(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電磁接触器のガス封止方法及びこの方法で使用される封止弁
(51)【国際特許分類】
H01H 49/00 20060101AFI20220720BHJP
H01H 50/02 20060101ALI20220720BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01H49/00 D
H01H50/02 E
H01H50/54 B
(21)【出願番号】P 2021536601
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007122
(87)【国際公開番号】W WO2021019810
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019140644
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰洋
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117678(JP,A)
【文献】中国実用新案第204946811(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0039206(KR,A)
【文献】特開2008-38763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 49/00
H01H 50/02
H01H 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の固定接触子と、前記一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子とを内部空間に収納した封止容器と、
前記封止容器に設けた弁開口部を開閉する封止弁と、を備え、
ガス供給源に接続した供給用ノズルを、前記封止容器の前記弁開口部に差し込むことで前記封止弁を開状態とし、前記ガス供給源から前記供給用ノズルを介して前記内部空間にガスを導入するとともに、
前記内部空間へのガスの導入が完了したときに、前記供給用ノズルを前記弁開口部から引き抜くことで前記封止弁を閉状態とし、前記内部空間を封止することを特徴とする電磁接触器のガス封止方法。
【請求項2】
請求項1記載の電磁接触器のガス封止方法で使用する封止弁であって、
前記封止容器に形成され、前記弁開口部を有し、内周面にシート面が形成されている弁座と、
前記弁座に向けて移動自在に配置されたプランジャと、
前記プランジャのシート部が前記弁座の前記シート面に当接するように前記プランジャを付勢力で前記弁座側に押し付ける付勢バネと、を備えており、
前記プランジャの前記シート部が前記弁座の前記シート面に当接することで前記閉状態となり、前記供給用ノズルを前記弁開口部から差し込み、前記付勢バネの付勢力に抗して前記プランジャを前記弁座から離間する方向に移動させて前記シート部が前記シート面に対して離間することで前記開状態となることを特徴とする電磁接触器のガス封止方法で使用する封止弁。
【請求項5】
前記弁座の前記シート面に対して前記シート部が軸を一致させて接離するように、前記プランジャの外周を摺動自在に案内する案内部が設けられていることを特徴とする請求項2又は4に記載の電磁接触器のガス封止方法で使用する封止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接触子及び可動接触子を備えた電磁接触器の封止容器の内部空間に封入ガスを封止する電磁接触器のガス封止方法及びこの方法で使用される封止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁接触器の封止容器に封入ガスを封止する電磁接触器のガス封止方法が記載されている。この方法は、封止容器の内部に連通するパイプが接合されており、ガス封入機からパイプを介して封入ガスを封止容器の内部に封入していく。そして、封止容器の内部への封入ガスの封入が完了すると、封止機でパイプの一部を潰して封止容器の内部を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の方法は、封止容器の内部に封入ガスを封入する前にベース板にパイプを接続する作業が必要であり、封入ガスの封入が完了した際にもパイプを潰す作業も必要となるので、封入ガスの封入作業の他に多大な労力が必要となる。したがって、製造コストの面で問題がある。
また、特許文献1の方法では、封止容器にはパイプが接合された状態なので、電磁接触器の製品外形に制約を与えてしまい、電磁接触器の小型化の面で問題がある。
