(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】粘着剤組成物とその用途
(51)【国際特許分類】
C09J 153/00 20060101AFI20220720BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220720BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220720BHJP
A41H 27/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J7/38
C09J11/08
A41H27/00
(21)【出願番号】P 2020535872
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031330
(87)【国際公開番号】W WO2020032163
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2018148965
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】河合 道弘
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/065982(WO,A1)
【文献】特開2014-208762(JP,A)
【文献】特開2002-241451(JP,A)
【文献】特開2017-206677(JP,A)
【文献】特開2012-117159(JP,A)
【文献】特開平08-120231(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 ー 201/10
A41H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が50℃以上である重合体ブロック(A)と、ガラス転移点が10℃以下である(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であり、かつ当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下であ
り、
前記重合体ブロック(A)は、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位と、スチレン系化合物に由来する構造単位とを含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記重合体ブロック(A)の数平均分子量が、500以上30,000以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体の数平均分子量が、10,000以上500,000以下である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体が、前記重合体ブロック(A)と前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを、1/99~20/80の質量比で含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.05以上2.50以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記重合体ブロック(A)が、イミド基含有ビニル化合
物に由来する構造単位を、前記重合体ブロック(A)が有する全構成単量体単位に対して、
5mol%以上含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記重合体ブロック(A)が、スチレン系化合物に由来する構造単位を、前記重合体ブロック(A)が有する全構成単量体単位に対して、5mol%以上含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記重合体ブロック(A)が
、スチレン系化合物に由来する構造単位を、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位1molに対して、0.1mol以上10mol以下含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が、構成単量体単位として、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が、構成単量体単位として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
粘着付与剤を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
繊維生地に対して使用される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記繊維生地が衣料用である、請求項
12に記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
支持体と、請求項1~
13のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、粘着性製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年8月8日に出願された日本特許出願番号2018-148965号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、被着体どうしを、貼り合わせ箇所が柔軟で、かつ、高強度で貼り合わせることができる粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
衣服等の製造工程において、風合いや着心地を良くするために、生地どうしをミシン等による縫製ではなく、接着剤によって貼り合せる接着方法、いわゆる無縫製が用いられる場合がある。この際、用いられる接着剤はウレタン系ホットメルト型接着剤が中心となっており(特許文献1及び2)、これを用いたランジェリー商品(特許文献3)やスポーツウェア等(特許文献4)の製造方法が開示されている。一方、靴等の日用雑貨用部材への使用が好適なものとして、アクリル系ブロック共重合体を含有する接着層と繊維層とを有する積層体が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-20096号公報
【文献】特開2002-161249号公報
【文献】特開2005-514536号公報
【文献】特開2006-002326号公報
【文献】特開2017-206677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4で用いられるウレタン系ホットメルト型接着剤は、溶融接着する際に樹脂が布の網目や発泡シート等の空隙等に含浸し、室温で固体状態となるため貼り合わせ箇所が硬くなり、素材の風合いを損なうという課題があった。また、特許文献5に記載のアクリル系ブロック共重合体は、接着強度の点で改善が望まれていた。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貼り合わせ箇所が柔軟で素材の風合いを保持したまま、かつ、被着体どうしを高強度で貼り合わせることができる粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体を含有し、粘着剤層を形成した場合に粘着剤層の室温での貯蔵弾性率が所定値以下の低い値を示す粘着剤組成物によれば、上記課題を解決できることを見出した。本開示は、こうした知見に基づいて完成したものである。本明細書によれば以下の手段が提供される。
【0008】
〔1〕ガラス転移点が50℃以上である重合体ブロック(A)と、ガラス転移点が10℃以下である(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であり、かつ当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下である、粘着剤組成物。
〔2〕前記重合体ブロック(A)の数平均分子量が、500以上30,000以下である、〔1〕に記載の粘着剤組成物。
〔3〕前記ブロック共重合体の数平均分子量が、10,000以上500,000以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の粘着剤組成物。
〔4〕前記ブロック共重合体が、前記重合体ブロック(A)と前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)とを、1/99~20/80の質量比で含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔5〕前記ブロック共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.05以上2.50以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔6〕前記重合体ブロック(A)が、イミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、及びアミド基含有ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を、前記重合体ブロック(A)が有する全構成単量体単位に対して、10mol%以上含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔7〕前記重合体ブロック(A)が、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位と、スチレン系化合物に由来する構造単位とを含み、かつ、スチレン系化合物に由来する構造単位を、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位1molに対して、0.1mol以上10mol以下含む、〔6〕に記載の粘着剤組成物。
〔8〕前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が、構成単量体単位として、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔9〕前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が、構成単量体単位として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔10〕粘着付与剤を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔11〕繊維生地に対して使用される、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
〔12〕前記繊維生地が衣料用である、〔11〕に記載の粘着剤組成物。
〔13〕支持体と、〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、粘着性製品。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、接合の際の加熱時に樹脂が被着体に含浸しても、貼り合わせ箇所が柔軟であり、かつ、被着体どうしを高強度に接着することが可能な粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示について詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0011】
