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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】センサ、構造および電気機器
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20220720BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220720BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
B81B3/00
G01P15/08 101B
H01L29/84 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018158387
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020034290
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超低消費電力データ収集システムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久留井 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 明
(72)【発明者】
【氏名】富澤 英之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友博
(72)【発明者】
【氏名】小島 章弘
(72)【発明者】
【氏名】前中 一介
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6327384(JP,B2)
【文献】特許第6146565(JP,B2)
【文献】特許第6206650(JP,B2)
【文献】米国特許第8434364(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15
B81B3
H01L29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する基板と、
前記第1の面に設けられ、第1の軸に沿って延在する第1の固定電極と、
前記第1の面に設けられ、第1の軸に沿って延在するとともに、前記第1の面内の第2の軸に沿って前記第1の固定電極から離れて配置された第2の固定電極と、
前記第1の面から第1の方向に離れて配置され、前記第1の方向とは反対の第2の方向から見て、開口を有する可動電極と、
一端が前記開口の内壁に接続され、前記第1の軸に沿って延在する第1のトーションバネと、
前記第1のトーションバネの他端に接続され、前記第2の方向から見て、第1の屈曲部を有する第1の梁部と、
一端が前記開口の内壁に接続され、前記第1の軸に沿って延在する第2のトーションバネと、
前記第2のトーションバネの他端に接続され、前記第2の方向から見て、第2の屈曲部を有する第2の梁部と
を具備し、
前記第2の方向から見て、前記第1の屈曲部を有する前記第1の梁部と、前記第2の屈曲部を有する前記第2の梁部とは、前記開口によって分離され、
前記可動電極は、前記第1の軸に沿って、前記可動電極の周辺部が前記可動電極の中央部から前記第1の方向に離れるように反っている、センサ。
【請求項2】
前記開口の前記内壁の前記第1のトーションバネの一端が接続されている部分は、前記開口の前記内壁の前記第2のトーションバネ一端が接続されている部分と対向する請求項に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1の梁部の前記第1の屈曲部は、前記第1の軸に平行な第1の部分と、当該第1の部分に接続され、前記第2の軸に平行な第2の部分とを含み、
前記第2の梁部の前記第2の屈曲部は、前記第1の軸に平行な第3の部分と、当該第3の部分に接続され、前記第2の軸に平行な第4の部分とを含む請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記基板設けられた第1のアンカー部および第2のアンカー部をさらに具備し、
前記第1の梁部の前記第1の部分は前記第1のアンカー部に接続され、
前記第2の梁部の前記第3の部分は前記第2のアンカー部に接続されている請求項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記基板設けられた第3のアンカー部および第4のアンカー部をさらに具備し、
前記第1の梁部の前記第1の屈曲部は、前記第3のアンカー部に接続された第の部分をさらに含み、
