙Sを供給するための手差しトレイ9aが別途設けられていてもよい。
【0023】
画像形成部72Aは、たとえばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像を形成可能な作像ユニット75と、当該作像ユニット75に含まれる感光体を露光するための露光ユニット76と、作像ユニット75に張架された中間転写ベルト7aと、搬送経路4上であってかつ中間転写ベルト7aの走路上に設けられた転写部7と、クリーニング部78と、転写部7よりも下流側の部分の搬送経路4上に設けられた、定着装置1とを主として備えている。画像形成部72Aは、定着装置1によって定着されるトナー像を形成する。
【0024】
制御装置101は、画像形成装置100全体を制御する。制御装置101は、露光ユニット76に用紙Sに形成される画像に応じた信号を送信する。露光ユニット76は、制御装置101からの信号に基づいて、各色の露光手段(ポリゴンミラーとレーザー用いたものやLEDのライン発光素子)のそれぞれを駆動させる。
【0025】
作像ユニット75は、露光ユニット76からの露光を受けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像あるいはブラック(K)のみからなるトナー像を感光体の表面に形成し、これを中間転写ベルト7aに転写する(いわゆる一次転写)。これにより、中間転写ベルト7aには、カラートナー像あるいはモノクロトナー像が形成されることになる。
【0026】
中間転写ベルト7aは、その表面に形成されたカラートナー像あるいはモノクロトナー像を転写部7へと移送し、給紙部72Bから転写部7へと搬送されてきた用紙Sとともに転写部7において圧接される。これにより、中間転写ベルト7aの表面に形成されたカラートナー像あるいはモノクロトナー像が用紙Sへと転写される(いわゆる二次転写)。
【0027】
転写部7により用紙Sにカラートナー像あるいはモノクロトナー像を転写した後、用紙Sを曲率分離した中間転写ベルト7aは、クリーニング部78により残留トナーが除去される。
【0028】
カラートナー像あるいはモノクロトナー像が転写された用紙Sは、その後、定着装置1によって加圧および加熱され、用紙S上に形成されたトナー像が定着される。これにより、用紙Sにカラー画像あるいはモノクロ画像が形成されることになり、当該カラー画像あるいはモノクロ画像が形成された用紙Sは、その後、装置本体72から排出される。
【0029】
(定着装置1)
図2は、実施の形態の定着装置1の概略図である。
図2では、ギヤを点線で図示している(以下の図において同じ)。定着装置1は、加圧ローラー2と、第二駆動部6と、加圧部90と、回転可能に構成された無端状の定着ベルト8と、加熱ローラー10とを備えている。
【0030】
加圧ローラー2は、芯金2aと、芯金2aを覆う弾性部2bとを有している。弾性部2bは、多孔質のシリコーンゴム層である。弾性部2bの厚みは、たとえば10[mm]である。芯金2aは、たとえば厚さ5[mm]のアルミニウムによって円筒状に構成されている。弾性部2bを含む加圧ローラー2の径は、たとえば40[mm]である。
【0031】
第二駆動部6は、ギヤ6a、ギヤ6b、およびギヤ6cを介して加圧ローラー2に連結されている。第二駆動部6は、加圧ローラー2を回転させる。第二駆動部6は、たとえばACサーボモーターである。第二駆動部6は、パルスモーターでもよい。
【0032】
加圧ローラー2の表面速度は、たとえば200[mm/sec]である。加圧ローラー2は、第二駆動部6によって
図2中のC方向に回転駆動する。定着ベルト8は、加圧ローラー2に従動して、加圧ローラー2の回転方向と反対回りに回転する(
図2中のA方向)。
【0033】
定着ベルト8は、加圧ローラー2と対向配置されている。定着ベルト8は、加熱ローラー10および加圧部90によって、所定のテンションで張架されている。定着ベルト8は、基材と、上記基材の表面(外周面)上に積層された弾性層と、弾性層の表面(外周面)上に積層された離型層とを有している。
【0034】
上記基材の厚みは、たとえば70[μm]である。上記基材の材料は、ポリイミドである。上記基材は、たとえば外径250[mm]の円筒状に構成されている。上記弾性層の厚みは、たとえば200[μm]である。上記弾性層の材料は、シリコーンゴムである。上記離型層の厚みは、たとえば30[μm]である。上記離型層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のチューブによって構成されている。定着ベルト8の熱容量は比較的小さい。
【0035】
加熱ローラー10は、円筒状の形状を有している。加熱ローラー10は、たとえば、円筒状の芯金の外周面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コートが積層されている。加熱ローラー10の外径は、たとえば70[mm]である。加熱ローラー10の芯金は、厚みが1[mm]のアルミニウム板によって構成されている。加熱ローラー10の熱容量は、比較的小さい。
【0036】
加熱ローラー10内部には、図示しない複数のヒーターランプが設けられている。ヒーターランプは、たとえばハロゲンヒーターランプであり、加熱ローラー10の軸心を中心に等しい間隔をあけて配置されている。ヒーターランプの定格電力は、たとえば合計1500[W]である。
