(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】静電容量式近接センサおよびこの静電容量式近接センサを用いた人体検知方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20220720BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20220720BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01V3/08 D
H01H36/00 D
H03K17/955 G
(21)【出願番号】P 2018025592
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 守
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222423(JP,A)
【文献】特開2017-219393(JP,A)
【文献】特開2009-278319(JP,A)
【文献】特開2001-141836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328616(US,A1)
【文献】特開2010-139362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0306723(US,A1)
【文献】特開2002-039708(JP,A)
【文献】特開2002-057564(JP,A)
【文献】特開2013-104766(JP,A)
【文献】特開2001-055852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0125994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 -99/00 、
H01H36/00 -36/02 、
H03K17/74 -17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を出力する発振手段と、
単一の電極からなるセンサ電極を含み前記高周波信号が入力されるセンサ回路と、
前記センサ回路から出力された電気信号に基づいて、前記センサ電極の容量に応じた判定電圧信号を出力する検出回路と、
制御部と、を備え、
前記センサ回路は、コイルLとコンデンサCと抵抗Rがこの順で直列に接続されたLCR直列共振回路を有し、
前記センサ電極は、前記コイルLの下流側で且つ前記コンデンサCの上流側に接続され、
前記センサ電極は、前記コンデンサCとは別部材であり、
前記検出回路は、前記コンデンサCの下流側で且つ前記抵抗Rの上流側の検出点における前記電気信号に基づいて前記判定電圧信号を出力し、
前記制御部は、前記判定電圧信号に基づいて前記センサ電極への人体の近接を検出する、
ことを特徴とする静電容量式近接センサ。
【請求項2】
前記コンデンサCと前記検出点の間に整流点を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式近接センサ。
【請求項3】
前記検出回路は、ローパスフィルタと増幅器を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式近接センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電容量式近接センサを用いた人体検知方法であって、
物体が前記センサ電極に近接していないときの前記センサ回路の共振周波数をf
A、人体が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をf
Bとしたとき、
f
B<f
A
の関係を有する場合、
f
B≦f
1<f
2<f
A
の関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第1検出周波数f
1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
1としたとき、
V
1<V
th1
の関係を満足する第1閾値V
th1が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第2検出周波数f
2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
2としたとき、
V
2<V
th2
の関係を満足する第2閾値V
th2が設定され、
前記第1検出周波数f
1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第1閾値V
th1以上となったこと、または、前記第2検出周波数f
2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第2閾値V
th2以上となったこと、を検出することによって、前記センサ電極への人体の近接を検知する、
ことを特徴とする。
【請求項5】
前記第2検出周波数f
2が互いに異なる複数の周波数に設定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の人体検知方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電容量式近接センサを用いた人体検知方法であって、
物体が前記センサ電極に近接していないときの前記センサ回路の共振周波数をf
A、人体が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をf
B、水が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をf
Wとしたとき、
f
W<f
B<f
A
の関係を有する場合、
f
W≦f
1≦f
B<f
2<f
A
の関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第1検出周波数f
1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
11とし、
水が前記センサ電極に近接しているときに前記第1検出周波数f
1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
12としたとき、
V
11<V
th1
V
12<V
th1
の関係を満足する第1閾値V
th1が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第2検出周波数f