前記第2の梁部の前記第2の屈曲部は、前記第4のアンカー部に接続された第の部分をさらに含む請求項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記第1のアンカー部と前記第2のアンカー部との間の距離は、前記可動電極の前記第1の軸に平行な辺の長さの1/4以上2/3以下である請求項またはに記載のセンサ。
【請求項7】
前記第1のアンカー部と前記第2のアンカー部との間の距離は、200μm以上500μm以下である請求項ないしのいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
前記可動電極は、シリコンゲルマニウム膜、シリコン膜、シリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜、または、シリコン酸化膜とシリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜を含む請求項1ないしのいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載の基板、第1の固定電極、第2の固定電極、可動電極、第1のトーションバネ、第1の梁部、第2のトーションバネおよび第2の梁部を含む構造。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載のセンサを含む電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、センサ、構造および電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度を検出するために、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて形成された加速度センサ(以下、MEMS加速度センサという)が知られている。このMEMS加速度センサは半導体プロセスを用いて形成される。そのため、MEMS加速度センサの性能は半導体プロセスの影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8820161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、性能の低下を抑制できるセンサ、構造および電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のセンサは、基板と、前記基板上に設けられた第1の固定電極と、前記基板上に設けられた第2の固定電極と、前記第1の固定電極および前記第2の固定電極の上方に配置され、開口を有する可動電極とを含む。前記センサは、さらに、一端が前記開口の内壁に接続された第1のトーションバネと、前記第1のトーションバネの他端に接続され、前記開口の上方から見て、屈曲部を有する第1の梁部とを含む。前記センサは、さらに、一端が前記開口の内壁に接続された第2のトーションバネと、前記第2のトーションバネの他端に接続され、前記開口の上方から見て、屈曲部を有する第2の梁部とを含む。
【0006】
実施形態の構造は、上記センサの基板、第1の固定電極、第2の固定電極、可動電極、第1のトーションバネ、第1の梁部、第2のトーションバネおよび第2の梁部を含む。
実施形態の電気機器は、上記センサを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は一実施形態に係るMEMS加速度センサを模式的に示す平面図である。
図2図2図1の矢視2-2に沿った断面図である。
図3図3図1の矢視3-3に沿った断面図である。
図4図4図1の矢視4-4に沿った断面図である。
図5図5図1の矢視5-5に沿った断面図である。
図6図6図1のMEMS加速度センサに力が作用したときの図2に対応する断面図である。
図7図7は比較例のMEMS加速度センサを模試的に示す平面図および断面図である。
図8図8は実施形態のMEMS加速度センサにおいて検出感度の低下を抑制できる理由を説明するための図である。
図9図9は可動電極に反りが生じているMEMS加速度センサの図3に対応する断面図である。
図10図10は可動電極に反りが生じているMEMS加速度センサの図4に対応する断面図である。
図11図11は可動電極に反りが生じているMEMS加速度センサの図5に対応する断面図である。
図12図12は実施形態のMEMS加速度センサの寸法を説明するための平面図である。
図13図13は実施形態のMEMS加速度センサの製造方法を説明するための断面図である。
図14図14は他の実施形態のMEMS加速度センサを模式的に示す平面図である。
