(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】磁性構造体および磁性構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 10/32 20060101AFI20220720BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220720BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20220720BHJP
H01F 10/13 20060101ALI20220720BHJP
H01F 41/34 20060101ALI20220720BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20220720BHJP
H01L 43/00 20060101ALI20220720BHJP
H01L 43/10 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01F10/32
H01F17/00 C
H01F17/06 F
H01F10/13
H01F41/34
H01F1/153 108
H01F1/153 133
H01L43/00
H01L43/10
(21)【出願番号】P 2019130327
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】駒垣 幸次郎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 健二
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-212402(JP,A)
【文献】特開2008-072014(JP,A)
【文献】特開2013-046032(JP,A)
【文献】特開2012-174824(JP,A)
【文献】特開2018-164041(JP,A)
【文献】特開2002-313663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 10/32
H01F 17/00
H01F 17/06
H01F 10/13
H01F 41/34
H01F 1/153
H01L 43/00
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層と絶縁層とが交互に積層された磁性構造体であって、
前記磁性層は、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置され、
前記金属磁性体層は非晶質を含み、
前記金属非磁性体層は、Cr、Ru、Rh、Ir、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、かつ平均厚みが0.4nm以上1.5nm以下であり、
前記磁性層同士の間に前記絶縁層が配置された、磁性構造体。
【請求項2】
磁性層と絶縁層とが交互に積層された磁性構造体であって、
前記磁性層は、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置され、
前記金属磁性体層は非晶質を含み、
前記金属磁性体層同士が、前記金属非磁性体層を介して反平行結合している、
前記磁性層同士の間に前記絶縁層が配置された、磁性構造体。
【請求項3】
前記金属磁性体層は、前記非晶質中に分散したナノ結晶粒子を更に含む、請求項1または2に記載の
磁性構造体。
【請求項4】
前記金属磁性体層は前記非晶質のみからなる、請求項1または2に記載の
磁性構造体。
【請求項5】
前記金属磁性体層は、一般式Fe100-a-b-cMaPbCuc(式中、MはSi、BおよびCからなる群から選択される少なくとも1種の元素、a、bおよびcは前記一般式で表される組成の全体を100モル部とした場合における各元素のモル部、0.5≦a≦20、1≦b≦10、0.1≦c≦1.5)で表される組成を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の
磁性構造体。
【請求項6】
前記金属磁性体層の平均厚みが100nm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の
磁性構造体。
【請求項7】
前記絶縁層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の磁性構造体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の磁性構造体を含む電子部品。
【請求項9】
コイル導体を更に含み、
前記磁性積層体または前記磁性構造体は、前記コイル導体の巻回部の内側に位置し、
前記コイル導体の巻回軸方向と、前記磁性積層体または前記磁性構造体の積層方向とが略垂直である、請求項
8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記磁性構造体は環状である、請求項
9に記載の電子部品。
【請求項11】
前記電子部品が薄膜インダクタである、請求項
