(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H03H 7/075 20060101AFI20220720BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220720BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H03H7/075 A
H01F17/00 D
H01F27/00 R
(21)【出願番号】P 2022505631
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033751
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020167205
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 淳
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199749(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107081(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/170708(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/00
H03H1/00-H03H3/00
H03H5/00-H03H7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装されたICと、
一方の端を前記ICに接続するフィルタ回路と、を備える電子機器であって、
前記フィルタ回路は、コイル部品と、コンデンサと、を備え、
前記コイル部品は、
複数の積層された絶縁層からなり、互いに対向する1対の主面と前記主面間を結ぶ4つの側面とを有する素体と、
前記素体の内部に積み重ねられた複数の配線パターンの一部で構成される第1コイルと、
前記第1コイルよりも上層に設けられ、複数の前記配線パターンの一部で構成される第2コイルと、
前記側面の第1面に設けられ、前記第1コイルの一方の端と電気的に接続する第1電極と、
前記第1面と対向する前記側面の第2面に設けられ、前記第2コイルの一方の端と電気的に接続する第2電極と、
前記第1面と対向しない前記側面の第3面に設けられ、前記第1コイルの他方の端および前記第2コイルの他方の端と電気的に接続する第3電極と、を備え、
前記主面の方向から視て、前記第1コイルの開口と前記第2コイルの開口とが少なくとも一部が重なり、
前記第1電極は、前記ICに接続され、
前記第3電極は、前記コンデンサを介してグランドに接続され、
前記第1コイルは、前記第2コイルに比べてインダクタンスが小さい、電子機器。
【請求項2】
前記第1コイルに近接する前記素体の一方の前記主面を実装面とする、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1コイルおよび前記第2コイルのうち少なくとも一方は、複数の層にそれぞれ形成された前記配線パターンを並列接続した部分を有する、請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1コイルは、前記第2コイルに比べて並列接続する前記配線パターンの層数が多い、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1コイルは、前記第2コイルに比べて前記配線パターンの巻き数が少ない、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1コイルは、前記第2コイルに比べて構成する前記配線パターンの配線幅が太い、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1コイルは、前記第2コイルに比べて前記配線パターンの積層方向の間隔が広い、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記コイル部品は、
前記第3面と対向する前記側面の第4面に設けられ、前記第1コイルおよび前記第2コイルと電気的に接続する第4電極を、さらに備え、
前記第3電極に代えて前記第4電極が前記コンデンサを介してグランドに接続される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品、これを含むフィルタ回路、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、フィルタ回路を用いたノイズ対策がよく行われる。ノイズ対策に用いるフィルタ回路には、例えばEMI(Electro-Magnetic Interference)除去フィルタなどがあり、導体を流れる電流のうち必要な成分を通して不要な成分を除去する。また、フィルタ回路は、キャパシタンス素子であるコンデンサを用いるため、当該コンデンサの寄生インダクタンスである等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)によりノイズ抑制効果が低下することが知られている。
【0003】
コンデンサの等価直列インダクタンスESLを、二つのコイルを磁気結合することで生じる負のインダクタンスで打ち消し、フィルタ回路のノイズ抑制効果を広帯域化する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、回路部品への電荷供給性能を維持するために、コイルを通らずに回路部品に電荷を供給することが可能なコンデンサを設けたフィルタ回路が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-160728号公報
【文献】国際公開第2017/110179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタ回路は、二つのコイルの磁気結合による相互インダクタンスMを利用して、コンデンサの等価直列インダクタンスESLを打ち消すことができるが、相互インダクタンスMを生成するために、電源から電力を供給する配線にコイルを入れる必要がある。ノイズ抑制のためのフィルタ回路としては、配線にコイルを入れることは有効であり、特に問題とはならない。
【0006】
