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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】検査用シール
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0507 20210101AFI20220720BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61B5/0507 100
A61F13/02 310D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018231438
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020092769
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
(72)【発明者】
【氏名】野村 彩英子
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 司
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5662110(US,A)
【文献】国際公開第2017/057524(WO,A1)
【文献】特開2006-130865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B10/00
A61B5/05
A61F13/02
G01N22/00
G01S13/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールであって、
検査対象におけるスキャンの指標を有するベースフィルムと、
前記ベースフィルムに積層された粘着層と、を備え、
前記粘着層において、JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度であって、ステンレス製の試験板に対する前記剥離強度が、1.5N/25mm以上6.0N/25mm以下であり、
前記ベースフィルムにおいて、JIS K 7127に規定される破断強度が、前記粘着層の前記剥離強度よりも高く、
前記ベースフィルムと前記粘着層との積層体において、JIS Z 0208に規定される透湿度が、40℃かつ相対湿度90%の条件において、750g/m・day以上である
検査用シール。
【請求項2】
前記粘着層は、ウレタン系粘着剤から形成されている
請求項1に記載の検査用シール。
【請求項3】
前記ベースフィルムの厚さは、20μm以下である
請求項1または2に記載の検査用シール。
【請求項4】
前記ベースフィルムの厚さは、8μm以上である
請求項1から3のいずれか一項に記載の検査用シール。
【請求項5】
前記ベースフィルムは、エーテル系ポリウレタン樹脂から形成される
請求項1から4のいずれか一項に記載の検査用シール。
【請求項6】
前記ベースフィルムの前記破断強度が、6.3N/25mm以上10.4N/25mm以下である
請求項1から5のいずれか一項に記載の検査用シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールに関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんの検査方法として、マイクロ波を用いたマンモグラフィーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、検査対象である乳房を圧迫する必要がないため、被検者は検査時に痛みを感じることがない。また、マイクロ波を用いたマンモグラフィーではX線を用いないため、被検者が被爆しない。
【0003】
マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、プローブによって乳房の全体をスキャンする。この際に、スキャン漏れが生じないように、座標グリッドが印字されたタトゥーシールが、乳房に貼り付けられる。タトゥーシールは、粘着層と受像層とを備えている(例えば、特許文献2,3を参照)。受像層には、インクジェットプリンターなどを用いて座標グリッドが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/057524号
【文献】特開2006-130865号公報
【文献】特開2000-160111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プローブによるスキャンが終了した後に、タトゥーシールは乳房から剥がされる。タトゥーシールが乳房から剥がされた際に、粘着層の一部が乳房に残ることがある。また、タトゥーシールは、タトゥーシールの貼り付け対象から剥がされる方向の力が加えられると破れやすい。これにより、タトゥーシールの全てを乳房から剥がすには、多くの工数と時間とを要する。そのため、被検者および検査実施者の負荷を大きくしてしまう。
【0006】
一方で、乳房の検査に用いられるマイクロ波は、水分や空気によって減衰し、これによって、検査の精度が低下してしまう。そのため、検査用シールが発汗による水分を生じさせることや、検査用シールが乳房体と乳頭部との段差によって浮くために、乳房と検査用シールとの間に空気の層が形成されることの抑制が望まれている。なお、こうした事項は、検査対象が乳房である場合に限らず、人体における他の部位である場合にも共通する。
【0007】
