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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】建築物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20220720BHJP
   E04B 7/20 20060101ALI20220720BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E04B1/76 500J
E04B7/20 511
E04B1/80 100F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018234542
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094451
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】杉村 保人
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】今村 高明
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 克己
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 昌也
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 俊明
(72)【発明者】
【氏名】畑 雅之
(72)【発明者】
【氏名】麻野 翔太
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048883(JP,A)
【文献】特開平04-309636(JP,A)
【文献】特開2005-264645(JP,A)
【文献】特開平08-253977(JP,A)
【文献】特開2015-113663(JP,A)
【文献】実開平06-006545(JP,U)
【文献】特開平03-217543(JP,A)
【文献】特開2000-027328(JP,A)
【文献】特開2007-247361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76 - 1/80
E04B 7/20
E04C 2/284,2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の施工方法であって、
壁断熱材を備えた壁パネルを準備する壁パネル準備工程と、
前記壁断熱材が鉛直方向に沿うように、前記壁パネルを設置する壁パネル設置工程と、
前記壁断熱材の上部に接触するように、連結断熱材を設置する連結断熱材設置工程と、
屋根断熱材を備えた屋根パネルを準備する屋根パネル準備工程と、
前記連結断熱材設置工程の後、前記連結断熱材が前記壁断熱材と前記屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置する屋根パネル設置工程と、を備えた、建築物の施工方法。
【請求項2】
前記屋根パネル準備工程では、一方向に延びると共に前記一方向に直交する他方向に互いに間隔を空けて配置された複数の第1屋根部材と、前記他方向に延びると共に前記一方向に互いに間隔を空けて前記第1屋根部材上に配置された第2屋根部材と、前記他方向に隣接する前記第1屋根部材同士の間に配置されると共に前記屋根断熱材を構成する第1屋根断熱材と、前記一方向に隣接する前記第2屋根部材同士の間に配置されると共に前記第1屋根断熱材と共に前記屋根断熱材を構成する第2屋根断熱材と、を備えた前記屋根パネルを組み立て、
前記屋根パネル設置工程では、前記連結断熱材が前記壁断熱材と前記第2屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置する、請求項1に記載の建築物の施工方法。
【請求項3】
前記屋根パネル準備工程では、前記第2屋根部材の上面が前記第2屋根断熱材の上面よりも上側に位置するように前記屋根パネルを組み立てると共に、前記第2屋根断熱材の上面との間に隙間が形成されるように前記第2屋根部材の上面に屋根下地材を配置する、請求項2に記載の建築物の施工方法。
【請求項4】
前記屋根パネル設置工程では、一の前記屋根パネルの前記第1屋根断熱材と、前記一の屋根パネルに対して前記一方向に隣接する他の前記屋根パネルの前記第1屋根断熱材との間に隙間が形成されるように複数の前記屋根パネルを設置し、その後、前記第1屋根断熱材同士の前記隙間に断熱材を嵌め込む、請求項2又は3に記載の建築物の施工方法。
