(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F16K31/06 305G
F16K31/06 305E
F16K31/06 305J
(21)【出願番号】P 2019047423
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 安奈
(72)【発明者】
【氏名】栃原 秀哉
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-104518(JP,A)
【文献】実開昭51-038733(JP,U)
【文献】特開2009-097622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
H01F 7/06- 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が流通する内部通路(512)を内部に有するハウジング(51)と、
作動流体の流通を許可する開弁状態と作動流体の流通を阻む閉弁状態とに切り換えるように前記内部通路を開閉する弁部(57)と、
前記弁部が装着されまたは前記弁部が一部をなす弁部支持部材(58;158)と、
前記弁部支持部材を軸方向に駆動するプランジャ(55;155)と、
前記開弁状態と前記閉弁状態を切り換えるために通電時に前記プランジャを前記軸方向に駆動する磁気力を発生するコイル部(540)と、
前記通電時に前記プランジャとともに磁気回路を形成するヨーク(56;156)と、
前記軸方向に移動する前記弁部支持部材を径方向に支持する第1摺動支持部(514;1514;2514)と、
前記軸方向に移動する前記プランジャを、前記第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する第2摺動支持部(542)と、
前記プランジャの内側に設けられ、前記内部通路を通過した前記作動流体が流通する流体通路(553)と、
を備える流体制御弁。
【請求項2】
前記弁部支持部材の軸心周りに並ぶ複数の前記第1摺動支持部と、
周方向について、隣り合う前記第1摺動支持部と前記第1摺動支持部との間に位置して前記弁部支持部材よりも径外側に設けられて、前記開弁状態において前記内部通路を通過した作動流体が分流する複数の分岐通路(515)と、
を備える請求項
1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
複数の前記分岐通路を通過した前記作動流体は、合流して前記流体通路を流下する請求項
2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
作動流体が流通する内部通路(512)を内部に有するハウジング(51)と、
作動流体の流通を許可する開弁状態と作動流体の流通を阻む閉弁状態とに切り換えるように前記内部通路を開閉する弁部(57)と、
前記弁部が装着されまたは前記弁部が一部をなす弁部支持部材(58;158)と、
前記弁部支持部材を軸方向に駆動するプランジャ(55;155)と、
前記開弁状態と前記閉弁状態を切り換えるために通電時に前記プランジャを前記軸方向に駆動する磁気力を発生するコイル部(540)と、
前記通電時に前記プランジャとともに磁気回路を形成するヨーク(56;156)と、
前記軸方向に移動する前記弁部支持部材を径方向に支持する第1摺動支持部(514;1514;2514)と、
前記軸方向に移動する前記プランジャを、前記第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する第2摺動支持部(542)と、
前記弁部支持部材の軸心周りに並ぶ複数の前記第1摺動支持部と、
周方向について、隣り合う前記第1摺動支持部と前記第1摺動支持部との間に位置して前記弁部支持部材よりも径外側に設けられて、前記開弁状態において前記内部通路を通過した作動流体が分流する複数の分岐通路(515)と、
を備える流体制御弁。
【請求項5】
前記プランジャの内側に前記作動流体が流通する流体通路(553)を備え、
複数の前記分岐通路を通過した前記作動流体は、合流して前記流体通路を流下する請求項
4に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁部支持部材は、前記プランジャに対して径方向に移動可能な状態で支持されている請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記プランジャと前記ヨークとの間を磁束が通る磁気経路である第1経路(551,561;555;552,565)と、
前記第1経路とは異なる部位において前記プランジャと前記ヨークとの間を磁束が通る磁気経路である第2経路(550,560;552,564)と、
を備え、
前記開弁状態での通電開始時は前記第1経路の方が前記第2経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成し、前記閉弁状態では前記第2経路の方が前記第1経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成する請求項1
から請求項
6のいずれか一項に記載の流体制御弁。
【請求項8】
前記ハウジングは、組み合わされた複数の分割部材を含んで形成されており、
前記第1摺動支持部を内蔵しまたは一部として前記第1摺動支持部を有する前記分割部材と、前記第2摺動支持部を内蔵しまたは一部として前記第2摺動支持部を有する前記分割部材とは、別個の部材である請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の流体制御弁。
【請求項9】
前記第1摺動支持部は、複数の分割部材のうち、流入ポート(510)を有する流入側ハウジングに設けられた部分である請求項
8に記載の流体制御弁。
【請求項10】
前記第1摺動支持部に対する前記弁部支持部材の回転を阻止する回転阻止機構部(514a,582a;514b,582b)を備える請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の流体制御弁。
【請求項11】
前記回転阻止機構部は、前記第1摺動支持部と前記弁部支持部材との係合部を含んでいる請求項
10に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電磁弁は、非通電状態においてばね力により第1の弁部材を閉位置に保持し第2の弁部材を開位置に保持する。この状態では、第1のチャンネルと第2のチャンネルとが接続されている。通電状態においては、ばね力に抗する磁気力によって第1の弁部材が開位置に保持され、第3のチャンネルと第2のチャンネルとが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電磁弁は、弁棒と、弁棒に固定された電機子と、弁棒に固定された第1の弁部材および第2の弁部材とを備えている。この構成より、弁棒の軸心が適正位置から径方向にずれたり傾いたりした状態で設置されると、弁部も弁棒と同様の状態になるため、閉弁力が不安定になるという懸念がある。
【0005】
この明細書における開示の目的は、弁座に対する、弁部の径方向位置ずれと弁部の軸心傾きとの両方を抑制可能な流体制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された流体制御弁の一つは、作動流体が流通する内部通路(512)を内部に有するハウジング(51)と、作動流体の流通を許可する開弁状態と作動流体の流通を阻む閉弁状態とに切り換えるように内部通路を開閉する弁部(57)と、弁部が装着されまたは弁部が一部をなす弁部支持部材(58;158)と、弁部支持部材を軸方向に駆動するプランジャ(55;155)と、開弁状態と閉弁状態を切り換えるために通電時にプランジャを軸方向に駆動する磁気力を発生するコイル部(540)と、通電時にプランジャとともに磁気回路を形成するヨーク(56;156)と、軸方向に移動する弁部支持部材を径方向に支持する第1摺動支持部(514;1514;2514)と、軸方向に移動するプランジャを、第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する第2摺動支持部(542)と、プランジャの内側に設けられ、内部通路を通過した作動流体が流通する流体通路(553)と、を備える。
