(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】地下シェルター及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20220720BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220720BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20220720BHJP
E04H 7/18 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E02D29/05 A
E04H1/12 A
E04H9/14 B
E04H7/18 Z
(21)【出願番号】P 2018189684
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2018038113
(32)【優先日】2018-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018162864
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501185235
【氏名又は名称】三和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】谷中 治
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-111873(JP,A)
【文献】特開2008-144419(JP,A)
【文献】特開平06-257171(JP,A)
【文献】特開平06-010364(JP,A)
【文献】特開2002-121755(JP,A)
【文献】特開2006-037359(JP,A)
【文献】特開昭57-000234(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012473(WO,A1)
【文献】特開2019-112851(JP,A)
【文献】特開2016-223205(JP,A)
【文献】特開2013-014898(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199431(WO,A1)
【文献】特許第5024914(JP,B1)
【文献】特開平11-280088(JP,A)
【文献】実開平3-105502(JP,U)
【文献】特開平10-168900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
E04H 1/12
E04H 9/14
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され、鉄筋コンクリートからなるボックス状の地下シェルターであって、
底面と、該底面の各辺から立設される4側面と、前記底面に対向し、開口部を有する上面からなる本体と、前記開口部を覆う上蓋と、から構成され、
前記地下シェルターの周囲に組み立てられる鉄筋と接続される1本又は複数本の鉄筋が前記4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に固着されていることを特徴とする地下シェルター。
【請求項2】
請求項1に記載の地下シェルターを建物の基礎工事において建物床下に設置する方法であって、
建物基礎の底面の高さまで、地盤を掘削する工程と、
前記地下シェルターを埋設するための溝穴を掘削する工程と、
前記建物基礎の底面及び前記溝穴底面に、砕石及び防湿シートを敷き、第1のコンクリートを打設する工程と、
前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程と、
前記第1のコンクリートの上面に型枠を設置し、鉄筋を組み立て、前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋と一体化するように接続する工程と、
前記組み立てられた鉄筋上に第2のコンクリートを打設する工程と、
を含むことを特徴とする地下シェルターの設置方法。
【請求項3】
底面と、該底面の各辺から立設される4側面と、前記底面に対向し、開口部を有する上面からなる本体と、前記開口部を覆う上蓋と、から構成され、前記4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に1本又は複数本の鉄筋が固着され、地中に埋設される鉄筋コンクリートからなるボックス状の地下シェルターを地中に設置する方法であって、
前記地下シェルターを埋設するための溝穴を掘削する工程と、
前記溝穴底面に、砕石及び防湿シートを敷き、第1のコンクリートを打設する工程と、
前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程と、
前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋上に第2のコンクリートを打設する工程と、
を含むことを特徴とする地下シェルターの設置方法。
【請求項4】
請求項3に記載の地下シェルターの設置方法であって、前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程の後、前記地下シェルターの周囲に鉄筋を組み立て、前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋と一体化するように接続する工程を含むことを特徴とする地下シェルターの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設され、貴重品等の資産を保管するための鉄筋コンクリートからなる地下シェルター及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害等の緊急時に避難できる地下シェルターや貴重品を保管するための地下収納庫の需要が高まっている。地下シェルターは人が避難し、一定期間滞在することができるように設計されており、酸素供給や水道など生活に必要なものを備えている。また、地下収納庫は、住宅の一般的な床下収納庫よりも大容量で貴重品等をより多く収納できるように設計されている。このような地下シェルターや地下収納庫は、大震災やそれに伴う津波、台風、洪水等の自然災害に耐え得る充分な強度を有するように設計されていることが多い。
