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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】液状ラクターゼ組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/38 20060101AFI20220720BHJP
   C12N 9/96 20060101ALI20220720BHJP
   C12P 19/02 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
C12N9/38
C12N9/96
C12P19/02
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187061
(22)【出願日】2019-10-10
(62)【分割の表示】P 2016552605の分割
【原出願日】2015-03-05
(65)【公開番号】P2020022477
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-11-11
(31)【優先権主張番号】14157897.1
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョリンク, フェナ ヨハンナ カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】スハープ, アルバート
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-034116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00- 9/99
C12Q 1/00- 3/00
A23C 1/00-23/00
C12P 1/00-41/00
A23L 2/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1000、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、
さらに13~19重量%のNa-L-乳酸塩および5~15重量%のNaClを含み、
前記水性液状ラクターゼ調製物に含まれる成分の各々の濃度は、水分活性 Aw が多くとも0.82であるような濃度であり、
グリセロールを含まない、水性液状ラクターゼ調製物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な発明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、液状ラクターゼ調製物、その製造方法、乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳を製造する方法、ラクターゼ調製物を含む乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳および乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳の製造における前記調製物の使用に関する。
【0002】
[背景技術]
ラクターゼもしくはβ-ガラクトシダーゼ(E.C:3.2.1.23)は、ラクトース(二糖)からその成分の単糖類であるグルコースおよびガラクトースへの加水分解を触媒する酵素である。ラクトースは、酪農製品中および詳細には、牛乳、スキムミルク、クリーム、ヨーグルト、アイスクリームおよび他の乳製品中に存在する。
【0003】
年少者やラクトース耐性である人々では、ラクトースは年少者の小腸刷子縁において「ラクターゼ・フロリジン・ヒドラーゼ」(LPH)によりガラクトースおよびグルコースに加水分解される。LPHは、ヒトにおいては単一ラクターゼ遺伝子であるLCTによってコードされるが、成人におけるラクトースを消化する能力が遺伝子発現におけるシス作用性突然変異に起因し、優性遺伝することが見いだされている。ラクトースは、単糖類(すなわち、グルコースおよびガラクトース)とは対照的に、小腸内では吸収が不良である。LCT遺伝子内で突然変異を有していない人々はラクトースを消化および吸収することがなく、良好に吸収されないラクトースは腸内腔内へ浸透圧により流体を引き込み、軟便をもたらすことになる。さらに、ラクトースはラクトースを代謝する結腸内の腸内細菌のための基質であり、揮発性脂肪酸ならびに二酸化炭素、水素およびメタンなどのガスを産生し、鼓腸や痙攣を引き起こす。現在では、LCT遺伝子内の突然変異を有しているのは世界人口の25~30%に過ぎないが、成人になれば小腸内でラクトースを消化できるようになると推測されている。世界人口の残りはラクトース消化に関して様々な困難を有しており、これは酪農製品の摂取減少をもたらすことが多い。そのような個人は、「ラクトース不耐症」と呼ばれる。酪農製品は、数種のビタミン類、タンパク質およびミネラル類が存在するために健康に良い食品にとって重要な成分であるため、これは望ましくない状態である。
【0004】
ラクターゼは、微生物を含む大きな多様性もしくは生物について報告されており、それらから単離されてきた。ラクターゼは、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)およびバシラス属(Bacillus)のような微生物の細胞内成分であることが多い。クルイベロミセス属、特にK.フラジリス(K.fragilis)、K.マルキシアヌス(K.marxianus)およびK.ラクティス(K.lactis)ならびに他の酵母類、例えばカンジダ属(Candida)、トルラ属(Torula)およびトルロプシス属(Torulopsis)は酵母ラクターゼの一般的起源であるが、他方B.コアギュランス(B.coagulans)またはB.サーキュランス(B.circulans)は細菌性ラクターゼの周知の起源である。これらの生物に由来する数種の商業的ラクターゼ製剤、例えばMaxilact(K.ラクティス)由来、DSM社(オランダ国デルフト)製)を入手できる。これらのラクターゼは全部が、pH=6~pH=8の間の最適pHを有するので、いわゆる中性ラクターゼである。例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)などの数種の生物は細胞外ラクターゼを生成することができ、米国特許第5,736,374号明細書は、アスペルギルス・オリザエによって生成されたそのようなラクターゼの例について記載している。最適pHおよび最適温度のようなラクターゼの酵素特性は種間で変動する。しかし一般に、排泄されたラクターゼは、pH=3.5~pH=5.0のより低い最適pHを示す(酸性ラクターゼ);細胞内ラクターゼは、通例は中性ラクターゼについてはpH=6.0~pH=7.5の範囲内のより高い最適pHを示すが、これらの一般原則の例外が存在する。
