(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】検査用シール
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0507 20210101AFI20220720BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61B5/0507 100
A61F13/02 310D
(21)【出願番号】P 2018230956
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野村 彩英子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 司
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5662110(US,A)
【文献】国際公開第2017/057524(WO,A1)
【文献】特開2006-130865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
A61B 10/00
A61F 13/02
G01N 22/00
G01S 13/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールであって、
検査対象におけるスキャンの指標を有するベースフィルムと、
前記ベースフィルムに積層された粘着層と、を備え、
前記ベースフィルムは、前記粘着層に接する面である裏面と、裏面とは反対側の面であり、検査対象の検査時にプローブがスキャンされる表面とを含み、
前記ベースフィルムの前記表面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、JIS K 7125:1999に規定される動摩擦係数であって、前記表面と金属製の表面との間の動摩擦係数が3以下である
検査用シール。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から形成された被塗布面を有し、前記被塗布面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.2μm以上であるセパレートフィルムをさらに備え、
前記ベースフィルムの前記表面は、前記被塗布面に接する面であり、かつ、前記被塗布面に追従した形状を有する
請求項1に記載の検査用シール。
【請求項3】
JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度であって、前記ベースフィルムに対する前記セパレートフィルムの剥離強度が、0.3N/25mm以下である
請求項2に記載の検査用シール。
【請求項4】
前記ベースフィルムの前記表面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが5μm未満である
請求項3に記載の検査用シール。
【請求項5】
前記セパレートフィルムの前記被塗布面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが7μm未満である
請求項4に記載の検査用シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールに関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんの検査方法として、マイクロ波を用いたマンモグラフィーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、検査対象である乳房を圧迫する必要がないため、被検者は検査時に痛みを感じることがない。また、マイクロ波を用いたマンモグラフィーではX線を用いないため、被検者が被爆しない。
【0003】
マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、プローブによって乳房の全体をスキャンする。この際に、スキャン漏れが生じないように、座標グリッドが印字されたタトゥーシールが、乳房に貼り付けられる。タトゥーシールは、粘着層と受像層とを備えている(例えば、特許文献2,3を参照)。受像層には、インクジェットプリンターなどを用いて座標グリッドが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/057524号
【文献】特開平11-227390号公報
【文献】特開2000-160111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載のタトゥーシールでは、粘着層と受像層とを含む積層体が、水溶性糊層を介して台紙に支持されている。そのため、粘着層によって受像層を被検者に貼り付ける場合には、水溶性糊層を水によって溶かし、粘着層と受像層とを含む積層体を台紙から分離する必要がある。こうしたタトゥーシールでは、受像層に与えられた水が、受像層においてべたつきを生じさせることがある。受像層のべたつきは、受像層の表面に沿ったプローブのスキャンを妨げることがある。
【0006】
また、特許文献3に記載のタトゥーシールでは、受像層を支持する保護層の表面が、タトゥーシールが被検者に貼り付けられた場合の表面を構成する。そのため、保護層の表面が、プローブによるスキャンの対象である。このタトゥーシールでは、タトゥーシールの使用前において、保護層と保護層を支持する剥離紙とを疑似接着させることによって、保護層から剥離紙を剥離した後における保護層の表面におけるべたつきを抑えてはいる。しかしながら、プローブが接する表面を備えた保護層、すなわちベースフィルムには、ベースフィルムの表面に対するプローブのスキャンを円滑にする上で、いまだ改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、ベースフィルムの表面に対するプローブのスキャンを円滑に行うことを可能とした検査用シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための検査用シールは、マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールである。検査対象におけるスキャンの指標を有するベースフィルムと、前記ベースフィルムに積層された粘着層と、を備える。前記ベースフィルムは、前記粘着層に接する面である裏面と、裏面とは反対側の面であり、検査対象の検査時にプローブがスキャンされる表面とを含む。前記ベースフィルムの前記表面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、JIS K 7125:1999に規定される動摩擦係数であって、前記表面と金属製の表面との間の動摩擦係数が3以下である。