9または10に記載の電子部品。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の磁性
構造体の製造方法であって、
非晶質金属磁性体と金属非磁性体とを交互に薄膜形成法により成膜して、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層され、かつ前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置された磁性積層体を形成することを含む、磁性
構造体の製造方法。
【請求項13】
前記磁性積層体に熱処理を施すことを更に含む、請求項
12に記載の磁性
構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性積層体およびこれを含む磁性構造体、磁性積層体または磁性構造体を含む電子部品ならびに磁性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品等の電子部品の磁心(磁気コア)に用いられる磁性材料として、透磁率および飽和磁束密度が高い材料が求められている。
【0003】
特許文献1には、第1および第2磁性層ならびに非磁性スペーサー層からなる第1磁性ユニットと、第1および第2磁性層ならびに非磁性スペーサー層からなる少なくとも1つの追加の磁性ユニットと、第1磁性ユニットと少なくとも1つの追加の磁性ユニットとの間に配置される抵抗スペーサーとからなるオンチップ磁気デバイスが記載されている。
【0004】
特許文献2には、下地層および強磁性体層を含む強磁性多層薄膜であって、強磁性体層が、ナノ結晶層およびアモルファス層からなり、ナノ結晶層はナノサイズの微結晶を含み、アモルファス層はナノサイズの微結晶を含まず、ナノ結晶層とアモルファス層とが強磁性体層内で膜厚方向に分離していることを特徴とする強磁性多層薄膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9564165号明細書
【文献】特開2018-164041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品の小型化および低背化等を目的として、薄膜プロセスで製造した電子部品が用いられている。このような薄膜系の電子部品(薄膜インダクタ等)は、直流重畳特性の更なる向上が求められている。
【0007】
本発明の目的は、磁気飽和がより抑制され、より高い直流重畳特性を有する磁性積層体およびこれを含む磁性構造体、磁性積層体または磁性構造体を含む電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体において、金属磁性体層が金属非磁性体層を介して反平行結合する構造を採用することにより、より高い直流重畳特性を有する磁性積層体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の第1の要旨によれば、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
金属磁性体層同士の間に金属非磁性体層が配置され、
金属磁性体層は非晶質を含み、
金属非磁性体層は、Cr、Ru、Rh、Ir、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、かつ平均厚みが0.4nm以上1.5nm以下である、磁性積層体が提供される。
【0010】
本発明の第2の要旨によれば、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
金属磁性体層同士の間に金属非磁性体層が配置され、
金属磁性体層は非晶質を含み、
金属磁性体層同士が、金属非磁性体層を介して反平行結合している、磁性構造体が提供される。
【0011】
本発明の第3の要旨によれば、磁性層と絶縁層とが交互に積層された磁性構造体であって、
磁性層同士の間に絶縁層が配置され、
磁性層は上述のいずれかの磁性積層体である、磁性構造体が提供される。
【0012】
本発明の第4の要旨によれば、上述のいずれかの磁性積層体、または上述の磁性構造体を含む電子部品が提供される。
【0013】
本発明の第5の要旨によれば、上述のいずれかの磁性積層体の製造方法であって、非晶質金属磁性体と金属非磁性体とを交互に薄膜形成法により成膜して、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層され、かつ金属磁性体層同士の間に金属非磁性体層が配置された磁性積層体を形成すること
を含む、磁性積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁性積層体によれば、磁気飽和をより抑制することができ、より高い直流重畳特性を得ることができる。また、本発明に係る磁性構造体によれば、磁気飽和をより抑制することができ、より高い直流重畳特性を得ることができる。また、本発明に係る電子部品によれば、磁気飽和をより抑制することができ、より高い直流重畳特性を得ることができる。また、本発明に係る磁性積層体の製造方法によれば、磁気飽和がより抑制され、より高い直流重畳特性を有する磁性積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る磁性積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の一の実施形態に係る磁性構造体の概略断面図である。
