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特許7107435電動車両制御方法及び電動車両制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電動車両制御方法及び電動車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220720BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L7/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021519212
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019383
(87)【国際公開番号】W WO2020230302
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】柳原 徹
(72)【発明者】
【氏名】星野 真人
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特許第6135775(JP,B2)
【文献】特開2014-180160(JP,A)
【文献】特開2014-111418(JP,A)
【文献】特開2016-027278(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083213(WO,A1)
【文献】特開2014-155234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回生制動力により電動車両を減速させて停止させる停止時制御を実行する電動車両制御方法であって、
前記停止時制御は、
電動車両の車速が閾値車速を越える場合に、電動車両の躍度を所定の上限値以下に調節する第1躍度調節処理と、
前記車速が前記閾値車速以下である場合に、電動車両の減速度及び前記躍度が前記車速の減少にともなって0に漸近して減少するプロフィールをとるように前記躍度を調節する第2躍度調節処理と、を含み、
前記閾値車速は、前記第2躍度調節処理において設定される前記躍度と前記第1躍度調節処理において設定される前記躍度との差が所定値以下となるときの前記車速の値に設定される、
電動車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両制御方法であって、
前記停止時制御は、前記車速に比例する速度パラメータに所定のゲインを乗じることで、前記回生制動力に相当するモータトルク指令値を設定するモータトルク指令値設定工程を含み、
前記第1躍度調節処理は、前記ゲインを前記車速が大きいほど絶対値が小さい可変値に設定することで実行され、
前記第2躍度調節処理は、前記ゲインを前記車速の変化に対して一定の固定値に設定することで実行される、
電動車両制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両制御方法であって、
前記ゲインを、前記車速と該車速に応じて定まる前記ゲインとが対応付けられた車速-ゲインテーブルを参照することで設定する、
電動車両制御方法。
【請求項4】
電動モータの回生制動力により電動車両を減速させて停止させる停止時制御装置を備えた電動車両制御システムであって、
前記停止時制御装置は、
電動車両の車速が閾値車速を越える場合に、電動車両の躍度を所定の上限値以下に調節する第1躍度調節部と、
前記車速が前記閾値車速以下である場合に、電動車両の減速度及び前記躍度が前記車速の減少にともなって0に漸近して減少するプロフィールをとるように前記躍度を調節する第2躍度調節部と、を有し、
前記閾値車速は、前記第2躍度調節部において設定される前記躍度と前記第1躍度調節部において設定される前記躍度との差が所定値以下となるときの前記車速の値に設定される、
電動車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両制御方法及び電動車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回生運転により制動力を得る回生ブレーキ制御装置が搭載された電動車両が知られている。
【0003】
JP6135775Bには、このような電動車両制御方法、特に回生ブレーキの制御方法が提案されている。具体的に、JP6135775Bでは、モータの回生制動力により電動車両を減速させて停止させるシーンにおいて、走行速度に比例する速度パラメータ(電動モータの回転速度など)が所定値に低下する以前と以後においてモータトルク指令値を切り替える制御方法が提案されている。この制御方法によれば、電動車両が減速するシーンにおいて、加速度(減速度)の変化を抑えるようにモータトルク指令値が設定されるので、車両停車時における車体の前後方向の振動が抑制される。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上述のように減速度の変化を抑えるようにモータトルク指令値を設定する停止制御を行っても、走行路の条件などによっては、乗員に急停止感を与えることがあるという問題があった。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明の目的は、停止時において乗員に与える急停止感を抑制し得る電動車両制御方法及び電動車両制御システムを提供することにある。
【0006】
本発明のある態様によれば、電動モータの回生制動力により電動車両を減速させて停止させる停止時制御を実行する電動車両制御方法が提供される。そして、停止時制御は、電動車両の車速が閾値車速を越える場合に、電動車両の躍度を所定の上限値以下に調節する第1躍度調節処理と、車速が閾値車速以下である場合に、電動車両の減速度及び躍度が車速の減少にともなって0に漸近して減少するプロフィールをとるように躍度を調節する第2躍度調節処理と、を含む。そして、閾値車速は、第2躍度調節処理において設定される躍度と第1躍度調節処理において設定される躍度との差が所定値以下となるときの車速の値に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態による電動車両制御システムを備えた電気自動車の主要構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態による電動車両制御方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、トルク指令値設定処理の概要を説明するブロック図である。
図4図4は、アクセル開度-トルクテーブルの一例を示す図である。
図5図5は、第1トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
図6図6は、第1実施形態による第2トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
図7図7は、本実施形態の第2トルク目標値設定処理による停止時制御における各パラメータの経時変化を説明する図である。
図8図8は、本実施形態による電動車両制御方法を用いた制御結果を説明するタイミングチャートである。
