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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220720BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
H02M7/48 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021534432
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2019028683
(87)【国際公開番号】W WO2021014540
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212838(JP,A)
【文献】特開平4-217822(JP,A)
【文献】特開2014-117086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流電源と交流電源との間に接続された電力変換器と、
前記電力変換器と前記交流電源との間に接続された交流スイッチと、
前記電力変換器の出力側において、前記交流スイッチよりも前記電力変換器の側に接続された交流コンデンサと、
前記交流スイッチが開いている状態において、前記交流コンデンサに残存している電荷による電圧を認識し、前記電力変換器の出力電圧が、前記交流コンデンサの電圧から前記交流電源の電圧に、徐々に、または段階的に近づくように前記電力変換器を制御し、その後、前記交流スイッチを閉じる制御装置と、
を備えた電力変換システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電力変換器の出力電圧が前記交流コンデンサの電圧から前記交流電源の電圧に徐々に近づくように前記電力変換器を制御する際に、前記交流電源へ流れる電流が前記電力変換器の瞬時定格電流以下となるように前記電力変換器の出力電圧の時間的変化率を設定された請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電力変換器の出力電圧が前記交流コンデンサの電圧から前記交流電源の電圧に段階的に近づくように前記電力変換器を制御する際に、前記交流電源へ流れる電流が前記電力変換器の瞬時定格電流以下となるように前記電力変換器の出力電圧の変化幅を設定された請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記交流電源の電圧の位相に固定した座標系における、前記交流コンデンサの電圧と前記交流電源の電圧を演算し、前記座標系における前記電力変換器の出力電圧が、前記座標系における交流コンデンサ電圧から、前記座標系における交流電源の電圧に、徐々に、または段階的に近づくように、前記電力変換器を制御する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換システムを開示する。当該電力変換システムによれば、突入電流を抑えながら、交流電源と連系し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平9-28040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電力変換システムにおいては、電力変換器の起動時に交流コンデンサに電荷が残存していた場合、電力変換器の起動時の出力電圧と交流コンデンサの電圧との差が大きいこともある。この場合、電力変換器の起動直後に電力変換器から交流コンデンサに大きな電流が流れ、過電流となる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、電力変換器の起動時の過電流および交流電源との連系時の突入電流を抑えることができる電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換システムは、直流電源と交流電源との間に接続された電力変換器と、前記電力変換器と前記交流電源との間に接続された交流スイッチと、前記電力変換器の出力側において、前記交流スイッチよりも前記電力変換器の側に接続された交流コンデンサと、前記交流スイッチが開いている状態において、前記交流コンデンサに残存している電荷による電圧を認識し、前記電力変換器の出力電圧が、前記交流コンデンサの電圧から前記交流電源の電圧に、徐々に、または段階的に近づくように前記電力変換器を制御し、その後、前記交流スイッチを閉じる制御装置と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、制御装置は、交流スイッチが開いている状態において、交流コンデンサの電圧を認識し、電力変換器の出力電圧が、交流コンデンサの電圧から交流電源の電圧に、徐々に、または段階的に近づくように電力変換器を制御し、その後、交流スイッチを閉じる。このため、電力変換器の起動時の過電流および交流電源との連系時の突入電流を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における電力変換システムが適用されるシステムの構成図である。
図2】実施の形態1における電力変換システムの制御装置による電圧指令値の制御を説明するための図である。
図3】実施の形態1における電力変換システムで用いられる調整パラメータを説明するための図である。
図4】実施の形態1における電力変換システムの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図5】実施の形態1における電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
図6】実施の形態1における電力変換システムで用いられる係数を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における電力変換システムが適用されるシステムの構成図である。
【0011】
図1において、直流電源1は、太陽光発電設備、蓄電池等である。交流電源2は、電力会社等に運用される。変圧器3は、直流電源1と交流電源2との間に接続される。
【0012】
電力変換システムは、電力変換器4と直流コンデンサ5と交流リアクトル7と交流スイッチ8と交流コンデンサ11と制御装置12とを備える。
【0013】
電力変換器4は、直流電源1と変圧器3との間に接続される。直流コンデンサ5は、直流電源1と電力変換器4との間に接続される。
【0014】
交流リアクトル7は、電力変換器4と変圧器3との間に接続される。交流スイッチ8は、交流リアクトル7と変圧器3との間に接続される。交流コンデンサ11は、電力変換器4の出力側において、交流スイッチ8よりも交流リアクトル7の側に接続される。
【0015】
制御装置12は、電力変換器4と交流スイッチ8とを制御し得るように設けられる。
【0016】
次に、図2を用いて、制御装置12による電圧指令値の制御を説明する。
図2は実施の形態1における電力変換システムの制御装置による電圧指令値の制御を説明するための図である。
【0017】