2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
21とし、
水が前記センサ電極に近接しているときに前記第2検出周波数f
2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV
22としたとき、
V
21<V
th2
V
22<V
th2
の関係を満足する第2閾値V
th2が設定され、
前記第1検出周波数f
1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第1閾値V
th1以上となったこと、または、前記第2検出周波数f
2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第2閾値V
th2以上となったこと、を検出することによって、前記センサ電極への人体の近接を検知する、
ことを特徴とする。
【請求項7】
前記第2検出周波数f
2が互いに異なる複数の周波数に設定される、
ことを特徴とする請求項6に記載の人体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のドアハンドルの内部などに設置され、人(手等)の近接もしくは接触を検出する静電容量式近接センサ、および、この静電容量式近接センサを用いた人体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車には、ドアの施錠・解錠をキー操作なしで行うことができるキーレスエントリーシステムが装備されている。キーレスエントリーシステムは、車内に設けられた認証部と、ユーザが所持する携帯機と、車両外側のドアハンドルに設けられユーザがドアハンドルの所定の位置に接触するとその接触を検知する近接センサと、ドアの施錠を行う施錠部と、ドアの解錠を行う解錠部とを備えている。
【0003】
近接センサとしては、センサ電極の静電容量の変化に基づいて物体が近接したことを検出する静電容量式近接センサが知られている。
また、静電容量式近接センサでは、物体の近接と非近接とで出力信号の大きな変化を確保して検出精度を高めるために、センサ電極を含む共振回路を用いることが知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、センサ電極の有する電極容量を含む容量を共振容量とし、この共振容量と共振インダクタを直列接続して共振周波数frを有する直列共振回路を形成し、この直列共振回路を共振周波数frよりも高い励振周波数で共振させ、直列共振回路の共振電圧に基づき物体の検出を行う静電容量式近接センサが記載されている。
特許文献1に記載の近接センサによれば、励振周波数を共振周波数frより高く設定したことにより、物体がセンサ電極へ接近する場合には共振電圧は常に減少することから、共振電圧の変化から物体の検出を行うことができるとされている。
【0005】
特許文献2には、センサ共振回路と検波回路から構成された静電容量式センサを備える人体検出器が記載されている。このセンサ共振回路は、コイルとコンデンサからなる共振回路にセンサ電極が接続され、センサ電極に何も接触していない定常状態では定周波電圧を出力し、センサ電極に物体が接触して静電容量が変化した場合はその静電容量の変化に応じて定周波電圧の振幅を変化させた電圧を出力するようになっている。
特許文献2に記載の人体検出器では、静電容量式センサの出力を受けて、その出力周波数や所定時間内における出力の変化に基づいて、人体と雨滴とを峻別できるとされている。
【0006】
特許文献3には、発振手段による発振周波数の高調波に共振するLC共振回路と、LC共振回路に接続された検出用電極と、検出用電極と被検出物との間の静電容量変化に基づく信号変化を検出する検出手段を備える静電容量形近接センサが記載されている。
特許文献3に記載の静電容量形近接センサでは、共振手段は高調波に共振するため、回路を流れる電流値が低下して消費電力を低減することができ、電池寿命を長くすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-39708号公報
【文献】特開2002-57564号公報
【文献】特開2001-55852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3は、いずれもセンサ電極の電圧を直接、検出回路に入力しているため、検出回路の入力インピーダンスが小さいと、センサ電極に流れる微小な電流に影響を与え易い。そのため、センサ電極の僅かな浮遊容量(数pF程度)を検出するには、検出回路の入力インピーダンスを非常に高くする必要がある。
このように入力インピーダンスの高い検出回路を用いた場合、環境温度変化等で入力インピーダンスが変化すると、正確な検出が難しくなる問題がある。
また、一般に入力インピーダンスの高い検出回路はノイズを拾い易く、例えば携帯電話のような無線機器等からの外来電波ノイズの影響による誤作動を十分に防止できない問題もある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、環境温度変化やノイズの影響を受け難く、センサ電極への人体の近接をより高い精度で検出することができる静電容量式近接センサおよびこの静電容量式近接センサを用いた人体検知方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の静電容量式近接センサの一実施態様は、
高周波信号を出力する発振手段と、
単一の電極からなるセンサ電極を含み前記高周波信号が入力されるセンサ回路と、
前記センサ回路から出力された電気信号に基づいて、前記センサ電極の容量に応じた判定電圧信号を出力する検出回路と、
制御部と、を備え、
前記センサ回路は、コイルLとコンデンサCと抵抗Rがこの順で直列に接続されたLCR直列共振回路を有し、
前記センサ電極は、前記コイルLの下流側で且つ前記コンデンサCの上流側に接続され、
前記センサ電極は、前記コンデンサCとは別部材であり、
前記検出回路は、前記コンデンサCの下流側で且つ前記抵抗Rの上流側の検出点における前記電気信号に基づいて前記判定電圧信号を出力し、
前記制御部は、前記判定電圧信号に基づいて前記センサ電極への人体の近接を検出する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の人体検知方法の一実施態様は、
上記本発明の静電容量式近接センサを用いた人体検知方法であって、
