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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ワーク把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
B25J15/08 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019160121
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021037574
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2019-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】719000672
【氏名又は名称】可知 康彦
(72)【発明者】
【氏名】可知 康彦
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217466(JP,A)
【文献】特開昭59-097882(JP,A)
【文献】特開2010-269397(JP,A)
【文献】特開2013-240863(JP,A)
【文献】特開昭59-069288(JP,A)
【文献】特開2013-119151(JP,A)
【文献】特開2007-237358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記中空ブロックを連結する機構において、前記補助フィンガーがワークを把持する場合には各中空ブロックは前記ヒンジにより自由に回転し隣接する上下面が密着するまで長辺側の連結角度は変化するが、牽引する張力が弛緩し該補助フィンガーが待機状態に移行する場合には、前記ヒンジに具備したスプリングと角度ストッパーにより長辺側の連結角度を規制することで、補助フィンガー全体を直線状に整列するように制御し、置かれているワークの間隙に挿入しやすいようにその状態を維持できる機能を有することを特徴とする請求項1で示すワーク把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットアーム先端のハンド部に具備されるワーク把持装置に関するもので
ある。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは主として自動車産業や半導体産業などの大規模量産工場で広く採用され、生産性や品質の向上、省力化などに大きく貢献している。また、多くの先進国で高齢化や人口減の影響で労働力の確保が困難となる傾向にあり、ロボットを活用できる分野を更に拡大することが有効な対策のひとつとして期待されている。産業用ロボットを効果的に活用するには、夫々の作業環境で対象となるワークを安定して保持し、作業の目的に応じて確実に扱えるワーク把持装置の開発が最も大切な必要条件である。上述のような大規模量産工場では、扱うワークの仕様や処理の内容を段階ごとに集約しやすく、用途に応じてワーク把持装置をカスタマイズできるので、産業用ロボットを導入しやすい条件が整っていると考えられる。
【0003】
鋳造、鍛造、熱処理などの作業現場は、重量のある半製品や製品を扱うため肉体的な負荷が高く、高熱・騒音・危険作業もあり、職場環境をクリーンに保つことも難しい等の理由で3K職場と称されやすい。したがって、従来から労働力を安定的に確保することが困難でありながら、産業用ロボットの導入が活発でない理由は、以下のような条件に適応できるワーク把持装置が確立できていなかったからである。
(1)品種、形状やサイズが多彩でそれぞれが量的にまとまらず、混在していることも多い。
(2)ワークは必ずしも置台に整頓されずトレイ内に混在して置かれるケースなども多いため、大掛かりな把持装置ではワークを取り上げにくい。
(3)主として鉄鋼など金属の半成品や完成品で、個々の重量が比較的大である。
(4)酸化スケールや塵埃が多い職場環境や、ワークの温度も高いといった条件で用いられる。
(5)時としてラフなハンドリングがあり耐久性が必要。
【0004】