【0005】
現在、ラクターゼは液体として調製され、市販されている。液状調製物を製造する場合には2つの要素、つまり微生物安定性および酵素安定性が極めて重要である。微生物安定性は、液状調製物が微生物を全く含まないままで存在する、または少なくともその増殖が予防もしくは緩徐化されることを意味する。
【0006】
現在は、数種の液状ラクターゼ製品が市販されている。これらの例(中性ラクターゼのみ)は、Novozymes社によって販売されているLactozym Pure 6500L;Chr.Hansen社によって販売されているHa-Lactase 5200;DuPont-Danisco社によって販売されているGODO YNL-2;およびどちらもDSM Food Specialties社によって販売されているMaxilact LGX 5000およびLGiである。上記の全製品および現在市販されている実際の全液状ラクターゼ調製物は、およそ50%のグリセロールを含有している。グリセロールは、優れた微生物安定化および酵素安定化のどちらも備えることが見いだされている。グリセロールの量は、水分活性(Aw)が多くとも0.82であるような量である。これは微生物増殖を防止する。さらに、グリセロールは、さらに酵素安定性も備える。市販のラクターゼ液の典型的な強度は、約1000、2000または5000NLU/gである。用語NLU/gは、最終製品1グラム当たりのラクターゼ活性の量を意味する。
【0007】
ラクターゼの重要な産業上の用途は、ラクトース不耐症の人のためのラクトース加水分解乳製品の製造にある。そのような加水分解乳製品には、低温殺菌乳、UHT乳、例えばタンパク質加水分解などの中間加工処理工程を用いて、または用いずに元々の構成要素の全部もしくは一部から再構成された牛乳ならびに乳児用調製粉乳が含まれる。
【0008】
ラクターゼの特に興味深い用途は乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳である。乳児用調製粉乳は、哺乳瓶またはコップで授乳するために通常は(水と混合する)粉末または(水を追加して、もしくは追加せずに)液体から調製される、生後12カ月未満の乳幼児に与えるために設計および市販されている加工食品である。連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)は、乳児用調製粉乳を「ヒトの母乳に代わる完全または部分人工乳としての母乳の模擬もしくはその安定性の理由によって乳児用食品専用の特別用途食品であることを意図する、または意味する食品」であると規定している。最も一般的に使用される乳児用調製粉乳はタンパク質源としての精製牛乳由来乳清およびカゼイン、脂肪源としての植物油のブレンド、炭水化物源としてのラクトース、ビタミン―ミネラルミックスならびに製造業者に依存するその他の成分を含有している。
【0009】
現在入手可能なラクターゼ調製物に関する問題は、数多くの国々では乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳へのグリセロールの添加またはキャリーオーバーが法律によって禁じられている点である。これは、全てがグリセロールを含有している現在のラクターゼ調製物を乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳を製造するためには不適合にさせる。このため、乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳に好適である、実質的にグリセロールを含んでいない安定性の液状ラクターゼ調製物に対する必要がある。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳に使用するために好適である、グリセロールを含んでいない安定性の水性液状ラクターゼ調製物を提供する。安定性のラクターゼ調製物は、少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含むが、好ましくはこれら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である。そのような調製物中の任意選択的成分の1つの例は糖である。そのような調製物中の任意選択的成分のまた別の例は、塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせである。そのような調製物中の組み合わせの任意選択的成分の1つの例は、塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせならびに糖である。これらの調製物は、インベルターゼを含まないラクターゼを使用した場合に特に好適であり、安定剤としてのスクロースの使用を可能にする。本発明はさらに、本発明の液状ラクターゼ調製物を製造する方法、本発明の液状ラクターゼ調製物を含む(例えば、顆粒の粉末としての)乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳、上記の乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳を製造する方法ならびに乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳の製造における上記調製物の使用も提供する。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本明細書で使用する用語「1つの」は、他に特に規定しない限り「少なくとも1つの」であると規定する。名詞(例えば、化合物、細胞など)について単数形で言及する場合、複数形も含まれることが意図されている。