図9図9は、第2実施形態による第2トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
図10図10は、比較例による第2トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
図11A図11Aは、比較例(平坦路)による第2トルク目標値設定処理を用いた場合の電動車両の挙動を説明するタイミングチャートである。
図11B図11Bは、比較例(登坂路)による第2トルク目標値設定処理を用いた場合の電動車両の挙動を説明するタイミングチャートである。
図12図12は、変形例1による第2トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
図13図13は、変形例2による第2トルク目標値設定処理の詳細を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態の制御方法が適用される電動車両100の主要構成を示すブロック図である。図示のように、電動車両100は、車両の走行駆動源として三相交流モータで構成される電動モータ4を備える。なお、この電動車両100は、電気自動車(EV)、ハイブリッド車両(HEV)、及び燃料電池車両(FCV)など、電動モータ4の駆動力を用いて走行する任意のタイプの車両が想定される。
【0010】
電動車両100には、バッテリ1と、制御装置としてのモータコントローラ2と、インバータ3と、電動モータ4と、が搭載されており、これらが電動車両制御システム10を構成している。
【0011】
バッテリ1は、電動モータ4に駆動電力を供給(放電)する電力源として機能する一方で、当該電動モータ4から回生電力の供給を受けることで充電が可能となるように、インバータ3に接続されている。
【0012】
モータコントローラ2は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)からなるコンピュータにより構成される。そして、モータコントローラ2は、本実施形態に係る制御方法を構成する各処理を実行可能となるようにプログラムされている。
【0013】
モータコントローラ2は、各種センサの検出値に基づいて最終モータトルク指令値Tm **を求め、電動モータ4がこの最終モータトルク指令値Tm **に基づく実出力トルクを実現するようにインバータ3を動作させて当該電動モータ4への供給電力を制御する。なお、本実施形態におけるモータコントローラ2による制御の詳細は後述する。
【0014】
インバータ3は、例えば、各相ごとに2個のスイッチング素子(例えば、IGBTやMOS-FET等のパワー半導体素子)を備え、駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることにより、バッテリ1から供給される直流の電流を交流に変換し、電動モータ4に所望の電流を流す。
【0015】
電動モータ4は、インバータ3から供給される交流電流により駆動力を発生し、減速機5及びドライブシャフト8を介して、左右の駆動輪9a、9bに駆動力を伝達する。また、電動モータ4は、車両の走行時に駆動輪9a、9bに連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この場合、インバータ3は、電動モータ4の回生運転時に発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ1に供給する。
【0016】
回転センサ6は、例えば、レゾルバやエンコーダなどにより構成され、電動モータ4の回転子位相αを検出する。また、回転センサ6は、検出した回転子位相αをモータコントローラ2に出力する。
【0017】
電流センサ7は、電動モータ4の3相交流電流としてのモータ電流(iu,iv,iw)を検出する。また、電流センサ7は、検出したモータ電流(iu,iv,iw)をモータコントローラ2に出力する。なお、3相交流であるモータ電流(iu,iv,iw)の各成分の総和(iu+iv+iw)は0であるため、電流センサ7により任意の2相の電流を検出して、残りの1相の電流は演算により求めてもよい。
【0018】
次に、本実施形態の制御方法についてより具体的に説明する。
【0019】
図2は、本実施形態の制御方法の流れを示すフローチャートである。なお、本フローチャートの処理は、モータコントローラ2により所定の演算周期ごとに実行される。すなわち、モータコントローラ2は、図2に示すステップS100からステップS206に係る処理を所定の演算周期ごとに実行するようにプログラムされている。
【0020】
ステップS100において、モータコントローラ2は、車両状態を示す各信号を取得する入力処理を実行する。取得する信号には、アクセル開度AP[%]、電動モータ4の回転子位相α[rad]、モータ回転速度ωm[rad/s]、モータ回転数Nm[rpm]、車速V[km/h]、モータ電流(iu,iv,iw)[A]、及びバッテリ1とインバータ3間の直流電圧値Vdc[V]が含まれる。
【0021】
具体的に、アクセル開度AP(%)は、図示しないアクセル開度センサの検出値として取得される。また、電動モータ4の回転子位相αは、回転センサ6の検出値として取得される。
【0022】
さらに、電動モータ4の機械的な角速度であるモータ回転速度ωmは、回転子位相αに基づいて取得される。より詳細には、モータコントローラ2は、回転子位相αを時間微分して各モータ電気角速度ωeを求め、当該モータ電気角速度ωeを電動モータ4の極対数で除した値をモータ回転速度ωm[rad/s]として取得する。
【0023】
また、モータ回転数Nmは、モータ回転速度ωmに基づいて取得される。より詳細には、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωmに単位変換係数(60/2π)を乗じた値をモータ回転数Nm[rpm]として取得する。
【0024】
さらに、車速Vはモータ回転速度ωmに基づいて算出される。なお、車速Vの算出方法については後述する。以下では、車速Vが時間に依存する関数であることを明確に示すために、場合によりこれを「車速V(t)」と記載する。
【0025】
また、モータ電流(iu,iv,iw)は、電流センサ7の検出値として取得される。さらに、直流電圧値Vdcは、バッテリ1とインバータ3間の直流電源ラインに設けられた図示しない電圧センサ(不図示)の検出値として取得される。
【0026】
次に、ステップS110において、モータコントローラ2は、トルク指令値設定処理を実行する。すなわち、モータコントローラ2は、アクセル開度AP及びモータ回転速度ωmに基づいて最終モータトルク指令値Tm **を設定する。
【0027】
特に、本実施形態のモータコントローラ2は、通常走行時の制御用の第1トルク目標値Tm1 *と停止時制御用の第2トルク目標値Tm2 *を算出し、これらの内の何れかを最終モータトルク指令値Tm **として設定する。
【0028】
ここで、第1トルク目標値Tm1 *とは、電動車両100の通常走行(ドライバの要求に沿った出力で走行している状態)などの停止時制御ではない制御時(以下、「非停止時制御」とも称する)において、主にドライバによるアクセル操作量に応じた電動モータ4の実出力トルクを実現する観点から算出されるトルク目標値である。