開示された流体制御弁の一つは、作動流体が流通する内部通路(512)を内部に有するハウジング(51)と、作動流体の流通を許可する開弁状態と作動流体の流通を阻む閉弁状態とに切り換えるように内部通路を開閉する弁部(57)と、弁部が装着されまたは弁部が一部をなす弁部支持部材(58;158)と、弁部支持部材を軸方向に駆動するプランジャ(55;155)と、開弁状態と閉弁状態を切り換えるために通電時にプランジャを軸方向に駆動する磁気力を発生するコイル部(540)と、通電時にプランジャとともに磁気回路を形成するヨーク(56;156)と、軸方向に移動する弁部支持部材を径方向に支持する第1摺動支持部(514;1514;2514)と、軸方向に移動するプランジャを、第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する第2摺動支持部(542)と、弁部支持部材の軸心周りに並ぶ複数の第1摺動支持部と、周方向について、隣り合う第1摺動支持部と第1摺動支持部との間に位置して弁部支持部材よりも径外側に設けられて、開弁状態において内部通路を通過した作動流体が分流する複数の分岐通路(515)と、を備える。
【0008】
この流体制御弁によれば、弁部を備える弁部支持部材はプランジャとは異なる摺動支持部によって軸方向に移動可能に支持されている。これにより、弁部支持部材に係る摺動軸とプランジャに係る摺動軸とが独立であるため、互いの軸心の径方向位置や傾き具合に影響を受けにくい状態で動作できる。以上より、弁座に対する、弁部の径方向位置ずれと弁部の軸心傾きとの両方を抑制可能な流体制御弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る冷却水回路を示す構成図である。
【
図2】第1実施形態の流体制御弁について開弁状態を示した断面図である。
【
図3】第1実施形態の流体制御弁について閉弁状態を示した断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る弁部支持部材と摺動支持部とを示す横断面図である。
【
図5】第1実施形態の流体制御弁について開弁状態を示した断面図である。
【
図6】第1実施形態の流体制御弁について閉弁状態を示した断面図である。
【
図7】開弁状態においてヨークとプランジャ間の上流側の磁気経路を説明する拡大図である。
【
図8】閉弁状態においてヨークとプランジャ間の上流側の磁気経路を説明する拡大図である。
【
図9】開弁状態においてヨークとプランジャ間の下流側の磁気経路を説明する拡大図である。
【
図10】閉弁状態においてヨークとプランジャ間の下流側の磁気経路を説明する拡大図である。
【
図11】第1経路と第2経路についてストロークと吸引力の関係を示す特性図である。
【
図12】第2実施形態に係る弁部支持部材と摺動支持部とを示す横断面図である。
【
図13】第3実施形態の流体制御弁について閉弁状態を示した断面図である。
【
図14】第4実施形態の流体制御弁について開弁状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
流体制御弁の一例を開示する第1実施形態について
図1~
図11を参照しながら説明する。第1実施形態の流体制御弁5は、冷却水回路1に設置されている。流体制御弁5によって制御される作動流体は、例えば、気体や水、オイル等の液体である。一例として示す冷却水回路1は、エンジン冷却水が循環する回路である。冷却水回路1は、車両に設けられたエンジン2の暖機および冷却を効率良く行う機能を有している。冷却水回路1は、エンジン2、ポンプ3、第1流路10、第2流路11、第3流路12、切換弁4、ヒータコア6、流体制御弁5、ラジエータ7、制御装置8等を備えている。
【0012】
図1に示すように、冷却水はポンプ3から流出し、エンジン2、第1流路10、第2流路11、第3流路12を流通してポンプ3に戻る。制御装置8は、少なくとも一つの演算処理装置と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくとも一つのメモリ装置とを有する。制御装置8は、例えばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置8は、一つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置8によって実行されることにより、制御装置8をこの明細書に記載される装置として機能させる。プログラムは、制御装置8によって実行されることにより、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置8を機能させる。制御装置8は、エンジン2の暖機および冷却を行う種々の処理を行うための機能部がハードウェアまたはソフトウェアまたはその両方で構築されている。
【0013】
ポンプ3は、エンジン2が運転状態である場合に冷却水を駆動させるようにエンジン2の運転と連動する装置である。ポンプ3は、エンジン2が運転状態のときに運転して冷却水を循環させ、エンジン2が停止状態のときに運転しない。ポンプ3には、例えばエンジンの回転によって動作する機械式の流量可変型ポンプが用いられる。ポンプ3は、電動モータを駆動源とし、エンジン2の運転状態とは無関係に作動、停止が可能である装置としてもよい。この場合、ポンプ3は、制御装置8の制御により、吐出する流体の量を変化させることができる。
【0014】
第1流路10は、エンジン2から流出した流体をポンプ3を経由してエンジン2に流入させる流路である。第1流路10は、流体がヒータコア6やラジエータ7を経由しないでエンジン2、切換弁4およびポンプ3を循環する流路である。エンジン2の内部には冷却水を流通させる流路が形成されている。エンジン2の内部を流通する冷却水は、エンジン2の熱を吸収して自らの温度を上昇させることでエンジン2の内部温度を低下させている。第2流路11は、エンジン2から流出した冷却水を、第1流路10の上流部から分岐して流体制御弁5、ヒータコア6を経由して第1流路10の下流部に戻す流路である。第2流路11には流体制御弁5およびヒータコア6が設けられている。第3流路12は、流体制御弁5よりも上流側である第2流路11の上流部から分岐して、ラジエータ7を経由して第1流路10の下流部に戻す流路である。
【0015】
第3流路12にはラジエータ7が設けられている。第3流路12が下流側において第1流路10に接続する合流部には、切換弁4が設けられている。切換弁4は、エンジン2を流出した冷却水の流路を、第1状態と第2状態とに切り換え可能に構成されている。第1状態は、冷却水が第1流路10を循環するように第1流路10と第3流路12とを連通させない状態である。第2状態は、切換弁4において接続されている3つの通路をすべて開放する状態である。切換弁4は、例えば冷却水が所定の温度条件を満たす場合に第2状態に流路を切り換え、所定の温度条件を満たさない場合に第1状態に流路を切り換える装置である。切換弁4は、例えばサーモスタット弁によって構成することができる。切換弁4は、感温ワックスに加えられた熱の量または冷却水温度に応じて弁開度が変化する。
【0016】
流体制御弁5は、第2流路11においてヒータコア6よりも上流側または下流側に設けられ、その開度を閉弁状態または開弁状態の2つの状態に切り換え可能な弁である。流体制御弁5が閉弁状態である場合、冷却水は第1状態で第2流路11には流れず第1流路10のみに流れる。流体制御弁5が開弁状態である場合、冷却水は第1状態で第1流路10と第2流路11の両方に流れる。以上のように、第2流路11、第3流路12は第1流路10に対して並列状態で構成されている。
【0017】