ハンド部に水平面内で開閉するグリッパーと呼ばれる治具を具備してワークを把持する装置がある。これは、対象ワークの形状・寸法の変化が少なく、治具で挟める部位が安定して確保出来る場合に有効な方法である。ただし、ワークの重量を治具とワーク表面間の摩擦力だけで支えるため、ワーク重量の数倍におよぶ締め付け力が必要である。したがって、こうした方式は比較的重量が軽いワークのハンドリングに適している。 (特許文献1参照)
【0005】
ワークの形状に把持に適した特定の要素がある場合には、より簡便な方法が選択出来る。例えば、常にあるサイズの凹部が存在すればグリッパーの先端に専用の固定爪を具備する方法や、ある面積の平坦部があれば真空パッドで吸引する方法、さらには中央部に所定のサイズの開口部が存在する場合にはその穴部に治具を挿入し拡大把持する方法などがある。いずれも、比較的重量が軽いワークに適した方法である。(特許文献2参照)
【0006】
ワークの材質が鉄鋼など磁性体の場合には、ハンド部に電磁石を装備してその吸着力でワークを把持する方法がある。磁力の吸着によればワークを形状や置かれた状態にあまり影響されずに把持できるので汎用性が高く効率的である。また、磁力次第で数トン以上の大重量にも対応できる。ただし、ワークの吸着した周辺に残留磁気が残るのが問題で、以降の工程でハンドリングやアーク溶接がスムーズに行えないとか、磁性粉の吸着やセンサの誤作動を引き起こすなど作業や品質管理面で様々なトラブルが発生する。従って、この方法はその後にワークが磁気変態温度まで昇温されるとか脱磁システムを経由するなどで残留磁気が低減できる場合に適用される。(特許文献3参照)
【0007】
形状・寸法が様々なワークを安定して把持するための装置として、人間の手のように3~5本の指形状の多関節機構を持つ把持装置も開発されている。物の外形に優しくなじむような屈折機構とそれらを操るアクチエーターにより構成され、形状に対する自由度が高いだけでなく、苺などの軟質材でも扱える特徴を持つ。ただし、現状では扱える重量は500mlのペットボトル程度が限界であるし、多数のアクチエーターとそれらを制御するセンサなどが装備されているので、高温雰囲気や酸化スケール・塵埃が多い環境、時として衝撃を受けるラフなハンドリングには対応しにくい装置である。 (非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-05032112 ロボットハンドの把持制御方法及び把持装置
【0009】
【文献】特開平06-226673 ロボットハンド
【0010】
【文献】特開平4-229605 吸着用電磁石の制御方法および装置並びに制御用電磁石
【非特許文献】
【0011】
【文献】日経産業新聞 2018/03/09 記事 5本指 ロボットハンドに個性
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(イ)解決しようとする課題は、鋳造、鍛造、熱処理などの現場において、比較的重量のあるワ ークのハンドリング作業に対して、産業用ロボットを十分に活用出来ないことである。
(ロ)その主たる原因は、そうした現場の作業環境や対象物に適したワーク把持装置が開発されていないことにあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は産業用ロボットアーム先端のハンド部に具備されるワーク把持装置で、酸化スケールや塵埃の多い環境において、それぞれの重量が比較的重い半成品あるいは完成品を対象とし、それらが整頓されて置台の置かれている場合はもとより各種混在して乱雑に置かれている場合でも、ワークを安定的に扱えるよう把持できる機能を持つもので、電磁石の吸着力を用いる方式にはよらないものである。
【0014】
ハンド部に一般的に具備されている水平方向に開閉するグリッパーに補助フィンガーを付加し、それがワークの下面に沿うように全体が円弧状に湾曲し剛体化して、先端がワークの下面側に入りこむことで重量を下面側からも支えられるワーク把持装置である。
【0015】
補助フィンガーは、1個以上の中間ブロックと先端ブロックで構成されており、ブロックは必要な機能が得られれば材質や製作方法は問わない。各ブロックは側面から見るとワークに接する側の辺が短くワークと接しない反対側の辺が長い台形様の形状で、グリッパーから先端ブロックまで長辺側の上下端にあるヒンジで連結されている。グリッパーから中間ブロックを経由して先端ブロックまで貫通する中空部があり、一本の牽引具がそれらを貫通してハンド内の牽引装置から先端ブロックのピンまで連結されている。