しかし、電源から電力を供給する先がICなどの回路部品を含む電子機器である場合、コイルに接続するコンデンサはノイズ抑制のため利用されるだけでなく、一時的に消費電力が増加したときに、回路部品に電荷を供給する役割も有している。そのため、コンデンサから電荷を供給する配線にコイルがあることで、コンデンサから回路部品に供給する電荷の立ち上がりが遅れることがあった。このため、回路部品に接続する電源配線には、相互インダクタンスMを利用するフィルタ回路を適用できない場合があった。また、特許文献2では、別途コンデンサが必要となり、部品点数が増加して、製造コストおよび製品サイズが問題となる。
【0007】
そこで、本開示の目的は、回路部品に接続する電源配線に適用するフィルタ回路に用いることができるコイル部品、これを含むフィルタ回路、および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係る電子機器は、基板に実装されたICと、一方の端をICに接続するフィルタ回路と、を備える電子機器であって、フィルタ回路は、コイル部品と、コンデンサと、を備え、コイル部品は、複数の積層された絶縁層からなり、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ4つの側面とを有する素体と、素体の内部に積み重ねられた複数の配線パターンの一部で構成される第1コイルと、第1コイルと異なる層に設けられ、複数の配線パターンの一部で構成される第2コイルと、側面の第1面に設けられ、第1コイルの一方の端と電気的に接続する第1電極と、第1面と対向する側面の第2面に設けられ、第2コイルの一方の端と電気的に接続する第2電極と、第1面と対向しない側面の第3面に設けられ、第1コイルの他方の端および第2コイルの他方の端と電気的に接続する第3電極と、を備え、主面の方向から視て、第1コイルの開口と第2コイルの開口とが少なくとも一部が重なり、第1電極は、ICに接続され、第3電極は、コンデンサを介してグランドに接続され、第1コイルは、第2コイルに比べてインダクタンスが小さい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一形態によれば、第1コイルは、第2コイルに比べてインダクタンスが小さいので、第3電極に接続されるキャパシタから供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る電子機器の構成を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
【
図3】実施の形態1に係るコイル部品の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。
【
図5】コイルL1とコイルL2とのインダクタンスの組み合わせを説明するための図である。
【
図6】実施の形態1に係るコイル部品の断面図である。
【
図7】実施の形態2に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。
【
図8】実施の形態3に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。
【
図9】実施の形態4に係るコイル部品の第1接続の構成を示す分解平面図である。
【
図10】実施の形態4に係る第1接続のコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
【
図11】実施の形態4に係るコイル部品の第2接続の構成を示す分解平面図である。
【
図12】実施の形態4に係る第2接続のコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
【
図14】変形例に電子機器の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本実施の形態に係るコイル部品、これを含むフィルタ回路、および電子機器について説明する。
【0014】
<実施の形態1>
まず、実施の形態1に係る電子機器について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る電子機器の構成を示す概略図である。電子機器は、基板(図示せず)に実装された回路部品200と、一方の端を回路部品200に接続するフィルタ回路100と、を含む。
【0015】
回路部品200は、例えばIC(集積回路)で、一時的に消費電力が増加したときにフィルタ回路100に含まれるコンデンサ(キャパシタ)に蓄えられた電荷を利用する。
【0016】
フィルタ回路100は、例えば、EMI除去フィルタであり、3次のT型LCフィルタ回路である。このフィルタ回路100は、一方の端を回路部品200に接続し、他方の端を電源(図示せず)に接続している。フィルタ回路100は、電源から回路部品200に流れる電流のうち必要な成分を通して不要な成分を除去する。このフィルタ回路100には、キャパシタンス素子であるコンデンサC1を用いるため、当該コンデンサの等価直列インダクタンスESLをキャンセルするために、二つのコイルの磁気結合で生じる負のインダクタンスを用いている。
【0017】
なお、以下の実施の形態では、フィルタ回路100の構成として3次のT型LCフィルタ回路を用いて説明するが、5次のT型LCフィルタ回路や、より高次のT型LCフィルタ回路に対しても同様の構成のコイル部品を適用することができる。
図2は、実施の形態1に係るコイル部品を含むフィルタ回路100の回路図である。まず、フィルタ回路100は、
図2に示すように、コンデンサC1、電極4a,4b,4c、コイルL1(第1コイル)、およびコイルL2(第2コイル)を備えている。
【0018】
コンデンサC1は、
図2に示すように一方の端部を電極4cに接続し、他方の端部をGND配線に接続している。なお、コンデンサC1は、BaTiO
3(チタン酸バリウム)を主成分とした積層セラミックコンデンサだけでなく、他の材料を主成分とした積層セラミックコンデンサでも、積層セラミックコンデンサでない、例えばアルミ電解コンデンサなどの他の種類のコンデンサでもよい。コンデンサC1は、寄生インダクタンス(等価直列インダクタンス(ESL))としてインダクタL3を有しており、インダクタL3がキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価である。なお、コンデンサC1は、さらに寄生抵抗(等価直列抵抗(ESR))がインダクタL3およびキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価であるとしてもよい。