〔粘着剤組成物〕
本開示によれば、ガラス転移点が50℃以上である重合体ブロック(A)、及び、ガラス転移点が10℃以下である(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であって、当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下である、粘着剤組成物が提供される。
以下に、本開示で使用されるブロック共重合体及びその製造方法について説明し、次いで、本開示の粘着剤組成物について説明する。
【0012】
本開示で使用されるブロック共重合体は、ミクロ相分離構造を形成する等により擬似架橋を形成しうる共重合体である。疑似架橋構造が形成されると凝集力が向上する傾向があり、好ましい。
【0013】
本開示で使用されるブロック共重合体が、重合体ブロック(A)を同一分子内に複数個有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていても良い。また、本開示で使用されるブロック共重合体が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を同一分子内に複数個有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていても良い。
【0014】
<重合体ブロック(A)について>
重合体ブロック(A)は、ガラス転移点が50℃以上である重合体ブロックである。重合体ブロック(A)の製造に使用される単量体としては、イミド基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、架橋性官能基を有するビニル系単量体、等が挙げられる。
【0015】
イミド基含有ビニル化合物としては、マレイミド、N-置換マレイミド化合物等のマレイミド化合物;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド化合物;N-メチルシトラコンイミド、N-エチルシトラコンイミド、N-ブチルシトラコンイミド、N-オクチルシトラコンイミド、N-2-エチルヘキシルシトラコンイミド、N-シクロヘキシルシトラコンイミド、N-ラウリルシトラコンイミド等のシトラコンイミド化合物;N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)コハク酸イミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)マレイミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フタル酸イミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)コハク酸イミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)マレイミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)フタル酸イミド等の(メタ)アクリルイミド化合物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。イミド基含有化合物としては、マレイミド化合物を好適に用いることができる。
【0016】
マレイミド化合物には、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が含まれる。N-置換マレイミド化合物としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-ペンチルマレイミ
ド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド化合物;N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキル置換マレイミド化合物;N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド等のN-アリール置換マレイミド化合物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。重合体ブロック(A)の合成に使用するマレイミド化合物は、上記のうち、得られるブロック共重合体の耐熱性及び接着性をより優れたものとすることができる点で、以下の一般式(1)で表される化合物が好ましく、より好ましくは、N-フェニルマレイミドである。
【0017】
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子、炭素数1~3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、フェニル基の任意の位置にヒドロキシ基、炭素数1~2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲン原子が結合した置換フェニル基を表す。)
【0018】
イミド基含有ビニル化合物を使用する場合の使用量は、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対して、100mol%以下の範囲で適宜設定することができる。重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対するイミド基含有ビニル化合物の含有割合は、好ましくは、5~90mol%、より好ましくは、10~70mol%、さらに好ましくは、20~65mol%、一層好ましくは、30~50mol%である。イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を含むブロック共重合体は、耐熱性、接着性に優れるため好ましい。イミド基含有ビニル化合物の重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する含有割合が70mol%以下であると、ブロック共重合体の接着性を十分に確保することができるため好ましい。
【0019】
アミド基含有ビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソブチルアミド等のN-ビニルアミド系単量体などが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
アミド基含有ビニル化合物を使用する場合の使用量は、特に限定されない。重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、アミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は、例えば5mol%以上であり、また例えば10mol%以上であり、また例えば20mol%以上である。また、アミド基含有ビニル化合物を使用する場合、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、アミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合の上限は特に限定されず、100mol%以下で設定することができる。
【0021】
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
上記の内でも、重合性の観点から、スチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレンが好ましい。また、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルナフタレンは、重合体ブロック(A)のガラス転移点を高めることができ、耐熱性に優れるブロックを得ることができる点において好ましい。
【0023】
スチレン系化合物を使用する場合の使用量は、特に限定されない。重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有割合は、例えば5mol%以上であり、また例えば10mol%以上であり、また例えば20mol%以上である。また、スチレン系化合物を使用する場合、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有割合の上限は特に限定されず、100mol%以下で設定することができる。
【0024】
スチレン系化合物は、イミド基含有ビニル化合物(好ましくはマレイミド化合物)の重合性を向上させるという性質を有している。したがって、重合体ブロック(A)の構成単量体単位として、イミド基含有ビニル化合物を用いた場合、スチレン系化合物を併用することで、イミド基含有ビニル化合物の重合性を向上させることが好ましい。重合体ブロック(A)の製造に際し、イミド基含有ビニル化合物とスチレン系化合物を併用する場合、重合体ブロック(A)において、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位1molに対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは、0.01~100mol、より好ましくは、0.1~10mol、さらに好ましくは、0.2~5mol、一層好ましくは、0.5~1.5molである。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸
デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキル化合物を使用する場合の使用量は、特に限定されない。重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有割合は、例えば5mol%以上であり、また例えば10mol%以上であり、また例えば20mol%以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキル化合物を使用する場合、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有割合の上限は特に限定されず、100mol%以下で設定することができる。
【0027】
架橋性官能基を有するビニル系単量体は、特に限定されず、公知の各種単量体化合物を用いることができるが、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有ビニル化合物、オキサゾリン基含有ビニル化合物及びイソシアネート基含有ビニル化合物等が挙げられる。重合体ブロック(A)の製造に際し、架橋性官能基を有するビニル系単量体としては、公知の化合物から1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、並びに、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
エポキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
反応性ケイ素基含有ビニル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2個以上の架橋性官能基を容易に導入できることから、反応性ケイ素基含有ビニル化合物は、架橋性官能基を有するビニル系単量体として好適である。また、かかるビニル化合物においては、反応性ケイ素基同士を脱水縮合(重合)させることが可能である。このため、ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができる点において好適である。
【0033】
