(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】負極活物質およびその製造方法、負極、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置ならびに電力システム
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20220720BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220720BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220720BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220720BHJP
C01B 33/00 20060101ALI20220720BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
C01B33/00
H01M4/36 A
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2018558897
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2017041303
(87)【国際公開番号】W WO2018123330
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2016257377
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-235589(JP,A)
【文献】特開2016-058191(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157743(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/166622(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0260967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 4/58
H01M 4/36
H01M 4/38
C01B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li
4SiO
4を含む固体電解質にSiクラスタおよびLi
ySi(0<y<3.75)クラスタが埋め込まれた負極活物質粒子を含み、
前記負極活物質粒子は、リチウムと錯体を形成可能な化合物を表面に有し、
前記負極活物質粒子の表面部分において、前記Siクラスタの含有量が前記Li
ySiクラスタの含有量に比べて高
く、
前記Siクラスタの含有量は、前記負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、前記Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められ、
前記Li
y
Siクラスタの含有量は、前記負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、前記Li
y
Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められる負極活物質。
【請求項2】
リチウム、ケイ素および酸素の総量に対するリチウムの含有量は、10原子%以上45原子%以下である請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記化合物は、芳香族化合物およびその誘導体のうちの少なくとも1種である請求項1または2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記芳香族化合物は、ナフタレン、アントラセン、テトラセンおよびペンタセンのうちの少なくとも1種である請求項3に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記表面の少なくとも一部を被覆する被覆剤を有し、
前記被覆剤は、炭素、水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、フッ化物、炭化水素化合物および高分子化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1から4のいずれかに記載の負極活物質。
【請求項6】
前記被覆剤を含む負極活物質全体に対する前記被覆剤の含有量は、0.05質量%以上10質量%以下である請求項5に記載の負極活物質。
【請求項7】
リチウムと錯体を形成可能な化合物と、Li
4SiO
4を含む固体電解質にLi
ySiクラスタ(0<y<3.75)が埋め込まれた負極活物質粒子とを反応させ、前記負極活物質粒子の表面部分において、Siクラスタの含有量をLi
ySiクラスタの含有量に比べて高くすることを含
み、
前記Siクラスタの含有量は、前記負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、前記Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められ、
前記Li
y
Siクラスタの含有量は、前記負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、前記Li
y
Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められる負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記反応は、前記化合物を含む溶液に前記負極活物質粒子を浸漬することにより行われる請求項7に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の負極活物質を含む負極。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の負極活物質を含む負極と、
正極と、
電解質と
を備える電池。
【請求項11】
請求項10に記載の電池と、
前記電池を制御する制御部と
を備える電池パック。
【請求項12】
請求項10に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項13】
請求項10に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
【請求項14】
請求項10に記載の電池を備え、
前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項15】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う請求項14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
請求項10に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電力システム。
【請求項17】
発電装置もしくは電力網から前記電池に電力が供給される請求項16に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、負極活物質およびその製造方法、負極、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置ならびに電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン二次電池の高容量化技術開発が急務となっている。炭素系材料を超える高容量化負極材料として、Si系材料の開発が世界中で進められている。Si系材料のうち、最もサイクル特性が良好な材料の1つとしてシリコン酸化物(SiOx)が挙げられる。シリコン酸化物は、酸素によるSi-O-Si結合の安定性が膨張収縮による構造崩壊を抑制可能であるという利点を有している。一方、シリコン酸化物は、酸素によるリチウムトラップ現象が生じ、リチウムロスが発生するという欠点も有している。酸素とほぼ同モル比のリチウムロスが発生し、初回充放電効率が68%に低下する。これらは相反する機能であり、酸素導入されたほとんどのSi系材料において、リチウムロスは不可避な状態にある。
【0003】
そこで、シリコン酸化物にリチウムをプレドープする技術が提案されている。例えば、特許文献1では、リチウムをプレドープする技術として、電位規制及び電流規制を行いながら、ケイ素系材料にリチウムを挿入する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコン酸化物にリチウムをプレドープすると、リチウムが溶出する虞がある。また、負極活物質としてのスズ酸化物およびゲルマニウム酸化物にリチウムをプレドープした場合にも、同様にリチウムが溶出する虞がある。
【0006】
本技術の目的は、リチウムの溶出を抑制できる負極活物質およびその製造方法、負極、電池、それを備える電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置ならびに電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、第1の技術は、Li4SiO4を含む固体電解質にSiクラスタおよびLiySi(0<y<3.75)クラスタが埋め込まれた負極活物質粒子を含み、負極活物質粒子は、リチウムと錯体を形成可能な化合物を表面に有し、負極活物質粒子の表面部分において、Siクラスタの含有量がLiySiクラスタの含有量に比べて高く、Siクラスタの含有量は、負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められ、Li
y
Siクラスタの含有量は、負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、Li
y
Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められる負極活物質である。
【0008】
第2の技術は、リチウムと錯体を形成可能な化合物と、Li4SiO4を含む固体電解質2にLiySiクラスタ(0<y<3.75)が埋め込まれた負極活物質粒子とを反応させ、負極活物質粒子の表面部分において、Siクラスタの含有量をLiySiクラスタの含有量に比べて高くすることを含み、
Siクラスタの含有量は、負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められ、Li
y
Siクラスタの含有量は、負極活物質粒子の表面部分のXPSにより得られるSi2pスペクトルにおいて、Li
y
Siクラスタに帰属されるSi2pのピーク高さから求められる負極活物質の製造方法である。
【0009】
第3の技術は、第1の技術の負極活物質を含む負極である。
【0010】
第4の技術は、第1の技術の負極活物質を含む負極と、正極と、電解質とを備える電池である。
【0011】
第5の技術は、第4の技術の電池と、電池を制御する制御部とを備える電池パックである。