【0029】
一方、第2トルク目標値Tm2 *とは、電動車両100を停車させる制御(以下、「停止時制御」とも称する)において、当該電動車両100の乗員に急停止感を感じさせないように電動車両100の加速度a(又は減速度ad)を調節する観点から定まるトルクの目標値である。すなわち、第2トルク目標値Tm2 *は、電動車両100の停車間際におけるスムーズな減速の観点から算出される。
【0030】
以下では、加速度a及び減速度adが時間に依存する関数であることを明確に示すために、場合によりこれらをそれぞれ「加速度a(t)」及び「減速度ad(t)」と記載する。また、加速度a及び減速度adの間には、a(t)=-ad(t)の関係がある。
【0031】
なお、最終モータトルク指令値Tm **の設定については後に詳細に説明する。
【0032】
次に、ステップS120において、モータコントローラ2は、電流指令値算出処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、モータ回転速度ωm、直流電圧値Vdc、及びステップS110で設定した最終モータトルク指令値Tm **に基づいて、予め定められたテーブルを参照してdq軸電流目標値(id *,iq *)を算出する。
【0033】
ステップS130において、モータコントローラ2は、電流制御処理を実行する。具体的に、モータコントローラ2は、先ず、モータ電流(iu,iv,iw)及び回転子位相αに基づいて、dq軸電流値(id,iq)を算出する。
【0034】
次に、モータコントローラ2は、このdq軸電流値(id,iq)とステップS120で求めたdq軸電流目標値(id *,iq *)との偏差からdq軸電圧指令値(vd,vq)を算出する。なお、算出したdq軸電圧指令値(vd,vq)に対して、d-q直交座標軸間の干渉電圧を相殺するために必要な非干渉電圧を加算するようにしてもよい。
【0035】
さらに、モータコントローラ2は、回転子位相αを用いてdq軸電圧指令値(vd,vq)をdq座標系からuvw座標系に変換することによって、三相交流電圧指令値(vu,vv,vw)を算出する。
【0036】
そして、モータコントローラ2は、算出した三相交流電圧指令値(vu,vv,vw)及び直流電圧値Vdcに基づいてPWM信号(tu,tv,tw)[%]を生成し、これをインバータ3に出力する。さらに、図示しないインバータコントローラは、このPWM信号(tu,tv,tw)に基づいてインバータ3のスイッチング素子を開閉する。これにより、電動モータ4が最終モータトルク指令値Tm **に基づく実出力トルクで駆動するように当該電動モータ4への供給電力が調節されることとなる。
【0037】
以下では、上記ステップS110におけるトルク指令値設定処理についてより詳細に説明する。
【0038】
図3は、トルク指令値設定処理の行うモータコントローラ2の機能を説明するブロック図である。
【0039】
図示のように、モータコントローラ2は、トルク指令値設定処理を実行する機能を実現する構成として、第1トルク目標値設定部B200と、第2トルク目標値設定部B210と、マックスセレクト部B220と、前回値取得部B230と、を有する。
【0040】
第1トルク目標値設定部B200は、アクセル開度AP及びモータ回転速度ωmに基づいて、第1トルク目標値Tm1 *を算出する。
【0041】
図4は、第1トルク目標値設定部B200のより詳細な機能を説明するブロック図である。
【0042】
図示のように、第1トルク目標値設定部B200は、トルクテーブル目標値設定部B201と、勾配トルク推定部B202と、加算部B203と、を有する。
【0043】
トルクテーブル目標値設定部B201は、アクセル開度AP及びモータ回転速度ωmに基づいて、所定のアクセル開度-トルクテーブルを参照し、トルクテーブル目標値Tm1を算出する。
【0044】
図5においてアクセル開度-トルクテーブルの一例を示す。図5に示されるように、トルクテーブル目標値Tm1は、モータ回転速度ωmの大きさに応じて、アクセル開度APが大きいほど大きい値に設定される。特に、アクセル開度APが所定値以上(図5では2/8以上)である場合には、トルクテーブル目標値Tm1が正の値に設定される。一方、アクセル開度APが所定値未満(図5では1/8以下)である場合には、電動車両100を減速させるべくトルクテーブル目標値Tm1が負の値に設定される。これにより、ドライバによるアクセル操作に基づく電動車両100の回生制動が実現される。
【0045】
なお、このアクセル開度-トルクテーブルは、モータコントローラ2の図示しない記憶領域に予め記憶される。
【0046】
図4に戻り、トルクテーブル目標値設定部B201は、算出したトルクテーブル目標値Tm1を加算部B203に出力する。
【0047】
次に、勾配トルク推定部B202は、モータ回転速度ωm及び最終トルク指令値前回値Tm_pr **に基づいて、勾配トルク推定値Tdsを算出する。なお、最終トルク指令値前回値Tm_pr **とは、前回の制御周期において演算された最終モータトルク指令値Tm **の値である。
【0048】
具体的に、勾配トルク推定部B202は、先ず、モータ回転速度ωmに電動車両100に応じた適切な車両モデルに基づくフィルタによるフィルタリング処理を施して第1のモータトルク推定値を算出する。一方で、勾配トルク推定部B202は、最終トルク指令値前回値Tm_pr **に対してローパスフィルタを適用して第2のモータトルク推定値を算出する。そして、勾配トルク推定部B202は、この第2のモータトルク推定値から第1のモータトルク推定値を減算し、当該減算により得られた値に適切なフィルタリング処理を行うことで勾配トルク推定値Tdsを求める。
【0049】
すなわち、勾配トルク推定値Tdsとは、電動モータ4の実出力トルクに相当する最終トルク指令値前回値Tm_pr **と、電動モータ4の実回転速に相当するモータ回転速度ωmから電動車両100の車両モデルに応じて定まる理論的な出力トルクと、の間の差として演算されるパラメータである。言い換えると、本実施形態の勾配トルク推定値Tdsは、電動車両100の走行路の勾配の大きさに応じて、電動車両100における実出力トルクと理想的な車両モデルから定まる理論的な出力トルクとの間のズレを表すパラメータである。
【0050】
勾配トルク推定部B202は、算出した勾配トルク推定値Tdsを加算部B203に出力する。
【0051】
加算部B203は、トルクテーブル目標値Tm1に勾配トルク推定値Tdsを加算して第1トルク目標値Tm1 *を求める。そして、加算部B203は、算出した第1トルク目標値Tm1 *をマックスセレクト部B220に出力する。
【0052】
図3に戻り、第2トルク目標値設定部B210は、アクセル開度AP及びモータ回転速度ωmに基づいて、停止時制御において用いる第2トルク目標値Tm2 *を算出する。なお、第2トルク目標値Tm2 *の算出の詳細については後述する。
【0053】
第2トルク目標値設定部B210は、算出した第2トルク目標値Tm2 *をマックスセレクト部B220に出力する。
【0054】
マックスセレクト部B220は、第1トルク目標値設定部B200からの第1トルク目標値Tm1 *及び第2トルク目標値設定部B210からの第2トルク目標値Tm2 *の内の大きい方を最終モータトルク指令値Tm **として設定する。なお、第1トルク目標値Tm1 *と第2トルク目標値Tm2 *が相互に同一の値である場合には、当該値が最終モータトルク指令値Tm **として設定される。