上記の外にも、オキサゾリン基含有ビニル化合物又はイソシアネート基含有ビニル化合物を共重合することにより、架橋性官能基としてオキサゾリン基又はイソシアネート基を導入することができる。
【0034】
さらに、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体を共重合することにより、重合体ブロック(A)に架橋性官能基として重合性不飽和基を導入し得る。上記多官能重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。例えば、ヘキサンジオールジアクリレートなどのアルキレンジオールジアクリレートの他、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
重合体ブロック(A)の製造に、架橋性官能基を有するビニル系単量体を使用する場合、重合体ブロック(A)において、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合を、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対して0.01mol%以上とすることができる。当該含有割合は、例えば0.1mol%以上であり、また例えば1.0mol%以上であり、また例えば2.0mol%以上である。架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合を0.01mol%以上とすることで、良好な架橋構造を形成させ、高い耐熱性及び耐久性を備えるブロック共重合体を得るようにしてもよい。なお、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合の上限は特に限定するものではないが、架橋反応の制御性の観点から、例えば60mol%以下であり、また例えば40mol%以下であり、また例えば20mol%以下であり、また例えば10mol%以下である。架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、例えば、0.01mol%以上60mol%以下、また例えば0.1mol%以上50mol%以下、2.0mol%以上40mol%以下などとすることができる。
【0036】
重合体ブロック(A)は、イミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、及びアミド基含有ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位(以下「構造単位A」ともいう。)を有していることが好ましい。重合体ブロック(A)が構造単位Aを有することにより、耐熱性及び接着性により優れたブロック共重合体を得ることができる点で好適である。重合体ブロック(A)における構造単位Aの割合(2種以上有する場合にはその合計量)は、重合体ブロック(A)が有する全構成単量体単位に対し、10mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがより好ましく、50mol%以上であることが更に好ましく、80mol%以上であることが特に好ましく、90mol%以上であることが一層好ましい。なお、重合体ブロック(A)が有する構造単位Aは、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
重合体ブロック(A)は、本ブロック共重合体の作用を損なわない範囲で、これらの単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。当該他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物などを含むことができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
【0039】
上記以外の他の単量体としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
重合体ブロック(A)における、上記の他の単量体の含有割合は、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対し、0~50mol%の範囲とすることができる。また例えば5mol%以上であり、また例えば10mol%以上である。また例えば45mol%以下であり、また例えば40mol%以下である。
【0041】
重合体ブロック(A)のガラス転移点は、50℃以上である。重合体ブロック(A)のガラス転移点が50℃以上であると、本開示で使用されるブロック共重合体に良好な耐熱性を付与することができる。重合体ブロック(A)のガラス転移点は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは90℃以上である。また、重合体ブロック(A)のガラス転移点は、使用可能な構成単量体単位の自由度が高い点、及び接合時の加熱温度を低くできる点で、350℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることが更に好ましく、260℃以下であることが一層好ましい。なお、ガラス転移点は、構成単量体の種類や組成等を変えることにより任意に選択することができる。
【0042】
なお、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した値である。本明細書において、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、重合体ブロック(A)の単独重合体及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の単独重合体を製造し、各単独重合体につきDSC測定を行うことによって求めた値である。
【0043】
重合体ブロック(A)の数平均分子量は、500~30,000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が500以上であれば、ブロック共重合体の凝集力を十分に確保することができ、30,000以下であれば、被着体に対する剥離強度を十分に高くすることができる点で好ましい。重合体ブロック(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは6,000以上、一層好ましくは9,000以上である。また、重合体ブロック(A)の数平均分子量は、好ましくは25,000以下であり、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは18,000以下、一層好ましくは15,000以下であり、より一層好ましくは11,000以下である。なお、重合体ブロックの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。ブロック共重合体1分子中に重合体ブロック(A)が複数個存在する場合、「重合体ブロック(A)の数平均分子量」とは、ブロック共重合体1分子が有する複数個の重合体ブロック(A)全体の数平均分子量(以下「Total数平均分子量」ともいう。)を意味する。例えば、ブロック共重合体が(ABA)トリブロック体である場合、当該ブロック共重合体における重合体ブロック(A)の数平均分子量(Total数平均分子量)は、2個の重合体ブロック(A)のそれぞれの数平均分子量を足し合わせた値である。
【0044】
重合体ブロック(A)は、後述する(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)と相分離する性質を有しているとよい。かかる性質を有することで、上記ブロック共重合体がミクロ相分離構造を形成しやすくすることができる。本願出願時の技術常識に基づいて当業者であれば容易に、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)と相分離する重合体ブロック(A)を設計することができる。例えば、公知の溶解性パラメータであるSP値の算出方法(例えば、以下に示すFedors法)により計算したSP値を(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のSP値と比較したときの差分ΔSP(絶対値)を0.01以上とすることができる。差分ΔSPは、例えば0.05以上、また例えば0.1以上、また例えば0.2以上、また例えば0.5以上であってもよい。SP値は、例えば、意図する重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のポリマーブレンドを調製して、これらを混合して得られる構造を電子顕微鏡、原子間力顕微鏡又は小角X線散乱等で観察することにより、ブロック間の相分離性を容易に推測することもできる。
【0045】
SP値は、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出することができる。
【0046】
<(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)について>
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を構成単量体単位として含み、ガラス転移点が10℃以下である重合体ブロックである。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)に含まれる、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対して、20mol%以上であることが好ましく、50mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることが更に好ましく、90mol%以上であることが一層好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、構成単量体単位として、一般式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、及び、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
CH2=CR1-C(=O)-O-(R2O)n-R3 (2)
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~6の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を表す。nは0又は1~100の整数を表す。nが2以上の場合、式中の複数のR2は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0048】
(メタ)アクリル酸アルキル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物としては、重合体ブロック(A)に用いることができる単量体として例示した(メタ)アクリル酸アルキル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物等をそれぞれ例示することができる。