【0012】
第一態様では、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、好ましくはこれら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。好ましくは、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、これら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。
【0013】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに1種の糖を含み、好ましくはこれら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。好ましくは、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに1種の糖を含み、これら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。
【0014】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含み、好ましくはこれら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。好ましくは、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含み、これら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。
【0015】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに1種の糖を含み、さらに塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含み、好ましくはこれら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。好ましくは、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含み、さらに1種の糖を含み、さらに塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含み、これら成分の各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である水性液状ラクターゼ調製物を提供する。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、酵素安定性の液体酵素調製物は、グリセロールを使用せずに実現可能であることを見いだした。好ましくは、上記液体酵素調製物は、さらに微生物安定性でもある。本発明者らは、少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩(好ましくはナトリウム-L-乳酸塩)またはそれらの組み合わせおよび任意選択的に糖および/または任意選択的に塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせおよび任意選択的に乳清タンパク質を含む、および多くとも0.82の水分活性を有する、液体として調製されたラクターゼが優れていることを見いだした。さらに、微生物安定性も同様に優れていた。これは、ラクターゼ自体はそもそも余り安定性ではないので、なおさら驚くべきことである。
【0017】
酵素安定性は、酵素の活性が減少する速度についての尺度である。微生物安定性は、組成物中で微生物が増殖および成長できる速度についての尺度である。
【0018】
本発明のラクターゼ調製物は、好ましくは、乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳中で使用するために好適である。つまり、本ラクターゼ調製物は、乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳を製造する方法において使用できる。このために、本発明のラクターゼ調製物は、実質的にポリオールもしくはジオールを含んでおらず、より好ましくはグリセロールおよび/またはソルビトールを含んでいない。グリセロールの量、好ましくはグリセロールおよびソルビトールの量は、好ましくは45重量%未満、40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、30重量%未満、25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、15重量%未満、いっそうより好ましくは10重量%未満、5重量%未満である。最も好ましくは、ラクターゼは、グリセロールまたは任意の他のポリオールもしくはジオールを含んでいない。
【0019】
本発明のラクターゼ調製物は、好ましくは、例えばソルビン酸塩および/または安息香酸塩および/またはパラベン(パラヒドロキシ安息香酸塩のアルキルエステル)などの化合物(保存料)もまた含んでいない。
【0020】