【0003】
このような充分な強度を有する地下シェルターや地下収納庫の材料の一つにコンクリートがある。特に住宅の基礎に使用されるコンクリートは強度が高く、大震災に伴う建物の倒壊、津波、火災によって、多くの建物が倒壊する中、住宅の基礎コンクリートは倒壊せずに残っていたことが知られている。コンクリート製品は、高い耐震性、耐火性を有するため、様々な分野で使用され、例えば、電気ケーブルや通信ケーブル等を地中配線する際に使用されるハンドホール、マンホール等の地中埋設箱に使用されている。
【0004】
コンクリート製の地下シェルターとして、例えば特許文献1が開示されている。特許文献1の地下シェルターは、高強度鉄筋コンクリートからなるシェルター外殻と、シェルター外殻の内部に形成された金属板からなるシェルター内殻と、該シェルター内殻の内部に形成された間仕切壁とから構成されている。それにより、高い遮蔽性、耐久性に加え、耐震性、防水性、機能性を持たせることができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、コンピュータのバックアップ施設用地下シェルターが開示されている。この発明は、地中に打ち込んだ複数の杭に支持させた耐圧盤上に、外表面をコンクリート流し込み時に用いられたまま残された型枠を兼ねる鉄板で覆った高強度コンクリートよりなるボックス状の地下シェルターであり、内部にホストコンピュータのバックアップ機器を設置している。シェルター本体は、免震床上にホストコンピュータのバックアップ機器を設置してある主室と、この主室とは防水扉により遮断されて主室と地上とを切り離すことにより主室内への浸水を防ぐ副室から構成されている。それにより、優れた耐震性および防水性が保証され、その内部にあるバックアップ機器を的確に保護することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4072734号明細書
【文献】特許第3836111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2の地下シェルターは、前述のように高い耐久性や耐震性、防水性等を有しているが、地下シェルター本体の内部の部屋が区切られているため、施工が複雑で費用がかかり、施工期間も長くかかる。また、充分な強度を有する地下シェルターとして鋼製の地下シェルターや鋼板と繊維強化プラスチック(FRP)等からなる地下シェルターも知られているが、費用が高額となる場合が多い。さらに、軽量であるため、液状化による浮き上がりを防止するために、コンクリートを下部に打設するなどの工夫が必要である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、自然災害に耐え得る充分な耐震性、防火性、防水性を有し、貴重品等の資産を確実に保管することができ、従来に比べて施工費用と施工期間を抑えたコンクリート製の地下シェルター及びその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、地中に埋設され、鉄筋コンクリートからなるボックス状の地下シェルターであって、底面と、該底面の各辺から立設される4側面と、前記底面に対向し、開口部を有する上面からなる本体と、前記開口部を覆う上蓋と、から構成され、前記地下シェルターの周囲に組み立てられる鉄筋と接続される1本又は複数本の鉄筋が前記4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に固着されていることを特徴とする地下シェルターである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地下シェルターを建物の基礎工事において建物床下に設置する方法であって、建物基礎の底面の高さまで、地盤を掘削する工程と、前記地下シェルターを埋設するための溝穴を掘削する工程と、前記建物基礎の底面及び前記溝穴底面に、砕石及び防湿シートを敷き、第1のコンクリートを打設する工程と、前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程と、前記第1のコンクリートの上面に型枠を設置し、鉄筋を組み立て、前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋と一体化するように接続する工程と、前記組み立てられた鉄筋上に第2のコンクリートを打設する工程と、を含むことを特徴とする地下シェルターの設置方法である。
請求項3に記載の発明は、底面と、該底面の各辺から立設される4側面と、前記底面に対向し、開口部を有する上面からなる本体と、前記開口部を覆う上蓋と、から構成され、前記4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に1本又は複数本の鉄筋が固着され、地中に埋設される鉄筋コンクリートからなるボックス状の地下シェルターを地中に設置する方法であって、前記地下シェルターを埋設するための溝穴を掘削する工程と、前記溝穴底面に、砕石及び防湿シートを敷き、第1のコンクリートを打設する工程と、前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程と、前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋上に第2のコンクリートを打設する工程と、