【請求項5】
前記連結断熱材設置工程では、硬質部と、前記硬質部よりも柔軟性が高い材料からなる第1軟質部と、を含む前記連結断熱材を準備すると共に、前記第1軟質部が前記壁断熱材の上部に接触するように前記連結断熱材を設置し、
前記屋根パネル設置工程では、前記第1軟質部が前記壁断熱材と前記屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の建築物の施工方法。
【請求項6】
前記連結断熱材設置工程では、
前記硬質部よりも柔軟性が高い材料からなると共に前記硬質部を挟む第2軟質部及び第3軟質部を含む前記連結断熱材を準備し、
前記壁パネルの上部に沿って水平方向に延びる構造材に対して前記第2軟質部及び前記第3軟質部が接触すると共に前記第1軟質部が前記構造材の外側に位置するように、前記連結断熱材を前記構造材に設置する、請求項5に記載の建築物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、住宅などの建築物において種々の断熱材を配置することが知られている。これにより、居住空間の内外間における熱の出入りを防ぎ、住宅の省エネルギー性や快適性を確保することができる。
【0003】
特許文献1には、野地面材と当該野地面材の下面に接着されたプラスチック発泡体の断熱材とからなる野地板パネルを、建築物の壁の上部に施工することが記載されている。この公報では、野地板パネルを壁の上部に設置した後、当該野地板パネルの断熱材と壁断熱材との間に形成されている隙間に断熱性シール材を充填することにより、野地板パネルの断熱材と壁断熱材との接合部における断熱構造の連続性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-247361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、野地板パネルを建築物の壁の上部に設置した後、当該野地板パネルの断熱材(屋根断熱材)と壁断熱材との間の隙間に断熱性シール材を充填する作業が必要となる。この作業は、高所作業であり且つ作業者の施工体勢も悪くなるため、危険を伴うものである。このため、より簡単な作業で屋根断熱材と壁断熱材との間の断熱構造の連続性を確保することが可能な施工方法が求められる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な作業で屋根断熱材と壁断熱材との間の断熱構造の連続性を確保することが可能な建築物の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る建築物の施工方法は、壁断熱材を備えた壁パネルを準備する壁パネル準備工程と、前記壁断熱材が鉛直方向に沿うように、前記壁パネルを設置する壁パネル設置工程と、前記壁断熱材の上部に接触するように、連結断熱材を設置する連結断熱材設置工程と、屋根断熱材を備えた屋根パネルを準備する屋根パネル準備工程と、前記連結断熱材設置工程の後、前記連結断熱材が前記壁断熱材と前記屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置する屋根パネル設置工程と、を備えている。
【0008】
この施工方法では、まず壁パネルを設置し、壁断熱材の上部に接触するように連結断熱材を設置した後、当該連結断熱材が壁断熱材と屋根断熱材とにより挟まれるように屋根パネルを設置する。これにより、連結断熱材を介して、屋根断熱材と壁断熱材との間の断熱構造の連続性が確保される。本施工方法によれば、予め組み立てられた屋根パネルを設置するだけで屋根断熱材と壁断熱材との間の断熱構造の連続性を確保することができるため、従来のように野地板パネルの設置後に断熱性シール材の充填作業を行う場合に比べて現場での施工が簡単であり、高所作業に伴う危険を少なくすることができる。
【0009】
上記建築物の施工方法において、前記屋根パネル準備工程では、一方向に延びると共に前記一方向に直交する他方向に互いに間隔を空けて配置された複数の第1屋根部材と、前記他方向に延びると共に前記一方向に互いに間隔を空けて前記第1屋根部材上に配置された第2屋根部材と、前記他方向に隣接する前記第1屋根部材同士の間に配置されると共に前記屋根断熱材を構成する第1屋根断熱材と、前記一方向に隣接する前記第2屋根部材同士の間に配置されると共に前記第1屋根断熱材と共に前記屋根断熱材を構成する第2屋根断熱材と、を備えた前記屋根パネルを組み立ててもよい。前記屋根パネル設置工程では、前記連結断熱材が前記壁断熱材と前記第2屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置してもよい。