【0037】
ヒーターランプは、加熱ローラー10を加熱し、加熱ローラー10は、加熱ローラー10に巻き掛けられている定着ベルト8を加熱する。加熱された定着ベルト8は、定着ニップNを通過する記録媒体を加熱する。
【0038】
加熱ローラー10の近傍には、加熱ローラー10に巻き掛けられた定着ベルト8の表面温度を検出する温度センサー(図示しない)が設けられている。温度センサーは、たとえば、非接触センサー(サーモパイル)である。温度センサーは、加熱ローラー10のうち定着ベルト8が巻き掛かっている部分に対して定着ベルト8の回転方向(
図2中のA方向)の上流側に対向配置されている。
【0039】
加圧部90は、加圧ローラー2(弾性部2b)に対向している。加圧部90は、加圧ローラー2の弾性部2bを押圧することで定着ニップ部Nを形成する。加圧部90は、定着ベルト8の内周側に配置されている。加圧部90は、図示しないサイドシャーシーに固定されている。加圧部90は、第一パッド部91および第二パッド部92を有するパッド部93と、剛体からなるパッドホルダー94とを含んでいる。
【0040】
パッドホルダー94の材料は、たとえばアルミニウムである。パッドホルダー94の材料は、鉄、SUS、および耐熱性のある樹脂などでもよい。パッドホルダー94のうち定着ベルト8の内周面と接触する部分の一部は、定着ベルト8がパッドホルダー94の形状に沿うように、曲面で構成されている。パッドホルダー94には、溝部93aが形成されている。溝部93aは、加圧ローラー2が配置されている方向と反対の方向に窪んでいる。弾性のパッド部93が溝部93aにはめ込んで固定されている。
【0041】
加圧部90と定着ベルト8の内周面との間には、図示しない摺動部材が固定されている。摺動部材は、加圧部90と定着ベルト8の内周面との間に生じる摩擦力を軽減する。摺動部材は、パッドホルダー94のニップ上流側の曲面から、パッド部93、さらにパッドホルダー94のニップ下流側の曲面に至るまでの領域を覆うように設置されている。摺動部材は、フッ素系の樹脂を含浸した不織布などが好ましいが、フッ素樹脂の織物で形成したシートなどでもかまわない。
【0042】
パッド部93は、パッドホルダー94を基体として構成されている。パッド部93は、定着ベルト8を介して加圧ローラー2を押圧する。パッド部93は、熱伝導率が低い。
【0043】
第二パッド部92は、第一パッド部91よりも固い。第二パッド部92は、第一パッド部91を囲うように構成している。第一パッド部91および第二パッド部92は、たとえば、シリコーンゴム材であるが、フッ素ゴムなどでもよい。
【0044】
第二パッド部92の材料は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、またはポリエーテルサルフォン(PES)などでもよい。第一パッド部91の加圧ローラー2に向く面は、加圧ローラー2の表面形状に倣うように凹状(第二パッド部92側に凸形状)の形状を有している。
【0045】
定着ニップ部Nの下流部において、第二パッド部92は、第一パッド部91よりも加圧ローラー2側に突出している(
図2中のB参照)。これにより、定着ニップ部Nの出口におけるニップ圧は、定着ニップ部Nの入口におけるニップ圧よりも大きくなる。したがって、定着強度および記録媒体の分離性が向上する。
【0046】
(回転補助部30)
定着装置1は、回転補助部30をさらに含んでいる。回転補助部30は、回転補助ローラー31を含んでいる。回転補助ローラー31は、円筒状である。回転補助ローラー31は、芯金31aと、芯金31aを覆う弾性層32とを有している。
【0047】
弾性層32の材料は、シリコーンゴムである。弾性層32の厚みは、たとえば8[mm]である。弾性層32の硬度は、たとえば20度(AskerC)である。弾性層32の表面硬度は、加圧ローラー2の表面硬度よりも小さい。
【0048】
定着装置1は、駆動部5と、駆動部5の駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、圧接離間機構50とをさらに含んでいる。駆動部5は、回転補助部30(回転補助ローラー31)を回転させる。駆動部5は、ACサーボモーターでもよいし、パルスモーターでもよい。駆動部5は、外部からの信号を受けて、回転補助ローラー31の回転速度または回転補助ローラー31の回転トルクを変更できる。
【0049】
駆動力伝達機構は、複数のギヤによって構成されている。複数のギヤは、駆動ギヤ54、ギヤ55、およびギヤ56を有している。回転補助ローラー31の軸方向における端部には駆動ギヤ54が設けられている。回転補助ローラー31は、駆動ギヤ54、ギヤ55、およびギヤ56を介して駆動部5と連結している。駆動部5は、ギヤ56、ギヤ55、および駆動ギヤ54を介して、回転補助ローラー31に駆動伝達する。
【0050】
圧接離間機構50は、加圧ローラー2および回転補助部30の当接状態と離間状態とを切り替える。圧接離間機構50は、シャーシー51と偏芯カム52と回動軸53とをさらに有している。回転補助ローラー31は、図示しないベアリング等によりシャーシー51に固定されている。シャーシー51は、回動軸53を中心に回動可能に固定されている。
【0051】
