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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】キャブバックカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 35/00 20060101AFI20220720BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20220720BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220720BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B62D35/00 C
B62D25/08 B
B62D25/20 B
B60K11/04 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018195916
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020062955
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】森 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大福 哲史
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131109(JP,A)
【文献】実開昭58-150520(JP,U)
【文献】実開昭62-47424(JP,U)
【文献】特開平3-276822(JP,A)
【文献】特開2012-25294(JP,A)
【文献】特開2015-105051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B62D 25/08
B62D 25/20
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブの後方に設けられているキャブバックカバーであって、
前方から流入した空気が上方に向かって流出するのを抑制する上面部と、
前方から流入した空気が後方に向かって流出するのを抑制する後面部と、
前方から流入した空気が左方に向かって流出するのを抑制する左側面部と、
前方から流入した空気が右方に向かって流出するのを抑制する右側面部と、
を有し、
前記左側面部及び前記右側面部のうちの少なくとも一つは、前方から後方に向かうにつれて、前記車両の前後方向に対して第1の角度で前記車両の車幅方向における内側に向かって延伸している前方領域と、前記前方領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、前記車両の前後方向に対して前記第1の角度よりも大きい第2の角度で前記車両の車幅方向における内側に向かって延伸している後方領域と、を有することを特徴とするキャブバックカバー。
【請求項2】
前記上面部は、
前方から後方に向かうにつれて、前記車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度で前記車両の高さ方向における下方に向かって延伸している第1上面領域と、
前記第1上面領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、前記水平方向に対して前記第3の角度よりも大きい第4の角度で前記車両の高さ方向における下方に向かって延伸している第2上面領域と、
を有し、
前記前方領域の上端は、前記第1上面領域の側端に接続されており、
前記後方領域の上端は、前記第2上面領域の側端に接続されていることを特徴とする、
請求項1に記載のキャブバックカバー。
【請求項3】
前記上面部の前端は、前記キャブの後面に接していることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のキャブバックカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャブバックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にはキャブバックカバーが設けられている。特許文献1には、キャブオーバー型車両のエンジンカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-54853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャブオーバー型車両において、車両のキャブの後面にキャブバックカバーが設けられている場合がある。この場合、車両のキャブの下方に設けられているエンジンの周囲を前方から後方に向かって流れることで加熱された空気が、キャブバックカバーの内側に流入して、キャブバックカバーの内側に籠ってしまう場合がある。この場合、加熱された空気が、キャブバックカバーの内側に籠ってしまうことで、車両の部品に対して熱害が生じてしまう恐れがあるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、加熱された空気を籠りづらくするキャブバックカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両のキャブの後方に設けられているキャブバックカバーであって、前方から流入した空気が上方に向かって流出するのを抑制する上面部と、前方から流入した空気が後方に向かって流出するのを抑制する後面部と、前方から流入した空気が左方に向かって流出するのを抑制する左側面部と、前方から流入した空気が右方に向かって流出するのを抑制する右側面部と、を有し、前記左側面部及び前記右側面部のうちの少なくとも一つは、前方から後方に向かうにつれて、前記車両の前後方向に対して第1の角度で前記車両の車幅方向における内側に向かって延伸している前方領域と、前記前方領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、前記車両の前後方向に対して前記第1の角度よりも大きい第2の角度で前記車両の車幅方向における内側に向かって延伸している後方領域と、を有することを特徴とするキャブバックカバーを提供する。