【
図3】本発明の一の実施形態に係る電子部品の構造を示す模式図である。
【
図4】電子部品の製造方法を説明する模式図である。
【
図5】異方性磁界Hkの金属非磁性体層厚み依存性を示すグラフである。
【
図6】シミュレーションに用いたモデル図(a)、シミュレーションにおいて磁気コアに与えたB-H曲線(b)、およびインダクタンスLの直流電流依存性のシミュレーション結果を示すグラフ(c)である。
【
図7】各異方性磁界における透磁率の実部μ’および虚部μ”の周波数依存性の計算結果を示すグラフである。
【
図8】熱処理後の金属磁性体層の断面STEM像である。
【
図9】インダクタンスLの飽和磁化Bs依存性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は例示を目的とするものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[磁性積層体]
本発明の一の実施形態に係る磁性積層体の概略断面図を
図1に示す。
図1に示すように、磁性積層体10は、金属磁性体層11と金属非磁性体層12とが交互に積層された磁性積層体10である。金属磁性体層11同士の間に金属非磁性体層12が配置されている。
図1に示す構成において、金属磁性体層11は計4層、金属非磁性体層12は計3層積層されているが、本発明はこの構成に限定されず、所望の特性等に応じて任意の積層数を選択することができる。例えば、磁性積層体10は、第1の金属磁性体層11、金属非磁性体層12および第2の金属磁性体層11をこの順に積層した3層構造(金属磁性体層11を計2層、金属非磁性体層12を1層含む構造)であってもよい。磁性積層体10は、より好ましくは、金属磁性体層11および金属非磁性体層12を交互に5層以上積層した構造を有し、さらに好ましくは、金属磁性体層11および金属非磁性体層12を交互に7層以上積層した構造を有する。
【0018】
金属磁性体層11は非晶質を含む。金属磁性体層11が非晶質を含む場合、金属磁性体層11の保磁力を小さくすることができる。
【0019】
金属非磁性体層12は、Cr、Ru、Rh、Ir、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、かつ金属非磁性体層12は、平均厚みが0.4nm以上1.5nm以下である。金属非磁性体層12がこのような組成および平均厚みを有することにより、金属磁性体層11間の磁化方向を反平行配列にすることができ、金属磁性体層11同士が金属非磁性体層12を介して反平行結合することができる。このように金属磁性体層11同士が反平行結合することにより、磁性積層体10の異方性磁界が増大し、磁気飽和をより抑制することが可能になる。その結果、より高い直流重畳特性を実現することができる。
【0020】
また、磁性積層体10の異方性磁界が増大することにより、磁性積層体10の磁気共鳴周波数が高周波側にシフトする。そのため、磁性積層体10を薄膜インダクタ等の電子部品の磁気コアとして用いた場合、電子部品の周波数特性を向上させることができる。
【0021】
金属非磁性体層12の平均厚みは、以下に説明する方法で測定することができる。まず、磁性積層体10を含む試料をFIB(集束イオンビーム)加工により薄片化して、磁性積層体10の積層方向に対して平行な断面を得る。この断面をTEM(透過電子顕微鏡)で撮影し、得られたTEM画像において、金属非磁性体層12の厚みを測定する。任意の10箇所で厚みを測定し、測定した厚みの平均値を算出し、この平均値を金属非磁性体層12の平均厚みとする。
【0022】
(金属磁性体層)
金属磁性体層11は、非晶質の金属磁性体を含む層である。金属磁性体層11は、非晶質中に分散したナノ結晶粒子を更に含むことが好ましい。「ナノ結晶粒子」とは、金属磁性体結晶からなる粒径がナノサイズの粒子を意味する。金属磁性体層11がナノ結晶粒子を含む場合、金属磁性体層11の飽和磁化をより高くすることができ、その結果、より高い透磁率を実現することが可能となる。したがって、非晶質中に分散したナノ結晶粒子を含む金属磁性体層11で構成される磁性積層体を薄膜インダクタ等の電子部品の磁気コアとして用いた場合、電子部品のインダクタンスをより高くすることができる。さらに、金属磁性体層11がナノ結晶粒子を含む場合、金属磁性体層11間の反平行結合により異方性磁界をより一層増大させることができ、電流磁界による磁気飽和をより一層抑制することが可能となる。その結果、より一層高い直流重畳特性を実現することが可能となる。
【0023】
ナノ結晶粒子の平均結晶粒子径は5nm以上30nm以下であることが好ましい。ナノ結晶粒子の平均結晶粒子径が上記範囲内であると、より小さい保磁力と、より高い飽和磁化とを両立することができる。ナノ結晶粒子の平均結晶粒子径は、X線回折法により得られる回折ピークの半値幅(β)から、シェラー式(平均結晶粒子径=0.89λ/(βcosθ)、λ:X線波長、θ:ブラッグ角)を用いて算出することができる。
