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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F02M35/10 101G
F02M35/10 101N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018152235
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026775
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍介
(72)【発明者】
【氏名】大野 知世
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113091(JP,A)
【文献】特開2007-085315(JP,A)
【文献】特開2000-073895(JP,A)
【文献】特開2011-012581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側壁を有する内燃機関の吸気ダクトであって、
前記側壁を周方向に分割して構成する第1成形体と第2成形体とを有しており、
前記第1成形体は、樹脂成形体により形成されており、
前記第2成形体は、圧縮成形された繊維成形体により形成されており、
前記第1成形体及び前記第2成形体の各々における前記周方向の両端部には、互いを接合する接合部が設けられており、
前記第1成形体における前記接合部の内周側には、前記第2成形体に向かって突出するとともに前記側壁の軸線方向に沿って延在するリブが設けられており、
前記第2成形体には、前記リブの外周側に位置するとともに前記リブを収容する収容凹部が設けられて おり、
前記収容凹部は、前記第2成形体における前記側壁の前記周方向の端部を折り曲げることにより形成されており、
前記接合部は、前記第1成形体に設けられ、前記第2成形体に向かって突出する爪部と、前記第2成形体に設けられ、前記爪部が係止される係止孔とを有しており、
前記爪部及び前記係止孔は、前記第1成形体及び前記第2成形体の各々における前記周方向の一方の端部に設けられており、
前記第1成形体及び前記第2成形体の各々における前記周方向の他方の端部には、前記第1成形体及び前記第2成形体を開閉可能に支持するヒンジ機構が設けられており、
前記ヒンジ機構は、前記第1成形体に設けられたアーチ部と、前記第2成形体に設けられ、前記アーチ部の孔に挿通される突部とにより構成されている、
内燃機関の吸気ダクト。
【請求項2】
前記第1成形体における前記接合部の各々の内周側には、一対の前記リブが設けられており、
前記第2成形体における前記リブの各々に対向する位置には、前記リブの各々を収容する一対の前記収容凹部が設けられている、
請求項1に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
車載内燃機関の吸気通路には、筒状の側壁を有する吸気ダクトが設けられている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の吸気ダクトの側壁は、合成樹脂製成形体からなる第1分割体と、不織布製成形体からなる第2分割体とによって周方向に2分割されている。第1分割体及び第2分割体の各々における側壁の周方向の両端には、フランジ部が形成されている。第1分割体のフランジ部には、複数の係合突起が互いに間隔を隔てて一体的に列設されている。第2分割体のフランジ部には、複数の貫通孔が互いに間隔を隔てて列設されている。係合突起が貫通孔と係合することで第1分割体及び第2分割体が一体的に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3802267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の吸気ダクトの場合、第1分割体及び第2分割体のフランジ部同士の隙間を通じて吸気音が外部へ漏出するおそれがある。
本発明の目的は、吸気騒音の低減を図ることのできる内燃機関の吸気ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための吸気ダクトは、筒状の側壁を有する内燃機関の吸気ダクトであって、前記側壁を周方向に分割して構成する第1成形体と第2成形体とを有しており、前記第1成形体及び前記第2成形体の各々における前記周方向の両端部には、互いを接合する接合部が設けられており、前記第1成形体における前記接合部の内周側には、前記第2成形体に向かって突出するとともに前記側壁の軸線方向に沿って延在するリブが設けられており、前記第2成形体には、前記リブの外周側に位置するとともに前記リブを収容する収容凹部が設けられている。