を含むことを特徴とする地下シェルターの設置方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の地下シェルターの設置方法であって、前記溝穴底部に前記地下シェルターを設置する工程の後、前記地下シェルターの周囲に鉄筋を組み立て、前記地下シェルターの側面に固着された複数の鉄筋と一体化するように接続する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の地下シェルター及びその設置方法によると、自然災害に耐え得る充分な耐震性、防火性、防水性を有し、貴重品等の資産を確実に保管することができ、従来に比べて施工費用と施工期間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の地下シェルター本体の正面断面図である。
【
図2】
図1に示す地下シェルター本体の右側断面図である。
【
図3】
図1に示す地下シェルター本体の左側断面図である。
【
図4】
図1に示す地下シェルター本体のA-A矢視図である。
【
図5】
図1に示す地下シェルターを住宅地下に設置する方法を示す工程図である。
【
図6】
図1に示す地下シェルターを住宅基礎の鉄筋組みと一体化するように接続した状態を示す平面説明図である。
【
図7】
図1に示す地下シェルターを住宅地下に設置した使用態様を示す説明図である。
【
図8】
図1に示す地下シェルターを住宅の屋外に設置する方法を示す工程図である。
【
図9】
図1に示す地下シェルターを住宅の屋外の地下に設置した使用態様を示す説明図である。
【
図10】第2の実施形態の地下シェルター本体の正面図である。
【
図11】
図10の地下シェルター本体に上蓋を付けた状態の平面図である。
【
図13】第2の実施形態の地下シェルター本体の改良例で、底板を取り付けた地下シェルター本体の正面図である。
【
図14】地震の際に、
図13の地下シェルター本体の底板付近を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、 以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して 重複した説明を省略する。また、以下の実施例では建物の床下を説明する際に、住宅の床下を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、あらゆる建物の床下に適用できるものである。
【実施例1】
【0013】
[地下シェルターの構成]
本発明の地下シェルターの構成について、
図1~4を参照して説明し、この地下シェルターの設置方法と使用態様を
図5~
図9を参照して説明する。
図1は、本実施例に係る地下シェルター1の本体10の正面断面図である。
図2は、
図1の地下シェルター1の本体10の右側断面図、
図3は、左側断面図、
図4は、A-A矢視図である。なお、図面の複雑化を避けるため、
図2の右側断面図においては棚17と貴重品20を省略しており、
図3の左側断面図においては気密性容器21を省略している。地下シェルター1は、鉄筋コンクリートからなるボックス状で、地中に埋設されて使用され、貴重品などの資産を保管するためのシェルターである。地下シェルター1は、底面と、該底面の各辺から立設される4側面と、底面に対向し、開口部を有する上面からなる本体10と、開口部12を覆う上蓋から構成され、4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に1本又は複数本の鉄筋11が固着されている。
【0014】
地下シェルター本体10は、ボックスタイプの電線共同溝(C・C・BOX)と同様な材質(コンクリート材と鉄筋)から形成される。電線共同溝は、道路の地下に埋設され、光ファイバや電力線などがまとめて収容されるコンクリート製のボックスである。近年、無電柱化による景観の向上や高度情報化社会に向けた通信インフラ整備のために、電線共同溝の需要が高まっているが、それを構成するコンクリート材には充分な強度と防火性、防水性、耐久性が必要とされる。
【0015】
本実施例の地下シェルター本体10は、充分な強度や防火性等を有する既存のボックスタイプの電線共同溝を利用して製造してもよいし、高強度の鉄筋コンクリートボックスを新たに製造してもよい。新たに製造する場合には、電線共同溝を製造する工程と同様に、ボックスの型枠に鉄筋を入れ、コンクリート材を流し込み、撹拌してボイラー蒸気養成(固化)した後、型枠より脱型して製造する。また、地下シェルター本体10には、砂利、砂、セメント、水などからなる一般的なコンクリートや、レジンコンクリートを使用することもできる。レジンコンクリートは、熱硬化性樹脂(レジン)を結合材として、砕石・砂・炭酸カルシウムを強固に固めたコンクリートであり、硬化が早く、短期間で充分な強度が得られるため施工性に優れている。更に、接着性、水密性、絶縁性、耐酸性に優れている。本実施例では、地下シェルター本体10のコンクリート材にレジンコンクリートを使用する。
【0016】
また、地下シェルター本体10は、津波や洪水等にも耐えうる防水性、防湿性を必要とすることから、上記のコンクリートに防水材を混入することが好ましい。防水材をコンクリート材に混入することは本発明の必須要件ではないが、防水材を混入することで高い防水性、防湿性が得られる。防水材には、例えば脂肪酸アルミニウムを含むものを使用することができる。さらに、地下シェルター本体10の外面に、コンクリート用の防水塗料を塗ってもよい。それにより、外面に防水層を作り、撥水性で地下水の吸水を防ぐことができ、カビの発生などを抑制することができる。なお、地下シェルター本体10の内面にも同様に、コンクリート用の防水塗料を塗ってもよい。
【0017】
地下シェルター本体10の壁の厚み(底面と上面、4側面の厚み)は130~150mm程である。このような厚みとすることで高い強度を保ち、地下シェルター本体10の不同沈下を抑制することができる。地下シェルター本体10の内部空間の寸法は、横寸法(