【0055】
すなわち、本実施形態では、第1トルク目標値Tm1 *>第2トルク目標値Tm2 *の場合に、マックスセレクト部B220により第1トルク目標値Tm1 *が最終モータトルク指令値Tm **として設定される非停止時制御が実行される。また、第1トルク目標値Tm1 *<第2トルク目標値Tm2 *の場合に、第2トルク目標値Tm2 *が最終モータトルク指令値Tm **として設定される停止時制御が実行される。
【0056】
そして、マックスセレクト部B220は、設定した最終モータトルク指令値Tm **に基づいて、図2におけるステップS120の処理と前回値取得部B230に出力する。
【0057】
前回値取得部B230は、マックスセレクト部B220からの最終モータトルク指令値Tm **を最終トルク指令値前回値Tm_pr **として取得する。そして、前回値取得部B230は、取得した最終トルク指令値前回値Tm_pr **を、第1トルク目標値設定部B200及び第2トルク目標値設定部B210に戻す。
【0058】
このような本実施形態の構成によれば、電動車両100は、通常走行時等の非停止時制御中においては、基本的に第1トルク目標値Tm1 *>第2トルク目標値Tm2 *となり、ドライバの要求に基づく第1トルク目標値Tm1 *が最終モータトルク指令値Tm **として設定される。
【0059】
この非停止時制御中において、ドライバが電動車両100を停止させるべくアクセル開度APを一定程度減少させると、図5のアクセル開度-トルクテーブルにしたがい、第1トルク目標値Tm1 *が負の値に設定される。このように、負の第1トルク目標値Tm1 *が設定されることで車速Vも連続的に減少する。そして、車速Vが所定の切替車速Vswに到達したタイミング(以下、単に「トルク切替タイミング」とも称する)においては、第1トルク目標値Tm1 *は第2トルク目標値Tm2 *が相互に略等しくなる。
【0060】
したがって、車速Vが切替車速Vswに到達すると、最終モータトルク指令値Tm **が、第1トルク目標値Tm1 *から第2トルク目標値Tm2 *に切り替わることとなる。すなわち、モータコントローラ2は、車速V≧切替車速Vswにおいては非停止時制御を実行し、車速V>切替車速Vswにおいては停止時制御を実行する。
【0061】
以下では、このような停止時制御において最終モータトルク指令値Tm **として設定される第2トルク目標値Tm2 *の設定について説明する。
【0062】
[比較例]
参考のため、先ず、図1図5で説明した構成を前提とした比較例における第2トルク目標値Tm2 *の設定方法を説明する。
【0063】
図10は、比較例における第2トルク目標値設定部B210の機能の詳細を説明するブロック図である。
【0064】
図示のように、比較例の第2トルク目標値設定部B210は、ゲイン乗算部B311と、一次遅れ処理部B312と、勾配トルク設定部B313と、加算部B314と、を有している。
【0065】
ゲイン乗算部B311は、モータ回転速度ωm[rad/s]に固定ゲインKvfを乗算して、パラメータKvf・ωm[N・m]を求める。ここで、固定ゲインKvfは、電動車両100をスムーズに減速させる観点から定められる負の固定値である。固定ゲインKvfは、実験等により予め定められる。
【0066】
一次遅れ処理部B312は、ゲイン乗算部B311からのパラメータKvf・ωmに一次遅れ処理を行い。停止時基本トルク目標値Tm2を算出する。
【0067】
具体的に、一次遅れ処理部B312は、パラメータKvf・ωmに以下の式(1)で表されるフィルタを用いた一次遅れ処理を施して停止時基本トルク目標値Tm2を求める。
【0068】
【数1】
なお、式(1)中のτは時定数である。
【0069】
そして、一次遅れ処理部B312は、得られた停止時基本トルク目標値Tm2を加算部B314に出力する。
【0070】
一方、勾配トルク設定部B313は、上述の勾配トルク推定部B202と同様の演算方法により、前回値取得部B230からの最終トルク指令値前回値Tm_pr **に基づいて勾配トルク推定値Tdsを算出する。
【0071】
具体的に、勾配トルク設定部B313は、上述の勾配トルク推定部B202と同様に勾配トルク推定値Tdを算出する。そして、勾配トルク設定部B313は、この勾配トルク推定値Tdの値に基づいて路面の勾配を判定し、判定した勾配に所定のゲインを乗じて勾配トルク推定値Tdsを求める。そして、勾配トルク設定部B313は、求めた勾配トルク推定値Tdsを加算部B314に出力する。
【0072】
加算部B314は、一次遅れ処理部B312からの停止時基本トルク目標値Tm2に対して勾配トルク設定部B313からの勾配トルク推定値Tdsを加算することで、第2トルク目標値Tm2 *を求める。そして、この第2トルク目標値Tm2 *は、図3で説明したマックスセレクト部B220に出力される。
【0073】
以上説明した比較例の構成においては、電動車両100の特性に応じて予め定められる固定ゲインKvfを用いることにより、停止時制御中における電動車両100の減速度adの変化が抑制されることで、電動車両100のスムーズな停車が実現される。しかしながら、本発明者らは、この比較例の構成では、電動車両100の乗員に与える急停止感を十分に抑制できるとまで言えないシーンがあることに着目した。その理由についてより詳細に説明する。
【0074】
図11Aは、比較例の構成に基づく電動車両100の制御結果を示すタイミングチャートである。特に、図11Aは電動車両100が登坂路を走行しているシーンにおける制御結果を示す。
【0075】
なお、図11A(a)は車速V(t)の経時変化を示す。また、図11A(b)は最終モータトルク指令値Tm **の経時変化を示す。さらに、図11A(c)は電動車両100の乗員に作用するGの経時変化を示す。また、図11(d)は躍度j(t)[m/s3]の経時変化を示す。
【0076】
なお、本明細書において、電動車両100の躍度j(t)とは、加速度a(t)の時間に関する1階微分として定義される値であり、「ジャーク」(jerk)又は「加加速度」とも称される物理量である。
【0077】
図11Aにおいて破線で示す平坦路走行時の制御結果では、時刻t0からトルク切替タイミングである時刻t3までは、電動車両100を停止させることを希望するドライバのアクセル操作に基づく第1トルク目標値Tm1 *(<0)が最終モータトルク指令値Tm **として設定されている。このように、負の最終モータトルク指令値Tm **が設定されていることに基づき、車速Vが減少する(図11A(a)参照)。そして、時刻t3においては車速Vが切替車速Vswに到達するとともに、第1トルク目標値Tm1 *が第2トルク目標値Tm2 *より小さくなって、第2トルク目標値Tm2 *が最終モータトルク指令値Tm **として設定される。
【0078】
ここで、上記図10で説明したように、第2トルク目標値Tm2 *は、基本的にモータ回転速度ωmに固定ゲインKvfを乗算して得られた値に時定数τの一次遅れ処理を行うことで得られている。このため、時刻t3以降は、第2トルク目標値Tm2 *が用いられている最終モータトルク指令値Tm **は、時定数τに応じた一次遅れ曲線のプロフィールを描きつつ、電動車両100を停止させるための目標値(=0)に収束する(図11A(b)参照)。