偏芯カム52は、図示しない駆動源(モーター等)によって駆動される。偏芯カム52の回転によってシャーシー51が回動軸53を中心に回動する。これにより、加圧ローラー2および回転補助ローラー31の当接状態と離間状態とを切り替えることができる。
【0052】
加圧ローラー2および回転補助部30が当接状態にあるとき、回転補助ローラー31は、加圧ローラー2の弾性部2bに食い込むことになる。加圧ローラー2への回転補助ローラー31の食い込み量は、定着ニップ部Nにおける加圧ローラー2へのパッド部93の食い込み量よりも小さい。
【0053】
回転補助ローラー31に対向する弾性部2bの圧縮率(弾性部2bの厚みに対して圧縮した量を表す比率)は、パッド部93に対向する(定着ニップ部Nにおける)弾性部2bの圧縮率よりも小さい。
【0054】
回転補助ローラー31は、加圧ローラー2の回転方向(
図2中のC方向)と反対回りの方向に回転する(
図2中のD方向)。回転補助部30(回転補助ローラー31)は、加圧ローラー2と当接して回転することにより加圧ローラー2の回転を補助(アシスト)する。
【0055】
回転補助ローラー31が、加圧ローラー2に当接して回転することにより、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との間に加圧ローラー2の回転方向に作用する摩擦力(
図2中のG)が生じる。上記摩擦力により、回転補助ローラー31は、加圧ローラー2が
図2中のC方向に回転することを補助できる。これにより、回転補助ローラー31は、加圧ローラー2の回転負荷(回転トルク)を低減することができる。
【0056】
(回転補助部30と加圧ローラー2との摩擦力を向上させる手法)
回転補助ローラー31と加圧ローラー2との間に生じる上記摩擦力が小さい場合、回転補助ローラー31の駆動を加圧ローラー2に効果的に伝達できず、回転補助ローラー31が加圧ローラー2の回転を効果的に補助できない場合がある。
【0057】
上記摩擦力を大きくする手段として、以下のような方法がある。回転補助ローラー31の表面に形成する弾性層を厚めに設定し、かつ、回転補助ローラー31の表面硬度を加圧ローラー2の弾性部2b(多孔質ゴム)よりも軟らかく設定する方法である。これにより、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との間のニップ面積を大きくすることができる。したがって、上記摩擦力が大きくなる。
【0058】
さらに、別の方法として、加圧ローラー2の表面、および回転補助ローラー31の表面の材料(表面処理)、並びに表面粗さを調整する方法がある。しかし、弾性部2bの表面に生じる上記摩擦力が大きくなるように調整した場合、弾性部2bと用紙Sとの付着力が大きくなり、定着動作中に加圧ローラー2に用紙Sが巻き付き、ジャムが発生する場合がある。
【0059】
図3は、非通紙部Mが表面処理された加圧ローラー2を示す概略斜視図である。上記ジャムの発生を抑制するため、加圧ローラー2の弾性部2bの非通紙部M(用紙Sが通過する領域よりも外側の部分)においてのみ、弾性部2bの表面に生じる摩擦力が大きくなるように表面処理を行うことが好ましい。
【0060】
図3では、加圧ローラー2の軸方向における端部(非通紙部M)に、タック性の高いシリコンゴム材料をコーティングしている。これにより、上記端部において、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との摩擦力が大きくなる。
【0061】
なお、回転補助ローラー31の非通紙部に、上記と同様の表面処理を行ってもかまわない。
【0062】
図4は、非通紙部Lに凹凸が形成された回転補助ローラー31を示す概略斜視図である。回転補助ローラー31の軸方向における端部には、非通紙部Lが設けられている。非通紙部Lには、回転補助ローラー31の軸方向に沿った凹凸からなる複数の溝が形成されている。
【0063】
上記溝の幅は、たとえば約1[mm]であり、上記溝の深さは、たとえば0.5[mm]である。上記溝の間隔は、たとえば約1[mm]である。非通紙部Lに複数の溝を形成することにより、溝の凹部に加圧ローラー2の弾性部2bが食込むことになる。これにより、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との間に生じる摩擦力が大きくなる。
【0064】
図3および
図4で示したように加圧ローラー2もしくは回転補助ローラー31の非通紙部に表面処理、または加工を施すことにより、非通紙部の摩擦力を大きくすることができる。これにより、ジャムの発生を抑制した上で、回転補助ローラー31が加圧ローラー2の回転を効果的に補助することができる。
【0065】
(回転補助ローラー31の制御方法)
回転補助ローラー31が加圧ローラー2の回転を補助する制御方法について、以下に説明する。まず、第二駆動部6の構成について詳細に説明する。
【0066】
図5は、実施の形態1の第二駆動部6の構成を示す概略図である。実施の形態1において、第二駆動部6は、サーボモーター20である。サーボモーター20は、加圧ローラー2を回転させる。
【0067】
サーボモーター20は、モーター21と、モーター21に内蔵されたエンコーダー22と、駆動回路部23とを有している。モーター21は、ギヤを介して、加圧ローラー2と連結している。モーター21の駆動電流(励磁電流)は、モーター21のトルクに比例している。
【0068】