図1の正面断面図の内部横幅)が1200mm、内部空間の縦寸法(
図2、
図3の断面図の内部横幅)が1500mm、内部空間の底面から上面までの高さ寸法が1800mmである。また、地下シェルター本体10の重量は、例えば、5000~6000kgである。地下シェルター本体10の寸法はこれに限定されず、用途に応じて変更することができる。例えば、地下シェルター1を住宅床下に設置する場合には、床下深さに関する規制から、内部空間の底面から上面までの高さ寸法を1200mm程度にすることができる。
【0018】
図4に示すように、上面には人が出入りできる開口部12が配設されている。また、地下シェルター本体10を吊り上げて、地下の溝穴底面に設置させるために、本実施例では上面の4箇所に吊り金具19が固着されている。開口部12の寸法は、人が出入りできるように、例えば600mm×600mmの正方形とすることができる。開口部12の形状と寸法は、適宜、変更することができ、例えば円形や長方形にすることもできる。
【0019】
上面の開口部12の覆う蓋は、地下シェルター1を設置する場所に応じて、適切なものが選択される。例えば、住宅床下に設置する場合の蓋には、鋼や合金鋼、ステンレス鋼などからなる防水性、耐火性、密封性を有するシェルターハッチが使用される。このシェルターハッチは、人が容易に開閉できるように把手がつき、地下シェルター1の内外のどちらからでも開閉が可能なものが好ましい。また、地下シェルター1に貴重品を保管するため、鍵がかかるものが好ましい。このシェルターハッチは既存のものを使用できる。
【0020】
また、地下シェルター1を屋外の地下に設置する場合の蓋は、少なくとも強度設計基準(3500 N/m2)の等分布荷重に耐え、歩道などで使用される強度(5.0 kN/m2)以上の等分布荷重にも耐え得る蓋を使用することが好ましい。このような強度を有する蓋の材質は、マンホールの蓋に使用される材質と同様に、コンクリートやモルタル、鉄、硬質塩化ビニルなどが使用される。また、蓋は屋外に設置するため、充分な強度に加え、津波や洪水、火災に耐え得るように、防水性、耐火性、密封性を有することが好ましい。
【0021】
地下シェルター1は、住宅基礎と同様に、砕石を敷いて、コンクリート(いわゆる捨てコンクリート)が打設された土台13の上に設置してもよい。それにより、地下シェルター本体10の重量が大きい場合に地盤の地耐力(地盤が荷重に対して耐えうる強さ)を確保することができる。さらに砕石の上に防湿シートを引いてもよい。また、地下シェルター1は、さらに比重調整用のブロック50を備える構成としてもよい(
図9参照)。液状化しやすい土地においては、ある震度以上の地震により液状化現象が発生するため、地中内の地下シェルター1が浮遊し、転倒することが考えられる。浮遊や転倒を防止するため、地下シェルター1の重量と、浮遊及び転倒の関係を表すデータを基にして、比重調整用のブロック50を加える。比重調整用のブロック50の重量は、例えば1000kgである。それにより、液状化現象が発生した場合においても地下シェルター1が浮遊し、転倒することを防ぐことができる。なお、液状化現象が発生しないような土地においては、比重調整用のブロック50を備えなくてもよい。
【0022】
地下シェルター本体10の4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に1本又は複数本の鉄筋11が固着されている。この鉄筋11は、住宅地下においては、住宅基礎の鉄筋組み(配筋)に接続されるため、力の均衡を保つように少なくとも対向する2側面に取り付ける必要がある。更に4側面に取り付けることが安定性の観点から好ましい。また、屋外の地下に地下シェルター1が設置される場合にも、安定性の観点から少なくとも対向する2側面に取り付ける必要があり、4側面に鉄筋11を取り付けることが更に好ましい。本実施例では、
図1~
図4に示すように、地下シェルター本体10の4側面に鉄筋11を固着させる。
【0023】
鉄筋11は、強度を有する鉄筋であればいかなるものでもよいが、外側面のコンクリートに埋設し易くするため、アンカーボルト又は一部がアンカーボルトになっている鉄筋を使用することが好ましい。また、住宅地下においては、住宅基礎の鉄筋組みに接続しやすくするため、住宅の基礎に使用される異形鉄筋(突起を設けた棒状の鋼材)を一部に有する鉄筋を使用することが好ましい。従って、アンカーボルトと異形鉄筋の両方の形状を有する鉄筋11(異形片ネジボルト)を使用することがより好ましい。一般的に、アンカーボルトは、深く埋め込むほど、また、太いアンカーボルトほど、引き抜き強度(耐力)が大きくなる。引き抜き強度を高くするため、鉄筋11の寸法は、例えば軸径が10~20mm、全長が300~600mmである。
【0024】
地下シェルター本体10にアンカーボルトを取り付ける工法として、先付け工法と後付け工法がある。先付け工法は、地下シェルター本体10を構成する鉄筋や型枠を組み立てた後、コンクリートを型枠に流し込む前にアンカーボルト又はインサート金具を鉄筋や型枠に取り付けて、コンクリート打設により固着させる工法である。
【0025】
一方、後付け工法は、既存の地下シェルター本体10(例えば電線共同溝)に、後から側面の表面に穴を開けて、アンカーボルトやインサート金具(固定孔)を挿入し、固着させる工法である。後付け工法の場合には、コンクリートに挿入後に先端が開くタイプのアンカーボルトが使用されることが多い。どちらの工法を使用してもよいが、本実施例では、アンカーボルトの引き抜き強度がより高い、先付け工法を使用する。また、先付け工法は、後付け工法のようにコンクリートに穴を開ける作業が必要ないため、施工にかかる費用を抑えることができる。
【0026】