【0079】
しかしながら、時刻t3のトルク切替タイミングにおいては、第1トルク目標値Tm1 *から第2トルク目標値Tm2 *への切替に起因して最終モータトルク指令値Tm **が急激に変化する。
【0080】
このため、時刻t3のトルク切替タイミングにおけるGの変化も滑らかにならず(図11A(c)参照)、これに起因して時刻t3付近において躍度j(t)が一時的に高くなるピークPが生じる(図11A(d)参照)。本発明者らは、この躍度j(t)のピークPが電動車両100の乗員に急停止感を与える可能性があることを見出した。
【0081】
なお、このような躍度j(t)のピークPの発生は、登坂路走行時における制御シーンでより顕著なものとなる。
【0082】
具体的に、図11B示す登坂路走行時の制御結果では、電動車両100が登坂路を走行しているので、平坦路と比較して車速Vがより早く減少する(図11B(a)参照)。すなわち、平坦路の場合よりも、モータ回転速度ωmの減少が早く、それに応じて図5のテーブルに基づくトルクテーブル目標値Tm1も低くなる(アクセル開度AP=1/8又は0/8のマップ参照)。結果として、このトルクテーブル目標値Tm1に基づく第1トルク目標値Tm1 *もより早く減少する。
【0083】
このため、第1トルク目標値Tm1 *が第2トルク目標値Tm2 *以下となるトルク切替タイミングが、平坦路走行時の場合よりも早い時刻t1となる。そして、登坂路走行時においても、トルク切替タイミングとなる時刻t1以降は、最終モータトルク指令値Tm **は、時定数τに応じた一次遅れ曲線のプロフィールを描きつつ、電動車両100を停止させるための目標値に収束することとなる。
【0084】
しかしながら、登坂路走行時においては、第2トルク目標値Tm2 *は、モータ回転速度ωmに基づく停止時基本トルク目標値Tm2に対して、登坂路の勾配に応じた勾配トルク推定値Tds(>0)を加算することで算出される(図10の加算部B314参照)。このため、電動車両100を停止させるためのトルクの目標値は、平坦路走行時のそれ(すなわち0)と比べて勾配トルク推定値Tds分大きく設定される(図11B(b)参照)。
【0085】
一方で、図10の制御ロジックに基づけば、登坂路走行時における制御シーンであっても、第2トルク目標値Tm2 *(最終モータトルク指令値Tm **)は、一次遅れ処理部B312においては同じ時定数τに基づく一遅れ処理により演算される。すなわち、登坂路走行時においても平坦路走行時と略同じ時間で最終モータトルク指令値Tm **を目標値に収束させる制御が実行されることとなるため、時刻t1以降における最終モータトルク指令値Tm **の変化がより急峻になる(図11B(b)参照)。
【0086】
その結果、躍度j(t)のピークPがより大きくなり(図11B(d)参照)、トルク切替タイミングである時刻t1においてより急激なGの変化がもたらされ、電動車両100の乗員に与える急停止感が強くなる。本発明者らは、このような課題に着目して以下で説明する改良を行った。
【0087】
[本実施形態]
図6は、本実施形態における第2トルク目標値設定部B210の機能の詳細を説明するブロック図である。なお、必要に応じて、比較例と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図示のように、本実施形態の第2トルク目標値設定部B210は、車速換算部B211と、一次遅れ処理部B212と、閾値車速設定部B213と、大小判定部B214と、ゲイン演算部B215と、固定ゲイン設定部B216と、切り替え部B217と、乗算部B218と、勾配トルク設定部B219と、加算部B2111と、を有している。
【0089】
車速換算部B211は、モータ回転速度ωm[rad/s]に所定の換算ゲインKcを乗じて車速換算値Kc・ωm[km/h]を演算する。なお、換算ゲインKcは、モータ回転速度ωmの単位を速度の単位に変換しつつ、電動車両100の実車速に近い値に補正する観点から適宜定められる値である。具体的に、換算ゲインKcは、タイヤ荷重半径r、減速機5におけるファイナルギアのギア比N、及び単位変換係数3600/1000により定めることができる。より詳細には、電動車両100の車輪回転速度wを車速Vとみなすように、換算ゲインKcを(r/N)×(3600/1000)に設定する。そして、車速換算部B211は、求めた車速換算値Kc・ωmを一次遅れ処理部B212に出力する。
【0090】
一次遅れ処理部B212は、車速換算部B211からの車速換算値Kc・ωmに基づいて車速Vを求める。具体的に、一次遅れ処理部B212は、車速換算値Kc・ωmに対して上記式(1)で表されるフィルタに基づく一次遅れ処理を施して車速V(t)を求める。これにより、車速V(t)は時定数τの一次遅れ曲線に相当する時間の関数として定まる。具体的に、車速V(t)は、下記の式(2)により表される。
【0091】
【数2】
ただし、V0はV(t)の初期条件に応じて定まる定数である。
【0092】
そして、一次遅れ処理部B212は、得られた車速V(t)を大小判定部B214及びゲイン演算部B215に出力する。
【0093】
一方、閾値車速設定部B213は、モータコントローラ2内のメモリ等に予め記録された閾値車速Vthを大小判定部B214に出力する。なお、閾値車速Vthの意義については後述する。
【0094】
大小判定部B214は、一次遅れ処理部B212からの車速V(t)と、閾値車速設定部B213からの閾値車速Vthと、の間の大小を判定する。大小判定部B214は、この判定結果に応じた二値信号Bsを切り替え部B217に出力する。具体的に、大小判定部B214は、車速V(t)が閾値車速Vthよりも大きいと判定した場合に二値信号Bsとして「1」を、そうでない場合には二値信号Bsとして「0」を切り替え部B217に出力する。
【0095】
次に、ゲイン演算部B215は、一次遅れ処理部B212からの車速V(t)に基づいて可変ゲインKvvを算出する。
【0096】
具体的に、本実施形態では、ゲイン演算部B215は、可変ゲインKvvを下記式(3)で表される時間tの関数として設定する。
【0097】
【数3】
【0098】
なお、式中のMVは電動車両100の等価質量を意味する。電動車両100の等価質量MVは、車体質量M、ファイナルギアのギア比N、駆動輪イナーシャJw、及びモータイナーシャJmに基づいて定まる物理量である。また、式中の「r」はタイヤの荷重半径である。
【0099】
特に、本実施形態におけるゲイン演算部B215は、躍度j(t)が時間tに依存しない躍度固定値kjをとるように、上記式(3)の可変ゲインKvvを定める。
【0100】
以下では、この可変ゲインKvvの算出アルゴリズムの一例を具体的に説明する。
【0101】
先ず、ゲイン演算部B215は、上記式(2)で表される車速V(t)を微分して、下記の式(4)で表される加速度a(t)を求める。
【0102】
【数4】
【0103】
さらに、ゲイン演算部B215は、上記式(4)の加速度a(t)を微分して、下記の式(5)で表される躍度j(t)を求める。
【0104】
【数5】
【0105】
次に、ゲイン演算部B215は、式(3)~式(5)において、躍度j(t)が躍度固定値kjを取る条件の下における加速度a(t)及び車速V(t)を求める。