【0009】
上記構成によれば、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ、ベースフィルムの表面と金属製の表面との間の動摩擦係数が3以下であるため、プローブを用いてベースフィルムの表面をスキャンする際に、プローブが表面に対して滑りやすい。これにより、ベースフィルムの表面に対するプローブのスキャンを円滑に行うことが可能である。
【0010】
上記検査用シールにおいて、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から形成された被塗布面を有し、前記被塗布面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.2μm以上であるセパレートフィルムをさらに備え、前記ベースフィルムの前記表面は、前記被塗布面に接する面であり、かつ、前記被塗布面に追従した形状を有してもよい。
【0011】
上記構成によれば、セパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaが0.2μm以上であるため、被塗布面に対してベースフィルムを形成するための塗液を塗布することによってベースフィルムを形成する場合に、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが0.1μm以上である確実性を高めることができる。これにより、プローブによるスキャンの円滑性が高められた表面を有したベースフィルムを含む検査用シールを得ることが可能である。
【0012】
上記検査用シールにおいて、JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度であって、前記ベースフィルムに対する前記セパレートフィルムの剥離強度が、0.3N/25mm以下であってもよい。
【0013】
上記構成によれば、剥離強度が0.3N/25mm以下であることによって、ベースフィルムからセパレートフィルムが剥がれにくくなることが抑えられる。これにより、検査用シールの取り扱い性を高めることができる。
【0014】
上記検査用シールでは、前記ベースフィルムの前記表面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが5μm未満であってもよい。上記構成によれば、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが5μm未満であることによって、ベースフィルムに対するセパレートフィルムの剥離強度が0.3N/25mm以下である確実性を高めることが可能である。
【0015】
上記検査用シールでは、前記セパレートフィルムの前記被塗布面において、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが7μm未満であってもよい。上記構成によれば、セパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaが7μm未満であるため、被塗布面に対してベースフィルムを形成するための塗液を塗布することによってベースフィルムを形成する場合に、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが5μm未満である確実性を高めることができる。これにより、ベースフィルムからセパレートフィルムが剥がれにくくなることが抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースフィルムの表面に対するプローブのスキャンを円滑に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態における検査用シールの構造を示す断面図。
【
図2】ベースフィルムの表面と対向する平面視における検査用シールの構造を示す平面図。
【
図3】検査用シールが使用されるときの積層体の構造を示す断面図。
【
図4】検査用シールの使用方法を説明するための模式図。
【
図5】検査用シールの製造方法における一工程を説明するための工程図。
【
図6】検査用シールの製造方法における一工程を説明するための工程図。
【
図7】検査用シールの製造方法における一工程を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から
図7を参照して、検査用シールの一実施形態を説明する。以下では、検査用シールの構成、検査用シールの使用方法、検査用シールの製造方法、および、実施例を順に説明する。
【0019】
[検査用シールの構成]
図1および
図2を参照して、検査用シールの構成を説明する。
図1が示すように、検査用シール10は、マイクロ波を用いた画像診断の一例であるマンモグラフィーに用いられるシールである。検査用シール10は、マンモグラフィーにおいて、検査対象である乳房に貼り付けられるシールである。
【0020】
検査用シール10は、ベースフィルム11と、粘着層12とを備えている。ベースフィルム11は、検査対象におけるスキャンの位置を案内するための座標グリッド13を有している。座標グリッド13は、スキャンの指標における一例である。粘着層12は、ベースフィルム11に積層されている。ベースフィルム11は、粘着層12に接する面である裏面11Rと、裏面11Rとは反対側の面である表面11Fとを含んでいる。表面11Fは、検査対象の検査時にプローブがスキャンされる面である。
【0021】
ベースフィルム11の表面11Fにおいて、以下の2つの条件が満たされる。