駆動回路部23は、モーター21と電気的に接続されている。駆動回路部23は、モーター21に電力を供給してモーター21を制御する。駆動回路部23は、モーター21の発生トルクを電圧信号として取り出すことができる。
【0069】
エンコーダー22は、駆動回路部23と電気的に接続されている。エンコーダー22は、モーター21の回転角度および回転速度に応じたパルスを駆動回路部23に出力する。モーター21の回転角度や速度は、駆動回路部23にフィードバックされるようになっている。
【0070】
サーボモーター20は、目標速度を指定すると目標速度となるようにモーター21が駆動される速度制御モード、および、目標トルクを指定すると目標トルクとなるようにモーター21が駆動されるトルク制御モードを有している。
【0071】
駆動回路部23は、目標速度信号を入力する速度指令端子24と、目標トルク信号を入力するトルク指令端子25と、トルクモニター出力端子26と、速度モニター出力端子27とを有している。
【0072】
トルクモニター出力端子26は、モーター21のトルクに比例する信号を出力する。これにより、リアルタイムで加圧ローラー2を回転させるモーター21のトルクを知ることができる。速度モニター出力端子27は、モーター21の回転速度に比例する信号を出力する。これにより、リアルタイムで加圧ローラー2を回転させるモーター21の回転速度を知ることができる。
【0073】
駆動回路部23によって、モーター21、すなわち、加圧ローラー2は、一定速度を保つように制御される。サーボモーター20は、定速制御することができる。加圧ローラー2に多少の外部要因による負荷があったとしても、サーボモーター20においては、一定速度でモーター21を回転させることができる。
【0074】
図6は、実施の形態1の制御方法を示す概略図である。駆動部5にもサーボモーターを使用している。以下、駆動部5のサーボモーターをサーボモーター20bとする。サーボモーター20bの構成は、サーボモーター20と同じである(たとえばモーター21に対応するサーボモーター20bの構成はモーター21bである)。画像形成装置100が備える制御部40は、サーボモーター20から加圧ローラー2のトルクを検出し、検出したトルクに応じて駆動部5を制御することができる。
【0075】
図6では、駆動回路部23は、速度制御モードとして機能している。速度指令端子24にモーター21の目標の回転速度値を入力することで、駆動回路部23は、モーター21を目標の回転速度で駆動する。速度モニター出力端子27によって、モーター21の回転速度が常にモニターされるようになっており、駆動回路部23は、速度指令端子24からの指令速度を保つようにモーター21を制御する。
【0076】
駆動回路部23は、トルクに比例する信号(電圧)をトルクモニター出力端子26から出力する。電圧による出力によって、モーター21(加圧ローラー2)のトルク値が把握される。上記の出力値は、制御部40に入力される。
【0077】
制御部40は、メモリー部41に格納された目標トルク値と、上記の出力値とを比較し、比較結果に基づいて駆動部5(モーター21b)を制御する。上記目標トルク値は、回転補助ローラー31および加圧ローラー2が離間した状態であって、かつ、加圧部90が弾性部2bを押圧した状態における、加圧ローラー2(モーター21)のトルク値(上記トルク値を電圧に換算した値をVrefとする)よりも小さい値が設定されている。制御部40は、Vrefよりも小さい値(目標トルク値)になるように駆動部5を制御する。
【0078】
トルクモニター出力端子26からの出力値が目標トルク値よりも大きい場合、制御部40は、速度指令端子24bまたはトルク指令端子25bを通じて、モーター21bの回転速度または回転トルクを大きくするような指令を駆動回路部23bに送信する。駆動回路部23bは、上記信号を受けて、加圧ローラー2のトルク値が目標トルク値よりに近づくように、モーター21bの回転速度または回転トルクを大きくするように制御する。
【0079】
これにより、モーター21bと連結した回転補助ローラー31の回転速度または回転トルクが大きくなる。したがって、回転補助ローラー31が、加圧ローラー2の回転を補助することになる。そのため、加圧ローラー2の回転負荷は小さくなり、トルクモニター出力端子26からの出力値は小さくなる。
【0080】
一方、トルクモニター出力端子26からの出力値が上記目標値よりも小さいとき、制御部40は、速度指令端子24bまたはトルク指令端子25bを通じて、モーター21bの回転速度または回転トルクを小さくするような指令を駆動回路部23bに送信する。駆動回路部23bは、上記信号を受けて、加圧ローラー2のトルク値が目標トルク値よりに近づくように、モーター21bの回転速度または回転トルクを小さくするように制御する。
【0081】
これにより、モーター21bと連結した回転補助ローラー31の回転速度または回転トルクが小さくなり、回転補助ローラー31の、加圧ローラー2の回転を補助する寄与分が小さくなる。したがって、加圧ローラー2の回転負荷は大きくなり、トルクモニター出力端子26からの出力値は大きくなる。
【0082】
なお、上記制御方法において、回転補助ローラー31が加圧ローラー2の回転を補助することに起因して、モーター21(加圧ローラー2)の回転数は変動しない構成となっている。
【0083】