【0049】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート化合物は、上記一般式(2)中のnが2以上の化合物である。上記一般式(2)における(R2O)は1種類のみであってもよいし、2種類以上の構造単位を含んでもよい。(R2O)を2種類以上有する場合、nは各構造単位の繰返し単位数の総和を表す。nは2~100であってもよく、2~50であってもよく、2~30であってもよい。具体的な化合物としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。上記の化合物は市販品としても入手可能である。例えばメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの市販品としては、日油株式会社製「ブレンマーPMEシリーズ」(n=2、4、9、23、90等、ブレンマーは登録商標)が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリル系単量体としては、その他にも、イミド基、アミド基、アミノ基、カルボキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることもできる。
【0051】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下「化合物C1」ともいう。)に由来する構造単位を有していることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の合成に際して化合物C1が使用された場合、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、化合物C1に由来する構造単位の含有割合は、20~100mol%とすることができ、50~100mol%であることが好ましく、80~100mol%であることがより好ましく、90~100mol%であることが更に好ましく、95~100mol%であることが一層好ましい。化合物C1が使用された場合、化合物C1に由来する構造単位の含有割合が上記範囲にある場合は、粘着物性の点で良好なブロック共重合体が得られる傾向にある。
【0052】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の製造で使用する単量体としては、上記化合物C1の内でも、柔軟性に優れたブロック共重合体が得られる点で、炭素数4~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキル化合物及び炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、粘着性能の観点を加味した場合、上記(メタ)アクリル系単量体は、炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル化合物及び炭素数2~3のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることがより好ましく、中でもアクリル酸2-メトキシエチルが好適である。
【0053】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、架橋性構造単位を含むブロックとすることが好ましい。架橋性構造単位は、例えば、架橋性官能基を有するビニル系単量体を共重合することによって導入することができる。架橋性官能基を有するビニル系単量体としては、重合体ブロック(A)の製造に関して説明した化合物を用いることができる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が含む架橋性構造単位は、重合体ブロック(A)の説明で例示した化合物(架橋性官能基を有するビニル系単量体)のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に由来する構造単位であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、及びシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位であることが特に好ましい。なお、架橋性官能基を有するビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が架橋性官能基を有する場合、例えば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合を、0.01mol%以上とすることができる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1mol%以上であり、更に好ましくは0.5mol%以上である。架橋性官能基を有するビニル系単量体の含有割合を0.01mol%以上とすることで、耐熱性に優れるブロック共重合体を得易くなる。なお、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合の上限は特に限定するものではないが、柔軟性の観点から、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対し、好ましくは20mol%以下であり、より好ましくは12mol%以下であり、更に好ましくは8mol%以下であり、一層好ましくは5mol%以下である。架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の含有量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、例えば、0.01~20mol%、また例えば0.1~12mol%、あるいは0.5~8mol%、あるいは0.5~5mol%とすることができる。
【0055】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の製造に際し、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物を使用する場合、粘着力が高くなる傾向があることから、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用するのが好ましく、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが特に好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物を使用する場合、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは0.01mol%以上であり、より好ましくは0.1mol%以上であり、更に好ましくは0.5mol%以上である。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは20mol%以下であり、より好ましくは12mol%以下であり、更に好ましくは7mol%以下である。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、好ましくは0.01~20mol%、より好ましくは0.1~12mol%、更に好ましくは0.5~7mol%である。
【0056】
本開示により奏される効果を妨げない限り、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、上記(メタ)アクリル系単量体以外の単量体に由来する構造単位を構成単量体単位として有していてもよい。(メタ)アクリル系単量体以外の単量体としては、(メタ)アクリロイル基以外の不飽和基を有する単量体を用いることができ、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル及びスチレン系化合物等の脂肪族又は芳香族ビニル化合物などが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは5mol%以下であり、更に好ましくは1mol%以下である。
【0057】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、10℃以下である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点が10℃以下であると、良好な粘着性を本開示で使用するブロック共重合体に付与することができる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の粘着性と柔軟性とをより良好にする観点から、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-10℃以下であり、一層好ましくは-15℃以下である。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、例えば-20℃以下であり、例えば-25℃以下であり、例えば-30℃以下であり、例えば-35℃以下である。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-80℃以上である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点が-10℃以下であれば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の柔軟性が良好となるため、より好ましい。
【0058】
既述のとおり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、重合体ブロック(A)と相分離する性質を有することが好ましく、重合体ブロック(A)のSP値との所定の差分を有することが好適である。
【0059】
<ブロック共重合体について>
本開示で使用するブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有する。当該ブロック共重合体の具体例としては、例えば重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)からなる(AB)ジブロック体、重合体ブロック(A)/(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(ABA)トリブロック体、又は(BAB)トリブロック体等が挙げられる。また、本ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)以外の重合体ブロック(C)を含む、(ABC)等の構造を有するものであってもよい。中でも、本ブロック共重合体は、ABA型構造であることが好ましい。かかる構造であると、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が擬似架橋構造を形成しやすく、粘着物性の観点から好適である。
【0060】
本開示で使用するブロック共重合体における重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との質量比は、1/99~40/60であることが好ましく、より好ましくは、1/99~20/80であり、さらに好ましくは、1/99~15/85であり、一層好ましくは、1/99~10/90である。質量比がこの範囲内であれば、架橋点となってハードセグメントを構成する重合体ブロック(A)と、ソフトセグメントとなる(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)から良好な耐熱性及び耐久性の粘着剤が得られ易くなるとともに、柔軟性が保たれるため好ましい。
【0061】
本開示で使用するブロック共重合体のGPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、特に限定するものではないが、10,000~500,000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が10,000以上あれば、粘着剤において十分な強度や耐久性を発揮することができる。また、500,000以下であれば、良好な流動性、塗工性等の加工性を確保することができる。粘着剤の耐久性及び加工性等の観点から、本ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは30,000以上であり、より好ましくは60,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上である。また、本ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下であり、さらに好ましくは250,000以下である。