【0010】
この方法によれば、屋根部材同士の間のスペースを利用して断熱材が配置された屋根パネルを用いることにより、屋根パネルの厚みが増大するのを抑制しつつ断熱性能を向上させることができる。しかも、屋根部材同士が互いに直交しているため接触面積が小さくなり、屋根パネルにおける熱橋部分(第1屋根部材と第2屋根部材とが直交する部分)を少なくすることができる。また第1屋根部材及び第2屋根部材が屋根パネルとして予めユニット化されるため、高所作業における効率化を図ることができる。
【0011】
上記建築物の施工方法において、前記屋根パネル準備工程では、前記第2屋根部材の上面が前記第2屋根断熱材の上面よりも上側に位置するように前記屋根パネルを組み立てると共に、前記第2屋根断熱材の上面との間に隙間が形成されるように前記第2屋根部材の上面に屋根下地材を配置してもよい。
【0012】
この方法によれば、第2屋根断熱材の上面と屋根下地材との間に形成される隙間を通気層として利用し、室内からの湿気の排出や部屋が日射により高温となった場合の排熱が可能になる。
【0013】
上記建築物の施工方法において、前記屋根パネル設置工程では、一の前記屋根パネルの前記第1屋根断熱材と、前記一の屋根パネルに対して前記一方向に隣接する他の前記屋根パネルの前記第1屋根断熱材との間に隙間が形成されるように複数の前記屋根パネルを設置し、その後、前記第1屋根断熱材同士の前記隙間に断熱材を嵌め込んでもよい。
【0014】
この方法によれば、屋根パネルの設置後、第1屋根断熱材同士の隙間を利用して、屋根パネル(第1屋根部材)を、当該第1屋根部材を受ける部材に固定する作業を行うことができる。そして、当該作業の完了後、断熱材を嵌め込んで当該隙間を塞ぐことにより、当該隙間を通じた熱の出入りを防止することができる。
【0015】
上記建築物の施工方法において、前記連結断熱材設置工程では、硬質部と、前記硬質部よりも柔軟性が高い材料からなる第1軟質部と、を含む前記連結断熱材を準備すると共に、前記第1軟質部が前記壁断熱材の上部に接触するように前記連結断熱材を設置してもよい。前記屋根パネル設置工程では、前記第1軟質部が前記壁断熱材と前記屋根断熱材とにより挟まれるように、前記屋根パネルを設置してもよい。
【0016】
この方法によれば、連結断熱材の第1軟質部が壁断熱材と屋根断熱材とにより挟まれて押し潰されるため、壁断熱材と屋根断熱材との間に隙間が生じるのを防ぐことができる。その結果、壁と屋根との連結部における断熱構造の連続性をより確実に確保することができる。
【0017】
上記建築物の施工方法において、前記連結断熱材設置工程では、前記硬質部よりも柔軟性が高い材料からなると共に前記硬質部を挟む第2軟質部及び第3軟質部を含む前記連結断熱材を準備し、前記壁パネルの上部に沿って水平方向に延びる構造材に対して前記第2軟質部及び前記第3軟質部が接触すると共に前記第1軟質部が前記構造材の外側に位置するように、前記連結断熱材を前記構造材に設置してもよい。
【0018】
この方法によれば、構造材のボルトやプレートとの干渉を避けつつ連結断熱材を構造材に設置することができる。また第1軟質部が構造材の外側に位置するように連結断熱材を設置することにより、当該第1軟質部を壁断熱材と屋根断熱材とによって容易に挟持することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、簡単な作業で屋根断熱材と壁断熱材との間の断熱構造の連続性を確保することが可能な建築物の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法の手順を概略的に示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における屋根パネル準備工程の手順を概略的に示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における基礎施工工程を説明するための概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における外壁パネル準備工程を説明するための概略図である。
図5図4中の線分V-Vに沿った外壁パネルの断面を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における外壁パネル設置工程を説明するための概略図である。
図7】連結断熱材の構成を示す概略図である。