【0024】
金属磁性体層11は、非晶質のみからなるものであってもよい。金属磁性体層11が非晶質のみからなる場合、平坦性の高い層を形成することが比較的容易である。そのため、非晶質のみからなる金属磁性体層11を用いた場合、磁性積層体10をより容易に製造することができる。金属磁性体層11がナノ結晶粒子を含み、かつ金属磁性体層11の平均厚みが比較的薄い場合、結晶粒界の影響により2nm以上の凹凸が金属磁性体層11の表面に発生し得る。そのため、この金属磁性体層11の表面に厚み1nm程度の金属非磁性体層12を均一に作製することは困難である場合がある。一方、金属磁性体層11が非晶質のみからなる場合、金属磁性体層11内に結晶粒界が存在しないため、金属磁性体層11の表面の凹凸を小さくすることができ、例えば凹凸を0.4nm以下に抑制することができる。また、非晶質のみからなる金属磁性体層11は、保磁力をより小さくすることができる。
【0025】
金属磁性体層11の組成は特に限定されるものではなく、例えば、一般式Fe100-a-b-c-d-e-fMaPbCucCodNieM’f(モル部)(式中、MはSi、BおよびCからなる群から選択される少なくとも1種の元素、M’はV、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Sn、BiおよびInから選択される少なくとも1種の元素、a、b、c、d、eおよびfは前記一般式で表される組成の全体を100モル部とした場合における各元素のモル部、0.5≦a≦20、1≦b≦10、0.1≦c≦1.5、0≦d≦5、0≦e≦5、0≦f≦3)で表わされる組成(モル部)を有してよい。上記一般式Fe100-a-b-c-d-e-fMaPbCucCodNieM’fにおいて、より好ましくは3≦a≦20である。金属磁性体層11は、一般式Fe100-a-b-cMaPbCuc(式中、MはSi、BおよびCからなる群から選択される少なくとも1種の元素、a、bおよびcは前記一般式で表される組成の全体を100モル部とした場合における各元素のモル部、0.5≦a≦20、1≦b≦10、0.1≦c≦1.5)で表される組成(モル部)を有することが好ましい。上記一般式Fe100-a-b-cMaPbCucにおいて、より好ましくは3≦a≦20である。なお、金属磁性体層11は微量の不可避不純物を更に含んでよい。磁性積層体10が複数の金属磁性体層11を含む場合、各々の金属磁性体層11は同じ組成を有してよく、互いに異なる組成を有してもよい。
【0026】
金属磁性体層11の平均厚みは100nm以下であることが好ましい。平均厚みが100nm以下であると、磁性積層体10の内部における渦電流の発生を抑制することができ、渦電流の発生に起因する特性劣化を低減することができる。金属磁性体層11の平均厚みは20nm以上であることが好ましい。平均厚みが20nm以上であると、金属磁性体層11内に含まれるナノ結晶粒子の数が確保され、より良好な磁気特性が得られる。磁性積層体10が複数の金属磁性体層11を含む場合、各々の金属磁性体層11の平均厚みは同じであってよく、互いに異なっていてもよい。金属磁性体層11の平均厚みは、金属非磁性体層12の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0027】
(金属非磁性体層)
金属非磁性体層12は、Cr(クロム)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Re(レニウム)およびCu(銅)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。なかでも、CrおよびRuは、金属磁性体層11間の反平行結合をより強くすることができるので好ましい。好ましくは、金属非磁性体層12は、Cr、Ru、Rh、Ir、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の元素のみからなる。この場合、金属非磁性体層12は微量の不可避不純物を含んでよい。
【0028】
金属非磁性体層12は、その上面および下面に接する金属磁性体層11同士が互いに接触しないように設けることが好ましい。尤も、金属非磁性体層12は、その上面および下面に接する金属磁性体層11同士が部分的に接触するように設けてもよい。換言すると、金属非磁性体層12は、金属磁性体層11の表面全体に形成することが好ましいが、金属磁性体層11の表面の一部に断続的に形成してもよい。磁性積層体10が複数の金属非磁性体層12を含む場合、各々の金属非磁性体層12は同じ組成を有してよく、互いに異なる組成を有してもよい。また、磁性積層体10が複数の金属非磁性体層12を含む場合、各々の金属非磁性体層12の平均厚みは同じであってよく、互いに異なっていてもよい。
【0029】
[磁性積層体の製造方法]
次に、磁性積層体10の製造方法について以下に説明する。磁性積層体10の製造方法は、非晶質金属磁性体と金属非磁性体とを交互に薄膜形成法により成膜して、金属磁性体層11と金属非磁性体層12とが交互に積層され、かつ金属磁性体層11同士の間に金属非磁性体層12が配置された磁性積層体10を形成することを含む。非晶質金属磁性体は、平坦性の高い層を形成することが比較的容易である。そのため、非晶質金属磁性体を用いることにより、磁性積層体10を容易に製造することができる。金属磁性体層11は、厚みが20nm以上100nm以下となるように形成することが好ましい。