(条件1)JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.1μm以上である。
(条件2)JIS K 7125:1999に規定される動摩擦係数であって、表面11Fと金属製の表面との間の動摩擦係数が3以下である。
【0022】
ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ、ベースフィルム11の表面11Fと金属製の表面との間の動摩擦係数が3以下であるため、プローブを用いてベースフィルム11の表面11Fをスキャンする際に、プローブが表面11Fに対して滑りやすい。これにより、ベースフィルム11の表面11Fに対するプローブのスキャンを円滑に行うことが可能である。
【0023】
検査用シール10は、セパレートフィルム14をさらに備えている。セパレートフィルム14は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から形成された被塗布面14Rを有している。ベースフィルム11の表面11Fは、被塗布面14Rに接する面であり、被塗布面14Rに追従した形状を有している。
【0024】
セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおいて、以下の条件が満たされることが好ましい。
(条件3)被塗布面14Rにおいて、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが0.2μm以上である。
【0025】
セパレートフィルム14の被塗布面14Rに対してベースフィルム11を形成するための塗液を塗布することによってベースフィルム11を形成する場合には、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaは、セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaよりも小さくなる傾向を有する。また、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaは、セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが大きくなるほど、大きくなる傾向を有する。
【0026】
上述したように、セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが0.2μm以上である。そのため、被塗布面14Rに対してベースフィルム11を形成するための塗液を塗布することによってベースフィルム11を形成する場合に、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが0.1μm以上である確実性を高めることができる。これにより、プローブによるスキャンの円滑性が高められた表面11Fを有したベースフィルム11を含む検査用シール10を得ることが可能である。
【0027】
また、ベースフィルム11に対するセパレートフィルム14の剥離強度が、以下の条件を満たすことが好ましい。
(条件4)JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度が、0.3N/25mm以下である。
【0028】
剥離強度が0.3N/25mm以下であることによって、ベースフィルム11からセパレートフィルム14が剥がれにくくなることが抑えられる。これにより、検査用シール10の取り扱い性を高めることができる。なお、2つの層の境界における少なくとも一方の面での算術平均粗さRaが大きくなるほど、2つの層間における剥離強度は大きくなる傾向を有する。また、2つの層の境界における少なくとも一方の面での算術平均粗さRaが大きくなるほど、2つの層間における密着性は高くなる傾向を有する。本実施形態によれば、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaを0.1μm以上としつつも、ベースフィルム11に対するセパレートフィルム14の剥離強度が0.3N/25mm以下であることによって、プローブによるスキャンの円滑性と、検査用シール10の取り扱い性との両方を高めることが可能である。
【0029】
ベースフィルム11の表面11Fにおいて、さらに以下の条件が満たされることが好ましい。
(条件5)JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが5μm未満である。
【0030】
ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが5μm未満であることによって、ベースフィルム11に対するセパレートフィルム14の剥離強度が0.3N/25mm以下である確実性を高めることが可能である。
【0031】
セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおいて、さらに以下の条件が満たされることが好ましい。
(条件6)JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さRaが7μm未満である。
【0032】
セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが7μm未満であるため、被塗布面14Rに対してベースフィルム11を形成するための塗液を塗布することによってベースフィルム11を形成する場合に、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが5μm未満である確実性を高めることができる。これにより、ベースフィルム11からセパレートフィルム14が剥がれにくくなることが抑えられる。
【0033】
ベースフィルム11を形成するための合成樹脂は、例えばポリウレタン樹脂であってよい。ポリウレタン樹脂は、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、および、カーボネート系ポリウレタン樹脂から構成される群から選択される少なくとも1つを含むことができる。これにより、貼合適正が高く、かつ、透湿度が高いベースフィルム11を得ることが可能である。
【0034】