本発明は、被検者および検査実施者の負荷を軽減すること、および、検査の精度を高めることを可能とした検査用シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための検査用シールは、マイクロ波を用いた画像診断に用いられる検査用シールである。検査対象におけるスキャンの指標を有するベースフィルムと、前記ベースフィルムに積層された粘着層と、を備える。前記粘着層において、JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度であって、ステンレス製の試験板に対する前記剥離強度が、1.5N/25mm以上6.0N/25mm以下である。前記ベースフィルムにおいて、JIS K 7127に規定される破断強度が、前記粘着層の前記剥離強度よりも高く、前記ベースフィルムと前記粘着層との積層体において、JIS Z 0208に規定される透湿度が、40℃かつ相対湿度90%の条件において、750g/m・day以上である。
【0009】
上記構成によれば、粘着層の剥離強度が6.0N/25mm以下であることによって、粘着層の一部が検査対象に残ることが抑えられる。また、ベースフィルムの破断強度が粘着層の剥離強度よりも高いため、ベースフィルムが破れにくい。これにより、被検者および検査実施者の負荷を軽減することが可能である。一方で、ベースフィルムと粘着層との積層体において、透湿度が750g/m・day以上であるため、検査対象での発汗を抑えることができる。また、粘着層の剥離強度が1.5N/25mm以上であるため、検査対象の段差を埋めるように粘着層が検査対象に貼り付くことが可能である。これにより、検査の精度を高めることができる。このように、上記検査用シールによれば、被検者および検査実施者の負荷を軽減すること、および、検査の精度を高めることが可能である。
【0010】
上記検査用シールにおいて、前記粘着層は、ウレタン系粘着剤から形成されてもよい。上記構成によれば、粘着層が、合成樹脂のなかで透湿性が高いウレタン系粘着剤から形成されるため、検査対象での発汗を抑えることができる。
【0011】
上記検査用シールにおいて、前記ベースフィルムの厚さは、20μm以下であってもよい。上記構成によれば、ベースフィルムを検査対象に貼り付けた際に、ベースフィルムの厚さが厚すぎることによってベースフィルムにしわが生じることが抑えられる。
【0012】
上記検査用シールにおいて、前記ベースフィルムの厚さは、8μm以上であってもよい。上記構成によれば、ベースフィルムを検査対象に貼り付けた際に、ベースフィルムの厚さが薄すぎることによってベースフィルムにしわが生じることが抑えられる。
【0013】
上記検査用シールにおいて、前記ベースフィルムは、エーテル系ポリウレタン樹脂から形成されてもよい。上記構成によれば、ベースフィルムの透湿性を高めることができる。
上記検査用シールにおいて、前記ベースフィルムの前記破断強度が、6.3N/25mm以上10.4N/25mm以下であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、10.4N/25mmを超える破断強度を有したベースフィルムに比べて、ベースフィルムの破れを抑えつつ、より高い透湿度を維持することが可能な範囲にベースフィルムの厚さを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検者および検査実施者の負荷を軽減し、かつ、検査の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態における検査用シールの構造を示す断面図。
図2】ベースフィルムの表面と対向する平面視における検査用シールの構造を示す平面図。
図3】検査用シールが使用されるときの積層体の構造を示す断面図。
図4】検査用シールの使用方法を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図4を参照して、検査用シールの一実施形態を説明する。以下では、検査用シールの構成、検査用シールの使用方法、および、実施例を順に説明する。
[検査用シールの構成]
図1および図2を参照して、検査用シールの構成を説明する。
【0018】
図1が示すように、検査用シール10は、マイクロ波を用いた画像診断の一例であるマンモグラフィーに用いられるシールである。検査用シール10は、マンモグラフィーにおいて、検査対象である乳房に貼り付けられるシールである。
【0019】
検査用シール10は、ベースフィルム11と、粘着層12とを備えている。ベースフィルム11は、検査対象におけるスキャンの位置を案内するための座標グリッド13を有している。座標グリッド13は、スキャンの指標における一例である。ベースフィルム11は、ポリウレタン樹脂から形成されている。本実施形態では、粘着層12は、ウレタン系粘着剤から形成されている。粘着層12は、ベースフィルム11に積層されている。
【0020】
検査用シール10では、以下の3つの条件が満たされる。
(条件1)粘着層12において、JIS Z 0237:2009に規定される剥離強度であって、ステンレス製の試験板に対する剥離強度が、1.5N/25mm以上6.0N/25mm以下である。
【0021】
(条件2)ベースフィルム11において、JIS K 7127に規定される破断強度が、粘着層12の剥離強度よりも高い。
(条件3)ベースフィルム11と粘着層12との積層体において、JIS Z 0208に規定される透湿度が、40℃かつ相対湿度90%の条件において、750g/m・day以上である。
【0022】
検査用シール10によれば、粘着層12の剥離強度が6.0N/25mm以下であることによって、粘着層12の一部が乳房に残ることが抑えられる。また、ベースフィルム11の破断強度が粘着層12の剥離強度よりも高いため、ベースフィルム11が破れにくい。これにより、被検者および検査実施者の負荷を軽減することが可能である。一方で、ベースフィルム11と粘着層12との積層体において、JIS Z 0208に規定される透湿度が、40℃かつ相対湿度90%の条件において、750g/m・day以上であるため、乳房での発汗を抑えることができる。また、粘着層12の剥離強度が1.5N/25mm以上であるため、乳房体と乳頭部との段差を埋めるように粘着層12が乳房に貼り付くことが可能である。これにより、検査の精度を高めることができる。