図15図15はさらに別の実施形態のMEMS加速度センサを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図面は、模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は、必ずしも現実のものと同一であるとは限らない。図面において、同一符号は同一または相当部分を付してあり、重複した説明は必要に応じて行う。また、簡略化のために、同一または相当部分があっても符号を付さない場合もある。
【0009】
図1は一実施形態に係るMEMS加速度センサを模式的に示す平面図である。図2図1の矢視2-2に沿った断面図である。図3図1の矢視3-3に沿った断面図である。図4図1の矢視4-4に沿った断面図である。図5図1の矢視5-5に沿った断面図である。なお、図2図5の断面図は、MEMS加速度センサに力が作用していないときの状態を示している。
【0010】
図2図5において参照符号10は基板を示しており、この基板10は、シリコン基板11と、その上に設けられたシリコン酸化膜12とを含む。図2図5では、簡略化のためシリコン基板11の上部のみを示している。
図2に示すように、基板10の上面10a(第1の面)上には第1の固定電極21が設けられている。ここでは、基板10の上面10aはシリコン酸化膜12の上面である。
【0011】
図1において、X軸(第1の軸)は図2の基板10の上面10a内の軸であり、Y軸(第2の軸)は基板10の上面10a内の軸であって、X軸に垂直な軸である。また、Z軸(第3の軸)はX軸およびY軸に垂直な軸である。図1に示すように、第1の固定電極21は、X軸に沿って延在する。
【0012】
基板10の上面10a上には、さらに第2の固定電極22が設けられている。第2の固定電極22はX軸に沿って延在するとともに、Y軸に沿って第1の固定電極21から離間して配置されている。第2の固定電極22の面積は第1の固定電極11の面積と同じである。トーションバネ31から第2の固定電極22までの距離は、トーションバネ31から第1の固定電極21までの距離と同じである。また、基板10の上面10a上には配線層23が設けられている。シリコン酸化膜12、第1の固定電極21、第2の固定電極22および配線層23上にはシリコン窒化膜(エッチングストッパ)24が設けられている。
【0013】
図1および図2に示すように、第1の固定電極21および前記第2の固定電極22の上方には、開口25を有する可動電極26が配置されている。本実施形態のMEMS加速度センサを犠牲膜プロセスを用いて製造する場合、可動電極26は複数の貫通孔(不図示)を有する。
【0014】
開口25の内壁には第1のトーションバネ31の一端が接続されている。第1のトーションバネ31はX軸に沿って延在する。第1のトーションバネ31の他端は、図1に示すように、開口25の上方から見て、屈曲部を有する第1の梁部41に接続されている。第1の梁部41の屈曲部は、X軸に平行な直方体状の部分41aと、この部分41aに接続され、Y軸に平行な直方体状の部分41bと、この部分41bに接続され、X軸に平行な直方体状の部分41cとを含む。第1のトーションバネ31の他端は、第1の梁部41の部分41bの中央部に接続されている。第1のトーションバネ31は可動電極26に接続されている。
【0015】
図1に示すように、基板(不図示)上には、第1のトーションバネ31を挟むようにアンカー部51およびアンカー部52が配置されている。アンカー部51およびアンカー部52は第1のトーションバネ31から一定の距離を隔てて配置されている。アンカー部51は部分41aに接続され、アンカー部52は部分41cに接続されている。
【0016】
図2に示すように、アンカー部51およびアンカー部52はシリコン窒化膜24を貫通して配線層23に電気的に接続される。図4に示すように、アンカー部51は、絶縁膜61と、プラグ62とを含む。プラグ62の材料は例えばタングステンである。プラグ62は絶縁膜61および絶縁層24を貫通して配線層23に電気的に接続される。本実施形態では、プラグ62の個数は4であるが、その個数は4には限定されない。アンカー部52の構成はアンカー部51の構成と同じである。第1の梁部41、アンカー部51およびアンカー部52は、第1のトーションバネ31に対して線対称なパターンを有する。
【0017】
開口25の内壁には第2のトーションバネ32の一端が接続されている。第2のトーションバネ32はX軸に沿って延在する。開口25の内壁の第1のトーションバネ31の一端が接続されている部分(第1の接続部分)は、開口25の内壁の第2のトーションバネ32の一端が接続されている部分(第2の接続部分)と対向する。より詳細には、第1の接続部分および第2の接続部分はX軸に沿って対向する。
【0018】
