(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】大断面トンネルの構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20220720BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20220720BHJP
E21D 13/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/06 301E
E21D13/02
E21D9/06 301D
(21)【出願番号】P 2018144212
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮元 克洋
(72)【発明者】
【氏名】足立 邦靖
(72)【発明者】
【氏名】磐田 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】屋代 勉
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008425(JP,A)
【文献】特開2017-155435(JP,A)
【文献】特開2006-348718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E21D 9/06
E21D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを囲繞する複数の外殻シールドトンネルを構築し、該外殻シールドトンネルの内部空間を利用して前記トンネルを覆う筒状の外殻部躯体を構築した後、該外殻部躯体の内方を掘削して、前記トンネルの一部分に大断面トンネルを構築する大断面トンネルの構築方法であって、
複数の前記外殻シールドトンネルの構築手順に、
前記トンネルから分岐して該トンネルの軸線直交方向に延在する発進坑を、前記外殻部躯体の構築予定位置の外側に到達するまで構築する発進坑構築工程と、
該発進坑から分岐して、前記トンネルの軸線直交方向と交差する方向に延在する外殻シールドトンネルを、前記外殻部躯体の構築予定位置に沿って構築する外殻トンネル構築工程と、を含み、
前記発進坑構築工程を繰り返し、前記トンネルから分岐する前記発進坑を放射状に複数構築するとともに、該発進坑各々において前記外殻トンネル構築工程を実施し、前記外殻部躯体の構築予定位置に複数の前記外殻シールドトンネルを構築し、
前記外殻トンネル構築工程は、前記発進坑から分岐して、対向する2方向に前記外殻シールドトンネルを構築する工程を含むことを特徴とする大断面トンネルの構築方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の大断面トンネルの構築方法において、
放射状に構築される複数の前記発進坑が、前記トンネルの周方向及び軸線方向に位置をずらして隣り合うよう構築されることを特徴とする大断面トンネルの構築方法。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の大断面トンネルの構築方法において、
前記発進坑構築工程と、該発進坑構築工程で構築した発進坑にて実施する前記外殻トンネル構築工程とを、シールド工法により連続して実施する工程を繰り返すことを特徴とする大断面トンネルの構築方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の大断面トンネルの構築方法において、
前記外殻部躯体を、前記トンネルにおける他のトンネルとの分岐合流部となる領域を覆うように構築することを特徴とする大断面トンネルの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの一部分に大断面トンネルを構築するための大断面トンネルの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大深度地下において本線トンネルの一部分に、本線トンネルと支線トンネルが接合する分岐合流部や本線トンネルの拡幅部をなす大断面トンネルを構築するための、様々な方法が検討されている。その方法の多くは、大断面トンネルの構築予定領域を複数の小断面シールドトンネルで囲繞した後、これら複数の小断面シールドトンネルを利用して筒状の外殻躯体を構築し、外殻躯体の内側を掘削して大断面トンネルを構築する方法である。
【0003】
そして、大断面トンネルの構築予定領域を小断面のシールドトンネルで囲繞するにあたっては、例えば、特許文献1では、小断面のルーフシールド機を本線シールドトンネルから直接発進させ、分岐合流部拡幅区画の輪郭に向けて急旋回させている。また、特許文献2では、小断面のシールド掘削機を、本線トンネルに設けた発進横坑から発進させ、大断面トンネル構築予定領域の輪郭に向けて急旋回させている。