制御部40は、圧接離間機構50を制御して、回転補助ローラー31および加圧ローラー2の当接状態と離間状態とを切り替える。制御部40は、回転補助ローラー31が加圧ローラー2に当接された状態のまま加圧ローラー2が回転し始める際に、回転補助ローラー31が回転するように駆動部5(サーボモーター20b)を制御する。制御部40は、加圧ローラー2の回転速度が所定の速度に達した際に、回転補助ローラー31が加圧ローラー2から離間するように圧接離間機構50を制御する。
【0084】
なお、制御部40は、加圧ローラー2の回転開始時から継続して定着動作中にも回転補助ローラー31を加圧ローラー2に圧接するように圧接離間機構50を制御してもよい。
【0085】
(作用効果)
図2に示すように、加圧ローラー2は、第二駆動部6によって
図2中のC方向に回転駆動している。加圧ローラー2は、定着ベルト8を押圧しながら回転しているため、定着ベルト8は、加圧ローラー2の回転を妨げる。
【0086】
定着ニップ部Nにおいて、加圧ローラー2の弾性部2bには、定着ベルト8の外周面との間で加圧ローラー2の回転方向と反対の方向に、摩擦力に起因する応力が作用する(
図2中の白抜き矢印E)。一方、加圧ローラー2の芯金2aは、
図2中のC方向に回転しているため、芯金2aと弾性部2bとの境界近傍において、弾性部2bには加圧ローラー2の回転方向に応力が作用する(
図2中の白抜き矢印F)。これにより、定着ニップ部Nにおける弾性部2bにはせん断応力が作用する。
【0087】
実施の形態1において、回転補助ローラー31が加圧ローラー2に対向して配置されている。回転補助ローラー31が加圧ローラー2に当接して、加圧ローラー2と反対の方向に回転することにより、加圧ローラー2の弾性部2bの回転を補助することになる。
【0088】
これにより、加圧ローラー2と連結した第二駆動部6が発生するトルクを小さくすることができる。したがって、芯金2aと弾性部2bとの境界近傍において弾性部2bに作用する加圧ローラー2の回転方向の応力も小さくなる(
図2中の白抜き矢印F)。そのため、定着ニップ部Nにおける弾性部2bのせん断応力を低減することができる。
【0089】
定着ニップ部Nにおける弾性部2bのせん断応力を低減することにより、弾性部2bの破断(芯金2aと弾性部2bとの境界近傍での破断)を抑制することができる。これにより、加圧ローラー2の寿命を向上させることができる。したがって、長寿命な定着装置1を実現することができる。
【0090】
多孔質ゴムはセル構造であり空気を取り込みやすい構造であるため、熱伝導率が低い。さらに、多孔質ゴムは、密度および熱容量が小さいため断熱性が大きい。したがって、弾性部2bに多孔質ゴムを用いた場合には、定着装置1の省エネ性を向上することができる。
【0091】
一方、多孔質ゴムには発泡材などが使用されており、多孔質ゴムには微細で高密度な孔が形成されている。このため孔の状態(大きさや分布)によっては応力が集中し、容易に破断する場合がある。一般に、ソリッドゴムに比べると破断強度は低い。
【0092】
弾性部2bが多孔質ゴムである場合、上記孔の中の空気がパッド部93と弾性部2bとの圧接により圧縮され、圧縮された空気が抜けてしまうため、弾性部2bは、凹んだ状態となる。これにより、加圧ローラー2の回転開始時に大きな回転負荷が加圧ローラー2に発生する場合がある。
【0093】
弾性部2bが多孔質ゴムであり加圧ローラー2に大きな回転負荷が発生した場合であっても、回転補助ローラー31を用いることにより、加圧ローラー2の回転を補助することができる。これにより、加圧ローラー2の回転負荷を小さくすることができる。したがって、定着ニップ部Nにおける弾性部2bのせん断応力を低減することができる。そのため、弾性部2bの破断を抑制することができる。
【0094】
上記のように、弾性部2bに多孔質ゴムを使用しても、回転補助ローラー31を用いることにより、長寿命な定着装置1を実現することができる。
【0095】
加圧部90がパッド部93を含む構成であることにより、定着ニップ部Nを形成する面の形状を自由に設計することができる。これにより、トナー像の定着および用紙Sの分離に最適なニップ圧力分布を設定することができる。したがって、定着性能を向上することができる。
【0096】
弾性層32の表面硬度は、加圧ローラー2の表面硬度よりも小さい。これにより、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との間のニップ面積を大きくすることができる。したがって、加圧ローラー2と回転補助ローラー31との間に生じる摩擦力が大きくなる。上記摩擦力が大きくなることにより、回転補助ローラー31が加圧ローラー2(弾性部2b)の回転を補助しやすくなる。
【0097】
回転補助ローラー31が加圧ローラー2に負荷する圧力が大きいほど、回転補助ローラー31の駆動力が確実に加圧ローラー2に伝わるが、圧力が大きすぎると、弾性部2bにストレスを付加することになる。
【0098】
回転補助ローラー31が弾性部2bを圧縮すると、その圧縮応力に起因して、弾性部2bと芯金2aとの境界部分のうち回転補助ローラー31に対向する部分のせん断応力が大きくなる。定着ニップ部Nにおいてもパッド部93を弾性部2bに押圧することに起因するせん断応力が発生している。定着ニップ部Nにおける弾性部2bのせん断応力よりも、回転補助ローラー31に対向する弾性部2bのせん断応力が大きいと、弾性部2bが破断する場合がある。