【0012】
第6の技術は、第4の技術の電池を備え、電池から電力の供給を受ける電子機器である。
【0013】
第7の技術は、第4の技術の電池と、電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを備える電動車両である。
【0014】
第8の技術は、第4の技術の電池を備え、電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置である。
【0015】
第9の技術は、第4の技術の電池を備え、電池から電力の供給を受ける電力システムである。
【発明の効果】
【0016】
本技術によれば、負極活物質からのリチウムの溶出を抑制できる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらと異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本技術の第1の実施形態に係る負極活物質の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2Aは、SiO
xを含む負極活物質粒子のイメージ図である。
図2Bは、リチウムプレドープされた負極活物質粒子のイメージ図である。
図2Cは、ナフタレンで処理された負極活物質粒子のイメージ図である。
図2Dは、水洗処理された負極活物質粒子のイメージ図である。
【
図3】
図3Aは、ナフタレン触媒サイクル反応のモデルを示す概略図である。
図3Bは、ナフタレン触媒サイクル反応のプロセスを示すイメージ図である。
【
図4】
図4A、
図4Bは、ステップ充放電解析のシーケンスと算出された充電電圧と不可逆容量比の関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、可動リチウムをキレートする反応のモデルを示す概略図である。
【
図6】
図6は、本技術の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した巻回型電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【
図8】
図8は、本技術の第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8のIX-IX線に沿った巻回型電極体の断面図である。
【
図10】
図10A、
図10Bはそれぞれ、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質内部のXPSスペクトル(Arエッチング後)を示すグラフである。
【
図11】
図11A、
図11Bにそれぞれ、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質表面のXPSスペクトルを示すグラフである。
【
図12】
図12Aは、実施例1-2、参考例1-1の負極活物質表面のToF-SIMSスペクトルを示すグラフである。
図12Bは、実施例1-2、参考例1-1の負極活物質表面のToF-SIMSによる成分分析の結果を示すグラフである。
【
図14】
図14Aは、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルの初回充電時におけるdQ/dVカーブを示すグラフである。
図14Bは、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルの初回放電時におけるdQ/dVカーブを示すグラフである。
【
図15】
図15Aは、実施例2-2、参考例2-1のコインセルのサイクル特性の評価結果を示すグラフである。
図15Bは、実施例2-2、参考例2-1のコインセルの平均放電電圧の評価結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、応用例としての電子機器の構成の一例を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、応用例としての車両における蓄電システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図18】
図18は、応用例としての住宅における蓄電システムの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本技術の負極活物質は、リチウム(Li)と、ケイ素(Si)、スズ(Sn)およびゲルマニウム(Ge)のうちの少なくとも1種と、酸素(O)およびフッ素(F)のうちの少なくとも1種とを含み、リチウムと錯体を形成可能な化合物を表面に有する。上記化合物は、リチウムと錯体を形成している状態であってもよい。
【0019】
負極活物質は、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素とを含み、リチウムと錯体を形成可能な化合物を表面に有していてもよい。この場合、負極活物質が、必要に応じて、フッ素をさらに含んでいてもよい。また、上記化合物は、リチウムと錯体を形成している状態であってもよい。
【0020】
上記化合物は、負極活物質の表面に吸着していてもよい。吸着は、物理吸着または化学吸着である。複数の上記化合物が負極活物質の表面に吸着している場合、吸着する複数の上記化合物が、負極活物質の表面に物理吸着するものと、負極活物質の表面に化学吸着するものとの両方を含んでいてもよい。
【0021】
物理吸着とは、負極活物質の表面と上記化合物との間で、ファンデルワールス力、静電引力、磁力などの相互作用によって起こる吸着を意味する。化学吸着とは、負極活物質の表面と上記化合物との間で、共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合、水素結合などの化学結合を伴って起こる吸着を意味する。
【0022】
負極活物質が、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素とを含む場合、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素とは、例えば、リチウム含有SiOx(0.33<x<2)、リチウム含有SnOy(0.33<y<2)およびリチウム含有SnOy(0.33<y<2)のうちの少なくとも1種である。
【0023】
リチウムの含有量は、10原子%以上45原子%以下であることが好ましい。ここで、“リチウムの含有量”とは、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素およびフッ素のうちの少なくとも1種との総量に対するリチウムの含有量を意味する。
【0024】
リチウムと錯体を形成可能な化合物は、例えば、芳香族化合物およびその誘導体のうちの少なくとも1種である。芳香族化合物は、縮合環芳香族化合物であることが好ましく、例えば、アセン類、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ピセン、ペンタフェン、ペリレン、ヘリセンおよびコロネンの少なくとも1種である。アセン類は、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセンおよびヘプタセンのうちの少なくとも1種である。
【0025】
負極活物質は、例えば、粒子状、層状または3次元形状を有する。活物質が粒子状を有する場合、活物質は、一次粒子および二次粒子のいずれであってもよい。粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体状、針状、板状、鱗片状、チューブ状、ワイヤー状、棒状(ロッド状)または不定形状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、2種以上の形状の粒子を組み合わせて用いてもよい。ここで、球状には、真球状のみならず、真球状がやや扁平または歪んだ形状、真球状の表面に凹凸が形成された形状、またはこれらの形状が組み合わされた形状なども含まれる。楕円体状には、厳密な楕円体状のみならず、厳密な楕円体状がやや扁平または歪んだ形状、厳密な楕円体状の表面に凹凸が形成された形状、またはこれらの形状が組み合わされた形状なども含まれる。層状としては、薄膜状、板状またはシート状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。3次元形状としては、例えば、棒状、円筒状などの筒状、球殻状などの殻状、湾曲状、多角形状、網目形状または不定形状などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
負極活物質が、負極活物質の表面の少なくとも一部を被覆する被覆剤を有していてもよい。被覆剤は、例えば、炭素、水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、フッ化物、炭化水素化合物および高分子化合物のうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0027】
被覆剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上10質量%、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。ここで、“被覆剤の含有量”とは、被覆剤を含む負極活物質全体に対する被覆剤の含有量を意味する。被覆剤の含有量は、X線光電子分光法(X-Ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)、赤外分光法(infrared spectroscopy:IR)、飛行時間二次イオン質量分析法(Time-of-flight secondary ion mass spectrometry:TOF-SIMS)などで負極活物質粒子の表面に含まれる材料種を特定したのち、負極活物質粒子を塩酸などの酸性溶液で溶かして、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)で負極活物質粒子に含まれる各元素の含有量を測定することにより求められる。
【0028】
本技術の負極活物質の製造方法は、リチウムと錯体を形成可能な化合物と、リチウムを含む負極活物質とを反応させることを含む。上記反応により、上記化合物が負極活物質に含まれるリチウムと錯体を形成し、負極活物質からリチウムが除去される。
【0029】
上記反応は、例えば、上記化合物を含む溶液に負極活物質を浸漬することにより行われる。溶液に含まれる溶媒は、上記化合物を溶解可能なものであればよく特に限定されるものではないが、鎖状エーテルなどの有機溶媒を用いることができる。鎖状エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソールなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
上記反応の原理は、リチウムナフタレニド合成と類似するものである。リチウムナフタレニド合成の場合、リチウム金属をナフタレン溶液中に浸漬することによって、ナフタレンがリチウムと錯体を形成し、リチウムを溶解するとともにリチウムナフタレニドを形成する。