【0006】
同構成によれば、第1成形体のリブによって、第1成形体及び第2成形体の接合部同士の隙間が内周側から遮られる。このため、接合部同士の隙間を通じて吸気音が外部へ漏出することを抑制できる。また、こうしたリブが第2成形体の収容凹部に収容されているため、リブによって吸気通路が制限されることを抑制できる。したがって、通気抵抗の増大を抑制しつつ、吸気騒音の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸気騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における内燃機関の吸気ダクトを示す斜視図。
図2図1の2-2線に沿った断面図であって、第1成形体と第2成形体とを離間して示す分解斜視図。
図3図1の3-3線に沿った断面図。
図4】吸気ダクトの変更例を示す断面図。
図5】吸気ダクトの他の変更例を示す断面図。
図6】吸気ダクトの他の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図3を参照して、内燃機関の吸気ダクト(以下、吸気ダクト10)の一実施形態について説明する。
図1に示すように、吸気ダクト10は略半円筒状の側壁11を有している。側壁11の上流側の端部開口は、吸気が導入される導入口12である。側壁11の下流側の端部開口は、エアクリーナ等に接続される接続口14である。
【0010】
なお、以降において、側壁11の軸線方向及び周方向をそれぞれ単に軸線方向L及び周方向として説明する。また、軸線方向のうち側壁11内における吸気流れ方向の上流側及び下流側をそれぞれ単に上流側及び下流側として説明する。
【0011】
側壁11は、硬質の樹脂成形体からなる第1成形体20と、圧縮成形された繊維成形体からなる第2成形体40とを有している。第1成形体20及び第2成形体40は、側壁11をその周方向に2つに分割して構成している。
【0012】
<第1成形体20>
図2及び図3に示すように、第1成形体20は、軸線方向Lに沿って延在する長辺を有する平面視長方形板状の頂壁20aを有している。
【0013】
なお、以降において、頂壁20aの短辺に沿った方向(図3の左右方向)を幅方向Wとして説明する。
頂壁20aの幅方向Wの中央部には、側壁11の一部を構成する側壁部21が設けられている。また、頂壁20aの幅方向Wの両側には、接合部22,24が設けられている。
【0014】
頂壁20aにおける各接合部22,24の内周側の部分には、第2成形体40に向かって突出する一対の内周側リブ26が設けられている。接合部22,24及び内周側リブ26は、側壁11の軸線方向Lの全体にわたって延在している。
【0015】
図2及び図3に示すように、一方の接合部22には、第2成形体40に向かって突出する爪部23が設けられている。爪部23は、軸線方向Lにおいて互いに間隔をおいて複数設けられている。接合部22における爪部23の外周側には、第2成形体40に向かって突出する外周側リブ27が設けられている。なお、内周側リブ26が本発明に係るリブに相当する。
【0016】
他方の接合部24には、アーチ部25が第2成形体40に向かって突設されている。アーチ部25は、幅方向Wに貫通する孔25aを有している。アーチ部25は、軸線方向Lにおいて互いに間隔をおいて複数設けられている。
【0017】
<第2成形体40>
第2成形体40は、半割円筒状をなす側壁部41と、側壁部41の周方向の両端部に設けられ、外周側に向かって突設された一対の接合部42,44とを有している。
【0018】
各接合部42,44の内周側には、各内周側リブ26の外周側に位置するとともに各内周側リブ26を収容する一対の収容凹部46が設けられている。各収容凹部46は、側壁部41の周方向の端部を折り曲げることにより形成されており、外周側に向かって延在する底部46aと、底部46aの外周側の端にて屈曲され、第1成形体20に向かって延在する側部46bとによって形成されている。各接合部42,44及び各収容凹部46は、軸線方向Lの全体にわたって設けられている。
【0019】
一方の接合部22に対向する接合部42には、各爪部23が係止される複数の係止孔43が設けられている。
他方の接合部24に対向する接合部44には、接合部44における他の部分よりも外周側に突出され、各アーチ部25に挿通される複数の突部45が設けられている。
【0020】
次に、吸気ダクト10の組立方法について説明する。
図2及び図3に示すように、吸気ダクト10の組立に際しては、まず、第1成形体20の各アーチ部25に第2成形体40の各突部45が挿通される。これによって、各アーチ部25及び各突部45によって構成されるヒンジ機構50を支点として第1成形体20及び第2成形体40が開閉可能に支持される。