エーテル系ポリウレタン樹脂は、エーテル結合(‐O‐)を含むエーテル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。エステル系ポリウレタン樹脂は、エステル結合(‐COO‐)を含むエステル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。カーボネート系ポリウレタン樹脂は、カーボネート結合(‐OC(=O)O‐)を含むポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。ベースフィルム11の厚さは、例えば5μm以上30μm以下であってよい。
【0035】
上述したように、ベースフィルム11は、互いに対向する一対の面として表面11Fと裏面11Rとを備えている。本実施形態では、座標グリッド13は裏面11Rに位置している。ベースフィルム11は、透明または半透明である。ベースフィルム11において、JIS K 7361-1に規定される全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
【0036】
粘着層12は、裏面11Rを覆っている。これにより、ベースフィルム11と粘着層12とによって座標グリッド13が挟まれることによって、座標グリッド13が、検査用シール10の外表面を構成しない。そのため、座標グリッド13がベースフィルム11から剥がれにくい。ベースフィルム11と粘着層12とが重なる方向から見て、粘着層12は、ベースフィルム11の全体を覆っている。粘着層12において、ベースフィルム11に接する面が表面12Fであり、表面12Fと対向する面が裏面12Rである。粘着層12は、座標グリッド13の全体を覆い、かつ、裏面12Rが略平坦面になる程度の厚さを有している。粘着層12は、透明または半透明である。粘着層12の全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
【0037】
粘着層12を形成するための粘着剤は、例えばウレタン系粘着剤であってよい。ウレタン系粘着剤を用いて粘着層12を形成することによって、透湿度が高い粘着層12を得ることが可能である。粘着層12の厚さは、例えば5μm以上25μm以下であってよい。
【0038】
検査用シール10は、上述したセパレートフィルム14に加えて、保護フィルム15をさらに備えている。セパレートフィルム14は、ベースフィルム11の表面11Fに対して剥離可能に積層されている。保護フィルム15は、粘着層12の裏面12Rに対して剥離可能に積層されている。検査用シール10の座標グリッド13を除く部分において、JIS K 7361-1に規定される全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
【0039】
検査用シール10の座標グリッド13を除く部分において、全光線透過率が50%以上であれば、検査用シール10を乳房に貼り付ける場合に、乳房に対する座標グリッド13の位置を目視によって確認しながら、乳房に対する検査用シール10の位置を調整することが可能である。また、検査用シール10の全光線透過率が50%以上であれば、ベースフィルム11と粘着層12とを乳房に貼り付けた後に、これらを介して乳房に位置するほくろやしみの位置を、目視やカメラによって特定することが可能である。乳房におけるほくろやしみの位置は変わらないため、乳房における病巣の位置を特定する上で、乳房におけるほくろやしみの位置は重要である。
【0040】
検査用シール10において、ベースフィルム11と粘着層12との積層体が被検者に貼り付けられる。検査用シール10は、ベースフィルム11の厚さ方向において、セパレートフィルム14と保護フィルム15とが、ベースフィルム11と粘着層12との積層体を挟んでいる。そのため、ベースフィルム11と粘着層12との積層体は、これらが被検者に貼り付けられる直前まで、セパレートフィルム14と保護フィルム15とによって、外部から保護される。これにより、ベースフィルム11と粘着層12とが、被検者に貼り付けられるときまで清潔に保たれる。
【0041】
セパレートフィルム14、および、保護フィルム15は、透明または半透明な合成樹脂製のフィルムであることが好ましい。各フィルム14,15は、例えば、基材フィルムと、離型層とから構成されている。離型層は、基材フィルム上に積層されている。セパレートフィルム14の離型層が、ベースフィルム11に接している。また、保護フィルム15の離型層が、粘着層12に接している。基材フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどであってよい。なお、各フィルム14,15は、基材フィルムに代えて基材紙を備えてもよい。離型層は、例えば、シリコーン樹脂製の層、ポリプロピレン(PP)樹脂製の層、または、ポリエチレン(PE)樹脂製の層であってよい。剥離層がポリプロピレン樹脂製の層である場合には、当該層は、無延伸のポリプロピレン樹脂から形成されてもよいし、一軸あるいは二軸延伸のポリプロピレン樹脂から形成されてもよい。なお、各フィルム14,15は、基材フィルムのみから構成され、かつ、基材フィルムのなかで他の層と接する面に、剥離性を高める加工が施されていてもよい。
【0042】
セパレートフィルム14の一部には、ハーフカット加工が施されてもよい。言い換えれば、セパレートフィルム14は、セパレートフィルム14の厚さ方向において、表面からセパレートフィルム14の厚さにおける途中まで延びる切れ込みを有してもよい。なお、セパレートフィルム14において、被塗布面14Rとは反対側の面が表面である。
【0043】
図2が示すように、座標グリッド13は、複数のグリッド線13Aを含んでいる。各グリッド線13Aは、スキャン方向DSに沿って延び、かつ、複数のグリッド線13Aは、スキャン方向DSと交差する配列方向DAに沿って並んでいる。本実施形態において、紙面の左右方向がスキャン方向DSである。スキャン方向DSは、マンモグラフィーにおいて、医師または検査技師などの検査実施者が、プローブを用いて検査対象をスキャンする方向である。また、本実施形態において、配列方向DAは、紙面の上下方向である。配列方向DAは、スキャン方向DSに直交する方向である。複数のグリッド線13Aにおいて、第1の色の第1グリッド線13A1と、第1の色とは異なる第2の色の第2グリッド線13A2とが交互に並んでいる。