【0031】
これに対して、本技術の負極活物質の製造方法では、リチウム金属の代わりにリチウムプレドープした負極活物質を用いる。また、リチウムと錯体を形成可能な化合物(有機錯体前駆体)はナフタレンに限定されるものではなく、負極活物質に含まれるリチウムと錯体を形成可能な上記化合物(有機錯体前駆体)であればよい。負極活物質から溶出しやすいリチウムは化合物と錯体化し、不安全化することなく、負極活物質から除去することができる。この際、上記化合物と負極活物質の錯体化反応は、それぞれの酸化還元電位で規定されるため、特定の初回充放電効率(リチウム量)で安定化させることができる。
【0032】
上記化合物の種類を変更することによって、初回充放電効率を細かく制御することも可能である。また、上記溶液を加温することによって、反応速度を高速化し、プロセスのタクトタイムを短縮することも可能である。逆に、上記溶液を減温することによって、反応速度を低速化し、初回充放電効率の誤差を低減することも可能である。
【0033】
リチウムを含む負極活物質は、例えば、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素およびフッ素のうちの少なくとも1種とを含む負極活物質である。リチウムを含む負極活物質は、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素とを含む負極活物質であってもよく、必要に応じてフッ素をさらに含んでいてもよい。
【0034】
負極活物質が、リチウムと、ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、酸素とを含む場合、負極活物質は、例えば、リチウム含有SiOx(0.33<x<2)、リチウム含有SnOy(0.33<y<2)およびリチウム含有SnOy(0.33<y<2)のうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0035】
リチウムを含む負極活物質は、リチウムプレドープにより作製されていることが好ましい。リチウムプレドープの方法としては負極活物質にリチウムをプレドープ可能な方法であればよく特に限定されるものではないが、例えば、リチウム金属混合法、電気化学法、熱反応法、有機リチウム法を用いることができる。これらの方法の1つを単独で用いてもよいし、これらの方法の2以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム金属混合法は、リチウム金属と負極活物質とを混合し、リチウムを負極活物質内へ挿入する方法である。熱反応法は、リチウムと負極活物質とを混合焼成し、リチウムを熱的に負極活物質内へ挿入する方法である。有機リチウム法は、反応性の高い有機リチウムを含む溶液に負極活物質を浸漬し、リチウムを負極活物質内へ挿入する方法である。
【0036】
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(負極活物質の例)
2 第2の実施形態(円筒型電池の例)
3 第3の実施形態(ラミネートフィルム型電池の例)
4 応用例1(電池パックおよび電子機器)
5 応用例2(車両における蓄電システム)
6 応用例3(住宅における蓄電システム)
【0037】
<1 第1の実施形態>
[負極活物質の構成]
本技術の第1の実施形態に係る負極活物質は、負極活物質粒子の粉末を含んでいる。この負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池用のものである。この負極活物質は、LiSi-S電池またはLiSi-Li2S電池などに用いてもよい。負極活物質粒子は、リチウムとケイ素と酸素とを含み、負極活物質粒子に含まれるリチウムと錯体を形成可能な化合物を粒子表面に有する。上記化合物は、粒子表面においてリチウムと錯体を形成している状態であってもよい。負極活物質粒子に含まれるリチウム、ケイ素および酸素は、例えば、リチウム含有SiOx(0.33<x<2)である。
【0038】
負極活物質粒子1は、
図1に示すように、Li
4SiO
4を含む固体電解質2に、ナノサイズのSiクラスタ3が埋め込まれた構造を有する理想的な高容量材料である。なお、負極活物質粒子1が、ナノサイズのLi
ySi(0<y<3.75)クラスタ3bをさらに含んでいてもよい。この場合、リチウムの溶出を抑制する観点からすると、負極活物質粒子1中におけるSiクラスタ3の含有量が、負極活物質粒子1中におけるLi
ySiクラスタ3bの含有量よりも多いことが好ましく、負極活物質粒子1がLi
ySiクラスタ3bをほとんど含んでいないことがより好ましい。
【0039】
Siクラスタ3とLiySiクラスタ3bが濃度分布を有していてもよい。この場合、リチウムの溶出を抑制する観点からすると、粒子の表面部分においては、Siクラスタ3の濃度がLiySiクラスタ3bの濃度に比べて高いことが好ましい。具体的には、Siクラスタ3の濃度分布が負極活物質粒子1の表面から中心に向かって減少し、LiySiクラスタ3bの濃度分布が負極活物質粒子1の表面から中心に向かって増加していることが好ましい。
【0040】
【0041】
(負極活物質の準備工程)
まず、負極活物質として、SiOx(0.33<x<2)を含む負極活物質粒子の粉末を準備する。ここでは、リチウムプレドープ前の負極活物質としてSiOxを含む負極活物質粒子の粉末を用いる場合について説明するが、負極活物質はこれに限定されるものではない。
【0042】
図2Aは、SiO
xを含む負極活物質粒子1Aのイメージ図である。この負極活物質粒子1Aは、SiO
x2aにナノサイズのSiクラスタ3aが埋め込まれた構造を有している。
【0043】
(リチウムプレドープ工程)
次に、有機リチウム法により、準備した負極活物質にリチウムプレドープ処理を行う。具体的には、以下のようにしてリチウムプレドープ処理を行う。縮合環芳香族化合物としてのナフタレンをエーテル類などの溶媒に溶かしたのち、
図3Bに示すように、リチウム金属5を溶媒に浸漬することにより、有機リチウムとしてリチウムナフタレニド6を含む褐色または黒色の溶液7を作製する。この溶液7に負極活物質粒子1Aの粉末を浸漬し、負極活物質粒子1Aにリチウムをプレドープする。これにより、リチウムがプレドープされた負極活物質として、リチウム含有SiO
x(0.33<x<2)を含む負極活物質粒子の粉末が得られる。
【0044】
図2Bは、リチウムプレドープされた負極活物質粒子1Bのイメージ図である。リチウムプレドープされた負極活物質粒子1Bは、Li
4SiO
4を含む固体電解質2にナノサイズのLi
ySiクラスタ3bが埋め込まれた構造を有している。また、リチウムプレドープされた負極活物質粒子1Bの表面には、通常、炭酸リチウム(Li
2CO
3)4が形成されている。リチウムプレドープ技術とは、リチウムロスを補填するだけでなく、Siクラスタ3aを内包するSiO
x2aを、Siクラスタ3aを内包するLi
4SiO
4に物質変換する技術と言い換えることができる。
【0045】
ここでは、縮合環芳香族化合物としてナフタレンを用いる場合について説明するが、縮合環芳香族化合物の種類は、リチウムと錯体を形成可能であり、かつSiOx2aを含む負極活物質粒子にリチウムイオンを受け渡し可能な化合物であればよく、これに限定されるものではない。また、上記の特性を有する化合物であれば、縮合環芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
【0046】
ナフタレンとリチウム金属との反応機構は、ナフタレンの共役π電子を利用したナフタレンアニオンラジカルにてリチウムイオンを安定化する錯体反応であり、式(1)に示すように副生成物が生じない。さらに、SiOx2a内の不安定酸素基はラジカルアニオンに近い求核状態にあるため、式(2)に示すように、リチウムナフタレニドからSiOx2aへと容易にリチウムイオンが受け渡される。この際、プレドープ反応後にナフタレニドはナフタレンに戻る。つまり、式(1)、(2)を合成すると、リチウムをプレドープする反応は、式(3)に示すように、ナフタレンの触媒反応とみなすことができる。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
図3Aは、ナフタレン触媒サイクル反応のモデルを示す概略図である。
図3Bは、ナフタレン触媒サイクル反応のプロセスのイメージ図である。このナフタレン触媒サイクル反応を活用すると、有機リチウムプロセスが大幅に簡素化できる。ナフタレンが触媒として、リチウム金属5から負極活物質粒子1Aに含まれるSiO
xへリチウムを受け渡すモデルとして説明できる。この際、リチウムはナフタレン(1.86V(vsLi/Li
+))に電子を与え、ナフタレンアニオンラジカルと弱く配位し、リチウムナフタレニド6(0.3V(vsLi/Li
+))を生成する。一方、SiO
xの反応電位はステップ充放電解析の結果、非晶質SiO
xの場合、ほぼ全ての不可逆容量成分(酸素とリチウムの結合)は0.3Vまで充電されることが分かっている。つまり、リチウムナフタレニド6(0.3V(vsLi/Li
+))はSiO
xと接触した際に電気化学的にリチウムをSiO
xへ受け渡すことが可能である(内部電池状態)。リチウムを受け渡したナフタレンは再度金属リチウムと反応して、リチウムナフタレニド6を再生する。
【0051】
図4A、
図4Bは、ステップ充放電解析のシーケンスと算出された充電電圧と不可逆容量比の関係を示す。ナフタレン触媒サイクル反応の場合、例えば1kgのSiO
x処理に対し、必要リチウム量は同じ78g(リチウムインゴットを沈めておく。途中で補充も可能。)であるが、ナフタレン量はリチウムナフタレニドの1/100(約70g)、溶媒量は1/40の10Lにまで低減可能となる。また、ナフタレンや溶媒は再利用可能である。また、ナフタレン以外の前駆体も使用可能であり、例えば、ナフタレン誘導体やアントラセンおよびその誘導体、フェニルベンゼン等の2つ以上のベンゼン環を有する化合物を使用可能である。前駆体の選択は、上述の反応電位の他、溶解度やコスト、安全性も加味して選択できる。
【0052】
(可動リチウムの除去工程)
次に、上記のナフタレニド反応の逆反応を用いることによって、可動リチウム(余剰リチウム)をキレートする。すなわち、
図5に示す反応を利用して、リチウムと錯体を形成可能な化合物(有機錯体前駆体)であるナフタレンにより、負極活物質の可動リチウム(余剰リチウム)を取り除く。具体的には、ナフタレンを含む溶液を準備し、この溶液に、プレドープした負極活物質粒子の粉末(すなわちリチウム含有SiO
x(0.33<x<2)を含む負極活物質粒子の粉末)を浸漬する。これにより、ナフタレンが負極活物質粒子に含まれる過剰なリチウムと錯体を形成し、過剰なリチウムが負極活物質粒子から取り除かれる。
【0053】
図2Cは、ナフタレンで処理された負極活物質粒子1Cのイメージ図である。この負極活物質粒子1Cは、固体電解質であるLi
4SiO
4を含む固体電解質2にSiクラスタ3が埋め込まれた構造を有する。上述のように、ナフタレンで負極活物質粒子1Bを処理することで、
図2Bに示すLi
ySiクラスタ3bからリチウムを引き抜いて、Siクラスタ3に変化させることができる。なお、Li