物体が前記センサ電極に近接していないときの前記センサ回路の共振周波数をfA、人体が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をfBとしたとき、
fB<fA
の関係を有する場合、
fB≦f1<f2<fA
の関係を満足する第1検出周波数f1と第2検出周波数f2が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第1検出周波数f1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV1としたとき、
V1<Vth1
の関係を満足する第1閾値Vth1が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第2検出周波数f2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV2としたとき、
V2<Vth2
の関係を満足する第2閾値Vth2が設定され、
前記第1検出周波数f1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第1閾値Vth1以上となったこと、または、前記第2検出周波数f2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第2閾値Vth2以上となったこと、を検出することによって、前記センサ電極への人体の近接を検知する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の人体検知方法の他の実施態様は、
上記本発明の静電容量式近接センサを用いた人体検知方法であって、
物体が前記センサ電極に近接していないときの前記センサ回路の共振周波数をfA、人体が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をfB、水が前記センサ電極に近接したときの前記センサ回路の共振周波数をfWとしたとき、
fW<fB<fA
の関係を有する場合、
fW≦f1≦fB<f2<fA
の関係を満足する第1検出周波数f1と第2検出周波数f2が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第1検出周波数f1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV11とし、
水が前記センサ電極に近接しているときに前記第1検出周波数f1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV12としたとき、
V11<Vth1
V12<Vth1
の関係を満足する第1閾値Vth1が設定され、
物体が前記センサ電極に近接していないときに前記第2検出周波数f2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV21とし、
水が前記センサ電極に近接しているときに前記第2検出周波数f2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号をV22としたとき、
V21<Vth2
V22<Vth2
の関係を満足する第2閾値Vth2が設定され、
前記第1検出周波数f1の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第1閾値Vth1以上となったこと、または、前記第2検出周波数f2の高周波信号を前記センサ回路に入力した際の前記判定電圧信号が前記第2閾値Vth2以上となったこと、を検出することによって、前記センサ電極への人体の近接を検知する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電容量式近接センサによれば、センサ電極の電圧を直接、検出回路に入力するのではなく、センサ回路の特定の検出点の電気信号を検出回路に入力することにより、環境温度変化やノイズの影響を受けにくい入力インピーダンスの比較的低い検出回路を用いてセンサ電極の僅かな浮遊容量を検出することができる。
また、本発明の人体検知方法によれば、センサ電極への人体の近接をより高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態例に係る静電容量式近接センサの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態例に係る静電容量式近接センサおける、高周波信号S
0の周波数fと、判定電圧信号S
1の関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の第1の実施形態例において、第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図4】本発明の第1の実施形態例において、第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図5】本発明の第1の実施形態例に係る静電容量式近接センサにおいて実行する検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態例に係る静電容量式近接センサおける、高周波信号S
0の周波数fと、判定電圧信号S
1の関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の第2の実施形態例において、第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図8】本発明の第2の実施形態例において、第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図9】本発明の第2の実施形態例において、第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図10】本発明の第2の実施形態例に係る静電容量式近接センサにおいて実行する検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本発明の第3の実施形態例に係る静電容量式近接センサおける、高周波信号S
0の周波数fと、判定電圧信号S
1の関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の第3の実施形態例において、第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図13】本発明の第3の実施形態例において、第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図14】本発明の第3の実施形態例において、第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路に入力した際の判定電圧信号S