【0016】
牽引具はチェーン、ワイヤーまたはロープを意味し、必要な張力に耐えられる仕様であれば材質や寸法は問わない。牽引装置は上述の牽引具に張力を与えるもので、ワークを把持する際にその重量に抗して補助フィンガーの湾曲形状を維持するのに必要な張力と牽引量の制御ができる装置であれば、ウオームホイール、ロータリーエンコーダー、サーボモーター、パワーシリンダーなど、どのような組み合わせでも良い。
【0017】
ワークを把持する場合には、牽引装置で牽引具に張力を与えることにより先端ブロックを引き寄せる。それにより開放されていた各ブロックの短辺側が順次密着させられ、補助フィンガーは側面から見るとワークに接する側が凹となった円弧状となり、全体が剛体化する。補助フィンガーが必要な剛性を確保したのちにグリッパーを最終的に閉とする。
【0018】
補助フィンガーの牽引具は把持時以外すなわち待機状態では強い張力は加えられず弛緩しており、すべてのブロックの短辺側は開放されて全体は自重で垂れ下がるが、連結用ヒンジに具備されたスプリング機構と角度ストッパーにより、すべてのブロックは長辺側を直線状に整列しその状態を保持する機能を有している。
【0019】
補助フィンガーはハンド部に装備されているグリッパーの内少なくとも対向する2本のグリッパーに具備される。複数のグリッパーが、ワークの投影形状に応じるように長辺用、短辺用と機能分担されている場合には、短辺用の対向するグリッパーに補助フィンガーを具備するのが効果的である。
【0020】
補助フィンガーを設計の前提とした寸法よりも小さなワークに対応させる場合には、中間ブロックの短辺側の開放部に楔形のシムをはめ込むことで、把持する際の全体の湾曲量を低減させて対応することが出来る。
【0021】
ビジュアルセンサの情報に基づき把持対象のワークの選定と把持要領の決定をしたのち、ロボットアームによりハンド部の向きと高さを調整しながらグリッパーの機構で開度を調整し、待機状態の補助フィンガーをワークの両側に近接させる。補助フィンガーを待機状態から円弧状に変化させる過程で必要となる高さ方向の調整はロボットアームにより制御する。補助フィンガーが円弧状を形成し剛性を確保したのち全てのグリッパーを閉とすることでワークの把持が完了する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のワーク把持装置は、ロボットアーム先端のハンド部に設けられたグリッパーに補助フィンガーが連結しており、それは円弧状を形成して剛性を維持しているので、先端部をワークの下部から下面側に挿入させることができ、しかる後に最終的にグリッパーを閉にすることが出来る。これにより重量をグリッパーによる側面の摩擦力だけで支えるのではなく下面側からもワークに沿う形で支えられるので、重量のある多様なワークに対してもスリップや揺動など不安定な動きが防止でき、安定した状態で把持することが出来る。
【0023】
補助フィンガーは一体ではなく、多数のブロックがヒンジで連結された構造となっている。それにより待機状態すなわち把持しない時のフィンガー前後の必要スペースを一体の場合よりも大幅に小さく抑えられるのでワーク間の間隙が狭い場合でもワークをピックアップしやすい。
【0024】
補助フィンガーの湾曲形状の形成機構はシンプルで、フィンガー部には複雑なリンク機構、空気圧や油圧のシリンダー、さらには多数のセンサなども必要ない。したがって、全体をスリムな形状で実現できるので、ワークが雑多に置かれていてワーク間の隙間が狭い場合でも補助フィンガーを近接させることが容易であり、ロボットを導入するにあたっても専用の置台にワークを整列させる必要がなく、手間も省けるし置き場スペースを圧迫することもない。
【0025】
補助フィンガーを円弧状に湾曲させるアクチエーターは主に牽引装置のみで、ワークから遠隔のハンド内に設置することが出来る。したがって、ワークに近接するフィンガー部には精緻な機構や多数のセンサがないので衝撃にも壊れにくくワークの輻射熱などの外乱にも耐えやすい。また、酸化スケールや塵埃の多い汚れた環境にも影響を受けにくく、シンプルな機構なので汚れた場合の清掃も簡単にできるし、故障時のメンテナンスも容易である。
【0026】
