(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】パチンコ玉用転動通路のシャッタ構造
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
A63F7/02 353
A63F7/02 339
A63F7/02 344A
A63F7/02 344C
(21)【出願番号】P 2018171132
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆弘
【審査官】永田 美佐
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-156033(JP,A)
【文献】特開2001-149600(JP,A)
【文献】実開昭60-052435(JP,U)
【文献】特開2014-230720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ玉が転動する転動通路と、
前記転動通路内で転動するパチンコ玉の転動方向とは交差する
上下方向を移動方向として前記転動通路に対して進退自在に構成され、前記転動通路を遮る
上方の閉位置と前記転動通路が開放される
下方の開位置との間で往復するシャッタ部材と、
前記シャッタ部材を前記閉位置に向けて付勢するばね部材と、
前記シャッタ部材にリンク機構を介して連結され、
前記ばね部材のばね力に抗して前記シャッタ部材を前記閉位置から前記開位置に移動させるソレノイドとを備え、
前記シャッタ部材は、上側に位置する操作部と、この操作部から下方に延びる板状の阻止部とを有し、
前記リンク機構は、側面視において逆L字状の一対のリンクを有し
、
前記リンクは、中央部において支軸によって前記転動通路を有するハウジングに回動自在に支持され、
前記リンクの一端部を構成する第1のアームは、前記操作部に第1のピンを介して連結され、
前記リンクの他端部を構成する第2のアームは、前記ソレノイドのプランジャーに第2のピンを介して連結され、
前記ばね部材は、長さが相対的に長い第1の圧縮コイルばねと、長さが相対的に短い第2の圧縮コイルばねとからなり、
前記第1の圧縮コイルばねの直径は、前記第2の圧縮コイルばねの直径より小さく、前記第1の圧縮コイルばねの巻方向は、前記第2の圧縮コイルばねの巻方向とは反対の方向であり、
第1の圧縮コイルばねと第2の圧縮コイルばねの下端部は、前記操作部に上方に向けて開口するように形成された凹部に挿入され、
前記第1の圧縮コイルばねの上端部は、前記ハウジングに設けられたばね受けに下方から当接し、前記シャッタ部材が前記閉位置に位置している状態においては、前記第2の圧縮コイルばねの上端が前記ばね受けから下方に離間し、
前記シャッタ部材が前記閉位置から前記開位置に向けて移動を開始するときは、前記第1の圧縮コイルばねのばね力のみが前記シャッタ部材に加えられ、
前記シャッタ部材が前記開位置から前記閉位置に向けて移動を開始するときは、前記第1の圧縮コイルばねのばね力と前記第2の圧縮コイルばねのばね力とが前記シャッタ部材に加えられることを特徴とするパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造。
【請求項2】
請求項1記載
のパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造において、
前記シャッタ部材の前記移動方向において進入側となる端部には、前記移動方向において退出側に向けて凸になる円弧状の切欠きが形成されていることを特徴とするパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ玉用転動通路を開閉するシャッタ部材を備えたパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ玉を使用する遊技施設や遊技台においては、その周辺機器やパチンコ玉用計数機に転動通路が設けられ、パチンコ玉が転動通路を転動するように構成されている。転動通路には、パチンコ玉の転動を止める形態と、パチンコ玉の転動を許容する形態を切り換えるためにシャッタが設けられている。この種のシャッタは、転動通路に進入したり、転動通路から退出する構成が採られている。このシャッタの駆動源としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、ソレノイドが使用されることが多い。