【0030】
金属磁性体層11および金属非磁性体層12は、スパッタリング、めっき、フォトリソグラフィーおよび/または反応性イオンエッチング(RIE)等の薄膜形成法で形成することが好ましい。これらの薄膜形成法を用いることにより、薄型の(低背)製品を製造することができる。
【0031】
各々の金属磁性体層11および金属非磁性体層12は、複数の層を連続して積層することにより形成してよいが、単一の層で形成されることが好ましい。
【0032】
磁性積層体10の製造方法は、磁性積層体10に熱処理を施すことを更に含むことが好ましい。熱処理を施すことにより、金属磁性体層11を構成する非晶質金属磁性体の少なくとも一部をナノ結晶化させることができ、金属磁性体層11中にナノ結晶粒子を析出させることができる。熱処理は、10-2Pa以下の真空下または大気中の酸素を不活性ガスで置換した雰囲気下において、400℃/分以上600℃/分以下の昇温速度で350℃以上500℃以下まで昇温し、その後自然冷却することにより行うことができる。
【0033】
このような方法により製造した磁性積層体10は、磁気飽和がより抑制され、より高い直流重畳特性を有する。
【0034】
[磁性構造体]
本発明の一の実施形態に係る磁性構造体1の概略断面図を
図2に示す。
図2に示すように、磁性構造体1は、磁性層10と絶縁層20とが交互に積層された磁性構造体1である。磁性層10同士の間に絶縁層20が配置されている。
図2に示す構成において、磁性層10は計3層、絶縁層20は計4層積層されているが、本発明はこの構成に限定されず、所望の特性等に応じて任意の積層数を選択することができる。例えば、磁性構造体1は、第1の絶縁層20、磁性層10、第2の絶縁層20をこの順に積層した3層構造(磁性層10を1層、絶縁層20を計2層含む構造)であってもよい。
【0035】
(磁性層)
磁性層10は、本発明の実施形態に係る磁性積層体10である。磁性層10として本発明の実施形態に係る磁性積層体10を用いることにより、磁気飽和をより抑制することができ、より高い直流重畳特性を得ることができる。また、磁性構造体1内の渦電流の発生を抑制することができ、周波数特性を向上させることができる。すなわち、高周波領域においても磁気特性の低下を抑制することができる。磁性層10の具体的構成は、磁性積層体に関連して上述したとおりである。磁性構造体1が複数の磁性層10を含む場合、各々の磁性層10は同じ構成(金属磁性体層11および金属非磁性体層12の層数、平均厚みおよび組成等)を有してよく、互いに異なる構成を有してもよい。
【0036】
(絶縁層)
絶縁層20は絶縁性材料で構成される層である。絶縁層20は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。絶縁層20は、比誘電率が低い材料で構成することが好ましく、具体的には、比誘電率が好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下の材料で構成することが好ましい。そのため、絶縁層20は、好ましくは酸化ケイ素を含み、より好ましくは酸化ケイ素のみからなる。絶縁層20は、上述の絶縁性材料に加えて微量の不可避不純物を含んでよい。磁性構造体1が複数の絶縁層20を含む場合、各々の絶縁層20は同じ組成を有してよく、互いに異なる組成を有してもよい。
【0037】
絶縁層20の平均厚みは5nm以上100nm以下であることが好ましく、7nm以上50nm以下であることがより好ましく、8nm以上30nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上20nm以下であることが特に好ましい。平均厚みが5nm以上であると、各々の磁性層10の間の電気的絶縁を十分確保することが可能となる。磁性構造体1が複数の絶縁層20を含む場合、各々の絶縁層20の平均厚みは同じであってよく、互いに異なっていてもよい。絶縁層20の平均厚みは、金属非磁性体層12の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0038】
[磁性構造体の製造方法]
次に、磁性構造体1の製造方法の一例を以下に説明する。まず、シリコン基板等の基板上に、所定の厚みの絶縁層20を形成する。次いで、絶縁層20の上に所定の厚みの金属磁性体層11を形成し、その上に所定の厚みの金属非磁性体層12を形成する。金属磁性体層11と金属非磁性体層12とを交互に所定回数積層して、磁性層10を得る。絶縁層20と磁性層10とを交互に所定回数積層して、所定の厚みを有する磁性構造体1を得る。
【0039】
金属磁性体層11、金属非磁性体層12および絶縁層20は、スパッタリング、めっき、フォトリソグラフィーおよび/または反応性イオンエッチング(RIE)等の薄膜プロセスで形成することが好ましい。これらの薄膜プロセスを用いることにより、薄型の(低背)製品を製造することができる。
【0040】
