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特許7107610埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/22 20060101AFI20220720BHJP
   B23K 20/04 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B21B1/22 B
B23K20/04 C
B23K20/04 D
B23K20/04 F
B23K20/04 A
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182967
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2022077516
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】202011257708 .7
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521158923
【氏名又は名称】燕山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】肖 宏
(72)【発明者】
【氏名】付 倫
(72)【発明者】
【氏名】陳 楠
(72)【発明者】
【氏名】単 俊祥
(72)【発明者】
【氏名】和 志斌
(72)【発明者】
【氏名】梁 樹杰
(72)【発明者】
【氏名】楊 智
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-234529(JP,A)
【文献】橋本 隆文 他5名,リニアモーターカー用リアクションプレート”溝付き特殊平鋼”の開発,川崎製鉄技報,日本,1990年,Vol.22 No.3,p.41-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延予定鋼板に形状がアリ溝又はアーク溝であり圧延予定アルミニウム板と合致する埋込式溝を加工し
前記アリ溝のサイズと前記圧延予定鋼板の厚さ及び幅と前記圧延予定アルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(1)、(2)及び(3)で示し、
【数1】
ここで、hは前記圧延予定鋼板の溝深さであり、h前記圧延予定鋼板の厚さであり、h前記圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは前記圧延予定鋼板の幅であり、bは前記圧延予定アルミニウム板の幅であり、αは前記埋込式溝の溝角度であり、
前記アーク溝のサイズと前記圧延予定鋼板の厚さ及び幅と前記圧延予定アルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(4)、(5)及び(6)で示し、
【数2】
ここで、hは前記圧延予定鋼板の溝深さ又は溝径であり、h前記圧延予定鋼板の厚さであり、h前記圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは前記圧延予定鋼板の幅であり、bは前記圧延予定アルミニウム板の幅であることである、埋込式溝の加工ステップS1と、
前記圧延予定アルミニウム板及び前記ステップS1で得られた前記圧延予定鋼板の複合予定面の酸化物及び油汚れを浄化する、表面処理ステップS2と、
前記圧延予定鋼板の合せ面に前記埋込式溝を加工して、前記圧延予定アルミニウム板を嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する、当接圧着予備取り付けステップS3と、
前記ステップS3における予備取り付け加工品を圧延して、埋込式の機械的インタロックの鋼-アルミニウム複合板材を予備複合し、予備複合板を得る、予備取り付け加工品の圧延ステップS4と、
前記ステップS4における前記予備複合板材に対して350℃~600℃の温度範囲で1時間焼鈍する、熱処理ステップS5と、を含む、ことを特徴とする埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、フライス盤又はワイヤ放電で埋込式溝を加工する、ことを特徴とする請求項1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【請求項3】
前記ステップS2において、ワイヤブラシ、砂紙又は砥石車で前記複合予定面の前記酸化物を除去し、アセトン及びアルコールで前記複合予定面の前記油汚れを拭き取った後、送風機で乾燥する、ことを特徴とする請求項1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【請求項4】
前記ステップS3において、前記圧延予定アルミニウム板の幅は前記圧延予定鋼板の溝幅に対して締め代を有し、前記圧延予定アルミニウム板と前記圧延予定鋼板とが締り嵌めされる、ことを特徴とする請求項1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【請求項5】