【0004】
さらに、特許文献3では、支線トンネルを延長させ、その延長部分から本線トンネルを囲繞するリング状躯体を構築し、このリング状躯体を発進基地にして小径シールド掘削機を複数個所から発進させている。また、特許文献4では、本線トンネルの一部を円周シールド掘削機で拡幅して発進基地部を構築し、この発進基地部の複数個所から外殻シールド機を発進させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4228311号公報
【文献】特許第5605522号公報
【文献】特開2018-25008号公報
【文献】特許第5958754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2の方法では、シールド掘削機の発進位置から分岐合流部拡幅区画の輪郭もしくは大断面トンネル構築予定領域の輪郭に至る区間に、シールド掘削機を急旋回させるに十分な距離を確保する必要が生じる。このため、施工時に使用可能な敷地範囲が都市計画線等により制限されて上記の距離を確保できない現場では、これらの方法を採用することができない。
【0007】
また、特許文献3の方法も、施工時に使用可能な敷地範囲が限定される場合や施工条件により支線トンネルを延長できない場合、この方法を採用することができない。
【0008】
さらに、特許文献4の方法は、外殻シールド機の発進基地を施工する際、円周シールド掘削機の発進用立坑近傍に発進防護工として大規模な凍結工が必要となるが、施工時に使用可能な敷地範囲が限定される場合には、凍結工を実施するための必要範囲を確保できない場合が生じる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、施工時に使用可能な敷地範囲に影響を受けることなく、大断面トンネルを構築することの可能な、大断面トンネルの構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため本発明の大断面トンネルの構築方法は、トンネルを囲繞する複数の外殻シールドトンネルを構築し、該外殻シールドトンネルの内部空間を利用して前記トンネルを覆う筒状の外殻部躯体を構築した後、該外殻部躯体の内方を掘削して、前記トンネルの一部分に大断面トンネルを構築する大断面トンネルの構築方法であって、複数の前記外殻シールドトンネルの構築手順に、前記トンネルから分岐して該トンネルの軸線直交方向に延在する発進坑を、前記外殻部躯体の構築予定位置の外側に到達するまで構築する発進坑構築工程と、該発進坑から分岐して、前記トンネルの軸線直交方向と交差する方向に延在する外殻シールドトンネルを、前記外殻部躯体の構築予定位置に沿って構築する外殻トンネル構築工程と、を含み、前記発進坑構築工程を繰り返し、前記トンネルから分岐する前記発進坑を放射状に複数構築するとともに、該発進坑各々において前記外殻トンネル構築工程を実施し、前記外殻部躯体の構築予定位置に複数の前記外殻シールドトンネルを構築し、前記外殻トンネル構築工程は、前記発進坑から分岐して、対向する2方向に前記外殻シールドトンネルを構築する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
上述する本発明の大断面トンネルの構築方法によれば、外殻部躯体構築位置の内側から外殻シールドトンネルの発進坑を構築し、この発進坑より外殻シールドトンネルを外殻部躯体構築位置に沿わせて構築することができる。これにより、外殻部躯体構築位置より外側の敷地範囲が狭隘で施工時の使用に制約が生じる場合であっても、効率よく外殻シールドトンネルを構築することが可能となる。
【0013】
また、トンネルにおける発進坑の分岐位置をトンネルの軸線方向に分散して配置できることから、トンネル内で発進孔を構築するための作業エリアもトンネルの軸線方向に分散できる。したがって、トンネルを構築するための作業エリアと発進坑を構築するための作業エリアの錯綜が最小限に抑えられるため、両者の構築作業を円滑に並行して実施することが可能となる。
【0014】
また、本発明の大断面トンネルの構築方法は、放射状に構築される複数の前記発進坑が、前記トンネルの周方向及び軸線方向に位置をずらして隣り合うよう構築されることを特徴とする。
【0015】
本発明の大断面トンネルの構築方法によれば、トンネルの剛性を確保しつつ発進坑を安全に構築することが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の大断面トンネルの構築方法は、前記発進坑構築工程と、該発進坑構築工程で構築した発進坑にて実施する前記外殻トンネル構築工程とを、シールド工法により連続して実施する工程を繰り返すことを特徴とする。