【0099】
パッド部93が弾性部2bを圧縮する量よりも、回転補助ローラー31が弾性部2bを圧縮する量を小さくすることにより、弾性部2bの破断を回避することができる。
【0100】
図6を参照して、制御部40は、加圧ローラー2が回転を停止している時は回転補助ローラー31を加圧ローラー2から離間するように圧接離間機構50を制御することが好ましい。加圧ローラー2の停止状態で弾性部2bを圧接すると、弾性部2bの表面が凹んだままの状態で残る場合があるためである。
【0101】
制御部40は、加圧ローラー2が回転する直前に回転補助ローラー31を加圧ローラー2に圧接させて、加圧ローラー2が回転すると同時に回転補助ローラー31を回転させるように駆動部5および圧接離間機構50を制御することが好ましい。さらに、制御部40は、加圧ローラー2の回転速度が一定に達した際に、回転補助ローラー31を加圧ローラー2から離間させるように圧接離間機構50を制御することが好ましい。
【0102】
上記のように制御することにより、弾性部2bが凹状に変形することを抑制した上で、弾性部2bに作用するせん断応力を抑制することができる。
【0103】
制御部40は、Vrefよりも、回転補助部30および加圧ローラー2が当接し、かつ、加圧部90が弾性部2bを押圧した状態における加圧ローラー2のトルクが小さくなるように駆動部5を制御する。これにより、定着ニップ部Nにおいて弾性部2bに作用するせん断応力を確実に抑制することができる。
【0104】
第二駆動部6としてサーボモーター20を用いることにより、サーボモーター20の構成として含まれるトルクモニター出力端子26から、モーター21すなわち加圧ローラー2の回転トルクをモーター21に印加される電圧として検出することができる。そのため、パルスモーターと比較して、後述するトルク検出部64を別途構成しなくてもよく、定着装置1の構成を簡素にすることができる。
【0105】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2の定着装置1の概略図である。実施の形態1の回転補助部30と異なり、実施の形態2の回転補助部30は、複数の回転補助ローラー31a,31bを有している。
図7では、実施の形態1の圧接離間機構50、および、駆動力伝達機構の一部を省略して図示している。
【0106】
回転補助ローラー31a,31bは、円筒状の芯金の表面に弾性層を有している。回転補助ローラー31a,31bの一端にはギヤが設けられており、回転補助ローラー31a,31bは互いにギヤで連結している。
【0107】
駆動部5は、ギヤを介して、駆動部5の駆動力を回転補助ローラー31bに伝達する。回転補助ローラー31bは、ギヤを介して、回転補助ローラー31bの駆動力を回転補助ローラー31aに伝達する。回転補助ローラー31aおよび回転補助ローラー31bは、ともに加圧ローラー2に当接している。回転補助ローラー31aおよび回転補助ローラー31bは、ともに加圧ローラー2の回転を補助する。
【0108】
図8は、実施の形態2の第二駆動部6を示す概略図である。実施の形態2において、第二駆動部6は、パルスモーター60である。実施の形態1のサーボモーター20とは異なり、実施の形態2のパルスモーター60では、実施の形態1のトルクモニター出力端子26に相当する部分が設けられていない。
【0109】
パルスモーター60は、モーター部61と、駆動回路部62と、コントローラー63とを有している。モーター部61は、駆動回路部62と電気的に接続されている。モーター部61は、駆動回路部62から送信されるパルス信号に応じて、決められた回転角度だけ回転する。モーター部61に一定周波数のパルス列を送信すると、その周波数に応じた回転速度でモーター部61が回転することになる。パルスモーター60では、フィードバック制御は行われない。
【0110】
コントローラー63は、駆動回路部62に電気的に接続されている。コントローラー63は、一定周波数のパルス列を駆動回路部62に送信する。コントローラー63に任意の速度を設定すると、コントローラー63は、その速度でモーター部61が駆動するような周波数のパルス列を発生させる。パルスモーター60は、コントローラー63が駆動回路部62に内蔵されている構成でもよい。
【0111】
図9は、実施の形態2の第二駆動部6および加圧ローラー2の概略斜視図である。実施の形態2の加圧ローラー2は、実施の形態1の加圧ローラー2と同様に、加圧ローラー用の駆動力伝達機構として構成された複数のギヤ(ギヤ6a、ギヤ6b、およびギヤ6c)を介して第二駆動部6と連結している。
【0112】
定着装置1は、トルク検出部64をさらに含んでいる。トルク検出部64は、パルスモーター60に取付けられている。パルスモーター60のモーター部61の軸と、加圧ローラー2に連結されるギヤとの間に、トルク検出部64が取り付けている。トルク検出部64は、加圧ローラー2(パルスモーター60)の回転トルクを検出する。トルク検出部64は、回転可能であり、モーター部61のトルクに比例した信号(電圧)を出力することができる。
【0113】
図10は、実施の形態2の制御方法を示す概略図である。コントローラー63は、目標速度で加圧ローラー2が回転するように駆動回路部62に一定周波数のパルス列を送信する。駆動回路部62は、加圧ローラー2が目標速度で回転するように、モーター部61を制御する。これにより、加圧ローラー2は、一定速度(目標速度)で回転する。トルク検出部64は、検出したモーター部61(加圧ローラー2)の回転トルク値に比例した信号を制御部40に送信する。