【0044】
第1グリッド線13A1は、例えば赤色であってよく、第2グリッド線13A2は、例えば青色であってよい。なお、第1グリッド線13A1の色である第1の色と、第2グリッド線13A2の色である第2の色とは、赤色と青色とに限らず、互いに異なる色であれば任意に設定することが可能である。
【0045】
座標グリッド13は、配列方向DAに沿って延び、かつ、スキャン方向DSに沿って並ぶ複数のグリッド線13Bをさらに含んでいる。検査用シール10が広がる平面と対向する方向から見て、複数のグリッド線13Bは、上述した複数のグリッド線13Aとともに正方格子を形成している。各グリッド線13Bにおいて、第1区分13B1と第2区分13B2とが交互に並んでいる。配列方向DAにおいて、1本の第1グリッド線13A1と1本の第2グリッド線13A2とによって挟まれる区画ごとに、第1区分13B1と第2区分13B2とが区切られている。第1区分13B1は、第1グリッド線13A1と同様、第1の色を有している。第2区分13B2は、第2グリッド線13A2と同様、第2の色を有している。
【0046】
座標グリッド13は、さらに位置標識13Cを含んでいる。本実施形態において、位置標識13Cは、座標グリッド13上における位置を特定するために用いられる数字である。位置標識13Cは、例えば、スキャン方向DSに沿って並ぶ複数の数字を含んでいる。複数の数字は、配列方向DAにおいて、端に位置する第1グリッド線13A1よりも外側に位置している。各数字は、スキャン方向DSにおいて、2本のグリッド線13Bの間に位置するか、あるいは、端に位置するグリッド線13Bよりも外側に位置している。位置標識13Cは、例えば、配列方向DAに沿って並ぶ複数の数字を含んでいる。複数の数字は、スキャン方向DSにおいて、端に位置するグリッド線13Bよりも外側に位置している。各数字は、配列方向DAにおいて、2本のグリッド線13Aの間に位置している。なお、位置標識13Cは、複数の数字に限らず、例えば、複数の文字を含んでもよい。
【0047】
座標グリッド13が位置標識13Cを含むため、検査実施者が位置標識13Cを参照することによって、検査の精度がさらに向上する可能性がある。また、乳房に病巣が発見された場合には、乳房における病巣の位置を特定するために、位置標識13Cを用いることができる。
【0048】
座標グリッド13は、インキを用いてベースフィルム11の裏面11Rに印字されている。座標グリッド13を印字するためのインキには、ベースフィルム11に対する印字が可能な任意のインキを用いることが可能である。
【0049】
検査用シール10は、座標グリッド13における所定の位置を示す標識16をさらに備えている。本実施形態では、所定の位置は、座標グリッド13の中央部である。標識16は、座標グリッド13の中央部に位置する円状の点である。標識16の形状は、円状に限らず、任意に設定することが可能である。また、標識16は、互いに離間した複数の部分によって構成されてもよい。さらには、標識16は、座標グリッド13の中央部を示していれば、座標グリッド13の中央部からずれた位置に配置されてもよい。
【0050】
[検査用シールの使用方法]
図3および
図4を参照して、検査用シール10の使用方法を説明する。
図3が示すように、検査用シール10を使用する際には、まず、使用者が、ベースフィルム11からセパレートフィルム14を剥がし、かつ、粘着層12から保護フィルム15を剥がす。なお、検査用シール10を使用する際には、セパレートフィルム14を保護フィルム15よりも先に剥がしてもよいし、保護フィルム15をセパレートフィルム14よりも先に剥がしてもよい。
【0051】
図4が示すように、粘着層12を被検者Sの乳房Bに貼り付ける。このとき、検査用シール10の標識16が、乳頭部に重なるように検査用シール10を乳房Bに貼り付ける。本実施形態では、標識16は座標グリッド13の中央部に位置しているため、標識16と乳頭部とを重ねることによって、乳頭部の周方向の全体に座標グリッド13の一部を位置させることができる。これにより、座標グリッド13の案内によって、乳房Bの全体がスキャンされやすくなる。
【0052】
ベースフィルム11と粘着層12との積層体を乳房Bに貼り付ける際には、積層体の縁を構成する4辺を外側に向けて引っ張った状態で、標識16の位置を乳頭部の位置に合わせる。次いで、積層体の上端から下端に向けて積層体を乳房Bに対して徐々に貼り付けることによって、積層体にしわが生じることが抑えられる。なお、積層体のなかで、乳頭部の上方に位置する辺が上端であり、乳頭部の下方に位置する辺が下端である。積層体にしわが生じた場合には、積層体のなかで、しわが生じた部分を乳房Bから剥離し、かつ、積層体を縁の外側に向けて引っ張る力を積層体に加えた状態で、積層体を乳房Bに貼り付ける。これにより、積層体に生じたしわを除去することが可能である。
【0053】
なお、積層体を乳房Bに貼り付ける際には、積層体を積層体の縁の外側に向けて引っ張ることが可能な治具を用いてもよい。また、上述したように、セパレートフィルム14にハーフカット加工が施されている場合には、保護フィルム15を粘着層12から剥がした後、セパレートフィルム14、ベースフィルム11、および、粘着層12から構成される積層体を乳房Bに貼り付けた後に、セパレートフィルム14をベースフィルム11から剥がしてもよい。
【0054】
上述したように、本実施形態では、スキャン方向DSに沿って延びるグリッド線13Aが、互いに異なる色を有した第1グリッド線13A1と第2グリッド線13A2とを含み、かつ、配列方向DAにおいて、第1グリッド線13A1と第2グリッド線13A2とが交互に並んでいる。そのため、検査実施者が、スキャン方向DSに沿ってプローブをスキャンさせる際に、第1グリッド線13A1に沿ったスキャンと、第2グリッド線13A2に沿ったスキャンとを交互に行うことができる。これにより、検査実施者が、同じグリッド線13Aを複数回スキャンしたり、あるグリッド線13Aのスキャンを漏らしたりすることが抑えられる。すなわち、グリッド線13Aによれば、検査実施者によるスキャンの誤りを減らすことができる。
【0055】
[検査用シールの製造方法]
図5から
図7を参照して、検査用シール10の製造方法を説明する。