1を説明するためのグラフである。
【
図15】本発明の第3の実施形態例における人の検出方法を説明するためのグラフである。
【
図16】本発明の変形例に係る静電容量式近接センサの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態例を説明する。
【0016】
(第1の実施形態例)
本発明の第1の実施形態例の静電容量式近接センサは、所謂キーレスエントリーシステムにおける車両ドアの解錠もしくは施錠用のセンサとして用いることができるものである。この場合、センサ電極は被操作体としてのドアハンドルの内部に設けられ、ドアハンドルの所定の面にユーザが近接もしくは接触すると、その近接もしくは接触を検知できるように所定の位置に配される。
【0017】
本例の静電容量式近接センサ1は、
図1のブロック図に示すように、主にセンサ回路10と、検出回路20と、マイコン30からなる。
【0018】
センサ回路10は、コイルLとコンデンサCと抵抗Rがこの順で直列に接続されたLCR直列共振回路と、センサ電極11を備えている。
センサ電極11は、コイルLの下流側で且つコンデンサCの上流側のセンサ電極接続点P1にコンデンサCとは並列に接続されており、人体等の近接によって静電容量が増加する。
本例のコイルLのインダクタンスは10mH、コンデンサCの静電容量は7pF、抵抗Rの抵抗は470Ωであるが、これらの値は適宜設定することができる。
【0019】
検出回路20は、半波整流用のダイオード21と、ローパスフィルタを構成する固定抵抗22とコンデンサ23、および増幅器(バッファ回路)24を有する。
この検出回路20は、センサ回路10から出力された電気信号に基づいて、センサ電極11の静電容量に応じた判定電圧信号S1を出力する。具体的には、検出回路20は、コンデンサCの下流側で且つ抵抗Rの上流側の検出点P3における電気信号に基づいて判定電圧信号S1を出力する。なお、ダイオード21はコンデンサCと検出点P3の間の整流点P2に接続されている。
検出回路20は、センサ電極11の静電容量に応じた判定電圧信号S1を出力するものであれば任意の回路構成が可能である。また、抵抗Rの抵抗値を低くすることにより、ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0020】
従来の静電容量式近接センサのようにセンサ電極接続点P1の電圧を直接、検出回路に入力すると、入力インピーダンスの極めて高い検出回路を必要とする。検出回路の入力インピーダンスが高いと、ノイズや温度変化等の影響を受け易く、センサ電極の僅かな浮遊容量の変化を高い信頼性をもって検出することが困難である。
一方、本例のように、センサ回路10のコンデンサCの下流側で且つ抵抗Rの上流側の検出点P3の電気信号を検出回路20に入力することにより、入力インピーダンスの低い安価な検出回路を用いてセンサ電極11の僅かな浮遊容量を検出することができる。具体的には、本例の近接センサ1では、LCR直列共振回路に流れる電流を電圧に変換して検出回路20に入力しており、検出回路20はセンサ電極11に直接、接続されていない。このため、検出回路20によるセンサ電極11の浮遊容量に対する影響が少なく、環境温度変化等によって検出回路20の入力インピーダンスが多少変化しても、センサ電極11の僅かな浮遊容量を検出することができる。
【0021】
マイコン30は、ADコンバータ31、制御部32、高周波信号生成部33を有する。
ADコンバータ31は、検出回路20から入力された判定電圧信号S1をA/D変換し、判定信号S2として制御部32に出力する。
制御部32は、詳しくは後述するが、高周波信号生成部33に制御信号S3を出力する他、判定信号S2に基づき人体がドアハンドルに接触した(人体がセンサ電極22に近接した)と判断した場合には人の検知信号S4を出力する。
発振手段としての高周波信号生成部33は、詳しくは後述するが、制御部32から入力される制御信号S3に基づき、所定の周波数および所定のデューティ比の高周波信号S0をセンサ回路10に出力する。
【0022】
本例では高周波信号S0として、矩形波状の高周波信号(概ね数百kHz)を用いている。なお、高周波信号S0としては、矩形波に限らず正弦波や三角波等であってもよい。
センサ回路10に入力された高周波信号S0は、コイルLとコンデンサC(およびセンサ電極11の静電容量)により歪まされ、立上がりおよび立下がりが遅れた鋸歯状波に近い波形となり、ダイオード21により半波整流される。そして、検出点P3における電気信号は、ローパスフィルタを構成する固定抵抗22とコンデンサ23によって平滑化された後、バッファ回路24を介して直流に近い判定電圧信号S1が出力される。
【0023】
図2は、センサ回路10に入力される高周波信号S
0の周波数fと、センサ電極11への物体(人体等)の非近接時と近接時の判定電圧信号S
1との関係を示している。
図2において、S
1Aは物体がセンサ電極11に近接していないときのグラフであり、S
1Bは人が素手でセンサ電極11に近接したときのグラフであり、S
1Cは人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときのグラフである。
図2に示されるように、人が素手でセンサ電極11に近接したときの共振周波数f
Bは、物体がセンサ電極11に近接していないときの共振周波数f
Aよりも低い。これは、人体がセンサ電極11に近接するとセンサ電極11の静電容量が増えることによる。また、人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときの共振周波数f
Cは、f
Aとf
Bの中間にある。なお、本例では、f
Aは270kHz、f
Bは250kHz、f
Cは257kHzである。
【0024】
次に、本例における人の検知方法について説明する。
まず、
図2のようにf
B<f
Aの関係を有する場合、f
B≦f
1<f
2<f
Aの関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2が設定される。なお、本例では、第1検出周波数f
1をf
B(250kHz)に設定し、第2検出周波数f
2をf
C(257kHz)に設定している。
【0025】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図3の点P
A1の電圧)をV