本発明のラクターゼ調製物の成分(すなわち、例えばナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩、糖、塩化ナトリウムもしくはカリウム)は、水分活性Aが多くとも0.82であるような量で加えられる。個々の成分の水分活性は、当業者であれば公知であり、ハンドブックに記載されている。当業者であれば、この調製物中の成分の量は、水分活性が多くとも0.82のままであるように変動させたり入れ替えたりできることを理解するであろう。これらの成分の組み合わせの水分活性への寄与は、個別成分の寄与の合計、つまり作用は累積的である。本明細書で使用する「水分活性」は、25℃で測定した数値を表す。相当に低い水分活性は、所望の微生物安定性を達成するために寄与できる。本特許出願の状況において、用語「水分活性」は、グリセロールまたは任意の他のポリオールもしくはジオールを全く含まない、または少ししか含まない貯蔵安定性のラクターゼ調製物を調製するために使用される。
【0021】
用語「水性液状ラクターゼ調製物」は、水を含む任意の組成物もしくは液体、例えば、少なくとも20重量%の水、例えば少なくとも30もしくは40重量%の水を含む。
【0022】
本発明のラクターゼ調製物(またはラクターゼ製剤;これらの用語は本明細書では互換的に使用される)は、少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含む。そこでラクターゼ調製物は、少なくとも20重量%のナトリウム-L-乳酸塩もしくは少なくとも20重量%のカルシウム-L-乳酸塩もしくは少なくとも20重量%のカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせ、例えば少なくとも20重量%のナトリウム-L-乳酸塩およびカルシウム-L-乳酸塩または少なくとも20重量%のナトリウム-L-乳酸塩およびカリウム-L-乳酸塩または少なくとも20重量%のカルシウム-L-乳酸塩およびカリウム-L-乳酸塩または少なくとも20重量%のナトリウム-L-乳酸塩およびカルシウム-L-乳酸塩およびカリウム-L-乳酸塩を含むことができる。乳酸塩の組み合わせの場合は、「少なくとも20重量%」の特徴は、個々のL-乳酸塩の結合濃度を意味する。
【0023】
乳酸ナトリウムは、乳酸のナトリウム塩である。乳酸カルシウムおよび乳酸カリウムは、各々乳酸のカルシウム塩およびカリウム塩である。一般に、たとえば乳酸ナトリウム、カルシウムおよびカリウムなどの乳酸塩は、乳酸の中和から引き出される塩であり、商業的に最も多く使用されている乳酸は、例えばコーンスターチ、ジャガイモもしくは糖蜜糖またはタピオカなどの酪農製品を含まない製品から発酵させられる。しかし一部の乳酸は、例えば乳清やラクトースなどの酪農製品から発酵させられる。乳性は、その4.8%が固体ラクトースである6.5%の固体から構成されている。廃棄乳清は、典型的には特定の酪農製品の製造中に乳清自体が廃棄物として生成された場合に乳酸を製造するために使用される。
【0024】
乳酸ナトリウム、カルシウムもしくはカリウムは、D形、L形またはDL形で存在することができる。好ましくは、L形が排他的に使用される。しかし、ナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩についての言及は、微量の例えばナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-D(またはDL)-乳酸塩の存在を排除しない。微量のナトリウム、カルシウムもしくはカリウムのD形は、全乳酸塩の5%以下、好ましくはL形のストック中に存在するD形の全乳酸塩の3%以下の量である。好ましくは、使用されるL-乳酸塩は、ナトリウム-L-乳酸塩である。
【0025】
本発明のラクターゼ調製物は、ラクターゼおよび少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせの他に、さらに1種の糖を含むことができる。好ましくは、上記の糖は、スクロース、フルクトース、グルコースもしくはラクトースまたはそれらの組み合わせであるが、より好ましくは、上記の糖はスクロースである。使用されるL-乳酸塩および糖の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるように選択されなければならない。当業者であれば、何の過度の負担も伴わずに好適な濃度を決定できる。フルクトースは、フォローアップミルクまたは幼児用調製粉乳に使用されるラクターゼ調製物のためにのみ使用される。
【0026】
本発明のラクターゼ調製物は、ラクターゼおよび少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせの他に、さらに塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、各濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるように選択される。当業者であれば、何の過度の負担も伴わずに好適な濃度を決定できる。
【0027】
本発明のラクターゼ調製物は、さらにタンパク質、好ましくは乳清タンパク質を含むことができる。液状調製物中の乳清タンパク質の量は、好ましくは、β-ラクトグロブリンとして測定して1~15g/L、より好ましくは3~12g/L、より好ましくは4~6g/Lである。
【0028】
本調製物中のラクターゼは、好ましくは中性ラクターゼである。本発明の調製物中のラクターゼ、好ましくは中性ラクターゼの濃度は、500~15000NLU/gのいずれかであってよく、典型的には1000、2000または5000NLU/gである。中性ラクターゼは好ましくは、pH6~9、好ましくはpH7~8またはより好ましくはpH6.5~7.5で活性である、またはその最適活性を有する。
【0029】
ラクターゼ活性は、FCC(sixth ed,2008,p1124-1126:Lactase(neutral)β-galactosidase activity)に記載された手順にしたがって、中性ラクターゼ単位(NLU)として基質としてのo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)を使用して決定される。
【0030】