【0021】
この状態において、第1成形体20と第2成形体40とを互いに近接させる。これにより、第1成形体20の内周側リブ26が第2成形体40の収容凹部46内に案内される。このようにして、第1成形体20と第2成形体40とを位置決めするとともに、第2成形体40の係止孔43に第1成形体20の爪部23が挿通されて係止される。このとき、図3に示すように、第2成形体40の一方の接合部42の先端が、第1成形体20の外周側リブ27の内面に近接して配置される。
【0022】
爪部23が係止孔43に係止されている状態において、内周側リブ26の先端面26aは、収容凹部46の底部46aに当接される。また、内周側リブ26の外面26bと収容凹部46の側部46bとの間には、隙間が形成される。また、内周側リブ26の内面26cと、第2成形体40の側壁部41の内面41aとは平らに連なっている。
【0023】
このようにして、第1成形体20の接合部22,24と第2成形体40の接合部42,44とが互いに接合されることで吸気ダクト10が組み立てられる。
次に、第2成形体40を構成する繊維成形体について説明する。
【0024】
繊維成形体は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)からなる芯部と同PET繊維よりも融点の低い変性PETからなる鞘部(いずれも図示略)とを有する周知の芯鞘型の複合繊維からなる不織布と、PET繊維からなる不織布とにより構成されている。なお、上記複合繊維の鞘部をなす変性PETが繊維同士を結合するバインダとして機能する。
【0025】
変性PETの配合割合は30~70%であることが好ましい。本実施形態では、変性PETの配合割合が50%とされている。
なお、こうした複合繊維としては他に、PETよりも融点の低いPP(ポリプロピレン)を有するものであってもよい。
【0026】
繊維成形体の目付け量は、500g/m~1500g/mであることが好ましい。本実施形態では、繊維成形体の目付け量が800g/mとされている。
第2成形体40は、所定の厚さ(例えば30~100mm)の上記不織布シートを熱圧縮(熱プレス)することにより成形されている。また、本実施形態では、側壁部41及び接合部42,44の板厚が1.0mmとされている。
【0027】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)吸気ダクト10は、筒状の側壁11を有し、側壁11を周方向に分割して構成する第1成形体20と第2成形体40とを有している。第1成形体20及び前記第2成形体40の各々における周方向の両端部には、互いを接合する接合部22,24,42,44が設けられている。第1成形体20における接合部22,24の内周側には、第2成形体40に向かって突出するとともに側壁11の軸線方向に沿って延在する内周側リブ26が設けられている。第2成形体40には、内周側リブ26の外周側に位置するとともに内周側リブ26を収容する収容凹部46が設けられている。
【0028】
こうした構成によれば、第1成形体20の内周側リブ26によって、第1成形体20及び第2成形体40の接合部22,42(24,44)同士の隙間が内周側から遮られる。このため、接合部22,42(24,44)同士の隙間を通じて吸気音が外部へ漏出することを抑制できる。また、こうした内周側リブ26が第2成形体40の収容凹部46に収容されているため、内周側リブ26によって吸気通路が制限されることを抑制できる。したがって、通気抵抗の増大を抑制しつつ、吸気騒音の低減を図ることができる。
【0029】
(2)第1成形体20における接合部22,24の各々の内周側には、一対の内周側リブ26が設けられている。第2成形体40における各内周側リブ26の各々に対向する位置には、内周側リブ26の各々を収容する一対の収容凹部46が設けられている。
【0030】
こうした構成によれば、第1成形体20及び第2成形体40の各々における周方向の両側に内周側リブ26及び収容凹部46が設けられている。このため、両側の接合部22,42(24,44)について吸気音の外部への漏出を抑制することができる。したがって、吸気騒音の一層の低減を図ることができる。
【0031】
(3)第2成形体40は、圧縮成形された繊維成形体により形成されている。収容凹部46は、第2成形体40における側壁11の周方向の端部を折り曲げることにより形成されている。
【0032】
こうした構成によれば、第2成形体40が圧縮された繊維成形体により形成されている。このため、吸気音の音波が側壁11を通過する際に、その圧力(音圧)の一部が繊維を振動させて熱エネルギに変換される。これにより、吸気音の定在波の発生を抑制でき、吸気騒音を低減できる。