【0023】
また、粘着層12が、合成樹脂のなかで透過性が高いウレタン系粘着剤から形成されるため、粘着層12が貼り付けられた検査対象での発汗を抑えることができる。
ベースフィルム11を形成するためのポリウレタン樹脂は、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、および、カーボネート系ポリウレタン樹脂から構成される群から選択される少なくとも1つを含むことができる。ベースフィルム11は、エーテル系ポリウレタン樹脂から形成されることが好ましい。エーテル系ポリウレタン樹脂をベースフィルム11の形成に用いることで、ベースフィルム11の透湿性を高めることが可能である。
【0024】
なお、エーテル系ポリウレタン樹脂は、エーテル結合(‐O‐)を含むエーテル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。エステル系ポリウレタン樹脂は、エステル結合(‐COO‐)を含むエステル系ポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。カーボネート系ポリウレタン樹脂は、カーボネート結合(‐OC(=O)O‐)を含むポリオールを用いて生成されたポリウレタン樹脂である。
【0025】
ベースフィルム11の厚さは、20μm以下であることが好ましい。これにより、ベースフィルム11を乳房に貼り付けた際に、ベースフィルム11の厚さが厚すぎることによってベースフィルム11にしわが生じることが抑えられる。また、ベースフィルム11の厚さは、8μm以上であることが好ましい。これにより、ベースフィルム11を乳房に貼り付けた際に、ベースフィルム11の厚さが薄すぎることによってベースフィルム11にしわが生じることが抑えられる。
【0026】
ベースフィルム11の破断強度は、6.3N/25mm以上10.4N/25mm以下であることが好ましい。これにより、10.4N/25mmを超える破断強度を有したベースフィルム11に比べて、ベースフィルム11の破れを抑えつつ、より高い透湿度を維持することが可能な範囲にベースフィルム11の厚さを抑えることが可能である。
【0027】
ベースフィルム11は、互いに対向する一対の面を有している。一対の面は、表面11Fと裏面11Rとから構成される。本実施形態では、座標グリッド13は裏面11Rに位置している。ベースフィルム11は、透明または半透明である。ベースフィルム11において、JIS K 7361-1に規定される全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
【0028】
粘着層12は、裏面11Rを覆っている。これにより、ベースフィルム11と粘着層12とによって座標グリッド13が挟まれることによって、座標グリッド13が、検査用シール10の外表面を構成しない。そのため、座標グリッド13がベースフィルム11から剥がれにくい。ベースフィルム11と粘着層12とが重なる方向から見て、粘着層12は、ベースフィルム11の全体を覆っている。粘着層12において、ベースフィルム11に接する面が表面12Fであり、表面12Fと対向する面が裏面12Rである。粘着層12は、座標グリッド13の全体を覆い、かつ、裏面12Rが略平坦面になる程度の厚さを有している。粘着層12は、透明または半透明である。粘着層12の全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
【0029】
検査用シール10は、セパレートフィルム14と保護フィルム15とをさらに備えている。セパレートフィルム14は、ベースフィルム11の表面11Fに対して剥離可能に積層されている。保護フィルム15は、粘着層12の裏面12Rに対して剥離可能に積層されている。検査用シール10の座標グリッド13を除く部分において、JIS K 7361-1に規定される全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
【0030】
これにより、検査用シール10を乳房に貼り付ける場合に、乳房に対する座標グリッド13の位置を目視によって確認しながら、乳房に対する検査用シール10の位置を調整することが可能である。また、検査用シール10の全光線透過率が50%以上であれば、ベースフィルム11と粘着層12とを乳房に貼り付けた後に、これらを介して乳房に位置するほくろやしみの位置を、目視やカメラによって特定することが可能である。乳房におけるほくろやしみの位置は変わらないため、乳房における病巣の位置を特定する上で、乳房におけるほくろやしみの位置は重要である。
【0031】
検査用シール10において、ベースフィルム11と粘着層12との積層体が被検者に貼り付けられる。検査用シール10は、ベースフィルム11の厚さ方向において、セパレートフィルム14と保護フィルム15とが、ベースフィルム11と粘着層12との積層体を挟んでいる。そのため、ベースフィルム11と粘着層12との積層体は、これらが被検者に貼り付けられる直前まで、セパレートフィルム14と保護フィルム15とによって、外部から保護される。これにより、ベースフィルム11と粘着層12とが、被検者に貼り付けられるときまで清潔に保たれる。
【0032】
セパレートフィルム14、および、保護フィルム15は、透明または半透明な合成樹脂製のフィルムであることが好ましい。各フィルム14,15は、例えば、基材フィルムと、離型層とから構成されている。離型層は、基材フィルム上に積層されている。セパレートフィルム14の離型層が、ベースフィルム11に接している。また、保護フィルム15の離型層が、粘着層12に接している。基材フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどであってよい。離型層は、例えば、シリコーン樹脂製の層であってよい。なお、各フィルム14,15は、基材フィルムのみから構成され、かつ、基材フィルムのなかで他の層と接する面に、剥離性を高める加工が施されていてもよい。