図8】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における連結断熱材設置工程及び屋根パネル設置工程を説明するための概略図である。
図9】屋根パネルの構成を示す概略図である。
図10】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における第1屋根部材配置工程を説明するための概略図である。
図11】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における第1屋根断熱材配置工程を説明するための概略図である。
図12】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における第2屋根部材配置工程を説明するための概略図である。
図13】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における第2屋根断熱材配置工程を説明するための概略図である。
図14図13中の線分XIV-XIVに沿った断面を示す概略図である。
図15】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における屋根下地材配置工程を説明するための概略図である。
図16】本発明の実施形態に係る建築物の施工方法における屋根パネル設置工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る建築物の施工方法について、図1に示すフローチャートに従って説明する。本実施形態では、2階建の鉄骨住宅を建築する方法を、本発明の建築物の施工方法の一例として説明する。
【0022】
まず、建築物の基礎を施工する工程S10が行われる(基礎施工工程)。この工程S10では、図3に示すように、地面G1から立ち上がる鉄筋コンクリート製の基礎2を構築する。そして、例えばポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材(図示しない)を、基礎2の外面2A及び内面2Bにそれぞれ配置する。
【0023】
次に、外壁パネルを準備する工程S20が行われる(外壁パネル準備工程)。この工程S20では、図4に示すように、平面視矩形状を有する外壁パネル3を複数準備する。図5は、図4中の線分V-Vに沿った外壁パネル3の部分断面図である。なお、図5は、外壁パネル3に内装パネル7が組み付けられた状態を示しており、同図中の一点鎖線L1よりも矢印で示す側の部分が外壁パネル3に相当する。
【0024】
図4及び図5に示すように、外壁パネル3は、軸組10と、外壁20と、外側壁断熱材60と、を主に備えている。なお、外壁パネル3は、建築物の施工現場と異なる別の場所で予め組み立てられた後、当該施工現場に運ばれる。したがって、外壁パネル準備工程S20は、基礎施工工程S10よりも前に行われてもよい。
【0025】
軸組10は、複数本の鉄骨フレームが矩形枠状に組み付けられたものである。図4に示すように、軸組10は、互いに間隔を空けて平行に配置された2本の柱11と、当該2本の柱11の下端部同士を接続する下部フレーム12と、当該2本の柱11の上端部同士を接続する上部フレーム13と、を含み、これらの4本の部材により矩形枠を構成している。柱11、下部フレーム12及び上部フレーム13は、例えばC形鋼からなり、開口部を枠体の内側に向けた状態で互いに組み付けられている。また図4に示すように、軸組10は、当該矩形枠の対角線上に架け渡された2本の筋交い14(ブレース)を含む。
【0026】
外壁20は、図4に示すように、軸組10の外形に沿った矩形状を有するコンクリート製の部材である。図5に示すように、外壁20は、軸組10から離間して配置されており、外面20Aと、当該外面20Aと反対側(軸組10側)を向く内面20Bと、当該外面20Aと当該内面20Bとを接続する側面20Cと、を含む。外面20Aには、建築物の意匠用の凹凸が形成されている。また内面20Bには、外壁20の長さ方向に沿って延びるC形鋼からなるフレーム21が配置されている。
【0027】
外壁20は、第1金具30、第2金具40及び連結金具50により、外壁パネル3の厚さ方向に延びる軸周りに軸組10に対して回転可能に支持されている。図5に示すように、第1金具30は、L字形状を有する金具である。第1金具30は、ボルトなどの締結具33により柱11の開口側の面に固定されると共に外壁20側に延びる一方の金具片31と、当該一方の金具片31の延出端から略直角を成して柱11の外面11Aと平行に延びると共に当該外面11Aとの間に間隔を空けて配置された他方の金具片32と、を有している。
【0028】