制御装置8は、冷却水温度センサによって検出される冷却水の温度に基づいて流体制御弁5を制御する。エンジン2の始動後、冷却水温度が予め定めた第1温度未満である場合は、切換弁4によって第1状態に維持され、制御装置8によって流体制御弁5を閉弁状態に制御する。冷却水は第1流路10のみを循環するので、エンジン2の暖機が促進される。
【0018】
冷却水温度が第1温度以上になると、エンジン2の暖機制御を終了する。冷却水温度が第1温度よりも高温に設定された第2温度以上になると、切換弁4によって第2状態に切り換えられる。冷却水は第3流路12を循環しラジエータ7において冷却水の放熱が行われる。制御装置8によって通電が遮断されて流体制御弁5が開弁状態に制御されると、冷却水は第2流路11を循環し、ヒータコア6においても冷却水の放熱が行われる。また第1状態である場合に、ヒータコア6において冷却水からの放熱が必要である場合は、制御装置8によって通電が遮断されて流体制御弁5を開弁状態に制御することがある。
【0019】
また他の形態として、前述した冷却水回路1は、エンジン2から流出した流体がヒータコア6やラジエータ7を経由してエンジンに戻る経路のみをもつ構成でもよい。つまり、冷却水回路1は、第1流路10を備えていない構成であってもよい。制御装置8は、エンジン油温、あるいはトランスミッション等の油温を検出するセンサの検出値に基づいて流体制御弁5を制御するように構成してもよい。
【0020】
流体制御弁5について、
図2~
図11を用いて説明する。
図2および
図5は開弁状態を示している。
図3および
図6は閉弁状態を示している。流体制御弁5は、弁座511、弁部57、弁部支持部材58、プランジャ55、電磁ソレノイド部54、第1摺動支持部514、第2摺動支持部542等を備える。流体制御弁5は、弁部57が弁座511から離間していく方向である開弁方向に作動流体の圧力が作用する構成を有する電磁弁装置である。流体制御弁5は、流体圧力に抗する方向に、弁部57の閉弁方向が設定されている電磁弁装置である。流体制御弁5は、作動流体から受ける流体圧力と通電により発生する磁気力との大小関係に応じて、ハウジング内に設けられた内部通路512を開閉する。ハウジングは、流体制御弁5の外郭をなし、組み合わされた複数の分割部材を含んで形成されている。流体制御弁5は、内部を流通する作動流体の圧力作用方向と反対方向を閉弁方向とし、流体通路を開く開弁状態と流体通路を閉じる閉弁状態とを切り換える装置である。
【0021】
弁部支持部材58とプランジャ55とは、別体の部材である。弁部支持部材58とプランジャ55は、互いに固定されていない。プランジャ55は、可動コアでもある。プランジャ55は、軸方向の両端が開口している筒状部551を備えている。プランジャ55は、弁部57側である筒状部551の一端部に設けられた上流側環状部550と、筒状部551の他端部に設けられた下流側環状部552とを備えている。上流側環状部550は、筒状部551と同じ直径寸法を有し、筒状部551と同軸状である上流側開口部550aを貫通孔として有する。この明細書または特許請求の範囲における同軸状とは、複数の部材や部分が同軸またはほぼ同軸となるような位置関係であることを意味している。上流側環状部550は、弁部支持部材58の下流側の端部に接触して弁部支持部材58を軸方向に変位可能に支持している。軸方向はプランジャ55や弁部57の移動方向でもある。弁部支持部材58は、プランジャ55と一緒に軸方向に変位する。
【0022】
上流側環状部550は、弁部支持部材58に直接接触しない形態によって、弁部支持部材58を軸方向に支持する構成でもよい。この場合、上流側環状部550は介在物を介して弁部支持部材58に間接的に接触している。また、上流側環状部550と弁部支持部材58は、開弁状態と閉弁状態との過程において、接触しない状態が存在する構成でもよい。この場合、上流側環状部550と弁部支持部材58は、離間している状態から閉弁状態においては直接または間接的に接触する状態に移行する。上流側環状部550は、少なくとも閉弁状態において、弁部支持部材58を支持する構成である。
【0023】
下流側環状部552は、筒状部551よりも大きい直径寸法であって筒状部551に対して直交する方向に放射状に広がるフランジ状部である。下流側環状部552には、内側に筒状部551と同軸状である下流側開口部が設けられている。筒状部551の内側には、流体通路553が設けられている。流体通路553は、上流側開口部550aを流体流入口としている。プランジャ55は、磁気を通す材質、例えば磁性材料で構成されている。
【0024】
弁部支持部材58は、弁部57が装着されることにより弁部57と一体に構成されている。弁部支持部材58は、上流側盤部580と複数の上流側脚部582と複数の下流側脚部583とを備えている。上流側盤部580は、上流側脚部582の上流端部に一体に設けられた部分であり、例えば円盤状部をなしている。上流側盤部580には弁部57が装着されている。弁部57は、弁部支持部材58の一部である構成でもよく、この場合、弁部支持部材58は、弁部を含む弁体として解釈することもできる。
【0025】
複数の上流側脚部582は、上流側盤部580の外周縁部において周方向に間隔をあけて並んでおり、それぞれ上流側盤部580からプランジャ55側に延びている。隣り合う上流側脚部582と上流側脚部582との間には、流体通路581が設けられている。弁部支持部材58には、径方向に貫通するように少なくとも一つの流体通路581が設けられている。流体通路581は、上流側で内部通路512に連通し、下流側で上流側開口部550aを介して流体通路553に連通している。
【0026】
図2、
図3に示すように、下流側脚部583は、上流側脚部582の下流端部に一体に設けられ上流側脚部582からさらにプランジャ55側に延びる部分である。下流側脚部583は、上流側脚部582よりも外径寸法が小さい部分である。下流側脚部583は、ヨーク56の上流側第1環状部560に設けられた開口部560aに内挿された状態で、軸方向に摺動可能に支持されている。
【0027】
弁部支持部材58は、開弁状態において上流側脚部582の下流端部が上流側第1環状部560に接触することでそれ以上開弁方向に変位することが規制されている。したがって、下流側脚部583は、ヨーク56によって、軸方向について所定の範囲で変位可能であり、径方向にはほぼ移動不可能に規制されている。ヨーク56の上流側第1環状部560は、軸方向に移動する下流側脚部583を径方向に支持する部分である。このように径方向に支持するとは、上流側第1環状部560が下流側脚部583に対して径方向の動きを規制するように支持することを意味する。この構成によれば、ヨーク56は、軸方向に移動する弁部支持部材58を径方向に支持する第1摺動支持部でもある。弁部支持部材58は、例えば樹脂材料等の磁気を通しにくい材料で形成されている。したがって、弁部支持部材58は磁気回路を形成しないように構成されている。
【0028】
弁部57は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている。弁部57は、軸方向の下流側に延びる軸部571が上流側盤部580の貫通孔に嵌っている状態で弁部支持部材58に一体に装着されている。弁部57は、流入側ハウジング51に設けられた弁座511に対して軸方向に対向する位置に設けられている。
【0029】
弁部支持部材58は、第1摺動支持部514によって軸方向に変位可能な状態で支持されている。第1摺動支持部514は、弁部支持部材58の外周面を部分的に支持している。第1摺動支持部514は、弁部支持部材58をハウジングに対して軸方向に移動するように径方向に支持している。このように径方向に支持するとは、第1摺動支持部514が弁部支持部材58に対して径方向の動きを規制するように支持することを意味する。第1摺動支持部514は、開弁動作や閉弁動作において弁部支持部材58に対して径方向に少なくとも一時的または部分的に接触することにより径方向の動きを規制している。第1摺動支持部514は、ハウジングの一部である。第1摺動支持部514は、流体制御弁5において固定設置された部分である。また、第1摺動支持部514は、例えばハウジングとは別個の部品であって、ハウジング内に収容されている構成でもよい。