1、人が素手でセンサ電極11に近接したときに第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図3の点P
Bの電圧)をV
Bとしたとき、
V
1<V
th1≦V
B
の関係を満足する第1閾値V
th1が設定される。
なお、本例では、
V
th1=(V
1+V
B)/2
に設定している。具体的には、V
1は1.00V、V
Bは2.00Vであり、V
th1は1.50Vに設定されている。
【0026】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図4の点P
A2の電圧)をV
2、人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときに第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図4の点P
Cの電圧)をV
Cとしたときとしたとき、
V
2<V
th2≦V
C
の関係を満足する第2閾値V
th2が設定される。
なお、本例では、
V
th2=(V
2+V
C)/2
に設定している。具体的には、V
2は1.10V、V
Cは1.80Vであり、V
th2は1.45Vに設定されている。
【0027】
なお、第1検出周波数f
1、第2検出周波数f
2、第1閾値V
th1および第2閾値V
th2は、近接センサ1が実際に配されるドアハンドル等を含む車両ドアを想定して事前に得られた
図2のデータに基づいて決定し、予めマイコン30に格納しておくことができる。
【0028】
次に、本例の近接センサ1による人の検出動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
(ステップS0)
まず、電子キーを携帯したユーザが車両に近づくと、車載の認証システムと電子キーとの間で無線通信が行われ、当該車両の正規の電子キーであることの認証が行われる。なお、この認証は、スマートエントリーシステムにおける公知の認証方法で行うことができる。
正規の電子キーであることの認証が行われると、近接センサ1による人体の検出が行われる。
【0030】
(ステップS1)
制御部32は、高周波信号生成部33からセンサ回路10に第1検出周波数f1(250kHz)の高周波信号S0を入力するように制御する。
【0031】
(ステップS2、S3)
本ステップでは、所定時間内にセンサ電極11に人が素手で近接もしくは接触したかどうかを判断する。
センサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に人が素手でセンサ電極11に近接すると、
図3に示すように判定電圧信号S
1がV
1からV
Bに変化する。このように判定電圧信号S
1が変化する過程において、判定電圧信号S
1が第1閾値V
th1以上になるとステップS7に進む。
一方、センサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に判定電圧信号S
1が第1閾値V
th1以上にならない場合はステップS4に進む。
【0032】
(ステップS4)
制御部32は、高周波信号生成部33からセンサ回路10に第2検出周波数f2(257kHz)の高周波信号S0を入力するように制御する。
【0033】
(ステップS5、S6)
本ステップでは、所定時間内にセンサ電極11に人が薄手の手袋をして近接もしくは接触したかどうかを判断する。
センサ回路10に第2検出周波数f
2の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接していると、
図4に示すように判定電圧信号S
1がV
Cに変化する。このように判定電圧信号S
1が変化する過程において、判定電圧信号S
1が第2閾値V
th2以上になるとステップS7に進む。
一方、センサ回路10に第2検出周波数f
2の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に判定電圧信号S
1が第2閾値V
th2以上にならない場合はステップS1に戻る。
【0034】
(ステップS7)
ステップS2において判定電圧信号S1が第1閾値Vth1以上になるか、ステップS5において判定電圧信号S1が第2閾値Vth2以上になった場合、人がドアハンドルに接触した(人がセンサ電極11に近接した)と判断し、人の検知信号S4を出力する。
なお、人の検知信号S4が出力されると、ドアのアウタパネル内に設けられているドアロック機構が制御され、車両ドアの解錠もしくは施錠が行われる。
【0035】
(ステップS8)
所定時間(本例では1秒間)経過した後、ステップS1に戻る。
【0036】
以上のように、本例の静電容量式近接センサ1では、センサ電極11への物体の非近接時と、人の素手による近接時と、人が薄手の手袋をした状態での近接時とでは、センサ回路10の共振周波数が
図2のように変化する。
このため、例えばセンサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際に、判定電圧信号S
1が第1閾値V
th1以上になった場合だけ人体がドアハンドルに接触したと判断する方法では、
図3のV
C1(点P
C1の電圧)がV
th1よりも低いため、手袋をした人による接触を検知することができない。なお、V
C1は、センサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際、人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときの判定電圧信号である。
【0037】
そこで、本例の静電容量式近接センサ1では、第1検出周波数f1をfB、第2検出周波数f2をfCに設定するとともに、第1閾値Vth1をV1とVBの中間値、第2閾値Vth2をV2とVCの中間値に設定している。そして、センサ回路10に第1検出周波数f1の高周波信号S0を入力した際に判定電圧信号S1が第1閾値Vth1以上になるか、もしくは、センサ回路10に第2検出周波数f2の高周波信号S0を入力した際に判定電圧信号S1が第2閾値Vth2以上になった場合、人体がドアハンドルに接触した(人体がセンサ電極11に近接した)と判断し、人の検知信号S4を出力するようにしている。これにより、人の素手のみならず、薄手の手袋をした状態でも、センサ電極11への近接を検知することができる。
【0038】
なお、本例では、第1検出周波数f1を入力した後に第2検出周波数f2を入力しているが、第2検出周波数f2を入力した後に第1検出周波数f1を入力してもよい。つまり、ステップS1,S2と、ステップS4,S5の順序を入れ替えてもよい。