図5が示すように、検査用シール10を製造する際には、まず、セパレートフィルム14を準備する。上述したように、塗液の塗布対象である被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが、0.2μm以上7μm未満であるセパレートフィルム14を準備することが好ましい。
【0056】
検査用シール10を使用する際には、ベースフィルム11からセパレートフィルム14を剥がす。そのため、ベースフィルム11を形成する材料と、セパレートフィルム14、特に被塗布面14Rを形成する材料とは、互いに剥離可能な材料である。例えば、ベースフィルム11を形成する材料がポリウレタン樹脂であり、被塗布面14Rを形成する材料が、ポリプロピレン樹脂、または、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。
【0057】
ただし、ベースフィルム11の被塗布面14Rにベースフィルム11を形成するための塗液を塗布する場合には、塗液に対する被塗布面14Rの濡れ性が高いことが好ましい。これにより、被塗布面14Rの全体において、ベースフィルム11の厚さにおけるばらつきを抑えることができる。この点で、上述したように、被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが0.2μm以上であることから、塗液に対する被塗布面14Rの濡れ性を高めることも可能である。
【0058】
図6が示すように、被塗布面14Rにベースフィルム11を形成するための塗液を塗布する。そして、塗液を乾燥させることによって、ベースフィルム11を形成することができる。このとき、被塗布面14Rが、塗液に対して十分な濡れ性を有するため、ベースフィルム11を形成するための塗液は、被塗布面14Rの凹凸に追従する状態で乾燥される。これにより、ベースフィルム11の表面11Fは、被塗布面14Rの凹凸に追従した凹凸を有する面になる。
【0059】
図7が示すように、ベースフィルム11の裏面11Rに、座標グリッド13と標識16とを印字する。なお、座標グリッド13および標識16を印字するための顔料には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」により規定される化粧品基準を満たす顔料を用いることが好ましい。また、顔料の溶媒あるいは分散媒は、トルエンを含まないことが好ましい。
【0060】
次いで、保護フィルム15上に形成した粘着層12とベースフィルム11とを貼り合わせることによって、
図1を参照して先に説明した検査用シール10を得ることができる。なお、粘着層12を形成するための粘着剤には、ISO 10993に規定される生体適合性を満たす粘着剤を用いることが好ましい。
【0061】
[実施例]
表1を参照して、検査用シールの実施例および比較例を説明する。
[比較例1]
セパレートフィルムとして、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学(株)製、FOS)を準備した。そして、エーテル系ポリオールを含む水性ポリウレタン(三井化学(株)製、タケラックWS-6021)(タケラックは登録商標)を塗工した後、水性ポリウレタンを乾燥させた。次いで、乾燥後の層を常温において2日間エージングさせることによって、15μmの厚さを有するベースフィルムを得た。これにより、比較例1の検査用シールを得た。
【0062】
[実施例1]
一対の面のうち、一方の面がマット面である二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学(株)製、FOR-MP)を準備した。そして、マット面とは反対側の非マット面にサンドブラスト処理を施すことによって、非マット面の表面に微細な凹凸を形成した。次いで、比較例1と同様の方法によって、非マット面にベースフィルムを形成した。これにより、実施例1の検査用シールを得た。
【0063】
[実施例2]
セパレートフィルムとして、ポリプロピレン(PP)ラミネート離型紙(リンテック(株)製、EV130TPSG)を準備した。そして、比較例1と同様の方法によって、セパレートフィルムの1つの面にベースフィルムを形成した。これにより、実施例2の検査用シールを得た。
【0064】
[実施例3]
セパレートフィルムとして、ポリプロピレン(PP)ラミネート離型紙(リンテック(株)製、EV130TPD)を準備した。そして、比較例1と同様の方法によって、セパレートフィルムの1つの面にベースフィルムを形成した。これにより、実施例3の検査用シールを得た。
【0065】
[実施例4]
エーテル系ポリオールを含む水性ポリウレタンを、エーテル系ポリオールを含む水性ポリウレタン(三井化学(株)、タケラックW-5661)に変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例4の検査用シールを得た。
【0066】
[実施例5]
エーテル系ポリオールを含む水性ポリウレタンを、カーボネート系ポリオールを含む水性ポリウレタン(三井化学(株)、タケラックW-6110)に変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例5の検査用シールを得た。
【0067】
[実施例6]
セパレートフィルムを、ポリプロピレン(PP)ラミネート離型紙(リンテック(株)、EV130TPD FN-L)に変更した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例6の検査用シールを得た。
【0068】
[評価方法]
[算術平均粗さRa]
JIS B 0601:2013の「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ」に準拠する方法によって、表面粗さ・輪郭形状統合測定機((株)東京精密、サーフコム130A)(サーフコムは登録商標)を用いて算術平均粗さRaを測定した。
【0069】
[動摩擦係数]
JIS K 7125:1999の「プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法」に準拠する方法によって、ベースフィルムの表面における動摩擦係数を測定した。動摩擦係数の測定には、摩擦係数測定機((株)東洋精機製作所、TR-2)を用いた。