【0003】
従来のシャッタは、転動通路に対して出入りするシャッタ部材と、このシャッタ部材を転動通路に進入する方向へ付勢するばね部材と、シャッタ部材を転動通路から退出する方向へ駆動するソレノイドとを備えている。シャッタ部材は、ばね部材のばね力と自重とによって転動通路に進入し、ソレノイドによって引かれることにより転動通路から退出する。すなわち、ソレノイドが励磁されると、ソレノイドのプランジャーが引かれ、このプランジャーに連結されたシャッタ部材が転動通路から退出して転動通路が開放される。
【0004】
この状態でソレノイドの励磁が解除されることにより、プランジャーが解放され、ばね部材のばね力とシャッタ部材の自重とによってシャッタ部材が転動通路に進入して転動通路を閉鎖する。
この種の転動通路に設けられているシャッタは、パチンコ玉の転動を速やかに止めることができるように、シャッタ動作の応答性が高いことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-328396号公報
【文献】特開平11-156033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
転動通路を開閉する従来のシャッタにおいて、シャッタ動作の応答性は、シャッタ部材を転動通路に進入する方向へ付勢するばね力の大きさに依存する。この応答性を高くするためには、ソレノイドの励磁が解消されたときに強いばね力がシャッタ部材に加えられるように、ばね部材のばね力を強くすることが考えられる。しかしながら、このような構成を採ると、シャッタ部材を転動通路から退出させるときに大きなばね力に抗して引かなければならないから、大型のソレノイドが必要になり、装置が大型化してしまうという問題を生じる。
【0007】
本発明の目的は、ソレノイドを大型化することなく、シャッタ動作の応答性を高くすることができるパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係るパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造は、パチンコ玉が転動する転動通路と、前記転動通路内で転動するパチンコ玉の転動方向とは交差する方向を移動方向として前記転動通路に対して進退自在に構成され、前記転動通路を遮る閉位置と前記転動通路が開放される開位置との間で往復するシャッタ部材と、前記シャッタ部材を前記閉位置に向けて付勢するばね部材と、前記ばね部材のばね力に抗して前記シャッタ部材を前記閉位置から前記開位置に移動させるソレノイドとを備え、前記ばね部材は、長さが相対的に長い第1の圧縮コイルばねと、長さが相対的に短い第2の圧縮コイルばねとからなり、前記シャッタ部材が前記閉位置から前記開位置に向けて移動を開始するときは、前記第1の圧縮コイルばねのばね力のみが前記シャッタ部材に加えられ、前記シャッタ部材が前記開位置から前記閉位置に向けて移動を開始するときは、前記第1の圧縮コイルばねのばね力と前記第2の圧縮コイルばねのばね力とが前記シャッタ部材に加えられるものである。
【0009】
本発明は、前記パチンコ玉用転動通路のシャッタ構造において、前記第1の圧縮コイルばねは、直径および巻き方向が前記第2の圧縮コイルばねの直径および巻き方向とは異なり、前記第1の圧縮コイルばねと前記第2の圧縮コイルばねとのうち直径が小さい一方の圧縮コイルばねが他方の圧縮コイルばねの内部に挿入されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記パチンコ玉用転動通路のシャッタ構造において、前記シャッタ部材の前記移動方向において進入側となる端部には、前記移動方向において退出側に向けて凸になる円弧状の切欠きが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、シャッタ部材が閉位置から開位置に移動するときは相対的にばね力が弱くなるから、小型のソレノイドでもシャッタ部材を開位置まで移動させることができる。シャッタ部材が開位置から閉位置に移動するときは、相対的にばね力が強くなるから、高速で移動するようになる。