ySiクラスタ3bに含まれるリチウムが、上述の可動リチウム(余剰リチウム)である。
【0054】
(水洗処理の工程)
最後に、必要に応じて、可動リチウムの除去された負極活物質を水洗処理する。なお、水洗処理は、前工程により可動リチウムを除去し、負極活物質を安定化することで可能となる。
【0055】
図2Dは、水洗処理された負極活物質粒子1のイメージ図である。上述のように負極活物質を水洗処理することで、
図2Cに示す炭酸リチウム(Li
2CO
3)4が負極活物質粒子1Cの表面から除去される。
【0056】
[効果]
第1の実施形態に係る正極活物質では、リチウムと錯体を形成可能な化合物により、可動リチウムが低減されているので、リチウムの溶出を抑制できる。よって、負極活物質を安定化(安全化)することができる。第1の実施形態に係る負極活物質は水につけても発火しないので、水系バインダを含む電極にも用いることが可能である。
【0057】
また、負極活物質の表面には、リチウムと錯体を形成可能な化合物が存在しているので、SEI(Solid Electrolyte Interface)の増大(すなわち界面抵抗上昇)を抑制することができる。
【0058】
第1の実施形態に係る正極活物質の製造方法では、リチウムと錯体を形成可能な化合物と、リチウムを含む負極活物質粒子とを反応させることで、プレドープされた負極活物質粒子の可動リチウム(過剰にプレドープされたリチウム)を除去(キレート)することができる。したがって、リチウム溶出を抑制することができる。
【0059】
また、負極活物質粒子の可動リチウムを除去することで、初回充放電効率を安定化することができる。例えば初回充放電効率を平均95%(誤差は2%未満)で安定化できる。
【0060】
また、簡易設備で負極活物質粒子の可動リチウムを除去することができる。第1の実施形態に係る正極活物質の製造方法は、粉末状の負極活物質に限らず、薄膜や電極などにも適用可能である。粉末状の負極活物質では、残留リチウムが多いと、取扱いが困難になるので、粉末状の負極活物質に本技術を適用することが特に好ましい。
【0061】
また、負極活物質粒子の可動リチウムを除去することで、正極と負極との容量バランスが取れ、予め膨張収縮処理を済ませた負極活物質を用いることができるので、サイクル特性を向上できる。
【0062】
<2 第2の実施形態>
第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に係る負極活物質を含む負極を備える二次電池について説明する。
【0063】
[電池の構成]
以下、
図6を参照しながら、本技術の第2の実施形態に係る二次電池の一構成例について説明する。この二次電池は、例えば、負極の容量が、電極反応物質であるリチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回型電極体20を有している。電池缶11は、ニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質としての電解液が注入され、正極21、負極22およびセパレータ23に含浸されている。また、巻回型電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
【0064】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、封口ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回型電極体20との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0065】
巻回型電極体20の中心には、例えばセンターピン24が挿入されている。巻回型電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0066】
以下、
図7を参照しながら、二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、および電解液について順次説明する。
【0067】
(正極)
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質層21Bは、必要に応じて添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、導電剤および結着剤のうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0068】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.30O2、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c2O2(c1≒1,0<c2<1)、LidMn2O4(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0069】
LipNi(1-q-r)MnqM1rO(2-y)Xz ・・・(A)
(但し、式(A)中、M1は、ニッケル、マンガンを除く2族~15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、-0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0070】
LiaM2bPO4 ・・・(B)
(但し、式(B)中、M2は、2族~15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0071】
LifMn(1-g-h)NigM3hO(2-j)Fk ・・・(C)
(但し、式(C)中、M3は、コバルト、マグネシウム(Mg)、アルミニウム、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、-0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0072】
LimNi(1-n)M4nO(2-p)Fq ・・・(D)
(但し、式(D)中、M4は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、-0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0073】
LirCo(1-s)M5sO(2-t)Fu ・・・(E)
(但し、式(E)中、M5は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、-0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0074】
LivMn2-wM6wOxFy ・・・(F)
(但し、式(F)中、M6は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0075】
LizM7PO4 ・・・(G)
(但し、式(G)中、M7は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ(Nb)、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0076】
Niを含むリチウム複合酸化物としては、リチウムとニッケルとコバルトとマンガンと酸素とを含むリチウム複合酸化物(NCM)、リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムと酸素とを含むリチウム複合酸化物(NCA)などを用いてもよい。Niを含むリチウム複合酸化物としては、具体的には、以下の式(H)または式(I)に示したものを用いてもよい。
【0077】
Liv1Niw1M1’x1Oz1 ・・・(H)
(式中、0<v1<2、w1+x1≦1、0.2≦w1≦1、0≦x1≦0.7、0<z<3であり、M1’は、コバルト、鉄、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウムおよびジルコニウムなどの遷移金属からなる元素を少なくとも1種類以上である。)
【0078】
Liv2Niw2M2’x2Oz2 ・・・(I)
(式中、0<v2<2、w2+x2≦1、0.65≦w2≦1、0≦x2≦0.35、0<z2<3であり、M2’は、コバルト、鉄、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウムおよびジルコニウムなどの遷移金属からなる元素を少なくとも1種類以上である。)
【0079】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V2O5、V6O13、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0080】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記で例示した正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0081】
結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などの樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体などから選択される少なくとも1種が用いられる。
【0082】
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、それらのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。
【0083】
(負極)
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0084】
負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵および放出することが可能な1種または2種以上の負極活物質を含んでいる。負極活物質層22Bは、必要に応じて結着剤や導電剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0085】
なお、この二次電池では、負極22または負極活物質の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっていることが好ましい。
【0086】
負極活物質としては、第1の実施形態に係る負極活物質が用いられる。第1の実施形態に係る負極活物質を炭素材料と共に用いるようにしてもよい。この場合、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0087】
第1の実施形態に係る負極活物質と共に用いる炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0088】
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースなどの樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体などから選択される少なくとも1種が用いられる。導電剤としては、正極活物質層21Bと同様の炭素材料などを用いることができる。