【0019】
電極4cには、コンデンサC1の他にコイルL1およびコイルL2が接続されている。コイルL1とコイルL2とは磁気結合しており、負のインダクタンス成分を生じている。この負のインダクタンス成分を用いて、コンデンサC1の寄生インダクタンス(インダクタL3)を打ち消すことができ、コンデンサC1のインダクタンス成分を見かけ上小さくすることができる。つまり、コンデンサC1、コイルL1およびコイルL2で構成されるフィルタ回路100は、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスによる負のインダクタンス成分で、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0020】
しかし、フィルタ回路100がコイルL1とコイルL2とを磁気結合させる回路構成であることから、回路部品200とコンデンサC1との間にコイルL1が必ず存在することになる。回路部品200が一時的に消費電力を増加させたときにフィルタ回路100のコンデンサC1に蓄えられた電荷を利用する場合、このコイルL1のインダクタンスにより、コンデンサC1から回路部品200に供給する電荷の立ち上がりが遅れることがあった。
【0021】
そこで、実施の形態1に係るコイル部品1では、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスによる負のインダクタンス成分で、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消しつつ、コイルL1が、コイルL2に比べてインダクタンスが小さくなるように構成している。これにより、コイル部品1は、コンデンサC1から回路部品200に供給する電荷の立ち上がりの遅れを低減できる。
【0022】
実施の形態1に係るコイル部品1について図面を参照しながら詳しく説明する。
図3は、実施の形態1に係るコイル部品1の斜視図である。
図4は、本実施の形態1に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。
図5は、コイルL1とコイルL2とのインダクタンスの組み合わせを説明するための図である。
図6は、実施の形態1に係るコイル部品1の断面図である。ここで、
図3、
図4および
図6では、コイル部品1の短辺方向をX方向、長辺方向をY方向、高さ方向をZ方向としている。また、基板の積層方向はZ方向で、矢印の向きが上層方向を示している。
【0023】
コイル部品1は、
図3、
図4に示すようにコイルの配線を形成した基板(セラミックグリーンシート)が複数枚積層されたセラミック層の積層体3(素体)で構成されている。積層体3は、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ側面とを有している。積層体3の主面に対して平行に、複数の第1配線パターン10と、複数の第2配線パターン20とが下から順に積み重ねられ、コイルL1およびコイルL2を形成している。そのため、コイルL1およびコイルL2のインダクタンスは、第1配線パターン10および第2配線パターン20の構成により制御することができる。
【0024】
積層体3の側面は、長辺側の第1の側面(電極4a(第1電極)を形成した側面)および第2の側面(電極4b(第2電極)を形成した側面)と、短辺側の第3の側面(電極4c(第3電極)を形成した側面)および第4の側面(電極4d(第4電極)を形成した側面)と有している。
【0025】
コイル部品1は、コイルL1,L2を構成する第1配線パターン10、および第2配線パターン20が積層体3の内部に配置されている。第1配線パターン10、および第2配線パターン20の各々は、
図4に示すように、基板であるセラミックグリーンシート3a~3dに、導電性ペースト(Niペースト)をスクリーン印刷法により印刷して配線パターンを形成する。
【0026】
セラミックグリーンシート3aには、第2配線パターン20である配線パターン20aが形成される。配線パターン20aは、セラミックグリーンシート3aの図中下側の長辺の真中から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の下側まで形成される。なお、配線パターン20aの始端に電極4bと接続するための端部21を設け、終端にビア導体56と接続する接続部56aを設けている。
【0027】
セラミックグリーンシート3bには、第1配線パターン10である配線パターン10bと第2配線パターン20である配線パターン20bとが形成される。配線パターン10bは、セラミックグリーンシート3bの図中上側の長辺の左側から図中右側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10bの始端にビア導体52と接続する接続部52bを設け、終端に電極4cと接続するための端部31を設けている。さらに、配線パターン20bは、セラミックグリーンシート3bの図中下側の長辺の左側から図中右側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン20bの始端にビア導体56と接続する接続部56bを設け、終端に電極4cと接続するための端部31を設けている。
【0028】
セラミックグリーンシート3cには、第1配線パターン10である配線パターン10cが形成される。配線パターン10cは、セラミックグリーンシート3cの図中上側の長辺の真中から各辺に沿って図中右回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の上側まで形成される。なお、配線パターン10cの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端にビア導体52と接続する接続部52cを設けている。
【0029】
セラミックグリーンシート3dには、第1配線パターン10である配線パターン10dが形成される。配線パターン10dは、セラミックグリーンシート3cに形成される配線パターン30cと同じ形状である。なお、配線パターン10dの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端にビア導体52と接続する接続部52dを設けている。配線パターン10cと配線パターン10dとは、コイルL1において配線パターンを並列接続した部分である。
【0030】