【0007】
また、前記上面部は、前方から後方に向かうにつれて、前記車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度で前記車両の高さ方向における下方に向かって延伸している第1上面領域と、前記第1上面領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、前記水平方向に対して前記第3の角度よりも大きい第4の角度で前記車両の高さ方向における下方に向かって延伸している第2上面領域と、を有し、前記前方領域の上端は、前記第1上面領域の側端に接続されており、前記後方領域の上端は、前記第2上面領域の側端に接続されていてもよい。また、前記上面部の前端は、前記キャブの後面に接していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャブバックカバーにおいて、加熱された空気が籠りづらくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るキャブバックカバーが設けられている車両の状態を示す。
図2】キャブを後方から見た構造を示す。
図3】本実施形態に係るキャブバックカバーが設けられている車両におけるキャブバックカバー付近の状態を示す。
図4】本実施形態に係るキャブバックカバーの構造を示す。
図5図4で示すキャブバックカバーをAの向きから見たときの右側面部付近の構造を示す。
図6図4で示すキャブバックカバーの断面図である。
図7】従来のキャブバックカバーの構造を示す。
図8図7で示す従来のキャブバックカバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本実施形態>
[キャブバックカバー7の周辺構成]
図1は、本実施形態に係るキャブバックカバー7が設けられている車両の状態を示す図である。図1(a)は、本実施形態に係るキャブバックカバー7が設けられている車両の断面図である。図1(b)は、本実施形態に係るキャブバックカバー7が設けられている車両を下方から見た状態を示す図である。図2は、キャブ1を後方から見た構造を示す図である。図3は、本実施形態に係るキャブバックカバー7が設けられている車両におけるキャブバックカバー7付近の状態を示す図である。
【0011】
車両は、キャブオーバー型の車両であり、例えばトラックである。車両は、キャブ1、架装部2、サイドフレーム3、エンジン4、ファン5、ラジエータ6、及びキャブバックカバー7を有する。
【0012】
キャブ1は、例えば運転席が設けられている箱形状の部分であり、車両の前方に設けられている。キャブ1は、例えば、サイドフレーム3の車両の高さ方向における上方に設けられている。図1及び図2に示すように、キャブ1の後面の下端には、凹部11が形成されている。キャブ1の凹部11の後方には、後述するキャブバックカバー7が設けられている。
【0013】
架装部2は、例えば荷物等が収納されている箱形状の部分であり、キャブ1の後方に設けられている。架装部2は、例えば、サイドフレーム3の車両の高さ方向における上方に設けられている。
【0014】
サイドフレーム3は、車両の前後方向において延伸している部材である。2本のサイドフレーム3が平行に設けられている。エンジン4は、車両を駆動するための動力を発生する。エンジン4は、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジンである。エンジン4は、燃料(例えば、ガソリン又は軽油)と空気を燃焼させることで温度が上昇し、動力を発生すると共に排気ガスを生じる。エンジン4は、キャブ1の下方に設けられている。エンジン4は、車両の前後方向において、ファン5の後方に設けられている。
【0015】
ファン5は、空気を流す送風機である。ファン5は、例えば、エンジン4に軸を介して連結されており、エンジン4から動力を受けて回転駆動される構造である。ファン5は、車両の前後方向における前方から後方に向かって空気を流す。ファン5は、キャブ1の下方に設けられている。ファン5は、車両の前後方向において、エンジン4の前方、かつラジエータ6の後方に設けられている。
【0016】
ラジエータ6は、エンジン4を冷却するエンジン冷却水を冷却する。エンジン冷却水は、ラジエータ6とエンジン4との間で循環している。ラジエータ6は、エンジン4を流れることで加熱されたエンジン冷却水を冷却する。
【0017】
ラジエータ6は、キャブ1の下方に設けられている。ラジエータ6は、車両の前後方向において、ファン5の前方に設けられている。ラジエータ6は、前面に冷却用の空気(例えば、走行風又はファン5よって流れる空気)を流入させる空気流入口を有し、後面に当該空気流入口から流入した冷却用の空気を流出させる空気流出口を有する。ラジエータ6は、前面の空気流入口から流入した冷却用の空気と、エンジン4で加熱されたエンジン冷却水とを熱交換することで、エンジン4で加熱されたエンジン冷却水を冷却する。ラジエータ6で冷却されたエンジン冷却水は、エンジン4に流入する。
【0018】
ラジエータ6の後面の空気流出口から流出する空気は、ラジエータ6においてエンジン4で加熱されたエンジン冷却水の熱を奪うことで、ラジエータ6の前面の空気流入口に流入する空気に比べて、温度が上昇する。ラジエータ6の空気流出口から流出した空気は、後方に向かって流れる。具体的には、ラジエータ6の後面の空気流出口から流出した空気は、例えば、ファン5を通過して、エンジン4の周囲を流れて、キャブ1の後面の凹部11の内側から、キャブバックカバー7の内側に流入する。
【0019】
キャブバックカバー7の内側に流入する空気は、ラジエータ6に流入する前の空気と比べて、ラジエータ6においてエンジン4で加熱されたエンジン冷却水の熱を奪うことで加熱され、さらにエンジン4の周囲を流れることでエンジン4によって加熱されることで温度が上昇する。
【0020】
キャブバックカバー7は、例えば、エンジン4が作動することで生じる騒音が周囲に伝わるのを抑制したり、キャブ1後方の見栄えを向上させたり、加熱された空気が周囲に散乱して流れてしまうのを抑制したりする。図1及び図3に示すように、キャブバックカバー7は、キャブ1の後方に設けられている。具体的には、例えば、キャブバックカバー7は、キャブ1の後面に、凹部11を覆うようにして設けられている。