【0033】
セパレートフィルム14の一部には、ハーフカット加工が施されてもよい。言い換えれば、セパレートフィルム14は、セパレートフィルム14の厚さ方向において、表面からセパレートフィルム14の厚さにおける途中まで延びる切れ込みを有してもよい。なお、セパレートフィルム14において、ベースフィルム11に接する面とは反対側の面が表面である。
【0034】
図2が示すように、座標グリッド13は、複数のグリッド線13Aを含んでいる。各グリッド線13Aは、スキャン方向DSに沿って延び、かつ、複数のグリッド線13Aは、スキャン方向DSと交差する配列方向DAに沿って並んでいる。本実施形態において、紙面の左右方向がスキャン方向DSである。スキャン方向DSは、マンモグラフィーにおいて、医師または検査技師などの検査実施者が、プローブを用いて検査対象をスキャンする方向である。また、本実施形態において、配列方向DAは、紙面の上下方向である。配列方向DAは、スキャン方向DSに直交する方向である。複数のグリッド線13Aにおいて、第1の色の第1グリッド線13A1と、第1の色とは異なる第2の色の第2グリッド線13A2とが交互に並んでいる。
【0035】
第1グリッド線13A1は、例えば赤色であってよく、第2グリッド線13A2は、例えば青色であってよい。なお、第1グリッド線13A1の色である第1の色と、第2グリッド線13A2の色である第2の色とは、赤色と青色とに限らず、互いに異なる色であれば任意に設定することが可能である。
【0036】
座標グリッド13は、配列方向DAに沿って延び、かつ、スキャン方向DSに沿って並ぶ複数のグリッド線13Bをさらに含んでいる。検査用シール10が広がる平面と対向する方向から見て、複数のグリッド線13Bは、上述した複数のグリッド線13Aとともに正方格子を形成している。各グリッド線13Bにおいて、第1区分13B1と第2区分13B2とが交互に並んでいる。配列方向DAにおいて、1本の第1グリッド線13A1と1本の第2グリッド線13A2とによって挟まれる区画ごとに、第1区分13B1と第2区分13B2とが区切られている。第1区分13B1は、第1グリッド線13A1と同様、第1の色を有している。第2区分13B2は、第2グリッド線13A2と同様、第2の色を有している。
【0037】
座標グリッド13は、さらに位置標識13Cを含んでいる。本実施形態において、位置標識13Cは、座標グリッド13上における位置を特定するために用いられる数字である。位置標識13Cは、例えば、スキャン方向DSに沿って並ぶ複数の数字を含んでいる。複数の数字は、配列方向DAにおいて、端に位置する第1グリッド線13A1よりも外側に位置している。各数字は、スキャン方向DSにおいて、2本のグリッド線13Bの間に位置するか、あるいは、端に位置するグリッド線13Bよりも外側に位置している。位置標識13Cは、例えば、配列方向DAに沿って並ぶ複数の数字を含んでいる。複数の数字は、スキャン方向DSにおいて、端に位置するグリッド線13Bよりも外側に位置している。各数字は、配列方向DAにおいて、2本のグリッド線13Aの間に位置している。なお、位置標識13Cは、複数の数字に限らず、例えば、複数の文字を含んでもよい。
【0038】
座標グリッド13が位置標識13Cを含むため、検査実施者が位置標識13Cを参照することによって、検査の精度がさらに向上する可能性がある。また、乳房に病巣が発見された場合には、乳房における病巣の位置を特定するために、位置標識13Cを用いることができる。
【0039】
座標グリッド13は、インキを用いてベースフィルム11の裏面11Rに印字されている。座標グリッド13を印字するためのインキには、ベースフィルム11に対する印字が可能な任意のインキを用いることが可能である。
【0040】
検査用シール10は、座標グリッド13における所定の位置を示す標識16をさらに備えている。本実施形態では、所定の位置は、座標グリッド13の中央部である。標識16は、座標グリッド13の中央部に位置する円状の点である。標識16の形状は、円状に限らず、任意に設定することが可能である。また、標識16は、互いに離間した複数の部分によって構成されてもよい。さらには、標識16は、座標グリッド13の中央部を示していれば、座標グリッド13の中央部からずれた位置に配置されてもよい。
【0041】
[検査用シールの使用方法]
図3および図4を参照して、検査用シール10の使用方法を説明する。
図3が示すように、検査用シール10を使用する際には、まず、使用者が、ベースフィルム11からセパレートフィルム14を剥がし、かつ、粘着層12から保護フィルム15を剥がす。なお、検査用シール10を使用する際には、セパレートフィルム14を保護フィルム15よりも先に剥がしてもよいし、保護フィルム15をセパレートフィルム14よりも先に剥がしてもよい。
【0042】
図4が示すように、粘着層12を被検者Sの乳房Bに貼り付ける。このとき、検査用シール10の標識16が、乳頭部に重なるように検査用シール10を乳房Bに貼り付ける。本実施形態では、標識16は座標グリッド13の中央部に位置しているため、標識16と乳頭部とを重ねることによって、乳頭部の周方向の全体に座標グリッド13の一部を位置させることができる。これにより、座標グリッド13の案内によって、乳房Bの全体がスキャンされやすくなる。
【0043】
ベースフィルム11と粘着層12との積層体を乳房Bに貼り付ける際には、積層体の縁を構成する4辺を外側に向けて引っ張った状態で、標識16の位置を乳頭部の位置に合わせる。次いで、積層体の上端から下端に向けて積層体を乳房Bに対して徐々に貼り付けることによって、積層体にしわが生じることが抑えられる。なお、積層体のなかで、乳頭部の上方に位置する辺が上端であり、乳頭部の下方に位置する辺が下端である。積層体にしわが生じた場合には、積層体のなかで、しわが生じた部分を乳房Bから剥離し、かつ、積層体を縁の外側に向けて引っ張る力を積層体に加えた状態で、積層体を乳房Bに貼り付ける。これにより、積層体に生じたしわを除去することが可能である。