鉄筋11を地下シェルター1の外側面に固着させる位置は、地下シェルター1を設置する場所によって異なる。例えば、住宅床下に設置する場合には、住宅基礎の鉄筋組みと地下シェルターの鉄筋11が、強固に接続できるよう、基礎の鉄筋組みと同じ高さで水平に接続できるよう、鉄筋11を外側面に固着させる。具体的には、地下シェルター1を埋設するための溝穴底面との高低差を考慮して、住宅基礎の底面から鉄筋組みまでの高さ(50~80mm)と同じ高さになるように位置を計算し、鉄筋11を地下シェルター1の外側面に固着させる。また、住宅基礎の鉄筋組みの間隔と同じ間隔で鉄筋11を水平に配列させて、複数の鉄筋11を外側面に固着させる。
【0027】
また、地下シェルター1を屋外の地下に設置する場合は、地下シェルター1の場所がわかりやすいように、地上に200~250mm程度、突き出るように設置する。地下シェルター1の鉄筋11は、地下に埋め込まれた後、その周りにコンクリートが打設されるため(150mm厚程度)、地上から100~150mm程度の深さに鉄筋11が位置するように、鉄筋11を外側面に固着させる。また、住宅基礎の鉄筋組みと同様に、所定の間隔で鉄筋11を水平に配列させて、複数の鉄筋11を外側面に固着させる。
【0028】
このように、鉄筋11を地下シェルター1の外側面に固着させる位置は場所によって変更するため、変更に対応できるように、予め外側面に選択可能な複数のインサート金具(固定孔)を所定の間隔で配列開口させておいてもよい。このように複数のインサート金具を配設することで、設置場所に応じて、インサート金具の位置を選択し、鉄筋11を嵌めて固定することができる。
【0029】
次に地下シェルター本体10内に付属される部材や設置される物について説明する。
図1~
図4に示すように、本実施例では上面の開口部12から地下シェルター本体10内に人が出入りするための梯子14が設置されている。梯子14は、開口部12に固定され、本体10内の床15に着く長さが必要である。この梯子14は、前述のシェルターハッチ(蓋)に付属されているものでもよい。また、梯子14の代わりに、階段(本体10が広い場合)や登り綱などでもよい。
【0030】
本体10内面の床15(フローリング)は、例えば、複数の天然木を接着剤で張り合わせた合板フローリング材や単一の木材からなる無垢フローリング材からなる。床15の厚みは12mm~15mm程度であり、その下に除湿剤16が設置されることが好ましい。除湿剤16を設置することにより、本体10内の結露防止、防錆、防カビ等の効果を得ることができる。なお、除湿剤16は、床下だけでなく、本体10内面の側面や上面に設置してもよい。
【0031】
地下シェルター1は、地下に埋設されるため日中でも暗く、本体10内に照明器具18が取り付けられていることが好ましい。照明器具18は、いかなるものでもよいが、例えば電池式のLEDライトが使用できる。本実施例では
図1~3に示すように、本体10内の天井付近に4箇所取り付けられている。
【0032】
本発明の地下シェルター1は、貴重品20を保管することを目的としているため、貴重品20を置くための棚17が設置されることが好ましい。貴重品20は、例えば硬貨や紙幣、有価証券、小切手、金や宝石類などの高価な物、思い出品などが考えられる。本実施例では、棚17を設置するために棚を設置のための棚柱17aを本体10内の1側面に取り付ける。棚柱17aは、2側面以上に取り付けてもよい。取り付けられた棚柱17aに1つ又は複数の棚受17bを嵌め込み、棚受17b上に板材を載置することで棚17が完成する。本実施例では、
図1、
図3に示すように3段の棚17を設置した。棚17を設置することで、貴重品20を床15に直接置くよりも、汚れが付きにくく、整理して置くことができる。
【0033】
また、災害時においても電子計算機に格納された重要なデータ(例えば、売掛・買掛データ)を保管するために、精密機器等を保護する気密性容器21を設置し、その中に必要な装置を入れることができる。貴重品20を気密性容器21に入れて保管してもよい。震災等による予期せぬ停電などによって電力が断たれた場合にも電力を供給し続ける電源装置として無停電電源装置(Uninterruptible Power Systems、以下UPSと記す)が知られている。また、複数のパソコンから同時に接続することができるハードディスク(記憶装置)としてネットワーク接続ハードディスク(Network Attached Storage、以下NASと記す)が知られている。NASは、ルーターや無線LANアクセスポイントを使用すれば、無線で接続することができるため、地中に設置することも可能となる。NASに重要なデータを無線で送って保管し、停電等が発生した際には、UPSによりNASに一定時間電力が供給されるため、重要なデータを保護することができる。本実施例では、気密性容器21内にNASとUPSを設置し、配線やアンテナ(図示せず)を介して重要なデータを保護する。なお、気密性容器21は必要に応じて設置するもので、設置しなくてもよい。
【0034】
以上のように地下シェルター本体10内には、梯子14や棚17、照明器具18が備えられ、必要な物(貴重品20や気密性容器21)を置くことができるが、備えられる物はこれらに限定されず、必要に応じてエアコンや換気扇、コンセントなどを備えることもできる。
【0035】
〔地下シェルターを住宅の地下に設置する工程〕
地下シェルター1を住宅30の地下に設置する工程を
図5~
図7に従って説明する。本実施例では、一般的な住宅の基礎工事の工程中に、地下シェルター1の設置の工程を含んでいる。
図5は、地下シェルター1を住宅30の地下に設置する方法を示す工程図である。
図6は、地下シェルター1と住宅基礎の鉄筋組みとを一体化するように接続した状態を示す平面説明図であり、
図7は、地下シェルター1を住宅30の地下に設置した使用態様を示す説明図である。
【0036】
図5のステップS10で、一般の住宅の基礎工事で行うように、住宅基礎の底面の高さまで、パワーショベルなどの重機を使って地盤を掘削する。続いて、ステップS11で、住宅基礎の底面より深く、地下シェルター1を埋設するための溝穴を穴堀建柱車(ポールセッター)等の重機を使用して掘削する。溝穴の深さは、住宅基礎の底面から1~2mである。液状化現象が発生した場合に備えて比重調整用のブロック50を下に加えた場合には、その大きさも考慮して溝穴を掘削する。