このセラミックグリーンシート3a,3bは、ビア導体56で配線パターン20aと配線パターン20bとが電気的に接続され、コイルL2を構成している。また、このセラミックグリーンシート3b~3dは、ビア導体52で配線パターン10bと配線パターン10cと配線パターン10dとが電気的に接続され、コイルL1を構成している。
【0031】
実施の形態1に係るコイル部品1では、
図4に示すようにコイルL2に比べてコイルL1を構成する配線パターンの層数を多くすることで、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくする。コイルL1を構成する配線パターンの層数が多くなるが、配線パターン10cと配線パターン10dとを並列接続させてコイルL1の抵抗値を下げる点で、
図4に示す構成は特に有効である。
【0032】
相互インダクタンスMと、コイルL1およびコイルL2のインダクタンスとの関係について説明する。相互インダクタンスMは、コイルL1およびコイルL2のそれぞれのインダクタンスをL1,L2、コイルL1とコイルL2との結合係数をkで表した場合、M=-k(L1×L2)
1/2で表される。M=-1.0nHを得ることができるコイルL1とコイルL2との組み合わせは、
図5に示すように多数存在する。なお、
図5では、結合係数k=0.5とする。
【0033】
図5に示すグラフから明らかなように、コイルL1のインダクタンスとコイルL2のインダクタンスとが同じ(例えば、L1=L2=2.0nH)とき、コイルL1のインダクタンスとコイルL2のインダクタンスとの合計(L1+L2=4.0nH)が最も小さくなる。このとき、コイルL1およびコイルL2のサイズも最も小さくできる。
【0034】
しかし、上述したようにコイルL1の側に回路部品200を接続する場合、同じ相互インダクタンスMを維持しつつ、コイルL1のインダクタンスを小さくする必要がある。例えば、コイルL1およびコイルL2の合計のインダクタンスが2倍の値(L1+L2=8.0nH)とした場合、コイルL1のインダクタンスは0.54nHまで小さくできる。
【0035】
コイルL1のインダクタンスを2.0nHから0.54nHと約4分の1にして、コイルL1の側に回路部品200を接続した場合、コンデンサC1から回路部品200に至る抵抗値を約4分の1低減できる。また、コンデンサC1から回路部品200に至るインダクタンスは、コイルL1のインダクタンスとコンデンサC1のインダクタンスとの合計で1.54nHとなり、コイルL1のインダクタンスが2.0nHの場合と比べて約半分に低減できる。回路部品200に対して単純にコンデンサC1が接続されるだけでも、等価直列インダクタンスESLの1.0nHが存在するため、コイルL1のインダクタンスとコンデンサC1のインダクタンスとの合計で1.54nHに増加しても、コンデンサC1から回路部品200への電荷供給に対するコイルL1の影響を大幅に低減できる。
【0036】
なお、コイルL1のインダクタンスを2.0nHから0.54nHと約4分の1にした場合、コイルL2のインダクタンスは2.0nHから8.46nHと約4倍になる。フィルタ回路100のコンデンサC1は、回路部品200への電荷供給の役割を果たすことができ、一方、コイルL2は、コンデンサC1に対する役割が主にノイズ抑制となるので、コイルL2のインダクタンスが大きくなることがメリットになる。
【0037】
図4に戻って、コイル部品1では、複数のセラミックグリーンシート3a~3dの各々を少なくとも1枚積層するとともに、その上下両面側に配線パターンが印刷されていないセラミックグリーンシート(ダミー層)を複数積層する。ダミー層を含め複数のセラミックグリーンシートを圧着することにより、未焼成の積層体3(セラミック素体)を形成する。形成した積層体3を焼成し、焼成した積層体3の外部に、配線パターンと導通するように銅電極を焼き付けて電極4a~4dを形成する。
【0038】
コイル部品1の積層枚数は、例えば、セラミックグリーンシート3aを1枚、セラミックグリーンシート3bを3枚、セラミックグリーンシート3c,3dを5枚としてもよい。そのため、コイル部品1は、
図6に示すように、配線パターン20aの層が1層、配線パターン10b,20bの層が3層、配線パターン10c,10dの層が5層となる。
【0039】
コイル部品1では、コイルL1を構成する第1配線パターン10、およびコイルL2を構成する第2配線パターン20の配線を形成したセラミックグリーンシートを複数積層している。そのため、コイル部品1では、第1配線パターン10および第2配線パターン20を主面方向から見てコイルL1の開口とコイルL2の開口とが少なくとも一部が重なるように配置される。コイルL1の開口とコイルL2の開口との重なり具合により、コイルL1とコイルL2との磁気結合が変動することになる。
【0040】
前述したようにコイル部品1は、金属部分の配線パターンとセラミック部分のセラミックグリーンシートとを複数積層し、加圧すること形成される。しかし、金属部分とセラミック部分とでは展延性が異なるため、加圧時に金属部分とセラミック部分との圧縮率の差で積層体3に割れが生じる恐れがある。前述したようにコイル部品1は、加圧した後に焼成が行われるので、焼成時の金属部分とセラミック部分との熱収縮率の差で積層体3に割れが生じる恐れがある。
【0041】
そこで、本実施の形態1に係るコイル部品1では、製造時に割れが生じ難くするために、第1配線パターン10のうち電極4aと接続するための端部11を設ける配線パターンの数を減らす。同様に、コイル部品1では、第2配線パターン20のうち電極4bと接続するための端部21を設ける配線パターンの数を減らしても、第1配線パターン10または第2配線パターン20のうち電極4cと接続するための端部31を設ける配線パターンの数を減らしてもよい。
【0042】
具体的に、複数の第1配線パターン10が、
図6に示すように5層の配線パターン10c,10dを含む場合、奇数層の第1配線パターン10に電極4aと電気的に接続するための端部11を設け、偶数層の第1配線パターン10に電極4aと電気的に接続するための端部11を設けない。
【0043】
また、実施の形態1に係るコイル部品1では、コイルL1に近接する積層体3の一方の主面を実装面(
図6では下側の面)とする。つまり、コイル部品1では、コイルL1を設けた側を下側にして基板に実装することで、端部11から電極4aを経て基板の電極に至るまでの距離が、端部21から電極4bを経て基板の電極に至るまでの距離より短くなる。コイル部品1において、コイルL1とコイルL2との何れのインダクタンスを小さくしても回路構成として変化はないが、実装面に対してコイルL1、コイルL2の順で積み重ねるのであれば、コイルL1のインダクタンスを小さくする方が、コイルL1から回路部品200に至る抵抗値を低減できる点で有利である。