図2に、静止座標系における制御ブロックを示す。図2において、vは、交流電源2の現時点の電圧に対応したベクトル量である。kstは、係数でスカラー量である。vcpiは、交流コンデンサ11にかかる電圧に対応したベクトル量である。vcpi_sは、交流コンデンサ11にかかる電圧vcpiのホールド値に対応したベクトル量である。
【0018】
ホールドブロックAは、Start信号がLowのときに入力をそのまま出力し、Start信号がHighのときStart信号の立ち上がり時の入力値を保持して保持した値を出力する。係数kstが0から1に直線的に変化すると、v は、ホールド値vcpi_sを起点に交流電源2の現時点の電圧vに追従する。制御装置12は、電力変換器4の出力電圧が電圧指令値v となるよう、電力変換器4を構成する半導体素子にゲート信号を与える。
【0019】
なお、図2においては、ベクトル量は静止座標系に取ると述べたが、任意の回転座標系、例えば、交流電源2の電圧ベクトルとともに回転するdq座標系に取ってもよい。多くの交流電源2の連系電力変換器において、制御演算は、交流電源2の電圧ベクトルとともに回転するdq座標系に取った電圧ベクトル、電流ベクトルに対して行われる。したがって、図2の演算も静止座標系ではなく、交流電源2の電圧ベクトルとともに回転するdq座標系において行った方が、演算を簡略化できる。
【0020】
次に、図3を用いて、係数kstを説明する。
図3図6とは実施の形態1における電力変換システムで用いられる係数を説明するための図である。
【0021】
図3に示されるように、係数kstの時間的変化率は、予め設定された値となる。例えば、係数kstの時間的変化率は、電力変換器4へ流れる電流が電力変換器4の瞬時定格電流以下となるような範囲で設定される。
【0022】
図3においては、係数kstを0から1まで直線的に変化させるとしたが、図6のように、0から1までの間で段階的に変化させても良い。係数kstが0と1の間の値を取る時間を設けることで、運転開始時点で電力変換器がいきなり交流電源2の電圧に一致する電圧を出力する、あるいは係数kstを0から突然1に変化させるよりも、突入電流を抑制することが出来る。
【0023】
図3および図6においては、交流スイッチ8が開いている状態から電力変換器4が運転を開始する際に、電力変換器4は交流コンデンサ11の電圧に一致する電圧を出力するとしたが、交流コンデンサ11の電圧と交流電源2の電圧の間の電圧を出力しても、突入電流をある程度抑制することが出来る。
【0024】
図3および図6においては、交流スイッチ8を閉じる直前の状態において、電力変換器4は交流電源2の電圧に一致する電圧を出力するとしたが、交流スイッチ8を閉じる直前の状態において、交流コンデンサ11の電圧と交流電源2の電圧の間の電圧を出力しても、突入電流をある程度抑制することが出来る。
【0025】
次に、図4を用いて、制御装置12の動作の概要を説明する。
図4は実施の形態1における電力変換システムの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0026】
ステップS1では、制御装置12は、電力変換器が運転を停止している状態において運転開始時点の交流コンデンサ11にかかる電圧を把握する。その後、制御装置12は、ステップS2の動作を行う。ステップS2では、制御装置12は、電力変換器4が交流コンデンサ11の電圧と一致する電圧を出力するように電力変換器4を制御する。その後、制御装置12は、ステップS3の動作を行う。ステップS3では、制御装置12は、電力変換器4の出力電圧が徐々に交流電源2の電圧に一致するように電力変換器4を制御する。その後、制御装置12は、ステップS4の動作を行う。ステップS4では、電力変換器4の出力電圧が交流電源2の電圧に一致したら、制御装置12は、交流スイッチ8を閉じる。
【0027】
以上で説明した実施の形態1によれば、制御装置12は、交流スイッチ8が開いている状態において、電力変換器4の出力電圧が交流コンデンサ11にかかる電圧に一致するように電力変換器4の運転を開始する。このため、電力変換器の運転開始時点の出力電圧が、交流コンデンサの電圧と一致しているため、運転開始の際の突入電流が流れない。その結果、過電流となったり、共振が発生して過電圧となったりすることを抑制できる。
【0028】
その後、制御装置12は、電力変換器4の出力電圧が徐々に交流電源2の電圧に一致するように電力変換器4を制御する。その後、制御装置12は、交流スイッチ8を閉じる。このため、電力変換器4の起動時の過電流および交流電源2との連系時の突入電流を抑えることができる。
【0029】
制御装置12において、電力変換器4の出力電圧の時間的変化率は、電力変換器4の出力電圧が徐々に交流電源2の電圧に同期するように電力変換器4を制御する際に、電力変換器4へ流れる電流が電力変換器4の瞬時定格電流以下となり、設定される。このため、電力変換器4の起動時、電力変換器4の定格の範囲内で、短時間で交流電源2と連系することができる。
【0030】
次に、図5を用いて、制御装置12の例を説明する。
図5は実施の形態1における電力変換システムの制御装置のハードウェア構成図である。
【0031】
制御装置12の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0032】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置12の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置12の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0033】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置12の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置12の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0034】
制御装置12の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、電力変換器4を制御する機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、電力変換器4を制御する以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0035】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置12の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、この発明に係る電力変換システムは、過電流および突入電流を抑えるシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 直流電源、 2 交流電源、 3 変圧器、 4 電力変換器、 5 直流コンデンサ、 7 交流リアクトル、 8 交流スイッチ、 11 交流コンデンサ、 12 制御装置、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6