【0030】
図4に示すように、流入側ハウジング51は、上流側脚部582の外周縁を支持する複数の第1摺動支持部514を備えている。第1摺動支持部514は、流体制御弁5における、ある特定の一部分に設けられた部位である。第1摺動支持部514は、流入側ハウジング51の一部として設けられた、第2摺動支持部542とは異なる部位である。複数の第1摺動支持部514は、上流側脚部582の外周縁を支持する位置に周方向に間隔をあけて並んでいる。第1摺動支持部514は、開弁状態と閉弁状態の両方にわたって上流側脚部582の外周縁を内周縁によって支持できる軸方向長さを有している。
【0031】
複数の第1摺動支持部514は、複数の第1摺動支持部514に係る中心軸が弁部支持部材58の軸心と同軸になるように弁部支持部材58を支持している。第1摺動支持部514の内側壁面は、上流側脚部582の外周面に面している。複数の第1摺動支持部514は、弁部支持部材58の外周面に部分的に接触して支持する構成でもよい。
【0032】
図4に示すように第1摺動支持部514には、上流側脚部582の外周面に対向する内側壁面に、径内側または軸心側に凸となる凸部514aが設けられている。上流側脚部582には、第1摺動支持部514の内周壁面に対向する外周壁面に、径内側または軸心側に凹となる凹部582aが設けられている。凸部514aと凹部582aとが嵌り合って摺動することにより、上流側脚部582は第1摺動支持部514に対して軸方向に摺動可能である。凸部514aと凹部582aは、開弁状態と閉弁状態の両方にわたって摺動可能な軸方向長さにおいて嵌り合う関係にある。凸部514aの軸方向長さと凹部582aの軸方向長さは、同程度でもよいし、一方が他方よりも長い構成でもよい。
【0033】
流体制御弁5は、周方向に並ぶ、凸部514aと凹部582aの係合部を複数個備えている。この係合部は、流体制御弁5が有する複数の上流側脚部582および第1摺動支持部514のうち、全部または少なくとも一つに設けられている。凸部514aと凹部582aとが係合する構成は、第1摺動支持部514に対して上流側脚部582が軸心周りに回転することを規制している。
図4に示す状態において弁部支持部材58が右回りに回転運動すると、凹部582aの両側の凸部のうち左回り側の部分が凸部514aに衝突する。
図4に示す状態において弁部支持部材58が左回りに回転運動すると、凹部582aの両側の凸部のうち右回り側の部分が凸部514aに衝突する。このように弁部支持部材58が左回り、右回りのいずれの方向に回転しても、凸部514aと凹部582aとの係合部がストッパとして機能する回転阻止機構部を構成する。
【0034】
凸部514aと凹部582aのそれぞれの断面形状は、
図4に示す形状に限定されない。凸部514aと凹部582aとの係合部に係る断面形状は、第1摺動支持部514に対する上流側脚部582の回転阻止効果を奏する形状であればよい。例えば、当該係合部に係る断面形状は、矩形状、楔状、多角形状、半円状、半トラック状のいずれでもよい。
【0035】
このように凸部514aと凹部582aは、上流側脚部582と第1摺動支持部514との摺動部を構成する。また、上流側脚部582と第1摺動支持部514との摺動部は、面と面とが擦れ合うのではなく点または線によって擦れ合うような形状でもよい。
【0036】
流入側ハウジング51は、複数の第1摺動支持部514と、隣り合う第1摺動支持部514と第1摺動支持部514とを連結する外壁部513とを備える。外壁部513は、ハウジングの一部を形成し、複数の第1摺動支持部514と一体に形成されている。流体制御弁5は、流入側ハウジング51内において複数の分岐通路515を有している。分岐通路515は、隣り合う第1摺動支持部514と第1摺動支持部514の間に位置する通路である。分岐通路515は、径外側において外壁部513と、周方向において二つの第1摺動支持部514とによって囲まれた通路である。分岐通路515は、径内側または軸心側において流体通路581に通じている。
【0037】
この構成により、
図5に示す開弁状態において流入ポート510を通過した作動流体は内部通路512から複数の分岐通路515に分流して弁部57よりも下流側に流下する。複数の分岐通路515に分流した作動流体は、複数の下流側脚部583の内側で合流し、開口部560aを通じて流体通路553に流入して流出ポート530から流出する。
【0038】
流体制御弁5は、作動流体の内部通路512を形成するハウジングを備える。ハウジングは、流入側ハウジング51と、流出側ハウジング53と、流入側ハウジング51と流出側ハウジング53とを連結する中間ハウジング52とを備える。流入側ハウジング51は、流体制御弁5の外郭を形成するハウジングの一部品である第1ハウジングである。中間ハウジング52は、流体制御弁5の外郭を形成するハウジングの一部品である第2ハウジングである。流出側ハウジング53は、流体制御弁5の外郭を形成するハウジングの一部品である第3ハウジングである。流入側ハウジング51には、作動流体が流入する流入ポート510が設けられている。流入側ハウジング51は、下流側が中間ハウジング52に一体に設けられ、弁部57、弁部支持部材58の大部分等を内蔵している。流入側ハウジング51は、内部において流入ポート510の周囲に、閉弁方向に変位する弁部57が着座する弁座511を備えている。閉弁状態において弁座511は、環状面または環状線を形成するように弁部57に接触していることが好ましい。
【0039】
流出側ハウジング53には、流出ポート530が設けられている。流出側ハウジング53は、上流側が中間ハウジング52に一体に設けられている。流出ポート530は上流側の端部で流体通路553に連通している。流入側ハウジング51、中間ハウジング52および流出側ハウジング53は、樹脂材料で形成され、互いに溶着接合されている。
【0040】
中間ハウジング52は、ヨーク56、プランジャ55、コイル部540、ボビン541、第2摺動支持部542等を内蔵している。ヨーク56は、流体制御弁5のハウジング内において固定設置されている。ヨーク56は、磁気を通す材質、例えば磁性材料で構成されている。ヨーク56は、磁気回路の一部を構成し、ボビン541、第2摺動支持部542を中間ハウジング52の内部で支持している。ヨーク56は、ボビン541およびコイル部540の外周側を覆うように設けられている。プランジャ55、コイル部540、ボビン541、第2摺動支持部542、弁部支持部材58および弁部57は、軸心が同軸状をなすように設置されている。第2摺動支持部542は、流体制御弁5において固定設置された部分である。
【0041】
第2摺動支持部542は筒状体の部材である。第2摺動支持部542は、外側でボビン541を支持し、内側でプランジャ55が軸方向に摺動可能なようにプランジャ55の筒状部551の外面を支持している。第2摺動支持部542はプランジャ55を径方向に支持している部位であり、流体制御弁5における、ある特定の一部分に設けられている。このように径方向に支持するとは、第2摺動支持部542がプランジャ55に対して径方向の動きを規制するように支持することを意味する。第2摺動支持部542は、開弁動作や閉弁動作においてプランジャ55に対して径方向に少なくとも一時的または部分的に接触することにより径方向の動きを規制している。第2摺動支持部542は、プランジャ55の内側に設けられた流体通路553よりも径外側に位置する径方向位置においてプランジャ55を径方向に支持している。
【0042】