【0106】
具体的に、ゲイン演算部B215は、式(5)における躍度j(t)が躍度固定値kjを取るときの時間tkにおける加速度a(tk)(以下では、「加速度基準値ak」とも称する)及び車速V(tk)(以下では、「車速基準値Vk」とも称する)を求める。
【0107】
上記式(2)、式(4)、及び式(5)を参照すると、躍度固定値kj、加速度基準値ak、及び車速基準値Vkは、それぞれ以下の式(6)~式(8)のように表される。
【0108】
【数6】
【0109】
【数7】
【0110】
【数8】
【0111】
上記式(6)~式(8)に基づいて時間tkを消去して、車速基準値Vk及び加速度基準値akを以下の式(9)及び式(10)のように定める。
【0112】
【数9】
【0113】
【数10】
【0114】
次に、躍度j(t)が時間tに対して一定の躍度固定値kjをとり、且つ初期条件a(0)=ak,V(0)=Vkを満たす加速度a(t)及び車速V(t)の関数形を特定する。なお、このように特定された関数形の加速度a(t)及び車速V(t)については、上記式(4)の加速度a(t)及び式(2)の車速V(t)と区別するために、それぞれ、「加速度a´(t)」及び「車速V´(t)」と称する。
【0115】
また、以下の計算では、便宜上、加速度a´(t)に代えて、当該加速度a´(t)に対して正負が反対向きとなる減速度ad´(t)を用いる。これにより、躍度固定値kj、減速度ad´(t)、及び車速V´(t)の間の関係は以下の式(11)~式(13)で表される。
【0116】
【数11】
【0117】
【数12】
【0118】
【数13】
【0119】
上記式(11)~式(13)において、時間tを消去して減速度ad´(t)と車速V´(t)の関係を求めると、以下の式(14)及び式(15)が得られる。
【0120】
【数14】
【0121】
【数15】
【0122】
上記式(12)~式(15)を適宜、式(3)に適用することで可変ゲインKvvを定めることができる。特に、式(15)の減速度ad´(t)を符号を反転させて式(3)の加速度a(t)の部分に適用し、車速V´(t)を式(3)の車速V(t)に適用することで、可変ゲインKvvが車速V´(t)の関数として表されることとなる。具体的には、可変ゲインKvvは以下の式(16)のように表される。
【0123】
【数16】
【0124】
したがって、一次遅れ処理部B212で定まる車速V(t)を上記式(16)の車速V´の部分に適用することで、車速V(t)の大きさに応じて変化する可変ゲインKvvを得ることができる。
【0125】
そして、ゲイン演算部B215は、求めた可変ゲインKvvを切り替え部B217に出力する。
【0126】
一方、固定ゲイン設定部B216は、モータコントローラ2内のメモリ等に予め記録された固定ゲインKvfを切り替え部B217に出力する。なお、この固定ゲインKvfは、上記比較例で説明した固定ゲインKvfと同様に車速V(t)の変化に依存しない一定値に定められる。
【0127】
次に、切り替え部B217は、大小判定部B214からの二値信号Bsに基づいて、ゲイン演算部B215からの可変ゲインKvv、又は固定ゲイン設定部B216からの固定ゲインKvfを乗算部B218に出力する。
【0128】
具体的に、切り替え部B217は、大小判定部B214から二値信号Bs「1」を受信したとき(すなわち、車速V(t)>閾値車速Vthのとき)には、可変ゲインKvvを乗算部B218に出力する。一方、切り替え部B217は、大小判定部B214から二値信号Bs「0」を受信したとき(車速V(t)≦閾値車速Vthのとき)には、固定ゲインKvfを乗算部B218に出力する。
【0129】
すなわち、本実施形態では、車速V(t)と閾値車速Vthの大小関係に応じて、第2トルク目標値Tm2 *を算出するためのゲイン(以下、「躍度調節処理ゲインKv」とも称する)として、可変ゲインKvv又は固定ゲインKvfが設定されることとなる。
【0130】
乗算部B218は、切り替え部B217からの躍度調節処理ゲインKvに、モータ回転速度ωmを乗じて停止時基本トルク目標値Tm2を求める。そして、乗算部B218は、求めた停止時基本トルク目標値Tm2を加算部B2111に出力する。
【0131】
一方、勾配トルク設定部B219は、図3の前回値取得部B230からの最終トルク指令値前回値Tm_pr **に基づいて勾配トルク推定値Tdsを算出する。なお、この勾配トルク推定値Tdsの算出方法は、上述した勾配トルク設定部B313における算出方法と同様である。
【0132】
加算部B2111は、乗算部B218からの停止時基本トルク目標値Tm2に、勾配トルク設定部B219からの勾配トルク推定値Tdsを加算して、第2トルク目標値Tm2 *を求める。そして、加算部B2111は、求めた第2トルク目標値Tm2 *図3のマックスセレクト部B220に出力する。
【0133】
図7は、第2トルク目標値設定部B210の処理による電動車両100の各パラメータの変化を説明する図である。
【0134】
本実施形態では、第2トルク目標値設定部B210の処理によれば、非停止時制御から停止時制御に移行してから車速V(t)が閾値車速Vthに到達するまで(停止時制御の前半)では、モータ回転速度ωmに可変ゲインKvvを乗じた停止時基本トルク目標値Tm2に基づいて第2トルク目標値Tm2 *が設定される。一方、車速V(t)が閾値車速Vthに到達した以降(停止時制御の後半)では、モータ回転速度ωmに固定ゲインKvfを乗じた停止時基本トルク目標値Tm2に基づいて第2トルク目標値Tm2 *が設定される。
【0135】
このため、図7に示すように、停止時制御の前半では、可変ゲインKvvが設定されて躍度j(t)が躍度固定値kjに制限された状態となる。このため、電動車両100は、躍度j(t)が躍度固定値kjに維持された加速度a(減速度ad)に基づき減速する。これに対し、停止時制御において、車速V(t)が閾値車速Vthに到達した以降の後半では躍度調節処理ゲインKvとして固定ゲインKvfが設定されている。このため、比較例の場合と同様に躍度j及び加速度a(減速度ad)が車速Vの減少にともなって0に漸近して減少する一次遅れのプロフィールとりつつ、電動車両100が減速する。
【0136】
なお、本実施形態においては、躍度調節処理ゲインKvを可変ゲインKvvから固定ゲインKvfに切り替えるタイミング(以下、「ゲイン切替タイミング」とも称する)を規定するための閾値車速Vthは、停止時制御の後半で設定される固定ゲインKvfに基づいて定まる躍度j(t)が、停止時制御の前半で設定される可変ゲインKvvに基づく躍度固定値kjに対して所定範囲内に収まる車速Vの値に設定される。特に、本実施形態では、閾値車速Vthは、停止時制御の後半の躍度jが停止時制御の前半の躍度固定値kjと略一致する時刻tkの車速Vである車速基準値Vkに設定される。
【0137】
図8は、本実施形態による制御方法を用いた制御結果を説明するタイミングチャートである。特に、図8では、電動車両100が登坂路を走行しているシーンにおける制御結果を示している。なお、参考のため、比較例において電動車両100が登坂路を走行しているシーンにおける制御結果を破線で示している。
【0138】