【0044】
なお、積層体を乳房Bに貼り付ける際には、積層体を積層体の縁の外側に向けて引っ張ることが可能な治具を用いてもよい。また、上述したように、セパレートフィルム14にハーフカット加工が施されている場合には、保護フィルム15を粘着層12から剥がした後、セパレートフィルム14、ベースフィルム11、および、粘着層12から構成される積層体を乳房Bに貼り付けた後に、セパレートフィルム14をベースフィルム11から剥がしてもよい。
【0045】
上述したように、本実施形態では、スキャン方向DSに沿って延びるグリッド線13Aが、互いに異なる色を有した第1グリッド線13A1と第2グリッド線13A2とを含み、かつ、配列方向DAにおいて、第1グリッド線13A1と第2グリッド線13A2とが交互に並んでいる。そのため、検査実施者が、スキャン方向DSに沿ってプローブをスキャンさせる際に、第1グリッド線13A1に沿ったスキャンと、第2グリッド線13A2に沿ったスキャンとを交互に行うことができる。これにより、検査実施者が、同じグリッド線13Aを複数回スキャンしたり、あるグリッド線13Aのスキャンを漏らしたりすることが抑えられる。すなわち、グリッド線13Aによれば、検査実施者によるスキャンの誤りを減らすことができる。
【0046】
[実施例]
表1を参照して、検査用シールの実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
75μmの厚さを有した保護フィルム(東レフィルム加工(株)製、セラピールBX-9)(セラピールは登録商標)を準備した。主剤であるウレタン系粘着剤(トーヨーケム(株)製、サイアバインSP-205)(サイアバインは登録商標)と硬化剤(トーヨーケム(株)製、T-501B)とを準備した。そして、主剤が含む水酸基のモル数に対する硬化剤が含むイソシアネート基のモル数の比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)(以下、主剤と硬化剤とのモル比とも称する)が0.13になるように、ウレタン系粘着剤に硬化剤を添加し、これらを攪拌して塗液を作成した。次いで、保護フィルムに対して塗液をグラビア塗工によって塗布し、ウレタン系粘着剤を乾燥させた。これにより、厚さが10μmである粘着層を得た。次いで、ベースフィルムとして、8μmの厚さを有したウレタンフィルム(大倉工業(株)製、シルクロンHVL85SW)(シルクロンは登録商標)を準備した。そして、ベースフィルムと粘着層とを貼り合わせた後に、50℃において3日間静置した。これにより、実施例1の検査用シールを得た。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、主剤と硬化剤とのモル比を0.19に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の検査用シールを得た。
【0048】
[実施例3]
実施例1において、粘着層の厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の検査用シールを得た。
【0049】
[実施例4]
実施例2において、粘着層の厚さを20μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の検査用シールを得た。
【0050】
[実施例5]
セパレートフィルムとして、ポリプロピレン(PP)ラミネート離型紙(リンテック(株)製、EV130TPD)を準備した。そして、エーテル系ポリオールを含む水性ポリウレタン(三井化学(株)製、タケラックWS-6021)(タケラックは登録商標)を塗工した後、水性ポリウレタンを乾燥させた。次いで、乾燥後の層を常温において2日間エージングさせることによって、10μmの厚さを有するベースフィルムを得た。厚さを15μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって作成した粘着層をベースフィルムに対して貼り付けることによって、実施例5の検査用シールを得た。
【0051】
[実施例6]
実施例5において、ベースフィルムの厚さを15μmに変更した以外は、実施例5と同様の方法によって、実施例6の検査用シールを得た。
【0052】
[実施例7]
実施例6において、粘着層の厚さを20μmに変更し、かつ、主剤と硬化剤とのモル比を0.03に変更した以外は、実施例6と同様の方法によって、実施例7の検査用シールを得た。
【0053】
[実施例8]
実施例1において、主剤をアクリル系粘着剤(日本合成化学工業(株)製、コーポニール 8065)(コーポニールは登録商標)に変更し、硬化剤(東ソー(株)製、コロネート L‐55E)(コロネートは登録商標)を変更した。そして、主剤と硬化剤とのモル比を0.15に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例8の検査用シールを得た。
【0054】
[比較例1]
実施例1において、主剤と硬化剤とのモル比を0.25に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の検査用シールを得た。
【0055】
[比較例2]
ベースフィルムとして、30μmの厚さを有するPUフィルム(日本マタイ(株)製、エスマーURS)(エスマーは登録商標)を準備した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例2の検査用シールを得た。
【0056】
[比較例3]
主剤であるアクリル系粘着剤(日本合成化学工業(株)製、コーポニール N-4181)と、硬化剤(東ソー(株)製、コロネート L-55E)とを準備し、かつ、粘着層の厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例3の検査用シールを得た。