第2摺動支持部542は、軸方向に移動するプランジャ55を、第1摺動支持部514とは軸方向に離れた位置において径方向に支持している。第2摺動支持部542は、第1摺動支持部514とは異なる径方向位置においてプランジャ55を径方向に支持している。第2摺動支持部は、軸方向に移動するプランジャ55を第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する。第2摺動支持部542は、中間ハウジング52に内蔵された、第1摺動支持部514とは異なる部位である。第2摺動支持部542は、第1摺動支持部514とは別部品である。第2摺動支持部542は、磁束を通しにくい非磁性体材料で形成されている。また、第2摺動支持部542は、例えばハウジングの一部でもよい。弁部支持部材58とプランジャ55は、第1摺動支持部514と第2摺動支持部542とで支持されることによって、互いに径方向に移動可能な状態で摺動する。
【0043】
電磁ソレノイド部54は、ヨーク56、コイル部540、ボビン541、第2摺動支持部542、コネクタ等を備えて構成されている。コネクタは、ヨーク56の側方または外側に位置するように設けられる。コネクタはコイル部540に通電するために設けられている。コネクタの内部のターミナル端子はコイル部540と電気的に接続されている。電磁ソレノイド部54は、コネクタによってターミナル端子を電流制御装置等に電気的に接続することによりコイル部540に通電する電流を制御できる。ボビン541は、樹脂材により円筒状に形成され、外周面にはコイル部540が巻回されている。コイル部540は、開弁状態と閉弁状態を切り換えるために、通電時にプランジャ55を軸方向に駆動する磁気力を発生する。
【0044】
ヨーク56は、軸方向の両端が開口している筒状体である。ヨーク56は、上流側第1環状部560と傾斜部561と上流側第2環状部562と下流側筒状部563とを備えている。上流側第1環状部560は、ヨーク56において弁部57側の一端部に設けられている。上流側第1環状部560は、プランジャ55の上流側環状部550に軸方向に接触可能なように設けられている。上流側第1環状部560は、上流側環状部550よりも大きい直径寸法を有しプランジャ55の上流側開口部550aと同軸状である開口部560aを貫通孔として有する。
【0045】
上流側第1環状部560と上流側環状部550は、軸方向に向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部をなしている。以下、傾斜部および平行部に関わる断面形状とは、プランジャ等の軸方向に沿う縦断面形状のことである。上流側第1環状部560と上流側環状部550は、プランジャ55とヨーク56との間に磁束が通る磁気経路を形成するようにプランジャ55とヨーク56に設けられている。
【0046】
上流側第1環状部560は弁部57とは反対側の下流側面560bが上流側環状部550の弁部57側に位置する上流側面550bに閉弁状態で接触するように設けられている。閉弁状態とは、作動流体の流通を阻むように内部通路512が閉じられた状態である。閉弁状態には、弁部57と弁座511が接触する状態だけでなく、弁部57と弁座511が非接触であっても作動流体の流通を阻んでいる状態も含まれる。
【0047】
下流側面560bと上流側面550bとは、軸方向に向かい合う部分であって互いに沿う平行部をなしている。
図3および
図6に示す閉弁状態では、上流側第1環状部560と上流側環状部550とが接触する部分に磁束が通る第2経路である磁気経路が形成されている。上流側環状部550は、閉弁状態において平行部の一方であるプランジャ平行部分に相当する。上流側第1環状部560は、閉弁状態において平行部の他方であるヨーク平行部分に相当する。上流側第1環状部560と上流側環状部550は、互いに軸方向に向かい合いかつ軸方向に対して直交する部分である。上流側環状部550は、筒状部551に対して交差するように延設されかつ筒状部551よりも作動流体の上流側でプランジャ55に設けられた可動側上流環状部である。上流側第1環状部560は、可動側上流環状部よりも作動流体の上流側にヨーク56に設けられた固定側上流環状部である。
【0048】
上流側環状部550と上流側第1環状部560は、閉弁状態において直接接触しない構成でもよい。この場合、上流側環状部550は、介在物を通じて磁気経路を形成するように介在物を介して上流側第1環状部560に間接的に接触している。介在物は、例えば非磁性体である。介在物は、閉弁状態において上流側環状部550と上流側第1環状部560の間で磁束が通る物体である。介在物は磁性体でもよい。
【0049】
傾斜部561は、弁部57側の端部が上流側第1環状部560に連結し、プランジャ55側の端部が上流側第2環状部562に連結する形状の筒状部である。傾斜部561は上流側から下流側にかけて直径が拡大するような筒状部である。傾斜部561は、プランジャ55の筒状部551に対して傾斜する断面形状をなす部分である。傾斜部561は、上流側の端部が下流側の端部よりも直径寸法が小さく形成されている。したがって、傾斜部561は、下流側またはプランジャ55側に向かうほど、直径が大きくなるように筒状部551に対して傾斜している。
【0050】
傾斜部561における上流側または弁部57側の端部は、筒状部551よりも直径寸法が大きく構成されている。筒状部551、特にその上流側部位は、開弁状態から閉弁状態へ移動するにつれて、傾斜部561との距離が少しずつ小さくなるように設けられている。開弁状態での通電開始時には、
図7に示すように、上流側におけるプランジャ55とヨーク56との距離は、傾斜部561と筒状部551との間が最も短くなっている。このように開弁状態では、傾斜部561と筒状部551との間を磁束が通る第1経路である磁気経路が前述の第2経路よりも磁束が大きくなる。開弁状態の通電開始時は第1経路の方が第2経路よりも磁束が大きい磁気経路を形成し、閉弁状態は第2経路の方が第1経路よりも磁束が大きい磁気経路を形成する。
【0051】
上流側第2環状部562は、ヨーク56において傾斜部561の下流端部から径方向に延びている。下流側筒状部563は、ヨーク56において上流側第2環状部562の外周縁から軸方向に延びている。上流側第2環状部562は、傾斜部561の下流端部よりも大きい直径寸法であって下流側筒状部563に対して直交する方向に放射状に広がるフランジ状部である。上流側第2環状部562は、断面形状が上流側第1環状部560と平行な関係にある。下流端筒状部565の内周面は、閉弁状態および開弁状態で、軸方向について下流側環状部552の外周縁と対向する位置関係にある。通電時には、下流側筒状部563と下流側環状部552の外周縁との間にも磁束が通る磁気経路が形成されることになる。
【0052】
図7~
図10に示すように、流体制御弁5は、プランジャ55とヨーク56との間を通る第1経路と第2経路を、軸方向について一端側と他端側との両方に備えている。ヨーク56は、下流端筒状部565と、下流端筒状部565と下流側筒状部563とをつなぐ下流側環状部564とを備えている。下流端筒状部565は、軸方向の他端側である下流側の端部に設けられて軸方向に延びる断面形状を有する。下流側環状部564は、下流側筒状部563の下流端部から径方向に延びて外周側で下流端筒状部565と一体になっている。下流側環状部552は、閉弁状態において、弁部57側の上流側面552bが下流側環状部564の下流側面564bに接触するような位置に設けられている。下流側面564bは、下流側環状部564において弁部57側とは反対側に位置する面である。下流側面564bと上流側面552bとは、軸方向に向かい合う部分であって互いに沿う平行部をなしている。下流側環状部552は、閉弁状態において平行部の一方であるプランジャ平行部分に相当する。下流側環状部564は、閉弁状態において平行部の他方であるヨーク平行部分に相当する。
【0053】
図9に示すように開弁状態で通電中であると、プランジャ55とヨーク56の下流端部においては、下流側環状部552と下流端筒状部565との間の第1経路に磁束が通る。開弁状態で下流側におけるプランジャ55とヨーク56との距離は、下流側環状部552と下流端筒状部565との間が最も短くなっている。
【0054】
図9に示す開弁状態から閉状態に近づけていき、