そこで、本発明は、製造コストの低減化を図ることができるとともに、封止容器にパイプなどの突起部品が存在しないことで製品外形に制約が無く、電磁接触器の小型化を図ることができる電磁接触器のガス封止方法及びこの方法で使用される封止弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器のガス封止方法は、一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子とを内部空間に収納した封止容器と、封止容器に設けた弁開口部を開閉する封止弁と、を備えた電磁接触器のガス封止方法である。この方法は、ガス供給源に接続した供給用ノズルを、封止容器の弁開口部に差し込むことで封止弁を開状態とし、ガス供給源から供給用ノズルを介して内部空間にガスを導入するとともに、内部空間へのガスの導入が完了したときに、供給用ノズルを弁開口部から引き抜くことで封止弁を閉状態とし、内部空間を封止する。
【0006】
また、本発明の一態様に係る上述した電磁接触器のガス封止方法で使用する封止弁は、封止容器に形成され、弁開口部を有し、内周面にシート面が形成されている弁座と、弁座に向けて移動自在に配置されたプランジャと、プランジャのシート部が弁座のシート面に当接するようにプランジャを付勢力で弁座側に押し付ける付勢バネと、を備えている。そして、封止弁は、プランジャのシート部が弁座のシート面に当接することで閉状態となり、供給用ノズルを弁開口部から差し込み、付勢バネの付勢力に抗してプランジャを弁座から離間する方向に移動させてシート部がシート面に対して離間することで開状態となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電磁接触器のガス封止方法及びこの方法で使用される封止弁によれば、封止容器にパイプなどの突起部品が存在しないことで製品外形に制約が無く、電磁接触器の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】封止容器に設けられている封止弁の閉状態を示す図である。
【
図3】供給用ノズルを弁開口部に差し込んだ状態で開状態とされている封止弁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る第1実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す第1実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
図1は、第1実施形態の電磁接触器の封止容器1を示すものである。封止容器1は、セラミックス製の桶状の消弧部2と、消弧部2の開口部の周囲に筒部3aが接合されている金属製の筒状の接続部材3と、接続部材3のフランジ部3bに接合されて消弧部2の開口部を閉塞している金属製のベース板4とで構成され、消弧部2、接続部材3及びベース板4で囲まれた内部空間Kが密閉された空間とされている。
【0011】
消弧部2の上壁には、一対の固定接触子5が貫通して配置されており、一対の固定接触子5の固定接点6が下方を向いた状態で封止容器1の内部に配置されている。
封止容器1の内部には、一対の固定接点6と接離する一対の可動接点7を有する可動接触子8が配置されている。
可動接触子8には、一対の可動接点7を結ぶ直線に対して直交する方向に可動軸9が固定されており、可動軸9は、ベース板4に形成した貫通孔4aを通過し、貫通孔4aを覆うようにベース板4の下面に接合した有底筒形状のキャップ10に延在している。
【0012】
また、ベース板4の上面と可動接触子8との間の可動軸9の外周には接触バネ11が装着され、キャップ10の内部には、可動軸9に連結された可動鉄心12と、復帰バネ13とが装着されている。
そして、接続部材3のフランジ部3bとベース板4との接合部には、封止弁15が形成されている。
封止弁15は、封止容器1の内部空間Kのガスを真空排気、或いは封止容器1の内部空間Kにガスを封入する際に使用する弁である。
【0013】
封止弁15は、
図2に示すように、内部空間Kに一端が連通しているガス流路16と、接続部材3のフランジ部3bに設けた弁開口部3cと、ガス流路16の他端側で連通し、フランジ部3bの厚さ方向に延在して弁開口部3cを介して外部に貫通している弁座17と、弁座17に接離可能となるようにフランジ部3b(ベース板4)の厚さ方向に移動自在に配置されたプランジャ18と、プランジャ18を弁座17に向けてバネ付勢力で押し付けているコイルバネで構成した付勢バネ19と、を備えている。
ガス流路16は、ベース板4に面接触している接続部材3のフランジ部3bの内壁の一部にスリットを形成することで形成されている。
弁座17の内面(シート面)は、ガス流路16側から弁開口部3cまで向うに従い徐々に縮径された円錐面として形成されている。
【0014】
プランジャ18は、上部に円錐形状のシート部18aが形成され、下部を円筒形状とした部材である。シート部18aは、弁座17のシート面と略同一角度で傾斜する円錐面として形成されている。プランジャ18の下部底面には、付勢バネ19の上部を保持するバネ上部保持凹部18bが形成されている。
弁座17に対して下方位置のベース板4には、プランジャ18の円筒形状の下部が入り込む収容凹部4bが形成されている。収容凹部4bがプランジャ18の下部を摺動自在に案内することで、プランジャ18が移動する際は、弁座17のシート面に対してシート部18aが軸Pを一致させる。また、収容凹部4bの底から凸部4cが突出して形成されており、この凸部4cに、付勢バネ19の下部が嵌まり込んでいる。
【0015】
次に、