したがって、ソレノイドを大型化することなく、シャッタ動作の応答性を高くすることが可能なパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パチンコ玉用転動通路を破断して示すシャッタ構造の側面図である。
【
図2】本発明に係るパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造の構成を示す斜視図である。
【
図3】転動通路を有するハウジングの要部を部分的に破断して示す斜視図である。
【
図4】
図1におけるパチンコ玉用転動通路のIV-IV線断面図である。
【
図5】シャッタ部材が開位置に位置している状態を示す要部の断面図である。
【
図6】シャッタ部材が閉位置に位置している状態を示す要部の断面図である。
【
図8】ばね部材のばね力とソレノイドの吸引力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造の一実施の形態を
図1~
図8を参照して詳細に説明する。
図1に示すシャッタ構造1は、ハウジング2の下部に設けられたパチンコ玉用転動通路3(以下、単に転動通路3という)と、この転動通路3の中に一部が臨むシャッタ部材4と、ハウジング2の上部に設けられたソレノイド5などを備えている。
【0014】
この実施の形態によるハウジング2は、図示していない遊技台の周辺機器に収納される計数機の筐体を形成するものである。
転動通路3は、ハウジング2内に下り勾配を有するように形成されている。この転動通路3には、パチンコ玉6が
図1において左側となる上流側から送られる。この実施の形態による転動通路3は、
図2~
図4に示すように、水平方向に並ぶ第1の転動通路3aと第2の転動通路3bとによって構成されている。
【0015】
図2は、ハウジング2を
図1に示すII-II線の位置で切断し、転動通路3を斜め上方から見た状態を示している。
図3は、転動通路3を含むハウジング2の一部のみを示している。
図3においては転動通路3を構成する壁を部分的に破断して描いてある。
図4は、ハウジング2の一部を
図1に示すIV-IV線の位置で切断して転動通路3の上流側から見た状態を示している。以下においては、第1の転動通路3aと第2の転動通路3bとが並ぶ方向を左右方向として説明する。
【0016】
パチンコ玉6は、
図1において矢印Aで示す方向を転動方向として第1および第2の転動通路3a,3bの底壁11,12(
図4参照)上を転がって転動通路3の下流側に移動する。
第1の転動通路3aと第2の転動通路3bは、
図4に示すように、上述した底壁11,12と、これら両通路3a,3bを仕切る隔壁13と、左側壁14および右側壁15と、上壁16,17とによってパチンコ玉6が通路外に出ることができないように形成されている。
【0017】
隔壁13は、板状に形成されている。この隔壁13には、
図3に示すように、後述するシャッタ部材4を通すための穴13aが形成されている。
左側壁14と右側壁15とには、後述するシャッタ部材4を保持するためのガイド溝18,19が形成されている。これらのガイド溝18,19は、
図1に示すように、パチンコ玉6の転動方向Aとは交差する方向となる上下方向に延びており、第1および第2の転動通路3a,3bに向けて開放されている。ガイド溝18,19の下端は、第1および第2の転動通路3a,3bの下部に位置し、ガイド溝18,19の上端は、上壁16,17から上方に延びる複数の縦壁16a,16b,17a,17bによって形成されて第1および第2の転動通路3a,3bより上方に延びている。
【0018】
縦壁16aと縦壁16bは、第1の転動通路3aの上壁16に一体に形成されて上壁16から上方に延びており、パチンコ玉6の転動方向Aにガイド溝18の溝幅となる間隔をおいて並んでいる。
縦壁17aと縦壁17bは、第2の転動通路3bの上壁17に一体に形成されて上壁17から上方に延びており、パチンコ玉6の転動方向Aにガイド溝19の溝幅となる間隔をおいて並んでいる。ガイド溝19の溝幅は、ガイド溝18の溝幅と等しい。
【0019】
これらの縦壁16a,16b,17a,17bのうち、パチンコ玉6の転動方向Aにおいて下流側に位置する縦壁16bおよび縦壁17bは、ガイド溝18,19におけるパチンコ玉6の転動方向Aの下流側に位置する溝壁を構成している。これらの縦壁16b,17bには、通路側突出部21,22が突設されている。この通路側突出部21,22は、