【0037】
ステップS12で、住宅基礎の底面及び溝穴底面に、砕石31を敷き、その上に防湿シートを敷き、第1のコンクリート(捨てコンクリート)32を打設する(
図7参照)。地下シェルター1が、砕石を敷いてコンクリートが打設された土台13の上に設置されている場合には、溝穴底面に対しては、この工程を省略することができる。まず、底面に、砕石31を敷き、地面を固める際に使用される建設機械(締固め用機械)を用いて地盤を締め固める。それにより、地盤の地耐力を高めることができる。砕石の上に防湿シートを敷いた後、第1のコンクリート32を打設し、平らにする。
【0038】
ステップS13で、溝穴底部に地下シェルター1を設置する。地下シェルター1は住宅30の床下に設置するため、蓋38には前述のシェルターハッチを使用し、蓋38を取り付けた後に地下シェルター1を溝穴底部に設置する。地下シェルター1を設置した後に蓋38を取り付けてもよい。本実施例では、地下シェルター1の上面の吊り金具19にクレーン車のワイヤーロープを取り付け、地下シェルター1をクレーン車で吊り上げて、溝穴底部に設置する。他の方法で地下シェルター1を溝穴底部に設置してもよい。
【0039】
ステップS14で、まず、第1のコンクリート32の上面に、鉄筋33を組み立てる。一般的な住宅基礎工事の中で行われる鉄筋組み(配筋)と呼ばれる工程で、それにより、鉄筋コンクリートの引張強度を高めることができる。鉄筋組みの鉄筋33には、充分な強度があり、コンクリートへの付着性が高い異形鉄筋が使用される。
図6に示すように、通常は、一本一本の鉄筋33が結束具(針金など)40で結束されて組み立てられる。なお、
図6の平面説明図では、鉄筋33どうしが両端で結束されているように描かれているが、実際は一般的な住宅基礎の鉄筋組みと同様に、鉄筋33の一部と鉄筋33の一部が重なるように結束されている。このように鉄筋33どうしの一部が重ねて結束されることで、強固な鉄筋組みとなる。この鉄筋組みの工程中に地下シェルター1の側面に固着された複数の鉄筋11と鉄筋33が一体化するように結束具40で結束して接続する。この時も上記と同様に鉄筋11の一部と鉄筋33の一部が重なるように結束されている。
【0040】
ステップS15以降は、一般的な住宅基礎工事の中で行われる工程と同様である。ステップS15では、基礎外周の立ち上がり部分に、コンクリートが外部に漏れないように型枠を組む。型枠は、鋼製や木製の型枠を使用することができる。型枠を組んだ後に、第2のコンクリート35を鉄筋11、33上に打設して平らに均一化する。第2のコンクリート35は、鉄筋33、11を完全に覆うように打設し、その厚みは150mm程度である。
【0041】
ステップS16では、まず、ステップS15で打設したコンクリート35がある程度、乾いた後に、基礎立ち上がり部分の型枠を組む。次に型枠や鉄筋33に、基礎と住宅30の土台を繋ぐアンカーボルト36を設置する。アンカーボルト36を設置した後、型枠の中に第3のコンクリート34を打設する。一般に、基礎立ち上がり部分の高さは、300~500mm程度で、幅は100~250mmである。
【0042】
ステップS17では、ステップS16の基礎立ち上がりのコンクリート打設を完了後、コンクリートの強度が出るまで一定期間、コンクリートを乾かす(養生期間と呼ばれる)。それにより、コンクリートの強度が高まり、破損を防止することができる。養成期間は、3~5日以上必要である。養成期間が経過後、基礎立ち上がりのコンクリート34の強度が出たら、型枠を取り外し、基礎内部の掃除や点検等の作業を行う。更に、構造に関係のない部分(勝手口の土間や玄関の土間など)のコンクリート打設(雑コンと呼ばれる)を行い、仕上げの作業を行う。
【0043】
以上の工程により、住宅30の基礎工事が完了し、地下シェルター1を住宅30の地下に設置する工程が終了する。なお、
図7に示すように、住宅30の床37には、地下シェルター1に出入りするための出入口42(例えば床下点検口)が配設される。この出入口42は、真下に地下シェルター1の蓋38(シェルターハッチ)が位置するように、床37に配設される。なお、地下シェルター1の上面と床37の間の隙間(蓋38周辺の隙間)には、余計なゴミなどが入らないよう、断熱材39が敷かれる。出入口42は、いかなるものでもよいが、高い気密性と耐荷重性、防火性に優れたものが好ましい。
【0044】
〔地下シェルターを屋外の地下に設置する工程〕
次に地下シェルター1を住宅30の庭など屋外の地下に設置する工程を
図8~
図9に従って説明する。
図8は、地下シェルター1を住宅30の屋外に設置方法を示す工程図であり、
図9は、地下シェルター1を住宅30の屋外の地下に設置した使用態様を示す説明図である。
【0045】
図8のステップS20は、住宅30の地下に埋設する場合に説明した工程(ステップS11)と同様に、地下シェルター1を埋設するための溝穴を掘削する。溝穴の深さは、地面から1~2mである。
図9に示すように、地下シェルター1が地面から200mm~300mm程度、地上に突き出るように溝穴を掘削する。また、屋外のため、屋内に比べて雨や洪水の影響を受けやすく、液状化しやすい土地の場合には、液状化現象に備えて比重調整用のブロック50を下に加えることができる。その場合には、ブロック50の大きさも考慮して溝穴を掘削する。本実施例では、比重調整用のブロック50を下に加えている。
【0046】
ステップS21では、住宅基礎(ステップS12)と同様に、溝穴底面に、砕石及び防湿シートを敷き、第1のコンクリート(捨てコンクリート)を打設する。続いてステップS22で、溝穴底部に地下シェルター1を設置する。ステップS13と同様に、地下シェルター1をクレーン車で吊り上げて、溝穴底部に設置する。地下シェルター1は住宅30の屋外に設置するため、上蓋62は充分な強度に加え、防水性、耐火性、密封性を有する蓋を使用する。上蓋62を取り付けた後に地下シェルター1を溝穴底部に設置してもよいし、地下シェルター1を設置した後に上蓋62を取り付けてもよい。