【0017】
本発明の大断面トンネルの構築方法によれば、発進坑の構築にシールド工法を採用することにより、トンネルにおける発進坑の分岐位置周辺の地盤に対して地盤改良工法や凍結工法等の発進防護工を簡略化できる。これにより、大断面トンネルの構築に係る全体の工期短縮を図ることができるとともに、工期短縮に伴う工費削減に寄与できる。
【0018】
また、シールド工法に球体シールド掘削機を採用すれば、発進坑の断面をコンパクトにできるだけでなく、発進坑構築工程と外殻トンネル構築工程とを連続して実施する際に、発進坑から分岐する外殻シールドトンネルの発進準備工を行うことなく構築することが可能となる。
【0019】
本発明の大断面トンネルの構築方法は、前記外殻部躯体を、前記トンネルにおける他のトンネルとの分岐合流部となる領域を覆うように構築することを特徴とする。
【0020】
本発明の大断面トンネルの構築方法によれば、外殻部躯体構築位置より外側の敷地範囲が狭隘で施工時の使用に制約が生じる場合であっても、安全かつ施工性良く本線トンネルの一部分に分岐合流部をなす大断面トンネルを構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大断面トンネルの外殻部躯体を、外殻部躯体構築位置の内側領域を利用して構築できるため、外殻部躯体構築位置より外側の敷地範囲が狭隘で施工時の使用に制約が生じる場合であっても、その影響を受けることなく大断面トンネルを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態における大断面トンネルの概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における大断面トンネルの構築方法を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における外殻トンネルの構築手順を示す図である(その1)。
【
図4】本発明の実施の形態における外殻トンネルの構築手順を示す図である(その2)。
【
図5】本発明の実施の形態における本線トンネルを外殻トンネルで囲繞した状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における本線トンネルから分岐する発進坑を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における球体シールド掘削機を用いて外殻トンネルを構築する方法を示す図である(その1)。
【
図8】本発明の実施の形態における球体シールド掘削機を用いて外殻トンネルを構築する方法を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、大深度地下においてトンネルの一部分に、拡幅部や他のトンネルとの分岐合流部をなす大断面トンネルを構築するための方法である。本実施の形態では、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルの2つのトンネルの分岐合流部となる領域に大断面トンネルを構築する場合を事例に挙げ、以下にその詳細を説明する。
【0024】
大断面トンネル100は、
図1で示すように、本線トンネル11と支線トンネル12が接合し分岐合流部となる予定領域を覆うように設けられる外殻部躯体10の内方に構築されるものである。
【0025】
その施工方法は、
図2(a)で示すように、本線トンネル11と支線トンネル12の分岐合流部となる予定領域を覆うように外殻部躯体構築位置Cを設定し、
図2(b)で示すように、この外殻部躯体構築位置Cに沿って複数の外殻シールドトンネル1を構築する。
【0026】
この後、
図2(c)で示すように、複数の外殻シールドトンネル1の内部を利用して外殻部躯体10を構築した上で、
図2(d)で示すように、外殻部躯体10の内方を掘削することにより、本線トンネル11と支線トンネル12との分岐合流部をなす大断面トンネル100が構築される。
【0027】
次に、上述する大断面トンネルの構築方法における、外殻シールドトンネル1の構築方法について、
図3~
図6を参照しつつ詳細を説明する。
【0028】
<発進坑構築工程>
まず、
図3(a)で示すように、外殻部躯体構築位置Cの内側における本線トンネル11の所定位置から分岐して本線トンネル11の軸線直交方向に延在する発進坑2を、外殻部躯体構築位置Cの外側に到達するまで構築する。
【0029】
発進坑2は、