【0062】
また、本開示で使用されるブロック共重合体につき、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値を数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、擬似架橋構造を形成して粘着物性(接着性、凝集性等)を確保する観点から、3.5以下であることが好ましい。より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下であり、なお好ましくは2.3以下である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.01以上であり、より好ましくは1.05以上であり、さらに好ましくは1.1以上である。
【0063】
また、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のうち少なくとも一方が架橋性官能基を有する場合、これを利用して架橋することにより、耐熱性がより良好な粘着剤を得ることができる。上記架橋は、上記ブロック共重合体に導入した架橋性官能基同士の反応によるものであってもよいし、当該架橋性官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を添加して行ってもよい。上記ブロック共重合体に導入した架橋性官能基同士の反応による場合、当該架橋性官能基として反応性ケイ素基を用いると、本ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができ好適である。
【0064】
<ブロック共重合体の製造方法>
本ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る限りにおいて特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる観点から、リビングラジカル重合法が好ましい。
【0065】
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらの内でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
【0066】
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。RAFT剤は活性点を1箇所のみ有する一官能のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記A-(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能型のRAFT剤を用いることが好ましい。また、RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
【0067】
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
【0068】
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより小さい重合体を得る点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.2mol以下とすることがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.01molである。したがって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.01~0.5molの範囲が好ましく、0.05~0.2molの範囲がより好ましい。
【0069】
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応を抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
【0070】
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、これに由来するニトロキシドラジカルを介して重合が進行する。本開示で使用されるブロック共重合体の製造においては、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はなく、商業的に入手可能のニトロキシド系重合開始剤を用いることができる。また、アクリレートを含む単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として一般式(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0071】
【化2】
(式(3)中、R
1は炭素数1~2のアルキル基又は水素原子であり、R
2は炭素数1~2のアルキル基又はニトリル基であり、R
3は-(CH
2)m-、mは0~2の整数であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基である。式中の複数のR
4は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0072】
上記一般式(3)で表されるニトロキシド化合物は、70~80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、上記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。上記ABA型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。また、ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。
【0073】
本ブロック共重合体をNMP法により製造する場合、上記一般式(3)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、一般式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001~0.2molの範囲で添加して重合を行ってもよい。
【0074】
【化3】
(式(4)中、R
6及びR
7は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基である。式中の複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよく、式中の複数のR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0075】
上記一般式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001mol以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間が短縮される。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。一方、ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。ニトロキシド化合物1molに対するニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は0.01~0.5molの範囲であり、さらに好ましい添加量は0.05~0.2molの範囲である。
【0076】
NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上120℃以下である。反応温度が50℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が140℃以下であれば、ラジカル連鎖移動等の副反応が抑制される傾向がある。
【0077】
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記ABA型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。また、ハロゲンの種類としては臭化物及び塩化物が好ましい。
【0078】
ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度20℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。
【0079】
リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)-(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体を得る場合、例えば、各ブロックを順次重合することにより目的とするブロック共重合体を得てもよい。この場合、まず、第一重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合体ブロック(A)を得る。次いで、第二重合工程として、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体を用いて(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を得る。さらに、第三重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合することによりABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、上記した一官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。
【0080】
また、以下に示す二段階の重合工程を含む方法により製造した場合は、より効率的に目的物が得られることから好ましい。すなわち、第一重合工程として、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体を用いて(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を得た後、第二重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。これにより、重合体ブロック(A)-(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、二官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。この方法によれば、各ブロックを順次重合して製造する場合に比較して工程を簡略化することができる。
【0081】
本開示で使用するブロック共重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-ヘキサンチオール、2-ヘキサンチオール、2-メチルヘプタン-2-チオール、2-ブチルブタン-1-チオール、1,1-ジメチル-1-ペンタンチオール、1-オクタンチオール、2-オクタンチオール、1-デカンチオール、3-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、2-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール、1-テトラデカンチオール、3-メチル-3-ウンデカンチオール、5-エチル-5-デカンチオール、tert-テトラデカンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘプタデカンチオール及び1-オクタデカンチオール等の炭素数2~20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0082】