ワーク把持装置は、2本の対向する補助フィンガーが形成する円弧の直径以上の寸法を有するワークを安定把持するのに有効である。それよりもサイズの小さなワークをハンドリングする場合には、ブロック間に楔型のシムを適用することで形成する半径を小さくして対応することが出来る。
【0027】
ワーク把持装置を対象とするワークの寸法、重量や配置の状況などに応じて変更する場合には別のハンドと交換する。その際に必要なアクチエーターの接続替えは電気系統だけで完了し、油圧や空気圧の配管接続替えなどは不要なため迅速かつ簡便である。
【0028】
電磁石による吸着方式ではないので、扱ったワークに残留磁気が残らない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は補助フィンガーを用いたワーク把持装置の動作説明図である。
図2図2は円弧状のフックが支点を中心に回転するタイプのフィンガーの動作説明図である。
図3図3は多分割されて連結した円弧状のフックが支点を中心に回転するタイプのフィンガーの動作説明図である。
図4図4は補助フィンガー(同心円タイプ)の把持状態を示した側面図である。
図5図5は補助フィンガー(同心円タイプ)の待機状態を示した側面図である。
図6図6は補助フィンガー(異心円タイプ)の把持状態を示した側面図である。
図7図7は補助フィンガー(異心円タイプ)の待機状態を示した側面図である。
図8図8は楔型シムをブロック間に適用して把持した状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1は本発明の補助フィンガーを用いたワーク把持装置の動作説明図である。
(1)は置場に置かれた各種のワークを、ビジュアルセンサで認識し、把持する対象ワーク1の選定と、そのワークを的確に把持するための解析(ワークの全体形状、重心位置、水平方向の傾き、鉛直面内の傾き、把持要領など)を行う段階。
(2)はロボットアームが高さを調整しつつ先端のハンド2の角度を把持しやすいようにコントロールし、対象ワーク1に接近させた段階を示す。例示しているハンド2は、水平方向に開閉する長辺用グリッパー3、短辺用グリッパー4を各2本ずつ持ち、短辺用グリッパーには補助フィンガー5を具備した例を示している。この段階では、いずれのグリッパーもワークに接近はしているがまだ挟み付けてはいない。
【0031】
(3)は、短辺用グリッパーだけに注目して補助フィンガー5の作動状況を示している。
(3)-1、(3)-2はロボットアームでハンド2の高さを下げながら補助フィンガー5の内部を貫通する牽引具15(この事例ではローラーチェーン)を巻き上げ機構6で牽引し、補助フィンガー全体を円弧状に形成するまでの段階を示す。
(3)-3はその後短辺用グリッパー4の開閉機構でワークを拘束した段階である。
(3)-4は、長辺用グリッパー3の開閉機構を作動させワーク1の把持が完了した段階を示す。
【0032】
図2は円弧状の補助フィンガーを具現した事例の動作説明図である。固定ブロックとヒンジで連結された円弧状のフックをワーク把持時にはワーク方向に90度回転することで先端部をワークの下面に入りこませるタイプの補助フィンガーで、ワークの重量を下面からも支持できる利点はある。しかし、待機状態では鉛直線よりもフックの後方が大きく張り出してしまうので、ワーク間の距離が狭い場合には補助フィンンガーを挿入しづらいのが問題である。挿入しやすいように張り出しを少なくしようとすれば、フィンガーの円弧半径を小さくせざるを得ないため、ワークを安定的に把持する効果が十分に得られない。なお、以下の図も同様であるが、ここでは片側の補助フィンガーだけを示しており、対称形に配置される対向した補助フィンガーは割愛している。
【0033】
図3は、図2のように支点を中心に回転する円弧状のフックを、一体ではなく多分割(図では 2分割)にしたタイプの補助フィンガーの動作説明図である。ワーク把持時の形状は図2と同様であるが、待機状態においては、フックを多分割したことにより後方への張り出しを分割しない場合に比較して大幅に少なくすることが出来る。したがって、ワーク間のスペースが小さい場合でも補助フィンガーを挿入しやすく、容易にワークを把持することが出来る。但し、こうした利点を活かすためには、待機状態では多分割のフックを直線状に保持し、ワーク把持時には多数のフックを剛性のある一体の円弧状フックを形成するという機能を、シンプルなアクチエーターおよび機構で実現することが必要である。