【0033】
また、上記構成によれば、第2成形体40の側壁11の周方向の端部を折り曲げることによって収容凹部46を容易に形成することができる。
(4)第1成形体20は、樹脂成形体により形成されている。接合部22,42は、第1成形体20に設けられ、第2成形体40に向かって突出する爪部23と、第2成形体40に設けられ、爪部23が係止される係止孔43とを有している。
【0034】
こうした構成によれば、第1成形体20に設けられた爪部23が、第2成形体40に設けられた係止孔43に係止されることによって、成形体20,40同士が互いに接合される。
【0035】
ここで、第1成形体20と第2成形体40とを組み付ける際、第1成形体20の内周側リブ26が第2成形体40の収容凹部46内に案内されることで第1成形体20と第2成形体40との位置決めがなされる。このため、第1成形体20の爪部23と第2成形体40の係止孔43との正確な位置合わせをしなくとも係止孔43に爪部23を挿入して係止させることができる。
【0036】
(5)爪部23及び係止孔43は、第1成形体20及び第2成形体40の各々における周方向の一方の端部に設けられている。第1成形体20及び第2成形体40の各々における周方向の他方の端部には、第1成形体20及び第2成形体40を開閉可能に支持するヒンジ機構50が設けられている。ヒンジ機構50は、第1成形体20に設けられたアーチ部25と、第2成形体40に設けられ、アーチ部25の孔25aに挿通される突部45とにより構成されている。
【0037】
こうした構成によれば、第1成形体20のアーチ部25の孔25aに第2成形体40の突部45が挿通されることによって第1成形体20及び第2成形体40を開閉可能に支持するヒンジ機構50が構成される。このため、第1成形体20及び第2成形体40を組み付ける際には、ヒンジ機構50によって第1成形体20及び第2成形体40を閉じることにより、ヒンジ機構50とは反対側の爪部23と係止孔43とを互いに近接させるとともに係止孔43に爪部23を挿入して係止させることができる。したがって、成形体20,40同士の組み付けが容易となる。
【0038】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
・上記実施形態において、内周側リブ26の先端面26aが収容凹部46の底部46aに当接している構成を例示したが、先端面26aが底部46aから離間している構成であってもよい。
【0040】
図4に示すように、第1成形体20及び第2成形体40の他方の接合部24,44の形状を、一方の接合部22,42と同様な形状にすることもできる。
・第2成形体40の接合部42は、側壁部41の端部から外周側に突出するものに限定されない。
【0041】
例えば、図5に示す吸気ダクト10では、第2成形体40の収容凹部46を形成する側部46bに、爪部23が係止される係止孔43が形成されている。すなわち、側部46bが接合部42を形成している。第1成形体20の外周側リブ27は、軸線方向(紙面に直交する方向)において爪部23の設けられていない位置に設けられている。吸気ダクト10が組み立てられた状態において、外周側リブ27によって第2成形体40の側部46bが内側に向けて押圧されていることが好ましい。この場合、第1成形体20と第2成形体40とが互いに外れ難くなる。
【0042】
・上記実施形態では、第1成形体20に爪部23と内周側リブ26とが別々に設けられていた。これに代えて、図6に示す吸気ダクト10のように、第1成形体20の内周側リブ26の外面に爪部23が突設されている構成であってもよい。この場合、吸気ダクト10の幅方向Wの体格を小さくできる。
【0043】
・第2成形体40を樹脂成形体によって形成する一方、第1成形体20を繊維成形体によって形成することもできる。この場合、第2成形体40の接合部42に爪部を設けるとともに、第1成形体20の接合部22に係止孔を設ければよい。
【0044】
・第1成形体及び第2成形体の双方が繊維成形体により形成されているものであってもよい。
・第1成形体及び第2成形体の双方が樹脂成形体により形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…吸気ダクト、11…側壁、12…導入口、14…接続口、20…第1成形体、40…第2成形体、20a…頂壁、21,41…側壁部、22,24,42,44…接合部、23…爪部、25…アーチ部、25a…孔、26…内周側リブ、26a…先端面、26b…外面、26c,41a…内面、27…外周側リブ、43…係止孔、45…突部、46…収容凹部、46a…底部、46b…側部、50…ヒンジ機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6