本開示で使用するブロック共重合体の製造においては、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
【0083】
<粘着剤組成物について>
本開示で使用するブロック共重合体は、単独でも粘着剤材料として適用することが可能であるが、必要に応じて公知の添加剤等を配合した粘着剤組成物の態様としてもよい。特に、本ブロック共重合体が重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を含む場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を配合することができる。さらに必要に応じて、加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
【0084】
上記架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。なかでも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
【0085】
上記アジリジン化合物としては、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、1,1’-(ヘキサメチレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス-(2-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0086】
上記グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
【0087】
上記イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物である変性イソシアネート化合物(プレポリマー等)を用いることができる。
【0088】
芳香族イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂肪族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
脂環族イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。
また、変性イソシアネート化合物としては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0089】
本開示で提供される粘着剤組成物が架橋剤(硬化剤)を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、本開示で使用するブロック共重合体の含有量に対して、通常、0.01~10質量%とすることができる。また、0.03~5質量%、0.05~2質量%とすることもできる。
【0090】
本開示で提供される粘着剤組成物は、粘着付与剤(タッキファイヤ)が添加されたものであっても良い。粘着付与剤としては、常温で固体であれば特に限定されず、ロジン系化合物、テルペン系化合物、ポリ(α-メチルスチレン)等のスチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー等が挙げられる。
【0091】
ロジン系化合物としては、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂等が挙げられる。これらは市販品を用いても良い。不均化ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のスーパーエステルA-100、A-115、及び、A-125等が例示される。水添ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のパインクリスタルKE-604及びKE-140等が例示される。また、重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のペンセルA、ペンセルC、ペンセルD-125、ペンセルD-135、及び、ペンセルD-160等が挙げられる。
テルペン系化合物としては、例えば、荒川化学工業社製のタマノル80L、及び、タマノル901、あるいは、ヤスハラケミカル社製のYSポリスターG150、YSポリスターG125、YSポリスターT100、YSポリスターT115、YSポリスターT130、及び、YSポリスターT145等が例示される。
【0092】
粘着付与剤として、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーも好適に使用することができる。粘着付与剤として使用できる(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーのガラス転移点は、通常、10~300℃であり、好ましくは15~250℃、より好ましくは20~200℃、さらに好ましくは30~150℃である。(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーのガラス転移点が上記範囲内であれば、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーの添加による接着性の向上効果をより十分に得ることができる。より具体的には、ガラス転移点が30~150℃、数平均分子量が500~10,000である(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを好適に使用することができる。
【0093】
これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの粘着付与剤の中では、透明性等の観点から(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを用いるのが好ましい。粘着剤組成物中における粘着付与剤の含有量は、本開示で使用するブロック共重合体の含有量に対して、好ましくは0~40質量%であり、より好ましくは0~20質量%であり、さらに好ましくは0~10質量%であり、一層好ましくは0~5質量%である。粘着剤組成物の含有量が上記範囲内であれば、接着性の向上効果をより高めることができる。
【0094】
その他、上記の添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、本開示で使用するブロック共重合体の含有量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0~5質量%であり、さらに好ましくは0~2質量%である。
【0095】
本開示の粘着剤組成物は、上記ブロック共重合体、及び必要に応じて配合される添加剤等が溶剤に溶解又は分散された液状の組成物であってもよい。粘着剤組成物の調製に使用する溶剤としては、上記ブロック共重合体を溶解可能な有機溶媒、又は上記ブロック共重合体を分散可能な水媒体が挙げられる。当該有機溶媒の具体例としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、これらの1種でもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0096】
粘着剤組成物が液状である場合、粘着剤組成物における固形分濃度(すなわち、粘着剤組成物の全体質量に対する、粘着剤組成物中の溶剤以外の成分の質量の割合)は、特に限定されないが、好ましくは1~70質量%である。固形分濃度が1質量%以上であると、十分な厚みを有する粘着剤層を形成することができる点で好ましい。また、固形分濃度が70質量%以下であると、良好な塗工性を確保でき、均一な厚みの粘着剤層を形成しやすい点で好適である。粘着剤組成物における固形分濃度は、より好ましくは5~50質量%であり、更に好ましくは10~45質量%である。
【0097】
本開示の粘着剤組成物は、例えばセパレーターや基材等の支持体上に粘着剤層を形成するために用いることができる。粘着剤層の形成は、例えば、液状の上記粘着剤組成物を公知の塗工方法により支持体に塗布し、好ましくは加熱等の乾燥処理によって溶媒を除去することにより行う。なお、粘着剤層を形成するための加熱温度及び加熱時間は、溶媒を除去可能であればよく、粘着剤組成物の溶媒や固形分濃度等に応じて適宜設定され得る。
【0098】
本開示の粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(以下「貯蔵弾性率G´」ともいう。)が0.5MPa以下である。貯蔵弾性率G´が0.5MPa以下であることにより、例えば繊維類等の柔軟な生地と生地とを貼り合わせる場合にも、貼り合わせ箇所の柔軟性及び風合いを保持することができる。貼り合わせ箇所の柔軟性及び風合いをより良好にできる点で、貯蔵弾性率G´は、0.45MPa以下であることが好ましく、0.40MPa以下であることがより好ましく、0.38MPa以下であることがさらに好ましく、0.35MPa以下であることが一層好ましい。また、貯蔵弾性率G´の下限は特に制限されないが、例えば0.1MPa以上である。
【0099】
本明細書において貯蔵弾性率G´は、測定温度23℃において、昇温速度2℃/分、ひずみ0.1%、測定周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの粘着剤層のずり粘弾性を測定することにより得られた値である。貯蔵弾性率G´は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体の組成や分子量等を調整することにより任意に調整することができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体として炭素数1~5のアルキル基又はアルコキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体の使用割合を調整したり、重合体ブロック(A)の数平均分子量Mnを調整したり、あるいは、ブロック共重合体中における重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との質量比を調整したりすることにより貯蔵弾性率G´を調整することが可能である。
【0100】
〔粘着性製品〕
本開示の粘着性製品は、上記粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。当該粘着剤層を備える粘着性製品(例えば粘着シートや粘着テープ等)は、高い接着性を示すとともに、被着体の柔軟性や風合いを保持することができる。
【0101】
粘着性製品は、剥離強度の異なる2種のセパレーターにより挟持された、いわゆる基材レスの態様であってもよいし、接合対象の一方を基材(支持体)とするものあってもよい。また、粘着性製品の形状についても特段の制限はなく、使用状況に応じて適宜設定される。例えば粘着シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であってもよく、短冊状に裁断されていてもよく、あるいは衣料の接合箇所に応じた任意の形状を有していてもよい。粘着性製品における粘着剤層の厚さは、接合対象の種類や、接合箇所の面積及び形状等により適宜設定すればよい。粘着剤層の厚さは、通常、1~200μmである。また、粘着性製品の粘着剤層を所望の厚さとするために、複数の粘着剤層を積層することによって粘着性製品の粘着剤層を形成してもよい。