前記ステップS4において、圧延機を用いて前記予備取り付け加工品を複数回で冷間圧延し、ここで、圧延速度を0.1~5m/sとし、単回の圧下率を10%~60%として、前記圧延予定アルミニウム板と前記圧延予定鋼板の埋込式の機械的インタロック予備構造を得、その後、総圧下率が55%以上の条件で複数回の冷間圧延を行って、前記鋼-アルミニウム複合板材の前記予備複合を達成し、前記鋼-アルミニウム複合板材のせん断強度は74MPa以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS5において、前記予備複合板材を1時間焼鈍した後、炉内で冷却して、前記鋼-アルミニウム複合板材を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材及びその製造方法の技術分野に属し、特に埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼-アルミニウム板複合板は、鋼を基材とし、アルミニウムを補強材として製造されたアルミニウム板補強鋼基材複合材であり、機械、電子機器、航空宇宙、自動車等の分野において、幅広い発展空間及び応用展望を有する。しかしながら、アルミニウムが空気中で一瞬に酸化皮膜を形成し、鋼とアルミニウムとの複合を著しく阻害するので、かなり大きい圧下率で圧延してアルミニウム板を大きく変形させて、アルミニウム板表面の酸化皮膜を十分に潰し、アルミニウム板内部の新鮮な金属を露出して鋼と結合するようにする必要がある。
【0003】
既存の鋼-アルミニウム板材の冷間圧延複合法は、通常単回の圧下率を55%以上として圧延を行うことで、鋼-アルミニウムの予備複合を実現するが、この時複合強度が低いので、原子を十分に拡散させて界面間に高強度の結合を形成するように熱処理による強化を行う。しかしながら、該方法で製造された鋼-アルミニウム複合板材の厚さは、通常5mm未満である。冷間圧延複合法で分厚い鋼-アルミニウム複合板材を製造する場合、鋼-アルミニウム結合を手始めに成し得るためには、単回の圧下率を55%以上とする必要があり、そうでないと、圧延後に鋼とアルミニウムとが容易に分離され、予備結合界面におけるアルミニウムの表面が一瞬に再酸化されて複合を妨げるようになり、次いて複数回で圧延を行う場合であっても、第1回目の圧延を55%以上の圧下率で行うことを前提にしなければならない。しかしながら、厚規格の鋼-アルミニウム板の圧延において、単回の圧下率を55%以上とすることは、圧延機設備の圧延能力に対する要件が高く、これほど高い圧延能力は実現し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法を提供する。この方法は、鋼板に埋込式溝を加工し、圧延後に得られた機械的インタロック構造により鋼とアルミニウムとがぴったりと張り合わされ、複合予定の界面への空気の進入を防ぎ、再圧延時のアルミニウム表面の酸化を避けることができ、これにより低い圧下率で複数回圧延してアルミニウム板を大きく変形させ、アルミニウム板表面の酸化皮膜を十分に潰し、アルミニウム板の内部における新鮮な金属を露出させて鋼と有効に接合するようにすることが可能である。この方法により、鋼板にアルミニウム板を嵌着した後、複数回の圧延を行うことにより、埋込式の鋼-アルミニウム圧延複合を実現し、得られた機械的インタロック構造は、熱処理時の鋼とアルミニウムとの間の接触圧力を高め、更に原子の相互拡散を促進して高強度結合の形成に役立ち、低い圧下率での複数回圧延による鋼とアルミニウムとの冷間圧延複合が可能となり、圧延機の圧延能力の要件を下げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を実現するための本発明の技術的手段は以下の通りである。
本発明は、埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法を提供し、該方法は、鋼板の合せ面に埋込式溝を加工し、アルミニウム板と嵌着した後、低い圧下率で複数回の圧延を行うことにより、埋込式の鋼-アルミニウムの予備複合を実現可能にし、得られた機械的インタロック構造により、熱処理時の拡散接合効果を高めて界面接触接合強度を十分に向上する一方、低い圧下率で複数回圧延を行って鋼とアルミニウムとの冷間圧延複合を実現し、圧延機の圧延能力の要件を下げることができる。
【0006】
本発明の一形態である、埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法は、
圧延予定鋼板に形状がアリ溝又はアーク溝である埋込式溝を加工し、ここで、埋込式溝付けの複合板を圧延する時の故障モードを解析することにより、溝のサイズ、鋼板の厚さ及び幅、アルミニウム板の厚さ及び幅との関係式を得き、鋼板上に圧延予定アルミニウム板と合致する溝を加工することを達成し、
アリ溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(1)、(2)及び(3)で示し、
【数1】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さであり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅であり、αはアリ溝の溝角度であり、
アーク溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(4)、(5)及び(6)で示し、
【数2】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さ又は溝径であり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅である、埋込式溝の加工ステップS1と、
圧延予定アルミニウム板及びステップS1で得られた圧延予定鋼板の複合予定面の酸化物及び油汚れを浄化する、表面処理ステップS2と、
圧延予定鋼板の合せ面に埋込式溝又はアーク溝を加工し、圧延予定アルミニウム板を嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する、当接圧着予備取り付ステップS3と、