【0039】
また、本例では、第1検出周波数f1をfB、第2検出周波数f2をfCに設定しているが、fB≦f1<f2<fAの関係を満たしていれば、f1とf2を任意に設定することができる。
また、本例では、
Vth1=(V1+VB)/2
Vth2=(V2+VC)/2
に設定しているが、Vth1を用いて人の素手による近接を検出でき、Vth2を用いて薄手の手袋をした状態による近接を検出できるのであれば、Vth1とVth2を任意に設定することができる。
【0040】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例の静電容量式近接センサは、第1の実施形態例と同様の構成を有する。
第1の実施形態例では素手と薄手の手袋による近接を検出するために、センサ回路に第1検出周波数f1と第2検出周波数f2の高周波信号を入力したが、本例は更に厚手の手袋による近接も検出できるようにした点が第1の実施形態例と異なる。
【0041】
図6は、本例の近接センサおける、高周波信号S
0の周波数fと、判定電圧信号S
1の関係を示しており、
図2のグラフに人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときのグラフS
1Dが追加されている。
図6に示されるように、人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときの共振周波数f
Dは、f
Aとf
Cの中間にある。なお、本例では、f
Aは270kHz、f
Bは250kHz、f
Cは257kHz、f
Dは264kHzである。
【0042】
次に、本例における人の検知方法について説明する。
まず、
図6のようにf
B<f
Aの関係を有する場合、f
B≦f
1<f
2<f
3<f
Aの関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2と第3検出周波数f
3が設定される。本例では、第1検出周波数f
1をf
B(250kHz)に設定し、第2検出周波数f
2をf
C(257kHz)に設定し、第3検出周波数f
3をf
D(264kHz)に設定している。
このように、本例では、第1の実施形態例における第2検出周波数を互いに異なる複数の周波数(すなわち、第2検出周波数と第3検出周波数)に設定していることになる。
【0043】
本例における第1検出周波数f
1、第2検出周波数f
2、第1閾値V
th1および第2閾値V
th2の設定方法は第1の実施形態例と同じである(
図7、
図8参照)。
【0044】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図9の点P
A3の電圧)をV
3とし、人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときに第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図9の点P
Dの電圧)をV
Dとしたとき、
V
3<V
th3≦V
D
の関係を満足する第3閾値V
th3が設定される。
なお、本例では、
V
th3=(V
3+V
D)/2
に設定している。具体的には、V
3は1.40V、V
Dは1.80Vであり、V
th2は1.60Vに設定されている。
【0045】
なお、第1検出周波数f
1、第2検出周波数f
2、第3検出周波数f
3、第1閾値V
th1、第2閾値V
th2および第3閾値V
th3は、近接センサ1が実際に配されるドアハンドル等を含む車両ドアを想定して事前に得られた
図6のデータに基づいて決定し、予めマイコン30に格納しておくことができる。
【0046】
次に、本例の近接センサによる人の検出動作を
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
(ステップS10~S16)
ステップS10~S16は、第1の実施形態例のステップS0~S6と同様である。
【0048】
(ステップS17)
ステップS15において所定時間内に判定電圧信号S1が第2閾値Vth2以上にならない場合、制御部32は、高周波信号生成部33からセンサ回路10に第3検出周波数f3(264kHz)の高周波信号S0を入力するように制御する。
【0049】
(ステップS18、S19)
本ステップでは、所定時間内にセンサ電極11に人が厚手の手袋をして近接もしくは接触したかどうかを判断する。
センサ回路10に第3検出周波数f
3の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接していると、
図9に示すように判定電圧信号S
1がV
D(1.80V)に変化する。このように判定電圧信号S
1が変化する過程において、判定電圧信号S
1が第3閾値V
th3(1.60V)以上になるとステップS20に進む。
一方、センサ回路10に第3検出周波数f
3の高周波信号S
0を入力した際、所定時間内に判定電圧信号S
1が第3閾値V
th3(1.60V)以上にならない場合はステップS11に戻る。
【0050】
(ステップS20)
ステップS12において判定電圧信号S1が第1閾値Vth1(1.50V)以上になるか、ステップS15において判定電圧信号S1が第2閾値Vth2(1.45V)以上になるか、ステップS18において判定電圧信号S1が第3閾値Vth2(1.60V)以上になった場合、人がドアハンドルに接触した(人がセンサ電極11に近接した)と判断し、人の検知信号S4を出力する。
【0051】
(ステップS21)
所定時間経過した後、ステップS11に戻る。
【0052】
以上のように、本例の静電容量式近接センサでは、センサ電極11への物体の非近接時と、人の素手による近接時と、薄手の手袋をした状態での近接時と、厚手の手袋をした状態での近接時とでは、共振周波数が
図6のように変化する。
このため、第1の実施形態例の検出方法では、
図7のV
D1(点P
D1の電圧)がV
th1よりも低く、さらに
図8のV
D2(点P
D2の電圧)がV
th2よりも低いため、厚手の手袋をした人による接触を検知することができない。なお、V
D1は、センサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際、人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときの判定電圧信号である。また、V
D2は、センサ回路10に第2検出周波数f
2の高周波信号S