【0044】
以上のように、実施の形態1に係るコイル部品1では、複数の積層された絶縁層からなり、互いに対向する1対の主面と前記主面間を結ぶ4つの側面とを有する積層体3と、積層体3の内部に積み重ねられた複数の配線パターンの一部で構成されるコイルL1と、コイルL1と異なる層に設けられ、複数の配線パターンの一部で構成されるコイルL2と、側面の第1面に設けられ、コイルL1の一方の端と電気的に接続する電極4aと、第1面と対向する側面の第2面に設けられ、コイルL2の一方の端と電気的に接続する電極4bと、第1面と対向しない側面の第3面に設けられ、コイルL1の他方の端およびコイルL2の他方の端と電気的に接続する電極4cと、を備える。主面の方向から視て、コイルL1の開口と前記コイルL2の開口とが少なくとも一部が重なり、電極4cは、コンデンサC1を介してグランドに接続され、コイルL1は、コイルL2に比べてインダクタンスが小さい。
【0045】
これにより、本実施の形態1に係るコイル部品1は、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスが小さいので、電極4cに接続されるコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0046】
また、コイルL1に近接する積層体3の一方の主面を実装面とすることが好ましい。これにより、コイルL1から電極4aを経て基板の電極に至るまでの距離が、コイルL2から電極4bを経て基板の電極に至るまでの距離より短くなるので、コイルL1から回路部品200に至る抵抗値を低減できる。
【0047】
さらに、コイルL1およびコイルL2のうち少なくとも一方は、複数の層にそれぞれ形成された配線パターンを並列接続した部分を有することが好ましい。これにより、複数の配線パターンを並列接続した部分を有するコイルの抵抗値を小さくすることができる。
【0048】
また、コイルL1は、コイルL2に比べて並列接続する配線パターンの層数が多いことが好ましい。これにより、コイルL1は、コイルL2に比べて抵抗値を小さくすることができる。
【0049】
実施の形態1に係るフィルタ回路100は、上記のコイル部品1と、コイル部品1のコイルL1とコイルL2との間の電極4cに接続するコンデンサC1と、を備える。これにより、フィルタ回路100は、コイルL1を介して接続される回路部品200に対してコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0050】
実施の形態1に係る電子機器は、基板に実装された回路部品200と、一方の端を回路部品200に接続するフィルタ回路100と、を備える。フィルタ回路100は、コイル部品1と、コンデンサC1と、を備える。コイル部品1は、複数の積層された絶縁層からなり、互いに対向する1対の主面と前記主面間を結ぶ4つの側面とを有する積層体3と、積層体3の内部に積み重ねられた複数の配線パターンの一部で構成されるコイルL1と、コイルL1と異なる層に設けられ、複数の配線パターンの一部で構成されるコイルL2と、側面の第1面に設けられ、コイルL1の一方の端と電気的に接続する電極4aと、第1面と対向する側面の第2面に設けられ、コイルL2の一方の端と電気的に接続する電極4bと、第1面と対向しない側面の第3面に設けられ、コイルL1の他方の端およびコイルL2の他方の端と電気的に接続する電極4cと、を備える。主面の方向から視て、コイルL1の開口とコイルL2の開口とが少なくとも一部が重なり、電極4aは、回路部品200に接続され、電極4cは、コンデンサC1を介してグランドに接続され、コイルL1は、コイルL2に比べてインダクタンスが小さい。
【0051】
これにより、本実施の形態1に係る電子機器は、コイル部品1のコイルL1が、コイルL2に比べてインダクタンスが小さいので、コイルL1を介して接続される回路部品200に対してコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0052】
<実施の形態2>
実施の形態1では、コイル部品1のコイルL1を複数層で構成することで、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくする構成を説明した。本実施の形態2では、コイルL1とコイルL2との間の電極を引き出す位置を変更して、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数を少なくしてインダクタンスおよび抵抗値を小さくする構成を説明する。
【0053】
図7は、実施の形態2に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。なお、実施の形態2に示すコイル部品では、実施の形態1に係るコイル部品1と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。また、実施の形態2に示すコイル部品は、実施の形態1に係るコイル部品1に代えて実施の形態1に係るフィルタ回路100および電子機器に適用できる。
【0054】
第1配線パターン10、および第2配線パターン20の各々は、
図7に示すように、基板であるセラミックグリーンシート3f~3hに、導電性ペースト(Niペースト)をスクリーン印刷法により印刷して配線パターンを形成する。
【0055】
セラミックグリーンシート3fには、第2配線パターン20である配線パターン20fが形成される。配線パターン20fは、セラミックグリーンシート3fの図中下側の長辺の真中から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の下側まで形成される。なお、配線パターン20fの始端に電極4bと接続するための端部21を設け、終端にビア導体56と接続する接続部56fを設けている。
【0056】
セラミックグリーンシート3gには、第2配線パターン20である配線パターン20gが形成される。配線パターン20gは、セラミックグリーンシート3gの図中下側の長辺の左側から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン20gの始端にビア導体56と接続する接続部56gを設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。
【0057】