【0089】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの樹脂製の多孔質膜によって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特にポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。他にも、化学的安定性を備えた樹脂を、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合またはブレンド化した材料を用いることができる。あるいは、多孔質膜は、ポリプロピレン層と、ポリエチレン層と、ポリプロピレン層とを順次に積層した3層以上の構造を有していてもよい。
【0090】
セパレータ23は、基材と、基材の片面または両面に設けられた表面層を備える構成を有していてもよい。表面層は、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、無機粒子を基材の表面に結着するとともに、無機粒子同士を結着する樹脂材料とを含んでいる。この樹脂材料は、例えば、フィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していてもよい。無機粒子は、この三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されることにより、互いに連結することなく分散状態を保つことができる。また、樹脂材料はフィブリル化せずに基材の表面や無機粒子同士を結着してもよい。この場合、より高い結着性を得ることができる。上述のように基材の片面または両面に表面層を設けることで、耐酸化性、耐熱性および機械強度を基材に付与することができる。
【0091】
基材は、多孔性を有する多孔質層である。基材は、より具体的には、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜から構成される多孔質膜であり、基材の空孔に電解液が保持される。基材は、セパレータの主要部として所定の機械的強度を有する一方で、電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性を要することが好ましい。
【0092】
基材を構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂などを用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなどのポリエチレン、若しくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、もしくは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を含むものは、正極21と負極22との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
【0093】
基材としては、不織布を用いてもよい。不織布を構成する繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、またはナイロン繊維などを用いることができる。また、これら2種以上の繊維を混合して不織布としてもよい。
【0094】
無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属硫化物などの少なくとも1種を含んでいる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)、ベーマイト(水和アルミニウム酸化物)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)または酸化イットリウム(イットリア、Y2O3)などを好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)または窒化チタン(TiN)などを好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B4C)などを好適に用いることができる。金属硫化物としては、硫酸バリウム(BaSO4)などを好適に用いることができる。また、ゼオライト(M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)などの多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などの鉱物を用いてもよい。中でも、アルミナ、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナを用いることがより好ましい。無機粒子は耐酸化性および耐熱性を備えており、無機粒子を含有する正極対向側面の表面層は、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、板状、繊維状、キュービック状およびランダム形状などのいずれも用いることができる。
【0095】
表面層を構成する樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などの含フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステルなどの融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂などが挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、耐酸化性および柔軟性の観点からは、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂が好ましく、耐熱性の観点からは、アラミドまたはポリアミドイミドを含むことが好ましい。
【0096】
無機粒子の粒径は、1nm~10μmの範囲内であることが好ましい。1nmより小さいと、入手が困難であり、また入手できたとしてもコスト的に見合わない。一方、10μmより大きいと電極間距離が大きくなり、限られたスペースで活物質充填量が十分得られず電池容量が低くなる。
【0097】
表面層の形成方法としては、例えば、マトリックス樹脂、溶媒および無機物からなるスラリーを基材(多孔質膜)上に塗布し、マトリックス樹脂の貧溶媒且つ上記溶媒の親溶媒浴中を通過させて相分離させ、その後、乾燥させる方法を用いることができる。
【0098】
なお、上述した無機粒子は、基材としての多孔質膜に含有されていてもよい。また、表面層が無機粒子を含まず、樹脂材料のみにより構成されていてもよい。
【0099】
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。電解液が、電池特性を向上するために、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0100】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0101】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0102】
溶媒としては、さらにまた、2,4-ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4-ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0103】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピロニトリル、N,N-ジメチルフォルムアミド、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0104】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0105】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト-O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができるとともに、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0106】
[電池電圧]
第2の実施形態に係る二次電池では、一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)は、4.2V以下でもよいが、好ましくは4.25V以上、より好ましくは4.3V、更により好ましくは4.4V以上になるように設計されていてもよい。電池電圧を高くすることにより、高いエネルギー密度を得ることができる。一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧の上限値は、好ましくは6.00V以下、より好ましくは4.60V以下、さらにより好ましくは4.50V以下である。
【0107】
[電池の動作]
上述の構成を有する非水電解質二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0108】
[電池の製造方法]
次に、本技術の第2の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0109】
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
【0110】
また、例えば、第1の実施形態に係る負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN-メチル-2-ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0111】
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けるとともに、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。次に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回する。次に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接するとともに、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。次に、正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。次に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16を封口ガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、
図6に示した二次電池が得られる。
【0112】
[効果]
第2の実施形態に係る電池は、第1の実施形態に係る負極活物質を含む負極22を備えるので、初回充放電効率を安定化し、かつ、サイクル特性を向上できる。また、平均放電電圧およびインピーダンスの上昇を抑制できる。