0を入力した際、人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときの判定電圧信号である。
【0053】
そこで、本例の静電容量式近接センサでは、第1検出周波数f1をfB、第2検出周波数f2をfCに設定し、さらに第3検出周波数f3をfDに設定するとともに、第1閾値Vth1をV1とVBの中間値、第2閾値Vth2をV2とVCの中間値に設定し、さらに第3閾値Vth3をV3とVDの中間値に設定している。そして、センサ回路10に第1検出周波数f1の高周波信号S0を入力した際に判定電圧信号S1が第1閾値Vth1以上になるか、センサ回路10に第2検出周波数f2の高周波信号S0を入力した際に判定電圧信号S1が第2閾値Vth2以上になるか、センサ回路10に第3検出周波数f3の高周波信号S0を入力した際に判定電圧信号S1が第3閾値Vth3以上になった場合、人がドアハンドルに接触した(人がセンサ電極11に近接した)と判断し、人の検知信号S4を出力するようにしている。これにより、人の素手のみならず、薄手の手袋や厚手の手袋をした状態でも、センサ電極11への近接を検知することができる。
【0054】
なお、本例では、第1検出周波数f1、第2検出周波数f2、第3検出周波数f3の順に入力しているが、第1の実施形態例と同様、これらの順序を入れ替えてもよい。つまり、ステップS11,S12と、ステップS14,S15と、ステップS17,S18の順序を入れ替えてもよい。
【0055】
また、本例では、第1検出周波数f1をfB、第2検出周波数f2をfC、第3検出周波数f3をfDに設定しているが、fB≦f1<f2<f3<fAの関係を満たしていれば、f1とf2とf3を任意に設定することができる。
また、本例では、
Vth1=(V1+VB)/2
Vth2=(V2+VC)/2
Vth3=(V3+VD)/2
に設定しているが、Vth1を用いて人の素手による近接を検出でき、Vth2を用いて薄手の手袋をした状態による近接を検出でき、Vth3を用いて厚手の手袋をした状態による近接を検出できるのであれば、Vth1、Vth2およびVth3を任意に設定することができる。
【0056】
(第3の実施形態例)
本発明の第3の実施形態例の静電容量式近接センサは、第1の実施形態例と同様の構成を有する。
一般に静電容量式近接センサにおいては、水に反応しないようにするために感度を下げる方法があるが、この方法では例えば厚い手袋をした状態やセンサから離れた手や足を検出できない問題がある。
本例の近接センサは、センサの感度を低下させることなく、水を検出せず人だけの検出を行えるようにしたものである。
【0057】
図11は、本例の近接センサおける、高周波信号S
0の周波数fと、判定電圧信号S
1の関係を示しており、
図6のグラフに洗車時を想定し比較的大量の水がセンサ電極11に近接したときのグラフS
1Wが追加されている。
図11に示されるように、多量の水がセンサ電極11に近接したときの共振周波数f
Wはf
Bよりも低い。なお、本例では、f
Aは270kHz、f
Bは250kHz、f
Cは257kHz、f
Dは264kHz、f
Wは248kHzである。
【0058】
次に、本例における人の検知方法について説明する。
まず、
図11のようにf
W<f
B<f
Aの関係を有する場合、f
W≦f
1≦f
B<f
2<f
3<f
Aの関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2と第3検出周波数f
3が設定される。本例では、第1検出周波数f
1をf
W(248kHz)に設定し、第2検出周波数f
2をf
C(257kHz)に設定し、第3検出周波数f
3をf
D(264kHz)に設定している。
このように、本例は、第2の実施形態例において第1検出周波数f
1をf
Aからf
Wに変更したことに相当する。
【0059】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図12の点P
A1の電圧)をV
11、水がセンサ電極11に近接しているときに第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図12の点P
Wの電圧)をV
12、人が素手でセンサ電極11に近接したときに第1検出周波数f
1の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図12の点P
B1の電圧)をV
B1としたとき、
V
11<V
th1≦V
B1
V
12<V
th1≦V
B1
の関係を満足する第1閾値V
th1が設定される。
なお、本例では、V
11<V
12、であるため、
V
th1=(V
12+V
B1)/2
に設定している。具体的には、V
12は1.55V、V
B1は1.95Vであり、V
th1は1.75Vに設定されている。
【0060】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図13の点P
A2の電圧)をV
21、水がセンサ電極11に近接しているときに第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図13の点P
W2の電圧)をV
22、人が薄手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときに第2検出周波数f
2の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図13の点P
Cの電圧)をV
Cとしたとき、
V
21<V
th2≦V
C
V
22<V
th2≦V
C
の関係を満足する第2閾値V
th2が設定される。
なお、本例では、V
22<V
21、であるため、
V
th2=(V
21+V
C)/2
に設定している。具体的には、V
21は1.20V、V
Cは1.80Vであり、V
th2は1.50Vに設定されている。
【0061】
また、物体がセンサ電極11に近接していないときに第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図14の点P
A3の電圧)をV
31、水がセンサ電極11に近接しているときに第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図14の点P
W3の電圧)をV
32、人が厚手の手袋をしてセンサ電極11に近接したときに第3検出周波数f
3の高周波信号をセンサ回路10に入力した際の判定電圧信号(
図14の点P
Dの電圧)をV
Dとしたとき、
V
31<V
th3≦V
D
V
32<V
th3≦V
D
の関係を満足する第3閾値V
th3が設定される。