【0021】
キャブバックカバー7は、ラジエータ6及びエンジン4で加熱された空気を、前方から流入させて、上方、後方、左方、右方に流出させるのを抑制し、下方に向かって流出させる。この結果、キャブバックカバー7は、ラジエータ6及びエンジン4で加熱された空気を、車両の下方、例えば架装部2の下方に向かって流すことができるので、加熱された空気が周囲に散乱して流れてしまうのを抑制することができる。
【0022】
[キャブバックカバー7の構造]
図4は、本実施形態に係るキャブバックカバー7の構造を示す図である。図5は、図4で示すキャブバックカバー7をAの向きから見たときの右側面部74付近の構造を示す図である。図6は、図4で示すキャブバックカバー7の断面図である。図6(a)は、図4で示すキャブバックカバー7のX-X線断面図である。図6(b)は、図4で示すキャブバックカバー7のY-Y線断面図である。
【0023】
キャブバックカバー7は、上面部71、後面部72、左側面部73、及び右側面部74を有する。上面部71は、前方から流入した空気が上方に向かって流出するのを抑制する。上面部71は、例えば板状である。図1及び図3に示すように、上面部71の前端は、例えばキャブ1の後面における凹部11の上端付近に固定されている。具体的には、上面部71の前端は、キャブ1の後面に接した状態で、キャブ1の後面に固定されている。
【0024】
上面部71は、第1上面領域711、及び第2上面領域712を有する。第1上面領域711は、前方から後方に向かうにつれて、車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度で車両の高さ方向における下方に向かって延伸している領域である。第2上面領域712は、第1上面領域711の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度よりも大きい第4の角度で車両の高さ方向における下方に向かって延伸している領域である。
【0025】
後面部72は、前方から流入した空気が後方に向かって流出するのを抑制する。具体的には、後面部72は、例えば平板形状であり、車両の高さ方向において延在している。
【0026】
左側面部73は、前方から流入した空気が左方に向かって流出するのを抑制する。左側面部73は、例えば板状である。左側面部73の前端は、例えばキャブ1の後面における凹部11の左端付近に固定されている。左側面部73は、前方領域731、及び後方領域732を有する。
【0027】
前方領域731は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域である。第1の角度は、例えば、キャブバックカバー7の成形時の抜き勾配の角度であり、10度以下である。具体的には、前方領域731は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における右側に向かって延伸している領域である。
【0028】
後方領域732は、前方領域731の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域である。具体的には、後方領域732は、前方領域731の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における右側に向かって延伸している領域である。
【0029】
右側面部74は、前方から流入した空気が右方に向かって流出するのを抑制する。右側面部74は、例えば板状である。右側面部74の前端は、例えばキャブ1の後面における凹部11の右端付近に固定されている。右側面部74は、前方領域741、及び後方領域742を有する。
【0030】
前方領域741は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域である。具体的には、前方領域741は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における左側に向かって延伸している領域である。
【0031】
後方領域742は、前方領域741の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域である。具体的には、後方領域742は、前方領域741の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における左側に向かって延伸している領域である。
【0032】
図7は、従来のキャブバックカバー9の構造を示す図である。図8は、図7で示す従来のキャブバックカバー9の断面図である。図8(a)は、図7で示す従来のキャブバックカバー9のX-X線断面図である。図8(b)は、図7で示す従来のキャブバックカバー9のY-Y線断面図である。
【0033】
従来のキャブバックカバー9は、本実施形態に係るキャブバックカバー7と比べて、左側面部93及び右側面部94が、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して所定の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域を有するものの、当該領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して当該所定の角度よりも大きい所定の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域を有していない点で異なる。
【0034】
従来のキャブバックカバー9は、上面部91、後面部92、左側面部93、及び右側面部94を有する。上面部91は、上面部71と同様に、前方から流入した空気が上方に向かって流出するのを抑制する。上面部91は、上面部71と同様に、第1上面領域911、及び第2上面領域912を有する。
【0035】