第2のトーションバネ32の他端は、図1に示すように、開口25の上方から見て、屈曲部を有する第2の梁部42に接続されている。第2の梁部42の屈曲部は、X軸に平行な直方体状の部分42aと、この部分42aに接続され、Y軸に平行な直方体状の部分42bと、この部分42bに接続され、X軸に平行な直方体状の部分42cとを含む。第2のトーションバネ32の他端は部分42bの中央部に接続されている。部分42bと部分41bとの間は隙間がある。第2のトーションバネ32は、第1のトーションバネ31と同様に、可動電極26に接続されている。
【0019】
図1に示すように、基板(不図示)上には、第2のトーションバネ32を挟むようにアンカー部53およびアンカー部54が配置されている。アンカー部53およびアンカー部54は第2のトーションバネ32から一定の距離を隔てて配置されている。アンカー部53は部分42aに接続され、アンカー部54は部分42cに接続されている。
【0020】
アンカー部51およびアンカー部54は間接的に基板10とコンタクトする。アンカー部53およびアンカー部54は、それぞれ、アンカー部51およびアンカー部52と同じ構成を有する。
図1に示すように、開口25の上から見て、トーションバネ31、第1の梁部41、アンカー部51、トーションバネ32、第1の梁部41およびアンカー部51は、前記開口内に配置されている。また、図1に示すように、開口25の上方から見て、第1の梁部41、アンカー部51およびアンカー部52が構成する第1のパターンは、線50に対して、第2の梁部42、アンカー部53およびアンカー部54が構成する第2のパターンに関して線対称である。線50は、第1の梁部41の部分41bと第2の梁部42の部分42bとの間の中央を通りに、Y軸に平行な線である。第1のパターンは、第2のパターンに直接的には接続されていない。第1のパターンは、第1のトーションバネ31、可動電極26および第2のトーションバネ32を介して、接続されている。
【0021】
本実施形態では、可動電極26、第1のトーションバネ31、第2のトーションバネ32、第1の梁部41および第2の梁部42は同じの材料の膜を用い構成されているとするが、必ずしも同じ材料の膜である必要はない。
図2に示すように、第1の固定電極21および可動電極26は第1のキャパシタC1を構成しており、第2の固定電極22および可動電極26は第2のキャパシタC2を構成している。図2では、第1の固定電極21と可動電極26との間隔は、第2の固定電極22と可動電極26との間隔と同じであり、第1のキャパシタC1の静電容量は第2のキャパシタC1の静電容量と同じである。以下、静電容量を単に容量と記載する。
【0022】
図6は、本実施形態のMEMS加速度センサに対して力が作用したときの図2に対応する断面図である。上記力は、基板10の上面10aに対して垂直な力を含む。
MEMS加速度センサに上記垂直な力が作用すると、トーションバネ31およびトーションバネ32にねじれが生じ、第1の固定電極21と可動電極26との間隔は、第2の固定電極22と可動電極26との間隔とは同じではなくなる。その結果、第1の固定電極21と可動電極26との間の容量は、第2の固定電極22と可動電極26との間の第2の容量とは異なることになる。これらの容量の差(容量差)は、上記垂直な力の大きさに応じて変化する。そのため、容量差に基づいてZ軸方向(高さ方向)の加速度を算出することができる。容量差の検出および加速度の算出は、例えば、シリコン基板11内に形成された回路(不図示)を用いて行われる。上記回路は、例えば、CMOS回路を用いて構成される。CMOS回路はシリコン基板11とシリコン酸化膜12を利用して形成される。
【0023】
可動電極26は、例えば、シリコンゲルマニウム膜、シリコン膜、シリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜、または、シリコン酸化膜とシリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜を用いて形成される。これらの膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)プロセスを用いて形成した場合、上述した膜には反りが生じる。反りが生じる一つの原因としては、CVDプロセスを用いて形成した膜には残留応力が発生することがあげられる。他の原因のとしては、CVDプロセス中またはその後の温度変化によって膜に熱膨張が発生することがあげられる
その結果、図7(a)に示すように、トーションバネ31の中央部の1個のアンカー部51で可動電極26を支持するタイプのMEMS加速度センサ(比較例)の場合、図7(b)に示すように、可動電極26には反りが生じる。図7(b)において、反りのある可動電極26は実線により模式的に示してある。また、反りのない可動電極は破線により模式的に示してある。図7(b)に示すように、可動電極26の周辺部が可動電極26の中央部よりも上に位置するような反りが可動電極26には生じる。