各々の金属磁性体層11、金属非磁性体層12および絶縁層20は、複数の層を連続して積層することにより形成してよいが、単一の層で形成されることが好ましい。
【0041】
このようにして得られた磁性構造体1は、熱処理を施してよい。熱処理の条件は、上述した磁性積層体10の熱処理条件と同様である。熱処理を施すことにより、金属磁性体層11を構成する非晶質金属磁性体の少なくとも一部をナノ結晶化させることができ、金属磁性体層11中にナノ結晶粒子を析出させることができる。
【0042】
このような方法により製造した磁性構造体1は、磁気飽和がより抑制され、より高い直流重畳特性を有する。
【0043】
[電子部品]
本発明の一の実施形態に係る電子部品100の概略断面図を
図3に示す。電子部品100は、本発明の実施形態に係る磁性積層体10または磁性構造体1を含む。
図3に示す構成例において、電子部品100は磁性構造体1を含むが、電子部品100は、磁性構造体1に代えて磁性積層体10を含んでもよい。電子部品100は、本発明の実施形態に係る磁性積層体10または磁性構造体1を含んでいるので、磁気飽和がより抑制され、より高い直流重畳特性を有する。なお、
図3に示す電子部品100は、コイル導体3を更に含むが、コイル導体3は必須の構成ではない。
【0044】
(磁気コア)
電子部品100は、磁性積層体10または磁性構造体1を磁気コア(磁心)として含む。磁性積層体10または磁性構造体1は、環状であることが好ましい。本明細書において、「環状」とは、平面視において閉空間を形成する形状を意味する。「環状」には、平面視における形状が、三角形および矩形(正方形および長方形を含む)等の多角形、円形ならびに楕円形等の種々の形状のものが包含される。磁気コア(磁性積層体10または磁性構造体1)が環状であると、磁束が外部に漏れるのを抑制することができ、インダクタンスの損失を抑制することができる。
【0045】
(コイル導体)
図3に示すように、電子部品100はコイル導体3を更に含んでよい。コイル導体3は、Cu等の導電体で構成される。コイル導体3は、絶縁膜(図示せず)でその表面全体が覆われていることが好ましい。電子部品100がコイル導体3を含む場合、磁性積層体10または磁性構造体1は、コイル導体3の巻回部の内側に位置し、コイル導体3の巻回軸方向と、磁性積層体10または磁性構造体1の積層方向とが略垂直であることが好ましい。このような構成を採用することにより、インダクタンスがより高く、かつ直流重畳特性がより高い薄膜インダクタ等の電子部品100を製造することができる。なお、本明細書において、「略垂直」は、90°±10°の範囲内であることを意味する。
【0046】
本実施形態に係る電子部品100は幅広い用途に適用することができる。なかでも、本実施形態に係る電子部品100は優れた直流重畳特性を実現できるので、高い直流重畳特性が求められる薄膜インダクタに適用することができる。
【0047】
[電子部品の製造方法]
次に、
図4を参照して電子部品100の製造方法の一例を以下に説明する。
図4(a)は電子部品100の構造を示す模式図である。
図4(b)は
図4(a)の電子部品100のA-A断面に対応する図である。
図4(c)は
図4(a)の電子部品100のB-B断面に対応する図である。なお、
図4(a)においてコイル導体3の表面を覆う絶縁膜は省略している。
【0048】
まず、シリコン基板またはガラス基板等の支持基板4上に、フォトリソグラフィーを用いてレジストを所望の形状にパターニングする。RIE等を用いてレジストの開口部を所望の深さにエッチングする。次いで、エッチングした箇所にめっき等によりCu等の導電体を埋め込み、レジストを除去して下部コイル31を形成する(1)。次に、下部コイル31の表面を含む支持基板4の表面全体に、フォトレジスト用樹脂またはSiO2等の絶縁膜5を形成する。この絶縁膜5の上に、スパッタリング法等を用いて磁性構造体1(または磁性積層体10)を形成する。レジストをパターニングした後、RIEまたはイオンミリング等により余分な磁性構造体1(または磁性積層体10)を除去する。レジストを除去した後、磁性構造体1(または磁性積層体10)の表面全体を覆うように絶縁膜5を形成する(2)。次いで、レジストのパターニングにより下部コイル31の所望の箇所に対応する開口部を設ける。絶縁膜5をRIE等により下部コイル31までエッチングする。エッチングした箇所にめっき等によりCu等の導電体を埋め込んで、下部コイル31と後述する上部コイル33とを接続するピラー32を形成し、レジストを除去する(3)。次いで、レジストをパターニングした後、開口部にCu等の導電体を埋め込んで上部コイル33を形成する。レジストを除去した後、上部コイル33の表面全体を覆うように絶縁膜5を形成する。このようにして、電子部品100を製造することができる。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
異方性磁界Hkの金属非磁性体層厚み依存性を調べるため、以下の手順で試験1~試験6の磁性積層体を作製した。
【0050】
(試験1)