【0057】
[比較例4]
実施例7において、主剤と硬化剤とのモル比を0.01に変更した以外は、実施例7と同様の方法によって、比較例4の検査用シールを得た。
【0058】
[比較例5]
水転写式のタトゥーシール(スリーエム ジャパン(株)製、転写シール 品番:51112)を準備した。5μmの厚さを有したPVA層と、110μmの厚さを有し、かつ、PVA層を支持するセパレーターとから構成される透明糊フィルムから、セパレーターを剥離することによって、PVA層をベースフィルムとして用いた。そして、実施例1と同様の方法によって得られた粘着層をPVA層に貼り付けることによって、比較例5の検査用シールを得た。
【0059】
[評価方法]
[破断強度]
JIS K 7127の「プラスチック‐引張特性の試験方法‐第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠する方法によって、破断強度を測定した。破断強度の測定に際して、各試験用シールを、狭い平行部の幅が6mmである有したダンベル形状(試験片タイプ1B)に型抜きした。そして、引張試験機を用いて引張破断測定を実施した。試験速度を300mm/minに設定し、標線間距離Lを25mmに設定し、破断時の引張荷重を測定した。測定した引張荷重に対して25/6を乗算することにより、粘着層の幅が25mmである場合の破断強度を算出した。なお、引張破断測定の際には、ベースフィルムと粘着層とのみから構成される積層体に対して、引張破断測定を実施した。
【0060】
[剥離強度]
JIS Z 0237:2009の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠する方法によって、検査用シールの剥離強度を測定した。各検査用シールを用いて25mmの幅を有したサンプルを作成した。そして、粘着層から保護フィルムを剥離した後に、粘着層をステンレス試験板に貼り付けた。次いで、2gkの重さを有したローラーにサンプル上を2往復させることによって、サンプルに荷重を加えた後に、サンプルを30分以上静置した。その後、引張試験機を用いて、剥離速度が300mm/minであり、かつ、サンプルをステンレス試験板に対して180°に引きはがした際の剥離強度を測定した。
【0061】
[透湿度]
JIS Z 0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠する方法によって、検査用シールの透湿度を測定した。透湿度の測定時には、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を測り取った。次いで、電子天秤によって吸湿剤を含む透湿カップの初期重量を測定した。そして、検査用シールを40℃かつ相対湿度90%の環境下に2時間放置した後に、透湿カップの重量を測定した。その後、透湿カップの重量における増加分を水蒸気の透過量として算出した。
【0062】
[貼合適正]
乳癌触診訓練用モデル((株)タナック製)を用いて、検査用シールの貼合適正を評価した。モデルの乳房に検査用シールを貼り付け、以下の3項目を評価した。
【0063】
(項目1)検査用シールのしわ
(項目2)検査用シールの浮き
(項目3)検査用シールの破れにくさ
【0064】
項目1では、検査用シールを乳房に貼り付けたときに、検査用シールにしわが生じるか否かを以下の2段階で評価した。
○ しわが生じない、あるいは、微細なしわが生じるが、検査には支障がない
× 検査に支障が生じる程度に大きいしわが生じる
【0065】
項目2では、検査用シールを乳房に貼り付けたときに、検査用シールの一部が乳頭部から浮いているか否かを以下の2段階で評価した。
○ 浮きが生じない、あるいは、乳頭部の凹凸に起因した浮きが生じるが、検査には支障がない
× 検査用シールが乳頭部から大きく浮いているために、検査に支障が生じる
【0066】
項目3では、検査用シールを乳房に貼り付けた後に、検査用シールを一旦乳房から剥がし、再度検査用シールを乳房に貼り付ける操作において、以下の3つの段階を評価した。
◎ 検査用シールを乳房から急激に剥がしてもベースフィルムが破れない
○ 検査用シールを乳房からゆっくり剥がすとベースフィルムが破れない
× 検査用シールを乳房からゆっくり剥がしてもベースフィルムが破れる
【0067】
[糊残り]
各検査用シールに用いた粘着層を12μmの厚さを有したPETフィルムを支持体として形成した。そして、粘着層を人体に貼り付け、その状態で30分以上経過した後に、引張試験機を用いて、粘着層を人体に対して180°に引きはがした。この際に、剥離速度を300mm/minに設定した。人体から粘着層を引きはがしたときに糊残りが生じるか否か、すなわち、粘着層の一部が人体に残るか否かを以下の2段階で評価した。
○ 粘着層が全く残らない
× 粘着層の一部が剥がれずに人体に残る
【0068】
[発汗度合い]
各検査用シールを人体に貼り付け、その状態で30分以上経過した後に、各検査用シールを貼り付けた箇所に発汗が生じるか否かを確認した。この際に、発汗の度合いを以下の3段階で評価した。
◎ 全く発汗しない
○ マイクロ波を用いた検査に対して影響しない程度にしか発汗しない
× マイクロ波を用いた検査の結果にノイズが生じる程度に発汗する
【0069】
【表1】
【0070】
[評価結果]
表1を参照して、各評価による結果を説明する。
表1が示すように、透湿性が高いポリウレタン樹脂製の粘着層によれば、ベースフィルムと粘着層との積層体における透湿度が高く維持されることが認められた。具体的には、ポリウレタン樹脂製の粘着層を備えた積層体では、積層体の透湿度が750g/m・day以上に維持されることが認められた。また、積層体の透湿度が750g/m・day以上であれば、マイクロ波を用いた検査に対して影響しない程度の発汗しか生じないことが認められた。そして、積層体の透湿度が850g/m・day以上であれば、全く発汗しないことが認められた。