第1上面領域911は、第1上面領域711と同様に、前方から後方に向かうにつれて、車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度で車両の高さ方向における下方に向かって延伸している領域である。第2上面領域912は、第1上面領域911の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の高さ方向と直交する水平方向に対して第3の角度よりも大きい第4の角度で車両の高さ方向における下方に向かって延伸している領域である。
【0036】
後面部92は、後面部72と同様に、前方から流入した空気が後方に向かって流出するのを抑制する。左側面部93は、左側面部73と同様に、前方から流入した空気が左方に向かって流出するのを抑制する。左側面部93は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して、例えば第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域を有する。
【0037】
右側面部94は、右側面部74と同様に、前方から流入した空気が右方に向かって流出するのを抑制する。右側面部94は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して、例えば第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している領域を有する。
【0038】
図8に示すように、従来のキャブバックカバー9においては、前方からキャブバックカバー9に流入した加熱された空気の一部は、左側面部93の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる。そして、左側面部93の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気は、後面部92における左側面部93と接続されている端部付近の領域に衝突する。同様に、前方からキャブバックカバー9に流入した加熱された空気の一部は、右側面部94の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる。そして、右側面部94の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気は、後面部92における右側面部94と接続されている端部付近の領域に衝突する。
【0039】
この結果、例えば、キャブバックカバー9の内側における後面部92の左側面部93と接続されている端部付近においては、左側面部93の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気のよどみ領域が生じてしまう。同様に、例えば、キャブバックカバー9の内側における後面部92の右側面部94と接続されている端部付近においては、右側面部94の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気のよどみ領域が生じてしまう。
【0040】
すなわち、左側面部93の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気は、キャブバックカバー9の内側における後面部92の左側面部93と接続されている端部付近において、流速が遅くなってしまう。同様に、右側面部94の内側面に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気は、キャブバックカバー9の内側における後面部92の右側面部94と接続されている端部付近において、流速が遅くなってしまう。
【0041】
よって、キャブバックカバー9に流入した加熱された空気はキャブバックカバー9の内側において流速が減少し、キャブバックカバー9の内側に籠ってしまう。この結果、例えばキャブ1の下方に設けられている車両の部品に対して熱害が生じてしまう恐れがある。
【0042】
これに対して、図6に示すように、本実施形態に係るキャブバックカバー7においては、前述したように、左側面部73は、前方領域731及び後方領域732を有し、右側面部74は、前方領域741及び後方領域742を有する。
【0043】
よって、キャブバックカバー7の内側において、左側面部73の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる加熱された空気は、前方領域731、後方領域732に沿って流れた後に、後面部72の後方領域732と接続されている端部付近に流れる。
【0044】
前方領域731は、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸しており、後方領域732は、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している。すなわち、左側面部73は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に近い方向から、車両の車幅方向に近い方向に変化している。よって、左側面部73の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる加熱された空気は、後面部72に直角に近い角度で衝突しづらくなり、流速が減少しづらくなる。
【0045】
同様に、キャブバックカバー7の内側において、右側面部74の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる加熱された空気は、前方領域741、後方領域742に沿って流れた後に、後面部72の後方領域742と接続されている端部付近に流れる。
【0046】
前方領域741は、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸しており、後方領域742は、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している。すなわち、右側面部74は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に近い方向から、車両の車幅方向に近い方向に変化している。よって、右側面部74の内側面に沿って前方から後方に向かって流れる加熱された空気は、後面部72に直角に近い角度で衝突しづらくなり、流速が減少しづらくなる。
【0047】