セラミックグリーンシート3hには、第1配線パターン10である配線パターン10hが形成される。配線パターン10hは、セラミックグリーンシート3hの図中上側の長辺の真中から各辺に沿って図中右回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10hの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。
【0058】
このセラミックグリーンシート3f,3gは、ビア導体56で配線パターン20fと配線パターン20gとが電気的に接続され、コイルL2を構成している。また、このセラミックグリーンシート3hは、配線パターン10hでコイルL1を構成している。さらに、コイルL1とコイルL2との間に接続される電極を電極4cから電極4dへと引き出す位置を変更して、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数を少なくしている。
【0059】
実施の形態2に係るコイル部品1では、
図7に示すようにコイルL2に比べてコイルL1を構成する配線パターンの層数を多くすることで、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数が少ないのでコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくすることができる。なお、コイルL1とコイルL2との間に接続される電極を電極4cから電極4dへと引き出す位置を変更することでコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくすることができるが、電極4dにコンデンサC1を接続する必要があり、フィルタ回路100おいてコンデンサC1から電極4dまでの配線を調整する必要がある。
【0060】
以上のように、実施の形態2に係るコイル部品1では、コイルL1が、コイルL2に比べて配線パターンの巻き数が少ない。これにより、実施の形態2に係るコイル部品1では、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスが小さくなるので、電極4cに接続されるコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0061】
<実施の形態3>
実施の形態2では、コイルL1とコイルL2との間の電極を引き出す位置を変更して、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数を少なくする構成を説明した。実施の形態3では、配線パターンの配線幅を変更して、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくする構成を説明する。
【0062】
図8は、実施の形態3に係るコイル部品の構成を示す分解平面図である。なお、実施の形態3に示すコイル部品では、実施の形態1に係るコイル部品1と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。また、実施の形態3に示すコイル部品では、実施の形態1に係るコイル部品1に代えて実施の形態1に係るフィルタ回路100および電子機器に適用できる。
【0063】
第1配線パターン10、および第2配線パターン20の各々は、
図8に示すように、基板であるセラミックグリーンシート3j~3lに、導電性ペースト(Niペースト)をスクリーン印刷法により印刷して配線パターンを形成する。
【0064】
セラミックグリーンシート3jには、第2配線パターン20である配線パターン20jが形成される。配線パターン20jは、セラミックグリーンシート3jの図中下側の長辺の真中から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の下側まで形成される。なお、配線パターン20jの始端に電極4bと接続するための端部21を設け、終端にビア導体56と接続する接続部56jを設けている。
【0065】
セラミックグリーンシート3kには、第1配線パターン10である配線パターン10kと第2配線パターン20である配線パターン20kとが形成される。配線パターン10kは、セラミックグリーンシート3kの図中上側の長辺の左側から図中右側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10kの始端にビア導体52と接続する接続部52kを設け、終端に電極4cと接続するための端部31を設けている。さらに、配線パターン20kは、セラミックグリーンシート3kの図中下側の長辺の左側から図中右側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン20kの始端にビア導体56と接続する接続部56kを設け、終端に電極4cと接続するための端部31を設けている。配線パターン10kは、配線パターン20kに比べて配線パターンの配線幅が太い。
【0066】
セラミックグリーンシート3lには、第1配線パターン10である配線パターン10lが形成される。配線パターン10lは、セラミックグリーンシート3lの図中上側の長辺の真中から各辺に沿って図中右回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の上側まで形成される。なお、配線パターン10lの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端にビア導体52と接続する接続部52lを設けている。配線パターン10lは、配線パターン20jに比べて配線パターンの配線幅が太い。
【0067】
このセラミックグリーンシート3j,3kは、ビア導体56で配線パターン20jと配線パターン20kとが電気的に接続され、コイルL2を構成している。また、このセラミックグリーンシート3k,3lは、ビア導体52で配線パターン20kと配線パターン20lとが電気的に接続され、コイルL1を構成している。コイルL1は、コイルL2に比べて配線パターンの配線幅が太い。
【0068】
実施の形態3に係るコイル部品1では、