【0024】
図7の場合、反りのある可動電極26と固定電極(不図示)との間の間隔は、反りのない可動電極と固定電極(不図示)との間の間隔よりも大きくなる。そのため、このような反りがある可動電極26を用いたMEMS加速度センサは、反りがない可動電極を用いたMEMS加速度センサに比べて、加速度の検出感度は低くなる。ここで、加速度の検出感度は単位加速度当たりの容量変化で定義される。本実施形態の場合、MEMS加速度センサは上述した容量差に基づいて加速度を検出する差動型の加速センサなので、加速度の検出感度は容量差(=容量C2-容量C1)で定義される。
【0025】
しかしながら、本実施形態のMEMS加速度センサを評価したところ、加速度の検出感度の低下を抑制できることが確認された。その理由は以下のように考えられる。
図8(a)は図1に対応する平面図である。図8(b)は図8(a)の8b-8b断面図である。図8(b)では、反りのある可動電極26は実線により模式的に示してあり、反りのない可動電極は破線により模式的に示してある。
【0026】
図8(a)および(b)に示すように、X軸に関して、アンカー部51(52)よりも外側の領域71では、反りのある可動電極26は反りのない可動電極よりも上側にある。同様に、X軸に関して、アンカー部53(54)よりも外側の領域72では、反りのある可動電極26は反りのない可動電極よりも上側にある。そのため、領域71,72では検出感度は低下する。
【0027】
一方、X軸に関して、アンカー部51(52)よりも内側で、かつ、アンカー部53(54)よりも内側の領域73では、反りのある可動電極26は反りのない可動電極よりも下側にある。そのため、領域73では検出感度は向上する。
本実施形態の場合、領域73での加速度の検出感度の向上の度合いは、領域71,72での加速度の検出感度の低下の度合いとほぼ同じであるために、加速度の検出感度の低下を抑制できると考えられる。
【0028】
可動電極26の反り量を曲率半径で規定した場合、例えば、当該曲率半径が20mmから200mmの範囲内であれば、加速度の検出感度の低下を抑制できる。
なお、図8(b)において、G1は、Z軸に沿って測られる距離であって、領域73において、反りのない可動電極26から反りのある可動電極26までの距離(ギャップ)の最大値を示している。
【0029】
図9に可動電極26に反りが生じているMEMS加速度センサの図3に対応する断面図を示し、図10に可動電極26に反りが生じているMEMS加速度センサの図4に対応する断面図を示し、図11に可動電極26に反りが生じているMEMS加速度センサの図5に対応する断面図を示す。図9図11において、破線は反りのない可動電極を示している。
【0030】
図12は、MEMS加速度センサの寸法を説明するための平面図である。なお、図12において、X1およびX2はX軸に平行な部分の寸法を示し、Y1~Y4はY軸に平行な部分の寸法を示している。なお、図面の煩雑化を避けるため、可動電極、トーションバネ等の参照符号は付していない。
【0031】
可動電極の幅X1は、例えば、300~1000μmの範囲に設定する。
可動電極の長さY1は、例えば、300~2000μmの範囲に設定する。
トーションバネの幅X2は、例えば、0.5~5μmの範囲に設定する。
トーションバネの長さY2は、例えば、Y1の25~45%の範囲に設定する。
【0032】
可動電極の中心からアンカー部までの距離Y3は、例えば、Y1の1/8から1/3の範囲に設定する。言い換えれば、アンカー部間の距離Y4(=2×Y3)は、Y1の2/8(=1/4)から2/3の範囲に設定する。アンカー部間の距離Y4は、具体的には、例えば200~500μmの範囲に設定する。上記範囲内にY3(Y4)を設定すると、図8(b)に示したギャップG1を2μm以上にすることが可能となる。この場合、反りが生じても平均的な初期容量値は変わらないので、反りに対する検出感度の低下を抑制できる。例えば、曲率半径が50nm以上であれば、反りが生じても検出感度の低下は10%以内に収めることができる。
【0033】
なお、図12には示されていないが、第1の固定電極(第2の固定電極)と可動電極との最小間隔は、例えば、1~3μmの範囲に設定する。
次に、図13(a)~図13(f)を参照して本実施形態のMEMS加速度センサの製造方法について簡単に説明する。図13(a)~図13(f)は図1の矢視2-2に沿った断面図に対応する。本実施形態では、犠牲膜プロセスを用いた製造方法について説明する。
【0034】