本発明の調製物中のラクターゼは、好ましくは細胞内生成中性ラクターゼであり、その場合には中性ラクターゼは当業者には公知の方法によってその宿主細胞から抽出される。
【0031】
中性ラクターゼは、微生物を含む大きな多様性もしくは生物について報告されており、それらから単離されてきた。ラクターゼは、クルイベロミセス属およびバシラス属のような微生物の細胞内成分であることが多い。クルイベロミセス属、特にK.フラジリスおよびK.ラクティスならびに他の酵母類、例えばカンジダ属、トルラ属およびトルロプシス属は酵母ラクターゼの一般的起源であるが、他方B.コアギュランス、B.サーキュランスまたは乳酸菌は細菌性ラクターゼの周知の起源である。これらの生物に由来する数種の商業的ラクターゼ調製物、例えばMaxilact(登録商標)(K.ラクティス)由来、DSM社(オランダ国デルフト)製)を入手できる。好ましくは、本発明のラクターゼ調製物は、中性クルイベロミセス・ラクティス由来ラクターゼおよびより好ましくは中性K.ラクティス由来ラクターゼを含む。
【0032】
本発明の調製物中のラクターゼは、例えばK.ラクティスからの任意選択的濃縮抽出物として入手することができる。好ましくは、そのような抽出物は、例えば固体を除去するために遠心分離または濾過による、固液分離工程を受けている。そのような抽出物は、酵母ならびに発酵培地の残余物からの中性成分を含有している場合がある。そのような成分の例は、核酸、タンパク質、残留糖、オリゴ糖、内因性酵素、塩、ミネラル類、細胞内成分、イオン、およびヌクレオチドまたは他の成分である。これらの成分は、ある程度は、最後に本発明の調製物中に達することになる。例えば、5000NLU/gのラクターゼ調製物中では、ラクターゼ以外のタンパク質の量は、組成物の総重量に基づくと典型的には0.1~10重量%であり、1~5または1~4、2~3重量%である可能性がより高い。そのような調製物中の塩、灰分、糖類、核酸などの量は、典型的には0.5~4重量%である。
【0033】
または、ラクターゼは、酸性ラクターゼ、すなわち最適pHが3.5~5.0の範囲内にあるラクターゼであってよい。
【0034】
曖昧さを避けるために、本明細書で言及した例えばナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩または1種の糖または塩化ナトリウムもしくはカリウム(または何らかの他の添加された成分)の量は、添加された成分の量を意味し、上述したラクターゼ抽出物中に存在する成分からの可能性のあるキャリーオーバーを含んでいない。
【0035】
さらに、水分活性Aは、使用されたバッチに依存してわずかに変動する可能性があるラクターゼ溶液(例えば、ラクターゼ抽出物または精製ラクターゼ製剤)の水分活性もさらに考慮に入れている。
【0036】
本発明の調製物中のラクターゼは、濃縮(非精製)ラクターゼであってよい、または精製されていてもよい。濃縮(非精製)ラクターゼは、宿主細胞から酵素を遊離させる工程、例えば濾過もしくは遠心分離によって固体を除去する工程、および例えば限外濾過によって液相(ラクターゼ)を濃縮する工程によって入手できる。または、ラクターゼは、例えばクロマトグラフィーを使用する工程によって精製される。
【0037】
本発明の液状ラクターゼ調製物中の糖は、例えばフルクトースもしくはグルコースなどの単糖類;例えばラクトースもしくはスクロースまたはオリゴ糖などの二糖類を含むことができる。好ましい糖類は水溶性である。
【0038】
本発明のラクターゼ調製物は、好ましくは実質的にインベルターゼを含んでいない。インベルターゼ[EC3.2.1.26]は、スクロースの加水分解を触媒してグルコースの1つの単量体およびフルクトースの1つの単量体を生成する酵素である。結果として生じたフルクトースおよびグルコースの混合物は転化糖と呼ばれる。市販のラクターゼは、微量のインベルターゼを含有することが多い。本発明者らは、スクロースがラクターゼの酵素安定性に関して満足できる結果を生じさせないことが多いことを見いだした。本発明者らは、インベルターゼの存在がこの問題に関係する可能性があると推測した。本発明者らはさらに、グルコースが安定剤としては他の糖類より非効率であり、これはおそらくスクロースの不十分な安定化作用についての説明であると考えられることも見いだした。実際に、本発明者らは、インベルターゼを含まないラクターゼを本発明の調製物中に使用した場合に、スクロースが酵素安定性にとって効果的な安定剤であることを見いだした。そこで、1つの好ましい実施形態では、本発明の調製物は、スクロースを含み、実質的にインベルターゼを含んでいない。
【0039】
上述のように、本発明は、ラクターゼを含む水性液状ラクターゼ調製物であって、さらに少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含む水性液状ラクターゼ調製物を提供する。そのような調製物は、任意選択的に、
- 1種の糖;または
- 塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせ;または
- 塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせならびに1種の糖を含むことができるが、
好ましくはこれらの成分各々の濃度は、水分活性Aが多くとも0.82であるような濃度である。
【0040】
1つの好適なラクターゼ調製物は、少なくとも20重量%、21重量%、22重量%、23%、24%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%または35重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩(好ましくはナトリウム-L-乳酸塩)またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、そのようなラクターゼ調製物は、500~15000NLU/gのラクターゼを含む。
【0041】