よって、キャブバックカバー7の内側に流入した加熱された空気は、キャブバックカバー7の内側において流速が減少しづらくなるので、キャブバックカバー7の内側に流入した加熱された空気は、キャブバックカバー7の内側に籠りづらくなる。この結果、車両の部品に対して熱害が生じづらくなる。
【0048】
また、キャブバックカバー7が、前方領域731及び後方領域732を有する左側面部73、及び前方領域741及び後方領域742を有する右側面部74を有することで、例えば、樹脂を用いてスタンピング成形によってキャブバックカバー7を製造する場合に成形不良を抑制することが可能になる。具体的には、例えば下型及び上型を用いて樹脂をプレスする場合において、左側面部73が前方領域731及び後方領域732を有し、右側面部74が前方領域741及び後方領域742を有することで、下型の上面に樹脂をチャージする際に、樹脂が下型の上面に沿って流れ易くなることで、成形不良を抑制することが可能になる。
【0049】
また、前方領域731の上端は、第1上面領域711の左側端に接続されている。また、前方領域741の上端は、第1上面領域711の右側端に接続されている。後方領域732の上端は、第2上面領域712の左側端に接続されている。また、後方領域742の上端は、第2上面領域712の右側端に接続されている。
【0050】
キャブバックカバー7は、このような構造を有することで、前方からキャブバックカバー7の内側に流入した加熱された空気において、左側面部73に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気の流速、及び右側面部74に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気の流速が減少しづらくなるのに加えて、上面部71に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気の流速も減少しづらくなる。この結果、キャブバックカバー7においては、前方から内側に流入した加熱された空気の流速が、キャブバックカバー7の内側において、さらに減少しづらくなる。
【0051】
上記実施形態においては、キャブバックカバー7は、前方領域731及び後方領域732を有する左側面部73、及び前方領域741及び後方領域742を有する右側面部74を有する例を示したが、これに限定されない。キャブバックカバー7は、左側面部73及び右側面部74のうちの少なくとも一つが、前方領域及び後方領域を有している構造であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、前方領域は、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している例を示したが、これに限定されない。前方領域は、車両の前後方向において延伸していてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、前方領域731、後方領域732、前方領域741、及び後方領域742は、共に平面である例を示したが、これに限定されない。前方領域731、後方領域732、前方領域741、及び後方領域742は、共に曲面であってもよい。
【0054】
[本実施形態に係るキャブバックカバー7による効果]
本実施形態に係るキャブバックカバー7は、車両のキャブ1の後方に設けられているキャブバックカバー7であって、前方から流入した空気が上方に向かって流出するのを抑制する上面部71と、前方から流入した空気が後方に向かって流出するのを抑制する後面部72と、前方から流入した空気が左方に向かって流出するのを抑制する左側面部73と、前方から流入した空気が右方に向かって流出するのを抑制する右側面部74と、を有する。
【0055】
そして、左側面部73及び右側面部74のうちの少なくとも一つは、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している前方領域と、前方領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している後方領域と、を有する。
【0056】
本実施形態に係るキャブバックカバー7においては、このように、左側面部73及び右側面部74のうちの少なくとも一つが、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している前方領域と、前方領域の後端に接続されており、前方から後方に向かうにつれて、車両の前後方向に対して第1の角度よりも大きい第2の角度で車両の車幅方向における内側に向かって延伸している後方領域と、を有する。
【0057】
キャブバックカバー7は、上記の構成を有することにより、キャブバックカバー7の内側において、左側面部73に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気の流速、及び右側面部74に沿って前方から後方に向かって流れた加熱された空気の流速を減少させづらくすることができる。よって、キャブバックカバー7は、キャブバックカバー7の内側において、加熱された空気の流速を減少させづらくすることで、前方から流入した加熱された空気をキャブバックカバー7の内側において籠りづらくすることができる。この結果、キャブバックカバー7は、車両の部品に対して熱害を生じさせづらくすることができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0059】
1・・・キャブ
11・・・凹部
2・・・架装部
3・・・サイドフレーム
4・・・エンジン
5・・・ファン
6・・・ラジエータ
7・・・キャブバックカバー
71・・・上面部
711・・・第1上面領域
712・・・第2上面領域
72・・・後面部
73・・・左側面部
731・・・前方領域
732・・・後方領域
74・・・右側面部
741・・・前方領域
742・・・後方領域
9・・・従来のキャブバックカバー
91・・・上面部
911・・・第1上面領域
912・・・第2上面領域
92・・・後面部
93・・・左側面部
94・・・右側面部
図1
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図8