まず、図13(a)に示すように、シリコン基板11上にシリコン酸化膜12を形成する。次に、シリコン酸化膜12上に、第1の固定電極21、第2の固定電極22および配線層23となる導電膜を形成し、その後、上記導電膜をパターニングして、第1の固定電極21、第2の固定電極22、配線層23を形成する。上記導電膜の厚さは、例えば、0.6μmである。
【0035】
次に、図13(b)に示すように、第1の固定電極21、第2の固定電極22および配線層23上にシリコン窒化膜24を形成する。シリコン窒化膜24の厚さは、例えば、1μmである。その後、シリコン窒化膜24上に犠牲膜として使用されるとともに、アンカー部の絶縁膜となるシリコン酸化膜61を形成する。シリコン酸化膜61の厚さは、例えば、1~3μmである。なお、シリコン酸化膜61の表面を十分に平坦化するためにCMP(Chemical Mechanical Polishing)を行っても構わない。
【0036】
次に、図13(c)に示すように、シリコン酸化膜61を貫通するプラグ62を形成する。より詳細には、まず、エッチングプロセスを用いてシリコン酸化膜61を貫通する貫通孔を形成する。このとき、シリコン窒化膜24はエッチングストッパとして機能する。上記エッチングプロセスは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)を用いて行う。次に、上記貫通孔を埋めるように全面に導電膜を形成し、その後、余剰の導電膜をCMPを用いて除去する。
【0037】
次に、図13(d)に示すように、シリコン酸化膜61上に可動電極26となる膜、例えば、シリコンゲルマニウム膜をCVDプロセスを用いて形成し、その後、シリコンゲルマニウム膜をパターニングして可動電極26を形成する。なお、図面では、可動電極26に生じる反りは簡略化のため省いている。上記パターニングは、例えば、RIEの一つであるDRIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いる。
【0038】
次に、図13(e)に示すように、エッチングプロセスを用いて可動電極26に開口25および複数の貫通孔27を形成する。貫通孔27はアンカー部の絶縁膜となる部分上には形成しない。上記エッチングプロセスは、例えば、DRIEを用いて行う。
次に、開口25および貫通孔27からフッ化水素ガス(HFガス)を導入して、アンカー部の絶縁膜として用いない部分のシリコン酸化膜13を選択的に除去する。その結果、図13(f)に示すように、シリコン酸化膜からなるアンカー部の絶縁膜61が形成される。この後は、周知のMEMS加速度センサの製造プロセスを行う。
【0039】
図14は、他の実施形態のMEMS加速度センサを模式的に示す平面図である。
本実施形態が先の実施形態と異なる点は、アンカー部の個数を4から2に減らしたことにある。より詳細には、図1に示した2個のアンカー部52,54を省いている。
アンカー部の個数の減少に伴い、第1の梁部41の屈曲部および第2の梁部42の屈曲部は変更されている。より詳細には、本実施形態の第1の梁部41の屈曲部は、図1に示した部分41cが省かれている。本実施形態の第2の梁部42の屈曲部は、図1に示した部分42cが省かれている。また、本実施形態の場合、第1のトーションバネ31の他端は第1の梁部41の部分41bの端部に接続され、第2のトーションバネ32の他端は第2の梁部42の部分42bの端部に接続されている。なお、アンカー部の個数は1以上であれば構わない。
【0040】
図15は、さらに別の実施形態のMEMS加速度センサを示すブロック図である。
本実施形態のMEMS加速度センサは、X軸方向の加速度を検出するMEMS加速度センサ1Xと、Y軸方向の加速度を検出するMEMS加速度センサ1Yと、Z軸方向の加速度を検出するMEMS加速度センサ1Zとを含む。
【0041】
MEMS加速度センサ1XおよびMEMS加速度センサ1Yは、例えば、櫛歯形状を有する固定電極と、櫛歯形状を有する可動電極とを用いて構成される周知のMEMS加速度センサである。一方、MEMS加速度センサ1Zは、図1図14に示した実施形態のMEMS加速度センサである。
【0042】
上述した実施形態のセンサの上位概念、中位概念および下位概念の一部または全て、および、上述していないその他の実施形態は、例えば、以下の付記1-11、および、付記1-11の任意の組合せ(明らかに矛盾する組合せは除く)で表現できる。
[付記1]
基板と、
前記基板上に設けられた第1の固定電極と、
前記基板上に設けられた第2の固定電極と、
前記第1の固定電極および前記第2の固定電極の上方に配置され、開口を有する可動電極と、
一端が前記開口の内壁に接続された第1のトーションバネと、
前記第1のトーションバネの他端に接続され、前記開口の上方から見て、屈曲部を有する第1の梁部と、