【0114】
実施の形態2の駆動部5は、実施の形態1と同様にサーボモーター20bであり、実施の形態2の制御部40は、実施の形態1の制御部40と同様に、駆動部5(サーボモーター20b)を制御する。
【0115】
トルク検出部64を設けることにより、パルスモーター60であっても、モーター部61が発生するトルクを検知することができる。これにより、弾性部2bに作用するせん断応力を小さくする制御を行なうことができる。
【0116】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3の定着装置1の概略図である。実施の形態3の回転補助部30は、実施の形態2の回転補助部30と異なり、複数の巻回ローラー33a,33bと、複数の巻回ローラー33a,33bによって巻回された回転補助ベルト34とを有している。
【0117】
巻回ローラー33a,33bは、円筒状の芯金の表面に弾性層を有している。巻回ローラー33a,33bは、回転補助ベルト34を張架している。回転補助ベルト34は、樹脂帆布を基材にして、上記基材の表面にウレタンゴムやシリコンゴムが形成されているものでもよい。
【0118】
巻回ローラー33aの一端にはギヤが設けられており、巻回ローラー33aは、駆動部5とギヤで連結されている。巻回ローラー33aは、回転補助ベルト34を介して巻回ローラー33bを駆動している。回転補助ベルト34は、加圧ローラー2に押し付けられている。巻回ローラー33aおよび巻回ローラー33bは、加圧ローラー2を押圧している。
【0119】
巻回ローラー33a,33bおよび回転補助ベルト34が加圧ローラー2を押圧することにより、回転補助部30が加圧ローラー2を押圧する部分の面積が大きくなる。上記面積が大きくなることにより、回転補助部30が加圧ローラー2を押圧する力が小さくても、回転補助部30は加圧ローラー2の回転を補助することができる。回転補助部30が加圧ローラー2を押圧する力を小さくすることにより、加圧ローラー2の耐久性を向上させることができる。
【0120】
(実施の形態4)
図12は、実施の形態4の定着装置1の概略図である。実施の形態4の加圧部90は、実施の形態1の加圧部90と異なり、対向ローラー99を含んでいる。対向ローラー99は、芯金99aと、芯金99aを覆う弾性層99bと、弾性層99bを覆う表面層99cとを有している。
【0121】
芯金99aは、円筒状であり、厚さ5[mm]のアルミニウムによって構成されている。弾性層99bの厚みは、たとえば1.5[mm]である。弾性層の材料は、シリコーンゴムである。表面層99cの厚みは、たとえば30[μm]であり、表面層の材料は、PFAである。これにより、対向ローラー99と用紙S上に形成されたトナー像との離形性を確保することができる。
【0122】
芯金99aの外径は、たとえば50[mm]である。対向ローラー99の内部には、図示しない複数のヒーターランプが設けられている。ヒーターランプは、たとえば、ハロゲンヒーターランプであり、対向ローラー99の軸心を中心に等しい間隔をあけて配置されている。
【0123】
対向ローラー99の駆動軸にはバネによって、加圧ローラー2を押圧する方向に380[N]以上900[N]以下の荷重がかけられている。ニップ幅(用紙Sの搬送方向における定着ニップ部Nの長さ)は、たとえば8[mm]である。ニップ長さ(加圧ローラー2の軸方向における定着ニップ部Nの長さ)は、たとえば320[mm]である。
【0124】
対向ローラー99は、駆動源によって直接駆動されない。対向ローラー99は、加圧ローラー2の回転により従動回転する。加圧ローラー2の弾性部2bの硬度は、たとえば26度(AskerC)である。
【0125】
実施の形態4の定着装置1においても、実施の形態1の定着装置1と同様に、弾性部2bの破断を抑制する効果が得られる。
【0126】
(実施の形態5)
図13は、実施の形態5の定着装置1の概略図である。実施の形態5の加圧部90は、実施の形態4の加圧部90と異なり、複数の張架ローラー98と、複数の張架ローラー98によって巻回された張架ベルト97とを含んでいる。張架ベルト97が複数の張架ローラー98とともに加圧ローラー2に押圧されることにより、定着ニップ部Nが形成される。
【0127】
実施の形態5の定着装置1においても、実施の形態1の定着装置1と同様に、弾性部2bの破断を抑制する効果が得られる。
【0128】
(検証試験)
実施例1から実施例7、および比較例1から比較例3において、実施の形態1から実施の形態4の加圧部および回転補助部を評価機に搭載し、それぞれの場合における加圧ローラーの寿命の違いを確認する試験を実施した。制御方法、および、回転補助部に対向する弾性部の圧縮率(弾性部の厚みに対して圧縮した弾性部の量を表す比率)を変更して試験を実施した。
【0129】
加圧ローラーの弾性部には、すべて同じ種類の多孔質ゴムを用いた。定着ニップ部における(加圧部に対向する)弾性部の圧縮率はすべて40%とした。システム速度(加圧ローラーの回転速度)は、200[mm/sec]とした。加圧ローラーの外径は、40[mm]とした。実施の形態4の対向ローラー99(実施例1および比較例1)の表面温度は、200[℃]とした。実施の形態1の定着ベルト8(実施例2から実施例7、比較例2、および比較例3)の表面温度は、190[℃]とした。評価機には通紙せず試験を実施した。各実施例および比較例においてVrefを測定した。Vrefが約30%低減するように目標値を定めて試験を実施した。