本発明のラクターゼ調製物は、本質的にラクターゼおよびナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩(好ましくはナトリウム-L-乳酸塩)またはそれらの組み合わせからなってよい。または、ラクターゼ調製物は、(i)ラクターゼ、(ii)少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせ、および(iii)1種の糖を含んでいてよい。好ましくは、上記の糖は、スクロース、フルクトース、グルコースもしくはラクトースまたはそれらの組み合わせであるが、より好ましくは上記の糖は、スクロースである。
【0042】
または、ラクターゼ調製物は、(i)ラクターゼ、(ii)少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせ、および(iii)塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含んでいてよい。
【0043】
または、ラクターゼ調製物は、(i)ラクターゼ、(ii)少なくとも20重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせ、および(iii)1種の糖ならびに(iv)塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせを含んでいてよい。
【0044】
全ての場合に、個別の成分の濃度は、最終水分活性Aが多くとも0.82であるように選択される。
【0045】
本発明のラクターゼ調製物のpHは、pH6~9、好ましくはpH7~8.5、好ましくはpH7~8の範囲内である。
【0046】
1つの好適なラクターゼ調製物は、1000、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%または35重量%のNa-L-乳酸塩、好ましくは5000NLU/gのラクターゼおよび30重量%のNa-L-乳酸塩を含む。
【0047】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、30重量%のNa-L-乳酸塩および乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
【0048】
また別の好適なラクターゼ調製物は、1000、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%または15重量%のNaClおよび35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%または45重量%のスクロース、好ましくは5000NLU/gのラクターゼ、10重量%のNaClならびに40重量%のスクロースを含む。
【0049】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、10重量%のNaCl、40重量%のスクロースおよび乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
【0050】
また別の好適なラクターゼ調製物は、1000、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%または15重量%のNaClおよび13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%もしくは23重量%のNa-L-乳酸塩、好ましくは5000NLU/gのラクターゼ、10重量%のNaClならびに18重量%のNa-L-乳酸塩を含む。
【0051】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、10重量%のNaCl、18重量%のNa-L-乳酸塩および乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
【0052】
また別の好適なラクターゼ調製物は、1000、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%または25重量%のフルクトースおよび17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%もしくは27重量%のNa-L-乳酸塩、好ましくは5000NLU/gのラクターゼ、20重量%のフルクトースならびに22重量%のNa-L-乳酸塩を含む。
【0053】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、20重量%のフルクトース、22重量%のNa-L-乳酸塩および乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
【0054】
また別の好適なラクターゼ調製物は、100、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%または30重量%のスクロースおよび15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%もしくは25重量%のNa-L-乳酸塩、好ましくは5000NLU/gのラクターゼ、25重量%のスクロースならびに20重量%のNa-L-乳酸塩を含む。
【0055】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、25重量%のスクロース、20重量%のNa-L-乳酸塩および乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
【0056】
また別の好適なラクターゼ調製物は、100、2000もしくは5000NLU/gのラクターゼおよび15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%または25重量%のフルクトースおよび15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%もしくは25重量%のスクロースを含む。