【0102】
本開示の粘着剤組成物及び粘着性製品は、種々の用途に適用することができる。具体的には、例えば衣料品(服飾雑貨を含む。)、電子機器、自動車用内装品又は外装品、光学機器、手芸用品、玩具類、生活雑貨、家庭用品、家具類等に適用することができる。特に、本開示の粘着剤組成物は、繊維類に対しても生地の柔軟性及び風合いを保持することができ、しかも接着性が高い粘着剤層を形成可能であることから、繊維生地(例えば、織物、編物、不織布、レース、皮革(天然皮革、合成皮革、人工皮革等)、毛皮等)に対して好適に使用することができ、中でも特に、衣料用の繊維生地に好適に使用できる。接合する繊維生地は特に制限されず、衣料用や手芸用等に使用される繊維生地、例えばポリエステル、ポリアミド及びアクリル繊維等の合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;木綿、麻、羊毛等の天然繊維等を適宜用いることができる。また、接合する繊維生地の表面には撥水処理等が施されていてもよい。
【0103】
本開示の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層によって被着体を接合するためには、粘着剤層を介して被着体どうしが接するように被着体を配置した後、その積層体を加熱(好ましくは加熱圧着)することにより行うことができる。加熱圧着により接合する場合、接合時の圧力は、所望の接合強度が得られるように適宜設定すればよい。また、加熱温度は、用いる被着体の耐熱温度以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。尚、本開示は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
実施例及び比較例で使用した重合体の分析方法及び製造方法について以下に記載する。
【0105】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
流速:600μL/min
【0106】
<重合体の組成比>
得られた重合体の組成比は1H-NMR測定より同定・算出した。測定装置にはBRUKER社製AscendTM400核磁気共鳴測定装置を用いた。25℃で、テトラメチルシランを標準物質、重クロロホルムを溶媒として測定を行った。
【0107】
<ガラス転移点(Tg)の測定>
重合体のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと、変曲点での接線との交点から決定した。熱流束曲線は、試料約10mgを-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
なお、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のTgは、重合体ブロック(A)の単独重合体及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の単独重合体をそれぞれ製造し、上記の測定方法に従い示差走査熱量(DSC)測定を行うことにより求めた。
【0108】
<合成例1>:実施例1~3及び14で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、RAFT剤としてジベンジルトリチオカーボネート(以下「DBTTC」ともいう。)(3.18g)、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(以下「ABN-E」ともいう。)(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)、及び、N-フェニルマレイミド(以下「PhMI」ともいう。)(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてアクリル酸2-メトキシエチル(以下「MEA」ともいう。)(234g)、アクリル酸n-ブチル(以下「n-BA」ともいう。)(51g)、及び、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下「HEA」ともいう。)(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう。)測定(ポリスチレン換算)より、Mn160,000、Mw/Mn2.24であった。重合体ブロックAの分子量(Total数平均分子量)は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn10,900であった。
【0109】
<合成例2~4、6及び11~13>:実施例4~6、8及び10~12で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
使用したRAFT剤、重合開始剤、単量体、及び、溶媒の種類と量を表1に記載したように変更した以外は、合成例1と同様の操作により、実施例4~6、8及び10~12で用いたA-B-Aブロック共重合体を含む粘着剤溶液を得た。なお、合成例11では、重合体ブロックAを得るための重合に際し、反応時間を3時間から6時間に変更した。
【0110】
【0111】
表1の詳細は、次の通りである。
V-40:1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)
【0112】
<合成例5>:実施例7で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
攪拌機、温度計を装着したフラスコに、2-メチル-2-[N-tert-ブチル-N-(1-ジエチルホスフォノ-2,2-ジメチルプロピル)-N-オキシル]プロピオン酸(2.48g)、ヘキサンジオールジアクリレート(0.74g)、及び、溶媒としてイソプロピルアルコール(20g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、100℃の恒温槽で反応を開始した。1時間後、室温まで冷却した後、溶媒を減圧留去することで、2官能のリビングラジカル重合制御剤を系内調製した。次に、リビングラジカル重合制御剤としてN-tert-ブチル-1-ジエチルホスフォノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロキシド(0.03g)、単量体としてアクリル酸2-メトキシエチル(624g)、アクリル酸n-ブチル(136g)、及び、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(40g)、溶媒としてアニソール(300g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、112℃の恒温槽で重合を開始した。5時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥し、固形分濃度が50%になるように酢酸ブチルに溶解し、重合体ブロックB溶液を得た。次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、重合体ブロックB溶液(200g)及びメタクリル酸メチル(以下「MMA」ともいう。)(10g)を仕込み、120℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却し反応を停止した。酢酸ブチルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整した。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn109,000、Mw/Mn1.90であった。重合体ブロックAの分子量(Total数平均分子量)はMn6,400であった。なお、重合体ブロックAの数平均分子量は、重合体ブロックB単体でGPC測定を行うことによって得られた数平均分子量と、A-B-Aブロック共重合体のGPC測定によって得られた数平均分子量との差分により求めた(合成例7,8についても同じ)。
【0113】
<合成例7>:実施例9で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
攪拌機、温度計を装着したフラスコに2-メチル-2-[N-tert-ブチル-N-(1-ジエチルホスフォノ-2,2-ジメチルプロピル)-N-オキシル]プロピオン酸(2.48g)、ヘキサンジオールジアクリレート(0.74g)、及び、溶媒としてイソプロピルアルコール(20g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、100℃の恒温槽で反応を開始した。1時間後、室温まで冷却した後、溶媒を減圧留去することで、2官能のリビングラジカル重合制御剤を系内調製した。つぎに、リビングラジカル重合制御剤としてN-tert-ブチル-1-ジエチルホスフォノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロキシド(0.03g)、単量体としてアクリル酸n-ブチル(800g)、及び、溶媒としてアニソール(300g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、112℃の恒温槽で重合を開始した。5時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、水(100g)とメタノール(9000g)の混合溶媒から再沈殿精製、真空乾燥し、固形分濃度が50%になるように酢酸ブチルに溶解し、重合体ブロックB溶液を得た。次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに重合体ブロックB溶液(200g)、及び、単量体としてMMA(12g)を仕込み、120℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却し反応を停止した。エバポレーターにて揮発成分を除去した後、残渣を酢酸ブチルに溶解することで固形分濃度が30%になるように調整した。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn107,000、Mw/Mn1.60であった。重合体ブロックAの分子量(Total数平均分子量)はMn6,400であった。
【0114】
<合成例8>:比較例2で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
アクリル酸ブチルの使用量を360gに、アニソールの使用量を120gに、並びに、MMAの使用量を82gに変更した以外は、<合成例7>と同様の操作を行い、比較例2で用いたA-B-Aブロック共重合体を製造した。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn52,000、Mw/Mn1.99であった。重合体ブロックAの分子量(Total数平均分子量)はMn15,400であった。
【0115】
<合成例9>:比較例3で用いたA-Bブロック共重合体の製造