【0034】
図4以降は、円弧状フックが多分割されたタイプを具体化した補助フィンガーの側面図である。図4は、円弧状のフックが3個の中間ブロック11と1個の先端ブロック12に分割された事例で、すべてのブロックが短辺側を内側として剛性を持った一体の円弧状フックを形成し、ワークを把持している状態を示したものである。フィンガーの先端ブロックには、ワークの下部に入り込みやすいように鋭角のガイドが設けてある。ここに示す例は、フィンガーを側面から見たときにブロック群のワークに接する内面側と反対の外面側の包絡線が同心円の場合で、最初のブロックから先端ブロックまで、側面から見た厚みはほぼ一定である。
【0035】
補助フィンガーはグリッパー10に連続しており、複数(この事例では3個)の中間ブロック11と先端ブロック12がヒンジ13で連結して構成されている。ワークの把持状態では各ブロックを貫通し先端ブロックのピン14に連結されている検引具15(図ではローラーチェン)に張力が加えられ、待機時には開放されていた各ブロックの短辺側が密着し、全体が剛性を持った一体の円弧状フックを形成する。そのための必要条件は、ブロックに短辺側と長辺側があること長辺側がヒンジで連結されていることそして牽引具で引き寄せられて密着する面を有することであり、これらが満足されれば必ずしも台形様形状である必要はなく、エ字型などでも構わない。
【0036】
図5は補助フィンガーの待機状態の側面図である。待機状態では検引具15は弛緩し中間 ブロック11と先端ブロック12は自重で鉛直方向に垂れ下がるが、ヒンジ13に装備されたスプリングと角度ストッパーにより各ブロックの長辺側が直線状に整列するように制御されている。断面A-Aは中間ブロック11の断面図、断面B-Bは先端ブロック12の断面図を示す。先端ブロックには、牽引具を連結するためのピン14が設けられている。
【0037】
実施例の断面図は全体が矩形となっているが、機能を満たすための必要条件はワークに接する側が把持に適した必要な面積が確保されていること反対側はヒンジが装備できることブロックには牽引具の貫通する空間が確保されていること全体としてワークの把持に必要な強度が確保できていることであり、これらの条件が満たされれば断面全体としては逆△形型T字型などでも構わない。なお、図でブロックの両側面を減肉しているのは、補助フィンガーの全体重量を軽減する工夫の例である。
【0038】
図6は補助フィンガーがワークを把持している側面図であるが、図4と異なりブロック群のワークに接する内面側と反対側の円弧の包絡線が異心円のタイプの例である。ワークの重量を補助フィンガーで支持するためのモーメントを確保するのだが、不足した場合にはまず固定ブロック下面と最上段の中間ブロック上面間の密着が確保できない現象になって現れる。補助フィンガーのブロック形状を異心円タイプとすれば、最上部ヒンジから牽引具までのアーム長を同心円タイプの場合よりも長くとれるので、ワーク重量を支えるために必要な牽引具に加える張力を低く出来る利点がある。
【0039】
図7図6の補助フィンガーの待機状態の側面図である。異心円タイプなので、中間ブロックの上端から先端ブロックにかけて徐々に厚みが低減している。断面A-A、断面B-B,断面C-Cはそうした状況を示している。その他の解説は図5と類似なので割愛する。
【0040】
図8は楔型シムを固定ブロックと最上段の中間ブロックの間に設置してワークを把持している状態の側面図である。この図は、ワークの短辺が200mm以上を想定して設計した補助フィンガーの事例であるが、例えば図のように約13度の楔型シムを適用することで、安定して把持出来るワークの範囲を140mm以上まで広げることが出来る。さらに同様の楔型シムを次のブロック間にも適用すれば、安定して把持出来るワークの範囲は90mm以上まで広げることが出来る。
【符号の説明】
【0041】
1 ワーク
2 ハンド部
3 長辺用グリッパー
4 短辺用グリッパー
5 補助フィンガー
6 牽引装置
10 グリッパー
11 中間ブロック
12 先端ブロック
13 ヒンジ
14 ピン
15 牽引具
20 楔型シム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8