ステップS3における予備取り付け加工品を圧延して埋込式の機械的インタロックの鋼-アルミニウム複合板材を予備複合し、予備複合板を得る、予備取り付け加工品の圧延ステップS4と、
ステップS4における予備複合板材に対して350℃~600℃の温度範囲で1時間焼鈍する、熱処理ステップS5と、を含む。
【0007】
好ましくは、ステップS1において、フライス盤又はワイヤ放電によって埋込式溝を加工する。
【0008】
さらに、ステップS2において、ワイヤブラシ、砂紙又は砥石車で複合予定面における酸化物を除去し、アセトン及びアルコールで複合予定面における油汚れを拭き取った後、送風機で乾燥する。
【0009】
好ましくは、ステップS3において、圧延予定アルミニウム板の幅は圧延予定鋼板の溝幅に対して締め代を有し、これによって圧延予定アルミニウム板と圧延予定鋼板との締り嵌めが実現する。
【0010】
好ましくは、ステップS4において、圧延機を用いて予備取り付け加工品を複数回で冷間圧延し、ここで、圧延速度を0.1~5m/sとし、単回の圧下率を10%~60%として、アルミニウム板と鋼板との埋込式機械的インタロック予備構造を得、その後、冷間圧延の総圧下率が55%以上であるのを条件とした複数回の圧延を行って、鋼-アルミニウム複合板材の予備複合を達成し、複合板材のせん断強度は74MPa以上である。
【0011】
好ましくは、ステップS5において予備複合板材を1時間焼鈍した後、炉内で冷却して、鋼-アルミニウム複合板材を得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の技術的手段を採用することで、以下の利点を有する。
(1)既存の鋼-アルミニウム複合方法と比較して、本発明は、従来技術において、鋼-アルミニウムバイメタル複合板材を複合圧延する時、単回の圧下率をかなり大きくしなければ、予備複合を成し得ることができないとの問題点を解決することができる。せん断試験片を準備して測定を行ったところ、2回の総圧下率を58%以上として圧延を行った場合の、複合板材のせん断強度は74MPa以上であり、同じ圧下率で単回圧延を行った場合と比べて、圧延機設備の圧延能力に対する要件を下げ、複合強度は15MPa以上増加した。
(2)本発明の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法によれば、低い圧下率での複数回の圧延によりアルミニウム板を大きく変形させてアルミニウム板表面の酸化皮膜を十分に潰し、アルミニウム板の内部における新鮮な金属を露出して鋼と有効に接合させる。
(3)本発明によれば、鋼板の合せ面に埋込式溝を加工して鋼板にアルミニウム板を嵌着した後、低い圧下率で複数回圧延を行うことにより、埋込式の鋼-アルミニウム複合を手始めに遂げるとともに、得られた機械的インタロック構造により、熱処理時の拡散接合効果を高め、さらに原子の相互拡散を促進して高強度結合を形成させ、界面接触接合強度を十分に向上する一方、低い圧下率の複数回の冷間圧延による鋼とアルミニウムとの冷間圧延複合が可能となり、圧延機の圧延能力の要件をさげることができる。
(4)冷間圧延で鋼-アルミニウム複合板材を製造する時、機械的係合又は予備複合を達成するために単回の圧下率が55%以上であるのを必要とされるが、圧延設備は複合に必要な圧延力を提供し難いため、圧延設備の圧延能力を考慮すると、既存の複合板圧延方法のほとんどは熱間圧延技術を用いている。これに対し、本発明は、低い圧下率で単回圧延して機械的係合又は予備複合が可能になり、低い圧下率で複数回冷間圧延を行って冷間圧延複合を達成できる。冷間圧延複合法は、熱間圧延と比較して、製品の寸法精度が高く、表面品質が良く、製品の厚さ比を任意に調整でき、被覆層の厚さの制限がないという利点がある。また、本発明は、低製造コスト、高効率及び便利な工業生産という利点を有することに加えて、粗材の加熱による界面酸化がなく、界面での金属間化合物が生じにくいため、より高品質の複合板材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法のフローチャートである。
図2a】本発明に係る埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法の圧延予定鋼板に加工したアリ溝の概略図である。
図2b】本発明に係る圧延予定アルミニウム板を鋼板表面の溝に嵌着した概略図である。
図3a】本発明に係る埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法の圧延予定鋼板に加工したアーク溝の概略図である。
図3b】本発明に係る圧延予定アルミニウム板を鋼板表面の溝に当接して嵌着した概略図である。
図4】実施例1に係る総圧下率が58%である場合のせん断強度とひずみとの関係を示すグラフである。
図5】実施例2に係る総圧下率が65%である場合のせん断強度とひずみとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面と組み合わせて本発明の実施形態の技術的手段をより明確且つ詳細に説明する。本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働なしに得た他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。特に明記しない限り、本出願で用いられた技術用語又は科学用語は、当業者の理解できる通常の意味を有することに気をつけるべきである。
【0015】