攪拌機、温度計を装着したフラスコに、リビング重合制御剤として2-{[(カルボキシエチル)スルファルニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸(0.95g)、重合開始剤としてABN-E(0.14g)、単量体としてアクリル酸-tert-ブチル(以下「t-BA」ともいう。)(300g)、溶媒として酢酸エチル(200g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却した反応を停止した。次に、反応溶液に、単量体としてアクリル酸n-ブチル(360g)、及び、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(90g)、溶媒として酢酸エチル(290g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、酢酸エチルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整した。得られたA-Bブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn186,000、Mw/Mn2.10であった。重合体ブロックAの分子量はMn74,000であった。
【0116】
<合成例10>
タッキファイヤの合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、溶媒として酢酸ブチル(210g)と、重合開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬社製、V-601)(0.9g)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、単量体としてメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)(165g)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」ともいう)(44g)、及び、V-601(17g)、酢酸ブチル(90g)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000g)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離した。得られた重合体のモノマー組成は、仕込み量とGC(ガスクロマトグラフ)測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA80質量%、IBXMA20質量%からなり、Mw7390、Mn4760、Mw/Mn1.55であった。Tgは100℃であった。
【0117】
<合成例14>実施例13で用いたA-B-Aブロック共重合体の製造
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、RAFT剤としてDBTTC(3.18g)、重合開始剤としてABN-E(0.51g)、単量体としてアクリルアミド(以下「AAm」ともいう。)(104g)、溶媒としてアセトニトリル(244g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、上記重合溶液(54g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてMEA(234g)、n-BA(51g)、及び、HEA(15g)、溶媒としてアセトニトリル(105g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn125,000、Mw/Mn2.65であった。重合体ブロックAの分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn9,800であった。
【0118】
「実施例1」
上記合成例1で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)製セパレーター上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は上記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
【0119】
「実施例2」
上記合成例1で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液に、架橋剤としてタケネートD-110N(固形分濃度75質量%、三井化学社製)(0.08質量部。固形分としてA-B-Aブロック共重合体100質量部に対して0.2質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、厚さ50μmのPET製セパレーター上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は上記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。その後、40℃で5日間養生することで架橋反応を促進した。
【0120】
「実施例3」
上記合成例1で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液に、添加剤として、<合成例10>で調製したタッキファイヤ(固形分濃度30質量%)(固形分としてA-B-Aブロック共重合体100質量部に対して4質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、厚さ50μmのPET製セパレーター上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は上記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
【0121】
「実施例4~14、並びに、比較例2及び3」
使用した粘着剤組成物を表2及び表3に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の操作により、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
【0122】
「比較例1」
ペレット状のウレタン系ホットメルト接着剤(バイエル社製Desmocoll500)を離型紙に挟み、130℃×1kg/cm2で熱プレスして、粘着剤層が100μm厚の粘着フィルム試料を得た。
【0123】
実施例1~14及び比較例1~3では、以下の測定及び評価を行った。
<室温(23℃)における貯蔵弾性率G´>
粘着剤層が100μm厚の粘着フィルム試料の粘着剤層を積層して、粘着剤層が800μm厚のサンプルを作製した。この積層シートを直径1cmの円状に打ち抜き、粘弾性測定装置Physica MCR301(AntonPaar社製)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、ひずみ0.1%、周波数1Hzで動的粘弾性を測定し、23℃における貯蔵弾性率G´を読み取った。なお、測定には直径8mmのパラレルプレートを用いた。
【0124】
<剥離強度の評価(熱プレス):実施例1~13及び比較例1~3>
ポリエステル生地2枚を、1.0cm幅にカットした粘着フィルム試料(粘着剤シート)で貼り合せた。貼り合わせた生地の積層体を熱プレスで130℃、3Kg/cm2、10秒の条件で圧着し、試験片を作製した。圧着した試験片につき、恒温槽付き引張り試験機INSTRON 5566A(インストロン ジャパン社製)を用いて、測定温度23℃、試験片幅1.0cm、剥離速度300mm/分でT型剥離強度を測定し、接着強度とした。
【0125】
<剥離強度の評価(アイロン圧着):実施例14>
ポリエステル生地2枚を、1.0cm幅にカットした粘着フィルム試料(粘着剤シート)で貼り合わせた。貼り合わせた生地の積層体を、一般家庭用のアイロン(Panasonic社製 NI-R36-S)を用いて、中温設定(140-160℃)で20秒間、アイロンの自重(1.3kg)をかけて圧着した。圧着した後の生地の積層体を試験片として用い、熱プレスにより圧着した場合(実施例1~10)と同様の方法によりT型剥離強度を測定し、これを接着強度とした。
【0126】
<手触り試験:風合い>
風合いは、熱プレス(実施例1~13及び比較例1~3)又はアイロン圧着(実施例14)で貼り合せた接着箇所の曲げ硬さを以下の基準で評価した。
○:柔らかい
△:すこし硬さを感じる
×:硬さを感じる
実施例1~14及び比較例1~3の測定結果及び評価結果を表2及び表3に示した。なお、比較例3ではブロック共重合体としてA-B-Aブロック共重合体に代えてA-Bブロック共重合体を用いた。
【0127】
【0128】
【0129】
表2及び表3に示された化合物の詳細は以下の通りである。
CyMI:N-シクロヘキシルマレイミド
ACMO:アクリロイルモルホリン
MA:アクリル酸メチル
架橋剤:三井化学製タケネートD-110N
タッキファイヤ:<合成例10>で調製したタッキファイヤ
【0130】
表2及び表3に示したように、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含み、23℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下である粘着剤組成物を用いた[実施例1]~[実施例14]では、何れも剥離強度が6.7N/10mm以上であり、本開示で提供される粘着剤組成物が生地に対する高い接着力を有していることが分かった。また、[実施例1]~[実施例14]では、接着部の風合いは柔軟性を有していることが分かった。アイロン圧着により生地と生地とを接合した実施例14でも、熱プレスによる場合と同等の高い接着強度を示し、また、接着部の風合いも良好であった。
一方、従来汎用されてきたウレタン系ホットメルト接着剤を用いた比較例1では、剥離強度が高く、良好な接着性を示したものの、貯蔵弾性率が高かった。この比較例1では接着部が固く、また、接着部の風合いも良くないことが分かった。
メタクリル酸メチルを構成単量体単位とする重合体ブロック(A)とアクリル酸n-ブチルを構成単量体単位とする(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の質量比が23/77であるブロック共重合体を用いた比較例2では、23℃での貯蔵弾性率が0.5MPaを超えており、接着部の風合いが悪く、剥離強度も低いものであった。これに対して、メタクリル酸メチルを構成単量体単位とする重合体ブロック(A)とアクリル酸n-ブチルを構成単量体単位とする(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の質量比が6/94であるブロック共重合体を用いた実施例9では、粘着剤組成物の23℃での貯蔵弾性率は0.20MPaであり、剥離強度は6.7N/10mmであり、接着部の風合いも良好であった。
また、重合体ブロック(A)の単量体をアクリル酸t-ブチルに、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の単量体をアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルに変更した比較例3も同様に、23℃での貯蔵弾性率が0.5MPaを超えており、接着部の風合いが悪く、剥離強度も低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本開示で提供される粘着剤組成物は、熱プレスやアイロン圧着等の熱圧着時に樹脂が布の網目に含浸しても、接合部が柔軟であり、かつ、生地と生地を強度に接着することが可能である。よって、本粘着剤組成物は、日常着用している洋服や和服、民族服、下着(例えば、無縫製でのランジェリー製品やインナー製品等)、上着、トップス、ボトムス、アウトドア用品、作業着、制服、礼服、水着、スポーツウェア、靴下、帽子、靴等といった幅広い用途の衣料品の製造時や手芸用途等に、粘着剤として特に好適に利用することができる。