図1に示すように、封止容器1及びキャップの内部に、可動接触子8、可動軸9、接触バネ11、可動鉄心12、復帰バネ13を組立てた後に、封止容器1の内部に、封入ガス(水素ガス、窒素ガス、水素と窒素の混合ガス、或いはエア)を封入する動作について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2に示すように、封止弁15は、付勢バネ19の付勢力によりプランジャ18が弁座17側に押し付けられているので、プランジャ18のシート部18aが弁座17のシート面に密着し、内部空間Kの気密が保持されている。
【0016】
次に、
図3に示すように、内部空間Kのガスを真空排気するために、ガス排気装置(不図示)に接続した排気用ノズル20を弁開口部3cから弁座17の内部に差し込む。
排気用ノズル20が弁開口部3cに差し込まれると、付勢バネ19の付勢力に抗してプランジャ18が収容凹部4b側に移動する。プランジャ18が収容凹部4b側へ移動するとともに、付勢バネ19は、収容凹部4bの底に設けた凸部4cの外周の回りで縮小していく。
【0017】
そして、弁座17のシート面とプランジャ18のシート部18aとの間に隙間Sが設けられるので、封止弁15が開状態となり、ガス排気装置の吸引動作により、内部空間Kのガスが、ガス流路16、隙間S及び排気用ノズル20を通過して真空排気されていく。
内部空間Kの真空排気が完了して排気用ノズル20を弁開口部3cから抜くと、付勢バネ19の付勢力でプランジャ18が弁座17側に移動し、プランジャ18のシート部18aが弁座17のシート面に密着して封止弁15が閉状態となるので、内部空間Kの真空状態が保持される。
【0018】
次いで、内部空間Kに封入ガスを封入するために、ガス供給装置(不図示)に接続した供給用ノズル21を弁開口部3cから弁座17の内部に差し込む。
供給用ノズル21を弁開口部3cに差し込む際も、付勢バネ19の付勢力に抗してプランジャ18が収容凹部4b側に移動する。
そして、弁座17のシート面とプランジャ18のシート部18aとの間に隙間Sが設けられ、封止弁15が開状態となるので、ガス供給装置の供給動作により、供給用ノズル21、隙間S及びガス流路16を介して内部空間Kに封入ガスが封入されていく。内部空間Kへの封入ガスの封入が完了して供給用ノズル21を弁開口部3cから抜くと、付勢バネ19の付勢力でプランジャ18が弁座17側に移動し、プランジャ18のシート部18aが弁座17のシート面に密着して封止弁15が閉状態となるので、内部空間Kの封入ガスの封止状態が保持される。
ここで、本発明に記載されている流路がガス流路16に対応し、本発明に記載されている案内部が収容凹部4bに対応している。
【0019】
次に、上述した第1実施形態の効果について説明する。
第1実施形態によると、封止容器1の内部空間Kに封入ガスを供給する場合には、封止弁15の弁開口部3cに供給用ノズル21を差し込むことで封止弁15を開状態として封入ガスの供給動作を開始することができる。したがって、封入ガスを封止する前にベース板にパイプを接続する作業が必要な従来方法と比較して、封入ガスを封入する作業に大幅な労力の削減を図ることができ、製造コストの低減化も図ることができる。
【0020】
また、第1実施形態の封止容器1は、接続部材3のフランジ部3bとベース板4との接合部に封止弁15が埋設されている構造なので、従来方法のように封止容器からパイプなどの突起部品が存在せず、製品外形に制約が無いので、電磁接触器の小型化を図ることができる。
また、封止弁15に設けた弁座17のシート面は円錐形状であり、このシート面に当接するプランジャ18のシート部18aも弁座17のシート面と略同一角度で傾斜する円錐面で形成されており、封止弁15の閉状態では、接触面積を大きくした状態でシート面及びシート部18aが当接するので、封止弁15の気密性能を向上させることができる。
【0021】
また、弁座17に対して下方位置のベース板4に形成した収容凹部4bがプランジャ18の下部を摺動自在に案内することで、プランジャ18が移動する際の弁座17のシート面及びシート部18aの軸Pを一致させているので、封止弁15の気密性能をさらに向上させることができる。
また、プランジャ18を弁座17に向けてバネ付勢力で押し付ける付勢バネ19は、バネ上部がプランジャ18のバネ上部保持凹部18bで保持され、バネ下部が、収容凹部4bの底から突出している凸部4cの外周に巻きついた状態で保持されている。そして、封止弁15の開状態でプランジャ18が収容凹部4b側へ移動する際には、付勢バネ19が凸部4cの外周に巻き付いた状態で偏芯せずに縮小していく。このため、封止弁15の閉状態のときには、付勢バネ19が正常に伸長することで、プランジャ18に対して一定の付勢力を付与することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 封止容器
2 消弧部
3 接続部材
3a 筒部
3b フランジ部
3c 弁開口部
4 ベース板
4a 貫通孔
4b 収容凹部
4c 凸部
K 内部空間
5 固定接触子
6 固定接点
7 可動接点
8 可動接触子
9 可動軸
10 キャップ
11 接触バネ
12 可動鉄心13 復帰バネ
15 封止弁
16 ガス流路
17 弁座
18 プランジャ
18a シート部
18b バネ上部保持凹部
19 付勢バネ
20 排気用ノズル
21 供給用ノズル