【0047】
ステップS23で、地下シェルター1の側面に固着された複数の鉄筋上11に第2のコンクリート60を打設する。
図9に示すように、第2のコンクリートを打設する前に、鉄筋上11の下に住宅基礎と同様に、砕石を敷き、第1のコンクリート61を打設してもよい。鉄筋上11を完全に囲むように型枠(外枠)を組んだ後、第2のコンクリート60を打設する。
【0048】
地下シェルター1をより強固に地面に固定するために、第2のコンクリート60を打設する前に、地下シェルター1の周囲に網目状に鉄筋を組み立て(図示せず)、地下シェルター1の側面に固着された複数の鉄筋11と一体化するように結束(接続)させてもよい。その後に、型枠(外枠)を組み、第2のコンクリート60を打設する。このようにすることで、住宅30の地下に設置する場合と同様に、地下シェルター1をより強固に地面に固定することができる。なお、第2のコンクリート60の厚みは150mm程度である。
【0049】
ステップS24では、第2のコンクリート60を打設後、コンクリートの強度が出るまで一定の期間(養生期間)コンクリートを乾かし、期間経過後に仕上げの作業を行う。このようにして、地下シェルター1を住宅30の屋外に設置する工程が終了する。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の第2の実施例の地下シェルターについて
図10~13を参照して説明する。
図10は、第2の実施例の地下シェルター2の本体70の正面図、
図11は、地下シェルター本体70に上蓋75を付けた状態の平面図、
図12は、地下シェルター本体70の正面断面図である。また、
図13は、第2の実施例の地下シェルター本体の改良例で、底板77を取り付けた地下シェルター本体70の正面図であり、
図14は、地震の際に地下シェルター本体70の底板77付近を表す説明図である。本実施例の地下シェルター2は、
図1等に示す実施例1の地下シェルター1と比べると、外側面の鉄筋71が固着される部分が肉厚に形成された肉厚部74である点が異なるが、それ以外の構成や設置工程は実施例1と同様であるため、共通部分の説明を省略する。
【0051】
本実施例の地下シェルター2は、本体70の外側面に肉厚に形成された肉厚部74を有することを特徴としており、地下シェルター2の寸法や用途は限定されない。例えば、
図1に示すように、複数の貴重品20や棚17、照明器具18、梯子14、精密機器等が内部に設置された気密性容器21等を備えた比較的大型の地下シェルター1に、肉厚部74を有する本体10を使用することができる。また、精密機器等が内部に設置された気密性容器21のみの保護を目的とした比較的小型の地下シェルター(例えば本発明者の出願、特願2017-170027「データ保護ボックス及びこれを用いたデータ保護装置」)に、肉厚部74を有する本体70を使用することもできる。
【0052】
本実施例では、特に精密機器等が内部に設置された気密性容器21のみの保護を目的とした地下シェルター2について説明する。地下シェルター本体70の材質は、実施例1と同様にコンクリート材である。また上蓋75の材質も同様にコンクリート材である。地下シェルター本体70の一側面には、精密機器等のケーブルを通すケーブル孔73が配設される。本実施例の地下シェルターは、外形が直方体であり、
図10に示す正面図と背面図、右側面図、左側面図の寸法は同一である。また、
図11の平面図が示すように、本実施例の地下シェルターの上面(下面)と上蓋75は正方形である。
【0053】
本実施例の上蓋75と地下シェルター本体70には、特願2017-170027のデータ保護ボックスと同様に、それぞれ孔が配設され、固定具76により固定される。固定具76は、上蓋75と本体70を強固に固定できれば、いかなるものでもよいが、例えば六角ボルトが使用される。六角ボルトは、上蓋11の上面の孔からねじ込まれ、本体70の孔18にねじ込んで固定される。
【0054】
地下シェルター本体70の外形の寸法は、例えば底面を860mm×860mm、高さを1870mmにすることができる。また、内部空間の寸法は、例えば底面を500mm×500mm、高さを1700mmとすることができる。このときの側面の壁の厚みは、180mmである。
図10~12に示すように、地下シェルター70の内部空間が断面逆台形状になるように形成してもよい。その場合、内部空間の寸法は、例えば底面を500mm×500mm、上面を600mm×600mm、高さを1700mmとすることができる。このときの側面の壁の厚みは、130mm~180mmである。このような厚みとすることで高い強度を保つことができる。地下シェルター70の形状や寸法は上記に限定されず、いかなる外形や寸法でもよい。
【0055】
本実施例のように、地下シェルター本体70の内部空間を断面逆台形状に形成することにより、開口部72から気密性容器21を入れやすくなる。また、設置後も下部の気密性容器21の周辺に余分な空隙がないため、地震等があった場合にも安定した状態が保たれる。更に、下部の壁の厚みを増やすことで、下部が上部より重くなり、液状化による浮き上がりを防止することができる。特に液状化しやすい土地の場合には、地下シェルター本体70の内部空間を断面逆台形状にすることに加え、実施例1の比重調整用のブロックを下に加えてもよい。
【0056】
また、比重調整用のブロックの代わりに
図13の改良例に示すように底板77を地下シェルター本体70の底面に取り付け加えてもよい。底板77は、地下シェルター本体70の底面の下部に、底面の面積よりも広いコンクリート材の板材が使用される。本体の底面が上記と同様に860mm×860mmの場合、それよりも一辺が200~400mm程度長く、例えば1160mm×1160mmの底板77を使用することができる。なお、底板77の厚さは100~200mm程度であり、例えば150mmである。