【0071】
ポリウレタン樹脂製の粘着層を用いた場合であっても、比較例1,2によるように、粘着層の剥離強度が、1.2N/25mm以下であれば、段差部に対する粘着性が低いために、乳頭部と乳房体との間の段差によって浮きが生じることが認められた。一方で、実施例4によるように、粘着層の剥離強度が1.6N/25mm以上であれば、積層体の浮きが確実に抑えられることが認められた。こうした結果から、粘着層の剥離強度が1.5N/25mm以上であることが、乳頭部と乳房体との間の段差による浮きが生じることが抑える上で好ましい。
【0072】
ただし、比較例4によるように、粘着層の剥離強度が7.2N/25mmである場合には、人体に対する粘着性が過剰に高いために、粘着層を人体から剥がしたときに、糊残りが生じることが認められた。これに対して、比較例3によるように、粘着層の剥離強度が5.4N/25mm以下であれば、糊残りが生じないことから、糊残りを抑える上では、粘着層の剥離強度が6.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0073】
このように、ベースフィルムと粘着層とから構成される積層体の浮きを抑えつつ、粘着層の糊残りを抑える上では、粘着層の剥離強度は、1.5N/25mm以上6.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0074】
また、ベースフィルムの厚さと、ベースフィルムの破断強度とは、正の相関を有することが認められた。そして、実施例5から7によるように、ベースフィルムを剥がす際に生じるベースフィルムの破れを抑える上では、破断強度が剥離強度よりも大きく、かつ、破断強度と剥離強度との差がより大きいことが好ましいと言える。しかしながら、比較例2によるように、ベースフィルムが過剰に厚いためにベースフィルムそのものの剛性が過剰に高くなると、ベースフィルムを貼り付けたときに、ベースフィルムにしわが生じやすくなる。また、ベースフィルムの剛性が過剰に高くなると、ベースフィルムを剥がしたときの形状の変化が、ベースフィルムに対する力が解除された後にも、ベースフィルムの変形として維持されやすくなる。この点で、ベースフィルムの厚さは30μm未満であることが好ましく、また、20μm以下であることがより好ましい。
【0075】
これとは反対に、比較例5によるように、ベースフィルムの厚さが薄すぎる場合にも、ベースフィルムを貼り付けたときに、ベースフィルムにしわが生じやすくなる。そのため、ベースフィルムの厚さは、5μmよりも大きいことが好ましく、また、8μm以上であることがより好ましい。
【0076】
また、実施例1から実施例8によるように、ベースフィルムの剥離強度が6.3N/25mm以上10.4N/mm以下の範囲であれば、ベースフィルムの破れを抑え、かつ、ベースフィルムの透湿度が高く維持される範囲にベースフィルムの厚さを抑えることが可能である。
【0077】
以上説明したように、検査用シールの一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)粘着層12の剥離強度が6.0N/25mm以下であることによって、粘着層12の一部が乳房Bに残ることが抑えられる。また、ベースフィルム11の破断強度が粘着層12の剥離強度よりも高いため、ベースフィルム11が破れにくい。これにより、被検者および検査実施者の負荷を軽減することが可能である。
【0078】
(2)ベースフィルム11と粘着層12との積層体において、透湿度が750g/m・day以上であるため、乳房Bでの発汗を抑えることができる。また、粘着層12の剥離強度が1.5N/25mm以上であるため、乳房Bの段差を埋めるように粘着層12が乳房Bに貼り付くことが可能である。これにより、検査の精度を高めることができる。
【0079】
(3)粘着層12が、合成樹脂のなかで透湿性が高いウレタン系粘着剤から形成されるため、乳房Bでの発汗を抑えることができる。
(4)ベースフィルム11の厚さが20μm以下であることによって、ベースフィルム11を乳房Bに貼り付けた際に、ベースフィルム11の厚さが厚すぎることによってベースフィルム11にしわが生じることが抑えられる。
【0080】
(5)ベースフィルム11の厚さが8μm以上であることによって、ベースフィルム11を乳房Bに貼り付けた際に、ベースフィルム11の厚さが薄すぎることによってベースフィルム11にしわが生じることが抑えられる。
【0081】
(6)ベースフィルム11がエーテル系ポリウレタン樹脂から形成されることによって、ベースフィルム11の透湿性を高めることができる。
(7)ベースフィルム11の破断強度が6.3N/25mm以上10.4N/25mm以下であることによって、10.4N/25mmを超える破断強度を有したベースフィルム11に比べて、ベースフィルム11の破れを抑えつつ、より高い透湿度を維持することが可能な範囲にベースフィルム11の厚さを抑えることが可能である。
【0082】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[座標グリッド]
・座標グリッド13は、グリッド線13Bを有しなくてもよい。座標グリッド13は、少なくともグリッド線13Aを有していれば、検査実施者によるスキャンの誤りを抑えることはできる。すなわち、ベースフィルム11は、座標グリッド13に限らず、1つの方向に沿って延びる形状などの他の形状を有したスキャンの指標を有してもよい。スキャンの指標は、例えば、プローブによってスキャンすべき位置を案内したり、スキャンの方向を案内したりするものであればよい。
【0083】
・座標グリッド13は、位置標識13Cを有しなくてもよい。座標グリッド13は、少なくともグリッド線13Aを有していれば、検査実施者によるスキャンの誤りを抑えることはできる。
【0084】
・全てのグリッド線13Aが、同一の色を有してもよい。この場合であっても、グリッド線13Aは、プローブによるスキャンの方向を案内することは可能である。