第2金具40は、ボルトなどの締結具43によりフレーム21の開口側の面に固定されると共に軸組10側に延びる一方の金具片41と、当該一方の金具片41の延出端から略直角を成して延びると共に外壁20の内面20Bとの間に間隔を空けて配置された他方の金具片42と、を有している。そして、第1金具30の他方の金具片32と第2金具40の他方の金具片42とは、柱11と外壁20との間の略中間位置で重なっている。また図5に示すように、柱11の外面11Aと第1金具30(他方の金具片32)との間及び外壁20の内面20Bと第2金具40(他方の金具片42)との間には、断熱材61,62がそれぞれ配置されている。
【0029】
連結金具50は、外壁パネル3の厚さ方向に延びる軸周りにおいて、第1金具30と第2金具40とを互いに回転可能に連結するものである。連結金具50は、第1金具30における他方の金具片32を貫通する連結ボルト51と、第2金具40における他方の金具片42を第1金具30における他方の金具片32に対して押さえ付ける押さえ板52と、を有している。連結ボルト51の締め具合により、押さえ板52が第2金具40を第1金具30に対して押さえ付ける力を調整可能である。これにより、地震発生時などにおいて、外壁20が軸組10に対して回転運動することが許容されるため、外壁20を保護することができる。
【0030】
外側壁断熱材60は、例えばポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材である。外側壁断熱材60は、図4中の斜線で示すように、外壁20よりも幅が小さい矩形状を有しており、外壁20の内面20Bに沿って配置されている。図5に示すように、外側壁断熱材60は、外壁20の内面20Bとの間に通気路S1が形成されるように、当該内面20Bに対して離間している。
【0031】
外壁パネル3は、外側壁断熱材60と筋交い14との間に配置された外側繊維系断熱材64をさらに備えている。外側繊維系断熱材64は、例えばロックウールやグラスウールなどであり、外側壁断熱材60よりも高い柔軟性を有している。
【0032】
次に、外壁パネル3を設置する工程S30が行われる(外壁パネル設置工程)。この工程S30では、外側壁断熱材60が鉛直方向に沿うように複数の外壁パネル3をそれぞれ設置する。具体的には、図6に示すように、複数の外壁パネル3を、長さ方向が鉛直方向に沿う縦姿勢で水平方向に互いに隣接するように基礎2の上面2Cに載置し、下部フレーム12をアンカーボルト(図示しない)などにより基礎2に固定する。このようにして、基礎2の全体に亘って外壁パネル3を設置することにより、建築物の1階壁を施工する。
【0033】
そして1階壁の施工完了後、外壁パネル3の上部フレーム13の上に床梁(1階と2階との間に配置される梁)を載置し、固定する。そして、当該床梁上に外壁パネル3を同様に設置することにより、2階壁が施工される。
【0034】
また外壁パネル3の設置完了後、図5に示すように、各外壁パネル3に対して内装パネル7を組み付ける。これにより、軸組10の筋交い14が外側繊維系断熱材64と内側繊維系断熱材65とにより挟まれると共に、これらの繊維系断熱材64,65が外側壁断熱材60と内側壁断熱材66とにより挟まれた状態になる。その後、内装材67を、内側壁断熱材66の内面に設置する。
【0035】
次に、連結断熱材を設置する工程S40が行われる(連結断熱材設置工程)。図7は、連結断熱材70を長さ方向に垂直な方向に沿って切断した時の断面図である。
【0036】
図7に示すように、連結断熱材70は、硬質部71と、硬質部71を両側から挟む第2,第3軟質部72,73と、硬質部71及び第2,第3軟質部72,73のそれぞれに接触する第1軟質部74と、を含む。すなわち、連結断熱材70は、硬質部71と第1~第3軟質部74,72,73とを組み合わせた複合体であり、自立性と軟質性とを兼ね備えている。硬質部71及び第1~第3軟質部74,72,73は、それぞれ断面視矩形状を有している。
【0037】
硬質部71は、例えばポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材からなる。また第1~第3軟質部74,72,73は、硬質部71よりも柔軟性が高い軟質断熱材からなり、例えば発泡系断熱材からなる。
【0038】
図8は、2階壁の外壁パネル3の上部近傍を拡大した断面図である。上記連結断熱材70を準備した後、図8に示すように、当該連結断熱材70を、2階壁の外壁パネル3の上部に沿って水平方向に延びるH形鋼からなる桁4(構造材)に設置する。具体的には、硬質部71及び第2,第3軟質部72,73がH形鋼の2枚のフランジ4A,4Bの間に位置すると共に第2,第3軟質部72,73が上側及び下側のフランジ4A,4Bに対してそれぞれ接触し、第1軟質部74が当該H形鋼の外側に位置して外側壁断熱材60の上部60A(外壁20の上面に対して上方に突出する部分)に接触するように、連結断熱材70を設置する。