【0057】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、5000NLU/gのラクターゼ、20重量%のスクロース、20重量%のフルクトースおよび乳清タンパク質(β-ラクトグロブリンとして測定して、5~10g/L、好ましくは5g/L)を含む。
好ましい組成物の幾つかのまた別の例について記載する:
【0058】
1つの好ましいラクターゼ調製物は、500~8000NLU/gのラクターゼおよび少なくとも28、29もしくは30重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせ、好ましくは少なくとも31重量%もしくは32重量%もしくは32.5重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせを含む。
【0059】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、500~8000NLU/gのラクターゼおよび少なくとも28、29もしくは30重量%のナトリウム-L-乳酸塩、好ましくは少なくとも31重量%もしくは32重量%もしくは32.5重量%のナトリウム-L-乳酸塩を含む。
【0060】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、500~8000NLU/gのラクターゼおよび少なくとも25重量%のナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせならびに0.01~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~2重量%の範囲内の塩化ナトリウムもしくはカリウムを含む。
【0061】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、500~8000NLU/gのラクターゼおよび少なくとも25重量%のナトリウム-L-乳酸塩ならびに0.01~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~2重量%の範囲内の塩化ナトリウムもしくはカリウムを含む。
【0062】
また別の好ましいラクターゼ調製物は、500~8000NLU/gのラクターゼおよび少なくとも25重量%のナトリウム-L-乳酸塩ならびに0.01~3重量%、好ましくは0.01~2重量%の範囲内の塩化カリウムを含む。
【0063】
本発明の調製物は、酵素安定性であり、好ましくは微生物および酵素安定性である。つまり、2~8℃(例えば4℃)での2カ月間の保管後に調製物中の残留酵素活性は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、いっそうより好ましくは少なくとも99%である。同様に、微生物安定性は、全細菌数は、2~8℃(例えば4℃)での2カ月間の保管後に好ましくは1000CFU(コロニー形成単位)未満、より好ましくは500未満、より好ましくは300未満、いっそうより好ましくは200未満、最も好ましくは100CFU/mL未満である。
【0064】
本発明の組成物の微生物特性は、明確に規定された標準手技を使用して、一般細菌数、酵母数および糸状菌数によって表示することができる。例えば、一般細菌数は、1mL中に≦100CFU(コロニー形成単位)であってよく、酵母数は1mL中に≦10CFUであってよく、糸状菌数は1mL中に≦10CFUであってよい。組成物は使用前には保管されていることが多いので、細菌数、酵母数および糸状菌数は少なくとも2カ月間にわたり所定の境界値未満のままであるのが望ましい。
【0065】
本明細書で使用する酵母数および糸状菌数は、NEN-ISO21527-2を遵守して決定される。
【0066】
また別の態様では、本発明は、本発明の液状ラクターゼ調製物を製造する方法であって、ラクターゼ、ナトリウム、カルシウムもしくはカリウム-L-乳酸塩またはそれらの組み合わせおよび任意選択的に糖、および/または任意選択的に塩化ナトリウムもしくはカリウムまたはそれらの組み合わせ、および/または水を添加する工程、および任意選択的に混合する工程を含む方法を提供する。上記の方法におけるラクターゼは、任意選択的に濃縮された発酵ブロス、例えばK.ラクティスであってよい、またはそれから(細胞を溶解させた後に)入手されてよい。または、ラクターゼは、精製ラクターゼ、例えばクロマトグラフィーによって精製されたラクターゼであってよい。ラクターゼおよび他の成分を添加する順序は、重要ではない。本方法は、透明溶液を得るための混合する工程を含むことができる。
【0067】
また別の態様では、本発明は、本発明の液状ラクターゼ調製物または上述の本発明の方法によって製造されたラクターゼ組成物を含む乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳を提供する。上記の乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳は、好ましくは、例えば顆粒の粉末形にある乾燥調製物である。本発明の乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳中のラクトースの量は、全てが乳児用調製粉乳、フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳の全重量に基づいて、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、いっそうより好ましくは0.1重量%未満である。乳児用調製粉乳は、生後12カ月未満の乳幼児に与えるために設計および市販されている加工食品である。フォローアップミルクもしくは幼児用調製粉乳は、生後6カ月~2歳用に販売されている。
【0068】