図8に示すようにコイルL2に比べてコイルL1を構成する配線パターンの配線幅を太くすることで、コイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくすることができる。なお、コイルL2に対してコイルL1の配線パターンの配線幅が相対的に太くなれば、コイルL2の配線パターンの配線幅を細くしても、コイルL1の配線パターンの配線幅を太くしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施の形態3に係るコイル部品1では、コイルL1が、コイルL2に比べて構成する配線パターンの配線幅が太い。これにより、実施の形態3に係るコイル部品1では、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスが小さくなるので、電極4cに接続されるコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0070】
<実施の形態4>
実施の形態2では、コイルL1とコイルL2との間の電極を引き出す位置を変更して、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数を少なくする構成を説明した。実施の形態4では、コンデンサC1と接続する配線パターンでの位置を変更して、コイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくする構成を説明する。
【0071】
実施の形態4に係るコイル部品では、実施の形態2に係るコイル部品の構成において電極4cと接続する端部31を設け、電極4cにコンデンサC1を接続する場合を第1接続の構成、電極4dにコンデンサC1を接続する場合を第2接続の構成とする。実施の形態4に示すコイル部品では、実施の形態1に係るコイル部品1と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。また、実施の形態4に示すコイル部品では、実施の形態1に係るコイル部品1に代えて実施の形態1に係るフィルタ回路100および電子機器に適用できる。
【0072】
図9は、実施の形態4に係るコイル部品の第1接続の構成を示す分解平面図である。第1配線パターン10、および第2配線パターン20の各々は、
図9に示すように、基板であるセラミックグリーンシート3n~3qに、導電性ペースト(Niペースト)をスクリーン印刷法により印刷して配線パターンを形成する。
【0073】
セラミックグリーンシート3nには、第2配線パターン20である配線パターン20nが形成される。配線パターン20nは、セラミックグリーンシート3nの図中下側の長辺の真中から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の下側まで形成される。なお、配線パターン20nの始端に電極4bと接続するための端部21を設け、終端にビア導体56と接続する接続部56nを設けている。
【0074】
電極4cにコンデンサC1を接続する第1接続の場合、セラミックグリーンシート3pには、第1配線パターン10である配線パターン10pと第2配線パターン20である配線パターン20pとが形成されることとなる。配線パターン10pは、セラミックグリーンシート3pの図中右側の短辺の真中から図中上側の長辺に沿って図中左回りに形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10pの始端に電極4cと接続するための端部31を設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。
【0075】
配線パターン20pは、セラミックグリーンシート3pの図中下側の長辺の左側から図中下側の長辺に沿って図中左回りに形成され、図中右側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン20pの始端にビア導体56と接続する接続部56pを設け、終端に電極4cと接続するための端部31を設けている。
【0076】
セラミックグリーンシート3qには、第1配線パターン10である配線パターン10qが形成される。配線パターン10qは、セラミックグリーンシート3qの図中上側の長辺の真中から各辺に沿って図中右回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10qの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。
【0077】
このセラミックグリーンシート3n,3pは、ビア導体56で配線パターン20nと配線パターン20pとが電気的に接続され、コイルL2を構成している。また、このセラミックグリーンシート3p,3qは、電極4dで配線パターン10pと配線パターン10qとが電気的に接続され、コイルL1を構成している。
【0078】
第1接続の場合、コイルL1とコイルL2との間に接続される電極は、電極4dではなく電極4cとなっているため、コイルL1とコイルL2との配線パターンの巻き数は同じである。
図10は、実施の形態4に係る第1接続のコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
図10に示すように、電極4cにコンデンサC1を接続し、電極4dを非接続(NC)とする。そのため、コイルL1は1+1=2nH、コイルL2は2nHとなり、コイルL1とコイルL2とはインダクタンスがほぼ同じになる。また、コイルL1とコイルL2の配線パターンの長さもほぼ同じになるため抵抗値もほぼ同じになる。
【0079】
一方、
図11は、実施の形態4に係るコイル部品の第2接続の構成を示す分解平面図である。第1配線パターン10、および第2配線パターン20の各々は、
図11に示すように、基板であるセラミックグリーンシート3n~3qに、導電性ペースト(Niペースト)をスクリーン印刷法により印刷して配線パターンを形成する。
【0080】
セラミックグリーンシート3nには、第2配線パターン20である配線パターン20nが形成される。配線パターン20nは、セラミックグリーンシート3nの図中下側の長辺の真中から各辺に沿って図中左回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の下側まで形成される。なお、配線パターン20nの始端に電極4bと接続するための端部21を設け、終端にビア導体56と接続する接続部56nを設けている。
【0081】
電極4dにコンデンサC1を接続する第2接続の場合、セラミックグリーンシート3pには、第2配線パターン20である配線パターン20pが形成されることとなる。配線パターン20pは、セラミックグリーンシート3pの図中下側の長辺の左側から各辺に沿って図中左回りに形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン20pの始端にビア導体56と接続する接続部56pを設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。配線パターン20pの途中には、電極4cと接続するための端部31を設けている。