【0039】
次に、屋根パネルを準備する工程S50(屋根パネル準備工程)について、図2のフローチャートに従って説明する。この工程は、連結断熱材設置工程S40の完了前における任意のタイミングで行われる。
【0040】
屋根パネル準備工程S50では、以下説明する工程S51~S55を順に行うことにより、屋根断熱材85を備えた屋根パネル80を組み立てる(図9)。図9に示すように、屋根パネル80は、一方向D1に延びると共に当該一方向D1に直交する他方向D2に互いに間隔を空けて配置された複数の第1屋根部材81(母屋)と、他方向D2に延びると共に一方向D1に互いに間隔を空けて第1屋根部材81上に配置された第2屋根部材82(垂木)と、他方向D2に隣接する第1屋根部材81同士の間に配置されると共に屋根断熱材85を構成する第1屋根断熱材83(母屋間断熱材)と、一方向D1に隣接する第2屋根部材82同士の間に配置されると共に第1屋根断熱材83と共に屋根断熱材85を構成する第2屋根断熱材84(垂木間断熱材)と、を備えるものである。しかし、本発明の建築物の施工方法は、上記構成を備えた屋根パネル80を組み立てる場合に限定されない。
【0041】
まず、第1屋根部材81を配置する工程S51が行われる(第1屋根部材配置工程)。この工程S51では、図10に示すように、中空四角筒形状を有する鋼製の第1屋根部材81を複数準備し、これらを図略の治具上において、一方向D1に平行で且つ他方向D2に等間隔を空けて配置する。各第1屋根部材81には、第1屋根断熱材83を支持すると共に第2屋根部材82を固定するための金具81Aが、長さ方向に等間隔となるように複数(例えば4個ずつ)取り付けられる。
【0042】
次に、第1屋根断熱材83を配置する工程S52が行われる(第1屋根断熱材配置工程)。この工程S52では、図11に示すように、第1屋根部材81よりも短い直方体形状を有する第1屋根断熱材83を複数準備し、これらを、一方向D1に沿うように第1屋根部材81同士の間にそれぞれ配置する。この時、第1屋根断熱材83の下面を、金具81Aにおける他方向D2に突き出た部分である支持片81AA(図10)上に載置する。また支持片81AAには、第1屋根断熱材83の下面側に向かって突出する突起部が設けられていてもよく、これにより第1屋根断熱材83の移動(位置ずれ)を防止することができる。第1屋根断熱材83は、一方向D1における両端部が第1屋根部材81のそれよりも当該一方向D1の内側に位置するように配置される。第1屋根断熱材83は、ポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材である。
【0043】
次に、第2屋根部材82を配置する工程S53が行われる(第2屋根部材配置工程)。この工程S53では、図12に示すように、四角柱形状を有する長尺な第2屋根部材82を複数準備し、これらを第1屋根部材81と直交するように(他方向D2に平行となるように)当該第1屋根部材81の上に配置する。具体的には、金具81Aにおける一対の立ち上がり片81AB(図11)の間に第2屋根部材82を配置し、ビスなどの固定具を用いて第2屋根部材82を金具81Aに固定する。
【0044】
次に、第2屋根断熱材84を配置する工程S54が行われる(第2屋根断熱材配置工程)。この工程S54では、図13に示すように、直方体形状を有する第2屋根断熱材84を複数準備し、これらを、他方向D2に沿うように第2屋根部材82同士の間にそれぞれ配置する。これにより、第1屋根断熱材83と第2屋根断熱材84とが、互いに直交した状態となる。
【0045】
第2屋根断熱材84は、第1屋根断熱材83と同様に、例えばポリスチレンフォームやフェノールフォームなどの硬質発泡系断熱材であり、第2屋根部材82の略半分の長さを有している。第2屋根断熱材84は、隣接する第2屋根部材82の間に配置された後、ビスなどの固定部材84Aにより第1屋根断熱材83に固定される。
【0046】
図14は、図13中の線分XIV-XIVに沿った断面を示している。図14に示すように、第2屋根断熱材84は、第2屋根部材82よりも厚さが小さくなっている。このため、本工程S54において第2屋根断熱材84を配置した時に、第2屋根部材82の上面82Aが第2屋根断熱材84の上面84Aよりも上側に位置する状態となる。
【0047】