図3に示すように、パチンコ玉6の転動方向Aの上流側に向けて凸になる側面視円弧状に形成されており、第1および第2の転動通路3a,3bより上方に位置している。
【0020】
第1および第2の転動通路3a,3bの上壁16,17は、縦壁16aおよび縦壁17aと、縦壁16bおよび縦壁17bとの間に、後述するシャッタ部材4を通すための開口部23(
図1参照)が形成されている。
シャッタ部材4は、
図7に示すように、転動方向Aの下流側から見て逆T字状に形成されており、
図7において上側に位置する操作部24と、この操作部24から下方に延びる板状の阻止部25とを有している。
【0021】
操作部24は、
図2に示すように、円柱状に形成されており、リンク機構26を介してソレノイド5に連結されている。リンク機構26は、
図1において逆L字状の一対のリンク27を有している。リンク27は、中央部において支軸28によってハウジング2に回動自在に支持されている。リンク27の一端部を構成する第1のアーム29は、操作部24に第1のピン30を介して連結されている。リンク27の他端部を構成する第2のアーム31は、ソレノイド5のプランジャー32に第2のピン33を介して連結されている。
ソレノイド5は、励磁状態でプランジャー32が磁気吸引力によって後退し、非励磁状態で磁気吸引力が消失する構成のもので、プランジャー32が上下方向および左右方向と直交する方向に往復するようにハウジング2に支持されている。
【0022】
円柱状を呈する操作部24の軸心部には、上方に向けて開口する凹部34(
図7参照)が形成されている。この凹部34には、シャッタ部材4を第1および第2の転動通路3a,3bに向けて付勢するばね部材35が挿入されている。ばね部材35は、
図6に示すように、相対的に長い第1の圧縮コイルばね36と、相対的に短い第2の圧縮コイルばね37とによって構成されている。
【0023】
第1の圧縮コイルばね36は、直径および巻き方向が第2の圧縮コイルばね37の直径および巻き方向とは異なっている。この実施の形態による第1の圧縮コイルばね36の直径は、第2の圧縮コイルばね37の直径より小さい。第1の圧縮コイルばね36の巻方向は、第2の圧縮コイルばね37の巻方向とは反対の方向である。また、第1の圧縮コイルばね36と第2の圧縮コイルばね37とのうち、直径が小さい第1の圧縮コイルばね36は、他方の第2の圧縮コイルばね37の内部に挿入されている。
【0024】
第1の圧縮コイルばね36の上端部は、
図1に示すように、ばね受け38に下方から当接している。ばね受け38は、
図3に示すように、ハウジング2の側壁2aに突設されている。この第1の圧縮コイルばね36のばね力で下方に付勢されたシャッタ部材4の下方への移動は、操作部24の下端が第1および第2の転動通路3a,3bの縦壁16a,16b,17a,17bに当接することによって規制される。
【0025】
シャッタ部材4の阻止部25は、第1の転動通路3aと第2の転動通路3bとが並ぶ方向(左右方向)と、上下方向とに延びる板状に形成されている。阻止部25の左右方向の形成幅は、第1の転動通路3aおよび第2の転動通路3bを横切ることが可能な幅である。この阻止部25の左右方向の両端部は、上述したガイド溝18,19に挿入され、ガイド溝18,19によって上下方向へ移動自在に保持されている。シャッタ部材4は、ガイド溝18,19に沿って移動することにより第1および第2の転動通路3a,3bに対して進退する。
【0026】
詳述すると、シャッタ部材4は、
図5に示すように上方に移動した開位置と、
図6に示すように下方に移動した閉位置との間で移動自在である。
図5および
図6に示すシャッタ部材4は、
図7中にV-V線によって示した位置で破断した状態で描いてある。
図6に示すように、閉位置に移動したシャッタ部材4と第1および第2の転動通路3a,3bの底壁11,12との間には、パチンコ玉6が通過できない広さの隙間Sが形成されている。このように隙間Sが形成される理由は、ストロークが短くなる小型のソレノイド5を使用しているからである。
図6に示すように、シャッタ部材4が閉位置に位置している状態においては、第2の圧縮コイルばね37の上端がばね受け38から下方に離間している。