スパッタリング装置を用いて、非晶質金属磁性体および金属非磁性体の成膜を行った。まず、Si基板上に、非晶質金属磁性体を30nm成膜して、金属磁性体層を形成した。非晶質金属磁性体の組成は、Fe(83.3)-Si(4)-B(8)-P(4)-Cu(0.7)(at%)に設定した。次いで、金属磁性体層の上に、金属非磁性体としてCr(クロム)を1.0nm成膜して、金属非磁性体層を形成した。同様の手順で非晶質金属磁性体と金属非磁性体とを交互に成膜して、金属磁性体層を計4層、金属非磁性体層を計3層形成した。このようにして、実施例1の磁性積層体を得た。なお、磁性積層体を構成する金属磁性体層および金属非磁性体層の平均厚みはそれぞれ、非晶質金属磁性体および金属非磁性体の成膜厚みの値と同じであると考えて差し支えない。
【0051】
(試験2~試験5)
金属非磁性体(Cr)の成膜厚みを1nm、1.5nm、5nm、10nmにそれぞれ変更した以外は試験1と同様の手順で試験2~5の磁性積層体を作製した。
【0052】
(試験6)
スパッタリング装置を用いて、Si基板上に非晶質金属磁性体を120nm成膜して金属磁性体層を形成した。この金属磁性体層を、金属非磁性体層を含まない試験6の磁性積層体とした。
【0053】
振動試料型磁力計を用いて、試験1~試験6の磁性積層体の異方性磁界Hkを測定した。結果を
図5に示す。
図5に示すように、金属非磁性体層の厚み(平均厚み)がそれぞれ0.4nm、1nmおよび1.5nmであった試験1~試験3の磁性積層体は、金属非磁性体を含まない試験6の磁性積層体よりも異方性磁界Hkが増大した。これは、試験1および2の磁性積層体において、金属磁性体層同士が金属非磁性体層を介して反平行結合していることに起因すると考えられる。これに対し、金属非磁性体層の厚み(平均厚み)がそれぞれ5nmおよび10nmであった試験4および試験5の磁性積層体は、金属非磁性体を含まない試験6の磁性積層体よりも異方性磁界Hkが低減した。これは、金属磁性体層同士が平行結合していることに起因していると考えられる。
【0054】
[実施例2]
異方性磁界がそれぞれ20 Oe、25 Oe、35 Oeおよび40 Oeの場合における薄膜インダクタのインダクタンスLの直流電流依存性を調べるために、以下に説明するシミュレーションを行った。シミュレーションは、ムラタソフトウェア株式会社製の解析シミュレーションソフトFemtet(登録商標)を用いて行った。
図6(a)に、シミュレーションに用いた薄膜インダクタ100のモデル図を示す。薄膜インダクタ100は、磁気コアとして磁性構造体1を備える。磁性構造体1の構造は以下の表1に示すように設定した。なお、表1に示す値は、異方性磁界Hkが40 Oeの場合のものである。異方性磁界Hkが20 Oe、25 Oeおよび35 Oeの場合には、金属非磁性体層の厚みはそれぞれ、0nm、1.5nmおよび0.4nmに設定し、その他の条件(金属磁性体層および絶縁層の厚み、ならびに金属磁性体層、金属非磁性体層、磁性層および絶縁層の層数)は異方性磁界Hkが40 Oeの場合と同様の条件に設定した。
【0055】
【0056】
上述の条件下で、異方性磁界Hkがそれぞれ20 Oe、25 Oe、35 Oe、40 Oeの場合における薄膜インダクタのインダクタンスLの直流電流依存性のシミュレーションを行った。異方性磁界Hkが20 Oeの場合に磁気コアの材料特性として与えたB-H曲線を一例として
図6(b)に示す。
【0057】
図6(c)にシミュレーション結果を示す。
図6(c)において、インダクタンスLおよび電流はそれぞれ規格化された値である。実施例1において、金属非磁性体層を含まない試験6の積層体の異方性磁界Hkは20 Oeであった。この結果に基づいて、異方性磁界Hkが20 Oeの場合を比較例として、比較例においてインダクタンスLが急減し始める電流値を1として電流値を規格化した。
図6(c)に示されるように、異方性磁界Hkが大きくなるにしたがって、インダクタンスLが急減する直流電流値が大きくなった。このことは、異方性磁界が大きいほど磁気飽和が生じる電流値が大きくなることを意味する。すなわち、異方性磁界が大きいほど、高いインダクタンスLを保持しつつ電流値を増大させることができることを意味する。したがって、シミュレーションにより、異方性磁界が大きいほど直流重畳特性が向上することが実証された。
【0058】
[実施例3]
「MHz帯薄膜透磁率の絶対値測定」(日本応用磁気学会誌、第15巻、第2号、p.327-330、1991年)に記載の手法を用いて、種々の異方性磁界における磁性構造体の透磁率の実部μ’および虚部μ”の周波数依存性を計算した。計算は、膜厚100nm、比抵抗100μΩcm、飽和磁化1.5T(テスラ)の条件で行った。計算結果を
図7に示す。
図7に示されるように、異方性磁界が大きいほど、μ’およびμ”の共鳴周波数が高周波側にシフトした。このことから、異方性磁界が大きいほど磁性構造体の高周波磁気特性が向上することがわかった。
【0059】
[実施例4]
磁性積層体または磁性構造体に熱処理を施すことにより金属磁性体層がナノ結晶化することを確認するために、以下の試験を行った。まず、シリコン基板上に非晶質金属磁性体であるFe(83.3)-Si(4)-B(8)-P(4)-Cu(0.7)(at%)を約100nm成膜して金属磁性体層を形成した。この金属磁性体層に、室温から昇温速度600℃/分で375℃まで昇温する熱処理を施した。熱処理前の金属磁性体層および熱処理後の金属磁性体層それぞれについて、室温環境下にて500 Oeの外部磁界を印可したときの飽和磁化を測定した。結果を表2に示す。また、熱処理後の金属磁性体層の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察した。得られたSTEM像を