次に、屋根下地材86を配置する工程S55が行われる(屋根下地材配置工程)。この工程S55では、図15に示すように、平面視矩形状を有する板状の屋根下地材86(野地板)を複数準備し、これらをビスなどの固定部材86Aを用いて第2屋根部材82の上面82Aに固定する。
【0048】
上述の通り、第2屋根断熱材配置工程S54の完了時において第2屋根部材82の上面82Aが第2屋根断熱材84の上面84Aよりも上側に位置しているため、屋根下地材86を第2屋根部材82の上面82Aに配置すると、第2屋根断熱材84の上面84Aと屋根下地材86の下面との間に隙間が形成される。この隙間は、冬期には室内からの湿気を排出するための通気路として役立ち、また夏期には部屋が日射により高温となった場合の排熱のための通気路として利用可能である。しかし、当該通気路を形成することは、本発明の建築物の施工方法において必須ではない。以上のような手順で屋根パネル80を組み立てる。
【0049】
次に、屋根パネル80を設置する工程S60が行われる(屋根パネル設置工程)。この工程S60では、図8に示すように、連結断熱材70が外側壁断熱材60と屋根断熱材85とにより鉛直方向に挟まれるように、屋根パネル80を桁4上に設置する。より具体的には、第2屋根断熱材84を連結断熱材70(第1軟質部74)の上部に載置し、第1軟質部74が外側壁断熱材60と第2屋根断熱材84とにより鉛直方向に挟まれるように、屋根パネル80を設置する。これにより、屋根パネル80の重みによって連結断熱材70の上部が押し潰された状態になる。
【0050】
図16は、設置された屋根パネル80同士が隣接している部分の平面図である。上述した通り、各屋根パネル80において、第1屋根断熱材83は、第1屋根部材81よりも一方向D1において短くなっている。このため、屋根パネル設置工程S60では、図16に示すように、一の屋根パネル80の第1屋根断熱材83の端面と、当該一の屋根パネル80に対して一方向D1に隣接する他の屋根パネル80の第1屋根断熱材83の端面との間に隙間(図中の斜線領域)が形成されるように、複数の屋根パネル80がそれぞれ設置される。この隙間を利用して、屋根パネル80(第1屋根部材81)をボルトなどの締結具により当該第1屋根部材81を受ける部材(登り梁)に固定する作業を行う。その後、別途準備した直方体形状の断熱材100を、図16中の破線矢印で示すように当該隙間に嵌め込む。
【0051】
以上の通り、本実施形態に係る建築物の施工方法では、まず外壁パネル3を設置し(工程S30)、外側壁断熱材60の上部に接触するように連結断熱材70を設置した後(工程S40)、連結断熱材70が外側壁断熱材60と屋根断熱材85とにより挟まれるように屋根パネル80を設置する(工程S60)。これにより、連結断熱材70を介して、屋根断熱材85と外側壁断熱材60との間の断熱構造の連続性が確保される。この施工方法によれば、予め組み立てられた屋根パネル80を設置するだけで屋根断熱材85と外側壁断熱材60との間の断熱構造の連続性を確保することができるため、現場での施工が簡単であり、高所作業に伴う危険を少なくすることができる。
【0052】
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0053】
屋根パネル準備工程S50において、屋根パネル80を組み立てる順序は、図2の手順に限定されない。例えば、第1屋根部材81と第2屋根部材82とを互いに組み付けた後、第1屋根断熱材83及び第2屋根断熱材84をそれぞれ配置してもよい。
【0054】
連結断熱材70は、硬質部71と軟質部72~74とを組み合わせた複合体からなるものに限定されず、全体が硬質発泡系断熱材からなるものでもよいし、全体が軟質発泡系断熱材からなるものでもよい。
【0055】
本発明は、鉄骨軸組構造の建築物の施工に限定されず、例えば、木造軸組構造の建築物の施工に適用されてもよいし、2×4(ツーバイフォー)工法による建築物の施工に適用されてもよい。また住宅の施工にも限定されず、他の種類の建築物の施工に適用することも可能である。
【0056】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
3 外壁パネル
60 外側壁断熱材
70 連結断熱材
71 硬質部
72 第2軟質部
73 第3軟質部
74 第1軟質部
80 屋根パネル
81 第1屋根部材
82 第2屋根部材
82A,84A 上面
83 第1屋根断熱材
84 第2屋根断熱材
85 屋根断熱材
86 屋根下地材
100 断熱材
D1 一方向
D2 他方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16