また、図8(a)、図8(b)、図8(c)、及び図8(d)は、それぞれ、車速V(t)、最終モータトルク指令値Tm **、G、及び躍度j(t)の経時変化を示している。さらに、時刻t0は本実施形態の制御結果におけるトルク切替タイミング(すなわち、停止時制御の開始タイミング)を表し、時刻t2はゲイン切替タイミング(すなわち、停止時制御の前半から後半に移行するタイミング)を表す。
【0139】
図示のように、本実施形態の制御方法によれば、停止時制御の前半である時刻t0から時刻t2までは、図6で説明した制御ロジックによれば、第2トルク目標値Tm2 *(最終モータトルク指令値Tm **)が可変ゲインKvvに基づいて定められることで、当該最終モータトルク指令値Tm **は時間tに対して略直線的に増加する(図8(b)参照)。そのため、時刻t0から時刻t2における躍度j(t)は躍度固定値kj以下に制限されている(図8(d)参照)。特に、停止時制御の前半において、躍度j(t)はほぼ躍度固定値kjに維持されている。このため、時刻t0から時刻t2におけるGの急激な変化が抑えられる(図8(c)参照)。すなわち、破線で示す比較例の制御結果(図8(d)の破線参照)のようなトルク切替タイミングにおける過大な躍度jの発生を防止して、電動車両100の乗員に与える急停止感を抑制することができる。
【0140】
さらに、本実施形態の制御方法によれば、ゲイン切替タイミングである時刻t2において、車速V(t)が閾値車速Vthに到達する(図8(a)参照)。したがって、停止時制御の後半である時刻t2以降では、図6で説明した制御ロジックにしたがい、固定ゲインKvfに基づいて第2トルク目標値Tm2 *が定まることとなる。その結果、比較例の場合と同様に、躍度j及び減速度adがそれぞれ車速Vの減少にともなって0に漸近して減少する一次遅れのプロフィールとる。すなわち、停止時制御の後半では比較例の場合と同様に、乗員に急停止感をほぼ与えないスムーズな停車が実現されることとなる。
【0141】
特に、本実施形態においては、閾値車速Vthは、停止時制御の後半の躍度jが停止時制御の前半の躍度固定値kjと略一致する時刻tk(=時刻t2)の車速Vである車速基準値Vkに設定される。このため、ゲイン切替タイミングにおける躍度jの段差の発生がより好適に抑制される。すなわち、ゲイン切替タイミングにおいて電動車両100の乗員に与える急停止感をより効果的に抑制することができる。
【0142】
以下、上述した本実施形態の構成による作用効果について説明する。
【0143】
本実施形態では、電動モータ4の回生制動力により電動車両100を減速させて停止させる停止時制御(図6参照)を実行する電動車両100の制御方法が提供される。
【0144】
そして、停止時制御(第2トルク目標値Tm2 *>第1トルク目標値Tm1 *のときの制御)は、車速Vが閾値車速Vthを越える場合(図6の大小判定部B214から二値信号Bs=1が出力される場合)に、電動車両100の躍度jを所定の上限値である躍度固定値kj以下に調節する第1躍度調節処理(ゲイン演算部B215、切り替え部B217、及び乗算部B218)と、車速Vが閾値車速Vth以下である場合(図6の大小判定部B214から二値信号Bs=0が出力される場合)に、電動車両100の減速度ad(t)及び躍度j(t)が車速Vの減少にともなって0に漸近して減少するプロフィール(図8(c),図8(d)の時刻t2以降)をとるように躍度jを調節する第2躍度調節処理(固定ゲイン設定部B216、切り替え部B217、及び乗算部B218)と、を含む。
【0145】
そして、閾値車速Vthは、上記第2躍度調節処理において設定される躍度jとしての躍度固定値kjと第1躍度調節処理において設定される躍度jとの差が所定値以下となるときの車速Vの値(車速基準値Vk)に設定される。
【0146】
これにより、車速Vが閾値車速Vthを超える停止時制御の前半では、躍度jが躍度固定値kj以下に制限されることとなるので、当該躍度jのピークを抑制することができる。このため、躍度jが過度に高い値となることによる電動車両100の乗員に与える急停止感を抑制することができる。
【0147】
また、車速Vが閾値車速Vthに到達する停止時制御の後半では、電動車両100の減速度ad及び躍度jが車速Vの減少にともなって0に漸近して減少するように躍度jを調節する。このため、停止時制御の後半では、躍度jが制限されていた停止時制御の前半から引き続いて躍度jを減少させる処理が実行されることとなる。このため、停止時制御の後半においても躍度jの大きさが抑制されることとなるので、電動車両100のスムーズな停車が実現される。
【0148】
さらに、本実施形態では、閾値車速Vthが、第2躍度調節処理における躍度固定値kjと第1躍度調節処理における躍度jとの差が所定値以下、特に0となるときの車速Vの値に設定される。すなわち、閾値車速Vthは、第1躍度調節処理における演算ロジック(固定ゲインKvfに基づく演算)で定まる躍度jが躍度固定値kjと等しくなる時刻tkの車速Vの値(車速基準値Vk)に設定される。なお、このような閾値車速Vthは、実験等により予め定めることができる。
【0149】
これにより、第1躍度調節処理と第2躍度調節処理の切り替わりの際(ゲイン切替タイミング)における躍度jの段差を抑制することができる。すなわち、この制御の切り替わり時における際減速度adの変化を抑えることができる。したがって、当該制御の切り替えを、電動車両100の乗員に急停止感を与えることなく実行することができる。
【0150】
したがって、本実施形態によれば、停止時制御の開始から終了(電動車両100の停止)に至る過程において乗員に与える急停止感が抑制されたスムーズな停車が実現されることとなる。
【0151】
特に、本実施形態の制御方法は、上述した参考例において躍度jのピークがより大きくなる登坂路の走行時においても、当該ピークを好適に抑制して電動車両100の乗員に急停止感を与えることを抑制することができる。すなわち、本実施形態の制御方法は、電動車両100が登坂路を走行しているシーンにおいて、より顕著な効果を発揮する。
【0152】
特に、本実施形態における電動車両100の制御方法では、停止時制御は、車速に比例する速度パラメータとしての車速換算値Kc・ωmに所定のゲインとしての躍度調節処理ゲインKvを乗じることで、回生制動力に相当するモータトルク指令値としての第2トルク目標値Tm2 *を設定するモータトルク指令値設定工程(図2のステップS110及び図6)を含む。
【0153】
そして、上記第1躍度調節処理は、躍度調節処理ゲインKvを車速Vが大きいほど絶対値が小さい可変値としての可変ゲインKvvに設定することで実行される(ゲイン演算部B215及び切り替え部B217)。一方、上記第2躍度調節処理では、躍度調節処理ゲインKvを車速Vの変化に対して一定の固定値である固定ゲインKvfに設定することで実行される(固定ゲイン設定部B216及び一次遅れ処理部B212)。
【0154】
これにより、停止時制御の前半において躍度jが躍度固定値kj以下に制限されつつ、後半において減速度ad及び躍度jが車速Vの減少にともなって0に漸近して減少する電動車両100の挙動を、簡易な制御ロジックで実現することができる。
【0155】
さらに、本実施形態では、電動モータ4の回生制動力により電動車両100を減速させて停止させる停止時制御装置としてのモータコントローラ2を備える電動車両制御システム10が提供される。