図10に示す閉弁状態になると、第2経路が第1経路よりも支配的となる逆転現象が起こる。これは、互いに平行部を構成する下流側環状部552と下流側環状部564とが接触し、または下流側においてプランジャ55とヨーク56との間において最も近接するからである。下流側において下流側環状部552と下流側環状部564との間が、磁気抵抗が最も小さい部位であり、磁束が最も大きい部位になる。
【0055】
流体制御弁5は、下流側においても、
図11の特性図と同様にストロークが小さい閉弁状態の直前においてプランジャ55の吸引力が第2経路の方が大きくなるように変化する。流体制御弁5は、第2経路によって弁部57を弁座511に吸着する構成を下流側に備えることで、弁部57に作用する流体圧力に対して弁部57を締め切ることができる。これによれば、閉弁時の吸着保持力を強化することができる。
【0056】
図11に示すように、プランジャ55を吸引する吸引力は、開弁状態から閉弁状態に近づく間は第1経路の方が第2経路よりも大きい。さらにこの吸引力は、閉弁状態の直前で逆転現象が起きて閉弁状態では第2経路の方が第1経路よりも大きくなるという特性がある。
図7に示す通電時の開弁状態においては、実線矢印で示す第1経路が破線矢印で示す第2経路よりも支配的な磁気経路になる。これはプランジャ55とヨーク56との間において傾斜部561と筒状部551とは、最短距離であり磁気抵抗が最小の部位であり磁束が最大の部位になるからである。このため、流体制御弁5において
図11の特性図と同様に、ストロークが大きい開弁状態ではプランジャ55を吸引する吸引力は、第2経路よりも第1経路の方が大きくなる。流体制御弁5は、第1経路において吸引し始める構成を採用することによって、弁部57に作用する流体圧力に反してプランジャ55を吸引することができる。したがって、流体制御弁5は、通電開始時の吸引性能を強化することができる。
【0057】
図7に示す開弁状態から閉弁状態に近づけていき、
図8に示す閉弁状態になると、第2経路が第1経路よりも支配的となる逆転現象が起こる。これは、互いに平行部を構成する上流側環状部550と上流側第1環状部560とが接触しまたはプランジャ55とヨーク56との間において最も近接するからである。このため、上流側環状部550と上流側第1環状部560との間が、磁気抵抗が最も小さい部位であり磁束が最も大きい部位になる。流体制御弁5は、
図11の特性図と同様に、ストロークが小さい閉弁状態の直前においてプランジャ55の吸引力が第2経路の方が大きくなるように変化する。流体制御弁5は、第2経路によって弁部57を弁座511に吸着する構成を採用することにより、弁部57に作用する流体圧力に対して弁部57を締め切ることができる。このため、閉弁時の吸着保持力を強化することができる。以上のように、流体制御弁5は、
図11に図示する第1経路と第2経路の両方の吸引力に係る有利な特性を併せ持った電磁弁を提供している。
【0058】
次に、第1実施形態の流体制御弁5がもたらす作用効果について説明する。流体制御弁5は、作動流体が流通する内部通路512を有するハウジングと、開弁状態と閉弁状態とに切り換えるように内部通路512を開閉する弁部57とを備える。流体制御弁5は、弁部57が装着されまたは弁部57が一部をなす弁部支持部材58と、弁部支持部材58を軸方向に駆動するプランジャ55とを備える。流体制御弁5は、通電時にプランジャ55を軸方向に駆動する磁気力を発生するコイル部540と、通電時にプランジャとともに磁気回路を形成するヨーク56とを備える。流体制御弁5は、軸方向に移動する弁部支持部材58を径方向に支持する第1摺動支持部と、プランジャ55を径方向に支持する第2摺動支持部とを備える。第2摺動支持部は、軸方向に移動するプランジャ55を第1摺動支持部とは異なる部位において径方向に支持する。
【0059】
この流体制御弁5によれば、弁部57を含む弁部支持部材58はプランジャ55とは異なる部位の摺動支持部によって軸方向に移動可能に支持されている。流体制御弁5は、第1摺動支持部によって規制された弁部支持部材58の摺動軸と第2摺動支持部によって規制されたプランジャ55の摺動軸とを備える。つまり、流体制御弁5は、別個に独立した、弁部支持部材58の摺動軸とプランジャ55の摺動軸とを備える。この単独の2つの摺動軸により、互いの軸心の径方向位置や傾き具合に影響を受けにくい状態で弁部支持部材58とプランジャ55とを動作できる。例えば、プランジャ55の軸心が適正位置からずれたり傾いたりした場合でも、弁部支持部材58の軸心は第1摺動支持部によって適正位置に設定できる。以上によれば、弁座511に対する弁部57の、径方向の位置ずれと軸心の傾きとの両方を抑制可能な流体制御弁5を提供できる。
【0060】
弁部支持部材58は、プランジャ55に対して径方向に移動可能な状態で支持されている。この構成によれば、弁部支持部材58の摺動軸は、プランジャ55の摺動軸に対して径方向に移動可能に設定されている。このため、互いの軸心の径方向位置や傾き具合に影響を受けにくい状態で弁部支持部材58とプランジャ55とを動作できる流体制御弁5が得られる。
【0061】
流体制御弁5の外郭をなすハウジングは、組み合わされた複数の分割部材を含んで形成されている。第1摺動支持部を内蔵しまたは一部に第1摺動支持部を有する分割部材と、第2摺動支持部を内蔵しまたは一部に第2摺動支持部を有する分割部材とは、別個の部材である。この構成によれば、第1摺動支持部と第2摺動支持部とを、組み合わされた別々の分割部材に内蔵しまたは別々の分割部材の一部として有する。これにより、プランジャ55の軸心と弁部支持部材58の軸心とを別部品のハウジング用部材で管理できるので、独立した2つの摺動軸心を簡易に形成できる。
【0062】
第1摺動支持部は、複数の分割部材のうち、流入ポート510を有する流入側ハウジングに設けられた部分である。この構成によれば、第1摺動支持部を流入側ハウジングの一部として有し、第2摺動支持部を別個の分割部材に内蔵しまたは別個の分割部材の一部として有する。これにより、弁部支持部材58の軸心を流入側ハウジングによって管理できるので、弁部支持部材58の摺動軸心を上流側に形成する流体制御弁5を提供できる。
【0063】
流体制御弁5は、第1摺動支持部に対する弁部支持部材58の回転を阻止する回転阻止機構部を備える。この構成によれば、第1摺動支持部に対して弁部支持部材58が誤って組み付けられることを抑止する流体制御弁5を提供できる。さらに弁部支持部材58が周方向に不要な動作をすることを抑止する流体制御弁5を提供できる。
【0064】
回転阻止機構部は、第1摺動支持部と弁部支持部材58との係合部を含んでいる。この構成によれば、当該係合部を適正に形成する組み付けを行うことにより、第1摺動支持部に対して弁部支持部材58が適正に動作する流体制御弁5を提供できる。
【0065】
流体制御弁5は、弁部支持部材58の軸心周りに並ぶ複数の第1摺動支持部を備える。流体制御弁5は、周方向について、隣り合う第1摺動支持部と第1摺動支持部との間に位置して弁部支持部材58よりも径外側に設けられた複数の分岐通路515を備える。複数の分岐通路515には、開弁状態において内部通路512を通過した作動流体が分流する。
【0066】
この構成によれば、弁部支持部材58を周方向に並ぶ複数の部位において径方向に支持するため、安定した弁部支持部材58の摺動軸を提供できる。さらに、複数の分岐通路515を弁部支持部材58よりも径外側に形成できるため、開弁状態において流下する作動流体の流路断面積を拡大することができる。これにより、開弁された内部通路512を通過した作動流体の流通抵抗を抑えた流体制御弁5を提供できる。
【0067】
流体制御弁5は、プランジャ55の内側に作動流体が流下する流体通路553を備える。複数の分岐通路515を通過した作動流体は、合流して流体通路553を流下する。この構成によれば、開弁された内部通路512を通過した作動流体をプランジャ55の内側の流体通路553に流通抵抗を抑えて流下させることができる。さらに流体通路553を流下する作動流体によって、通電によるコイル部540およびプランジャ55からの発熱を緩和する流体制御弁5を提供できる。
【0068】