【0057】
図14は、地震の際の地下シェルター本体70の底板77の周辺の様子を表している。地震の際には、地中で結合していた土や砂の粒子が揺れで分離し、粒子間の水の水圧が上昇するため水の中で粒子が揺動し、地震後には土や砂の粒子は沈下して上に水がたまった状態となる(液状化現象)。液状化が起きると、地下シェルター本体70と底板77が、水圧により上に押される状態になるが、
図14の説明図に示すように、地下シェルター本体70の周囲の土や砂粒子の重力が、矢印方向に底板77に加わるため、液状化による浮き上がりを効果的に防止することができる。なお、本実施例に限らず、実施例1においても地下シェルター本体10の内部空間を断面逆台形状に形成してもよいし、底板77を備えてもよい。
【0058】
実施例2においても実施例1と同様に、地下シェルター本体70の4側面のうち少なくとも対向する2側面の外側面に1本又は複数本の鉄筋71が固着されている。本実施例では、地下シェルター本体70の4側面に鉄筋71を固着させる(
図11参照)。鉄筋71は、実施例1と同様に、アンカーボルト又は一部がアンカーボルトになっている鉄筋、又はアンカーボルトと異形鉄筋の両方の形状を有する鉄筋(異形片ネジボルト)等を使用する。鉄筋71の寸法は、実施例1と同様に例えば軸径が10~20mm、全長が300~600mmである。
【0059】
図10~13に示すように、本実施例の地下シェルター本体70の4側面は、肉厚に形成された肉厚部74を有している。本実施例では、1つの肉厚部74につき、1本の鉄筋71が固着されているが、複数本の鉄筋71が固着されてもよい。肉厚部74は、側面の面積に応じて一側面につき1つ又は複数形成されてもよい。本実施例では、各側面に2つの肉厚部74を有する。肉厚部74の形状は、角柱や円柱、側面が台形の四角柱などいかなる形状でもよい。本実施例の肉厚部74は、4側面が台形の四角柱で形成される。肉厚部74の寸法は、例えば、底面が790×240mm、上面が700mm×150mm、高さが45mmの四角柱とすることができる。肉厚部74の寸法はこれに限定されず、一側面に収まるように形成されていれば、いかなる寸法でもよい。
【0060】
肉厚部74の材質は、地下シェルター本体70と同様なコンクリート材で、レジンコンクリート材を使用できる。また、肉厚部74のコンクリート材には、地下シェルター本体70と同様に防水材を混入してもよいし、防水塗料を塗布してもよい。
【0061】
地下シェルター本体70に鉄筋71を取り付ける工法は、実施例1と同様に、先付け工法や後付け工法など、いかなる工法でもよい。また、鉄筋71を地下シェルター2の外側面に固着させる垂直方向の位置は、地下シェルター2を設置する場所(住宅床下や屋外の庭等)によって異なり、実施例1と同様に、鉄筋組みの位置を考慮して固着させる。さらに、住宅基礎等の鉄筋組みの間隔と同じ間隔で鉄筋71を水平方向に配列させて、複数の鉄筋71を外側面に固着させる。
【0062】
一般に、鉄筋71をコンクリート側面に深く埋め込むほど、引き抜き強度(耐力)が大きくなる。本実施例では、肉厚部74に鉄筋71を埋め込んでいるため、実施例1よりも深く埋め込むことができ、引き抜き強度を高くすることができる。それにより、住宅基礎等の周囲の鉄筋組みと、地下シェルター2の鉄筋71を、より強固に安定して接続させることができる。なお、地下シェルター2の設置方法は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
以上、説明してきた様に、本発明の地下シェルター及びその設置方法は、地下シェルター側面の鉄筋と住宅基礎の鉄筋組みとを一体化した状態で、地下シェルターを住宅の地下に設置しているため、強固に固定される。地下シェルター側面に肉厚部を有する場合には、更に強固に鉄筋が地下シェルターに固着される。また、住宅の屋外の地下に設置する場合にも地下シェルターの鉄筋がコンクリートで固められるため、地面に強固に固定できる。更に地下シェルターの鉄筋を周囲の鉄筋組みと結束させることで、より強固に固定することができる。
【0064】
また、地下シェルターは、自然災害に耐え得る高い強度と耐震性、防火性、防水性を有する。コンクリート製であるため、充分な重量があり、地下シェルター側面の鉄筋により強固に固定されているが、液状化しやすい土地の場合には、地下シェルターの内部空間を断面逆台形状に形成し底板を備えて、又は比重調整用のブロックを下に加えて、液状化による浮き上がりを防止することができる。それにより、貴重品等の資産を確実に保管することができる。更に、本発明の地下シェルターは、地下に埋設される際に施工されるのではなく、完成された状態で地下に埋設されるため、施工費用と施工期間を抑えることができる。
【0065】
また、本発明の地下シェルターは、居住用ではなく、貴重品等の資産を保管するためのものであるが、自然災害時などの一時避難所としても使用することができる。
【0066】
なお、上述した実施例の地下シェルター及びその設置方法は一例であり、その構成や方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,2…地下シェルター、10,70…地下シェルターの本体、11,71…地下シェルター側面の鉄筋、12,72…開口部、13…土台、14…梯子、15…床、16…除湿剤、17…棚、17a…棚柱、17b…棚受、18…照明器具、19…吊り金具、20…貴重品、21…気密性容器、30…住宅、31…砕石、32,61…第1のコンクリート(捨てコンクリート)、33…住宅基礎の鉄筋、34…第3のコンクリート、35,60…第2のコンクリート、36…アンカーボルト、37…住宅の床、38…蓋(シェルターハッチ)、39…断熱材、40…結束具、42…出入口、50…比重調整用のブロック、62,75…上蓋、73…ケーブル孔、74…肉厚部、76…固定具、77…底板。