以下の実施形態においては、図面と組み合わせて本発明の技術的手段についてさらに詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法は、以下のステップを含む。
【0017】
埋込式溝の加工ステップS1:圧延予定鋼板に埋込式溝を加工し、溝の形状をアリ溝又はアーク溝に設け、ここで、埋込式溝付けの複合板を圧延する時の故障モードを解析することにより、溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式を得、溝深さ、溝角度などが圧延予定アルミニウム板と合致する溝を鋼板に加工することを達成し、
アリ溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(1)、(2)及び(3)の通りであり、
【数3】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さであり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅であり、αはアリ溝の溝角度であり、
アーク溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(4)、(5)及び(6)の通りであり、
【数4】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さ又は溝径であり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅である。
【0018】
表面処理ステップS2:圧延予定アルミニウム板及びステップS1で得られた圧延予定鋼板の複合予定面における酸化物及び油汚れを浄化する。
【0019】
当接圧着予備取り付けステップS3:圧延予定鋼板の合せ面には埋込式溝又はアーク溝を加工して、圧延予定アルミニウム板を嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する。
【0020】
予備取り付け加工品の圧延ステップS4:ステップS3における予備取り付け加工品を圧延して埋込式の機械的インタロックの鋼-アルミニウム複合板材の予備複合を達成する。
【0021】
熱処理ステップS5:ステップS4における予備複合板材に対して熱処理を行い、ここで、熱処理として350℃~600℃の温度範囲で1時間焼鈍する。
【0022】
(実施例1)
図2に示すように、実施例1は、圧延予定Q235鋼板2にアリ溝を加工し、圧延予定5052アルミニウム板1と複合圧延する例である。
【0023】
埋込式溝の加工ステップS1:フライス盤を利用して、30mm幅のQ235鋼板2に埋込式アリ溝を加工し、アリ溝の計算式により、好ましい方案として、45℃溝角度、2mm溝深さ、5mm鋼板厚、4mmアルミニウム板厚、15mm幅を選択し、鋼板及びアルミニウム板の長さは幅より大きいようにしたらよい。
【0024】
表面処理ステップS2:5052アルミニウム板1及びステップ1で得られたQ235鋼板2の鋼-アルミニウム板の複合予定面における酸化物をワイヤブラシ、砂紙又は砥石車で除去し、且つ複合予定面における油汚れをアセトン及びアルコールで拭き取った後、送風機で乾燥して次の処理に用いる。
【0025】
当接圧着予備取り付けステップS3:Q235鋼板2の合せ面に埋込式アリ溝を加工して、5052アルミニウム板1を嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する。
【0026】
予備取り付け加工品の圧延ステップS4:予備取り付け加工品に対して圧下率を30%として第1回目の圧延を行って、Q235鋼板2と5052アルミニウム板1との最初の埋込式機械的インタロックを達成し、次いて40%の圧下率で第2回目の圧延を行って、鋼-アルミニウム複合板材の予備複合を達成する。
【0027】
熱処理ステップS5:予備複合板材を400℃で1時間焼鈍した後、炉内で冷却して、鋼-アルミニウム複合板材を得る。
【0028】
鋼-アルミニウム複合板材のせん断試験片の準備して引張試験機でせん断強度を測定する。2回の総圧下率が58%である条件下で2回圧延して得られた鋼-アルミニウム複合板材のせん断強度は74MPa(図4)であり、58%の圧下率で単回圧延する場合と比較して、圧延機設備の圧延能力の要件を下げることができ、複合強度は単回圧延する場合に比べて約15MPa増加する。
【0029】
(実施例2)
図3に示すように、実施例2は、圧延予定Q235鋼板2にアリ溝を加工し、圧延予定5052アルミニウム板1を複合圧延する実施例である。
【0030】
埋込式溝の加工ステップS1:フライス盤を利用して、10mm幅のQ235鋼板2に埋込式溝を加工し、アリ溝の計算式により、好ましい方案として、2mmの溝深さ、5mmの鋼板厚、4mmのアルミニウム板厚、15mm幅を選択し、鋼板及びアルミニウム板の長さは幅より大きいようにしたらよい。
【0031】
表面処理ステップS2:5052アルミニウム板1とQ235鋼板2との合せ面における酸化物をワイヤブラシ、砂紙又は砥石車で除去し、且つアセトン及びアルコール拭き取った後、送風機で乾燥して次の処理に用いる。
【0032】
当接圧着予備取り付けステップS3:5052アルミニウム板1を溝付きのQ235鋼板2に嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する。
【0033】
予備取り付け加工品の圧延ステップS4:予備取り付け加工品に対して圧下率を30%として第1回目の圧延を行って、Q235鋼板2と5052アルミニウム板1との最初の埋込式機械的インタロックを達成し、次いてそれぞれ30%の圧下率で第2回目及び第3回目の圧延を行って、鋼-アルミニウム複合板材の予備複合を達成する。