図8に示す。
【0060】
【0061】
表2に示すように、熱処理を施すことにより金属磁性体層の飽和磁化が増大した。また、
図8のSTEM像より、金属磁性体層中に約10nm以上約25nm以下程度のナノ結晶粒子が析出していることがわかる。これらの結果から、熱処理により金属磁性体層がナノ結晶粒子を含むものとなり、それにより飽和磁化が増大することが確認できた。
【0062】
[実施例5]
薄膜インダクタのインダクタンスLの飽和磁化Bs依存性を調べるために、実施例2と同じモデル図(
図6(a))および解析シミュレーションソフトを用いてシミュレーションを行った。磁気コアの材料特性として、磁性構造体の異方性磁界を40 Oeに固定して飽和磁化の値を変化させた。シミュレーション結果を
図9に示す。
図9より、飽和磁化Bsが増大するにしたがってインダクタンスLは単調増加することがわかる。このことから、金属磁性体層の飽和磁化が大きいほど、インダクタンスが大きくなることがわかる。
【0063】
本発明は以下の態様を含むが、これらの態様に限定されるものではない。
(態様1)
金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置され、
前記金属磁性体層は非晶質を含み、
前記金属非磁性体層は、Cr、Ru、Rh、Ir、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、かつ平均厚みが0.4nm以上1.5nm以下である、磁性積層体。
(態様2)
金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層された磁性積層体であって、
前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置され、
前記金属磁性体層は非晶質を含み、
前記金属磁性体層同士が、前記金属非磁性体層を介して反平行結合している、磁性積層体。
(態様3)
前記金属磁性体層は、前記非晶質中に分散したナノ結晶粒子を更に含む、態様1または2に記載の磁性積層体。
(態様4)
前記金属磁性体層は前記非晶質のみからなる、態様1または2に記載の磁性積層体。
(態様5)
前記金属磁性体層は、一般式Fe100-a-b-cMaPbCuc(式中、MはSi、BおよびCからなる群から選択される少なくとも1種の元素、a、bおよびcは前記一般式で表される組成の全体を100モル部とした場合における各元素のモル部、0.5≦a≦20、1≦b≦10、0.1≦c≦1.5)で表される組成を有する、態様1~4のいずれか1つに記載の磁性積層体。
(態様6)
前記金属磁性体層の平均厚みが100nm以下である、態様1~5のいずれか1つに記載の磁性積層体。
(態様7)
磁性層と絶縁層とが交互に積層された磁性構造体であって、
前記磁性層同士の間に前記絶縁層が配置され、
前記磁性層は態様1~6のいずれか1つに記載の磁性積層体である、磁性構造体。
(態様8)
前記絶縁層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、態様7に記載の磁性構造体。
(態様9)
態様1~6のいずれか1つに記載の磁性積層体、または態様7もしくは8に記載の磁性構造体を含む電子部品。
(態様10)
コイル導体を更に含み、
前記磁性積層体または前記磁性構造体は、前記コイル導体の巻回部の内側に位置し、
前記コイル導体の巻回軸方向と、前記磁性積層体または前記磁性構造体の積層方向とが略垂直である、態様9に記載の電子部品。
(態様11)
前記磁性積層体または前記磁性構造体は環状である、態様10に記載の電子部品。
(態様12)
前記電子部品が薄膜インダクタである、態様10または11に記載の電子部品。
(態様13)
態様1~6に記載の磁性積層体の製造方法であって、
非晶質金属磁性体と金属非磁性体とを交互に薄膜形成法により成膜して、金属磁性体層と金属非磁性体層とが交互に積層され、かつ前記金属磁性体層同士の間に前記金属非磁性体層が配置された磁性積層体を形成することを含む、磁性積層体の製造方法。
(態様14)
前記磁性積層体に熱処理を施すことを更に含む、態様13に記載の磁性積層体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る磁性積層体およびこれを含む磁性構造体、磁性積層体または磁性構造体を含む電子部品ならびに磁性積層体の製造方法は、より抑制された磁気飽和およびより高い直流重畳特性を実現することができるので、高周波用途等の幅広い用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 磁性構造体
10 磁性積層体(磁性層)
100 電子部品(薄膜インダクタ)
11 金属磁性体層
12 金属非磁性体層
20 絶縁層
31 下部コイル
32 ピラー
33 上部コイル
3 コイル導体
4 支持基板
5 絶縁膜