【0113】
<3.第3の実施形態>
[電池の構成]
図7は、本技術の第3の実施形態に係る二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。この二次電池はいわゆる扁平型または角型といわれるものであり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回型電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
【0114】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0115】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回型電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0116】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。あるいは、アルミニウム製フィルムを心材として、その片面または両面に高分子フィルムを積層したラミネートフィルムを用いても良い。
【0117】
図8は、
図7に示した巻回型電極体30のIV-IV線に沿った断面図である。巻回型電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0118】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第2の実施形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0119】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液は、第1の実施形態に係る電解液である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0120】
なお、第2の実施形態にてセパレータ23の樹脂層の説明で述べた無機物と同様の無機物が、ゲル状の電解質層36に含まれていても良い。より耐熱性を向上できるからである。また、電解質層36に代えて電解液を用いるようにしてもよい。
【0121】
[電池の製造方法]
次に、本技術の第3の実施形態に係る二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0122】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。次に、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回型電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回型電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、
図8および
図9に示した二次電池が得られる。
【0123】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述のようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付ける。次に、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回体を形成する。次に、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。次に、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0124】
次に、電解質用組成物を外装部材40内に注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、
図9に示した二次電池が得られる。
[実施例]
【0125】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0126】
表1は、参考例1-1、1-2、3-1、3-2および実施例1-1、1-2、3-1、3-2の負極活物質の構成および作製条件を示す。
【表1】
【0127】
<負極活物質として非晶質SiOx粉末を用いた参考例、実施例>
[参考例1-1]
非晶質SiOxの粉末(大阪チタニウム製)を準備し、これを参考例1-1とした。
【0128】
[参考例1-2]
(リチウムプレドープドープ:ナフタレン触媒サイクル)
まず、100mlガラス容器にtert-ブチルメチルエーテルを50ml入れ、2gのナフタレンを混合撹拌し、溶解させて、無色透明な溶液を得た。そこに金属リチウム箔(0.8mm厚さ)を1.7g、さらに参考例1-1の負極活物質(SiOx粉末)を10g投入し、マグネチックスターラーにて24時間撹拌することにより、負極活物質と溶液とを反応させた。以下では、この反応プロセスを粉末ドーププロセスという。この手順は全てアルゴン置換のグローブボックス内にて行った。
【0129】
24時間経過後、金属リチウム箔は完全に溶解し消失していた。これは、触媒作用を介してリチウムがナフタレンと連続反応し、最終的に金属リチウム箔が無くなったためである。ほとんどのリチウムがナフタレンと反応するはずなので、ドープ量は金属リチウムの投入量で制御できる。この際、理論上、リチウムナフタレニドの酸化還元電位が約0.3Vであるため、投入リチウム量が過剰であっても電位制限によって、リチウムドープ量はある上限で停止し、リチウム析出のような過剰ドープは避けられる。リチウムが析出した場合は、ナフタレンが析出リチウムと反応し、リチウム析出が取り除かれる。反応終了後、反応溶液を濾過し、リチウムドープ負極活物質を封止後取り出し、ドライルームにてDMC洗浄および濾過を2回繰り返した後、80℃で真空乾燥させた。以上により、目的とする負極活物質を得た。
【0130】
[実施例1-1]
(ナフタレンキレート)
まず、粉末ドーププロセスまでの工程を参考例1-2と同様に実施した。続いて、負極活物質を含む溶液を1時間静置し、褐色または黒色の上澄み液をスポイトで取り除いた。その後、50mlのtert-ブチルメチルエーテルおよび5gのナフタレンを投入し、5時間撹拌した。撹拌後1時間静置し、褐色または黒色の上澄み液をスポイトで取り除いた。上澄み液が透明になるまで上記手順を繰り返した。
【0131】
(乾燥処理)
上記ナフタレンキレート処理後、反応溶液を濾過もしくは乾燥させ、リチウムドープ負極活物質を封止後取り出し、ドライルームにてDMC洗浄および濾過を2回繰り返した後、80℃で乾燥させた。以上により、目的とする負極活物質を得た。
【0132】
[実施例1-2]
(水洗処理)
活物質乾燥処理後に、以下の水洗処理の工程をさらに行うこと以外は実施例1-1と同様にして、目的とする負極活物質を得た。ドライルーム外に負極活物質を持ち出し、ガラス容器にて負極活物質と水を混合した。発熱が無いことを確認し、遠心分離にて沈殿物を取り出し、乾燥させた。これにより、目的とする負極活物質を得た。水洗処理は危険を伴うので、必ず、上記のナフタレン処理を実施後に行うようにする。ナフタレン処理無しの場合、水と激しく反応し、危険である。また、アルコール洗浄処理でも構わないが、引火可能性があるため注意が必要である。
【0133】
[実施例2-1]
負極活物質として実施例1-1の負極活物質を含む負極を作用極とし、リチウム金属箔を対極とする、2016サイズ(直径20mm、高さ1.6mmのサイズ)のコイン型の半電池(以下「コインセル」という。)を以下のようにして作製した。
【0134】
まず、実施例1-1の負極活物質と、LiPAA(リチウムポリアクリル酸)と、KS6(炭素粉末:TIMCAL社製)と、DB(デンカブラック:電気化学工業社製)とを質量比(負極活物質:LiPAA:KS6:DB)で8:1:0.75:0.25となるように秤量し、これらを適当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散し、負極合剤スラリーとした。
【0135】
次に、調製した負極合剤スラリーを銅箔(負極集電体)上に塗布した後、真空焼成炉により125℃で乾燥し、負極活物質層を銅箔上に形成することにより、負極を得た。次に、この負極を直径15mmの円形状に打ち抜いたのち、プレス機により圧縮した。これにより、目的とする負極が得られた。
【0136】
次に、対極として直径15mmの円形状に打ち抜いたリチウム金属箔を準備した。次に、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔フィルムを準備した。次に、エチレンカーボネート(EC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)とジメチルカーボネート(DMC)とを質量比(EC:FEC:DMC)で40:10:50となるように混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1mol/kgの濃度になるように溶解して非水電解液を調製した。
【0137】
次に、作製した正極と負極とを微多孔フィルムを介して積層して積層体とし、この積層体とともに非水電解液を外装カップおよび外装缶の内部に収容させてガスケットを介してかしめた。これにより、目的とするコインセルが得られた。
【0138】
[実施例2-2]
実施例1-1の負極活物質に代えて、実施例1-2の負極活物質を用いる以外は実施例3-1と同様にしてコインセルを得た。
【0139】
[参考例2-1]
実施例1-1の負極活物質に代えて、参考例1-1の負極活物質を用いる以外は実施例3-1と同様にしてコインセルを得た。
【0140】
[参考例2-2]
実施例1-1の負極活物質に代えて、参考例1-2の負極活物質を用いる以外は実施例3-1と同様にしてコインセルを得た。
【0141】
[評価]
(XPS)
実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質についてXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により分析を行った。以下に測定装置および測定条件を示す。
装置:JEOL JPS9010
測定:ワイドスキャン、ナロースキャン(Si2p、C1s、O1s、Li1s)。
すべてのピークは、C1sの248.4eVで補正し、バックグラウンド除去とピークフィッティングを行うことにより結合状態を解析した。
【0142】
図10A、
図10Bは、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質内部のXPSスペクトル(Arエッチング後)を示すグラフである。プレドープ処理後の負極活物質(参考例1-2)では、過剰ドープを示すLi
ySiのショルダー(Si2pの97.8eV付近)が観測される。一方、ナフタレンキレート処理後の負極活物質(実施例1-1)では、Li
4SiO
4およびLi
2SiO
3のシリケート成分が変化せず、Li
ySiが消失していることが確認される。これにより、キレート処理によりLi
ySiを選択除去することが可能なことが実証された。
【0143】
図11A、