【0034】
熱処理ステップS5:予備複合板材を450℃で1時間焼鈍した後、炉内で冷却して、鋼-アルミニウム複合板材を得る。
【0035】
鋼-アルミニウム複合板材のせん断試験片の準備して引張試験機でせん断強度を測定する。3回の総圧下率が65%である条件下で3回圧延して得られた鋼-アルミニウム複合板材のせん断強度は81MPa(図5)であり、65%の圧下率で単回圧延する場合と比較して、圧延機設備の圧延能力の要件を下げることができ、複合強度は単回圧延する場合に比べて約20MPa増加する。
【0036】
要約すると、本発明により製造された鋼-アルミニウム複合板材は、同じ圧下率を有する同種の鋼-アルミニウム複合板材よりも優れた複合状態及び拡散条件を有してより優れた機械的性能を備え、得られた機械的インタロック構造は、熱処理時の鋼とアルミニウムとの接触圧力を高め、更に原子の相互拡散を促進して高強度結合を形成することに貢献し、低い圧下率の複数回の冷間圧延による鋼とアルミニウムとの冷間圧延複合を可能とし、圧延機の圧延能力の要件を下げることができる。
【0037】
上記の内容は本発明の具体的実施例にすぎなく、本発明の保護範囲はそれに限定されない。当業者にとって本発明に開示された技術範囲内で容易になされる変更又は置換は、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、請求項の保護範囲に従うべきである。
【0038】
(付記)
(付記1)
圧延予定鋼板に形状がアリ溝又はアーク溝である埋込式溝を加工し、ここで、埋込式溝付けの複合板を圧延する時の故障モードを解析することにより、溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式を得、鋼板に圧延予定アルミニウム板と合致する溝を加工し、
アリ溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(1)、(2)及び(3)で示し、
【数5】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さであり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅であり、αはアリ溝の溝角度であり、
アーク溝のサイズと鋼板の厚さ及び幅とアルミニウム板の厚さ及び幅との関係式は、式(4)、(5)及び(6)で示し、
【数6】
ここで、hは圧延予定鋼板の溝深さ又は溝径であり、hは圧延予定鋼板の厚さであり、hは圧延予定アルミニウム板の厚さであり、aは圧延予定鋼板の幅であり、bは圧延予定アルミニウム板の幅であることである、埋込式溝の加工ステップS1と、
圧延予定アルミニウム板及びステップS1で得られた圧延予定鋼板の複合予定面の酸化物及び油汚れを浄化する、表面処理ステップS2と、
圧延予定鋼板の合せ面に埋込式溝を加工して、圧延予定アルミニウム板を嵌着した後、液圧プレスで予圧及び平坦化を行い、最初の当接予備取り付けを達成する、当接圧着予備取り付けステップS3と、
ステップS3における予備取り付け加工品を圧延して、埋込式の機械的インタロックの鋼-アルミニウム複合板材を予備複合し、予備複合板を得る、予備取り付け加工品の圧延ステップS4と、
ステップS4における予備複合板材に対して350℃~600℃の温度範囲で1時間焼鈍する、熱処理ステップS5と、を含む、ことを特徴とする埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【0039】
(付記2)
ステップS1において、フライス盤又はワイヤ放電で埋込式溝を加工する、ことを特徴とする付記1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【0040】
(付記3)
ステップS2において、ワイヤブラシ、砂紙又は砥石車で複合予定面の酸化物を除去し、アセトン及びアルコールで複合予定面の油汚れを拭き取った後、送風機で乾燥する、ことを特徴とする付記1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【0041】
(付記4)
ステップS3において、圧延予定アルミニウム板の幅は圧延予定鋼板の溝幅に対して締め代を有し、圧延予定アルミニウム板と圧延予定鋼板とが締り嵌めされる、ことを特徴とする付記1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【0042】
(付記5)
ステップS4において、圧延機を用いて予備取り付け加工品を複数回で冷間圧延し、ここで、圧延速度を0.1~5m/sとし、単回の圧下率を10%~60%として、アルミニウム板と鋼板の埋込式の機械的インタロック予備構造を得、その後、総圧下率が55%以上の条件で複数回の冷間圧延を行って、鋼-アルミニウム複合板材の予備複合を達成し、複合板材のせん断強度は74MPa以上である、ことを特徴とする付記1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【0043】
(付記6)
ステップS5において、予備複合板材を1時間焼鈍した後、炉内で冷却して、鋼-アルミニウム複合板材を得る、ことを特徴とする付記1に記載の埋込式溝付けのインタロックの鋼-アルミニウム複合圧延材の製造方法。
【符号の説明】
【0044】
1 5052アルミニウム板
2 Q235鋼板
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5