【0130】
図14は、実施例1から実施例7、および比較例1から比較例3の評価結果を示す図である。多孔質ゴムの寿命を効率よく見るため、耐久条件はやや過酷なものとした。多孔質ゴム(弾性部)が15hの間に破断しなかった場合を「可」、多孔質ゴムが15hの耐久時間までに破断した場合を「不可」とした。
【0131】
実施例1、実施例2、実施例4から実施例7、および比較例3について、実施の形態1の制御方法を採用した。すなわち、加圧ローラー2の第二駆動部6として、サーボモーター20を使用した。実施例3について、実施の形態2の制御方法を採用した。すなわち、加圧ローラー2の第二駆動部6として、パルスモーター60を使用した。比較例1および比較例2は、回転補助ローラーが加圧ローラーから常に離間している状態(OFF)で試験を実施した。
【0132】
比較例1、比較例2および比較例3において、それぞれ10h、8h、7hで多孔質ゴムが破断し、多孔質ゴムが芯金より剥離した。
【0133】
実施例1と比較例1において、実施の形態4の加圧部および回転補助部の構成(加圧部として上加圧ローラー、回転補助部として回転補助ローラー、
図12参照)を採用している。比較例1の多孔質ゴムは10hで破断したが、実施例1の多孔質ゴムは15hで破断しなかった。
【0134】
実施例2と比較例2において、実施の形態1の加圧部および回転補助部の構成(加圧部としてパッド部、回転補助部として回転補助ローラー、
図2参照)を採用している。比較例2の多孔質ゴムは8hで破断したが、実施例2の多孔質ゴムは15hで破断しなかった。
【0135】
上記の結果から、回転補助ローラー31を機能させることにより、弾性部2bの破断を抑制し、加圧ローラー2の寿命向上の効果が得られることがわかった。
【0136】
実施例3は、実施例2と異なる制御方法を採用しており、実施例3の多孔質ゴムにおいても実施例2の多孔質ゴムと同様に、15hで破断しなかった。これにより、第二駆動部6にパルスモーター60を採用しても(実施の形態2の制御方法でも)加圧ローラー2の寿命向上の効果が得られることが示された。
【0137】
実施例4および実施例5は、実施例2と同じ構成(加圧部としてパッド部、回転補助部として回転補助ローラー、
図2参照)であり、実施例4および実施例5の多孔質ゴムも実施例2の多孔質ゴムと同様に、15hで破断しなかった。
【0138】
比較例3は、実施例2と同じ構成であるが、回転補助部(回転補助ローラー)に対向する弾性部の圧縮率を定着ニップにおける弾性部の圧縮率よりも大きく設定(定着ニップにおける弾性部の圧縮率を50%)した結果、比較例3の多孔質ゴムは7hで破断した。回転補助ローラーに対向する弾性部の圧縮率を定着ニップにおける弾性部の圧縮率よりも小さくすることにより、加圧ローラー2の寿命向上の効果が得られることが示された。
【0139】
実施例6において、実施の形態2の加圧部および回転補助部の構成(加圧部としてパッド部、回転補助部として複数の回転補助ローラー、
図7参照)を採用している。実施例7において、実施の形態3の加圧部および回転補助部の構成(加圧部としてパッド部、回転補助部として巻回ローラーおよび回転補助ベルト34、
図11参照)を採用している。それ以外の条件は、実施例2と同じである。
【0140】
実施例6および実施例7の多孔質ゴムのいずれも15hでは破損しなかった。実施の形態2および実施の形態3の回転補助部30の構成においても、寿命向上の効果が得られることが示された。
【0141】
(その他)
なお、定着装置1は、複数の加圧部90を含んでいる構成であってもよい。
【0142】
今回開示された実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
1 定着装置、2 加圧ローラー、2a,31a,99a 芯金、2b 弾性部、3 ローラー、4 搬送経路、5 駆動部、6 第二駆動部、6a,6b,6c,55,56 ギヤ、7 転写部、7a 中間転写ベルト、8 定着ベルト、9 収容部、9a 手差しトレイ、10 加熱ローラー、20,20b サーボモーター、21,21b モーター、22 エンコーダー、23,23b,62 駆動回路部、24,24b 速度指令端子、25,25b トルク指令端子、26 トルクモニター出力端子、27 速度モニター出力端子、30 回転補助部、31,31a,31b 回転補助ローラー、32,99b 弾性層、33a,33b 巻回ローラー、34 回転補助ベルト、40 制御部、41 メモリー部、50 圧接離間機構、51 シャーシー、52 偏芯カム、53 回動軸、54 駆動ギヤ、60 パルスモーター、61 モーター部、63 コントローラー、64 トルク検出部、72 装置本体、72A 画像形成部、72B 給紙部、75 作像ユニット、76 露光ユニット、78 クリーニング部、90 加圧部、91 第一パッド部、92 第二パッド部、93 パッド部、93a 溝部、94 パッドホルダー、97 張架ベルト、98 張架ローラー、99 対向ローラー、99c 表面層、100 画像形成装置、101 制御装置、L,M 非通紙部、N 定着ニップ部、S 用紙。