図11Bに、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質表面のXPSスペクトルを示すグラフである。プレドープおよびナフタレン処理後の負極活物質(参考例1-2、実施例1-1)の表面には、炭酸リチウムが残存していることがわかる。この炭酸リチウムは電気化学ドープや熱反応ドープ等の他手法でも確認されており、バインダ固化やガス発生等の悪影響が想定される。そこで、実施例1-2では、水洗処理を行い、炭酸リチウムの除去を行った。
図11A、
図11Bから、水洗処理により、炭酸リチウムが除去されていることがわかる。また、
図10A、
図10Bから、水洗処理による負極活物質内部に変質が無いこともわかる。
【0144】
ナフタレン処理によって、LiySi除去を実現し、リチウムプレドープSiOxを大気中および水中でも取扱いできるようになった。一方、ナフタレン処理を行わない場合は、リチウム溶出による水素発生や発火の危険性が高いため、大気露出や水中への投入は禁忌である。なお、副生成物生成無しでリチウムを安全にキレートできるならば、ナフタレン以外を用いることもできる。
【0145】
(ToF-SIMS)
実施例1-2、参考例1-1の負極活物質についてToF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析を行った。以下に測定条件を示す。
測定条件:粉体表面のMass測定(positive,negative)
【0146】
図12Aは、実施例1-2、参考例1-1の負極活物質表面のToF-SIMSスペクトルを示すグラフである。
図12Bは、実施例1-2、参考例1-1の負極活物質表面のToF-SIMSによる成分分析の結果を示すグラフである。実施例1-2の負極活物質の表面には、プレドープ前駆体であるナフタレンや炭化水素系分子が存在している。これら有機分子リガンドには、SEIの増大(界面抵抗上昇)を抑制する効果があると考えられる。なお、界面抵抗上昇の抑制については、後述のサイクル特性の評価において説明する。
【0147】
(初回充放電特性)
実施例2-2、参考例2-1、2-2のコインセルに対して、以下の条件にて充放電試験を行い、コインセルの初回充放電特性を調べた。
Charge 0V CCCV 0.05C (0.04mA cut), Discharge 1.5V CC 0.05C
【0148】
図13A、
図13B、
図13Cにそれぞれ、参考例2-1、2-2、実施例2-2のコインセルの初回充放電特性の評価結果を示す。プレドープした負極活物質を用いたコインセル(参考例2-2)では、初回充放電効率は125%と過剰ドープされていることが分かる。また、プレドープした負極活物質は水と激しく反応し、過剰ドープであった。つまり、プレドープした負極活物質では、式(4)に示すようにLi
4SiO
4形成のみでなく、Li
ySi形成も同時に起こっているものと考えられる。電位的にはLi
4SiO
4が優先生成するが、Li
ySi生成を完全抑制することは難しいことを意味している。
【0149】
【0150】
実施例1-1、1-2の負極活物質では、上述のナフタレニド反応の逆反応を利用することを試みた。ナフタレンとリチウムの反応電位は1.86Vであり、LiySiからリチウムを引き抜くことができると考えた。また、2Vまでの放電ではLi4SiO4が放電分解しないことも分かっているため、式(5)のようにSiにドープされたリチウムのみを選択的にキレート除去できる。
【0151】
【0152】
ナフタレン処理にてLiySiを除去した負極活物質(実施例2-2)を用いたコインセルでは、初回充放電効率が95%で安定化した。また、負極活物質の粉末の色は、表1に示すように、プレドープ処理により赤茶色から黒色に変化し、ナフタレン処理によっては黒色から変化しなかった。
【0153】
(dQ/dVカーブ)
実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルのdQ/dV曲線を測定した。
【0154】
図14Aは、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルの初回充電時におけるdQ/dVカーブを示すグラフである。
図14Bは、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルの初回放電時におけるdQ/dVカーブを示すグラフである。
【0155】
実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2の全ての放電時のdQ/dVカーブはほぼ重なり、相違点は見当たらなかった。一方、充電時のdQ/dVカーブでは、プレドープした参考例2-1では高電位成分(リチウムシリケート反応)が消失し、ナフタレン処理した実施例2-1では0.2~0.3V成分(低濃度LiySi反応)が復活している。このデータもナフタレン処理によるLiySi除去を支持している。
【0156】
(サイクル特性)
実施例2-2、参考例2-1のコインセルに対して、以下の条件にて充放電試験を行い、コインセルのサイクル特性および平均放電電圧を調べた。
1st cycle: Charge 0V CCCV 0.05C (0.04mA cut), Discharge 1.5V CC 0.05C
After 2nd Cycle: Charge 0V CCCV 0.5C (0.04mA cut), Discharge 1.5V CC 0.5C
(20cycle毎に、0.2Cにて低レート充放電試験実施)
【0157】
図15Aは、実施例2-2、参考例2-1のコインセルのサイクル特性の評価結果を示すグラフである。
図15Bは、実施例2-2、参考例2-1のコインセルの平均放電電圧の評価結果を示すグラフである。プレドープ、ナフタレン処理および水洗を行った負極活物質(SiO
x)の容量維持率は、非処理の負極活物質(SiO
x)容量維持率に比べて向上している。また、プレドープ、ナフタレン処理および水洗を行った負極活物質(SiO
x)では、平均放電電圧や1kHzインピーダンスの上昇も抑制されている。この効果の発現は、負極活物質の界面抵抗上昇が抑制されているためと考えられる。この界面抵抗上昇の抑制は、上述のToF-SIMSによる成分分析の評価結果にて説明したように、プレドープ前駆体であるナフタレンや炭化水素系分子が負極活物質表面に存在していることに起因していると考えられる。
【0158】
本実施例では、リチウムプレドープSiOx活物質からのリチウム溶出を抑える方法として、リチウムナフタレニドの逆反応を利用した。ナフタレン処理によってLiySiを除去し、水洗によって表面の炭酸リチウムを除去可能なことを示した。初回充放電効率は95%と非常に高い数値で安定し、ナフタレン処理したリチウムプレドープSiOx活物質は、大気中や水中でも扱うことができる。また、プレドープおよびナフタレン処理によってサイクル特性を向上できることも示した。
【0159】
<負極活物質として非晶質SiOx電極を用いた参考例、実施例>
[参考例3-1]
非晶質SiOx電極を準備し、これを参考例3-1とした。
【0160】
[参考例3-2]
(電極用リチウムドーププロセス:リチウムナフタレニド浸漬法)
まず、tert-ブチルメチルエーテル50ccとナフタレン1.6gを混合撹拌し、ナフタレンを溶解させて、無色透明な溶液を得た。次に、0.8mmリチウム箔0.1gを上記溶液に加えて、スターラーで5h撹拌し、褐色または黒色のリチウムナフタレニド溶液を合成した。溶け残ったリチウム箔は除去した。その後、参考例3-1の負極(SiOx電極)を溶液中に投入し、負極と溶液とを24時間反応させた。以下では、この反応プロセスを負極ドーププロセスという。上記作業は、Ar置換のグローブボックス中にて行った。反応後、リチウムドープ負極を取り出し、ドライルームにて濾過およびDMC洗浄後、80℃で真空乾燥させた。以上により、目的とする負極を得た。
【0161】
[実施例3-1]
(ナフタレンキレート)
まず、負極ドーププロセスまでの工程を参考例3-2と同様に実施した。続いて、負極を含む溶液を1時間静置し、褐色または黒色の上澄み液をスポイトで取り除いた。その後、50mlのtert-ブチルメチルエーテルおよび5gのナフタレンを投入し、5時間撹拌した。撹拌後1時間静置し、褐色または黒色の上澄み液をスポイトで取り除いた。上澄み液が透明になるまで上記手順を繰り返した。
【0162】
(乾燥処理)
上記ナフタレンキレート処理後、負極を封止して取り出し、ドライルームにてDMC洗浄を2回繰り返した後、80℃で乾燥させた。以上により、目的とする負極を得た。
【0163】
[実施例3-2]
(水洗処理)
負極乾燥処理後に、以下の水洗処理の工程をさらに行うこと以外は実施例3-1と同様にして負極を得た。すなわち、80℃で乾燥後、ドライルーム外に負極を持ち出し、純粋の入ったガラス容器中に負極を浸漬後、120℃で真空乾燥させた。これにより、目的とする負極を得た。
【0164】
[実施例4-1、4-2、参考例4-1、4-2]
負極として実施例3-1、3-2、参考例3-1、3-2の負極を用いること以外は実施例2-1と同様にしてコインセルを作製した。
【0165】
[評価]
実施例3-1、3-2、参考例3-1、3-2の負極に対して、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質と同様の評価を行った。その結果、実施例3-1、3-2、参考例3-1、3-2の負極では、実施例1-1、1-2、参考例1-1、1-2の負極活物質とほぼ同様の評価結果が得られた。
【0166】
また、実施例4-1、4-2、参考例4-1、4-2のコインセルに対して、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルと同様の評価を行った。その結果、実施例4-1、4-2、参考例4-1、4-2のコインセルでは、実施例2-1、2-2、参考例2-1、2-2のコインセルとほぼ同様の評価結果が得られた。
【0167】
<4 応用例1>
「応用例としての電池パックおよび電子機器」
応用例1では、一実施形態またはその変形例に係る電池を備える電池パックおよび電子機器について説明する。
【0168】
[電池パックおよび電子機器の構成]
以下、
図16を参照して、応用例としての電池パック300および電子機器400の一構成例について説明する。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0169】
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
【0170】
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD、ELディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられるが、これに限定されるものでなない。
【0171】
(電子回路)
電子回路401は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、電子機器400の全体を制御する。
【0172】
(電池パック)
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、