流体制御弁5は、ヨーク56とプランジャ55との間を磁束が通る磁気経路をなすようにプランジャ55とヨーク56に設けられ互いに沿う断面形状をなす平行部を備える。閉弁状態において平行部の一方であるプランジャ平行部分は平行部の他方であるヨーク平行部分に接触しまたは磁気経路を形成するように介在物を介して接触する。閉弁状態においてさらにプランジャ55は弁部支持部材58を軸方向に支持している。
【0069】
この流体制御弁5によれば、閉弁状態でプランジャ平行部分がヨーク平行部分に直接または間接的に接触する。このため、プランジャ55とヨーク56の吸着保持力を強化できる。閉弁状態においてさらにプランジャ55は弁部支持部材58を軸方向に支持する。このため、ヨーク平行部分を基準として弁部57の軸方向位置を適正な状態に維持できる。以上より、閉弁時に安定した磁気吸引力と閉弁力とが図れる流体制御弁5を提供できる。
【0070】
閉弁状態において弁部57と弁座511は密着している。閉弁状態においてプランジャ平行部分はヨーク平行部分に接触しまたは介在物を介して磁気経路を形成するように間接的に接触する。閉弁状態においてプランジャ55は弁部支持部材58を軸方向に支持している。
【0071】
この構成によれば、プランジャとヨークの吸着保持力を確保でき弁部57の軸方向位置を適正に維持できる状態において、弁部57を弁座511に密着できる。流体制御弁5は、閉弁時に安定した磁気吸引力と閉弁力とを発揮できる。
【0072】
閉弁状態において弁部支持部材58はプランジャ平行部分によって軸方向に支持されている。この構成によれば、ヨーク平行部分に吸着された状態のプランジャ平行部分によって弁部支持部材58を支持できる。このため、弁部支持部材58を支える支持力を強化でき、閉弁時に弁部57の軸方向位置を維持する機能を高めることができる。
【0073】
プランジャ平行部分は、筒状部551に対して交差して延設されかつ筒状部551よりも作動流体の上流側に可動側上流環状部を含む。ヨーク平行部分は、可動側上流環状部よりも作動流体の上流側に固定側上流環状部を含む。この構成によれば、閉弁状態で可動側上流環状部が固定側上流環状部に直接または間接的に接触する。このため、プランジャ55とヨーク56の吸着保持力を強化する機構部を弁部57に近い場所に設置できるので、閉弁力に影響力を及ぼしやすい磁気吸引力を提供できる。
【0074】
ヨーク平行部分とプランジャ平行部分は、互いに軸方向に向かい合いかつ軸方向に対して直交する部分である。この構成によれば、磁気吸引力を平行部に対して垂直方向に作用させることができるので、吸着力を強化できる流体制御弁5を提供できる。
【0075】
流体制御弁5は、開弁状態と閉弁状態とに切り換えるように内部通路512を開閉し、開弁する方向に作動流体の圧力が作用する弁部57を備える。流体制御弁5は、プランジャ55とヨーク56との間を磁束が通る磁気経路である第1経路を備える。流体制御弁5は、第1経路とは異なる部位においてプランジャ55とヨーク56との間を磁束が通る磁気経路である第2経路を備える。開弁状態での通電開始時は第1経路の方が第2経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成する。閉弁状態では第2経路の方が第1経路よりも磁束が大きくなる磁気経路を形成する。
【0076】
流体制御弁5によれば、開弁状態での通電開始時に、第1経路を通る磁気経路によって発生する駆動力を利用してプランジャ55を流体圧力に抗して吸引し始めることができる。さらに弁部57を開弁状態から閉弁状態に至る過程において第2経路を通る磁気経路によって発生する駆動力を利用して閉弁状態を維持するようにプランジャ55を吸着できる。開弁状態での通電開始時に第1経路を通る磁気経路が支配的になる。これにより、プランジャ55を弁座511側に吸引する吸引力を発揮させて作動流体の圧力に抗する閉弁方向に弁部57を移動させる駆動力を得ることができる。流体圧力が弁部57に作用している状態で閉弁状態に持って行けるので、通電タイミングが限定されない流体制御弁5を提供できる。
【0077】
閉弁状態では第2経路を通る磁気経路が支配的になる。これにより、弁部57を弁座511に接触させた状態に維持する吸着力を発揮させて内部通路512を締め切ることができる。この効果により、スプリングなどの付勢力に頼らずに、開弁状態からの閉弁動作と閉弁状態の維持との両方を実施できる。このため、スプリングの具備や付勢力の強化などに伴う装置の大型化を抑えることができる。以上によれば、作動流体の圧力に抗して閉弁する際の閉弁性能の向上と大型化の抑制とが図れる流体制御弁5を提供できる。
【0078】
第1経路は、プランジャ55とヨーク56の一方の一部であってプランジャ55とヨーク56の他方の部分に対して傾斜する断面形状をなす傾斜部561と他方の部分との間を磁束が通る磁気経路である。第2経路は、プランジャ55とヨーク56のそれぞれにおいて軸方向に向かい合う部分であって互いに沿うような断面形状をなす平行部を磁束が通る磁気経路である。この平行部は、プランジャ55の上流側環状部550とヨーク56の上流側第1環状部560とで構成されている。
【0079】
この構成によれば、傾斜部561を備えるため、開弁状態での通電開始時にプランジャ55とヨーク56の平行部を通る第2経路よりも磁束が大きい第1経路を形成できる。開弁状態から閉弁状態への過程において、平行部によってプランジャ55とヨーク56との重なり合う面積または接触面積が大きく磁束が大きい第2経路に切り換えできる。このようにプランジャ55とヨーク56の形状を工夫して磁気経路を構築する。これにより、スプリングなどの付勢力に頼らずに、開弁状態からの閉弁動作と閉弁状態の維持とを実施可能な流体制御弁5を提供できる。
【0080】
流体制御弁5によれば、プランジャ55は軸方向に延びる筒状部551を備える。ヨーク56は、筒状部551に対して傾斜する断面形状をなす傾斜部561を備える。平行部は、筒状部551よりも上流側に設けられた上流側環状部550と、傾斜部561よりも作動流体の上流側に設けられた上流側第1環状部560とを含む。これによれば、筒状部551に対する傾斜部561がヨーク56に設けられているので、筒状部551の内径を大きく形成できる。このため、筒状部551の内側に流体通路553を設ける構成を採用する場合には、作動流体の流通抵抗抑制が可能な流体制御弁5を提供できる。
【0081】
流体制御弁5はプランジャ55の内側に作動流体が流通する流体通路553を備える。この構成によれば、通電によるプランジャ55からの発熱を作動流体によって緩和可能な流体制御弁5を提供できる。
【0082】
流体制御弁5は、コイル部540よりも内側であってかつプランジャ55の内側に作動流体が流通する流体通路553を備える。この構成によれば、通電によるコイル部540およびプランジャ55からの発熱を作動流体によって緩和可能な流体制御弁5を提供できる。
【0083】
第2経路は、閉弁状態でプランジャ55とヨーク56とが接触する部位に形成されている。これによれば、この流体制御弁5は、弁部57に作用する流体圧力に対して弁部57を締め切るような吸着力を提供でき、閉弁時の吸着保持力を強化することができる。
【0084】
流体制御弁5は、プランジャ55とヨーク56とで磁気回路を形成するため、装置の部品点数抑制に寄与し、さらに磁気回路におけるエアギャップを抑えることができる。
【0085】
流体制御弁5は、開弁状態での通電開始時または吸引開始時に最大電圧に制御され、閉弁状態である吸着保持時に吸引開始時よりも小さい電圧に制御されるようにしてもよい。この制御を採用した場合には、前述した第1経路と第2経路を形成する。これにより、通電電圧を抑えても吸引開始と吸着保持とを満足することができる流体制御弁5を提供できる。
【0086】
(第2実施形態)
第2実施形態について、
図12を参照して説明する。第2実施形態の流体制御弁5は、第1実施形態に対して、第1摺動支持部1514と上流側脚部1582との係合部に係る構成が相違する。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0087】