図6(a)で示すように、本線トンネル11の外殻部躯体構築位置Cの内側において、本線トンネル11の軸線方向からみて放射状に複数構築される。本実施の形態では、本線トンネル11の全長に対して螺旋配置としているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
本線トンネル11の軸線方向からみて放射状で、かつ、本線トンネル11の周方向及び軸線方向に位置をずらして隣り合うように構築されれば、その配置位置はいずれでもよい。こうすると、本線トンネル11に対する大掛かりな補強を行うことなく、発進坑2を構築することが可能となる。
【0031】
また、発進坑2の構築方法はいずれでもよいが、本実施の形態では、小径シールド掘削機によるシールド工法を採用している。このため、本線トンネル11の外殻躯体を複数のセグメントを組立て構築する際、
図6(b)で示すように、発進坑2との分岐位置3のセグメントとして、小径シールド掘削機で直接切削可能な材料よりなる切削用セグメントを採用している。
【0032】
こうすると、本線トンネル11を発進基地として小径シールド掘削機を発進させることができる。また、小径シールド掘削機の発進位置の周囲にエントランスパッキン等の止水構造を設けることで、本線トンネル11における発進坑2の分岐位置3周辺の地盤に対して施す地盤改良工法や凍結工法等の発進防護工を簡略化できる。これにより、発進坑構築工程の工期短縮を図ることができるとともに、工期短縮に伴う工費削減に寄与できる。
【0033】
<外殻トンネル構築工程>
上記の工程にて発進坑2を構築したのち、この発進坑2を利用して、
図3(b)で示すように、発進坑2から分岐して本線トンネル11の軸線直交方向と交差する方向、つまり発進坑2の軸線と交差する方向に延在する外殻シールドトンネル1を、外殻部躯体構築位置Cに沿って構築する。
【0034】
外殻シールドトンネル1の全長は、少なくとも構築予定の外殻部躯体10と同程度の長さを確保するよう構築される。また、外殻シールドトンネル1は、発進坑2を発進基地とし小径シールド掘削機を発進させることで構築されるから、発進坑2を構築する際、外殻シールドトンネル1の分岐位置には、本線トンネル11における発進坑2との分岐位置と同様に、小径シールド掘削機で直接切削可能な材料よりなる切削用セグメントを採用する。
【0035】
<発進坑構築工程と外殻トンネル構築工程の繰り返し>
上記の発進坑構築工程にて発進坑2を構築する工程と、この発進坑2を利用して上記の外殻トンネル構築工程にて外殻シールドトンネル1を構築する工程とを、
図4(a)及び(b)で示すように、外殻部躯体構築位置Cの内側における先行して構築した発進坑2と異なる位置で再度実施し、外殻部躯体構築位置Cに沿って新たな外殻シールドトンネル1を構築する。
【0036】
ここで、発進坑2を
図3(a)で示すように、外殻部躯体構築位置Cの端部に構築した場合、外殻シールドトンネル1は
図3(b)で示すように、発進坑2から1方向に分岐するのみである。しかし、発進坑2を
図4(a)で示すように、外殻部躯体構築位置Cの長手方向中間位置に構築した場合には、
図4(b)で示すように、外殻シールドトンネル1を発進坑2から分岐して対向する2方向に構築する。
【0037】
そして、発進坑2を挟んだ両側に延在する外殻シールドトンネル1を足し合わせた全長で、少なくとも構築予定の外殻部躯体10と同程度の長さを確保する。このように発進坑2は、外殻部躯体構築位置Cの内側において長手方向の何れの位置にも構築できる。
【0038】
これにより、本線トンネル11における発進坑2の分岐位置3を軸線方向に分散して配置できることから、本線トンネル11内の発進坑2を構築するための作業エリアも本線トンネル11の軸線方向にわたって分散できる。したがって、本線トンネル11を構築するための作業エリアと発進坑2を構築するための作業エリアの錯綜が最小限に抑えられるため、両者の構築作業を円滑に並行して実施することが可能となる。
【0039】
このような、発進坑構築工程と発進坑構築工程で構築した発進坑2にて実施する外殻トンネル構築工程を続けて実施し、発進坑2とこの発進坑2から分岐する外殻シールドトンネル1の組み合わせを構築する手順を、構築しようとする外殻シールドトンネル1の数量に到達するまで繰り返す。すると、
図5で示すように、本線トンネル11を囲繞するように、外殻部躯体構築位置C上に複数の外殻シールドトンネル1が配置される。
【0040】
<球体シールド掘削機による構築方法>
ところで、発進坑構築工程及び外殻トンネル構築工程をシールド工法により実施するにあたり、シールド掘削機の中でも球体シールド掘削機200を採用すると、発進坑2の断面をコンパクトにできるだけでなく、発進坑構築工程と外殻トンネル構築工程とを連続して行う際に、発進準備工を行うことなく発進坑2から分岐する外殻シールドトンネル1を構築することが可能となる。
【0041】