図16では、6つの二次電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。二次電池301aとしては、一実施形態またはその変形例に係る電池が用いられる。
【0173】
ここでは、電池パック300が、複数の二次電池301aにより構成される組電池301を備える場合について説明するが、電池パック300が、組電池301に代えて1つの二次電池301aを備える構成を採用してもよい。
【0174】
充放電回路302は、組電池301の充放電を制御する制御部である。具体的には、充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
【0175】
<5.応用例2>
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、
図17を参照して説明する。
図17に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0176】
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサ7210、充電口7211が搭載されている。バッテリー7208に対して、上述した本開示の蓄電装置が適用される。
【0177】
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モータである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流-交流(DC-AC)あるいは逆変換(AC-DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ7210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0178】
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
【0179】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
【0180】
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0181】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0182】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【0183】
以上、本開示に係る技術が適用され得るハイブリッド車両7200の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、バッテリー7208に好適に適用され得る。
【0184】
<6.応用例3>
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、
図18を参照して説明する。例えば住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0185】
住宅9001には、発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサー9011が設けられている。各装置は、電力網9009および情報網9012によって接続されている。発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005および/または蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
【0186】
蓄電装置9003に対して、上述した本開示のバッテリユニットが適用される。蓄電装置9003は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両9006で使用されるものでも良い。スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0187】
各種のセンサー9011は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサー9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0188】
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、Wi-Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0189】
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0190】
各部を制御する制御装置9010は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサー9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0191】
以上のように、電力が火力9002a、原子力9002b、水力9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0192】
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0193】
以上、本開示に係る技術が適用され得る蓄電システム9100の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、蓄電装置9003が有する二次電池に好適に適用され得る。
【0194】
以上、本技術の実施形態およびその変形例、ならびに実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0195】
例えば、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。また、化合物などの化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数などに限定されない。
【0196】
また、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0197】
また、上述の実施形態および実施例では、円筒型およびラミネートフィルム型の二次電池に本技術を適用した例について説明したが、電池の形状は特に限定されるものではない。例えば、角型やコイン型などの二次電池に本技術を適用することも可能であるし、スマートウオッチ、ヘッドマウントディスプレイ、iGlass(登録商標)などのウェアラブル端末に搭載されるフレキシブル電池などに本技術を適用することも可能である。
【0198】
また、上述の実施形態および実施例では、巻回型に対して本技術を適用した例について説明したが、電池の構造は特に限定されるものではなく、例えば、正極および負極を積層した構造(スタック型電極構造)を有する二次電池、および正極および負極を折り畳んだ構造を有する二次電池などに本技術を適用することも可能である。
【0199】
また、上述の実施形態および実施例では、電極(正極および負極)が集電体と活物質層とを備える構成を例として説明したが、電極の構成は特に限定されるもではない。例えば、電極が活物質層のみからなる構成としてもよい。
【0200】
また、正極活物質層は正極材料を含む圧粉体であってもよいし、正極材料を含むグリーンシートの焼結体であってもよい。負極活物質層も同様に圧粉体またはグリーンシートの焼結体であってもよい。
【0201】
また、上述の実施形態および実施例では、本技術をリチウムイオン二次電池およびリチウムイオンポリマー二次電池に適用した例について説明したが、本技術を適用可能な電池の種類はこれに限定されるものではい。例えば、バルク型全固体電池などに本技術を適用してもよい。
【0202】
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
リチウムと錯体を形成可能な化合物を表面に有する負極活物質。
(2)
リチウムと、
ケイ素、スズおよびゲルマニウムのうちの少なくとも1種と、
酸素およびフッ素のうちの少なくとも1種と
を含む(1)に記載の負極活物質。
(3)
リチウム含有SiOx(0.33<x<2)、リチウム含有SnOy(0.33<y<2)およびリチウム含有GeOz(0.33<z<2)のうちの少なくとも1種を含む(1)または(2)に記載の負極活物質。
(4)
前記リチウムの含有量は、10原子%以上45原子%以下である(2)または(3)に記載の負極活物質。
(5)
前記化合物は、芳香族化合物およびその誘導体のうちの少なくとも1種である(1)から(4)のいずれかに記載の負極活物質。
(6)
前記芳香族化合物は、ナフタレン、アントラセン、テトラセンおよびペンタセンのうちの少なくとも1種である(5)に記載の負極活物質。
(7)
粒子状、層状または3次元形状を有する(1)から(6)のいずれかに記載の負極活物質。
(8)
前記表面の少なくとも一部を被覆する被覆剤を有し、
前記被覆剤は、炭素、水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、フッ化物、炭化水素化合物および高分子化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1に記載の負極活物質。
(9)
前記被覆剤の含有量は、0.05質量%以上10質量%以下である(8)に記載の負極活物質。
(10)
リチウムと錯体を形成可能な化合物と、リチウムを含む負極活物質とを反応させることを含む負極活物質の製造方法。
(11)
前記反応は、前記化合物を含む溶液に前記負極活物質を浸漬することにより行われる(10)に記載の負極活物質の製造方法。
(12)
(1)に記載の負極活物質を含む負極。
(13)
(1)に記載の負極活物質を含む負極と、
正極と、
電解質と
を備える電池。
(14)
(13)に記載の電池と、
前記電池を制御する制御部と
を備える電池パック。
(15)
(13)に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
(16)
(13)に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
(17)
(13)に記載の電池を備え、
前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
(18)
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う(17)に記載の蓄電装置。
(19)
(13)に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電力システム。
(20)
発電装置もしくは電力網から前記電池に電力が供給される(19)に記載の電力システム。
【符号の説明】
【0203】
11 電池缶
12、13 絶縁板
14 電池蓋
15 安全弁機構
15A ディスク板
16 熱感抵抗素子
17 ガスケット
20 巻回型電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 センターピン
25 正極リード
26 負極リード