なお、本例では、V
32<V
31、であるため、
V
th3=(V
31+V
D)/2
に設定している。具体的には、V
31は1.40V、V
Dは1.80Vであり、V
th3は1.60Vに設定されている。
【0062】
なお、第1検出周波数f
1、第2検出周波数f
2、第3検出周波数f
3、第1閾値V
th1、第2閾値V
th2および第3閾値V
th3は、近接センサ1が実際に配されるドアハンドル等を含む車両ドアを想定して事前に得られた
図11のデータに基づいて決定し、予めマイコン30に格納しておくことができる。
【0063】
本例の近接センサによる人の検出動作は、第2の実施形態例の
図10のフローチャートと全く同じであるため、説明を省略する。
【0064】
本例の静電容量式近接センサ1では、センサ電極11への物体の非近接時と、人の素手による近接時と、薄手の手袋をした状態での近接時と、厚手の手袋をした状態での近接時と、水の近接時とでは、共振周波数が
図11のように変化する。
このため、第1および第2の実施形態例の検出方法のように、第1検出周波数f
1をf
Bに設定し、第1閾値V
th1を(V
1+V
B)/2に設定すると、
図15のV
W1(点P
W1の電圧)がV
th1よりも高くなるため、センサ電極に水が近接した際に人体がセンサ電極11に近接したと誤判断してしまう。
【0065】
そこで、本例の静電容量式近接センサでは、f
W≦f
1≦f
B<f
2<f
3<f
Aの関係を満足する第1検出周波数f
1と第2検出周波数f
2と第3検出周波数f
3を設定するとともに、第1閾値V
th1をV
12とV
B1の中間値(
図12参照)、第2閾値V
th2をV
21とV
Cの中間値(
図13参照)、第3閾値V
th3をV
31とV
Dの中間値(
図14参照)に設定している。そして、センサ回路10に第1検出周波数f
1の高周波信号S
0を入力した際に判定電圧信号S
1が第1閾値V
th1以上になるか、センサ回路10に第2検出周波数f
2の高周波信号S
0を入力した際に判定電圧信号S
1が第2閾値V
th2以上になるか、センサ回路10に第3検出周波数f
3の高周波信号S
0を入力した際に判定電圧信号S
1が第3閾値V
th3以上になった場合、人体がドアハンドルに接触した(人体がセンサ電極11に近接した)と判断し、人の検知信号S
4を出力するようにしている。これにより、水の近接による誤検知を防止しつつ、人の素手のみならず、薄手の手袋や厚手の手袋をした状態でも、センサ電極11への近接を検知することができる。
【0066】
なお、本例においても、第1検出周波数f1、第2検出周波数f2、第3検出周波数f3の入力順を入れ替えてもよい。
【0067】
また、本例では、第1検出周波数f1をfW、第2検出周波数f2をfC、第3検出周波数f3をfDに設定しているが、fB≦f1<f2<f3<fAの関係を満たしていれば、f1とf2とf3を任意に設定することができる。
また、本例では、
Vth1=(V12+VB1)/2
Vth2=(V21+VC)/2
Vth3=(V31+VD)/2
に設定しているが、水の近接による誤検知を防止しつつ、Vth1を用いて人の素手による近接を検出でき、Vth2を用いて薄手の手袋をした状態による近接を検出でき、Vth3を用いて厚手の手袋をした状態による近接を検出できるのであれば、Vth1、Vth2およびVth3を任意に設定することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明はこれらの実施形態例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態例を適宜に変形もしくは組み合わせできることは言うまでもない。
【0069】
例えば、第1~3の実施形態例では事前に得られた高周波信号S
0の周波数fと判定電圧信号S
1との関係データ(
図2、6、11)に基づいて検出周波数や閾値を決定し、これらを予めマイコン30に格納しているが、近接センサが実際に駆動される時点でこれらを決定することもできる。
具体的には、キーレスエントリーシステムにおける車両ドアの解錠もしくは施錠用のセンサとして用いる場合、正規の電子キーが認証された時点では物体がセンサ電極に未だ近接していない状態であるため、この時点で高周波信号S
0の周波数掃引を行うことにより物体がセンサ電極に近接していないときのグラフS
1Aのデータ(共振周波数f
Aやピーク電圧P
A等)を取得することができる。
そして、検出周波数については、例えば、
f
1=f
A-20(kHz)
f
2=f
A-15(kHz)
f
3=f
A-10(kHz)
のように、全ての検出周波数を、f
Aに基づく所定の計算式で求めてもよい。
また、閾値についても、例えば、
V
th1=P
A×0.8(V)
V
th2=P
A×0.6(V)
V
th2=P
A×0.7(V)
のように、全ての閾値を、P
Aに基づく所定の計算式で求めてもよい。
なお、これらの計算式は、近接センサが実際に配されるドアハンドル等を含む車両ドアを想定して事前に得られたデータに基づいて任意に定めることができる。
【0070】
また、センサ回路や検出回路の具体的な構成についても特に限定されるものではなく、
図1のブロック図の他にも、例えば
図16のブロック図のような回路構成にしてもよい。
図1の回路ではローパスフィルタ用の固定抵抗22を用いているが、コンデンサ23の静電容量と抵抗Rの抵抗値を適宜の値に設定することにより、固定抵抗22を除いた
図16の回路とすることもできる。この場合、携帯電話のような無線機器等からの外来電波ノイズの影響を受けにくくするには、抵抗Rの抵抗値を低く設定するのがよい。
【0071】
また、第1~3の実施形態例では近接センサを車両のドアハンドルに装着した場合を説明したが、本発明の静電容量式近接センサは住宅や事務所等のドアにも適用できるものである。
また、第1~3の実施形態例では物体の近接を検知した際の制御として、ドアの解錠と施錠を制御する場合を説明したが、例えば室内側や室外側の各種照明や表示灯の点灯と消灯を制御するなどしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 静電容量式近接センサ
10 センサ回路
11 センサ電極
L LCR直列共振回路のコイル
C LCR直列共振回路のコンデンサ
R LCR直列共振回路の抵抗
20 検出回路
21 ダイオード
22 固定抵抗
23 コンデンサ
24 増幅器(バッファ回路)
30 マイコン(マイクロコンピュータ)
31 ADコンバータ
32 制御部
33 高周波信号生成部
P1 センサ電極接続点
P2 整流点
P3 検出点