以下に、球体シールド掘削機200を用いて、発進坑構築工程と外殻トンネル構築工程とを連続して行う方法を、
図7~8を参照しつつ詳細を説明する。
【0042】
まず、発進坑構築工程として、
図7(a)で示すように、本線トンネル11の発進坑2との分岐位置3に、エントランスパッキン等の止水構造を備えた支持架台4を設置するとともに、支持架台4上に吊り装置5を備えた反力架台6を設置し、また、球体シールド掘削機200を組み立てる。
【0043】
この後、
図7(b)で示すように、球体シールド掘削機200の自重を吊り装置5で支持しながら、発進坑2との分岐位置3における切削用セグメントを球体シールド掘削機200を前進させて切削するとともに、地盤中を掘進する。所定深さまで掘進したところで、
図7(c)で示すように、吊り装置5から球体シールド掘削機200を取り外すとともに支持架台4に反力受け部材7を設け、この反力受け部材7を利用して掘進を再開する。こうして、球体シールド掘削機200を、外殻部躯体構築位置Cの外側に到達するまで掘進させ、発進坑2を構築する。
【0044】
これにより、反力架台6を撤去すれば、本線トンネル11の構築作業を阻害することなく、発進坑2の掘進作業を並行して進めることが可能となる。なお、本実施の形態では、鉛直下方向に向けて発進坑2を構築する場合を事例に挙げたが、鉛直上方向に構築する場合は吊り装置5を撤去し、鉛直上向きに掘進する球体シールド掘削機200を支持可能な位置に支持架台4及び反力架台6を配置すればよい。また、鉛直軸に対して斜め方向に発進坑2を構築する場合には、球体シールド掘削機200の掘進方向を保持可能な装置を別途設けるとよい。
【0045】
次に、外殻トンネル構築工程として、
図8(a)で示すように、発進坑構築工程で使用した球体シールド掘削機200のカッタ201を外殻シールドトンネル1を発進させるための発進孔8と対向するように回転させた後、外殻部躯体構築位置Cに沿って掘進を開始し、外殻シールドトンネル1を構築する。
【0046】
上述する大断面トンネルの構築方法によれば、外殻部躯体構築位置Cの内側から外殻シールドトンネル1の発進坑2を構築し、この発進坑2より外殻シールドトンネル1を外殻部躯体構築位置Cに沿わせて構築することができる。これにより、外殻部躯体構築位置Cより外側の敷地範囲が狭隘で施工時に使用に制約が生じる場合であっても、その影響を受けることなく、効率よく外殻シールドトンネル1を構築することが可能となる。
【0047】
また、複数の外殻シールドトンネル1は、各々に発進坑2が設けられるため、外殻シールドトンネル1ごとに本線トンネル11に至る動線を確保することができる。これにより、機材や資材等の搬出入計画を簡略化でき、作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0048】
さらに、発進坑2とこの発進坑2から分岐する外殻シールドトンネル1の組み合わせを構築する手順を、本線トンネル11における異なる位置で複数同時に実施することもできるため、工期短縮に寄与することが可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態では、
図3(a)および
図4(a)で示すように、発進坑2とこの発進坑2から分岐する外殻シールドトンネル1の組み合わせを2箇所で同時に実施する工程を繰り返したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、1箇所づつ構築してもよいし、3か所以上同時に実施してもよい。
【0050】
本発明の大断面トンネルの構築方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、本実施の形態では、外殻シールドトンネル1を複数構築するにあたって、発進坑構築工程に続けて外殻トンネル構築工程を実施し、発進坑2とこの発進坑2から分岐する外殻シールドトンネル1の組み合わせを構築する手順を繰り返した。しかし、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、
図6(a)で示すように、発進坑構築工程のみを繰り返して発進坑2を必要な数量だけ構築したのちに外殻トンネル構築工程を繰り返し、複数の発進坑2各々に外殻シールドトンネル1を構築してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 外殻シールドトンネル
2 発進坑
3 分岐位置
4 支持架台
5 吊り装置
6 反力架台
7 反力受け部材
10 外殻部躯体
11 本線トンネル
12 支線トンネル
100 大断面トンネル
200 球体シールド掘削機
201 カッタ
C 外殻部躯体構築位置(外殻部躯体の構築予定位置)