【0082】
セラミックグリーンシート3qには、第1配線パターン10である配線パターン10qが形成される。配線パターン10qは、セラミックグリーンシート3qの図中上側の長辺の真中から各辺に沿って図中右回りに1周するように形成され、図中左側の短辺の真中まで形成される。なお、配線パターン10qの始端に電極4aと接続するための端部11を設け、終端に電極4dと接続するための端部41を設けている。
【0083】
このセラミックグリーンシート3n,3pは、ビア導体56で配線パターン20nと配線パターン20pとが電気的に接続され、コイルL2を構成している。また、このセラミックグリーンシート3qは、配線パターン10qでコイルL1を構成している。
【0084】
第2接続の場合、コイルL1とコイルL2との間に接続される電極は、電極4cではなく電極4dとなっているため、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの巻き数は少なくなる。
図12は、実施の形態4に係る第2接続のコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
図12に示すように、電極4dにコンデンサC1を接続し、電極4cを非接続(NC)とする。そのため、コイルL1は1nH、コイルL2は2+1=3nHとなり、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスが小さくなる。また、コイルL2に比べてコイルL1の配線パターンの長さが短くなるため抵抗値も小さくなる。
【0085】
以上のように、実施の形態4に係るコイル部品1では、第3面と対向する側面の第4面に設けられ、コイルL1およびコイルL2と電気的に接続する電極4dを、さらに備える。電極4cおよび電極4dのいずれか一方がコンデンサC1を介してグランドに接続される。
【0086】
これにより、本実施の形態4に係るコイル部品1は、電極4cにコンデンサC1を接続するか、電極4dにコンデンサC1を接続するかで、コイルL2に対するコイルL1のインダクタンスを変更することができる。特に、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスを小さくなる接続(第2接続)の場合、電極4cに接続されるコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0087】
実施の形態4に係るフィルタ回路100は、上記のコイル部品1と、コイル部品1のコイルL1とコイルL2との間の電極4dに接続するコンデンサC1と、を備える。これにより、フィルタ回路100は、コイルL1を介して接続される回路部品200に対してコンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0088】
(変形例)
(a) これまで説明したコイル部品では、コイルL1を構成する配線パターンの積層方向の間隔と、コイルL2を構成する配線パターンの積層方向の間隔とはほぼ同じであった。しかし、配線パターンの積層方向の間隔は、コイルL1とコイルL2とで同じである場合に限定されない。
図13は、変形例に係るコイル部品の断面図である。
図13に示すように、コイルL1を構成する第1配線パターン10の積層方向の間隔は、コイルL2を構成する第2配線パターン20の積層方向の間隔に比べて広い。
【0089】
コイルL1は、コイルL2に比べて配線パターンの積層方向の間隔を広くすることで、コイルL2に比べてインダクタンスおよび抵抗値を小さくすることができる。そのため、
図13に示すコイルL1に回路部品200を接続した場合、コンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。
【0090】
(b) これまで説明したコイル部品では、コイルL2に比べてコイルL1のインダクタンスおよび抵抗値を小さくしていた。しかし、コイルL1の上層に積層されるコイルL2が、コイルL1に比べてインダクタンスおよび抵抗値を小さくしてもよい。つまり、コイルL2が回路部品に接続される第1コイルであってもよい。
【0091】
図14は、変形例に電子機器の構成を示す概略図である。
図14に示す電子機器は、基板(図示せず)に実装された回路部品200と、一方の端を回路部品200に接続するフィルタ回路100aと、を含む。
【0092】
回路部品200は、例えばICなどの集積回路で、一時的に消費電力が増加したときにフィルタ回路100aに含まれるコンデンサ(キャパシタ)に蓄えられた電荷を利用する。フィルタ回路100aは、コイル部品1aと、コンデンサC1とを有しており、コイルL2の電極4bに回路部品200が接続されている。
【0093】
コイル部品1aは、
図3で示したように、コイルL1の上層にコイルL2が積層される構成であるが、コイルL1に比べてコイルL2のインダクタンスおよび抵抗値を小さくしてある。そのため、
図14に示すように、コイル部品1aのコイルL2に回路部品200を接続した場合、コンデンサC1から供給される電荷の立ち上がりを改善できる。なお、
図14に示す変形例では、コイルL2が第1コイルとして用いられている。
【0094】
また、これまで説明したコイル部品1では、複数枚積層されたセラミック層の積層体3(セラミック素体)で構成されていると説明したが、誘電体の多層構造であればよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1,1a コイル部品、4a,4b,4c 電極、10,20 配線パターン、52,56 ビア導体、100,100a フィルタ回路、200 回路、C1 コンデンサ。
【要約】
本開示の電子機器は、基板に実装されたICと、一方の端をICに接続するフィルタ回路と、を備える。フィルタ回路は、コイル部品と、コンデンサ(C1)と、を備える。コイル部品は、積層体(3)と、積層体(3)の内部に積み重ねられた複数の配線パターンの一部で構成されるコイル(L1)と、コイル(L1)と異なる層に設けられ、複数の配線パターンの一部で構成されるコイル(L2)と、側面に設けられた電極(4a)、電極(4b)、電極(4c)と、を備える。主面の方向から視て、コイル(L1)の開口とコイル(L2)の開口とが少なくとも一部が重なる。電極(4c)は、コンデンサ(C1)を介してグランドに接続され、コイル(L1)は、コイル(L2)に比べてインダクタンスが小さい。