【0156】
そして、モータコントローラ2は、車速Vが閾値車速Vthを越える場合(図6の大小判定部B214から二値信号Bs=1が出力される場合)に、電動車両100の躍度jを所定の上限値である躍度固定値kj以下に調節する第1躍度調節部(ゲイン演算部B215、切り替え部B217、及び乗算部B218)を有する。
【0157】
また、モータコントローラ2は、車速Vが閾値車速Vth以下である場合(図6の大小判定部B214から二値信号Bs=0が出力される場合)に、電動車両100の減速度ad(t)及び躍度j(t)が車速Vの減少にともなって0に漸近して減少するプロフィール(図8(c),図8(d)の時刻t2以降)をとるように躍度jを調節する第2躍度調節部(固定ゲイン設定部B216、切り替え部B217、及び乗算部B218)を有する。
【0158】
そして、閾値車速Vthは、上記第2躍度調節部における躍度jと第1躍度調節部における躍度jとの差が所定値以下となるときの車速Vの値(車速基準値Vk)に設定される。
【0159】
これにより、上記電動車両100の制御方法を実行するために好適なシステム構成が実現されることとなる。
【0160】
(第2実施形態)
以下、上記実施形態の第2実施形態による電動車両100の制御方法について説明する。なお、以下で説明する制御方法は、第2トルク目標値設定部B210における一部の処理以外は上記実施形態と同様である。そのため、本実施形態の制御方法において上記実施形態と同様の部分について説明を省略する。
【0161】
図9は、本実施形態による第2トルク目標値設定部B210の機能を説明するブロック図である。
【0162】
図示のように、本実施形態における第2トルク目標値設定部B210は、第1実施形態における大小判定部B214、ゲイン演算部B215、及び切り替え部B217に代えて、ゲイン設定部B2112を備えている。
【0163】
ゲイン設定部B2112は、モータコントローラ2内の図示しない記憶領域に予め構成される。具体的に、ゲイン設定部B2112は、車速V(t)の値とこれに応じて定まる躍度調節処理ゲインKvと、の対応関係を規定した車速-ゲインテーブルを有する。
【0164】
具体的には、車速-ゲインテーブルは、以下の表1のように構成される。
【0165】
【表1】
【0166】
特に、車速-ゲインテーブルは、閾値車速Vth以下の車速Vと固定ゲインKvfを対応させて記憶しているとともに、閾値車速Vthを越える車速Vとこれに応じて予め演算された可変ゲインKvvを対応させて記憶している。
【0167】
そして、ゲイン設定部B2112は、一次遅れ処理部B212からの車速Vに基づいて、上記車速-ゲインテーブルを参照し、車速Vに応じて可変ゲインKvv又は固定ゲインKvfを設定して乗算部B218に出力する。
【0168】
すなわち、本実施形態では、予め表1に規定された車速-ゲインテーブルを用いることで、上記実施形態におけるゲイン演算部B215による演算をリアルタイムに実行することなく、同様の制御方法を実行することができる。
【0169】
以上説明した本実施形態の構成による作用効果について説明する。
【0170】
本実施形態では、躍度調節処理ゲインKvを、車速V(t)と該車速V(t)に応じて定まる躍度調節処理ゲインKvとが対応付けられた車速-ゲインテーブルを参照することで設定する。
【0171】
これにより、第1実施形態で説明した可変ゲインKvvの演算をリアルタイムに行うことなくモータコントローラ2の演算負担を軽減しながら、同様の停止時制御を実現することができる。
【0172】
特に、第1実施形態で説明した可変ゲインKvvの演算においては、上記式(5)のように、一次遅れ曲線で表される躍度j(t)が躍度固定値kjを取るときの時間tkを演算するにあたり、当該式(5)の対数を演算する必要があるため、モータコントローラ2の演算負担が比較的高くなることが懸念される。これに対して、本実施形態の構成であれば、このような対数の演算をリアルタイムに行う必要が無いので、演算負担の軽減効果が顕著になる。
【0173】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0174】
例えば、上記実施形態では、車速Vに比例する速度パラメータとして車速換算値Kc・ωmに基づいて第2トルク目標値Tm2 *を算出する例を説明した。しかしながら、車速Vに比例するものであれば、適宜ゲインを調節しつつ他の速度パラメータを用いても良い。例えば、図6又は図9のブロック図において、換算ゲインKcを適切なゲインKc´に補正した上で、モータ回転速度ωmに代えてモータ回転数Nmを入力する構成としても良い。すなわち、車速Vに比例する速度パラメータをKc´・Nmに変更しても良い。
【0175】
また、上記実施形態では、電動車両100の減速度ad(t)及び躍度j(t)が車速Vの減少にともなって0に漸近して減少するプロフィールを実現するための構成として、一つの一次遅れ処理部B212を設ける例を説明した。しかしながら、電動車両100の仕様などによってゲイン余裕をより確実に確保する必要がある場合には、図12(変形例1)又は図13(変形例2)に示すように、複数の一次遅れ処理部B212、B212´が設けられた電動車両制御システム10を採用しても良い。なお、この場合においても、上記実施形態で説明した第2トルク目標値設定部B210の機能を同様の方法で実現することができる。
【0176】
さらに、上記実施形態では、主に、一つの電動モータ4を備える電動車両100に、本発明の電動車両制御方法及び電動車両制御システム10を適用する例を説明した。しかしながら、上記実施形態の制御方法及び制御システムは、4WD車両等の複数の電動モータ4を備える電動車両100においても若干の修正を加えつつ適用することができる。例えば、複数の電動モータ4を備える電動車両100においては、上記実施形態の方法により得られる最終モータトルク指令値Tm **を適切な配分ゲインにより各電動モータ4に配分することで、このような電動車両100においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0177】
さらに、上記実施形態の構成は、燃料電池(固体高分子形燃料電池又は固体酸化物形燃料電池など)を搭載したハイブリッド車両、又は発電のために駆動させるエンジンを備えたシリーズハイブリッド車両等の電動モータ4の駆動電力を生成する発電装置を搭載した電動車両100にも適用することができる。
【0178】
また、上記実施形態では、閾値車速Vthを、第1躍度調節処理において設定される躍度固定値kjと第2躍度調節処理において設定される躍度jがいずれも躍度固定値kjに一致する車速Vの値である車速基準値Vkとして設定する例を説明した。しかしながら、閾値車速Vthを第1躍度調節処理の躍度固定値kj及び第2躍度調節処理の躍度j(t)が厳密に一致する車速Vに設定することに限られず、若干の幅を持たせて設定しても良い。例えば、ゲイン切替タイミング前後における第2躍度調節処理における躍度jと第1躍度調節処理における躍度固定値kjとの差が、乗員に急停止感を与えない程度の所定値となるときの車速Vの値を閾値車速Vthとして設定しても良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13