弁部支持部材158は、第1摺動支持部1514によって軸方向に変位可能な状態で支持されている。第1摺動支持部1514は、弁部支持部材158の外周面を部分的に支持している。第1摺動支持部1514は、弁部支持部材158をハウジングに対して軸方向に移動するように支持している。第1摺動支持部1514は、ハウジングの一部である。第1摺動支持部1514は、流体制御弁5において固定設置された部分である。
【0088】
図12に示すように、流入側ハウジング51は、上流側脚部1582の外周縁を支持する複数の第1摺動支持部1514を備えている。複数の第1摺動支持部1514は、上流側脚部1582の外周縁を支持する位置に周方向に間隔をあけて並んでいる。第1摺動支持部1514は、開弁状態と閉弁状態の両方にわたって上流側脚部1582の外周縁を内周縁によって支持できる軸方向長さを有している。
【0089】
複数の第1摺動支持部1514は、複数の第1摺動支持部1514に係る中心軸が弁部支持部材158の軸心と同軸になるように弁部支持部材158を支持している。第1摺動支持部1514の内側壁面は、上流側脚部1582の外周面に面している。複数の第1摺動支持部1514は、弁部支持部材158の外周面に部分的に接触して支持する構成でもよい。
【0090】
第1摺動支持部1514には、上流側脚部1582の外周面に対向する内側壁面に、径外側に凹となる凹部514bが設けられている。上流側脚部1582には、第1摺動支持部1514の内周壁面に対向する外周壁面に、径外側に凸となる凸部582bが設けられている。凹部514bと凸部582bとが嵌り合って摺動することにより、上流側脚部1582は第1摺動支持部1514に対して軸方向に摺動可能である。凹部514bと凸部582bは、開弁状態と閉弁状態の両方にわたって摺動可能な軸方向長さにおいて嵌り合う関係にある。凹部514bの軸方向長さと凸部582bの軸方向長さは、同程度でもよいし、一方が他方よりも長い構成でもよい。
【0091】
流体制御弁5は、周方向に並ぶ、凹部514bと凸部582bの係合部を複数個備えている。凹部514bと凸部582bとが嵌合する構成は、第1摺動支持部1514に対して上流側脚部1582が軸心周りに回転することを規制している。
図12に示す状態において弁部支持部材158が右回りに回転運動すると、凹部514bの両側の凸部のうち右回り側の部分が凸部582bに衝突する。
図12に示す状態において弁部支持部材158が左回りに回転運動すると、凹部514bの両側の凸部のうち左回り側の部分が凸部582bに衝突する。このように弁部支持部材158が左回り、右回りのいずれの方向に回転しても、凹部514bと凸部582bとの係合部がストッパとして機能する回転阻止機構部を構成する。
【0092】
流入側ハウジング51は、複数の第1摺動支持部1514と、隣り合う第1摺動支持部1514と第1摺動支持部1514とを連結する外壁部513とを備える。外壁部513は、ハウジングの一部を形成し、複数の第1摺動支持部1514と一体に形成されている。第2実施形態の流体制御弁5も、流入側ハウジング51内において複数の分岐通路515を有している。分岐通路515は、隣り合う第1摺動支持部1514と第1摺動支持部1514の間に位置する通路である。分岐通路515は、径外側において外壁部513と、周方向において二つの第1摺動支持部1514とによって囲まれた通路である。
【0093】
(第3実施形態)
第3実施形態について、
図13を参照して説明する。第3実施形態の流体制御弁5は、第1実施形態に対して、コイル部540の非通電時に閉弁状態となる構成である点が相違する。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0094】
第3実施形態の流体制御弁5は、いわゆるノーマルクローズ方式の弁部駆動構造を備えている。この流体制御弁5は、第1実施形態のヨーク56とプランジャ55に対して上流側部と下流側部とを逆転させた位置関係を有するヨーク156とプランジャ155とを備える。この流体制御弁5は、プランジャ155を上流側または弁部57側に付勢する付勢部材59を備えている。この流体制御弁5が備える構成によれば、弁座511の径寸法または弁部57のシール径を大きくすることに寄与する。
【0095】
(第4実施形態)
第4実施形態について、
図14を参照して説明する。第4実施形態の流体制御弁5は、第1実施形態に対して、第1摺動支持部2514を有する部品が中間ハウジング52である点が相違する。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0096】
第4実施形態の流体制御弁5は、第1摺動支持部2514を備える。流体制御弁5は、弁部57、弁部支持部材58を内蔵する中間ハウジング52を備えている。第1摺動支持部2514は、ハウジングの一部である。
【0097】
弁部支持部材58は、第1摺動支持部2514によって軸方向に変位可能な状態で支持されている。第1摺動支持部2514は、第1実施形態と同様に弁部支持部材58をハウジングに対して軸方向に移動するように径方向に支持している。
【0098】
中間ハウジング52は、第1実施形態の第1摺動支持部514と同様に、上流側脚部582の外周縁を支持する複数の第1摺動支持部2514を備えている。第1摺動支持部2514は、流体制御弁5における、ある特定の一部分に設けられた部位である。第1摺動支持部2514は、中間ハウジング52の一部として設けられた、第2摺動支持部542とは異なる部位である。
【0099】
流体制御弁5は、第1実施形態と同様の係合部を備えている。この係合部は、流体制御弁5が有する複数の上流側脚部582および第1摺動支持部2514のうち、全部または少なくとも一つに設けられている。
【0100】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0101】
明細書に開示の目的を達成可能な流体制御弁5は、複数または単一の第1摺動支持部を備える。複数または単一の第1摺動支持部は、その中心軸が弁部支持部材58の軸心と同軸になるように弁部支持部材58を支持する機能を有する。
【0102】
流体制御弁5において、第2摺動支持部がプランジャを支持する径方向位置と、第1摺動支持部が弁部支持部材を支持する径方向位置とは同等の位置であってもよい。
【0103】
流体制御弁5は、同一の部品に設けられた異なる部位や異なる部分である第2摺動支持部542と第1摺動支持部514を備える構成でもよい。
【0104】
流体制御弁5は、軸方向に対して直交する部分であるヨーク平行部分とプランジャ平行部分を備える構成に限定されない。目的を達成可能な流体制御弁5は、例えば軸方向に対して傾斜するように交差する部分であるヨーク平行部分とプランジャ平行部分を備える構成を含む。
【0105】
前述の実施形態において、弁部はプランジャによって駆動される弁部支持部材に装着された部材であるが、流体制御弁はこの形態に限定するものではない。例えば、弁部57は弁部支持部材に一体に設けられる部材でもよいし、弁部支持部材の一部をなす部分であってもよい。
【0106】
明細書に開示の目的を達成可能な流体制御弁5は、エンジン2の冷却水が循環する冷却水回路1において冷却水の流量等を制御可能な電磁弁に限定するものではない。流体制御弁5は、例えば、モータ、インバータ、半導体装置等を冷却可能な作動流体の流量を制御する電磁弁に用いることができる。流体制御弁5は、例えば、冷房または暖房に用いられる作動流体の流量を制御する電磁弁、オートマティックオイル等の作動油の流れ制御する電磁弁に用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
5…流体制御弁、 51…流入側ハウジング(ハウジング)
55,155…プランジャ、 56,156…ヨーク、 57…弁部
58,158…弁部支持部材、 512…内部通路、
514,1514,2514…第1摺動支持部、 514a…凸部(回転阻止機構部)
514b…凹部(回転阻止機構部)、 515…分岐通路、 540…コイル部
542…第2摺動支持部、 582a…凹部(回転阻止機構部)
582b…凸部(回転阻止機構部)