一端が前記開口の内壁に接続された第2のトーションバネと、
前記第2のトーションバネの他端に接続され、前記開口の上方から見て、屈曲部を有する第2の梁部と
を具備するセンサ。
[付記2]
前記基板は第1の面を有し、
前記第1の固定電極および前記前記第2の固定電極は、前記第1の面上に設けられ、
前記第1の固定電極は、前記第1の面内の第1の軸に沿って延在し、
前記第2の固定電極は、前記第1の軸に沿って延在するとともに、前記第1の面内の第2の軸に沿って前記第1の固定電極から離間して配置されている付記1に記載のセンサ。
[付記3]
前記第1のトーションバネは前記第1の軸に沿って延在し、
前記第2のトーションバネは前記第1の軸に沿って延在する付記2に記載のセンサ。
[付記4]
前記開口の前記内壁の前記第1のトーションバネの一端が接続されている部分は、前記開口の前記内壁の前記第2のトーションバネ32の一端が接続されている部分と対向する付記3に記載のセンサ。
[付記5]
前記第1の梁部の前記屈曲部は、前記第1の軸に平行な第1の部分と、当該第1の部分に接続され、前記第2の軸に平行な第2の部分とを含み、
前記第2の梁部の前記屈曲部は、前記第1の軸に平行な第3の部分と、当該第3の部分に接続され、前記第2の軸に平行な第4の部分とを含む付記2ないし4のいずれかに記載の加速度センサ。
[付記6]
前記基板上に設けられた第1のアンカー部および第2のアンカー部をさらに具備し、
前記第1の梁部の前記第1の部分は前記第1のアンカー部に接続され、
前記第2の梁部の前記第3の部分は前記第2のアンカー部に接続されている付記5に記載のセンサ。
[付記7]
前記基板上に設けられた第3のアンカー部および第4のアンカー部をさらに具備し、
前記第1の梁部の前記屈曲部は、前記第3のアンカー部に接続された第4の部分をさらに含み、
前記第2の梁部の前記屈曲部は、前記第4のアンカー部に接続された第5の部分をさらに含む付記6に記載のセンサ。
[付記8]
前記第1のアンカー部と前記第2のアンカー部との間の距離は、前記可動電極の前記第1の軸に平行な辺の長さの1/4以上2/3以下である付記6または7に記載のセンサ。
[付記9]
前記第1のアンカー部と前記第2のアンカー部との間の距離は、200μm以上500μm以下である付記6ないし8のいずれかに記載のセンサ。
[付記10]
前記可動電極は反っており、前記可動電極の周辺部は前記可動電極の中央部よりも上に位置する付記1ないし9のいずれかに記載のセンサ。
[付記11]
前記可動電極は、シリコンゲルマニウム膜、シリコン膜、シリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜、または、シリコン酸化膜とシリコン膜とシリコン酸化膜との積層膜を含む付記1ないし10のいずれかに記載のセンサ。
【0043】
また、上述した実施形態ではセンサについて説明したが、当該センサを構成する基板、第1の固定電極、第2の固定電極、可動電極、第1のトーションバネ、第1の梁部、第2のトーションバネおよび第2の梁部を含む構造として実施しても構わない。当該構造は、例えば、上記の基板や固定電極等の要素が機械的、電気的、または、機械的および電気的に接続され、センサの機能を奏するように構成されたセンサ構造である。
【0044】
また、実施形態のセンサを含む電気機器(もしくは電子機器)として実施しても構わない。当該電気機器(もしくは電子機器)は、例えば、センサにより検出された加速度に基づいて予め決められた動作もしくは処理(例えば情報処理)またはその両方を行う要素を含んでいても構わない。当該要素は、例えば、回路等のハードウェア、プログラム等のソフトウェア、または、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せで実装する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
G1…ギャップ、1X,1Y,1Z…MEMS加速度センサ、10…基板、10a…基板の上面(第1の面)、11…シリコン基板、12…シリコン酸化膜、21…第1の固定電極、22…第2の固定電極、23…配線層、24…シリコン窒化膜(エッチングストッパ)、25…開口、26…可動電極、27…貫通孔、31…第1のトーションバネ、32…第2のトーションバネ、41…第1の梁部、41a~41c…第1の梁部の一部分、42…第2の梁部、42a~42c…第2の梁部の一部分、51…アンカー部(第1のアンカー部)、52…アンカー部(第3のアンカー部)、53…アンカー部(第2のアンカー部)、54…アンカー部(第4のアンカー部)、61…絶縁膜(犠牲膜)、62…プラグ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15