・ベースフィルム11の表面11Fと対向する平面視において、座標グリッド13は正方格子以外の形状を有してもよい。例えば、座標グリッド13は、互いに異なる直径を有した複数の同心円から構成されてもよい。すなわち、座標グリッド13は、極座標に対応するグリッドであってもよい。要は、座標グリッド13は、乳房Bに貼り付けられた状態で、プローブのスキャンを行う方向や位置を案内することが可能な形状を有していればよい。
【0085】
・座標グリッド13は印刷によって形成されなくてもよい。例えば、座標グリッド13は、ベースフィルム11が有する凹部や凸部によって形成されてもよい。
[標識]
・標識16は省略されてもよい。この場合であっても、検査用シール10が座標グリッド13を有していれば、乳房Bに対する座標グリッド13の位置を調整することによって、乳頭部の周方向における全体がスキャンされるように、乳房Bに対してベースフィルム11および粘着層12を貼り付けることは可能である。
【0086】
[ベースフィルム]
・ベースフィルム11は、エーテル系ポリウレタン樹脂以外のポリウレタン樹脂から形成されてもよい。ベースフィルム11は、例えば、エステル系ポリウレタン樹脂、または、カーボネート系ポリウレタン樹脂から形成されてもよい。
【0087】
・検査用シール10が含むベースフィルム11と粘着層12との積層体が上述した条件1から条件3を満たしていれば、ベースフィルム11を形成するための合成樹脂は、ポリウレタン樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0088】
・ベースフィルム11の厚さは、20μmよりも厚くてもよいし、8μmよりも薄くてもよい。この場合であっても、検査用シール10が、条件1から条件3を満たす以上は、上述した(1)および(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0089】
・ベースフィルム11の破断強度は、6.3N/25mm未満であってもよいし、10.4N/25mmを超えてもよい。この場合であっても、検査用シール10が、条件1から条件3を満たす以上は、上述した(1)および(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0090】
[粘着層]
・粘着層12を形成するための粘着剤は、ウレタン系粘着剤以外の粘着剤でもよい。例えば、実施例8によるように、粘着層12を形成するための粘着剤は、アクリル系粘着剤でもよい。この場合であっても、上述した条件1から条件3を満たす以上は、上述した(1)および(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0091】
[セパレートフィルム]
・セパレートフィルム14は省略されてもよい。この場合であっても、検査用シール10が、上述した条件1から条件3を満たすようなベースフィルム11と粘着層12とを備えていれば、上述した(1)および(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0092】
[保護フィルム]
・保護フィルム15は省略されてもよい。この場合であっても、検査用シール10が、上述した条件1から条件3を満たすようなベースフィルム11と粘着層12とを備えていれば、上述した(1)および(2)に準じた効果を得ることはできる。
【0093】
[検査用シール]
・検査用シール10では、少なくともベースフィルム11と粘着層12との積層体における座標グリッド13以外の部分において、全光線透過率が50%以上であればよい。この場合には、ベースフィルム11からセパレートフィルム14を剥がし、かつ、粘着層12から保護フィルム15を剥がすことによって、ベースフィルム11が有する座標グリッド13を視認することが可能である。
【0094】
なお、検査用シール10では、セパレートフィルム14、ベースフィルム11、および粘着層12の積層体における座標グリッド13以外の部分において、全光線透過率が50%以上であってもよい。これにより、検査用シール10を検査対象に貼り付ける際に、セパレートフィルム14がベースフィルム11から剥がされた状態であれ、剥がされない状態であれ、ベースフィルム11が有する座標グリッド13を視認することが可能である。
【0095】
[検査対象]
・検査対象は、乳房に限らず人体における他の部位でもよい。すなわち、検査用シール10は、マンモグラフィーに限らず他の画像診断に用いられてもよい。
【0096】
上述した実施形態から把握される技術思想を追記する。
[付記1]
ベースフィルムと、前記ベースフィルムに積層された粘着層とを備える検査用シールを製造する方法であって、
前記粘着層を形成することを含み、
前記粘着層を形成することは、ウレタン骨格から構成され、かつ、少なくとも2つの末端を有した主鎖の各末端に水酸基を有する主剤と、ウレタン骨格から構成され、かつ、少なくとも2つの末端を有した主鎖の各末端にイソシアネート基を有する硬化剤とを、前記水酸基のモル数に対する前記イソシアネート基のモル数の比が、0.02以上0.2以下であるように、前記主剤と前記硬化剤とを混合することを含む
検査用シールの製造方法。
【0097】
(8)上記構成によれば、粘着層の剥離強度を、検査対象の段差に追従して、検査対象の段差を埋める程度に大きく、かつ、粘着層を検査対象から剥がしたときに、粘着層の一部が検査対象に残らない程度に小さくすることが可能である。
【符号の説明】
【0098】
10…検査用シール、11…ベースフィルム、11F,12F…表面、11R,12R…裏面、12…粘着層、13…座標グリッド、13A,13B…グリッド線、13A1…第1グリッド線、13A2…第2グリッド線、13B1…第1区分、13B2…第2区分、13C…位置標識、14…セパレートフィルム、15…保護フィルム、16…標識。
図1
図2
図3
図4