【0027】
阻止部25の左右方向の両端部であってパチンコ玉6の転動方向Aの下流端となる部位には、
図5および
図6に示すように、シャッタ側突出部41,42が突設されている。このシャッタ側突出部41,42は、パチンコ玉6の転動方向Aの下流側に向けて凸になる側面視円弧状に形成されている。シャッタ側突出部41,42の上下方向の位置は、
図6に示すように、シャッタ部材4が閉位置に位置している状態において通路側突出部21,22より下に位置し、通路側突出部21,22と上下方向に重なる位置である。この実施の形態においては、シャッタ側突出部41,42が本発明でいう「第1の突出部」に相当し、通路側突出部21,22が本発明でいう「第2の突出部」に相当する。
【0028】
阻止部25の下端部、すなわちシャッタ部材4の移動方向において第1および第2の転動通路3a,3bに対して進入側となる端部には、
図7に示すように二つの切欠き43,44が形成されている。切欠き43は、第1の転動通路3aと対応する位置に設けられ、切欠き44は、第2の転動通路3bと対応する位置に設けられている。これらの切欠き43,44は、上方に向けて(シャッタ部材4の移動方向において退出側に向けて)凸になる円弧状に形成されている。
【0029】
このように構成されたパチンコ玉用転動通路3のシャッタ構造1においては、
図1に示すように、シャッタ部材4が閉位置に位置している状態で第1および第2の転動通路3a,3bがシャッタ部材4によって閉鎖される。第1および第2の転動通路3a,3bを開放させるときは、
図1および
図6に示す状態でソレノイド5に通電する。ソレノイド5が励磁することにより、プランジャー32が引かれて後退し、リンク27が第1の圧縮コイルばね36のばね力に抗して
図1において時計方向に回る。このようにシャッタ部材4を開放し始めるときは第1の圧縮コイルばね36のみを圧縮すればよいため、プランジャー32の引き始めに大きな力を必要とせず、励磁力の大きなソレノイドを必要としない。
第1の圧縮コイルばね36のばね力は、
図8中に二点鎖線で示すように、シャッタ部材4の上昇に伴って徐々に大きくなる。
【0030】
一方、シャッタ部材4が閉位置から上に向けて移動を開始すると、側面視円弧状のシャッタ側突出部41,42が通路側突出部21,22に押し付けられる。この実施の形態によるシャッタ側突出部41,42と通路側突出部21,22は、それぞれ側面視円弧状に形成されているから、このときにはシャッタ側突出部41,42が通路側突出部21,22の凸曲面に沿って滑らかに通路側突出部21,22に乗り上げる。すなわち、シャッタ側突出部41,42が通路側突出部21,22に接触しながら滑るから、シャッタ部材4とガイド溝18,19との間に負荷がかかることなくシャッタ部材4が円滑に上に移動する。
【0031】
シャッタ部材4が閉位置から上昇する過程において、第2の圧縮コイルばね37の上端がばね受け38に接触し、第2の圧縮コイルばね37も圧縮されるようになる。このようになると、
図8中に白抜きの線で示すように、ばね部材35のばね力(第1の圧縮コイルばね36のばね力と、第2の圧縮コイルばね37のばね力との合力)が急激に増大し、急増後はシャッタ部材4の移動にしたがって徐々に増大する。第2の圧縮コイルばね37の単体のばね力の変化は、
図8中に一点鎖線で示す。
【0032】
ソレノイド5の吸引力は、
図8中に太線で示すように、ストロークが少なくなればなるほど大きくなる。このため、ソレノイド5は、第1および第2の圧縮コイルばね36,37のばね力が加えられる状態であっても、確実にプランジャー32を吸引することができる。
シャッタ部材4は、プランジャー32がそれ以上吸引されなくなるまで上昇し、プランジャー32が停止することにより開位置に位置付けられる。
このようにシャッタ部材4が開位置に移動することにより、パチンコ玉6が第1および第2の転動通路3a,3bを下流側に転動できるようになる。
【0033】
パチンコ玉6の下流側への転動を阻止するときは、ソレノイド5への通電を絶つ。ソレノイド5が非励磁状態になると、プランジャー32の移動が許容されるようになり、シャッタ部材4が第1および第2の圧縮コイルばね36,37のばね力と、自重とによって下方に移動する。すなわち、第1の圧縮コイルばね36のばね力と、第2の圧縮コイルばね37のばね力とが一度にシャッタ部材4を閉鎖する方向に加えられるために、閉鎖動作に移る際の応答性が高い。