【0070】
動摩擦係数を測定する際には、平滑なガラス板の上にアルミ板を配置し、アルミ板に各ベースフィルムの裏面が接するようにベースフィルムを貼り付けた。そして、200gの荷重を有したアルミ板をおもりとして準備した。次いで、ベースフィルムの表面とおもりとを接触させた状態で、おもりを100mm/minの速度で滑らせて摩擦力を測定し、40mmだけおもりを滑らせた際の動摩擦係数を算出した。
【0071】
[剥離強度]
JIS Z 0237:2009の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠する方法によって、ベースフィルムに対するセパレートフィルムの剥離強度を測定した。剥離強度の測定には、卓上精密万能試験機((株)島津製作所、AGS-X 5kN)を用いた。剥離強度を測定する際には、各検査用シールから25mmの幅を有した試験片を切り出した。そして、卓上精密万能試験機にセパレートフィルムを固定し、ベースフィルムをセパレートフィルムに対して180°剥離するときの強度を算出した。
【0072】
【0073】
[評価結果]
表1を参照して、各評価による結果を説明する。なお、表1において、ベースフィルムの算術平均粗さRaとは、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaである。一方で、セパレートフィルムの算術平均粗さRaとは、セパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaである。
【0074】
表1が示すように、セパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaが大きいほど、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが大きい傾向が認められた。また、比較例1の検査用シールでは、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが0.1未満であって、かつ、動摩擦係数が3を超えることが認められた。また、比較例1の検査用シールでは、ベースフィルムの表面に沿ってプローブをスキャンした場合に、ベースフィルムの表面に対するプローブの引っ掛かりが感じられることが認められた。
【0075】
これに対して、実施例1から実施例6の検査用シールでは、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが0.1以上であり、かつ、動摩擦係数が3以下であることが認められた。また、実施例1から実施例6の検査用シールでは、ベースフィルムの表面に沿ってプローブをスキャンした場合に、ベースフィルムの表面に対するプローブの引っ掛かりが感じられないことが認められた。
【0076】
なお、実施例6の検査用シールでは、動摩擦係数が3.0以下であるため、ベースフィルムの表面に沿ってプローブをスキャンした場合には、ベースフィルムの表面に対するプローブの引っ掛かりが感じられないことが認められてはいる。しかしながら、実施例6の検査用シールでは、剥離強度が0.3N/25mmを超えるために、ベースフィルムからセパレートフィルムを剥がすために大きな力を要するため、検査用シールの取り扱い性が低いことが認められた。
【0077】
これに対して、実施例1から実施例5の検査用シールでは、剥離強度が0.3N/25mm以下であるため、ベースフィルムからセパレートフィルムを剥がすことに困難性が感じられないことが認められた。
【0078】
このように、ベースフィルムの表面に沿ったプローブのスキャンを円滑にする上では、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ、動摩擦係数が3.0以下であることが好ましい。この場合に、ベースフィルムの表面に対応するセパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaは、0.3μm以上であれば、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaを0.2μm以上とすることが可能である。
【0079】
検査用シールの取り扱い性を高める上では、ベースフィルムの表面における算術平均粗さRaは、5.0未満であることが好ましい。この際に、ベースフィルムの表面に対応するセパレートフィルムの被塗布面における算術平均粗さRaは、7.0μm未満であることが好ましい。
【0080】
以上説明したように、検査用シールの一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)プローブを用いてベースフィルム11の表面11Fをスキャンする際に、プローブが表面に対して滑りやすい。これにより、ベースフィルム11の表面11Fに対するプローブのスキャンを円滑に行うことが可能である。
【0081】
(2)セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが0.2μm以上であるため、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが0.1μm以上である確実性を高めることができる。
【0082】
(3)剥離強度が0.3N/25mm以下であることによって、ベースフィルム11からセパレートフィルム14が剥がれにくくなることが抑えられる。これにより、検査用シール10の取り扱い性を高めることができる。
【0083】
(4)ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが5μm未満であることによって、ベースフィルム11に対するセパレートフィルム14の剥離強度が0.3N/25mm以下である確実性を高めることが可能である。
【0084】
(5)セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaが7μm未満であるため、ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaが5μm未満である確実性を高めることができる。これにより、ベースフィルム11からセパレートフィルム14が剥がれにくくなることが抑えられる。