さらにまた別の態様では、本発明は、例えば本発明の乳児用調製粉乳などの乳児用調製粉乳を製造する方法であって、液状ラクターゼ調製物を濃縮乳および任意選択的に他の成分、例えばミネラル類、ビタミン類および脂肪に添加する工程;混合および/またはホモジナイズする工程;蒸発させる工程;およびスプレー乾燥する工程を含む方法を提供する。成分を添加する順序は重要ではない。例えば、本方法は、ラクターゼ調製物がそれに例えばミネラル類、ビタミン類および脂肪が既に添加されている(液状)濃縮乳に添加されるように実施されてよい。または、そのような他の成分は、ラクターゼ調製物を添加する工程の後に添加される。また別の実施形態では、本ラクターゼ調製物が他の成分に添加され、その後にこの混合物が濃縮乳に添加される。混合、ホモジナイゼーション、スプレー乾燥および造粒は、全部が当分野において公知の標準方法にしたがって実施される。
【0069】
さらに別の態様では、本発明は、乳児用調製粉乳の製造における本発明の液状ラクターゼ調製物の使用を提供する。
【0070】
以下では、下記の実施例を参照しながら、しかしそれらに限定せずに本発明について説明する。
【0071】
[実施例]
[実施例1 32.5重量%のNa-乳酸塩を含むラクターゼ調製物]
酵母クルイベロミセス・ラクティスから抽出された濃縮ラクターゼは、先行技術において記載された方法(例えば、Rodrigues Pinho and Lopes Passos(2011)Journal of Food Biochemistry 35,323-336)または以前に記載されたクルイベロミセス属からラクターゼを抽出および濃縮するための任意の他の方法を使用して入手することができる。約14000NLU/gの活性を備える280グラムのこの濃縮(非精製)ラクターゼに、520gのNa-L-乳酸塩(50重量%のストック液)を添加した。これは、4950NLU/gの活性、7.0のpHおよび0.815の水分活性を備える32.5重量%のNa-L-乳酸塩調製物を生じさせた。pH測定は、超高品質(UHQ)水中の1%のサンプル液を使用して実施した。水分活性は、Aw値が安定性になるまで、25℃でサンプルの上方で相対湿度を測定することによって測定した。Aw値は、4分間にわたり>0.001Awの変化が検出されなければ安定性であると見なされる。Aw値は、標準装置を用いて決定する。
【0072】
およそ調製物1グラムのサンプルは、各2、4および8週間にわたり5℃で保管した。試験からサンプルを取り出した後、それらを視覚的に観察し、活性について決定した。
【0073】
8週間後、調製物の残留酵素活性は94%であった。
【0074】
【表1】
【0075】
[実施例2 20重量%のNa-乳酸塩+25重量%のスクロースを含むラクターゼ調製物]
約14000NLU/gの活性を備える280グラムの濃縮ラクターゼ(濃縮(非精製)ラクターゼ)に、320gのNa-L-乳酸塩(50重量%溶液)および200gのスクロースを添加した。これは、5040NLU/gの活性、7.0のpHおよび0.815の水分活性を備える20重量%のNa-L-乳酸塩+25重量%のスクロース調製物を生じさせた。pH測定は、超高品質(UHQ)水中の1%のサンプル液を使用して実施した。水分活性は、Aw値が安定性になるまで、25℃でサンプルの上方で相対湿度を測定することによって測定した。Aw値は、4分間にわたり>0.001Awの変化が検出されなければ安定性であると見なされる。Aw値は、標準装置を用いて決定する。
【0076】
およそ調製物1グラムのサンプルは、各2、4および8週間にわたり5℃で保管した。試験からサンプルを取り出した後、それらを視覚的に観察し、活性について決定した。
【0077】
8週間後、調製物の残留酵素活性は82%であった。
【0078】
【表2】
【0079】
[実施例3 (i)32重量%のNa-L-乳酸塩調製物または(ii)20重量%のNa-L-乳酸塩+25重量%のスクロースまたは(iii)50重量%のグリセロール調製物を含むラクターゼ調製物の微生物負荷試験]
約13600NLU/gの活性を備える350グラムの濃縮ラクターゼ(濃縮(非精製)ラクターゼ)に、650gのNa-L-乳酸塩(50重量%溶液)を添加した。pHは、NaOHを用いてpH7.8へ調整した。これは、約4760NLU/gの活性および0.80の水分活性を備える32.5重量%のNa-L-乳酸塩調製物を生じさせた。
【0080】
約13600NLU/gの活性を備える400グラムの濃縮ラクターゼ(濃縮(非精製)ラクターゼ)に、約457gのNa-L-乳酸塩(50重量%溶液)および285gのスクロースを添加した。pHは、NaOHを用いてpH7.8へ調整した。これは、約4760NLU/gの活性および0.794の水分活性を備える20重量%のNa-L-乳酸塩+25重量%のスクロース調製物を生じさせた。
【0081】
参照物質として、約13600NLU/gの活性を備える400グラムの濃縮ラクターゼに、150gの水および550gのグリセロールを添加した。pHは、NaOHを用いてpH7.8へ調整した。これは、約4945NLU/gの活性および0.769の水分活性を備える50重量%のグリセロール調製物を生じさせた。
【0082】
この試験の目的は、50%のグリセロールラクターゼ組成物の微生物安定性を本発明のラクターゼ調製物と比較することであった。これは、NEN-ISO21527-2にしたがって様々な調製物に酵母または糸状菌の標準もしくはロバスト・カクテルを負荷することによって実施した。そのような標準カクテルは、(食品)製品、成分または工業プロセスもしくは工業設備中に存在する可能性が高い精選の一般的な遍在性微生物を含んでいる。ロバスト・カクテルは、負荷条件下で増殖できる精選の菌株である。
【0083】
標準糸状菌、ロバスト糸状菌、標準酵母またはロバスト酵母のカクテルを本調製物に添加し、8℃および25℃でインキュベートし、微生物増殖を決定するために0、1、2、3週間後ならびに1および2カ月後にサンプル採取した。
【0084】
2カ月後、乳酸塩を含む調製物は、標準およびロバスト酵母ならびにロバスト糸状菌についてグリセロール調製物よりはるかに微生物安定性であった。乳酸塩を含む調製物は、標準糸状菌についてグリセロール調製物と同等に微生物安定性であった。