したがって、ソレノイドを大型化することなく、シャッタ動作の応答性を高くすることが可能なパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造を提供することができる。
【0034】
このとき、シャッタ部材4は、ガイド溝18,19に沿って第1および第2の転動通路3a,3b内に進入する。この進入に伴い、シャッタ部材4のシャッタ側突出部41,42がガイド溝18,19の通路側突出部21,22を乗り越えて下に移動し、
図6に示すように、シャッタ部材4が閉位置に位置付けられる。
【0035】
シャッタ部材4がこのように開位置から閉位置に移動する過程で相対的に短い第2の圧縮コイルばね37の上端がばね受け38から離れる。このため、シャッタ部材4が閉位置に位置付けられている状態においては、第1の圧縮コイルばね36のみのばね力がシャッタ部材4に加えられることになる。
シャッタ部材4が閉位置に移動することによって、
図1に示すように第1および第2の転動通路3a,3bが閉鎖され、パチンコ玉6が通過することができなくなる。この状態でパチンコ玉6が第1および第2の転動通路3a,3bに上流側から送られ、多数蓄積されると、パチンコ玉6の重量でシャッタ部材4が
図1において時計方向に押されるようになる。
【0036】
シャッタ部材4がパチンコ玉6から受ける力は、シャッタ部材4を開放する方向に作用する。しかし、このときは、シャッタ部材4の阻止部25がガイド溝18,19の側壁(縦壁16b,17b)に押し付けられ、シャッタ側突出部41,42と通路側突出部21,22とが係合するようになる。この係合状態においては、第1および第2の転動通路3a,3bから退出する方向へのシャッタ部材4の移動が規制される。
【0037】
この実施の形態によるパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造において、第1の圧縮コイルばね36は、直径および巻き方向が第2の圧縮コイルばね37の直径および巻き方向とは異なっている。また、第1の圧縮コイルばね36と第2の圧縮コイルばね37とのうち直径が小さい第1の圧縮コイルばね36が他方の第2の圧縮コイルばね37の内部に挿入されている。第1および第2の圧縮コイルばね36,37の巻方向が互いに逆方向であるから、これらの第1および第2の圧縮コイルばね36,37が同心状に配置されているにもかかわらず絡み合うことはない。このため、第1および第2の圧縮コイルばね36,37を備えているにもかかわらず、コンパクトなパチンコ玉用転動通路のシャッタ構造を実現することができる。
【0038】
シャッタ部材4の下端部、言い換えればシャッタ部材4の移動方向において進入側となる端部には、シャッタ部材4の移動方向において退出側に向けて凸になる円弧状の切欠き43,44が形成されている。この切欠き43,44を有するシャッタ部材4が第1および第2の転動通路3a,3bから退出する方向に移動し、円弧状の切欠き43,44がパチンコ玉6の上縁より上に移動することにより、パチンコ玉6を止める規制が解除されてパチンコ玉6が第1および第2の転動通路3a,3bを転がり下りるようになる。このため、円弧状の切欠き43,44が設けられていない場合と較べると、上記の規制を早く解除できるから、第1および第2の転動通路3a,3bを開放する動作の応答性が高くなる。
【0039】
この実施の形態によるシャッタ部材4は、閉位置に位置している状態でシャッタ側突出部41,42と通路側突出部21,22との係合により開く方向への移動が規制されている。このため、シャッタ部材4を閉位置に保持するばね力が第1の圧縮コイルばね36のばね力のみであるにもかかわらず、パチンコ玉6の重量が加えられてシャッタ部材4が閉位置から開くことはない。したがって、シャッタ部材4の閉じる動作の応答性が高くなるばかりでなく、シャッタ部材4で第1および第2の転動通路3a,3bを閉鎖する動作の信頼性が高くなる。
【符号の説明】
【0040】
1…シャッタ構造、3a…第1の転動通路、3b…第2の転動通路、4…シャッタ部材、5…ソレノイド、6…パチンコ玉、35…ばね部材、36…第1の圧縮コイルばね、37…第2の圧縮コイルばね、43,44…切欠き。