【0085】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[座標グリッド]
・座標グリッド13は、グリッド線13Bを有しなくてもよい。座標グリッド13は、少なくともグリッド線13Aを有していれば、検査実施者によるスキャンの誤りを減らすことはできる。すなわち、ベースフィルム11は、座標グリッド13に限らず、1つの方向に沿って延びる形状などの他の形状を有したスキャンの指標を有してもよい。スキャンの指標は、例えば、プローブによってスキャンすべき位置を案内したり、スキャンの方向を案内したりするものであればよい。
【0086】
・座標グリッド13は、位置標識13Cを有しなくてもよい。座標グリッド13は、少なくともグリッド線13Aを有していれば、検査実施者によるスキャンの誤りを減らすことはできる。
【0087】
・全てのグリッド線13Aは、同一の色を有してもよい。この場合であっても、グリッド線13Aは、プローブによるスキャンの方向を案内することは可能である。
・ベースフィルム11の表面11Fと対向する平面視において、座標グリッド13は正方格子以外の形状を有してもよい。例えば、座標グリッド13は、互いに異なる直径を有した複数の同心円から構成されてもよい。言い換えれば、座標グリッド13は、極座標に対応するグリッドであってもよい。要は、座標グリッド13は、乳房Bに貼り付けられた状態で、プローブのスキャンを行う方向や位置を案内することが可能な形状を有していればよい。
【0088】
・座標グリッド13は印刷によって形成されなくてもよい。例えば、座標グリッド13は、ベースフィルム11が有する凹部や凸部によって形成されてもよい。
[標識]
・標識16は省略されてもよい。この場合であっても、検査用シール10が座標グリッド13を有していれば、乳房Bに対する座標グリッド13の位置を調整することによって、乳頭部の周方向における全体がスキャンされるように、乳房Bに対してベースフィルム11および粘着層12を貼り付けることは可能である。
【0089】
[ベースフィルム]
・検査用シール10が含むベースフィルム11が上述した条件1および条件2を満たしていれば、ベースフィルム11を形成するための合成樹脂は、ポリウレタン樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0090】
・ベースフィルム11は、セパレートフィルム14の被塗布面14Rに対する塗液の塗布に限らず、セパレートフィルム14の被塗布面14Rに対する押出しラミネート法によって形成されてもよい。
【0091】
・ベースフィルム11の表面11Fにおける算術平均粗さRaは、5μm以上であってもよい。この場合であっても、ベースフィルム11が上述した条件1および条件2を満たす限りは、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0092】
[粘着層]
・粘着層12を形成するための粘着剤は、ウレタン系粘着剤以外の粘着剤でもよい。
[セパレートフィルム]
・セパレートフィルム14は省略されてもよい。この場合であっても、ベースフィルム11が条件1および条件2を満たしていれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0093】
・セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaは、ベースフィルム11が上述した条件1および条件2を満たしていれば、0.2μm未満であってもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0094】
・セパレートフィルム14の被塗布面14Rにおける算術平均粗さRaは、7μm以上であってもよい。この場合であっても、ベースフィルム11が上述した条件5を満たしていれば、上述した(4)に準じた効果を得ることはできる。
【0095】
[保護フィルム]
・保護フィルム15は省略されてもよい。この場合であっても、ベースフィルム11が条件1および条件2を満たしていれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0096】
[検査用シール]
・ベースフィルム11に対するセパレートフィルム14の剥離強度は、0.3N/25mmよりも大きくてもよい。この場合であっても、ベースフィルム11が上述した条件1および条件2を満たす限りは、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0097】
・検査用シール10では、少なくともベースフィルム11と粘着層12との積層体における座標グリッド13以外の部分において、全光線透過率が50%以上であればよい。この場合には、ベースフィルム11からセパレートフィルム14を剥がし、かつ、粘着層12から保護フィルム15を剥がすことによって、ベースフィルム11が有する座標グリッド13を視認することが可能である。
【0098】
なお、検査用シール10では、セパレートフィルム14、ベースフィルム11、および粘着層12の積層体における座標グリッド13以外の部分において、全光線透過率が50%以上であってもよい。これにより、検査用シール10を検査対象に貼り付ける際に、セパレートフィルム14がベースフィルム11から剥がされた状態であれ、剥がされない状態であれ、ベースフィルム11が有するが座標グリッド13を視認することが可能である。
【0099】
[検査対象]
・検査対象は、乳房に限らず人体における他の部位でもよい。すなわち、検査用シール10は、マンモグラフィーに限らず他の画像診断に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10…検査用シール、11…ベースフィルム、11F,12F…表面、11R,12R…裏面、12…粘着層、13…座標グリッド、13A,13B…グリッド線、13A1…第1グリッド線、13A2…第2グリッド線、13B1…第1区分、13B2…第2区分、13C…位置標識、14…セパレートフィルム、14R…被塗布面、15…保護フィルム、16…標識。